特許第5774258号(P5774258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5774258
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】輸液セット用パッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20150820BHJP
   A61J 1/14 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61M5/14 582
   A61J1/00 390Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-521898(P2015-521898)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2015053571
【審査請求日】2015年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】福岡 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川生 剛
(72)【発明者】
【氏名】大澤 一幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 伊万里
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217555(JP,A)
【文献】 特表2003−509163(JP,A)
【文献】 特開2010−18539(JP,A)
【文献】 特開2004−267377(JP,A)
【文献】 実開平3−41454(JP,U)
【文献】 特開平6−105890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61J 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のイラストを一部重なるようにずらし、それぞれ異なる色を付して表示せしめたものである輸液セットを封入するためのパッケージであって、前記複数のイラストが、童謡や歌における歌詞、詩及び物語に登場する要素とその色を、その登場順で絵柄に採用し、各絵柄を最前面から最背面へと一部を重なるようにずらして順に表示せしめたものであることを特徴とする、輸液セットを封入するためのパッケージ。
【請求項2】
前記輸液セットが、瓶針キャップと、該瓶針キャップを装着した瓶針と、該瓶針に一端が接続される輸液チューブと、該輸液チューブを押圧し輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプと、該輸液チューブの他端に接続した分岐管および/または活栓とを1グループとし、点滴静脈注射において使用する瓶針の順番を示すように各グループが異なる色で色分けされて、各グループの構成要素の1以上が色分けされた色にて着色されており、その色順が、前記パッケージに表示せしめた絵柄に採用した色順と一致するものであることを特徴とする、請求項に記載の輸液セットを封入するためのパッケージ。
【請求項3】
前記イラストに、さらに投与順番を示す数字が表示されていることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の輸液セットを封入するためのパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与手順の誤認を生じない輸液セット用パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、治療用医薬を輸液として調合し、静脈内に投与する治療が行われている。治療用医薬として抗癌剤や栄養剤などを用いる輸液は、一般に、必要とされる投与量が多い。また、複数の医薬を組み合わせる場合は各輸液を順に投与しなければならず、総投与量がとても多くなる。一方で、輸液投与が続くことで血中薬剤濃度の急激な上昇が起こると、アナフィラキシーショックや不整脈などの副作用が生じる危険性が高まるため、医師および看護師は、患者の状態を確認しながら慎重に輸液の投与量を調節し続けることが求められている。しかし、注射により量を調節しながら投与することは難しく、投与時間並びに投与回数が増えると、患者の肉体的苦痛が高まり、負担が増す。そこで、患者の静脈内に、輸液を簡便かつ連続的に投与するための手法として、点滴静脈注射が広く採用されている。点滴静脈注射においては、輸液が封入された容器と患者の血管に挿入した点滴針とを接続するための医療器具として、輸液セットが利用されている。
【0003】
輸液セットとしては、従来より、輸液が封入された容器と点滴針との間を軟質チューブで連結し、当該軟質チューブの途中に点滴筒とクレンメを用いた機構とを備えたものが汎用されている。そして、輸液が封入された容器を複数連結できるよう、輸液ルートを分岐させた輸液セットが提案されており、複数の輸液を順次投与し続ける治療に対応させている(特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0004】
また、複数の医薬を輸液にて投与する場合には、投与順序を守るとともに、配合禁忌の溶液の混合を避けるといった、特別な配慮が求められる。患者毎に治療薬の種類や数が異なるため、それに併せて輸液セットを組み換えたものを準備する必要がある。しかし、輸液に用いる容器は、外観が類似していることが多い。そのため、容器に挿す瓶針の順番の取り違えや異なる抗癌剤溶液の輸液ライン中での混合、及び投与順序の間違いなどの事故が生じ易い。
【0005】
そこで、輸液調製時に各容器にラベルを貼付したり注意書きを行う等によって投与手順を明示し、各容器を識別可能とする対応が取られる。また、着色されたプラスチック製成型部材を用いるなどして(特許文献3参照)、医療用具の取り付け間違いを防止する対策も取られていた。
【0006】
一方、輸液セットは、即使用可能な状態で医療現場に供給される必要がある。そこで、製造した輸液セットを予め滅菌した上で、それを滅菌済みの袋状のパッケージ内に封入したものが、提供されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−336601号公報
【特許文献2】特開2003−265622号公報
【特許文献3】特開2004−217769号公報
【特許文献4】特開2014−217555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、瓶針が複数備えられた輸液セットにおける使用手順の誤認によって生ずる、輸液の投与順序の誤りや輸液チューブ内での輸液混合事故の発生を未然に防ぎ、標準的な使用手順を定めることも容易な、新たな輸液セットを封入し提供するためのパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、表面に複数のイラストを一部重なるようにずらし、それぞれ異なる色を付して表示せしめたものであることを特徴とする、輸液セットを封入するためのパッケージである。
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の第2の手段は、前記複数のイラストが、童謡や歌における歌詞、詩及び物語に登場する要素とその色を、その登場順で絵柄に採用し、各絵柄を最前面から最背面へと一部を重なるようにずらして順に表示せしめたものであることを特徴とする、本発明の第1の手段の、輸液セットを封入するためのパッケージである。
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の第3の手段は、前記輸液セットが、瓶針キャップと、該瓶針キャップを装着した瓶針と、該瓶針に一端が接続される輸液チューブと、該輸液チューブを押圧し輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプと、該輸液チューブの他端に接続した分岐管および/または活栓とを1グループとし、点滴静脈注射において使用する瓶針の順番を示すように各グループが異なる色で色分けされて、各グループの構成要素の1以上が色分けされた色にて着色されており、その色順が、前記パッケージに表示せしめた絵柄に採用した色順と一致するものであることを特徴とする、本発明の第1または第2に記載の手段の、輸液セットを封入するためのパッケージである。
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の第4の手段は、前記イラストに、さらに投与順番を示す数字が表示されていることを特徴とする、本発明の第1〜第3のいずれか1に記載の手段の、輸液セットを封入するためのパッケージである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の輸液セットを封入するためのパッケージは、表面に複数のイラストを一部重なるようにずらし、それぞれ異なる色を付して表示せしめたものであり、その色順は、該パッケージに封入する輸液セットにおける瓶針の使用順に合わせて付した各グループの色順と対応させたものとする。これにより、色の順番を、輸液セットの使用手順や輸液の投与順番に連動させ、異なるグルーブの側管ルートの識別を容易できるという効果が得られる。
【0014】
さらに、本発明の輸液セットは、上記色とその順番を、親しみのある童謡の歌詞や詩から採用し、さらに、輸液セットを封入しているパッケージに、上記採用した童謡の歌詞や詩にちなむ、色が塗られた絵柄を重ねたイラストを表示させたものとすることで、より自然にかつ正確に、色の順番すなわち輸液セットの使用手順や輸液の投与順番を認識し、それら親しみのあるものに関連づけて容易に覚えることができるようになり、投与手順の誤認を、より効果的に防止できるようになる。そして、それを目にする患者、看護師並びに医師の緊張をほぐし、治療現場の空気を和ませる心理的効果をも、同時に得ることが可能となる。
【0015】
そして、本発明の輸液セットを提供することで、輸液セットの使用に関する作業手順の標準化が円滑に進み、薬剤師、医師または看護師の誤認などの人的ミスから生じる誤投与などの医療事故を防止する効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の輸液セットを封入するためのパッケージを示した説明図である。(a)は、親しみのある童謡としてチューリップを採用し、パッケージに表示せしめた状態を示す。(b)は、チューリップを、一部重なるようにして、最前面から最背面にかけて、異なる色(最前面を赤、その背面を白、最背面を黄色にした場合の例を示す)。(c)は、さらに、使用する順番を示す数字を、同時に表示させた場合の例を示す。
図2】本発明の輸液セットを封入するためのパッケージに、封入する輸液セットの一例を示した説明図である。チューリップの赤、白、黄色の三色に対応する、3つの異なる側管に繋がるチューブと瓶針を有する輸液セットが示される。
図3】本発明の輸液セットを封入するためのパッケージに、対応する輸液セットを封入することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、適宜図面を参照しつつ以下に説明する。
【0018】
(本発明の輸液セットを封入するためのパッケージ、及び、封入する輸液セットの形状・構成について)
本発明の輸液セットを封入するためのパッケージは、滅菌した輸液セットを封入し、即使用可能な状態に提供できる形態であれば、どのようなもの出会っても良い。製造コストも考慮し、好ましくは、袋状のパッケージが採用される。
【0019】
本発明のパッケージに封入される輸液セットは、部材として、瓶針キャップ2,6と、瓶針2と、輸液チューブ4と、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプ3と、三方活栓5などの活栓または分岐管と、雄コネクタと、点滴筒9と、クレンメ10と、点滴針接続用コネクタと、点滴針接続用コネクタ用キャップと、任意にフィルターバッグ11とを有し、三方活栓5などの活栓または分岐管により、側管を複数有する(図2)。
【0020】
本発明のパッケージに封入するために用いる輸液セットは、輸液チューブが側管側コネクタ5cに接続されている前記三方活栓5などの活栓または分岐管と、該輸液チューブ4、それに繋がるクランプ3、瓶針2および瓶針キャップ6を1グループとして、そのうち1以上を同一色に着色せしめたものとすることができる。さらに、該輸液セットが、側管に瓶針2が接続されている三方活栓5などの活栓または分岐管を複数有するものである場合には、隣接する三方活栓5などの活栓または分岐管に属するグループがそれぞれ異なる色となるように着色せしめたものとすることができる。着色を行う場合には、輸液を投与する順番に合わせて、各グループが異なる色で着色し、識別できるようにする。
【0021】
ところで、定められる単なる色の順番を覚えようとしても、色の種類や順番そのものには深い意味がないために、色の種類や順番を誤認してしまうリスクがあり、看護師や医師においては、特別慎重な配慮が求められる。
【0022】
そこで、誤認するリスクを避けるため、上記各グループを識別するための色とその順番として、多くの人が年少の頃から親しみ知っている童謡の歌詞や詩において登場する色とその順番を採用することが、より好ましい。たとえば、日本で提供するものであれば、童謡のチューリップの歌詞に出てくる「赤、白、黄」という色の種類及び順番を採用し、英語圏で提供するものであれば、マザーグースに由来する、バラは赤い、スミレは青い、お砂糖は甘い、貴方も素敵という詩における「赤、青、白」という色の種類及び順番を採用して、各グループを、使用する順番にて異なる色に着色して識別できるようにする。
【0023】
このように、歌詞や詩などの親しみのあるものに関連付けながら色の種類や順番を覚えることが出来るような構成の彩色を行った輸液セットとすることで、看護師や医師は、標準化された投与手順において定められた単なる色の順番を覚えるよりも、より自然にかつ正確に、色の順番すなわち輸液セットの使用手順や輸液の投与順番を認識し、それら親しみのあるものに関連づけて容易に覚えることが容易となり、投与手順の誤認を、より効果的に防止できるようになる。さらに、多くの看護師や医師が携わる治療現場において、投与手順の誤認を防止するための作業手順の標準化が円滑に進むこととなる。
【0024】
上記の着色にくわえ、さらに任意に、三方活栓、輸液チューブ、クランプ、瓶針、瓶針に装着するためのキャップおよび着色テープのいずれかに、投与順番の番号を表示させたものとし、標準化された投与手順の誤認を、さらにより効果的に防止できるようにしても良い。
【0025】
上記のようにして着色し、任意に投与順番の番号を表示させた輸液セットは、袋などのパッケージ15に封入され、治療現場に提供される。そこで、着色及び投与順番の番号表示による標準化された投与手順の誤認防止効果をよりさらに高めたものとするため、表面に複数のイラストを一部重なるようにずらして表示したパッケージに封入されたものとする(図1(a))。好ましくは、上記イラストは、それぞれ、輸液セットを、輸液セットにおける、輸液チューブが側管側コネクタに接続されている前記三方活栓と、該輸液チューブ、それに繋がるクランプ、瓶針および瓶針に装着するためのキャップからなるグループにおいて着色されている色と同色になるようにし、かつ、使用順番に合わせて、最前面のイラストから最背面のイラストへと順番に着色されたものとなるようにする(図1(b))。より好ましくは、前記着色されたイラストは、投与順番を示す数字が、最前面のイラストから最背面のイラストにかけて昇順にて表示されたものとする(図1(c))。
【0026】
上記パッケージのイラストには、最前面から最背面にかけて、輸液セットを着色する際に参照した親しみのある童謡の歌詞や詩や物語にちなむ絵柄を登場順で採用し、それぞれ彩色したものとすると良い。このようにしてイラストを表示させたパッケージに封入された輸液セットとして提供することにより、看護師や医師は、開封前及び開封後のパッケージを見ただけで、歌詞や詩などの親しみのあるものに関連付けながら覚えた色の種類とその順番、すなわち、投与順番を無理なく、ごく自然に把握することが可能となり、標準化された投与手順の誤認が、より効果的に防止される。さらに、各々の着色されたイラストに、投与順番を示す数字を表示させたものとし、輸液セットにおける各輸液ルートの使用順番を、色に結び付けて確実に認識させ、ヒューマンエラーが発生する可能性を大きく減らすことができる。
【0027】
さらに、上記親しみのある童謡の歌詞や詩にちなむ絵柄などのイラストが表示されたパッケージに封入された輸液セットは、それを目にする患者、看護師並びに医師の緊張をほぐし、治療現場の空気を和ませる心理的効果をも、同時に得ることが可能となる。
【0028】
(素材について)
本発明の輸液セットの部材を形成するために用いる材料は特に限定されないが、輸液セット並びに医療機器の部材において一般的に用いられる材料を使用することができ、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂材料およびステンレス鋼などの金属を用いることができ、輸液チューブには、ポリオレフィン系樹脂などの軟質なチューブ用の材料を用いることができる。抗癌剤など、使用する薬剤の種類によっては、ポリ塩化ビニル(PVC)から可塑剤であるポリエチレンテレフタレート(PEHP)が溶出する場合があるため、本発明の輸液セットの部材を形成するために用いる樹脂材料は、ポリ塩化ビニルは用いないものとし、好ましくは、ナイロンやポリカーボネートを用いるものとする。疎水性フィルターには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ニトロセルロースなどを用いることができ、好ましくは、ポリエチレン(PE)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるものとする。上記の各種樹脂材料は着色されたものを用いることができる。また、ステンレス鋼などの金属は、表面を発色処理したものを用いることができ、その場合は、耐腐食性の高い発色処理がされたものを用いることが好ましい。
【0029】
(製造工程について)
本発明の輸液セットは、各部材を確実に接続し、一体化された輸液セットとなるように製造する。各部材を確実に接続するための方法は特に限定されないが、輸液セットや医療機器を一体化する方法として一般に用いれる方法を用いることができ、たとえば、輸液セットなどの医療機器に一般に使用される接着剤を用いた接着や、熱や超音波などによる融着などの手法を採用することができる。一体化した輸液セットとして提供することにより、接合部が外れる危険性がなくなり、不意の液漏れが生じることによる病室内汚染や機器障害などの医療事故が、より確実に防止されることとなる。
【0030】
さらに、パッケージを開封し取り出し、即プライミング及びバックプライミングの工程を開始することが出来るよう、本発明の輸液セットは予め滅菌されたものとして提供され得る。輸液セットを滅菌する方法は特に限定されないが、輸液セットや医療機器を滅菌する方法として一般に用いられる方法が採用され、例えば、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線照射滅菌、電子線滅菌、放射線滅菌、紫外線照射滅菌、過酸化水素滅菌、エタノール滅菌の方法を用いることができる。そして、製造の容易性やコスト低減を考慮し、該滅菌方法として、好ましくは、エチレンオキサイドガス滅菌、電子線滅菌又はγ線照射滅菌を用いる。電子線滅菌は輸液セットを劣化させない程度にて行い、また、γ線照射滅菌におけるγ線の照射エネルギーは、輸液セットを劣化させない程度にて滅菌することができるよう、5kGy〜30kGy程度の範囲までとすることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の輸液セットを製造し使用した実施例を示す。本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0032】
本発明の輸液セットを構成するための部材として、瓶針の挿入口からキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設して、キャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した瓶針に装着するためのキャップと、瓶針と、主管を軸として回動可能に接続する機構を備えた主管下流側コネクタを有する三方活栓と、雄コネクタと、点滴筒と、クレンメと、点滴針接続用コネクタと、輸液チューブと、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプと、任意にフィルターバッグと、点滴針接続用コネクタの挿入口からキャップ内に挿入された点滴針接続用コネクタの先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設して、キャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した点滴針接続用コネクタに装着するためのキャップとを用意する。
【0033】
本発明の輸液セットの形状・構成についての項、製造工程についての項における記載のようにして、上記各部材を接続し、一体化させた。そして、蓋付きの瓶針に装着するためのキャップと蓋付きの点滴針接続用コネクタに装着するためのキャップとが確実に装着され、各キャップの蓋を開放し、クランプを全て開放モードに設定し、側管側に瓶針が接続された輸液チューブが接続されている三方活栓のコックを、三方向全てが開放モードとなるように設定し、緊急ポートとして使用するための側管側に接続された輸液チューブや瓶針などがない三方活栓のコックを、主管上流及び主管下流が開放モードとなり、側管が閉鎖モードとなるように設定し、さらに、クレンメ3を開放モードに設定して、本発明の輸液セットを製造する。
【0034】
図1のように、チューリップの絵柄で、最前面の花を赤色、それに重なる背面の花を白色、さらにそれに重なる最背面の花を黄色に彩色したイラストを、表面に表示させたパッケージを製造した。
【0035】
また、側管側に輸液チューブを有する三方活栓が3つ有するものとし、側管側の輸液チューブに備えられるクランプを、下から赤色、白色、黄色の順にそれぞれ着色されたものを用いて、図2のような輸液セットを製造した。
【0036】
そして、上記チューリップの絵柄で、最前面の花を赤色、それに重なる背面の花を白色、さらにそれに重なる最背面の花を黄色に彩色したイラストを、表面に表示させたパッケージの中に、製造した輸液セットを滅菌して封入した。
【0037】
上記製造した輸液セットは、側管側のルートを構成する部材の一部に彩色が施されているため、各側管側のルートやその先にある瓶針を一見で識別することが可能であった。
【0038】
さらに、輸液セットを封入した上記のパッケージは、パッケージの表面に描かれたイラストがまず目に入り、最前面に描かれた絵から背面に描かれた絵にかけて、赤、白、黄の順番に彩色が施されていることが、自然に識別された。そして、パッケージを開けた際に、封入されていた輸液セットにおける側管側のルートを構成する部材の一部に、同様の色の彩色が施されていることを、一見して識別することができた。
このように、輸液セットにおける各輸液ルートの使用順番を、色に結び付けて認識できるようになった結果、輸液セットを使用する際の投与手順を把握することが、極めて容易となった。また、パッケージに表示させたイラストに、さらに投与順番を示す数字を組み合わせて表示させたところ、色のみを表示する場合に比べ、輸液セットを使用する際の投与手順の把握が、より容易になった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の手段により、輸液容器に挿す際に、輸液セットに複数備えられた瓶針の、使用する順番を取り違ることにより、輸液の投与順序が誤ったものとなったり、輸液セットにおける輸液ルートの変更時に異なる薬剤を含む輸液が、輸液チューブ内で混合されてしまうなどの、人的ミスに起因する事故の発生を防ぎ、さらに、標準的な使用手順を定めることが容易な、新たな輸液セットを提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 パッケージ
1a イラスト
2 瓶針
3 クランプ
4 輸液チューブ
5 三方活栓
5d コック
6 瓶針キャップ(疎水性フィルター及び蓋有り)
6b 疎水性フィルター
6d 蓋
7 点滴針接続用コネクタ用キャップ
7b 疎水性フィルター
7d 蓋
8 雄コネクタ
9 点滴筒
10 クレンメ
11 フィルターバッグ
【要約】
本発明は、輸液セットを封入するためのパッケージにおいて、童謡や歌における歌詞、詩及び物語に登場する要素とその色を、その登場順で絵柄に採用した複数のイラストを、パッケージの表面に、各絵柄が最前面から最背面へと一部を重なるようにずらして順に表示せしめ、色の種類とその順番、すなわち、投与順番を無理なく、ごく自然に把握することができるようにすることで、輸液セットを使用する際の、投与手順の誤認が、効果的に防止される。また、各々の着色されたイラストに、投与順番を示す数字をさらに表示させたものとし、輸液セットにおける各輸液ルートの使用順番を、色に結び付けて確実に認識させ、ヒューマンエラーが発生する可能性を大きく減らすことができる。
図1
図2
図3