特許第5774222号(P5774222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774222
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20150820BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20150820BHJP
   B23Q 1/56 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B23Q1/00 H
   B23Q1/01 H
   B23Q1/00 T
   B23Q1/56 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-522246(P2014-522246)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2012066180
(87)【国際公開番号】WO2014002170
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】眞弓 一矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 聡
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−75926(JP,A)
【文献】 特開平3−166028(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/107508(WO,A1)
【文献】 特開平8−336733(JP,A)
【文献】 特開平9−174359(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第1203877(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
B23Q 1/01
B23Q 1/56
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着した工具とテーブルに取付けたワークとの間で相対移動させ、前記ワークを加工する工作機械において、
基台となり、上面に前記テーブルが設けられたベッドと、
少なくとも3点で床面に対して前記ベッドを支持する支持部材と、
前記ベッドの後面又は側面に床面近傍まで上下方向に設けられた左右一対の上下ガイドに沿って移動する上下移動体と、
前記上下ガイドと平行に前記ベッドの後方の前記支持部材の上方に設けられた少なくとも1本の送りねじ、及び前記送りねじの下端部に連結され前記送りねじを回転駆動する送りモータを有し、前記相対的な移動の1つとして前記上下移動体を移動させる上下駆動手段と、
を具備することを特徴とした工作機械。
【請求項2】
前記支持部材の2つは、前記ベッドの後方左右に設けられ、前記送りねじは、前記左右の支持部材の上方にそれぞれ設けられている請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
主軸に装着した工具とテーブルに取付けたワークとの間で相対移動させ、前記ワークを加工する工作機械において、
基台となり、上面に前記テーブルが設けられたベッドと、
前記ベッドの後面より後方に突出したベッド左右の側壁と、
前記ベッド左右の側壁の2点と、少なくとも前記ベッドの前側中央の1点で床面に対して前記ベッドをそれぞれ支持する支持部材と、
前記ベッドの後面に床面近傍まで上下方向に設けられた左右一対の上下ガイドに沿って移動する上下移動体と、
前記上下ガイドと平行に前記ベッド左右の側壁近傍の内側に設けられた左右一対の送りねじ、及び前記ベッド左右の側壁に設けられたモータブラケットに取付けられ、前記一対の送りねじの下端部をそれぞれ回転駆動する送りモータを有し、前記相対的な移動の1つとして前記上下移動体を移動させる上下駆動手段と、
を具備することを特徴とした工作機械。
【請求項4】
前記上下移動体は、二叉状に下方に延びる一対の脚部を有しており、
前記左右一対の上下ガイドは、前記上下移動体を前記ベッドの後面側に取付けたときに、該上下移動体の二叉状に下方に延びる一対の前記脚部と重なるように配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸に装着した工具とテーブルに取付けたワークとの間で相対移動させ、ワークを加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に工作機械では、主軸とテーブルとをX、Y、Z軸方向に相対的に移動させるため種々の構成のものがある。その構成に応じて、X、Y、Z軸各移動体、ガイド、送り駆動装置や切りくず排出装置等が適切に配置される。
【0003】
特許文献1の工作機械では、基台の後面にX、Y、Z軸方向に移動する各移動体が設けられている。そして、上下移動体をガイドレールに沿って上下方向に移動させる送り機構が基台の上方に配置される。この送り機構は、相互に平行に配置される一対の上下送りねじとしてのボールねじと、これらのボールねじを個別に回転駆動する一対の送りモータとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の工作機械では、基台の正面から後面まで延びる排出穴が基台に形成されることから、送りねじは基台の上方に配置される。基台の上方には上下移動体の移動スペースが確保されなければならないことから、送りモータはボールねじの上端に取付けられなければならない。従って、比較的に重量の大きな送りモータが工具よりも高い位置に配置される結果となり、上下移動体のガイドレールが排出穴より上方に配置されることと合わせて、工作機械の重心は高い位置に設定されてしまう。その結果、工作機械の安定性は損なわれ、また、送りモータが上方に設けられると機械の全高が高くなるばかりではなく、送りモータの支持部に作用する負荷に耐えるため構成要素を剛性高く製作する必要が生じ、機械が大型化する問題がある。
【0006】
特許文献2の工作機械では、基台の正面から後面まで延びる排出穴が基台に形成されることから、送りねじは基台の上方に配置される。基台の上方には上下移動体の移動スペースが確保されなければならないことから、送りモータはボールねじの上端に取付けられなければならない。従って、比較的に重量の大きな送りモータが工具よりも高い位置に配置される結果となり、上下移動体のガイドレールが排出穴より上方に配置されることと合わせて、工作機械の重心は高い位置に設定されてしまう。その結果、工作機械の安定性は損なわれる。
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、従来に比べて低い位置に重心を設定して高い安定性を実現するとともに、剛性の高いコンパクトな工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、
主軸に装着した工具とテーブルに取付けたワークとの間で相対移動させ、前記ワークを加工する工作機械において、
基台となり、上面に前記テーブルが設けられたベッドと、
少なくとも3点で床面に対して前記ベッドを支持する支持部材と、
前記ベッドの後面又は側面に床面近傍まで上下方向に設けられた左右一対の上下ガイドに沿って移動する上下移動体と、
前記上下ガイドと平行に前記ベッドの後方の前記支持部材の上方に設けられた少なくとも1本の送りねじ、及び前記送りねじの下端部に連結され前記送りねじを回転駆動する送りモータを有し、前記相対的な移動の1つとして前記上下移動体を移動させる上下駆動手段と、
を具備する工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上下駆動手段の送りねじをベッドを床面に支持する支持手段の上方に設け、かつ、送りねじの下端部に送りモータを連結したので、送りねじの軸受部品や送りモータのブラケットに作用する下向きの力を支持手段で直接受けることができる。よって、機械剛性が向上する。送りねじと支持手段とが離れていると、高剛性の重いベッドが必要となるが、本発明のこの構成により、ベッドを軽量化しても機械剛性を保つことができる。また、比較的重量の大きい送りモータが機械の下方部位に取付けられることで、機械の重心や全高が下がり、高い安定性が得られる。機械の剛性と安定性の向上によって、送り軸を高速かつ高精度に移動させることが可能になる。更に、機械のコンパクト化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の構造を概略的に示す側面図である。
図2図1の矢視線2−2の方向に見た工作機械の後面図である。
図3図1の工作機械を包囲するスプラッシュガードと共に示す工作機械の外観を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械の構造を概略的に示す側面図であり、図2は、図1の矢視線2−2の方向に見た工作機械の後面図であり、図3は、スプラッシュガードと共に示す工作機械の外観を概略的に示す斜視図である。なお、本明細書では、後述する主軸の先端に装着される工具の先端方向が工作機械の前側とする。
【0012】
本実施形態では工作機械10は、一例としてXYZの直交3軸方向の直線移動軸と、1つの回転送り軸であるB軸とを有した4軸横形のマシニングセンタである。工作機械10の左右方向(図1の紙面に垂直方向)をX軸、上下方向をY軸、前後方向(図1において左右方向)をZ軸と定義する。B軸は、Y軸に平行な鉛直軸線を中心とした回転送り軸である。工作機械10には、4軸横形マシニングセンタに代えて、例えば5軸機や立形マシニングセンタ、フライス盤、放電加工機等が用いられてもよい。
【0013】
工作機械10は、工場等の床面に支持される基台としてのベッド12を備える。ベッド12は中空角柱状のベッド本体13と、ベッド本体13の後面からZ軸方向に後方に突出する左右一対の側壁14とを備える。ベッド12は、支持部材としての高さ調節可能な複数の、本実施形態では3つのレベリングブロックによって支持されている。より詳細には、ベッド12は、ベッド本体13の前側中央部に配置された1つの前レベリングブロック11aと、一対の側壁14の各々の後端部に配置された後レベリングブロック11bとによって支持されている。
【0014】
ベッド本体13の上面にはテーブル15が配置される。テーブル15は、ベッド本体13内に組込まれるB軸サーボモータ15aによって、Y軸に平行に延びる回転軸線回りでB軸方向に回転送りされる。テーブル15上には両面イケール16が固定される。両面イケール16は、ワークWを取付けるための互いに背中合わせに配置された取付面16a、16bを有している。
【0015】
工作機械10は、ベッド本体13の後面においてY軸に沿って上下方向に直線往復移動する上下移動体21を具備している。上下移動体21の上面には、X軸に沿って左右方向に直線往復移動する左右移動体23が取付けられている。左右移動体23にはZ軸に沿って前後方向に直線往復移動する前後移動体24が取付けられている。前後移動体24には、Z軸に平行な回転軸線Oを中心として主軸26を回転可能に支持する主軸頭25が取付けられている。工具27が両面イケール16の一方の取付面に固定されたワークWに向き合うように主軸26の先端に着脱可能に装着される。
【0016】
ベッド本体13の後面には、Y軸方向(鉛直方向)に延びる左右一対の上下ガイドとしてのY軸ガイドレール28が取付けられており、Y軸ガイドレール28の外側には、Y軸方向に延設された一対の上下送りねじとしてのY軸ボールねじ35が取付けられている。また、ベッド本体13の後面にはブラケット31が設けられている。本実施形態では、ブラケット31は、側壁14の内側面から突出するように、側壁14と一体的に形成されている。ブラケット31に上下送りモータとしてのY軸サーボモータ30が取付けられ、また、Y軸ボールねじ35が回転可能に軸受支持されている。ブラケット31には、Y軸方向にブラケット31の上面から下面に貫通する貫通孔32が形成されており、Y軸サーボモータ30は、その出力軸30aが貫通穴32を通して上方に突出するように、ブラケット31の下面に取付けられる。出力軸30aは、カップリング34を介してY軸ボールねじ35の下端に連結されている。Y軸ボールねじ35は、後レベリングブロック11bに可能な限り近づけて配置される。
【0017】
上下移動体21は、Y軸方向に互いに離間し二叉状に下方に延びる左右一対の脚部22を具備している。上下移動体21にはY軸ガイドブロック29が取付けられており、上下移動体21は、Y軸ガイドブロック29を介してY軸ガイドレール28に沿って摺動可能にY軸ガイドレール28に支持される。図2から理解されるように、Y軸ガイドブロック29は、上下移動体21をベッド本体13の後面に取付けたときに、Y軸ガイドレール28が一対の脚部22に重なるように配置されている。より詳細には、上下移動体21には、一対のY軸ガイドレール28の各々に対して上下一対のY軸ガイドブロック29が配設されており、各対のY軸ガイドブロック29において、少なくとも一方のガイドブロックは、一対の脚部22の各々に配置されている。
【0018】
上下移動体21には更にY軸ボールねじ35に係合するナット36が取付けられている。Y軸サーボモータ30が回転すると、該Y軸サーボモータ30の回転方向及び回転量に応じて上下移動体21は上下方向に駆動される。なお、Y軸サーボモータ30及びY軸ボールねじ35は本発明の上下駆動手段を構成する。Y軸ボールねじ35は少なくとも左右いずれか1本あればよい。また、上下移動体21の左右方向の寸法は、ガイドブロック29が収まる最小限の幅があればよく、ナット36の部分だけ左右に突出させて、軽量化を図るのが好ましい。
【0019】
上下移動体21の上面には、X軸方向に延びる一対の左右ガイドとしてのX軸ガイドレール37と、該一対のX軸ガイドレール37の間でX軸方向に延びる左右送りねじとしてのX軸ボールねじ41とが取付けられている。左右移動体23にはX軸ガイドブロック38が取付けられており、左右移動体23は、X軸ガイドブロック38を介してX軸ガイドレール37に沿って左右方向に摺動可能にX軸ガイドレール37に支持されている。また、上下移動体21には左右送りモータとしてのX軸サーボモータ39が取付けられている。X軸サーボモータ39の出力軸(図示せず)はカップリング(図示せず)を介してX軸ボールねじ41に連結される。左右移動体23には更にX軸ボールねじ41に係合するナット42が取付けられており、X軸サーボモータ39が回転すると、該X軸サーボモータ39の回転方向及び回転量に応じて左右移動体23は左右方向に駆動される。なお、X軸サーボモータ39及びX軸ボールねじ41は本発明の左右駆動手段を構成する。
【0020】
左右移動体23の上面には、Z軸方向に延びる左右一対の前後ガイドとしてのZ軸ガイドレール43と、該一対のZ軸ガイドレール43の間でZ軸方向に延びる前後送りねじとしてのZ軸ボールねじ46とが取付けられている。前後移動体24にはZ軸ガイドブロック44が取付けられており、前後移動体24は、Z軸ガイドブロック44を介してZ軸ガイドレール43に沿って前後方向に摺動可能にZ軸ガイドレール43に支持されている。また、左右移動体23には前後送りモータとしてのZ軸サーボモータ45が取付けられている。Z軸サーボモータ45の出力軸(図示せず)はカップリング(図示せず)を介してZ軸ボールねじ46に連結される。前後移動体24には更にZ軸ボールねじ46に係合するナット47が取付けられており、Z軸サーボモータ45が回転すると、該Z軸サーボモータ45の回転方向及び回転量に応じて前後移動体24は前後方向に駆動される。なお、Z軸サーボモータ45及びZ軸ボールねじ46は本発明の前後駆動手段を構成する。
【0021】
主軸頭25内にはビルトインタイプのスピンドルモータ(図示せず)が組込まれている。スピンドルモータにより主軸26及び工具27は回転軸線Oを中心として回転駆動される。左右移動体23、上下移動体21及び前後移動体24のXYZ方向の直線移動によって工具27がワークWに対して相対移動する。この相対移動は、工作機械10に組込まれているNC装置(図示せず)によって制御される。工具27とワークWとの相対移動中に回転する工具27が所定の加工点でワークWに接触する。こうしてワークWが所望の形状に加工される。
【0022】
図1に示すように、ベッド本体13内には上方に開口した空洞51が形成される。空洞51内壁には、テーブル15の下方に配置されるシュータ52が形成されており、ベッド本体13の後面には、切りくず排出口としての開口部13aが形成されている。シュータ52は、ベッド本体13の前から後方へ開口部13aへ向けて低くなる傾斜面及び左右の内壁で下方へ向かう傾斜面から成る。ワークWの加工に際して発生する切りくず及びワークWの加工領域に噴射される加工液は、テーブル15の周囲から空洞51内に落下し、更に、シュータ52に沿って開口部13aへ向けて移動する。
【0023】
切りくず及び加工液を機外へ、つまりベッド本体13の空洞51の外部に排出するための切りくずダクト53がベッド本体13の後面に取付けられる。切りくずダクト53は、ベッド本体13の後面から上下移動体21の脚部22の間を通過して後方へ延びる。切りくずダクト53は、一方の端部において、例えば複数のボルトによって、ベッド本体13の後面に開口部13aを包囲するように取付けられる。切りくずダクト53の他端53bは、切りくず受け56が連結されるようになっている。切りくず受け56は、上方に開口した薄いトレイ状の部材であって、底壁がメッシュ(図示せず)になっている。切りくず受け56の下側には加工液タンク54が配置される。切りくずダクト53は、シュータ52から加工液タンク54に向かうにつれて床面に近づくように下方に傾斜している。こうして、開口部13aから機外へ排出された切りくず及び加工液は、切りくずダクト53によって切りくず受け56へ導かれる。切りくず受け56では、加工液は、切りくず受け56の底壁のメッシュを通じてろ過された後に加工液タンク54に落下し、切りくず受け56の底壁上に切りくずのみが堆積する。切りくず受け56に堆積した切りくずは、オペレーターによって定期的に収集される。
【0024】
加工液タンク54は、切りくずダクト53によってシュータ52から導かれた加工液を貯留する。加工液タンク54にはポンプ55が取付けられている。ポンプ55は、加工液タンク54に貯留された加工液をワークWの加工領域に向かって供給する。加工液タンク54内に更にフィルター(図示せず)を設けて、加工領域への供給に先立って、微細な切りくずを更に濾過するようにしてもよい。こうして加工液は再利用される。
【0025】
工作機械10は、前述のすべての構成要素を収容する内部空間を形成する例えば箱形のスプラッシュガード61を備える。スプラッシュガード61は、工作機械10の正面下方部分、両側部、頂部及び後面を覆う正面パネル62、左右側面パネル63a、63b及び天板パネル64を備えている。工作機械10の正面の上方部分、特に両面イケール16が配置される空間は、スライドドア65、66によって覆われている。スライドドア65、66には矩形の監視窓65a、66aが形成されており、該監視窓65a、66aには透明なガラス板が嵌め込まれる。
【0026】
右側面パネル63bには操作盤68が組込まれており、該操作盤68は前述のNC装置に接続されている。操作盤68には、前述の構成要素の動作状態を表示する表示パネルや種々の入力ボタンが配置される。工作機械10のオペレータは操作盤68を介してNC装置に加工プログラムや、種々の加工パラメータを入力することができる。加工プログラムは、工場内LAN等の通信ネットワークを介して入力するようにしてもよい。
【0027】
既述したように、本実施形態による工作機械10では、上下方向に延設された左右一対のY軸ガイドレール28がベッド本体13の後面において該ベッド本体13の両側部の近傍に配置され、二叉状に下方に延びる一対の脚部22を有した上下移動体21が、左右一対のY軸ガイドレール28沿いに上下方向に移動可能にベッド本体13に取付けられている。上下移動体21を上下方向に駆動する上下駆動手段として、左右一対のY軸ボールねじ35が左右一対のY軸ガイドレール28の近傍に上下方向に平行に設けられ、Y軸ボールねじ35と係合するナット36が上下移動体21に設けられている。左右一対のY軸ガイドレール28は、上下移動体21をベッド本体13の後面に取付けたときに、該上下移動体21の二叉状に下方に延びる左右一対の脚部22と重なるように配置されている。こうした上下移動体21の二叉状の脚部22及びY軸ガイドレール28及びY軸ボールねじ35の配置によって、切りくず及び加工液を機外へ排出するための切りくずダクト53をベッド本体13の後面の左右方向の中央部に配置し、ベッド本体13の後面から上下移動体21の二叉状の脚部22の間を通過して後方へ延設させることが可能となる。これによって、排出口としての開口部13a及び切りくずダクト53の断面積を大きくし、切りくず及び加工液の排出が効率的かつ確実になる。
【0028】
また、本実施形態による工作機械10では、左右一対のY軸ボールねじ35が、ベッド本体13の後面において該ベッド本体13の両側部の近傍に、左右一対のY軸ガイドレール28に平行に設けられ、Y軸ボールねじ35の各々の下端にY軸サーボモータ30が連結される。Y軸サーボモータ30はブラケット31に取付けられており、該ブラケット31は、側壁14の内側面から突出するように、側壁14と一体的に形成されている。側壁14においてブラケット31の近傍、つまりY軸サーボモータ30の近傍には、工作機械10の後方部分を支持する後レベリングブロック11bが配設されている。このように、工作機械10において最も重量の大きな移動体である上下移動体21を上下方向に駆動するY軸ボールねじ35をベッド12の側壁14に配設した後レベリングブロック11bの近傍に配置することによって、工作機械10全体の剛性が高くなり、上下移動体21を高速かつ高精度に上下移動させることが可能となる。
【0029】
更に、Y軸サーボモータ30及びY軸ボールねじ35はベッド本体13の後面に配置され、Y軸サーボモータ30はY軸ボールねじ35の下端に連結される。本実施形態では、Y軸ガイドレール28、Y軸サーボモータ30及びY軸ボールねじ35は主軸頭25よりも下方に配置される。特に、Y軸ガイドレール28は下端が床面近傍まで延びるように配置され、Y軸サーボモータ30は床面に隣接して配置される。その結果、これまで以上に低い位置に工作機械10の重心を設定することができる。そして、上下移動体21を切りくずダクト53をかわすように二叉形状にし、脚部22にガイドブロック29を設けて、上下方向に長いスパンで上下移動体21を上下案内支持させることも寄与して、これまで以上に高い安定性を有する工作機械10を実現することができる。これまで以上に高い安定性を有する工作機械10を実現することができる。こうして工作機械10における加工の精度を向上させることができる。加えて、工作機械10の上端にはY軸サーボモータ30が配置されなくて済むことから、工作機械10の全高を小さくすることができる。
【0030】
なお、一対のY軸ガイドレール28をベッド本体13の後面ではなく、ベッド本体13の後面より後方に突出したベッド左右の側壁14をもたないベッド12の側面後方に上下方向に延設し、上下移動体21をベッド本体13の側面側で上下方向に移動する形態に構成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 工作機械
11a 前レベリングブロック
11b 後レベリングブロック
12 ベッド
13a 開口部
14 側壁
15 テーブル
21 上下移動体
22 脚部
23 左右移動体
24 前後移動体
25 主軸頭
26 主軸
27 工具
28 Y軸ガイドレール
29 Y軸ガイドブロック
30 Y軸サーボモータ
30a 出力軸
31 ブラケット
35 Y軸ボールねじ
36 ナット
37 X軸ガイドレール
43 Z軸ガイドレール
52 シュータ
53 切りくずダクト
54 加工液タンク
56 切りくず受け
図1
図2
図3