【実施例】
【0041】
実施例1〜6、比較例1〜3
実施例および比較例は、
図9に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表1に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例1〜5、比較例1〜3は
図3に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例6は
図4に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で射出成形して、実施例および比較例の
図17に示す複合成形体を得た。
【0042】
図10は、実施例1の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍、700倍、2500倍)である。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図11は、実施例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図12は、実施例3の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図13は、実施例4の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図14は、実施例5の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図15は、実施例6の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図16は、比較例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。照射速度が1000mm/secであることから、接合面の粗面化が十分になされていなかった。
【0043】
<射出成形>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L7):ダイセルポリマー(株)製),ガラス繊維の繊維長:11mm
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
【0044】
〔引張試験〕
実施例および比較例の
図17に示す複合成形体を用い、引張試験を行ってせん断接合強度(S1)を評価した。結果を表1に示す。
引張試験は、金属成形体10側の端部を固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図17に示すX方向(
図1のX方向であり、接合面12に対して平行方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1と比較例1との対比から確認できるとおり、実施例1では1/50の加工時間で、より高い接合強度の複合成形体が得られた。
工業的規模で大量生産することを考慮すれば、加工時間の短縮ができる(即ち、製造に要するエネルギーも低減できる)実施例1の製造方法の工業的価値は非常に大きなものである。
実施例1と実施例2、3との対比から確認できるとおり、実施例2、3のようにレーザー照射の繰り返し回数を増加させることで接合強度を高めることができるが、その場合であっても、比較例1〜3と比べると加工時間を短縮することができた。
実施例1〜3と実施例4〜6との対比から確認できるとおり、実施例4〜6のようにレーザーの照射速度を高めたときにはよりせん断接合強度(S1)(
図1、
図17のX方向への接合強度)を高めることができた。
【0047】
実施例7〜9、比較例4〜6
実施例および比較例は、
図18に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(90mm
2の広さ範囲)に対して、表2に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、
図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図20のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0048】
【表2】
【0049】
表2の実施例7〜9(接合面12の面積90mm
2)は表1の実施例1〜3(接合面12の面積40mm
2)に対応するものであるが、接合面12の面積が2.25倍となっている。
しかし、表2の比較例4〜6との対比から明らかなとおり、本願発明の製造方法を適用することにより、金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12(面積90mm
2)に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)も高くできることが確認できた。
【0050】
実施例10〜15、比較例7〜9
実施例および比較例は、
図21に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表3に示す条件でレーザーを連続照射した。
実施例10〜14、比較例8、9は
図3に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例15は
図4に示すようにレーザー光を連続照射し、比較例7は
図5に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で圧縮成形して、実施例および比較例の複合成形体を得た。
【0051】
<圧縮成形>
金属成形体10を接合面12が上になるように型枠内(テフロン製)に配置し、接合面12上に樹脂ペレットを加えた。その後、型枠を鉄板で挟みこみ、下記条件で圧縮して、
図22に示す複合成形体を得た。
樹脂ペレット:PA66樹脂(2015B,宇部興産(株)製)
温度:285℃
圧力:1MPa(予熱時)、10MPa
時間:2分間(予熱時)、3分間
成形機:東洋精機製作所製圧縮機(mini test press-10)
【0052】
〔引張試験〕
実施例および比較例の複合成形体を用い、引張試験を行って引張り接合強度(S2)を評価した。結果を表3に示す。
引張試験は、次のようにして実施した。
図23に示すように、複合成形体の樹脂成形体20の露出面に対して、アルミニウム板72aとその面に対して垂直方向に固定された引張部73aからなる治具74aを接着剤71aにより固着した。
同様に
図23に示すように、複合成形体の金属成形体10の露出面に対して、アルミニウム板72bとその面に対して垂直方向に固定された固定部73bからなる治具74bを接着剤71bにより固着した。
固定部73bを固定した状態で、下記条件にて引張部73aを引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:テンシロン
引張速度:5mm/min
チャック間距離:16mm
【0053】
〔内部空間の観察方法〕
開口部を有していない内部空間の有無を確認した。以下にその方法を示す。
複合成形体の接合面12を含む接合部において、レーザー照射方向に対して垂直方向(
図6のA-A、B-B、C-C方向)にランダムに3箇所切断し、それぞれの表層部の断面部を走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に3点観察した。
SEM観察写真(500倍)において内部空間の有無を確認できた場合、その個数を数えた。なお、内部空間の最大径が10
μm以下のものは除外した。
内部空間の個数(9箇所での平均値)を示した(表3)。
また、内部空間を微小部X線分析(EDX)で分析し、樹脂が内部空間まで侵入していることを確認した。
SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N
EDX分析装置:アメテック(旧エダックス・ジャパン)社製 Apollo XP
また、
図2のように複合成形体の金属面が曲面の場合には、曲面の接線に対して垂直方向にサンプルを切断することで、同様の測定が可能である。
なお、顕微レーザラマン分光測定装置を用いても樹脂が内部空間まで侵入していることを確認できる。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例10〜15は、金属成形体10を接合面12に対して、それぞれ実施例1〜6と同様にしてレーザー光を連続照射したものであるから、金属成形体10を接合面12の表面は、それぞれ実施例1〜6において示したSEM写真(
図10〜
図15)と同様のものとなる。
【0056】
図24は、実施例10の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図6のA〜Cの断面図)。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図24からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例10の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
【0057】
図25は、実施例11の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図6のA〜Cの断面図)。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図25からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例11の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
【0058】
図26は、実施例12の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(
図6のA〜Cの断面図)。
図26からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例12の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
【0059】
図27は、実施例15の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
金属成形体10には、多数の開放孔30が形成されていることが確認できる。
このため、実施例15の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(
図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
【0060】
実施例16〜18
実施例7〜9(表2)と同様にして、
図18に示す金属成形体(表4に示す金属)の接合面12の全面(90mm
2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、
図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図20のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0061】
実施例19〜21
図21に示す金属成形体(表4に示す金属)の接合面12の全面(40mm
2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザーを連続照射した。
レーザー光は
図3に示すように連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、実施例10〜15と同様に圧縮成形して複合成形体を得た。
引張試験と内部空間の観察方法は、実施例10〜15と同様に実施した。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例16は、表2の実施例7〜9と比べると、繰り返し回数が多いため、加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった(
図28、
図29)。
実施例17(SUS304)は、表2の実施例9(アルミニウム)と比べると、レーザー照射速度を遅くして加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった(
図30)。
実施例18(SUS304,GF入りのPP)は、実施例17(SUS304,GF入りのPA)と比べると、同じ条件であるが、引張り接合強度(S2)は低くなった。
実施例19は、表3の実施例10〜12と比べると、繰り返し回数が多いため、加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった。
実施例20(SUS304)、実施例21(SUS304;
図31)は、表3の実施例13(アルミニウム)と比べると、レーザー照射速度を遅くして繰り返し回数を増加させたため、加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった。
【0064】
実験例1
実施例1と同様にして、アルミニウム表面にレーザー照射したときのエネルギー密度と溝の深さの関係(
図32)、エネルギー密度と溝の幅の関係(
図33)を試験した。
その結果、エネルギー密度が0.3W/μm
2付近において、明確な違いが認められた。
【0065】
実施例22〜35
実施例7〜9(表2)と同様にして、
図18に示す金属成形体(表5に示す金属)の接合面12の全面(90mm
2の広さ範囲)に対して、表5に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、
図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図20のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0066】
【表5】
【0067】
実施例36〜42
実施例7〜9(表2)と同様にして、
図18に示す金属成形体(表6に示す金属)の接合面12の全面(90mm
2の広さ範囲)に対して、表6に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、
図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで
図20のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0068】
【表6】