(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送受信部の前記系統間以外の周囲に設けられ、当該送受信部に対し、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナのうちの最小外径の10分の1以上離れて対向して配置された第2の磁性シートを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送装置の構成を示す模式図である。
共振型電力伝送装置は、一次電源1、送信電源回路2、送受信部3及び受信電源回路4から構成されている。また、送受信部3は、ロータリージョイント又はスリップリング等の回転体(不図示)に設けられ、嵌合配置された送信アンテナ5と受信アンテナ6を有している。そして、共振型電力伝送装置は、多重化電力伝送を行うため、送信電源回路2、送信アンテナ5、受信アンテナ6及び受信電源回路4を各々複数系統有している(
図1の例では3系統設けた場合を示し、各機能部の符号に接尾記号a〜cを付している)。また、送受信部3の系統間には、磁性シート7が設けられている。
【0010】
一次電源1は、直流又は交流の電力を各送信電源回路2へ供給するものである。
送信電源回路2は、一次電源1と送信アンテナ5間に配置され、一次電源1から直流又は交流の電力を入力して、ある単一周波数の交流電力を対となる送信アンテナ5へ供給する機能と、共鳴インピーダンス制御により、対となる送信アンテナ5の共振条件を成立させる機能とを有するものである。この際、共振周波数への同調を行う。
【0011】
送信アンテナ5は、対となる送信電源回路2を介して一次電源1から供給された電力を、受信アンテナ6に伝送するものである。
受信アンテナ6は、対となる送信アンテナ5からの電力を受信するものである。
図1の例では、送信アンテナ5の内側に受信アンテナ6を配置した場合を示しているが、逆に、受信アンテナ6の内側に送信アンテナ5を配置してもよい。この受信アンテナ6により受信された電力は受信電源回路4を介して負荷機器等(不図示)に供給される。
また、送受信部3の電力伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式のいずれであってもよい。
【0012】
受信電源回路4は、受信アンテナ6と負荷機器等間に配置され、入力インピーダンス制御により、対となる受信アンテナ6の共振条件を成立させるものである。この際、共振周波数の同調を行う。
【0013】
磁性シート7は、送受信部3の系統間の相互干渉を低減するものであり、フェライト又はアモルファス等のように透磁率の実部が高く虚部が低い磁性体をシート状に構成したものである。この磁性シート7は、隣接する送受信部3に対し、その送受信部3の送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離れて配置されている(
図1の距離L1)。
図1の例では、磁性シート7が、受信アンテナ6の外径の10分の1以上離して配置されている。また
図1の例では、磁性シート7が、送受信部3を軸方向に対して垂直投影した面を含む面を有している。すなわち、磁性シート7が、系統間において、送受信部3全体をカバーするように構成されている。
【0014】
また、送受信部3からは磁界だけではなく電界も放射される。そこで、この電界が他の系統に漏れることを防ぐため、磁性シート7を2枚のシートから構成し、このシート間に、自由電子を持つ部材(導体)を設けるようにしてもよい。この導体としては、銅及びアルミ等の金属部材、炭素繊維、導電性プラスチック等が挙げられる。また、導体は、例えばシート状、メッシュ状、ループ状等の形状に構成される。
【0015】
また、送受信部3は、隣接する系統の送受信部3に対し、送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の2分の1以上離して配置されている(
図1の距離L2)。
図1の例では、各送受信部3が、受信アンテナ6の外径の2分の1以上離して配置されている。
【0016】
次に、上記のように構成された共振型電力伝送装置の効果について説明する。
まず、送受信部3の系統間に磁性シート7、又は磁性シート7及び導体を配置したことによる効果について、
図2,3を参照しながら説明する。ここでは、
図2に示すように、外側に送信アンテナ5a〜5cをそれぞれ配置し、内側に受信アンテナ6a〜6cをそれぞれ配置した、3系統の送受信部3a〜3cを用いた。また、送信アンテナ5a〜5cと受信アンテナ6a〜6cの外径は
図2(b)に示す通りである。また、送受信部3a〜3cと磁性シート7との距離は
図2(c)に示す通りである。すなわち、
図2に示す磁性シート7は、受信アンテナ6a〜6cの外径の10分の1以上離して配置されている。また、送受信部3の系統間に、磁性シート7だけではなく、磁性シート7及び導体を設ける場合にも同一条件で配置している。なお、ここでは、磁性シート7としてフェライトを用い、導体として銅板を用いた。
【0017】
図2に示す条件で、送受信部3a〜3bの系統間に何も挿入しなかった場合、磁性シート7を配置した場合、磁性シート7及び導体を配置した場合について、各系統での電力伝送効率をシミュレーションした結果を
図3に示す。
図3において、符号301は送受信部3bでの電力伝送効率を示し、符号302は送受信部3a,3cでの電力伝送効率を示している。ここで、両端の送受信部3a,3cは対称に構成されているため、電力伝送効率は等しい。
【0018】
この
図3に示すように、送受信部3a〜3cの系統間に何も挿入しなかった場合には、各系統での電力伝送効率は低く、また、そのバラつきが大きい。ここで、各系統の電力伝送効率のばらつきが大きいということは、系統間での相互干渉が大きいということを意味している。
【0019】
一方、送受信部3a〜3cの系統間に磁性シート7を配置した場合には、送受信部3から放射された磁束がこの磁性シート7に集中し、磁性シート7内を磁気損失なく流れる。その結果、系統間での相互干渉を低減することができる。これにより、各系統での電力伝送効率が向上し、また、そのバラつきが小さくなる。
なお、磁性シート7を送受信部3に対して送信アンテナ5又は受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離す理由は、磁性シート7を送受信部3に近づけすぎると、送受信部3と磁性シート7との干渉が強くなり、損失が生じるからである。
【0020】
また、送受信部3a〜3cの系統間に磁性シート7及び導体を配置した場合には、磁性シート7のみを配置した場合に対し、送受信部3から放射される電界が減少する。その結果、各系統での電力伝送効率がさらに向上し、また、そのバラつきがさらに小さくなる。
【0021】
また、送受信部3の系統間の距離について、
図4を参照しながら説明する。ここでは、
図4(a)に示すように、外側に送信アンテナ5a〜5cを配置し、内側に受信アンテナ6a〜6cを配置した、3系統の送受信部3a〜3cを用いた。なお、送受信部3の系統間には何も挿入していない状態としている。また、送信アンテナ5a〜5cと受信アンテナ6a〜6cの外径は
図2(b)と同一である。この
図4(a)に示す条件で、送受信部3a〜3cの系統間の距離を変化させた場合について、各系統での電力伝送効率をシミュレーションした結果を
図4(b)に示す。
図4(b)において、符号401は送受信部3bでの電力伝送効率を示し、符号402は送受信部3a,3cでの電力伝送効率を示している。ここで、両端の送受信部3a,3cは対称に構成されているため、電力伝送効率は等しい。
【0022】
この
図4(b)に示すように、送受信部3a〜3cの系統間の距離を、最小外径である受信アンテナ6の外径の2分の1以上(
図4の例では18mm以上)離すことで、電力伝送効率が向上する。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、送受信部3の系統間に、送受信部3に対し、送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離れて対向して配置された磁性シート7を備えたので、送信アンテナ5と受信アンテナ6を嵌合配置した送受信部3を複数系統対向して配置し、各々単一周波数の電力を伝送する共振型電力伝送装置において、相互干渉を低減することができる。その結果、複数系統の送受信部3において、独立した高効率な電力伝送が可能となる。
また、磁性シート7を2枚のシートから構成し、この2枚のシートの間に、自由電子を持つ導体を設けることで、さらに高効率な電力伝送が可能となる。
【0024】
なお上記では、磁性シート7が、系統間において、送受信部3全体をカバーするように構成された場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば
図5に示すように、磁性シート7が、受信アンテナ6を軸方向に対して垂直投影した面を含む面を有し、この受信アンテナ6に対向して配置されるようにしてもよい。また、例えば
図6に示すように、磁性シート7が、送信アンテナ5を軸方向に対して垂直投影した面を含む面を有し、この送信アンテナ5に対向して配置されるようにしてもよい。なお
図5,6では、一次電源1、送信電源回路2及び受信電源回路4の図示を省略している。このように、磁性シート7の面積を小さくすることで、特に磁性シート7内に金属板等の導体を設ける場合に、軽量化を図ることができる。
【0025】
実施の形態2.
実施の形態1では、送受信部3の系統間に磁性シート7、又は磁性シート7及び導体を設けることで、系統間の相互干渉を低減する構成について示した。
一方、共振型電力伝送装置では、強度を高める目的で、送受信部3がカバーで覆われる場合がある。このカバーは、樹脂製のもの又は金属製のもの等がある。ここで、カバーが樹脂製の場合には、実施の形態1の構成によって、系統間で独立した高効率な電力伝送を行うことができる。しかしながら、カバーが金属製の場合には、送受信部3からの磁界がこの金属に鎖交して渦電流が発生し、これが電力損失となる。また、この金属によって、送信アンテナ5と受信アンテナ6の共振条件が変化してしまい、高効率な電力伝送ができなくなる。さらに、この金属を介して他の系統との間で相互干渉が生じてしまうため、独立した電力伝送ができなくなる。そこで、実施の形態2では、送受信部3が金属製のカバーで覆われた場合であっても、系統間で独立した高効率な電力伝送を行うことができる構成について説明する。
【0026】
図7はこの発明の実施の形態2に係る共振型電力伝送装置の構成を示す図である。この
図7に示す実施の形態2に係る共振型電力伝送装置は、
図1に示す実施の形態1に係る共振型電力伝送装置に第2の磁性シート8を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以降の
図7〜12では、一次電源1、送信電源回路2及び受信電源回路4の図示を省略している。
【0027】
第2の磁性シート8は、金属製のカバーによる電力損失を低減するものであり、フェライト又はアモルファス等のように透磁率の実部が高く虚部が低い磁性体をシート状に構成したものである。この第2の磁性シート8は、送受信部3の系統間以外の周囲に設けられ、磁性シート7と同様に、当該送受信部3に対し、その送受信部3の送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離れて対向して配置されている。
図7の例では、第2の磁性シート8が、受信アンテナ6の外径の10分の1以上離して配置されている。
【0028】
なお
図7の例では、送受信部3の手前側及び奥側には第2の磁性シート8を設けていないが、
図8に示すように、送受信部3に対し、全ての面を磁性シート7,8で覆うようにしてもよい。また、図では、磁性シート7,8間に隙間がない場合を示しているが、隙間があってもよい。
【0029】
また、磁性シート7の場合と同様に、送受信部3から放射された電界が漏れることを防ぐため、第2の磁性シート8を2枚のシートから構成し、このシート間に、自由電子を持つ部材(導体)を設けるようにしてもよい。この導体としては、銅及びアルミ等の金属部材が挙げられる。また、導体は、例えばシート状、メッシュ状、ループ状等の形状に構成される。
【0030】
このように、送受信部3の系統間以外の周囲に第2の磁性シート8を配置することで、送受信部3からの磁束が金属製のカバーに到達することを回避することができる。よって、送受信部3が金属製のカバーに覆われることによる電力損失は生じない。
【0031】
なお、磁性シート7,8の配置は、
図7,8に示す配置に限るものではなく、例えば
図9〜12のように配置してもよい。また、
図9〜12に示す例では送受信部3の手前側及び奥側に第2の磁性シート8を設けていないが、設けてもよい。
この
図7〜12に示す例の中では、
図9に示す構成にさらに送受信部3の手前側及び奥側にも第2の磁性シート8を配置した場合(送受信部3毎に磁性シート7,8で全ての面を覆った場合)が、電力伝送効率が最も高い。
【0032】
また、
図9に示す配置に対し、
図7,8,10〜12のように、磁性シート7,8の設置数を減らすことで、
図9の場合に対して電力伝送効率は下がるが、部品点数を減らすことができ、軽量化することができる。
また、第2の磁性シート8の配置は、送受信部3から放射された磁束が空間を飛んで隣接する系統の送受信部3に到達するまでの空間距離が長くなるように配置した方がよい。これにより、第2の磁性シート8によって系統間の相互干渉を低減する効果も得られる。
【0033】
以上のように、この実施の形態2によれば、送受信部3の系統間以外の周囲に、送受信部3に対し、送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離れて対向して配置された第2の磁性シート8を備えたので、実施の形態1の効果に加え、送受信部3が金属製のカバーで覆われた場合であっても、系統間で独立した高効率な電力伝送を行うことができる。
【0034】
また、実施の形態1,2の構成において、導体を設ける箇所は適宜設定可能である。例えば、送受信部3を覆うカバーが金属製の場合には、このカバーに対向する箇所には導体を設ける必要はないため、送受信部3の系統間については磁性シート7及び導体を配置し、それ以外の周囲には第2の磁性シート8のみを配置するようにしてもよい。また、送受信部3を覆うカバーが樹脂製の場合であっても、軽量化のため、送受信部3の系統間以外の周囲のうち、一部の箇所は第2の磁性シート8のみとし、残りの箇所は第2の磁性シート8及び導体を配置するようにしてもよい。
【0035】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、磁性シート7を用いて、系統間の相互干渉を低減する構成について示した。この構成に加え、
図13に示すように、送受信部3の磁界位相を系統間で位相を変えることで、系統間の相互干渉をより低減するようにしてもよい。
図13の例では、
図2に示す3系統の送受信部3a〜3cのうち、送受信部3a,3cの磁界位相を実線で示し、送受信部3bの磁界位相を破線で示し、それぞれ180度ずらした場合を示している。
【0036】
なお、実施の形態1〜3では、送信アンテナ5及び受信アンテナ6を各々単一のコイルから構成する場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、各コイルを、各々例えば給電用コイル及び共鳴用コイルから構成してもよく、2個以上のコイルで構成するようにしてもよい。
【0037】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
送信アンテナ5と受信アンテナ6を嵌合配置した送受信部3を複数系統対向して配置し、各々単一周波数の電力を伝送する共振型電力伝送装置であり、系統間に設けられ、送受信部3に対し、送信アンテナ5及び受信アンテナ6のうちの最小外径の10分の1以上離れて対向して配置された磁性シート7を備えた。