(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート、及びセラミックグリーンシート積層体、並びに、セラミックグリーンシートの製造方法、及びセラミックグリーンシート積層体の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係るセラミックグリーンシート、及びセラミックグリーンシート積層体の製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセラミックグリーンシートを複数(この例では、9枚)積層・圧着してなるセラミックグリーンシート積層体全体の斜視図である。この積層体は、縦・横・高さが数mm程度である微小な直方体を呈していて、その内部には、連続する螺旋形状を有する導体の前駆体からなる成形体が形成されている(濃いドット部分を参照)。このセラミックグリーンシート積層体を焼成してセラミックシート積層体(焼結体)が形成される際、この螺旋形状を有する成形体(導体の前駆体)は、同形の導体となる。この螺旋形状を有する導体は、微小なコイル(インダクタ、積層インダクタ)やアンテナ等として機能し得る。従って、この導体を内蔵するセラミックシート積層体(焼結体)、又は、その加工品は、例えば、携帯電話等に内蔵される電気的部品として使用され得る。
図1に示したセラミックグリーン積層体は、平面図(上面図)である
図2に示した直方体で同形の厚さが均一の薄平板状の9枚のセラミックグリーンシートZa〜Ziが、Zaから順に上方に積層・圧着されることで得られる。セラミックグリーンシートZa〜Ziは、後述するように、セラミック粉体、分散媒、及びゲル化剤を含むセラミックスラリーが薄平板状に成形・固化されて形成されている。以下、セラミックグリーンシートを単に「シート」と称呼することもある。
シートZa〜Ziの各々には、平面視にて
図2に示す形状を有する成形体(濃いドット部分を参照)がそれぞれ部分的に含まれている。各成形体は、後述するように、前記セラミックスラリーとは異なる成分からなるペーストが成形・固化してなる導体の前駆体から構成されている。各成形体におけるシート平面に平行な断面形状は、シートの厚さ方向のどの位置においても
図2に示す形状と同じ形状を有する。各成形体は、対応するシートの両面(上下面)の各々の一部において、
図2に示す形状と同じ形状をもってそれぞれ露呈している。
シートZa〜Ziに含まれる成形体の形状は、シートZa〜ZiがZaから順に上方に積層されていくことで、隣接する2枚のシートの全ての組み合わせについて、各シートに含まれる成形体における相手側のシートに対向する側に露呈しているそれぞれの部分同士が結合される(接触する)ように設計されている。この結果、シートZa〜ZiをZaから順に上方に積層・圧着していくことで、
図1に示す連続する螺旋形状を有する成形体(導体の前駆体)が形成される。
以下、
図3〜
図6を参照しながら、
図2に示した各シートの製造方法、並びに
図1に示したシートの積層体の製造方法について説明する。なお、
図3〜
図6では、説明の便宜上、各シートが1枚ずつ製造される例(1つのシート積層体が製造される例)が示されているが、実際には、後述する
図8〜
図11に示すように、各シートが複数枚(例えば、25枚)同時に製造される(従って、複数のシート積層体が同時に製造される)。なお、以下、シートZ#の成形に使用される第1成形型A、及び第2成形型Bをそれぞれ、便宜上、第1成形型A#、及び第2成形型B#と称呼する。「#」は、「a」〜「z」の何れかを表す(以下も同じ)。
図3は、シートZa〜Ziのうちの代表の1つとしてシートZa(1枚のみ)が製造される例を示している。先ず、直方体を呈する板状のアルミニウム合金(例えば、ジュラルミン等)製の第1成形型Aa、及び第2成形型Baが準備され、第1、第2成形型Aa,Baの成形面(平面)に離型剤がそれぞれ塗布されて非付着性の皮膜がそれぞれ形成される。
この皮膜は、成形面上に成形された成形体を成形面から引き離す(離型する)ために要する板厚方向の力(応力)(以下、「離型力(離型応力)」と称呼する。)を調整するために形成される。離型力が大きいほど成形体が成形面から離型し難い。本例では、第1成形型Aa〜Azに係わる離型力がそれぞれ、第2成形型Ba〜Bzに係わる離型力よりも大きくなるように調整される。加えて、第1成形型Aa〜Azのなかでも第1成形型Aaに係わる離型力が、残りの第1成形型Ab〜Azに係わる離型力に比して大きくなるように調整される。更には、積層・圧着されたシート同士を引き離すために要する板厚方向の力(以下、「シート間剥離力」と称呼する。)が、第1成形型Aaに係わる離型力に比して大きくなるようにも調整されている。
この皮膜としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フッ素油、シリコン油、めっき、CVD、PVD等による種々の皮膜が用いられ得る。フッ素樹脂、シリコン樹脂、フッ素油、シリコン油が使用される場合、スプレー、ディッピング等により皮膜が設けられる。この場合、離型力は、樹脂の種類、皮膜の表面粗さ、皮膜の厚さ等により調整され得る。
また、めっきが使用される場合、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フッ素油、シリコン油と組み合わせたものを使用すると、離型力が調整し易くなる。また、CVD、PVDが使用される場合、フッ素原子を含むガスを原料として用いると、離型力が小さくなって離型力が調整し易くなる。なお、本例のように、皮膜が形成される成形面の形状が単純な場合(本例では、平面)、樹脂のバルク材(板材等)を成形面に貼り付けても良いし、或いは、成形型を樹脂のバルク材そのものから構成してもよい。
次いで、後に導体となるペースト(以下、「導体ペースト」と称呼する。)が調製される。
図3(a)に示すように、この導体ペーストが、スクリーン印刷法、メタルマスク法等を用いて、皮膜が形成された第1成形型Aaの成形面上に、
図2に示したシートZaに含まれる成形体と同形にシートZaの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって成形される。
導体ペーストとしては、例えば、導体粉末として、銀粉末、白金粉末等の金属粉末、樹脂成分として、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、テオブロミン等の樹脂、又は樹脂前駆体、溶剤として、酢酸ブチルカルビトール、ブチルカルビトール、二エチルヘキサノール、テルピネオール等の有機溶剤を適宜混合したものが使用された。成形された導体ペースト(成形体)は、所定の工程を経て固化される。例えば、フェノール樹脂が含まれる場合には、加熱により固化される。
次いで、
図3(b)に示すように、成形体が形成された第1成形型Aaの成形面上に、シートZaの厚さと同じ高さを有するスペーサSを介して、第2成形型Baが皮膜の形成された成形面が下向きになるように載置される。これにより、第1、第2成形型Aa,Baが、成形体が形成された第1成形型Aaの成形面(平面)と(成形体が形成されていない)第2成形型Baの成形面(平面)とがシートZaの厚さと同じ隙間をもって平行に対向するように、且つ、成形体の頂面(平面視にて
図2に示すシートZaに含まれる成形体の形状と同形の平面)が第2成形型Baの成形面と接触するように配置される。ここで、第1、第2成形型Aa,Ba、及びスペーサSにて区画・形成された空間Hは、シートZaの輪郭(直方体)と同形の輪郭を有する。
次いで、後にセラミックとなるセラミックスラリーが調製され、
図3(c)に示すように、空間H内に調製されたセラミックスラリーが充填される。これにより、セラミックスラリーは、その輪郭がシートZaの輪郭(直方体)と同形となるように成形される。
セラミックスラリーには、セラミック粉体、分散媒、ゲル化剤が含まれる。また、必要に応じて分散助剤、触媒が含まれる。ゲル化剤は、セラミック粉体を固め、且つ成形体と一体化させることでセラミックグリーンシートを得る効果を奏する。また、ゲル化剤は、積層の際にセラミックグリーンシート同士を接着するバインダーとしても作用する。
セラミックスラリーとしては、例えば、セラミック粉体として、フェライト粉末100重量部、分散媒として、脂肪族多価エステルと多塩基酸エステルの混合物27重量部、及び、エチレングリコール0.3重量部、分散助剤として、ポリカルボン酸系共重合体3重量部、ゲル化剤として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート5.3重量部、触媒として、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.05重量部、を混合したものが使用された。成形されたセラミックスラリーは、所定の工程を経て固化される。この結果、シートZaが、板厚方向の両端に第1、第2成形型Aa,Baがそれぞれ付着している状態で得られる。
なお、セラミック粉体として、アルミナ、ジルコニア、シリカ、フェライト、チタン酸バリウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等が使用されてもよい。分散媒として、脂肪族多価エステル、多塩基酸エステル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤が使用されてもよい。ゲル化剤として、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの前駆体が使用されてもよい。分散助剤として、ポリカルボン酸系共重合体、ソルビタン系エステルなどの有機化合物が使用されてもよい。触媒として、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノールなどのアミン化合物が使用されてもよい。
次いで、
図3(d)に示すように、第1、第2成形型Aa,Baが付着した状態にあるシートZaから、第2成形型Baのみが取り除かれる。ここで、上述のように、第1成形型Aaに係わる離型力が第2成形型Baに係わる離型力よりも大きくなるように調整されている。従って、第1、第2成形型Aa,Baに対して板厚方向(上下方向)に互いに離れる方向に引っ張り力を付与することで、第2成形型Baのみを容易に取り除くことができる。このようにして、
図3(d)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZaが得られる。
図4は、シートZa〜Ziのうちの代表のもう1つとしてシートZb(1枚のみ)が製造される例を示している。
図4(a)〜(d)は、上述した
図3(a)〜(d)にそれぞれ対応している。
図4(a)〜(d)に示したシートZbの製造方法は、皮膜が形成された第1成形型Abの成形面上に
図2に示したシートZbに含まれる成形体と同形にシートZbの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって導体ペーストが成形される点を除いて、上述した
図3(a)〜(d)に示したシートZaの製造方法と同様である。従って、
図4(a)〜(d)に示したシートZbの製造方法についての詳細な説明は省略する。このようにして、
図4(d)に示すように、第1成形型Abのみが付着した状態にあるシートZbが得られる。
シートZc〜Ziも、上述したシートZa,Zbの製造方法と同様の製造方法を用いて得ることができる。このようにして、
図2に示した(第1成形型A#のみが付着した状態にある)シートZ#(計9枚)が得られる。なお、この段階(シートの積層前)においてシートZ#から第1成形型A#が取り除かれないのは、後述するように、シートの積層時においてシートの取り扱いを容易にするためである。
次に、シートZ#を積層・圧着して
図1に示したシートの積層体を得る方法について説明する。先ず、
図5(a)に示すように、
図4(d)に示した第1成形型Abが付着した状態にあるシートZbをひっくり返して、第2成形型Baを取り除いたことで露出したシートZaの平面に対して、第2成形型Bbを取り除いたことで露出したシートZbの平面が重ねて圧着される。この結果、シートZa,Zbの積層体(積層数=2)が、板厚方向の両端に第1成形型Aa,Abがそれぞれ付着している状態で得られる。
次いで、
図5(b)に示すように、第1成形型Aa,Abが付着した状態にあるシートZa,Zbの積層体から、第1成形型Abのみが取り除かれる。ここで、上述のように、第1成形型Aaに係わる離型力が第1成形型Abに係わる離型力よりも大きくなるように調整され、且つ、シート間剥離力が第1成形型Aaに係わる離型力よりも大きくなるようにも調整されている。従って、第1成形型Aa,Abに対して板厚方向(上下方向)に互いに離れる方向に引っ張り力を付与することで、第1成形型Abのみを容易に取り除くことができる。このようにして、
図5(b)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZa,Zbの積層体(積層数=2)が得られる。
次いで、シートZcが、
図5(a)(b)に示した手順と同様の手順を用いて、シートZa,Zbの積層体(積層数=2)の上に更に積層・圧着される。この結果、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZa,Zb,Zcの積層体(積層数=3)が得られる。このような手順を繰り返すことで、
図6(a)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZa〜Ziの積層体(積層数=9)が得られる。
そして、
図6(b)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZa〜Ziの積層体(積層数=9)から、第1成形型Aaが取り除かれる。ここで、上述のように、シート間剥離力が第1成形型Aaに係わる離型力よりも大きくなるように調整されている。従って、第1成形型Aaに対してシートZa〜Ziの積層体から板厚方向(上下方向)に離れる方向に引っ張り力を付与することで、第1成形型Aaを容易に取り除くことができる。このようにして、
図6(b)に示すように、
図1に示したシートZa〜Ziからなるセラミックグリーンシート積層体(積層数=9)が得られる。
図7は、上述のように離型力とシート間剥離力とが調整されることで、第1、第2成形型A#,B#の離型順序が適切に制御されることを説明するための図である。
図7において、成形型の成形面に対応する線分について、太い実線の長さが長いほど、離型力が小さいことを表す。なお、説明の便宜上、
図7では、9枚のシートZa〜Ziの代表としての3枚のシートZa,Zb,Zcからなる積層体が得られる例が示されている。以下、「*」は、「a」〜「c」の何れかを表す(以下も同じ)。
図7(a)では、シートZ*が、板厚方向の両端に第1、第2成形型A*,B*がそれぞれ付着している状態で同時に得られている。この
図7(a)に示す状態は、上述した
図3(c)、
図4(c)に示す状態に対応する。
図7(b)では、第1、第2成形型A*,B*が付着した状態にあるシートZ*から、第2成形型B*のみが取り除かれている。この
図7(b)に示す状態は、上述した
図3(d)、
図4(d)に示す状態に対応する。ここで、上述したように、第1成形型A*に係わる離型力が第2成形型B*に係わる離型力よりも大きくなるように調整されている。従って、第1、第2成形型A*,B*に対して板厚方向(上下方向)に互いに離れる方向に引っ張り力を付与することで、第2成形型B*のみを容易に取り除くことができる。
図7(c)では、第1成形型Abが付着した状態にあるシートZb(
図7(b)を参照)をひっくり返して、第2成形型Baを取り除いたことで露出したシートZaの平面と、第2成形型Bbを取り除いたことで露出したシートZbの平面とが重ねて圧着されている。この結果、シートZa,Zbの積層体(積層数=2)が、板厚方向の両端に第1成形型Aa,Abがそれぞれ付着している状態で得られる。この
図7(c)に示す状態は、上述した
図5(a)に示す状態に対応する。
図7(d)では、第1成形型Aa,Abが付着した状態にあるシートZa,Zbの積層体から、第1成形型Abのみが取り除かれている。ここで、上述のように、第1成形型Aaに係わる離型力が第1成形型Ab、Acに係わる離型力よりも大きくなるように調整され、且つ、シート間剥離力が第1成形型Aaに係わる離型力よりも大きくなるようにも調整されている。従って、第1成形型Aa,Abに対して板厚方向(上下方向)に互いに離れる方向に引っ張り力を付与することで、第1成形型Abのみを容易に取り除くことができる。
図7(e)では、第1成形型Acが付着した状態にあるシートZc(
図7(b)を参照)をひっくり返して、第1成形型Abを取り除いたことで露出したシートZa,Zbの積層体の平面(即ち、シートZbの平面)と、第2成形型Bcを取り除いたことで露出したシートZcの平面とが重ねて圧着されている。この結果、シートZa,Zb,Zcの積層体(積層数=3)が、板厚方向の両端に第1成形型Aa,Acがそれぞれ付着している状態で得られる。
図7(f)では、第1成形型Aa,Acが付着した状態にあるシートZa,Zb,Zcの積層体から、第1成形型Acのみが取り除かれている。ここで、上述のように、第1成形型Aaに係わる離型力が第1成形型Ab、Acに係わる離型力よりも大きくなるように調整され、且つ、シート間剥離力が第1成形型Aaに係わる離型力よりも大きくなるようにも調整されている。従って、第1成形型Aa,Acに対して板厚方向(上下方向)に互いに離れる方向に引っ張り力を付与することで、第1成形型Acのみを容易に取り除くことができる。
図7(g)では、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZa,Zb,Zcの積層体(積層数=3)から、第1成形型Aaが取り除かれる。ここで、上述のように、シート間剥離力が第1成形型Aaに係わる離型力よりも大きくなるように調整されている。従って、第1成形型Aaに対してシートZa,Zb,Zcの積層体から板厚方向(上下方向)に離れる方向に引っ張り力を付与することで、第1成形型Aaを容易に取り除くことができる。このようにして、シートZa,Zb,Zcからなるセラミックグリーンシート積層体(積層数=3)が得られる。
以上、説明したように、離型力とシート間剥離力とが調整されることで、成形型A*,B*の離型順序が適切に制御される。この結果、シートZ*そのものを掴むことなく成形型を掴むことでシートZ*を順次積層していくことができる。この結果、セラミックグリーンシートの取り扱いが容易となる。
以上、説明の便宜上、各シートが1枚ずつ製造される例(1つのシート積層体が製造される例)について説明してきた。実際には、
図8〜
図11に示すように、各シートが複数枚同時に製造される(従って、複数のシート積層体が同時に製造される)。
図8〜
図11では、説明の便宜上、9枚のシートZa〜Ziの代表としてのシートZa,Zb,Zcのそれぞれが25枚ずつ同時に得られ、25個のシート積層体(積層数=3)が同時に得られる例が示されている。
図8(a)では、シートZa,Zb,Zcの成形に使用される第1、第2成形型A*,B*の成形面のそれぞれに対して離型剤の塗布により皮膜が形成されて、上述のように離型力が調整される。
図8(b)では、スクリーン印刷法等を用いて、上述した導体ペーストが、皮膜が形成された第1成形型A*の成形面上に、
図2に示したシートZ*に含まれる成形体に対応する形状が5×5のマトリクス状に25個互いに所定距離離れて整列されるようにそれぞれ成形される。
図8(b)は、
図3(a)、
図4(a)に対応する。
図8(c)では、上述したセラミックスラリーが、第1、第2成形型A*,B*、及びスペーサS(
図8(c)では図示せず)を利用して区画・形成された空間H*内に充填される。ここで、空間H*の輪郭は、シートZ*を5×5のマトリクス状に密着して同一平面上に並べた場合に得られる1つの大きなシートZZ*の輪郭(直方体)と同形である。これにより、セラミックスラリーは、その輪郭がシートZZ*の輪郭(直方体)と同形の3つの直方体に成形される。
図8(c)は、
図3(c)、
図4(c)に対応する。
以下、
図9〜
図11を用いて、
図8(c)に示す工程について説明する。
図8(c)に示す工程では、分解斜視図である
図9、及び組図である
図10に示した成形型装置が用いられる。
図9、
図10に示すように、この成形型装置では、上述した第1、第2成形型A*,B*、及びスペーサSに加えて、スラリー注入口Caが形成された側壁部材C、側壁部材D、及びスラリー貯留部Eaが形成された底壁部材Eが使用される。
図10に示した成形型装置が組まれた状態では、第1、第2成形型A*,B*が、25個の成形体が形成された第1成形型A*の成形面(平面)と(成形体が形成されていない)第2成形型B*の成形面(平面)とがシートZ*の厚さと同じ隙間をもって平行に対向するように、且つ、25個の成形体の頂面が第2成形型B*の成形面と接触するように、スペーサSを介して上下方向に立設されている。この状態にて、上述の空間H*が、第1、第2成形型A*,B*、及びスペーサSにより区画・形成されている。
この空間H*にセラミックスラリーが充填される際には、
図10に太い矢印で示すように、スラリー注入口Caからセラミックスラリーが注入される。注入されたセラミックスラリーは、側壁部材C内に形成された注入口Caから下方に延びる円柱状のスラリー通路Cb、スラリー貯留部Eaを介して、空間H*のそれぞれに下方から上方に向けて充填されていく。
このとき、
図11(a)に示すように、注入口Caから所定量のセラミックスラリーが注入された後、
図11(b)に示すように、加圧によりスラリー通路Cb内のセラミックスラリーの液面が押し下げられる。これにより、空間H*内のセラミックスラリーの液面がそれぞれ押し上げられ、この結果、空間H*全域に亘ってセラミックスラリーがそれぞれ充填され得る。
ここで、
図11(c)に示すように、加圧中において、スラリー通路Cb内の液面(従って、スラリー貯留部Ea内の液面)が空間H*の下端(直線L−Lを参照)を下回らないように注意する。空間H*内に気泡が混入する可能性があるからである。
このことを防止するためには、注入口Caから注入されるセラミックスラリーの量を多めに設定することが考えられる。或いは、
図11(d)に示すように、成形型装置を、スラリー通路Cb側が上方へ移動するように傾けることも考えられる。
再び、
図8を参照すると、
図8(d)では、
図5、
図6に示した手順と同様の手順によって、25個の成形体を含むシートZZaに対して,25個の成形体を含むシートZZb、25個の成形体を含むシートZZcが順に積層・圧着されていく。
この結果、シートZZa,ZZb,ZZcからなるセラミックグリーンシート積層体(積層数=3)が得られる。この積層体が、5×5のマトリクス状に板厚方向と垂直方向に切断されて25個の積層体(積層数=3)に分割される。この結果、
図2に示したシートZa〜Zcからなる積層体(積層数=3)が25個同時に得られる。
以上、
図1に示したセラミックグリーン積層体を、
図2に示した9枚のシートZa〜ZiをZaから順に上方に積層・圧着することで得る方法について説明した。この方法では、第1、第2成形型A#,B#のうちで第1成形型A#においてのみ成形体が形成された状態でセラミックスラリーが薄平板状に成形された。一方、第1、第2成形型A#,B#の両方に成形体がそれぞれ形成された状態でセラミックスラリーが薄平板状に成形されてもよい。以下、この手法を採用して
図1に示したセラミックグリーン積層体を得る方法の一例について、
図12〜
図14を参照しながら説明する。
図12(a)〜(d)は、
図3(a)〜(d)、及び
図4(a)〜(d)に対応し、
図12は、シートZa〜Ziのうちの代表の1つとして、シートZaの上にシートZbを重ねて得られる厚いシートに相当する1つのシートZab(1枚のみ)が製造される例を示している。
先ず、
図12(a)に示すように、上述の導体ペーストが、スクリーン印刷法等を用いて、皮膜が形成された第1成形型Aaの成形面上に、
図2に示したシートZaに含まれる成形体と同形にシートZaの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって成形されるとともに、上述の導体ペーストが、スクリーン印刷法等を用いて、皮膜が形成された第2成形型Baの成形面上に、
図2に示したシートZbに含まれる成形体と同形にシートZbの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって成形される。成形された導体ペースト(成形体)は、所定の工程を経て固化される。
次いで、
図12(b)に示すように、成形体(第1成形体)が形成された第1成形型Aaの成形面上に、シートZa,Zbの厚さの和と同じ高さを有するスペーサSを介して、第2成形型Baが成形体(第2成形体)の形成された成形面が下向きになるように載置される。これにより、第1、第2成形型Aa,Baが、成形体が形成された第1成形型Aaの成形面(平面)と成形体が形成された第2成形型Baの成形面(平面)とがシートZa,Zbの厚さの和と同じ隙間をもって平行に対向するように、且つ、第1、第2成形体の頂面同士が接触するように配置される。ここで、第1、第2成形型Aa,Ba、及びスペーサSにて区画・形成された空間Hは、シートZabの輪郭(直方体)と同形の輪郭を有する。
次いで、
図12(c)に示すように、空間H内に上述のセラミックスラリーが充填される。これにより、セラミックスラリーは、その輪郭がシートZabの輪郭(直方体)と同形となるように成形される。成形されたセラミックスラリーは、所定の工程を経て固化される。この結果、シートZabが、板厚方向の両端に第1、第2成形型Aa,Baがそれぞれ付着している状態で得られる。
次いで、
図12(d)に示すように、第1、第2成形型Aa,Baが付着した状態にあるシートZabから、第2成形型Baのみが取り除かれる。このようにして、
図12(d)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZabが得られる。
図13は、シートZa〜Ziのうちの代表のもう1つとしてシートZcの上にシートZdを重ねて得られる厚いシートに相当する1つのシートZcd(1枚のみ)が製造される例を示している。
図13(a)〜(d)は、上述した
図12(a)〜(d)にそれぞれ対応している。
図13(a)〜(d)に示したシートZcdの製造方法は、皮膜が形成された第1成形型Acの成形面上に
図2に示したシートZcに含まれる成形体と同形にシートZcの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって導体ペーストが成形され且つ皮膜が形成された第2成形型Bcの成形面上に
図2に示したシートZdに含まれる成形体と同形にシートZdの厚さと同じ(或いは、若干大きい)高さをもって導体ペーストが成形される点を除いて、上述した
図12(a)〜(d)に示したシートZabの製造方法と同様である。従って、
図13(a)〜(d)に示したシートZcdの製造方法についての詳細な説明は省略する。このようにして、
図13(d)に示すように、第1成形型Acのみが付着した状態にあるシートZcdが得られる。
シートZeの上にシートZfを重ねて得られる厚いシートに相当する1つのシートZef、シートZgの上にシートZhを重ねて得られる厚いシートに相当する1つのシートZghも、上述したシートZab,Zcdの製造方法と同様の製造方法を用いて得ることができる。
次いで、上述の
図5(a)に対応する
図14(a)に示すように、
図13(d)に示した第1成形型Acが付着した状態にあるシートZcdをひっくり返して、第2成形型Baを取り除いたことで露出したシートZabの平面に対して、第2成形型Bcを取り除いたことで露出したシートZcdの平面が重ねて圧着される。この結果、シートZab,Zcdの積層体(積層数=2)が、板厚方向の両端に第1成形型Aa,Acがそれぞれ付着している状態で得られる。
次いで、上述の
図5(b)に対応する
図14(b)に示すように、第1成形型Aa,Acが付着した状態にあるシートZab,Zcdの積層体から、第1成形型Acのみが取り除かれる。このようにして、
図14(b)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZab,Zcdの積層体(積層数=2)が得られる。
次いで、シートZef、シートZgh、シートZiが、
図14(a)(b)に示した手順と同様の手順を用いて、シートZab,Zcdの積層体(積層数=2)の上に順に積層・圧着される。この結果、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZab,Zcd,Zef,Zgh,Ziの積層体(積層数=5)が得られる。
そして、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZab,Zcd,Zef,Zgh,Ziの積層体(積層数=5)から、第1成形型Aaが取り除かれる。このように、第1、第2成形型A#,B#の成形面の両方に第1、第2成形体がそれぞれ形成され且つ第1、第2成形体の頂面同士が接触した状態でセラミックスラリーが薄平板状に成形されても、
図1に示したシートZa〜Ziからなるセラミックグリーンシート積層体(積層数=9)と実質的に同等のセラミックグリーンシート積層体(積層数=5)が得られる。
以上、第1、第2成形型の成形面が全域に亘って凹凸のない平面である場合について説明してきた。この場合、上記成形体(導体の前駆体)におけるシートの表面に露呈している部分がシート平面と凹凸なく連続する平面形状に成形される。この場合において、例えば、上述した
図14に示すシートZab,Zcdのように、隣接する2枚のシートの各々に含まれる成形体(導体の前駆体)における相手側のシートに対向する側に露呈しているそれぞれの部分同士が結合される場合、成形体の形状の連続性が不完全となる可能性がある。
これに対し、上述の
図12(c)(d)に対応する
図15(a)(b)、並びに、上述の
図13(c)(d)に対応する
図16(a)(b)に示すように、第1、第2成形型Ac,Ba(何れか一方のみでもよい)において、成形体(導体の前駆体)が形成される成形面における前記成形体に対応する部分に凹部Qが形成されると、前記成形体における凹部Qに対応する部分がシートの平面から突出する凸形状Rに成形される。
そして、
図14(a)(b)に対応する
図17(a)(b)に示すように、凸形状Rを含むシートZabの平面と隣接するシートZcdの平面とを圧着する際に、凸形状R部分が、隣接するシートZcdの平面におけるシートZcdに含まれる前記成形体が露呈している部分に押圧され押し潰される。
これにより、隣接する2枚のシートの各々に含まれる前記成形体同士がより確実に結合され得る。この結果、成形体の形状の連続性がより確実となり、例えば、上述のように成形体が導体の前駆体の場合、焼成後における導体の電気的導通性が確実に保証され得る。
また、上述の
図12、
図13では、第1、第2成形型A#,B#の成形面の両方に第1、第2成形体がそれぞれ形成され且つ第1、第2成形体の頂面同士が接触した状態でセラミックスラリーが薄平板状に成形される例が示されているが、
図12、
図13に対応する
図18に示すように、第1、第2成形型A#,B#の成形面の両方に第1、第2成形体がそれぞれ形成され且つ第1、第2成形体の頂面同士が所定距離だけ離れた状態でセラミックスラリーが薄平板状に成形されてもよい。
この場合、
図18(b)に示すように、第1成形体(導体の前駆体)が形成された第1成形型Aaの成形面上に、第1、第2成形体の厚さの和よりも大きい高さを有するスペーサSを介して、第2成形型Baが第2成形体(導体の前駆体)の形成された成形面が下向きになるように載置される。これにより、第1、第2成形型Aa,Baが、成形体が形成された第1成形型Aaの成形面(平面)と成形体が形成された第2成形型Baの成形面(平面)とが平行に対向するように、且つ、第1、第2成形体の頂面同士が離れるように配置される。ここで、第1、第2成形型Aa,Ba、及びスペーサSにて区画・形成された空間Hは、シートZpの輪郭(直方体)と同形の輪郭を有する。
次いで、
図18(c)に示すように、空間H内に上述のセラミックスラリーが充填される。これにより、セラミックスラリーは、その輪郭がシートZpの輪郭(直方体)と同形となるように成形される。成形されたセラミックスラリーは、所定の工程を経て固化される。この結果、シートZpが、板厚方向の両端に第1、第2成形型Aa,Baがそれぞれ付着している状態で得られる。
そして、
図18(d)に示すように、第1、第2成形型Aa,Baが付着した状態にあるシートZpから、第2成形型Baのみが取り除かれる。このようにして、
図18(d)に示すように、第1成形型Aaのみが付着した状態にあるシートZpが得られる。その後、このシートZpから第1成形型Aaが取り除かれる。係る第1成形型Aaの除去は、例えば、シートZpと第1成形型Aaとの合わせ部分に対して、離型剤を溶融させる、へら状の治具を挿入していく、エアを吹き込む等の処理を施すことで実行され得る。
このシートZpを焼成してセラミックシート(焼結体)が形成される際、この成形体(導体の前駆体)は、同形の導体となる。即ち、所定距離離れて配置された導体間にセラミックが介装されたコンデンサが形成され得る。従って、このコンデンサを内蔵するセラミックシート(焼結体)、又は、その加工品は、例えば、携帯電話等に内蔵される電気的部品として使用され得る。
また、上記においては、前記成形体が、後にセラミックグリーンシートの焼成によりセラミックシートが形成される際に導体となる、導体の前駆体(導体ペースト)から構成される場合の例について説明してきた。これに対し、前記成形体が、後に前記セラミックグリーンシートの焼成によりセラミックシートが形成される際に全て揮発して除去される成分から構成されてもよい。
この場合、成形体の成形に使用されるペーストとしては、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、テオブロミン、エチルセルロース、エポキシ樹脂などの樹脂、又はこれらの樹脂前駆体を混合したものが使用され得る。これによれば、例えば、
図1に示したセラミックグリーンシート積層体の場合、積層体の焼成によりセラミックシートが形成される際に、連続する螺旋形状を有する空間(空洞)を得ることができる。
また、前記成形体は、後に前記セラミックグリーンシートの焼成によりセラミックシートが形成される際にセラミックとなる、セラミックの前駆体から構成されてもよい。この場合、成形体の成形に使用されるペーストとしては、例えば、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、テオブロミン、エチルセルロース、エポキシ樹脂などの樹脂、又はこれらの樹脂前駆体と、アルミナ、ジルコニア、シリカ、フェライト、チタン酸バリウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミック粉末を混合したものが使用され得る。これによれば、焼成によりセラミックシートが形成される際に、セラミックシート内に、異種のセラミックにより形成されたパターンを内包した構造体を得ることができる。
以下、上述した
図7を用いて説明したように離型順序を適切に制御するために行われる、第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係の調整について付言する。
先ず、第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係は、第1、第2成形型の成形面に対して離型剤の塗布又は表面処理(コーティング)により形成される皮膜の種類を異ならせることで調整され得る。例えば、離型剤として、フッ素樹脂及びワックスを例にとり、表面処理として、フッ素樹脂含有ニッケルめっきを例にとった場合、上述のように、常温にて、ワックスの場合の離型力>フッ素樹脂含有ニッケルめっきの場合の離型力>フッ素樹脂の場合の離型力という関係が成立する。
このように、第1、第2成形型の成形面にそれぞれ形成される皮膜の種類を異ならせることで、(皮膜の厚さが同じであっても)第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係を調整することができる。
また、皮膜が離型剤の塗布により形成される場合において、第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係は、離型剤の塗布の方法を異ならせることでも調整され得る。例えば、離型剤の塗布方法としてスプレー法とディッピング法とが挙げられる。以下、これらを比較する。なお、上述したように、「基材露出部分」とは、皮膜が形成された成形型の平面において成形型の基材の表面が露出している部分である。
一般に、ディッピング法の場合、比較的厚さの均一な極薄の皮膜が得られる。一方、スプレー法の場合、ディッピング法の場合と比べて皮膜の厚さが不均一となる。即ち、スプレー法により塗布されて形成される皮膜の状態は、離型剤の濃度、吐出流量(吐出される噴霧の流量)を調節するバルブ部の開け具合、成形型の温度等に比較的敏感に影響を受ける。
より具体的に述べると、成形型の温度が低い場合、吐出液量が大きい場合等、塗布された離型剤溶液が乾燥し難い場合、その離型剤溶液の流れ(ダレ)や凝集が発生する。従って、形成される皮膜の表面に凹凸が発生し易い。逆に、成形型の温度が高い場合、吐出液量が小さい場合等、塗布された離型剤溶液が乾燥し易い場合、その離型剤溶液の表面がレベリング(平滑化)する前に溶媒が揮発する。従って、この場合も、形成される皮膜の表面に凹凸が発生し易い。以上のことから、何れにしろ、スプレー法の場合、ディッピング法の場合と比べて、皮膜の表面に凹凸が発生し易くなり、この結果、皮膜の厚さが不均一となる。このことは、スプレー法の場合、ディッピング法の場合に比べて、皮膜の表面積が大きくなることを意味する。このことに起因して、スプレー法の場合、ディッピング法の場合と比べて離型力が大きくなる。
加えて、ディッピング法の場合、上述のように、比較的厚さの均一な極薄の皮膜が得られるから、成形型の平面(成形面)の表面粗さに相当する平面上の微小な多数の山部にのみ「基材露出部分」を形成することができる。換言すれば、微小な多数の「基材露出部分」が散在するのみで、比較的大きな「基材露出部分」が形成され難い。一方、スプレー法の場合、上述のように、皮膜の厚さが不均一となるから、極薄の皮膜が形成された場合、ディッピング法の場合と比べて比較的大きな「基材露出部分」が形成され易い。即ち、「基材露出部分」の総面積が大きくなり易い。このことによっても、スプレー法の場合、ディッピング法の場合と比べて離型力が大きくなる。なお、個々の基材露出部分の面積が大き過ぎる場合、離型力が過大となる。この結果、セラミックグリーンシートを離型する際にセラミックグリーンシートが破損する(離型不可)。
このように、皮膜の形成のために行われる離型剤の塗布の方法を異ならせることでも、(皮膜の種類、平均厚さが同じであっても)第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係を調整することができる。なお、スプレー法により形成された皮膜の厚さの変動幅は数μm程度である。従って、スプレー法により形成された皮膜も、セラミックグリーンシートの成形面として求められる特性を十分に満足しているといえる。
また、皮膜が離型剤の塗布により形成される場合において、第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係は、皮膜の厚さを異ならせることでも調整され得る。ここで、皮膜の厚さを調整する場合、離型剤の塗布方法として、ディッピング法が好適である。これは、ディッピング法では、上述したように比較的厚さの均一な極薄の被膜が得られること、並びに、皮膜の厚さの調整が容易なことに基づく。皮膜の厚さは、離型剤の濃度、離型剤溶液に成形型を浸している状態から成形型を引き上げる際の速度(以下、「引き上げ速度」と称呼する。)、成形型の温度、離型剤溶液の温度、並びに雰囲気の温度等を調節することで、調整することができる。離型剤の濃度と皮膜の厚さとの関係については後述する。
ディッピング法により極薄の被膜が形成される場合、皮膜の厚さが大きいほど、上述した「成型面の表面粗さに相当する成型面上の微小な多数の山部」に形成されるそれぞれの「基材露出部分」の面積がより小さくなる。この結果、「基材露出部分」の総面積がより小さくなることで離型力がより小さくなる。
このように、離型剤の塗布により形成された皮膜の厚さを異ならせることでも、(皮膜の種類、塗布方法が同じであっても)第1成形型に係わる離型力と第2成形型に係わる離型力との大小関係を調整することができる。
以下、ディッピング法により形成される皮膜の厚さについての好ましい範囲について考察する。上述したように、皮膜の厚さが小さいほど、「基材露出部分」の総面積が大きくなる(従って、離型力が大きくなる)。従って、皮膜の厚さが小さ過ぎると、「基材露出部分」の総面積が大きくなり過ぎて、離型力が過大となる。この結果、セラミックグリーンシートを離型する際にセラミックグリーンシートが破損する現象が発生する(離型不可)。一方、皮膜の厚さが大き過ぎると、「基材露出部分」が消滅する。この結果、「基材露出部分」の総面積の調整ができなくなる。即ち、皮膜の厚さを変更しても離型力が最小で一定となって離型力の調整ができない。
一方、第1、第2成形型の平面(基材表面)の表面粗さを「平均高さ(平均凹凸高さ)」(JIS B0601:2001)でRc(μm)とし、皮膜の厚さをt(μm)としたとき、Rcとtとの間に「0.05・Rc≦t≦0.25・Rc」という関係が成立する場合、セラミックグリーンシートを破損させることなくセラミックグリーンシートを離型でき(離型可)、且つ、皮膜の厚さを変更することで離型力を調整できることが判明した。以下、このことを確認した実験について述べる。
図19は、「離型可」(セラミックグリーンシートが破損することなくセラミックグリーンシートが離型される状態)と「離型不可」(セラミックグリーンシートを離型する際にセラミックグリーンシートが破損する状態)との境界に対応する「Rcとtとの関係」を見出すための実験の手順を示している。
図19(a)に示すように、先ず、上面が成形面となる平板At(上述した実施形態にて使用された成形型と同様、アルミニウム合金製)を準備する。平板Atは、例えば、平面形状が一辺50mmの正方形で厚さが20mmの直方体である。成形面の基材表面の表面粗さは「平均高さ」(JIS B0601:2001)でRc(μm)である。この成形面に、ディッピング法により離型剤としてのフッ素樹脂の皮膜(厚さ:t(μm))を形成する。
次に、
図19(b)に示すように、平板Atの側面を、幅が平板Atの厚さよりも大きい粘着テープTで、成形面の周囲に亘って粘着テープが立設されるように囲う。次いで、
図19(c)に示すように、粘着テープTで周囲を囲まれた平板Atの成形面の上に、セラミックスラリー(上述した実施形態にて使用されたものと同じもの)を所定の厚さになるまで注入し、スラリーを薄板状(直方体状)に成形・固化する。これにより、薄板状のセラミックグリーンシートZtが形成される。
次に、
図19(d)に示すように、粘着テープTを静かに剥がしていく。そして、
図19(e)に示すように、平板AtからセラミックグリーンシートZtを離型するため、平板Atを固定した状態でセラミックグリーンシートZtに対して板厚方向(矢印の方向を参照)に外力を加える。このとき、「離型可」か「離型不可」かを判定する。この判定は、セラミックグリーンシートが破損したか否かを目視で確認することで行う。
以上の手順を、「Rcとtとの組み合わせ(水準)」を順次変更しながら繰り返し実行した。この結果を下記表1に示す。「離型可」は「○」で、「離型不可」は「×」で示す。
【表1】
表1から、「0.05・Rc≦t」であれば「離型可」となり、「t<0.05・Rc」であれば「離型不可」となる、と結論付けることができる。
図20は、「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できる状態」(皮膜の厚さの変更により基材露出部分の面積を調整できる状態)と「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できない状態」(基材露出部分が消滅してその面積を調整できない状態)との境界に対応する「Rcとtとの関係」を見出すための実験の手順を示している。
図20(a)に示すように、2枚の平板Ata,Atb(上述した実施形態にて使用された成形型と同様、アルミニウム合金製)を準備する。平板Ata,Atbは、例えば、平面形状が一辺50mmの正方形で厚さが20mmの同形の直方体である。平板Ata,Atbのそれぞれの成形面の基材表面の表面粗さは共に、「平均高さ」(JIS B0601:2001)でRc(μm)である。平板Ata,Atbのそれぞれの成形面に、ディッピング法により離型剤としてのフッ素樹脂の皮膜を形成する。ここで、平板Ataの皮膜の厚さをt(μm)とすると、平板Atbの皮膜の厚さはt+α(μm)である(α>0)。即ち、平板Ataの皮膜の厚さよりも平板Atbの皮膜の厚さが大きい。従って、平板Ataに係わる離型力は平板Atbに係わる離型力よりも大きいはずである。
この2枚の平板Ata,Atbを、それぞれの成形面が所定の間隔(例えば、2mm)もって平行に対向するように保持し、それぞれの成形面の間に形成された空間の周囲の両側面及び下面を所定の治具F1,F2,F3を用いて封じる。そして、その空間の周囲の上面に形成された開口から、その空間内にセラミックスラリー(上述した実施形態にて使用されたものと同じもの)を注入・充填し、スラリーを薄板状(直方体状)に成形・固化する。これにより、薄板状のセラミックグリーンシートZtが形成される。
次いで、
図20(b)に示すように、治具F1,F2,F3を静かに取り外し、平板Ata,Atbに対して板厚方向(矢印の方向を参照)に外力を加えることで、両者を引き離す。この結果、
図20(c)に示すように、セラミックグリーンシートZtが平板Ata側に残った場合、平板Ataに係わる離型力が平板Atbに係わる離型力よりも大きいこと、従って、「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できる状態」にあることを意味する。一方、セラミックグリーンシートZtが平板Atb側に残った場合、及び、セラミックグリーンシートZtが何れの平板にも残らなかった場合(セラミックグリーンシートZtが自重で落下した場合)、「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できない状態」にあることを意味する。
以上の手順を1つの「Rcとtとの組み合わせ(水準)」について5回実行することを、「Rcとtとの組み合わせ(水準)」を順次変更しながら繰り返し実行した。そして、各水準についてセラミックグリーンシートZtが平板Ata側に残った回数をカウントした。この結果を下記表2に示す。この実験では、カウント数が「4」以上の場合において「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できる状態」にあると判定し、それ以外の場合は「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できない状態」にあると判定した。
【表2】
表2から、「t≦0.25・Rc」であれば「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できる状態」となり、「0.25・Rc<t」であれば「皮膜の厚さの変更により離型力を調整できない状態」となる、と結論付けることができる。
以上より、Rcとtとの間に「0.05・Rc≦t≦0.25・Rc」という関係が成立する場合、セラミックグリーンシートを破損させることなくセラミックグリーンシートを離型でき(離型可)、且つ、皮膜の厚さを変更することで離型力を調整できる、と結論付けることができる。
以下、
図21を参照しながら、離型剤の濃度と皮膜の厚さとの関係について述べる。
図21は、ディッピング法を用いた場合における、離型剤の濃度(質量%)と皮膜の厚さ(μm)との関係を取得する実験の結果を示している。この実験では、常温において、ディッピング法を用いて所定のガラス板の表面(平面)に形成された離型剤としてのフッ素樹脂の皮膜の厚さを計測する処理が、離型剤の濃度を順次変更しながら繰り返し実行された。引き上げ速度は1.0mm/secで一定とされた。
図21から理解できるように、ディッピング法では、離型剤の濃度が3〜18(%)の範囲内にて、離型剤の濃度と皮膜の厚さとが略比例することが判った。このことは、離型剤の濃度が3〜18(%)の範囲内にて、離型剤の濃度の変更により離型力を調整できることを意味する。なお、離型剤の濃度が18(%)の場合、離型剤溶液内にて離型剤の析出が見られた。即ち、離型剤の濃度の上限は18(%)程度であるといえる。
ディッピング法では、皮膜の厚さが皮膜全域に亘って略均一であった。一方、
図21から理解できるように、スプレー法では、離型剤の濃度が3(%)の場合において、皮膜の厚さの変動幅が0.6μm程度であり、厚さの最小値が0.2μmである。即ち、スプレー法により形成された皮膜は、ディッピング法により形成された皮膜と比べて厚さの変動幅が大きいものの、上記厚さの最少値(=0.2μm)は、「離型可」を実現するために十分な値といえる。