特許第5774295号(P5774295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774295
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20150820BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H03H9/02 D
   H03B5/32 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-267524(P2010-267524)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-119920(P2012-119920A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 文生
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−141770(JP,A)
【文献】 特開2004−357178(JP,A)
【文献】 特開2006−345519(JP,A)
【文献】 特開2010−178114(JP,A)
【文献】 特開2010−259023(JP,A)
【文献】 実開昭50−085170(JP,U)
【文献】 特開2001−102891(JP,A)
【文献】 特開2003−078382(JP,A)
【文献】 特開2010−239342(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
H03B5/30−H03B5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、この基板部の一方の主面に枠部が設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、
前記凹部空間内に露出しつつ基板部の一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延出する2本の振動腕部と、前記2本の振動腕部の間に位置する前記基部の側面より前記振動腕部と同一の方向に延出するバランス用腕部と、を備えた音叉型屈曲水晶振動素子と、
前記凹部空間を気密封止する蓋体と、
前記圧電振動素子搭載パッドに設けられた第一のバンプと、
前記素子搭載部材に設けられた第二のバンプと、を備え、
前記バランス用腕部は、前記バランス用腕部の延出方向の長さが前記振動腕部の延出方向の長さよりも短く形成されており、
前記第二のバンプが、前記バランス用腕部と対向する位置に設けられており、
前記音叉型屈曲水晶振動素子が、前記第二のバンプに前記バランス用腕部が絶縁しつつ接触するように前記凹部空間内に配置されている
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記第二のバンプが金属で設けられており、前記第二のバンプの先端が前記バランス用腕部の電極が設けられていない箇所と接触するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記第二のバンプが、絶縁性樹脂により設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、音叉型屈曲水晶振動素子、蓋体とから主に構成されている。
素子搭載部材は、基板部と枠部で構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に枠部が設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する基板部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられ、音叉型水晶振動素子が搭載される。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
この音叉型屈曲水晶振動素子を囲繞する素子搭載部材の枠部の頂面には金属製の蓋体が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
【0003】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子は、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延びる2本の平板形状の振動腕部とによって構成されている。
これらの基部、振動腕部の表面には、素子搭載部材の圧電振動素子搭載パッドと電気的に接続を取る接続用電極、励振用電極、周波数調整用金属膜が形成されている。
この音叉型屈曲水晶振動素子は、接続用電極を圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤で固着することで片持ち固定されている。このときの振動腕部において、基部と反対側を向く端部が先端部となる(例えば、特許文献1参照)。
また、この先端部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触すると、周波数が変動してしまうため、従来の圧電デバイスでは、前記素子搭載部材の凹部空間内底面の圧電振動素子搭載パッドにバンプが形成されている構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このバンプによって、音叉型屈曲水晶振動素子を支持すると共に梃子の原理が働き、音叉型屈曲水晶振動素子の振動腕部の先端部が凹部空間内底面に接触しないように浮かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252800号公報
【特許文献2】特開2001−102891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電デバイスは、音叉型屈曲水晶振動素子を搭載する際に、音叉型水晶振動素子の振動腕部の先端部が素子搭載部材の凹部空間内に露出した基板部に接触した場合、振動が阻害されるため、圧電デバイスの発振周波数が変動してしまうといった課題があった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、音叉型屈曲水晶振動素子の発振周波数が変動しない圧電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電デバイスは、 基板部と、この基板部の一方の主面に枠部が設けられて、凹部空間が形成された素子搭載部材と、前記凹部空間内に露出しつつ基板部の一方の主面に設けられた2個一対の圧電振動素子搭載パッドに搭載され、基部と、前記基部の側面より同一の方向に延出する2本の振動腕部と、前記2本の振動腕部の間に位置する前記基部の側面より前記振動腕部と同一の方向に延出するバランス用腕部と、を備えた音叉型屈曲水晶振動素子と、前記凹部空間を気密封止する蓋体と、前記圧電振動素子搭載パッドに設けられた第一のバンプと、前記素子搭載部材に設けられた第二のバンプと、を備え、前記バランス用腕部は、前記バランス用腕部の延出方向の長さが前記振動腕部の延出方向の長さよりも短く形成されており、前記第二のバンプが、前記バランス用腕部と対向する位置に設けられており、前記音叉型屈曲水晶振動素子が、前記第二のバンプに前記バランス用腕部が絶縁しつつ接触するように前記凹部空間内に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記第二のバンプが金属で設けられており、前記第二のバンプの先端が前記バランス用腕部の電極が設けられていない箇所と接触するように配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記第二のバンプが、絶縁性樹脂により設けられていることを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電デバイスによれば、圧電振動素子搭載パッドに設けられた第一のバンプと、素子搭載部材に設けられた第二のバンプと、を備え、第二のバンプが、バランス用腕部と対向する位置に設けられていることによって、第一のバンプが音叉型屈曲水晶振動素子の基部と接触し、第二のバンプがバランス用腕部と接触することで、音叉型屈曲水晶振動素子の振動腕部の先端部が素子搭載部材の凹部空間内に露出する基板部に接触するのを低減することができる。これにより本発明の圧電デバイスは、発振周波数の変動を低減することができる。
【0011】
また、前記第二のバンプが金属で設けられており、前記第二のバンプの先端が前記バランス用腕部の電極が設けられていない箇所と接触するように配置されていることによって、2個一対の振動腕部にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを低減することができる。
【0012】
また、前記第二のバンプが、絶縁性樹脂により設けられていることによって、2個一対の振動腕部にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを防ぎつつ、振動腕部が下がるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスを構成する音叉型圧電振動素子を搭載した状態の素子搭載部材を示す平面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスを構成する素子搭載部材を示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの第2のバンプを拡大した部分断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。
【0015】
第1の実施形態は、圧電デバイスの例の1つである圧電振動子について説明する。
図1及び図2に示すように、圧電振動子200は、素子搭載部材210と音叉型屈曲圧電振動素子100と蓋体230で主に構成されている。この圧電振動子200は、前記素子搭載部材210に形成されている第一の凹部空間K1内に音叉型屈曲水晶振動素子100が搭載されている。この第一の凹部空間K1が蓋体230により気密封止された構造となっている。
【0016】
(音叉型水晶振動素子)
図1図3に示すように、音叉型屈曲水晶振動素子100は、水晶片110と、その水晶片110の表面に設けられた励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a及び123bと、周波数調整用金属膜124a及び124bと、導配線パターン125、126とにより概略構成される。
【0017】
図1及び図3(a)に示すように、水晶片110は、基部111と振動腕部112とバランス用腕部113とからなり、振動腕部112が第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとから成る。
基部111は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸回りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。
第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bは、基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。
また、バランス用腕部113は、第一の振動腕部112aと第二の振動腕部112bとの間に位置する基部111の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。
このような水晶片110は、基部111と各振動腕部112とバランス用腕部113が一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィー技術と化学エッチング技術により製造される。
【0018】
水晶片110aは、平板状となる基部111と、この基部111の一辺から同一方向に延出している2本一対の振動腕部112と、前記基部111の一辺から同一方向に延出し、前記2本一対の振動腕部112の間に設けられているバランス用腕部113と、から構成されている。
なお、振動腕部112は、2本一対であることから、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bとして説明する。
【0019】
また、図1に示すように、励振用電極122aは、第一の振動腕部112aの表裏主面に設けられている。また、励振用電極122bは、第一の振動腕部112aの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124aは、第一の振動腕部112aの表主面及び側面の先端部に設けられている。
また、接続用電極123aは、基部111の第一の振動腕部112a側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0020】
図1に示すように、励振用電極121aは、第二の振動腕部112bの表裏主面に設けられている。また、励振用電極121bは、第二の振動腕部112bの対向する両側面に設けられている。
周波数調整用金属膜124bは、第二の振動腕部112bの表主面及び両側面の先端部に設けられている。
接続用電極123bは、基部111の第二の振動腕部112b側であって、基部111の表裏主面に設けられている。
【0021】
なお、音叉型屈曲水晶振動素子100は、周波数調整用金属膜124a及び124bを構成する金属の量を増減させることにより、その振動周波数値を所望する値に調整することができる。
【0022】
図1に示すように、励振用電極121a及び122bと、周波数調整用金属膜124aと接続用電極123aとは、水晶素板110表面に設けられた、例えば導配線パターン125により電気的に接続している。
接続用電極123aは、基部111に設けられている導配線パターン125により励振用電極121aと電気的に接続している。また、接続用電極123aは、励振用電極122bと電気的に接続している。
【0023】
また、図1に示すように、励振用電極121b及び122aと、周波数調整用金属膜124bと接続用電極123bとは、水晶片110表面に設けられた、例えば導配線パターン126により電気的に接続している。
接続用電極123bは、励振用電極121b及び周波数調整用金属膜124bと電気的に接続している。また、基部111の表主面に設けられた導配線パターン126は、励振用電極122a及び励振用電極121bと電気的に接続している。
【0024】
なお、各励振用電極121a、121b、122a及び122bと、接続用電極123a、123bと、周波数調整用金属膜124a、124bと、導配線パターン125、126とは、例えば下地金属としてのCr層と、その下地金属の上に重ねて設けられたAu層とから構成されている。
【0025】
バランス用腕部113は、前記基部111の一辺から同一方向に延出し、前記2本一対の振動腕部112の間に設けられている。
バランス用腕部113は、前記励振用電極121a、121b、122a及び122bを電気的に接続するための中継地点である。また、バランス用腕部113は、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bの位置を均衡にする役割を果たす。
【0026】
この音叉型屈曲水晶振動素子100を振動させる場合、接続用電極123a及び123bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第二の振動腕部112bの励振用電極121bは+(プラス)電位となり、励振用電極121aは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第一の振動腕部112aの励振用電極は、第二の振動腕部112bの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部112a及び第二の振動腕部112bに伸縮現象が生じ、各振動腕部112に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0027】
図1図2に示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、枠部210b(図2参照)とで主に構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に枠部210bが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
前記素子搭載部材210の凹部空間K1を囲繞する枠部210bの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン212が形成されている。
凹部空間K1内で露出した基板部110aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
前記圧電振動素子搭載パッド211の主面には、それぞれに2個一対の第一のバンプBP1が設けられている。
また、前記素子搭載部材210の主面には、第二のバンプBP2が設けられている。
素子搭載部材210の基板部210aの他方の主面の両端には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
基板部210aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられており、所定の圧電振動素子搭載パッド211と外部接続用電極端子Gを接続している。
【0028】
図3に示すように、第一のバンプBP1は、前記圧電振動素子搭載パッド211の主面の所定の範囲で設けられている。
第一のバンプBP1は、音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111の位置になるように設けられている。つまり、第一のバンプBP1が基部111に接触し、第1のバンプBP1を支点にして音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部を浮かせている。
第一のバンプBP1は、圧電振動素子搭載パッド211と同様に、例えば、タングステン(W)等のメタライズにニッケル(Ni)メッキや金(Au)メッキ等を施すことにより設けられている。
図3に示す第一のバンプBP1の縦幅は、例えば100〜200μmであり、第一のバンプBP1の横幅は、例えば200〜300μmである。
【0029】
また、図3に示すように、導電性接着剤DSは、圧電振動素子搭載パッド211の主面に、第一のバンプBP1にかからないように塗布されている。つまり、音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111の位置に導電性接着剤DSは塗布されている。
導電性接着剤DSと第一のバンプBP1との間隔は、例えば100〜200μmである。
このように圧電振動素子搭載パッド211に、導電性接着剤DSが塗布されるので、音叉型屈曲水晶振動素子100を導電性接着剤DS上に搭載しても、導電性接着剤DSの厚みを確保することができる。
導電性接着剤DSの厚みは、第一のバンプBP1の厚みと同じ厚みとなる。つまり、この際の導電性接着剤DSの厚みは、音叉型屈曲水晶振動素子100を搭載した状態で15μm〜30μmである。
【0030】
図3に示すように、第二のバンプBP2は、前記素子搭載部材210の主面で、音叉型屈曲水晶振動素子100のバランス用腕部113の対向する位置に設けられている。つまり、第二のバンプBP2は、音叉型屈曲水晶振動素子100のバランス用腕部113と接触する位置に設けられている。
また、第二のバンプBP2は、前記バランス用腕部113に接触し、音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部を素子搭載部材210の第一の凹部空間K1内に露出する基板部210aに接触するのを防ぐことができる。
第二のバンプBP2は、例えば、タングステン(W)等の金属により設けられている。
また、図4に示すように、第二のバンプBP2が金属で構成されている場合、前記第二のバンプBP2の先端が前記バランス用腕部113の電極が設けられていない箇所と接触するように配置されている。このようにすることで、2個一対の振動腕部112にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを低減することができる。
また、図3に示す第二のバンプBP2の縦幅は、例えば150〜350μmであり、第二のバンプBP2の横幅は、例えば50〜250μmである。
【0031】
なお、第二のバンプBP2は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等により構成されている絶縁性樹脂により設けられていても良い。
このように、第二のバンプBP2が、絶縁性樹脂により設けられていることによって、2個一対の振動腕部112にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを防ぎつつ、振動腕部112が下がるのを防ぐことができる。
【0032】
蓋体230は、図1及び図2に示すように、素子搭載部材210の封止用導体パターン212上に第一の凹部空間K1の開口部を覆うように配置接合される。この蓋体230には、前記封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231が設けられている。
また、このような封止部材231は、前記封止用導体パターン212表面の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。
【0033】
また、前記素子搭載部材210上に配置される蓋体230は、従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に整形することによって製作される。蓋体230の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面に少なくとも封止用導体パターン212に相対する箇所に封止部材231である金錫(Au−Sn)層が形成される。金錫(Au−Sn)層の厚みは、10μm〜40μmである。例えば、成分比率が、金が80%、錫が20%のものが使用されている。
【0034】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0035】
尚、前記素子搭載部材210は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、圧電振動素子搭載パッド211、封止用導体パターン212、外部接続用電極端子G等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔(図示せず)内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0036】
本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイス200によれば、圧電振動素子搭載パッド211に設けられた第一のバンプBP1と、素子搭載部材210に設けられた第二のバンプBP2と、を備え、第二のバンプBP2が、バランス用腕部113と対向する位置に設けられていることによって、第一のバンプBP1が音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111と接触し、第二のバンプBP2がバランス用腕部113と接触することで、音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部が素子搭載部材210の第1の凹部空間K1内に露出する基板部210aに接触するのを低減することができる。これにより本発明の圧電デバイス200は、発振周波数の変動を低減することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、圧電デバイスの一例である圧電発振器で説明する。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイス300は、素子搭載部材310の基板部310aと第2の枠部310cによって設けられた第2の凹部空間K2内に搭載されている集積回路素子340とを備えている点で第1の実施形態と異なる。
【0038】
図5に示すように、本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器300は、素子搭載部材310と音叉型屈曲水晶振動素子100と蓋体230と集積回路素子340で主に構成されている。この圧電発振器300は、前記素子搭載部材310に形成されている第1の凹部空間K1内に音叉型屈曲水晶振動素子100が搭載され、第二の凹部空間K2内には、集積回路素子340が搭載されている。その第一の凹部空間K1が蓋体230により気密封止された構造となっている。
【0039】
集積回路素子340は、図5に示すように、回路形成面に前記音叉型屈曲水晶振動素子100からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子Gを介して圧電発振器300の外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また、集積回路素子340には、可変容量素子に周囲温度に応じた制御電圧を印加して温度変化による発振回路の発振周波数の変動を補償するため、3次関数発生回路及び記憶素子部により温度補償回路部が設けられており、3次関数発生回路には、温度センサが接続されている。
この温度センサは、検出した温度と、温度センサに印加させる電圧値とに基づいて生成される温度データ信号(電圧値)が3次関数発生回路に出力される構成となっている。
集積回路素子340は、素子搭載部材310の第2の凹部空間K2内に露出した基板部310aに形成された集積回路素子搭載パッド314に半田等の導電性接合材を介して搭載されている。
【0040】
図5に示すように、素子搭載部材310は、基板部310aと、枠部310b、310cとで主に構成されている。
この素子搭載部材310は、基板部310aの一方の主面に枠部310bが設けられて、第1の凹部空間K1が形成されている。また、素子搭載部材310の他方の主面に枠部310cが設けられて、第2の凹部空間K2が形成されている。
前記素子搭載部材310の第1の凹部空間K1を囲繞する枠部310bの開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン312が形成されている。
第一の凹部空間K1内で露出しつつ基板部310aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド311が設けられている。
また、図5に示すように素子搭載部材310は、基板部310aの他方の主面と枠部210cによって第二の凹部空間K2が形成されている。
基板部310aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。
第二の凹部空間K2内で露出しつつ基板部310aの他方の主面には、複数の集積回路素子搭載パッド313と2個一対の圧電振動素子測定用パッド(図示せず)が形成されている。
素子搭載部材310の枠部310cの他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
【0041】
第一のバンプBP1は、第1の実施形態と同様に、前記圧電振動素子搭載パッド311の主面の所定の範囲で設けられている。
第一のバンプBP1は、音叉型屈曲水晶振動素子100の基部111の位置になるように設けられている。つまり、第一のバンプBP1が基部111に接触し、これを支点にして音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部を浮かせている。
【0042】
第二のバンプBP2は、前記素子搭載部材310の主面で、音叉型屈曲水晶振動素子100のバランス用腕部113の対向する位置に設けられている。つまり、第二のバンプBP2は、音叉型屈曲水晶振動素子100のバランス用腕部313と接触する位置に設けられている。
また、第二のバンプBP2は、前記バランス用腕部113に接触し、音叉型屈曲水晶振動素子100の振動腕部112の先端部を素子搭載部材310の第一の凹部空間K1内に露出する基板部310aに接触するのを防ぐことができる。
第二のバンプBP2は、第一のバンプBP1と同様に、例えば、タングステン(W)等のメタライズにニッケル(Ni)メッキや金(Au)メッキ等を施すことにより設けられている。
また、第二のバンプBP2が金属で構成されている場合、前記第二のバンプBP2の先端が前記バランス用腕部113の電極が設けられていない箇所と接触するように配置されている。このようにすることで、2個一対の振動腕部112にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを低減することができる。
【0043】
なお、第二のバンプBP2は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等により構成されている絶縁性樹脂により設けられていても良い。
このように、第二のバンプBP2が、絶縁性樹脂により設けられていることによって、2個一対の振動腕部112にそれぞれ設けられている励振用電極同士が短絡することを防ぎつつ、振動腕部112が下がるのを防ぐことができる。
【0044】
また、蓋体230は、第1の実施形態と同様に、素子搭載部材310の封止用導体パターン312上に第一の凹部空間K1の開口部を覆うように配置接合される。この蓋体230には、前記封止用導体パターン312に相対する箇所に封止部材231が設けられている。
導電性接着剤DSは、第1の実施形態と同様に、圧電振動素子搭載パッド311の主面に、第一のバンプBP1にかからないように塗布されている。つまり、音叉型屈曲水晶振動素子100の第1の基部321aの位置に導電性接着剤DSは塗布されている。
【0045】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【符号の説明】
【0046】
100・・・音叉型屈曲水晶振動素子
110・・・水晶素板
111・・・基部
112a、112b・・・振動腕部
113・・・バランス用腕部
121a、121b、122a、122b・・・励振用電極
123a、123b・・・接続用電極
124a、124b・・・周波数調整用電極
210、310・・・素子搭載部材
210a、310a・・・基板部
210b、310b・・・枠部
211、311・・・圧電振動素子搭載パッド
212、312・・・封止用導体パターン
313・・・集積回路素子搭載パッド
230・・・蓋体
350・・・集積回路素子
200、300・・・圧電デバイス
K1・・・第1の凹部空間(凹部空間)
K2・・・第2の凹部空間
G・・・外部接続用電極端子
BP1・・・第一のバンプ
BP2・・・第二のバンプ
DS・・・導電性接着剤
図1
図2
図3
図4
図5