【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
「評価方法」
実施例における評価方法は以下の通りである。
(i)X線回折(XRD)測定
試料の結晶相を同定するために、以下の装置及び条件にてXRD測定を行った。
測定装置:RINT,XRD−610D(株式会社リガク製)
線源:CuKα
管電圧:40kV
管電流:30mA
【0044】
(ii)輝度測定
(a)蛍光測定
暗室にて、試料と輝度計(コニカミノルタ社製、品番:LS−100)の距離を約3cmに合わせたのちに、試料にブラックライト(10W)を照射して輝度(L値)[単位:cdm
−2]を記録した。
(b)蓄光測定
暗室にて、試料と輝度計(コニカミノルタ社製、品番:LS−100)の距離を約3cmに合わせたのちに、ブラックライト(10W)を照射した。
蓄光の経時変化は、ブラックライト(10W)を5分間照射して輝度が一定になったことを確認した後に、ブラックライトを遮断して、輝度(L値)が0cdm
−2になるまでの経時変化を評価した。
【0045】
(iii)発光スペクトル測定
試料が発光する蛍光または蓄光の発光スペクトルを評価するために、発光スペクトル測定を以下の条件で行った。
測定装置:USB4000(オプトシリウス株式会社)
波長測定範囲:400〜650nm
【0046】
1.蓄光性蛍光体の合成
試料1
Ca:Sr=1:0(モル比)である蓄光性蛍光体(試料1)は以下の手順で合成した。
まず、CaCO
3(48モル%)、Al
2O
3(48モル%)、Eu
2O
3(2モル%)、Nd
2O
3(2モル%)の粉末をそれぞれ秤量し、適量のエタノールを加え、ボールミルを均一になるまで0.5時間、混合した。次いで、混合した粉体を、10%H
2,90%N
2からなる還元雰囲気下、1300℃、4時間加熱保持した後に、得られた焼結体を粉砕することにより試料1を得た。仕込み組成を表1に示す。
【0047】
試料2
Ca:Sr=0.75:0.25(モル比)である蓄光性蛍光体(試料2)は以下の手順で合成した。
まず、CaCO
3(36モル%)、SrCO
3(12モル%)、Al
2O
3(48モル%)、Eu
2O
3(2モル%)、Nd
2O
3(2モル%)の粉末をそれぞれ秤量し、適量のエタノールを加え、ボールミルを均一になるまで混合した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料2を得た。仕込み組成を表1に示す。
【0048】
試料3
Ca:Sr=0.6:0.4(モル比)である蓄光性蛍光体(試料3)は以下の手順で合成した。
まず、CaCO
3(28.8モル%)、SrCO
3(19.2モル%)、Al
2O
3(48モル%)、Eu
2O
3(2モル%)、Nd
2O
3(2モル%)の粉末をそれぞれ秤量し、適量のエタノールを加え、ボールミルを均一になるまで混合した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料3を得た。仕込み組成を表1に示す。
【0049】
試料4
Ca:Sr=0.5:0.5(モル比)である蓄光性蛍光体(試料4)は以下の手順で合成した。
まず、CaCO
3(24モル%)、SrCO
3(24モル%)、Al
2O
3(48モル%)、Eu
2O
3(2モル%)、Nd
2O
3(2モル%)の粉末をそれぞれ秤量し、適量のエタノールを加え、ボールミルを均一になるまで混合した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料4を得た。仕込み組成を表1に示す。
【0050】
試料5
Ca:Sr=0.25:0.75(モル比)である蓄光性蛍光体(試料5)は以下の手順で合成した。
まず、CaCO
3(12モル%)、SrCO
3(36モル%)、Al
2O
3(48モル%)、Eu
2O
3(2モル%)、Nd
2O
3(2モル%)の粉末をそれぞれ秤量し、適量のエタノールを加え、ボールミルを均一になるまで混合した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料5の蓄光性蛍光体を得た。仕込み組成を表1に示す。
【0051】
試料6
上記試料3の合成方法において、試料3の原料粉末合計を97モル%とし、Ag
2O粉末をAg原子換算で3モル%(母体結晶1モルに対し)として、各原料粉末した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料6の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0052】
試料7
上記試料3の合成方法において、試料3の原料粉末合計を97モル%とし、Ag
2O粉末をAg原子換算で5モル%(母体結晶1モルに対し)として、各原料粉末した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料7の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0053】
試料8
上記試料3の合成方法において、試料3の原料粉末合計を97モル%とし、Ag
2O粉末をAg原子換算で8モル%(母体結晶1モルに対し)として、各原料粉末した。次いで、混合した粉体を、試料1と同じ条件で加熱保持、粉砕を行うことにより、試料8の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0054】
試料9
上記試料8の合成方法において、加熱保持時間を5時間とした以外は、試料8の合成方法と同様にして、試料9の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0055】
試料10
上記試料8の合成方法において、加熱保持時間を8時間とした以外は、試料8の合成方法と同様にして、試料10の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0056】
試料11
上記試料8の合成方法において、加熱保持時間を12時間とした以外は、試料8の合成方法と同様にして、試料11の蓄光性蛍光体を得た。表2にCa:Sr原子比、Ag添加量、加熱保持条件を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
2.評価
(1)Ca、Sr仕込み比と発光の関係の評価
図1に試料1〜5のXRD測定の結果を示す。また、
図2,3に試料1〜5の発光スペクトルを示す。また、表3に目視での蛍光及び蓄光の色評価の結果を示す。
【0060】
【表3】
【0061】
原料粉末にSrCO
3を含まない試料1では、XRDにおいてCaAl
2O
4の結晶相及び副生成物である(Eu,Nd)Al
3O
7のシグナルが確認された。また、試料1では、蛍光スペクトルとして、450nm付近(青色領域)にシグナルが確認された。このシグナルは、CaAl
2O
4:Euに由来する。また、目視よる評価にて、試料1の蛍光は青色であり、発光スペクトルの結果と整合していた。
原料粉末にSrCO
3を含む試料2〜5におけるXRDの結果を対比すると、
図1に示すように試料3,4では、CaAl
2O
4、SrAl
2O
4、Ca(Eu,Nd)AlO
4の3種類の結晶相のシグナルが確認されたが、試料2では、CaAl
2O
4とCa(Eu,Nd)AlO
4の2相のみであり、試料5では、SrAl
2O
4とCa(Eu,Nd)AlO
4の2相のみであった。
【0062】
また、試料2〜5における発光特性の結果を対比すると、
図3に示すように、試料3,4では、蛍光スペクトルとして、CaAl
2O
4:Euに由来する450nm付近(青色領域)のシグナルと、SrAl
2O
4:Euに由来する550〜570nm付近(黄緑色領域)のシグナルとが確認された。目視による観察では、試料3は蓄光において白色発光、試料4では蛍光において白色発光が確認された。
SrAl
2O
4結晶相を含まない試料2では、試料1と同様に450nm付近(青色領域)のシグナルのみが観察され、蛍光、蓄光ともに白色発光しなかった。一方、CaAl
2O
4結晶相を含まない試料5では550〜570nm付近(黄緑色領域)のシグナルのみが観察され、蛍光、蓄光ともに白色発光しなかった。
【0063】
以上の結果より、得られた試料が、白色蛍光あるいは白色蓄光を示すためには、XRDにおいてCaAl
2O
4、SrAl
2O
4、Ca(Eu,Nd)AlO
4の3種類の結晶を含むことが必要であることが示唆された。
【0064】
2.Agの添加による蛍光及び蓄光特性の変化
Ca:Sr原子比を0.6:0.4に固定し、Agの添加による蛍光及び蓄光特性の変化を評価した。
【0065】
試料3,6〜8のXRD測定の結果を
図4に示す。
Ag添加の試料6〜8のXRDにおいて確認されるシグナルは、Ag未添加の試料3と同じであった。このことから、添加されたAgは、CaAl
2O
4、SrAl
2O
4、Ca(Eu,Nd)AlO
4の結晶に固溶していることが示唆された。
【0066】
図5に試料3,6〜8の発光スペクトルを示す。
Ag未添加の試料3と同様に試料6〜8にも450nm付近(青色領域)の最大ピークと550〜570nm付近(黄緑色領域)にピークが確認された。発光強度は、Ag未添加の試料3が最も高かった。
【0067】
また、
図6〜9に試料3,6〜8の蛍光及び蓄光の色度測定の結果を示す。これらの色度測定の結果は、XYZ(Yxy表示系)によるものであり、CIE標準表色系として各表色系の基礎となっているものである。図中において、xyは色度であり、無彩色(白)は色度図の中心にあり、彩度は周辺になるほど高くなる。
また、表4に目視及び色度測定での蛍光及び蓄光の色評価の結果を示し、表5に試料3,6,8の蛍光輝度を示す。なお、表5において、蛍光輝度は、ブラックライト照射3秒後の輝度である。
また、表6に試料3,試料6及び試料8の蓄光の経時変化を示す。蓄光輝度はブラックライトを遮断した直後を0秒として測定した。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
まず、蛍光色及び強度を対比すると、
図6〜9に示されるように、色度測定による、試料3,6〜8の蛍光の色度は、青白の領域であり、蛍光輝度が最大となったのはAg未添加3の試料であった。この結果は発光スペクトル測定結果と一致する。
一方で、Agを添加することによって蓄光輝度が増加していることが分かる。なお、ブラックライトを遮断した直後(0秒)は、蛍光も同時に測定しているため、見かけ上輝度が大きいものと考えられる。
Agの添加による蓄光強度が増大する原因については詳細不明であるが、Agが固溶することにより、CaAl
2O
4結晶、SrAl
2O
4結晶へのNd
3+の固溶量が多くなることが推測される。Agが添加された試料6,試料8の残光時間は、Ag未添加の試料3より明らかに長いことから、Agを添加することにより、蓄光性蛍光体の蓄光特性が向上することが明らかになった。特に8モル%Ag添加の試料8では、残光時間が30秒以上であった。
【0072】
3.蛍光及び蓄光特性の加熱保持時間依存性の評価
Ca:Sr原子比を0.6:0.4、Agの添加量を8モル%に固定して、蛍光及び蓄光特性の加熱保持時間依存性を評価した。
【0073】
試料8〜11のXRD測定の結果を
図10に示す。
加熱保持時間5hの試料9は、加熱保持時間が4hの試料8と同じ生成相を示したが、CaAl
2O
4結晶のピーク強度が試料8よりも若干低くなっていた。
さらに保持時間を長くした試料10(8h加熱)や試料10(12h加熱)では、今までの結果とは大きく異なり、SrAl
2O
4結晶の生成割合が増加した。
また、加熱保持時間が増加するに伴い、強度比の比較より、Ca(Eu,Nd)AlO
4の強度が減少することが確認された。
【0074】
図11に試料8〜11の発光スペクトルを示す。表7に試料8〜11の目視及び色度測定での蛍光及び蓄光の色評価の結果を示す。
また、表8に試料8〜11の蛍光輝度及び蓄光輝度を示す。なお、蛍光輝度は、ブラックライト照射3秒後の輝度であり、蓄光輝度はブラックライトを遮断して5秒後の輝度である。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
保持時間がそれぞれ4hと5hである試料8,試料9を比較したが、蛍光色には大きな違いは見られず、どちらとも青白色の蛍光発光を示した。また、目視で確認する限り発光強度にも違いはなかったが、輝度測定では若干試料9の方が小さかった。
一方、保持時間がそれぞれ8hと12hである試料10,試料11の蛍光色は、SrAl
2O
4結晶由来の黄白色を示し、XRDの結果と一致した。
一方で、蓄光色は、試料8,試料9では目視、色度測定とも白色であったに対し、試料10,試料11では白色ではなかった。