(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5774172
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月2日
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびこれに利用する乗場表示装置、かご内表示装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20150813BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20150813BHJP
【FI】
B66B5/02 R
B66B3/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-163424(P2014-163424)
(22)【出願日】2014年8月11日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 正人
【審査官】
大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−056681(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/026015(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/082650(WO,A1)
【文献】
特開2012−144330(JP,A)
【文献】
特開2007−062861(JP,A)
【文献】
特開2013−224187(JP,A)
【文献】
特開2012−046319(JP,A)
【文献】
特開2014−114125(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0302609(US,A1)
【文献】
実開昭57−013558(JP,U)
【文献】
実開昭62−029370(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00− 3/02
B66B 5/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、前記エレベータが設置された建物の各階床の乗場に設置された乗場表示装置とを備えたエレベータシステムにおいて、
前記エレベータ制御装置は、
非常時に、登録されているエレベータ呼びの情報を保持する呼び情報保持部と、
非常時に、登録されているエレベータ呼びをすべてキャンセルして、前記エレベータの乗りかごを、予め設定された呼戻し階に呼戻す非常呼戻し運転を行う運転制御部
とを有し、
前記乗場表示装置は、
前記エレベータ制御装置により前記非常呼戻し運転が実行され、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、保持された登録済みのエレベータ呼びの情報の中の乗場呼びに関する情報の表示を維持する呼び情報表示部を有する
ことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記乗場表示装置は、
前記非常呼戻し運転が実行された際に、自乗場表示装置が、前記非常呼戻し運転の実行によりキャンセルされた乗場呼びの操作階の乗場表示装置であるときには、当該乗場呼びがキャンセルされ、一般利用が不可能であることを報知するためのテキスト情報を出力し、それ以外の乗場表示装置であるときには、一般利用が不可能であることを報知するためのテキスト情報を出力するとともに、前記非常呼戻し運転から通常運転に移行された際に、一般利用が可能な状態に戻ったことを報知するためのテキスト情報を出力するテキスト表示部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記乗場に設置された乗場スピーカと、前記乗りかごに設置されたかご内スピーカとをさらに備え、
前記乗場スピーカは、前記非常呼戻し運転が実行された際に、自乗場スピーカが、前記非常呼戻し運転の実行によりキャンセルされた乗場呼びの操作階の乗場スピーカであるときには、当該乗場呼びがキャンセルされ、一般利用が不可能であることを報知するための音声情報を出力し、それ以外の乗場スピーカであるときには、一般利用が不可能であることを報知するための音声情報を出力するとともに、前記非常呼戻し運転から通常運転に移行された際に、一般利用が可能な状態に戻ったことを報知するための音声情報を出力する音声出力部を有し、
前記かご内スピーカは、前記非常呼戻し運転が実行された際に、一般利用が不可能であることを報知するための音声情報を出力するとともに、前記非常呼戻し運転から通常運転に移行された際に、一般利用が可能な状態に戻ったことを報知するための音声情報を出力する音声出力部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
エレベータが設置された建物の各階床の乗場に設置された乗場表示装置において、
前記エレベータにおいて、非常時に乗りかごを予め設定された呼戻し階に呼戻す非常呼戻し運転が実行されると、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、前記登録済みのエレベータ呼びの中の乗場呼びに関する情報の表示を維持する表示部を有する
ことを特徴とする乗場表示装置。
【請求項5】
エレベータの乗りかごに設置されたかご内表示装置において、
前記エレベータにおいて、非常時に乗りかごを予め設定された呼戻し階に呼戻す非常呼戻し運転が実行されると、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、前記登録済みのエレベータ呼びの中の乗場呼びに関する情報の表示を維持する表示部を有する
ことを特徴とするかご内表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムおよびこれに利用する乗場表示装置、かご内表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常用エレベータには、火災等の災害発生時に乗りかごを所定の階床に呼戻すための非常呼戻し運転ボタンが設置されている。災害発生時に非常呼戻し運転ボタンが操作されると、その時点で登録されているエレベータ呼びがすべてキャンセルされ、予め設定された階床に乗りかごが呼戻される。このように運転が行われることにより、災害時に救助隊員が迅速にエレベータを使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−154978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非常呼戻し運転ボタンの操作によりエレベータ呼びがすべてキャンセルされると、救助隊員が、乗場呼びが発生している階床を認識することができず、エレベータ乗場で乗りかごを待っている利用者も、自身が行った乗場呼び操作による登録がキャンセルされたことを認識することができず、避難行動の遅れを招く可能性があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、災害発生時に非常呼戻し運転が行われるときに、救助活動や避難行動を迅速に実行させるための支援を行うエレベータシステムおよびこれに利用する乗場表示装置、かご内表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータシステムは、エレベータ制御装置と乗場・かご内表示装置とを備える。エレベータ制御装置は、非常時に、登録されているエレベータ呼びの情報を保持し、登録されているエレベータ呼びをすべてキャンセルして、エレベータの乗りかごを予め設定された呼戻し階に呼戻す非常呼戻し運転を行う。乗場・かご内表示装置は、エレベータ制御装置により非常呼戻し運転が実行され、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、保持された登録済みのエレベータ呼びの情報の中の乗場呼びに関する情報の表示を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1および第2実施形態のエレベータシステムの構成を示す全体図。
【
図2】第1実施形態のエレベータシステムの呼戻し階のエレベータ乗場を示す正面図。
【
図3】第1実施形態によるエレベータシステムの乗場表示装置を示す正面図。
【
図4】第1実施形態によるエレベータシステムの乗りかご内を示す正面図。
【
図5】第1実施形態によるエレベータシステムのかご内表示装置を示す正面図。
【
図6】第1実施形態によるエレベータシステムで利用するエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
【
図7】第1実施形態によるエレベータシステムで利用するエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態によるエレベータシステムの呼戻し階のエレベータ乗場を示す正面図。
【
図9】第2実施形態によるエレベータシステムの乗場位置表示装置を示す正面図。
【
図10】第2実施形態によるエレベータシステムの乗りかご内を示す正面図。
【
図11】第2実施形態によるエレベータシステムのかご内位置表示装置を示す正面図。
【
図12】第2実施形態によるエレベータシステムで利用するエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
【
図13】他の実施形態によるエレベータシステムの呼戻し階のエレベータ乗場を示す正面図。
【
図14】他の実施形態によるエレベータシステムの乗りかご内を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータシステムの構成について、
図1を参照して説明する。
【0009】
本実施形態によるエレベータシステム1Aは、10階建ての建物の昇降路2上部の機械室3に設置された巻き上げ機4にメインロープ5が架け渡され、その両端部にそれぞれ乗りかご6と釣り合いおもり7とがつるべ式に吊り下げられている。また、建物内の1階〜10階の各乗場8−1〜8−10にはそれぞれ、乗場表示装置9−1〜9−10が設置されている。また、機械室3には、巻き上げ機4、乗りかご6、および乗場表示装置9−1〜9−10に接続されたエレベータ制御装置10が設置されている。本実施形態のエレベータシステム1Aにおいては、災害発生時などの避難階として、建物のエントランス階である「1階」が予め設定されている。
【0010】
避難階である1階の乗場8−1の構成について、
図2を参照して説明する。乗場8−1には、乗場ドア81と、乗場表示装置82と、乗場呼び登録ボタン83と、非常呼戻し運転ボタン84とが設置されている。これらの構成のうち、乗場ドア81、乗場表示装置82、および乗場呼び登録ボタン83は、2階〜10階の乗場8−2〜8−10にも設置されているが、非常呼戻し運転ボタン84は、避難階である1階の乗場8−1のみに設置されている。非常呼戻し運転ボタン84は、建物内で火災等の災害が発生した非常時に管理人により操作されると、登録されているエレベータ呼びをすべてキャンセルして乗りかごを避難階に呼戻す非常呼戻し運転を実行させるための、非常呼戻し運転指示情報を出力する。
【0011】
乗場表示装置82は、
図3に示すように、乗りかご6の現在の運転方向を示す矢印を表示する運転方向表示部821と、乗りかご6の現在位置に該当する階床を表示するかご位置情報表示部822と、非常呼戻し運転時に、キャンセルされた乗場呼びの発生階床を示す呼び情報表示部823とを有する。呼び情報表示部823は、1階〜10階の各階床に対応する表示灯を有し、非常呼戻し運転時にキャンセルされた乗場呼び情報に該当する階床の表示灯を点灯状態に維持することで、当該乗場呼びの発生階床を利用者に報知する。
【0012】
また乗りかご6内の構成について、
図4を参照して説明する。乗りかご6は、かごドア61と、かご内表示装置62と、かご内呼び登録ボタン63とが設置されている。
【0013】
かご内表示装置62は、
図5に示すように、乗りかご6の現在の運転方向を示す矢印を表示する運転方向表示部621と、乗りかご6の現在位置に該当する階床を表示するかご位置情報表示部622と、非常呼戻し運転時に、キャンセルされた乗場呼びの発生階床を示す呼び情報表示部623とを有する。呼び情報表示部623は、1階〜10階の各階床に対応する表示灯を有し、非常呼戻し運転時にキャンセルされた乗場呼び情報に該当する階床の表示灯を点灯状態に維持することで、当該乗場呼びの発生階床を利用者に報知する。
【0014】
エレベータ制御装置10の構成について、
図6のブロック図を参照して説明する。エレベータ制御装置10は、呼び登録部11と、運転制御部12と、呼び情報保持部13と、送信部14とを有する。
【0015】
呼び登録部11は、乗場呼び登録ボタン83の操作情報に基づいて乗場呼びを登録し、また、かご内呼び登録ボタン63の操作情報に基づいてかご呼びを登録する。運転制御部12は、通常運転時には呼び登録部11に登録された呼びに応答して巻き上げ機4等のエレベータ機器の動作を制御する。また運転制御部12は、1階の非常呼戻し運転ボタン84から出力された非常呼戻し運転指示情報を取得すると非常呼戻し運転を実行し、現在呼び登録部11に登録されているエレベータ呼び(乗場呼びおよびかご呼び)の情報を呼び情報保持部13に保持させた状態で、登録されているエレベータ呼びをすべてキャンセルし、乗りかご6を避難階である1階に呼戻すように、巻き上げ機4等のエレベータ機器の動作を制御する。呼び情報保持部13は、非常呼戻し運転移行時に、呼び登録部11に登録されているエレベータ呼びの情報を取得し、保持する。送信部14は、呼び情報保持部13に保持されたエレベータ呼びの情報を、乗場表示装置82およびかご内表示装置62に送信する。
【0016】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aにおいて、災害発生時に管理者により非常呼戻し運転ボタン84が操作されたときの動作について説明する。
図7は、本実施形態においてエレベータ制御装置10で実行される処理を示すフローチャートである。
【0017】
通常運転時(S1)には、各階の乗場8−1〜8−10の利用者による乗場呼び登録ボタン83の操作情報に基づいて呼び登録部11に乗場呼びが登録され、また、乗りかご6内の利用者によるかご内呼び登録ボタン63の操作情報に基づいて呼び登録部11にかご呼びが登録される。
【0018】
また通常運転時には、非常呼戻し運転ボタン84の操作による非常呼戻し運転指示情報が取得されたか否かが監視されている(S2)。そして、災害が発生し管理者により1階乗場8−1の非常呼戻し運転ボタン84が操作されると、非常呼戻し運転ボタン84から非常呼戻し運転指示情報が出力され、エレベータ制御装置10の運転制御部12で取得される(S2の「YES」)。
【0019】
非常呼戻し運転指示情報が取得されると、運転制御部12により非常呼戻し運転が実行され、呼び登録部11に登録されているエレベータ呼び(乗場呼びおよびかご呼び)の情報が呼び情報保持部13に保持される。本実施形態においては、非常呼戻し運転指示情報が取得された時点で呼び登録部11には4階で発生した乗場呼び、および6階で発生した乗場呼びが登録されており、これら2つの乗場呼びの情報が呼び情報保持部13に保持されたものとする。また、これらの乗場呼びの情報が呼び情報保持部13に保持されると、運転制御部12により呼び登録部11に登録されている乗場呼びはすべてキャンセルされる(S3)。
【0020】
次に、呼び情報保持部13に保持された情報「4階で発生した乗場呼び」および「6階で発生した乗場呼び」は、各階の乗場表示装置82およびかご内表示装置62に送信される。そして、乗場表示装置82の呼び情報表示部823において該当する4階および6階の表示灯が点灯状態に維持されるとともに、かご内表示装置62の呼び情報表示部623において該当する4階および6階の表示灯が点灯状態に維持される(S4)。
【0021】
また非常呼戻し運転に移行されると、運転制御部12により、乗りかご6を避難階(呼戻し階)である1階に呼戻すように、巻き上げ機4等のエレベータ機器の動作が制御される(S5)。
【0022】
以上の第1実施形態によれば、災害発生時に管理人により非常呼戻し運転ボタンが操作れて非常呼戻し運転が実行され、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、キャンセルされたエレベータ呼びのうち乗場呼びが発生した階床の情報を各階の乗場表示装置およびかご内表示装置に表示させてこれを維持することにより、在館者がいる階を、乗場やかご内にいる救助隊員に報知できるとともに、乗場呼びの登録操作を行った利用者に当該操作がキャンセルされたことを報知できる。
【0023】
上述した第1実施形態においては、非常呼戻し運転時にキャンセルされた乗場呼び情報に該当する階床を、専用の表示灯を点灯させて救助隊員や利用者に報知する場合について説明したが、当該乗場呼び情報に該当する階床を示すテキスト情報や図形情報を乗場表示装置およびかご内表示装置に表示させることで報知するようにしてもよい。
【0024】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータシステムの構成について説明する。本実施形態によるエレベータシステム1Bは、
図8に示すように、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aの乗場表示装置82の呼び情報表示部823に替えて、避難階である1階の乗場8−1の乗場ドア81の上部位置の乗場位置表示装置85に、乗場位置表示部851に対応した呼び情報表示部852が設置されている。
【0025】
また
図9に示すように、乗場位置表示部851は、1階〜10階の各階床に対応する表示灯および上下方向をそれぞれ示す表示灯を有し、乗りかご6の現在の運転方向を示す矢印の表示灯を点灯状態にするとともに、乗りかご6の現在位置に該当する階床の表示灯を点灯状態にすることで、現在の乗りかご6の動作状態を利用者に報知する。
【0026】
呼び情報表示部852は、乗場位置表示部851に対応して1階〜10階の各階床に対応する表示灯を有し、非常呼戻し運転時にキャンセルされた乗場呼に情報に該当する階床の表示灯を点灯状態に維持することで、当該乗場呼びの発生階床を利用者に報知する。
【0027】
また本実施形態によるエレベータシステム1Bは、
図10に示すように、エレベータシステム1Aのかご内表示装置62の呼び情報表示部623に替えて、乗りかご6のかごドア61の上部位置のかご内位置表示装置65に、かご内位置表示部651に対応した呼び情報表示部652が設置されている。
【0028】
また
図11に示すように、かご内位置表示部651は、1階〜10階の各階床に対応する表示灯および上下方向をそれぞれ示す表示灯を有し、乗りかご6の現在の運転方向を示す矢印の表示灯を点灯状態にするとともに、乗りかご6の現在位置に該当する階床の表示灯を点灯状態にすることで、現在の乗りかご6の動作状態を利用者に報知する。
【0029】
呼び情報表示部652は、かご内位置表示部651に対応して1階〜10階の各階床に対応する表示灯を有し、非常呼戻し運転時にキャンセルされた乗場呼に情報に該当する階床の表示灯を点灯状態に維持することで、当該乗場呼びの発生階床を利用者に報知する。
【0030】
また本実施形態においてエレベータ制御装置10の送信部14は、呼び情報保持部13に保持されたエレベータ呼びのうち、乗場呼びに関する情報を、乗場位置表示装置85の呼び情報表示部852およびかご内位置表示装置65の呼び情報表示部652に出力させる。
【0031】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Bにおいて、災害発生時に管理者により非常呼戻し運転ボタン84が操作されたときの動作について説明する。
図12は、本実施形態においてエレベータ制御装置10で実行される処理を示すフローチャートである。
【0032】
図12において、ステップS11〜S13で実行される処理は、第1実施形態において説明したステップS1〜S3で実行される処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
ステップS13において運転制御部12により呼び登録部11に登録されている乗場呼びがすべてキャンセルされると、呼び情報保持部13に保持された情報「4階で発生した乗場呼び」および「6階で発生した乗場呼び」が、乗場位置表示装置85およびかご内位置表示装置65に送信される。そして、乗場位置表示装置85の呼び情報表示部852において該当する4階および6階の表示灯が点灯状態に維持されるとともに、かご内位置表示装置65の呼び情報表示部652において該当する4階および6階の表示灯が点灯状態に維持される(S14)。
【0034】
また非常呼戻し運転に移行されると、運転制御部12により、乗りかご6を避難階(呼戻し階)である1階に呼戻すように、巻き上げ機4等のエレベータ機器の動作が制御される(S15)。
【0035】
以上の第2実施形態によれば、災害発生時に管理人により非常呼戻し運転ボタンが操作れて非常呼戻し運転が実行され、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、キャンセルされたエレベータ呼びのうち乗場呼びが発生した階床の情報を各階の乗場ドア上部の乗場位置表示装置およびかごドア上部のかご内位置表示装置に表示させてこれを維持することにより、在館者がいる階を、乗場やかご内にいる救助隊員に報知できるとともに、乗場呼びの登録操作を行った利用者に当該操作がキャンセルされたことを報知できる。
【0036】
上述した第2実施形態においては乗場位置表示装置を乗場ドアの上部位置に設置し、かご内位置表示装置をかごドアの上部位置に設置した場合について説明したが、この位置には限定されず、例えば乗場呼び登録ボタンの近傍や、かご内呼び登録ボタンの近傍に設置してもよい。
【0037】
また、呼び情報表示部852を設けず、非常呼戻し運転に移行されたときに、キャンセルされたエレベータ呼びのうち乗場呼びが発生した階床に該当する乗場位置表示部851の表示灯を点灯させるようにしてもよい。同様に呼び情報表示部652を設けず、キャンセルされたエレベータ呼びのうち乗場呼びが発生した階床に該当するかご内位置表示部651の表示灯を点灯させるようにしてもよい。このように構成することにより、新たに呼び表示部の表示灯を設置することなく、既存の表示灯を利用して、非常呼戻し運転時に、在館者がいる階を乗場やかご内にいる救助隊員に報知できるとともに、乗場呼びの登録操作を行った利用者に当該操作がキャンセルされたことを報知できる。
【0038】
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態において、非常呼戻し運転が実行された際に、非常呼戻し運転の実行によりキャンセルされた乗場呼びの操作階の乗場表示装置82では、当該乗場呼びがキャンセルされ、一般利用が不可能であることを報知するためのテキスト情報を出力し、それ以外の乗場表示装置82およびかご内表示装置62では、一般利用が不可能であることを報知するためのテキスト情報を出力するとともに、非常呼戻し運転から通常運転に移行された際に、一般利用が可能な状態に戻ったことを報知するためのテキスト情報を出力するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態において、
図13に示すように、各階の乗場8−1〜8−10の乗場表示装置82の近傍に乗場スピーカ86を設置するとともに、
図14に示すように、乗りかご6のかご内表示装置62の近傍にかご内スピーカ66を設置し、非常呼戻し運転が実行された際に、非常呼戻し運転の実行によりキャンセルされた乗場呼びの操作階の乗場スピーカ86では、当該乗場呼びがキャンセルされ、一般利用が不可能であることを報知するための音声情報を出力し、それ以外の乗場スピーカ86およびかご内スピーカ66では、一般利用が不可能であることを報知するための音声情報を出力するとともに、非常呼戻し運転から通常運転に移行された際に、一般利用が可能な状態に戻ったことを報知するための音声情報を出力するようにしてもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1A、1B…エレベータシステム、2…昇降路、3…機械室、4…巻き上げ機、5…メインロープ、8−1〜8−10…乗場、9−1〜9−10…乗場表示装置、10…エレベータ制御装置、11…呼び登録部、12…運転制御部、13…呼び情報保持部、14…送信部、61…かごドア、62…かご内表示装置、63…かご内呼び登録ボタン、65…かご内位置表示装置、66…かご内スピーカ、81…乗場ドア、82…乗場表示装置、83…乗場呼び登録ボタン、84…非常呼戻し運転ボタン、85…乗場位置表示装置、86…乗場スピーカ、621…運転方向表示部、622…かご位置情報表示部、623…呼び情報表示部、651…かご内位置表示部、652…呼び情報表示部、821…運転方向表示部、822…かご位置情報表示部、823…呼び情報表示部、851…乗場位置表示部、852…呼び情報表示部
【要約】
【課題】 災害発生時に非常呼戻し運転が行われるときに、救助活動や避難行動を迅速に実行させるための支援を行うエレベータシステムおよびこれに利用する乗場表示装置、かご内表示装置を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば非常用エレベータシステムは、エレベータ制御装置と乗場表示装置とを備える。エレベータ制御装置は、非常時に、登録されているエレベータ呼びの情報を保持し、登録されているエレベータ呼びをすべてキャンセルして、エレベータの乗りかごを予め設定された呼戻し階に呼戻す非常呼戻し運転を行う。乗場・かご内表示装置は、エレベータ制御装置により非常呼戻し運転が実行され、登録済みのエレベータ呼びがキャンセルされた場合にあっても、保持された登録済みのエレベータ呼びの情報の中の乗場呼びに関する情報の表示を維持する。
【選択図】
図3