特許第5774203号(P5774203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774203硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774203
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150820BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20150820BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20150820BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20150820BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20150820BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150820BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 323/25 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 323/35 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L9/00
   C08L9/02
   C08L9/06
   C08K5/548
   C08K3/36
   C08K5/372
   C07C323/25
   C07C323/35
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-506897(P2014-506897)
(86)(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公表番号】特表2014-512447(P2014-512447A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012057854
(87)【国際公開番号】WO2012146755
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】11164319.3
(32)【優先日】2011年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ヴィーデマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン−ヨーゼフ・ヴァイデンハウプト
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・フェルトヒュース
(72)【発明者】
【氏名】イレーネ・モル
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−17205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C07C 323/25
C07C 323/35
C08K 3/36
C08K 5/372
C08K 5/548
C08L 9/00
C08L 9/02
C08L 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のゴム、硫黄含有アルコキシシラン、架橋剤、充填剤から製造され、且つ、さらなるゴム助剤を含んで製造されるかまたは含まずに製造されるシリカ含有ゴム混合物であって、前記混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.1〜15重量部の、式(I)
【化1】
[式中、
xは0、1、2、3、もしくは4であって、AおよびBは、―CHCHCOOCHもしくは―CHCOOCHであるか、または、
xは1、2、3、もしくは4であって、AおよびBは、
【化2】
である]のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤を含むことを特徴とする、シリカ含有ゴム混合物。
【請求項2】
式(II)
【化3】
[式中、xは2である]
の少なくとも1種の化合物を、前記ポリスルフィド添加剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項3】
式(IIa)
【化4】
[式中、xは2である]
の少なくとも1種の化合物を、前記ポリスルフィド添加剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項4】
式(IIIb)
【化5】
の化合物を、前記ポリスルフィド添加剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項5】
硫黄含有アルコキシシランの量が、ケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の量よりも多いか、または等しいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項6】
少なくとも1種のSBRゴムおよび少なくとも1種のBRゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項7】
少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを、60:40〜90:10のSBR:BRの重量比で含むことを特徴とする、請求項6に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項8】
少なくとも1種のNRゴムも含むことを特徴とする、請求項7に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項9】
少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムと少なくとも1種のNRゴムとを、ゴムを基準にして少なくとも60重量パーセントかつ多くとも85重量パーセントのSBRと、ゴムを基準にして少なくとも10重量パーセントかつ多くとも35重量パーセントのBRと、ゴムを基準にして少なくとも5重量パーセントかつ多くとも20重量パーセントのNRとの比率で含むことを特徴とする、請求項8に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項10】
使用されるゴム100重量部を基準にして、1〜15重量部の1種または複数の硫黄含有アルコキシシランを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項11】
使用されるゴム100重量部を基準にして、0.3〜7重量部の1種または複数のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項12】
前記硫黄含有アルコキシシランを、前記ケイ素フリーのポリスルフィド添加剤に対して、1.5:1〜20:1の重量比で使用することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項13】
前記混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項14】
1種または複数の無機および/または有機の充填剤を含み、前記充填剤の使用量が、使用されるゴム100重量部を基準にして、50〜200重量部の範囲であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項15】
前記充填剤が、酸化物の充填剤およびケイ酸塩の充填剤、ならびにカーボンブラック、またはそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項16】
少なくとも1種の充填剤が、20〜400m/gの比表面積を有する沈降シリカおよび/またはケイ酸塩の群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載のシリカ含有ゴム混合物。
【請求項17】
各種のタイプの加硫物およびゴム成形物を製造するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のゴム混合物をベースとする、各種のタイプの加硫物およびゴム成形物。
【請求項19】
次式
【化6】
のポリスルフィド添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有添加剤を含むシリカ含有ゴム混合物、それらの使用、およびそれらから製造されるゴム加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり抵抗性が低いタイヤを製造するために、多くの解決策が提案されてきた。(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、および(特許文献4)には、シリカ含有ゴム加硫物のための補強性添加剤として、ある種のポリスルフィド系シランが記載されている。しかしながら、それらの文献に記載されているポリスルフィド系シランをシリカ含有ゴム加硫物のための補強性添加剤として使用した場合の欠点は、受容可能な加工性を得ようとすると高価なポリスルフィド系シランを比較的大量に使用する必要があるということ、および硬度が十分でないということである。
【0003】
シリカ含有ゴム混合物の加工性を改良する目的で、さらなる添加物質、たとえば脂肪酸エステル、脂肪酸塩、または鉱油も提案されてきた。上述の添加物質では、流動性が向上するが、それと同時に加硫物の比較的高い伸び(たとえば、100%〜300%)での弾性率が低下するか、またはそうでなければ硬度が低下し、その結果として、充填剤の補強効果が損なわれてしまうという欠点を有している。加硫物の硬度や剛性が不足すると、特にカーブにおけるタイヤの走行性能が不十分なものとなる。
【0004】
添加する補強用フィラーの量を増やせば、加硫物の硬度は上昇するが、混合物の粘度も上がって加工性において不利となり、また可塑化用オイルの量を減らした場合にも同じことがあてはまる。
【0005】
(特許文献5)には、シリカ含有ゴム加硫物のためのポリエーテル添加剤が記載されており、これは前述のような弾性率が低下するという欠点は示さない。しかしながら、当業者は、ショアーA硬度の値を3単位上げようとすると、ゴムを基準にしてそれらを8重量%の量で使用することを必要とする。300%伸びにおける弾性率が低いのが、欠点である。
【0006】
(特許文献6)には、良好な機械的特性を有し、改良されたヒステリシス性能を有する添加剤が記載されている。しかしながら、実施例からは、従来技術である(特許文献1)に記載のビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドと比較して、ショアーA硬度の上昇がほんのわずかであるか、またはまったく無く、その結果ポリマーと充填剤との間の相互作用に何の改良も無いことが明らかである。
【0007】
(特許文献7)ではさらに、SBRにおいて、ビス[−3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドを特定の解重合安定剤と組み合わせて使用しているが、そこでは、300弾性率の値が極めて低くいために、満足のいくものではない。
【0008】
(特許文献8)には、少なくとも1種のジエン系エラストマー、シリカおよびカーボンブラックからなる充填剤、ならびに以下のものから選択されるシリカ−カップリング剤を用いたゴム組成物が記載されている:
(i)テトラチオジプロパノール・ポリスルフィド混合物、または
(ii)テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドと、ビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドとの組合せ。具体的には、テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドの量が、ビス(3−トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドの量よりもはるかに多く、このことは、テトラチオジプロパノール・ポリスルフィドが比較的に高価であるために、コスト的に不利である。さらに、前記混合物は、極めて低い引張強度値を示す。このことから、前記混合物が、(測定されるショアーA値から確認されるように)柔らかすぎて、そのために、タイヤの走行性能が比較的に劣ったものとなり、さらには寿命が短くなると結論づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第A2 255 577号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第A4 435 311号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第A1 0 0670 347号明細書
【特許文献4】米国特許第A4 709 065号明細書
【特許文献5】欧州特許第1 134 253号明細書
【特許文献6】欧州特許第0 489 313号明細書
【特許文献7】欧州特許第1 000 968号明細書
【特許文献8】欧州特許第0 791 622B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ゴム混合物の流動性を損なうことなく、それから製造される加硫物、特にタイヤにおける転がり抵抗性、摩耗性、および濡れ時におけるグリップ性に関する良好な性質を与え、しかも同時に、加硫物の硬度または剛性を顕著に増大させ、その結果タイヤの走行性能に改良を及ぼす可能性がある、特定の添加物質の組合せを含むゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、硫黄含有アルコキシシランとの組合せにおいて、ある種の硫黄含有添加剤が、ゴム混合物の流動性に悪影響を与えることなく、加硫物に対して良好な動的性質および顕著に高い硬度/剛性、ならびに特に低い摩耗性をもたらすことが見出された。
【0012】
その相乗効果は、ポリマーと充填剤との間の改良された相互作用の結果であると考えられる。
【0013】
したがって、本発明は、少なくとも1種のゴム、硫黄含有アルコキシシラン、架橋剤、充填剤、および場合によってはさらなるゴム助剤、およびさらには、少なくとも1種の次式:
【化1】
[式中、xは0、1、2、3、または4であり、
Aは、次式
【化2】
の部分であり、
かつ
Bは次式
【化3】
(式中、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであり、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
〜Rは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであり、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルであり、
y、zは相互に独立して、0、1、または2である)の部分であるか、または
AよびBは相互に独立して、次の部分
【化4】
(式中、RおよびRは、同一であるか、または異なっていて、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、または基−CH−OR、−CH−CH−OR、−NHR、−COR、−COOR、−CHCOORであり、ここでR=水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、またはC〜C−アシルである)の一つである]
のケイ素フリーの硫黄含有添加剤から製造される、ゴム混合物を提供する。
【0014】
式(I)および特許請求の範囲に列記されている式(I)から誘導されるすべての式の、ケイ素フリーの硫黄含有添加剤、ポリスルフィド添加剤、ケイ素フリーのポリスルフィド添加剤、およびケイ素フリーのポリスルフィド添加剤という表現は、同義語として使用される。
【0015】
式(II)の化合物の少なくとも1種をポリスルフィド添加剤として使用するのが好ましい。
【化5】
[式中、
xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2である。]
【0016】
式(IIa)の化合物の少なくとも1種をポリスルフィド添加剤として使用するのが好ましい。
【化6】
[式中、xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2である。]
【0017】
式(III)、(IIIa)、(IIIb)の化合物の少なくとも1種をポリスルフィド添加剤として使用するのが好ましい。
【化7】
[式中、xは、0、1、2、3、または4、特に好ましくは2および0である。]
【0018】
実施例には、その他の好ましいポリスルフィド添加剤を列挙している。
【0019】
本発明におけるシリカ含有ゴム混合物は、少なくとも1種のSBRゴムおよび少なくとも1種のBRゴムを含むのが好ましい。
【0020】
シリカ含有ゴム混合物は、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムとを、(60:40)から(90:10)までのSBR:BRの重量比で含むのが好ましい。
【0021】
好ましくは、シリカ含有ゴム混合物は少なくとも1種のNRゴムをさらに含むこともできる。
【0022】
シリカ含有ゴム混合物は、少なくとも1種のSBRゴムと少なくとも1種のBRゴムと少なくとも1種のNRゴムとを、ゴムを基準にして少なくとも60重量パーセントかつ多くとも85重量パーセントのSBRと、ゴムを基準にして少なくとも10重量パーセントかつ多くとも35重量パーセントのBRと、ゴムを基準にして少なくとも5重量パーセントかつ多くとも20重量パーセントのNRとの比率で含むのが好ましい。
【0023】
本発明におけるゴム混合物および本発明におけるゴム加硫物を製造するためには、天然ゴムに加えて、合成ゴムもまた好適である。好ましい合成ゴムは、たとえばW.Hofmann,Kautschuktechnologie[Rubber technology],Genter−Verlag,Stuttgart,1980に記載されている。
【0024】
とりわけそうした合成ゴムに含まれるのは、以下のものである。
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C〜C−アルキル・コポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエンコポリマー(スチレン含量が、1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のもの)
IIR:イソブチレン/イソプレン・コポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(アクリロニトリル含量が、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%のもの)
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエン・コポリマー
およびそれらのゴムの混合物。
【0025】
シリカ含有ゴム混合物は、式(I)または特許請求の範囲に列記されたとおりの式(I)から誘導されるあらゆる式のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の1種または複数を、使用されるゴム100重量部を基準にして0.3〜7重量部でさらに含むのが好ましい。
【0026】
硫黄含有アルコキシシランの量が、ケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の量に等しいか、それより多いのが好ましい。
【0027】
硫黄含有アルコキシシランを、ケイ素フリーのポリスルフィド添加剤に対して、(1.5:1)から(20:1)まで、特には(5:1)から(15:1)までの重量比で使用するのが好ましい。
【0028】
本発明におけるゴム混合物が、使用されるゴム100重量部を基準にして、0.5〜5重量部のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤を含んでいるのが好ましい。
【0029】
本発明はさらに、本発明におけるゴム混合物から製造することが可能なゴム加硫物も提供する。
【0030】
本発明はさらに、充填剤入りのゴム加硫物を製造するための方法であって、
i)少なくとも1種のゴムを、
ii)ゴム(i)を基準にして、10〜150重量%、好ましくは30〜120重量%の充填剤、および
iii)ゴム(i)を基準にして、0.1〜15重量%、好ましくは0.3〜7重量%のケイ素フリーのポリスルフィド添加剤と混合し、
ここで、その組成物の温度が、少なくとも120℃であり、剪断速度が、1〜1000sec−1、好ましくは1〜100sec−1であり、次いでその混合物を、さらなる加硫用薬品を添加してから、常法により加硫することを特徴とする方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明におけるケイ素フリーのポリスルフィド添加剤は、たとえば硫黄および加硫促進剤と共に、組成物の温度が100〜200℃であり、剪断速度が上述のとおりである混合プロセスの第一の部分で添加するのが好ましいが、後の工程において、より低い温度(40〜100℃)で添加することも可能である。
【0032】
混合プロセスに添加するケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の形態は、純品の形態、あるいは不活性な有機もしくは無機担体の上に吸収させた形態、いずれでも可能である。好ましい担体物質は、シリカ、天然もしくは合成のケイ酸塩、酸化アルミニウム、および/またはカーボンブラックである。
【0033】
本発明の目的のためには、本発明におけるゴム混合物およびゴム加硫物のために使用することが可能なシリカ含有充填剤としては以下の充填剤が挙げられる:
・ 微粒子状シリカ、たとえばケイ酸塩の溶液からの沈殿法によるかまたはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解法によって製造され、5〜1000m/g、好ましくは20〜400m/g(BET表面積)の比表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。そうしたシリカは、場合によってはさらに、他の金属酸化物、たとえばAl、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr,Tiの酸化物と混合された酸化物の形態を取っていてもよい。
・ 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、20〜400m/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。
・ 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ。
・ ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、ストランド)、またはガラスマイクロビーズ。
【0034】
使用することが可能なその他の充填剤は、カーボンブラックである。本発明において使用されるカーボンブラックは、たとえばランプ−ブラックプロセス、ファーネス−ブラックプロセス、またはガス−ブラックプロセスによって製造され、20〜200m/gのBET表面積を有するが、例としては、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、またはGPFカーボンブラックが挙げられる。
【0035】
本発明におけるゴム混合物におけるケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の好適な使用量は、ゴムを基準にして、0.3〜7%である。
【0036】
一つの特に好ましい変形例は、シリカ、カーボンブラック、およびケイ素フリーのポリスルフィド添加剤の組合せからなる。この組合せにおけるシリカ対カーボンブラックの比率は、各種所望の限度内で変化させることが可能である。タイヤ技術を目的とする場合には、シリカ:カーボンブラックの比率が、(20:1)から(1.5:1)までであるのが好ましい。
【0037】
本発明におけるゴム加硫物のために使用することが可能な硫黄含有シランは、好ましくは、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよびそれに対応するジスルファン、ならびに3−トリエトキシシリル−1−プロパンチオールまたはシラン、たとえばSi 363(Evonik(独国)製)またはシランNXTもしくはNXT Z(Momentive(旧GE、米国)製)であるが、ここで、そのアルコキシ残基はメトキシまたはエトキシであり、使用量は、100重量部のゴムを基準とし、それぞれの場合において100%強度活性成分として計算して、2〜20重量部、好ましくは3〜11重量部である。しかしながら、前記硫黄含有シランから作った混合物を使用することもまた可能である。液状の硫黄含有シランを担体の上に吸収させて、計量を容易とし、および/または分散を容易とするように改良することができる(乾燥液体=dry liquid)。活性成分の含量は、乾燥液体100重量部あたり、30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0038】
本発明におけるゴム加硫物は、ゴム工業界では公知のものである、その他のゴム助剤、たとえば反応促進剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、抑制剤、金属酸化物、およびさらにはトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール等の活性剤を含むことも可能である。
【0039】
ゴム助剤の使用量は、慣用される量であって、とりわけ、その加硫物が意図されている目的に依存する。慣用される量は、ゴムを基準にして、0.1〜30重量%である。
【0040】
以下のものが架橋剤として使用される:ペルオキシド、硫黄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛。それらに、公知の加硫促進剤、たとえばメルカプトベンゾチアゾール、−スルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、グアニジン、キサントゲネート、およびチオホスフェートを添加することもまた可能である。硫黄が好ましい。
【0041】
架橋剤および加硫促進剤の使用量は、ゴムを基準にして約0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0042】
先にも説明したように、ゴム混合物に抗酸化剤を添加して、熱および酸素の影響を打ち消すのが有利である。好適なフェノール系抗酸化剤としては、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノール、たとえば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、およびさらには立体障害チオビスフェノールなどが挙げられる。
【0043】
ゴムが着色しても構わないのなら、アミン系抗酸化剤、たとえばジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)の混合物、好ましくはフェニレンジアミンをベースとしたものも使用される。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0044】
その他の抗酸化剤としては、ホスファイト、たとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合させた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。一般的には、フェノール系抗酸化剤と組み合わせた形で、ホスファイトが使用される。ペルオキシド加硫するNBRのタイプでは主として、TMQ、MBI、およびMMBIが使用される。
【0045】
オゾン抵抗性は、当業者には公知の抗酸化剤、たとえばN−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタールを使用することによって、改良することができる。
【0046】
加工助剤は、ゴム粒子の間で作用させ、混合、可塑化、および成形のプロセスの際の摩擦力を打ち消すことを目的としている。本発明におけるゴム混合物の中に存在させることが可能な加工助剤は、プラスチックを加工するために慣用される各種の潤滑剤、たとえば、オイル、パラフィンおよびPEワックス等の炭化水素、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、脂肪酸およびモンタン酸等のカルボン酸、酸化PEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびたとえばエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトール等のアルコールと、酸成分としての長鎖カルボン酸とのカルボン酸エステルである。
【0047】
ゴム混合物は、硫黄加硫促進剤系を用いるだけではなく、ペルオキシドを用いても架橋させることができる。
【0048】
使用することが可能な架橋剤の例としては以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤、たとえばビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシ−3−イン。
【0049】
前記ペルオキシド系架橋剤に加えて、架橋収率を増大させるために使用することが可能なさらなる添加物を使用するのも有利である。それらの好適な例としては以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、Znジアクリレート、Znジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0050】
使用することが可能な、また別の架橋剤は、可溶性もしくは不溶性の形態の元素状硫黄、または硫黄供与体である。
【0051】
使用することが可能な硫黄供与体の例は、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノ−ジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)である。
【0052】
本発明におけるゴム混合物を硫黄−加硫させるためには、架橋収率を向上させるために使用可能なさらなる添加物を使用することもまた可能である。原理的には、しかしながら、架橋のために硫黄または硫黄供与体を単独で使用することもまた可能である。
【0053】
架橋収率を向上させるために使用することが可能な好適な添加物の例は、以下のものである:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、二環状もしくは多環状アミン、グアニジン誘導体、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
【0054】
同様に好適な添加物の例は、以下のものである:ジアンミン亜鉛ジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、さらには環状ジスルファン。
【0055】
本発明におけるゴム混合物においては、硫黄加硫促進剤系が好ましい。
【0056】
燃焼の際の、燃焼性を抑制し、発煙を抑制する目的で、本発明におけるゴム混合物の組成には、難燃化剤を含むこともできる。使用される難燃化剤の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、または炭酸マグネシウム。
【0057】
ゴム加硫物にはさらに、たとえばポリマー性加工助剤または耐衝撃性改良剤として機能する合成ポリマーを含むこともできる。前記合成ポリマーは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C10−アルコールのアルコール成分を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルをベースとする、ホモポリマーおよびコポリマーからなる群より選択される。具体的には、C4〜C8−アルコールの群、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノール、および2−エチルヘキサノールからの同一であるか、または異なっているアルコール残基を有するポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマーなどを挙げることができる。
【0058】
本発明におけるゴム加硫物は、フォームを製造するために使用することができる。そのためには、化学的発泡剤または物理的発泡剤を添加する。使用することが可能な化学的発泡剤は、この目的に関して公知の各種物質、たとえばアゾジカルボンアミド、p−トルオールスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、さらにはこれらの物質を含む混合物である。好適な物理的発泡剤の例は、二酸化炭素またはハロゲン化炭化水素である。
【0059】
加硫プロセスは、場合によっては10〜200barの圧力下で、100〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で実施することができる。
【0060】
ゴムと充填剤およびゴムとケイ素フリーのポリスルフィド混合物のブレンドは、慣用される混合装置、たとえばロール、インターナルミキサー、および混合エクストルーダーで実施することができる。
【0061】
本発明におけるゴム加硫物は、改良された性質を有する成形物を製造するため、たとえばケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベア用ベルト、ロール被覆、タイヤ、靴底、シールリング、および制振要素を製造するためには好適である
【0062】
ゴムの加工において重要な因子は、添加剤を用いて最初に調製されたゴム混合物が、低い流動粘度(ムーニー粘度、ML1+4/100℃)を有していて、加工しやすいということである。多くの用途において、それが意図しているのは、熱に曝露させるゴム混合物に対する(たとえば170℃、t95での)加硫プロセスが、可能な限り迅速に進行して、時間およびエネルギーのコストを抑制することである。
【0063】
スコーチ時間(たとえば、t5)は、成形プロセスに依存するが、比較的長くなるようにしたい。
【0064】
170℃/t95で加熱することによって本発明におけるシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.2未満であり、それと同時にそれのショアーA硬度で23℃で67を超えているのが好ましく、さらに、損失係数tanデルタが60℃で0.17未満であり、それと同時にショアーA硬度が23℃で70を超えていれば、特に好ましい。加硫物の300弾性率の値は、12MPaよりも高く、好ましくは、15MPaよりも高い。
【0065】
170℃/t95で加熱することによってシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.17未満であり、それと同時にそのスコーチ時間が、1000秒よりも長いのが好ましい。
【0066】
170℃/t95で加熱することによってシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物の損失係数tanデルタが、60℃で0.17未満であり、それと同時にその完全加硫時間が、2000秒よりも短いのが好ましい。
【0067】
170℃/t95で加熱することによってシリカ含有ゴム混合物から製造される加硫物のスコーチ時間が1000秒より長く、それと同時にその完全加硫時間が2000秒よりも短いのが好ましい。
【0068】
シリカ含有ゴム混合物の100℃でのML1+4粘度が、150未満、好ましくは100未満、特に好ましくは95未満であるのが好ましい。
【0069】
本発明はさらに、各種のタイプの、加硫物およびゴム成形物を製造するため、特にタイヤおよびタイヤの構成要素を製造するための、本発明におけるシリカ含有ゴム混合物の使用に関する。
【0070】
少なくとも欧州連合が、自動車からの二酸化炭素の放出を制限することに関心を寄せているので、自動車産業では、130g/km以下のCO放出という目標に到達するための経済性に優れた方法を探索している。この場合、低転がり抵抗のタイヤが、本質的に重要である。それらは、フリーホイーリングの際に必要とされる変形のためのエネルギーがより低いので、燃料消費量を削減する。
【0071】
転がり抵抗性の減少が、他の重要な性質を犠牲にして達成されるようなことがないようにするためには、濡れ時におけるグリップ性および回転騒音を同時に改良することが必要となる。濡れ時のグリップおよび転がり抵抗性の第一の指標は、損失係数tanデルタによって与えられる。これは、0℃では可能な限り高く(良好な濡れ時グリップ)、60〜70℃では可能な限り低く(低転がり抵抗性)なるべきである。ゴム加硫物の硬度が、その剛性の第一の指標を与える。
【実施例】
【0072】
実施例1
【化8】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス排出付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラーを備えた、500mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
91.75g=0.75molの3−メルカプトプロピオン酸メチル(Acros製、≧98%)
250mLのシクロヘキサン(p.A.、Merck製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
51.15g=0.375molの二塩化二硫黄(≧99%、Merck製)
【0073】
窒素でフラッシュした装置の中への最初の仕込みとして、乾燥シクロヘキサンおよび3−メルカプトプロピオン酸メチルを使用する。3−メルカプトプロピオン酸メチルが完全に溶解したら、二塩化二硫黄を、窒素シールをしながら5〜10℃の温度で、約1時間以内で滴下により添加する。温度が10℃を超えないように、フィード速度を調節するべきである。
【0074】
反応が終了したら、窒素シール下室温で一晩撹拌を続ける。
【0075】
次いでその反応溶液を、Rotavapor上50℃で回転させながら濃縮してから、真空乾燥オーブン中60℃で、恒量になるまで乾燥させる。
【0076】
収量:108.4g(95.6%)の次の理想式のポリスルフィド混合物
【化9】
【0077】
実施例2
【化10】
装置:
温度計、均圧管つき滴下ロート、ガス排出付属品(バブルカウンター)付き還流冷却器、および配管、スターラー、ガス導入管を備えた、2000mL四ツ口フラスコ
初期仕込み:
118.0g=0.75molのメルカプト安息香酸(Aldrich製、≧99%)
900mLのトルエン(p.A.、Aldrich製、モレキュラーシーブ上で乾燥)
フィード:
57.15g=0.375molの二塩化二硫黄(≧99%、Merck製)
【0078】
窒素でフラッシュした装置の中への最初の仕込みとして、乾燥トルエンおよびメルカプト安息香酸を使用する。次いで、二塩化二硫黄を本発明の懸濁液に、窒素シールをしながら0〜5℃の温度で、約1時間以内で滴下により添加する。温度が5℃を超えないように、フィード速度を調節するべきである。
【0079】
反応が終了したら、窒素シール下室温で一晩撹拌を続ける。
【0080】
その反応溶液を、D4フリットを用いた吸引濾過にかけ、約200mLの乾燥トルエンを用いて2回洗浄する。その反応生成物を、真空乾燥オーブン中で室温(約25℃)で乾燥させる。
【0081】
収量:144.6g(104.1%)の次の理想式のポリスルフィド混合物
【化11】
【0082】
実施例3:
【化12】
【0083】
結果:
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、それによって本発明を限定することは意図されていない。
【0084】
表1に列記した以下のゴム配合を、試験のために選択した。特に断らない限り、すべての数値データは、「100部のゴムあたりの部数」(phr)をベースにしたものである。
【0085】
1.5Lのインターナルミキサー(70rpm)の中で次のゴム混合物を製造した(出発温度:80℃、混合時間:5分間)。硫黄および加硫促進剤は、最終段階でロール上で混合した(温度:50℃)。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
驚くべきことに、表2における結果からもわかるように、すべての実施例で測定された硬度(ショアーA)が、比較例(reference)に比較して、より高かった。この場合、たとえば引張強度、破断時伸び、および300弾性率のような機械的特性は、ほとんど変化がないままであった。試験したすべての加硫物は、比較例(tanデルタ(0℃)>0.35、tanデルタ(60℃)<0.2)に比較すると、比較的良好な濡れ時におけるグリップ性および比較的良好な転がり抵抗性を示しており、摩耗値(<100mm)も同様に極めて有利である。
【0089】
ゴム混合物および加硫物の試験:
ムーニー粘度の測定:
粘度は、ゴム(およびゴム混合物)を加工しているときに、それらによって発揮される抵抗力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計の中で、溝のあるディスクが上下共にサンプル物質で取り囲まれていて、加熱可能なチャンバーの中で、約2回転/分の速度で回転される。この目的のために必要な力を、トルクの形式で測定し、それぞれの粘度に対応させる。その試験片は一般的には、1分間で100℃に予備加熱し、それから4分かけて測定するが、その間温度は一定に保たれる。
【0090】
粘度は、それぞれの試験条件と共に記述するが、一例は、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、大ロータ、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)である。
【0091】
表1に記載されたゴム混合物の粘度は、ムーニー剪断円板式粘度計の手段により測定したものである。
【0092】
スコーチ性能(t5スコーチ時間):
混合物の「スコーチ」性能を測定するために、上述したのと同一の試験を使用することができる。本特許において選択された温度は、130℃である。ロータを回転させて、トルク値が、最小値を過ぎ、その最小値(t5)に対して5ムーニー単位だけ高くなるまで続ける。値が大きくなるほど(ここでの単位:秒)、スコーチが遅い(ここでは高いスコーチ値)。
【0093】
レオメーター(バルカメーター)170℃/t95完全加硫時間:
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)における加硫の進行と、その結果の分析データは、ASTM D5289−95に従い、MDR 2000 Monsantoレオメーター中で測定する。表2は、この試験の結果を照合している。
【0094】
ゴムの95%が架橋された時点を、完全加硫時間として測定する。選択した温度は170℃であった。
【0095】
硬度の測定:
本発明におけるゴム混合物の硬度を測定するために、表1の配合に従って、そのゴム混合物から作った厚み6mmのミルドシートを作製した。そのミルドシートから直径35mmの試験片を切り出し、それらについて、ショアーA硬度値を、デジタルショアー硬度試験器(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm)の手段により測定した。
【0096】
引張試験:
引張試験は、エラストマーの荷重限界を直接求めるのに役立つ。破断した時の長手方向の伸びを初期の長さで割り算すると、破断時伸びが得られる。ある段階の伸び、大抵の場合は50、100、200、および300%に達しさせるのに必要な力も測定し、弾性率(所定の300%の伸びでの引張強度、すなわち300弾性率)として表す。
【0097】
表2に試験結果を示す。
【0098】
動的制動:
動的試験法を使用して、周期的に変動する荷重下でのエラストマーの変形挙動の特性表示をする。外部応力が、ポリマー鎖のコンホメーションを変える。
【0099】
この測定によって、損失係数のtanデルタが、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’との間の比率を使用して間接的に決まる。