特許第5774315号(P5774315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774315
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】手洗い用食器洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/29 20060101AFI20150820BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20150820BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20150820BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20150820BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C11D1/29
   C11D1/04
   C11D3/43
   C11D3/04
   C11D3/20
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-1263(P2011-1263)
(22)【出願日】2011年1月6日
(65)【公開番号】特開2012-140571(P2012-140571A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 義幸
(72)【発明者】
【氏名】小西 祥博
(72)【発明者】
【氏名】青野 恵太
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−520304(JP,A)
【文献】 特表平08−503732(JP,A)
【文献】 特表2002−535443(JP,A)
【文献】 特開2006−160869(JP,A)
【文献】 特表平08−508766(JP,A)
【文献】 特開2009−185252(JP,A)
【文献】 特表2008−520767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/29
C11D 1/04
C11D 3/04
C11D 3/20
C11D 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数5〜22の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基とを有する陰イオン界面活性剤を1〜50質量%、(b)炭素数10〜22の脂肪酸又はその塩を0.1〜20質量%、(c)含マグネシウム無機化合物、(d)ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、及び水を含有し、(b)/(d)の質量比が0.10〜0.2である手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項2】
(d)が、アルキレン基の炭素数が2〜4、アルキル基の炭素数が1〜6であり、アルキレングリコールの平均縮合度が1〜4であるポリアルキレングリコールアルキルエーテルである請求項1記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項3】
(d)が、アルキル基の炭素数が1〜6であるポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである請求項1又は2記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項4】
(d)がジエチレングリコールモノブチルエーテルである請求項1〜3いずれか1記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に(e)プロピレングリコールを含有する請求項1〜4に記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項6】
(e)/{(d)+(e)}の質量比が0.09〜0.21である請求項5に記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項7】
(a)として、(a’)下記一般式(I)で表される化合物を含有する請求項1〜6の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (I)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【請求項8】
(a)として、(a'')(a−1)スルホコハク酸ジ若しくはモノアルキル(一つのアルキル基の炭素数は5〜18)エステル又はその塩及び(a−2)炭素数8〜22の分岐構造を有するアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩から選ばれる陰イオン界面活性剤を含有する請求項1〜7の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
【請求項9】
(a)として、(a’)下記一般式(I)で表される化合物と、(a'')(a−1)スルホコハク酸ジ若しくはモノアルキル(一つのアルキル基の炭素数は5〜18)エステル又はその塩及び(a−2)炭素数8〜22の分岐構造を有するアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩から選ばれる陰イオン界面活性剤とを含有する請求項1〜8の何れか1項記載の手洗い用食器洗浄剤組成物。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (I)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手洗い用食器洗浄剤には、洗浄時に豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性が求められる。この起泡性/泡持続性は洗浄持続性と相関がある非常に重要な物性であり、これまで起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤の開発が主に行われてきた。
【0003】
特許文献1には、アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸、水溶性溶剤、及びマグネシウム塩又はカルシウム塩を含有し、起泡性が高く、且つ洗浄力に優れた硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。特許文献2には、起泡抑制剤として脂肪酸を含有する液状手動食器洗浄組成物が開示されている。特許文献3には、すすぎ性を改善するため脂肪酸を含有し、ジエチレングリコールモノブチルエーテルのような水溶性溶剤で洗浄効果を向上させた液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−137197号公報
【特許文献2】特表2004−522817号公報
【特許文献3】特開2005−290049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境負荷軽減、水資源有効利用の目的から、手洗い洗浄に用いる水の量を低減することが好ましく、食器洗浄剤で洗浄後のすすぎ水は極力低減することが望まれる。しかしながら、一般に起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤は、すすぎを完了するためには多量の水を必要とする。従って、洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了する手洗い用食器洗浄剤が強く求められる。又、冬場の環境下でも、夏場と同様に、均一透明な外観を有する手洗い用食器洗浄剤が強く求められている。この点、特許文献1では、すすぎ時の泡消えと低温安定性に関しては特段の言及はされていない。また、特許文献2に「起泡抑制剤」として挙げられているような消泡剤としての脂肪酸は、洗浄時において低泡性にすることを目的としており、洗浄時には非常に豊かな泡を持続的に形成することと、すすぎ時には瞬時に消泡する技術との関連を示唆するものではない。また、特許文献3では、高い洗浄効果とすすぎ性を目的としており、水溶性溶剤の低温での安定性改善効果に関しては特段の言及はされていない。
【0006】
従って本発明の課題は、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了し、且つ低温での保存安定性が改善された手洗い用食器洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)炭素数5〜22の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基とを有する陰イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を1〜50質量%、(b)炭素数10〜22の脂肪酸又はその塩〔以下、(b)成分という〕を0.1〜20質量%、(c)含マグネシウム無機化合物〔以下、(c)成分という〕、(d)ポリアルキレングリコールアルキルエーテル〔以下、(d)成分という〕、及び水を含有し、(b)/(d)の質量比が0.01〜0.2である手洗い用食器洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎが完了し、且つ低温での保存安定性が改善された手洗い用食器洗浄剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、炭素数5〜22の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基を有する陰イオン界面活性剤である。硫酸エステル基又はスルホン酸基は塩であってもよい。従って、(a)成分は、硫酸エステル基若しくは硫酸エステル基塩又はスルホン酸基若しくはスルホン酸基塩を有することができる。このような陰イオン界面活性剤は非常に起泡性に優れることが知られており、より具体的には、炭素数8〜22、更に炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数8〜22、更に炭素数8〜18のアルキル基を有しアルキレン基の炭素数が2及び/又は3でありアルキレン基の平均付加モル数が0.1〜6であるポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数8〜17、更に炭素数8〜15のアルカンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキル(アルキル基の炭素数はそれぞれ5〜18)エステル又はその塩、スルホコハク酸モノアルキル(炭素数は5〜18)エステル又はその塩から選ばれる陰イオン界面活性剤が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる有機アミン塩が好適である。
【0010】
(a)成分としては、(a’)下記一般式(I)の化合物〔以下、(a’)成分という〕が洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の点から好適である。
1−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (I)
〔式中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0〜1.5となる数である。Mは無機又は有機の陽イオンである。POとEOの付加順序は問わない。また、“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【0011】
一般式(I)中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、洗浄性能の観点から炭素数は8〜22であり、好ましくは10〜18であり、より好ましくは12〜14である。mは、洗浄性能の観点から、0〜1.5であり、好ましくは0.1〜1.0,更に好ましくは0.2〜0.8の数である。また、nは洗浄性能の観点から、0〜1.5であり、好ましくは0〜1.0,より好ましくは0〜0.5である。
【0012】
一般式(I)中のMとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンから選ばれる有機陽イオンが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びアンモニウムイオンから選ばれる陽イオンであり、より好ましくはアンモニウムイオンである。
【0013】
一般式(I)の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えばR1−OHで示される脂肪アルコールに目的に応じてエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを所定量付加させた後、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して製造される。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの付加反応は触媒が必要でありNaOH、KOHなどの水酸化アルカリを用いることができる。また、特開平8−323200号公報に記載の酸化マグネシウムを主成分とする触媒を用いることができ、特開平10−158384号公報に開示されているようにアルカリ触媒と金属酸化物触媒を併用することにより付加することも可能である。
【0014】
本発明では、(a)成分として、(a'')(a−1)スルホコハク酸ジ若しくはモノアルキル(一つのアルキル基の炭素数は5〜18)エステル又はその塩〔以下、(a−1)成分という〕及び(a−2)炭素数8〜22の分岐構造を有するアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩〔以下、(a−2)成分という〕から選ばれる陰イオン界面活性剤〔以下、(a'')成分という〕を含有することが、すすぎ時の泡消え性の観点から、好ましい。
【0015】
更に、(a'')成分は、(a’)成分を用いる場合に併用することが好ましい。よって、本発明では、(a)成分として、(a’)成分と(a'')成分とを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の(a−1)成分は、スルホコハク酸モノアルキル(アルキル基の炭素数は5〜18)エステル又はその塩及びスルホコハク酸ジアルキル(アルキル基の炭素数はそれぞれ5〜18)エステル又はその塩から選ばれるスルホコハク酸エステル型界面活性剤であり、具体的には下記一般式(a1−1)の化合物が好適である。
【0017】
【化1】
【0018】
〔式中、R1a、R2aは、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基又は水素原子であり、R1a、R2aの少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基、x、yは平均付加モル数でありそれぞれ独立に0〜6である。M1は無機又は有機の陽イオンである。〕
【0019】
(a−1)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(a1−1)中のR1a、R2aは、同一あるいは異なっていても良く、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基である。5以上の炭素数で良好なすすぎ時の泡消え性が得られ、18以下の炭素数で良好な洗浄時の起泡性が得られる。また、(a−1)成分が、スルホコハク酸モノアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(a1−1)中のR1a、R2aの一方は洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基であり、他方は水素原子である。R1a、R2aは洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基であること、すなわち、(a−1)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩であることが好ましい。A1、A2は洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点からそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基である。x、yは平均付加モル数であり、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ0〜6であり、好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
【0020】
一般式(a1−1)中、R1a、R2aは、それぞれ、具体的にはヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、イソペンチル基、イソノニル基、イソデシル基、シクロヘキシル基であり、特にn−オクチル基、sec−オクチル基、デシル基、イソデシル基、及び2−エチルヘキシル基から選ばれる基であることが好適である。M1としては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンから選ばれる有機陽イオンが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びアンモニウムイオンから選ばれる陽イオンである。
【0021】
(a−1)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、R1a、R2aが同一の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば米国特許明細書第2,028,091号公報に記載の方法を参考して製造することができ、また、R1a、R2aが異なる非対称の化合物は、例えば特開昭58−24555号公報を参考して製造することができる。市販の化合物を用いる場合には、花王(株)製ペレックスOT−P(R1a、R2aが共に2−エチルヘキシル基である化合物)、同ペレックスTR(R1a、R2aが共にトリデシル基である化合物)、BASF社製LuensitA−BO(R1a、R2aが共に2−エチルヘキシル基である化合物)、三井サイテック株式会社から入手可能であったエアロゾルAY−100(R1a、R2aが共にアミル基である化合物)、同エアロゾルA−196(R1a、R2aが共にシクロヘキシル基である化合物)などを用いることができる。
【0022】
本発明の(a−2)成分は炭素数8〜22の分岐構造を有するアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩であり、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる有機アミン塩が挙げられる。泡消え性の観点から、分岐率〔(a−2)成分の化合物の総モル数に対する、分岐鎖アルキル基を有する(a−2)成分の化合物の総モル数の割合〕は、好ましくは15〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%である。
【0023】
本発明の(a−2)成分を得るための原料である、分岐構造を有するアルキル基を有するアルコールとして、炭素数8〜14の1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコール(OH基に対してβ位にメチル基が分岐したアルキル基が15〜70モル%含まれる)、炭素数4〜8のアルデヒドを縮合させた後、還元して得られるゲルベ型アルコール(OH基に対してβ位に炭素数3〜6のアルキル基が分岐した構造のものが100モル%含まれる)、イソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5−トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノール(分岐率は100モル%である)、石油、石炭を原料とした合成アルコール(分岐率が約20〜100モル%のアルキル基である)を挙げることができる。
【0024】
原料である分岐構造を有するアルキル基を有するアルコールを三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して、本発明の(a−2)成分が製造される。
【0025】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、炭素数10〜22の脂肪酸又はその塩であり、具体的にはデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの単独アルキル組成の脂肪酸、椰子油組成、パーム油組成、パーム核油組成、菜種油組成、牛脂組成脂肪酸などの混合脂肪酸、及びこれらを水素で硬化した脂肪酸、並びにこれらの塩を挙げることができる。脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩であるが、長期保管による臭いの劣化や着色の観点から好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0026】
(b)成分としては、起泡力、及び泡消え性の観点から、より好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、椰子油組成、パーム油組成、パーム核油組成、菜種油組成、牛脂組成脂肪酸などの混合脂肪酸、又はこれらの塩であり、より更に好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、椰子組成、パーム油組成、パーム核油組成の混合脂肪酸、又はこれらの塩であり、最も好ましくは椰子油組成の混合脂肪酸又はその塩である。
【0027】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、洗浄剤組成物の油汚れに対する乳化力を高め、洗浄力を増強する観点から、含マグネシウム無機化合物である。含マグネシウム無機化合物としては、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩化物、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等のマグネシウム塩、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられるが、洗浄剤組成物の油汚れに対する乳化力を高め、洗浄力を増強する観点から、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる化合物がより好ましく、塩化マグネシウムが更により好ましい。
【0028】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は洗浄剤組成物の低温保存安定性の観点から、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルである。アルキレン基の炭素数は2〜4が好ましく、アルキル基の炭素数は1〜6が好ましい。(d)成分の重量平均分子量は90〜1000が好ましく、アルキレングリコールの平均縮合度は1〜4が好ましい。ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、更にアルキル基の炭素数が1〜6であるポリエチレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる1種以上有機溶剤が、洗浄剤組成物の低温保存安定性の観点から好ましく、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、更にエチレングリコールの平均縮合度は1〜4のポリエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが更に好ましい。
【0029】
<手洗い用食器洗浄剤組成物>
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、起泡性/泡持続性を有する(a)成分及び(b)成分を併用することにより、比較的洗浄剤の濃度が高い洗浄水においては非常に高い起泡性と泡持続性を示すが、洗浄終了後にすすぎ水を添加することにより、瞬時に泡が消え、少量の水ですすぎを完了させることができる。この理由は必ずしも定かではないが、水道水中のカルシウムと(b)成分が塩を形成して不溶化すること、及び、希釈によりミセルから放出された脂肪酸が凝集、不溶化することにより、瞬時に泡を消すことができるものと考えられる。脂肪酸は消泡剤として公知である。しかし、すすぎ時の消泡効果と洗浄時の豊かな泡立ちを両立し得ることは、従来の技術からは予測できない意外な効果である。さらに、本発明では、(d)成分の配合により低温保存安定性の向上を達成している。
【0030】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、起泡力、泡消え性及び経済性の観点から、(a)成分を1〜50質量%、好ましくは10〜45質量%、より好ましくは20〜40質量%、更に好ましくは25〜35質量%含有する。また、(b)成分を0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜6質量%、更に好ましくは2〜5質量%含有する。なお、本発明において質量%や質量比等を求めるための(b)成分の量は、酸型化合物としての量である。また、洗浄剤組成物の油汚れに対する乳化力を高め、洗浄力を増強する観点から(c)成分を好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%、更に好ましくは3〜12質量%、特に好ましくは4〜10質量%含有する。なお、ここで示す(c)成分の含有量は、結晶水を除いた質量である。また、(d)成分を好ましくは15.5〜24質量%、より好ましくは16〜23質量%、特に好ましくは18〜22質量%含有する。
【0031】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、起泡力及び泡消え性の観点から、(b)成分/(a)成分の質量比は0.0010〜1.0が好ましく、より好ましくは0.010〜0.50、更に好ましくは0.050〜0.10である。
【0032】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、低温保存安定性の観点から、(b)成分/(d)成分の質量比は0.01〜0.2であり、好ましくは0.10〜0.12、更に好ましくは0.10〜0.11である。
【0033】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、(a)成分として(a’)成分を、(a)成分中、5〜95質量%、更に20〜70質量%、より更に55〜65質量%含有することが好ましい。
【0034】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、起泡力及び泡消え性の観点から、(b)成分/(a’)成分の質量比は、好ましくは0.001〜2、より好ましくは0.01〜1、更に好ましくは0.02〜0.5、より更に好ましくは0.05〜0.2である。
【0035】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、(a)成分として(a'')成分を、(a)成分中、5〜95質量%、更に30〜80質量%、より更に35〜45質量%含有することが好ましい。
【0036】
また、(a)成分として(a’)成分と(a'')成分とを含有する場合、洗浄時の起泡性や泡持続性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、(a’)/(a'')の質量比は、0.1〜10、更に0.2〜3、より更に0.3〜2が好ましい。
【0037】
また、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物では、起泡力及び泡消え性の観点から、(b)成分/(a'')成分の質量比は、好ましくは0.001〜11、より好ましくは0.01〜5、更に好ましくは0.05〜1、より更に好ましくは0.1〜0.3である。
【0038】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、低温保存安定性の更なる改善の観点から、プロピレングリコール〔以下、(e)成分という〕を含有することが好ましい。(e)成分と、(d)成分と(e)成分の合計の質量比(e)/{(d)+(e)}は、低温保存安定性の改善の観点から、好ましくは0.090〜0.21であり、0.10〜0.20がより好ましく、0.12〜0.15が更に好ましい。なお、(e)成分のプロピレングリコールは、1,2−プロパンジオールである。
【0039】
本発明では組成物中の全界面活性剤の含有量に対する(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の合計質量が20〜80質量%、更に30〜70質量%、より更に35〜65質量%であることが洗浄性能、低温保管時の安定性及び経済性の観点から好ましい。ここで、全界面活性剤の含有量は、(a)成分、(b)成分、並びに、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤の総含有量であり、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤としては、(f)アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤〔以下、(f)成分という〕、並びに、(g)(g1)両性界面活性剤、(g2)アルカノールアミド型界面活性剤及び(g3)アミンオキシド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤〔以下、(g)成分という〕等が挙げられる。
【0040】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、すすぎ時には瞬時にぬるつきがなくなり、少量の水ですすぎを完了できるという観点から、(f)成分として、アルキル基の炭素数が6〜18のアルキルグリセリルエーテルを含有することが好ましい。具体的には下記一般式(f1)の化合物が好適である。
1f−O−(Gly)r−H (f1)
〔式中、R1fは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Glyはグリセリンから2つの水素原子を除いた残基を示し、rは平均付加モル数であり、1〜4の数を示す。〕
【0041】
一般式(f1)において、R1fは炭素数6〜18、好ましくは7〜12、より好ましくは8〜10のアルキル基である。本発明ではすすぎ時のぬるつき低減の観点から、分岐構造を有する化合物が好適であり、R1fは分岐構造を有するアルキル基が好ましく、具体例として、2−エチルヘキシル基、sec−オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2−エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。一般式(f1)において、rは1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、r=1の化合物が最も好ましい。特に好ましい化合物は、R1fが2−エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0042】
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位のヒドロキシ基が結合している−CH2CH(OH)CH2−で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位のヒドロキシ基が結合している−CH(CH2OH)CH2−で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0043】
一般式(f1)の化合物を得るには、例えば炭素数6〜10のアルコールとしてR1f−OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。
【0044】
(f)成分の含有量は洗浄性能の観点から、組成物中、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、2〜10質量%が更に好ましい。
【0045】
本発明では、(g)成分として、(g1)両性界面活性剤〔以下、(g1)成分という〕、アルカノールアミド型界面活性剤〔以下、(g2)成分という〕及びアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(g3)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。(g)成分は、炭素数8〜18のアルキル基を有するものが好ましい。
【0046】
本発明では増泡効果のある界面活性剤として(g1)成分を使用してもよい。(g1)成分として、スルホベタイン型界面活性剤、カルボベタイン型界面活性剤、及びイミダゾリン型界面活性剤が挙げられる。
【0047】
洗浄時の起泡性及び泡持続性を改善するが、すすぎ時の瞬時の泡消え性を損なうことがない点で、スルホベタイン型界面活性剤が好ましい。スルホベタイン型界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10〜18のN−アルキル−N,N−ジメチル−N−スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が10〜18のN−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10〜18のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10〜18のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが好適である。(g1)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。また(g1)成分/〔(a)成分+(g1)成分〕の質量比は、洗浄時の起泡性/泡持続性の向上とすすぎ時の泡消え性の観点から、好ましくは0.01〜0.2、より好ましくは0.02〜0.1である。
【0048】
本発明では増泡効果のある界面活性剤として(g2)成分を使用してもよい。(g2)成分としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミンなどのアルカノールアミンとラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸とのアミド化物が挙げられる。(g2)成分の含有量はすすぎ時の消泡効果の観点で、組成物中、0〜10質量%、更に0〜5質量%、より更に0〜1質量%が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0049】
本発明では増泡効果のある界面活性剤として(g3)成分を使用してもよい。(g3)成分としては、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジアミノメチルオキシド(アルカノイルとしてはラウロイル又はミリスチロイル)、N−アルキル−N,N−ジアミノメチルオキシド(アルキル基としてはラウリル基又はミリスチル基)が挙げられる。(g3)成分の含有量はすすぎ時の消泡効果の観点で、組成物中、0〜10質量%、更に0〜5質量%、より更に0〜1質量%が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0050】
本発明では、手洗い用食器洗浄剤組成物の貯蔵安定性を向上させる効果がある添加剤として、ハイドロトロープ剤〔以下、(h)成分という〕を使用してもよい。ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸又はこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸又はその塩が良好である。(h)成分の含有量は貯蔵安定性の観点から、組成物中に好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1.5〜5質量%である。
【0051】
本発明では、手洗い用食器洗浄剤組成物のゲル化防止のために重合体〔以下、(i)成分という〕、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体を使用してもよい。とりわけポリアルキレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ゲル化防止のための重合体としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200〜3,000のポリプロピレングリコール、及び重量平均分子量が200〜3,000のポリエチレングリコールを挙げることができる。(i)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。
【0052】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。水としては脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0053】
水を含有する液体組成物の場合、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の25℃におけるpHは洗浄力及び貯蔵安定性の観点から、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8であり、このようなpHへの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。なお、pH調整のために用いた化合物のうち、水酸化マグネシウム等、(c)成分に該当するものは、(c)成分として取り扱うものとする。
【0054】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは5〜500mPa・s、より好ましくは10〜300mPa・sである。粘度は(d)成分、(e)成分、(h)成分、(i)成分などで調整することができる。
【0055】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、香料、染料、顔料などの成分を含有することができる。
【0056】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物は、食器の手洗い洗浄に用いられる。手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計濃度は、好ましくは1,000〜30,000ppm、より好ましくは1,000〜20,000ppm、更に好ましくは2,000〜10,000ppmであることが、高い起泡性と泡持続性の点から好ましい。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では使用した組成物1質量部に対してすすぎ水3.3〜133質量部で泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3〜1/10である。
【実施例】
【0057】
下記の配合成分を用いて表1〜3の手洗い用食器洗浄剤組成物を調製し、下記の各評価を行った。結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の配合成分の質量%は、全て配合成分の有効分に基づく数値である。
【0058】
<配合成分>
・ ApS−Na:アルキル鎖がC8:C10:C12=5:5:90(質量比、Cの次の数字は炭素数を意味する)の天然アルコール1モルにプロピレンオキシドを0.6モル付加して得られたものを三酸化イオウにより硫酸化したのち、水酸化ナトリウム水溶液で中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)もの。
・ ApS−NH4:アルキル鎖がC8:C10:C12=5:5:90(質量比、Cの次の数字は炭素数を意味する)の天然アルコール1モルにプロピレンオキシドを0.6モル付加して得られたものを三酸化イオウにより硫酸化したのち、アンモニア水で中和した(水で10%希釈したもののpHが7.2になるまで中和した)もの。
・ ES4.0K100H:ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム〔ラウリルアルコール1モルにエチレンオキシドを3.8モル付加して得られたものを三酸化イオウにより硫酸化したのち、水酸化ナトリウム水溶液で中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)もの。〕
【0059】
・ DASS:スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム:〔関東化学(株)〕
・ Isalchem123−AS:Isalchem123(サソール社製、内部オレフィンをヒドロホルミル化して得られたアルコール)を硫酸化して得られた化合物。(炭素数12のアルキル基及び炭素数13のアルキル基を50/50の質量比で含有し、分岐率は94モル%)
【0060】
・ ヤシ油脂肪酸:品名 ルナック L−55〔花王(株)〕
・ BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(品名:BDG−NS〔日本乳化剤(株)〕)
・ プロピレングリコール:品名「プロピレングリコール工業グレード」(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー)
・ GE−EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル99質量%)
・ EtOH:95度合成エタノール
・ エチレングリコール:関東化学(株)
・ 1,3−プロパンジオール:和光純薬工業(株)
・ 1,4−ブタンジオール:和光純薬工業(株)
・ PHG10:エチレングリコールモノフェニルエーテル(品名:フェニルグリコール〔日本乳化剤(株)〕)
・ PHG20:ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数=2)(品名:PhG−20〔日本乳化剤(株)〕)
・ PHG30:ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数=3)(品名:PhG−30〔日本乳化剤(株)〕)
・ PHG55:ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数=5.5)(品名:PhG−55〔日本乳化剤(株)〕)
【0061】
<低温保存安定性>
常温で均一透明な外観である手洗い用食器洗浄剤組成物30gを石田容器(株)製ガラス広口規格ビンNo.6に入れ密栓後、−5℃の環境で静置した。組成物の外観を観察し、常温と同様、均一透明な外観を示す日数を記載した。尚、均一透明でない外観の組成物は、沈澱、白濁、分離、結晶化など様々な状態に変化した。また、配合終了直後に常温で均一透明な外観を示さない組成物については表中、「配合不可」と記載し、20日を超えて均一透明な外観を示す組成物については「20<」と記載した。
【0062】
<泡消え性評価>
(1)組成物を3.5°dH硬水で30倍希釈し、ポンプフォーマー(200メッシュ1枚)により、3gの泡を500mlのメスシリンダー(材質:ガラス、アズワン製)に作製した。
(2)手製のジョウロの下面を上記メスシリンダーの上端に設置して、当該ジョウロに3.5°dH硬水100mlを瞬時に満たして、そのままジョウロを通じて硬水を泡に添加し、30秒後の泡量を確認した。
(3)(2)の作業を繰り返し、メスシリンダー内の水面が見えた回数を終点として泡消え性の評価とした(数字が少ないほど良、市販の手洗い用食器洗浄剤は6回を超える水準にある。)。
【0063】
なお、ポンプフォーマーは市販の「キュキュットクエン酸効果泡タイプ」(花王(株)製:2007年製造)のポンプフォーマーを水で十分洗浄・乾燥させたものを用いた。手製のジョウロは、250mlのポリプロピレン製広口びん(アズワン製:アイボーイ広口びん)の底部約3分の1を除去し、フタを外した状態の開口部に、均一に13個の直径約2mmの穴を開けた薄いプラスチック製の多孔板を固定して作製した。上部から水を注ぐと下端面の穴から水が放出される。
【0064】
<起泡力評価>
手洗い用食器洗浄剤組成物0.5質量%水溶液(使用水は3.5°dHの水)に汚れ成分として市販のバターを1.0質量%添加し試料とする。測定方法は、直径5cm、高さ13cmの円筒ガラス管に前述の試料40mlと直径1.0cmのテフロン(登録商標)球を20個入れ、20℃で15分間回転撹拌を行い、停止直後の泡高さ(mm)を測定する。
【0065】
<洗浄力評価>
JIS−K−3362に記載されているリーナッツ形の装置を用いて以下の方法で洗浄力評価を行った。牛脂と菜種油を9:1の質量比で混合したものを作製し、モデル汚れとする。40mm×80mm×1mmポリエチレン試験片6枚を一組にして4桁天秤で質量を測定する(x)。ポリエチレン試験片両面の下端から5cmの高さまでモデル汚れ0.1〜0.4gを均一に塗布したものを作成し、汚れピースとする。同汚れピース6枚を1組とし、4桁天秤で質量を測定する(y)。ガラス製1Lビーカーに手洗い用食器洗浄剤組成物0.5質量%水溶液(使用水は3.5°dHの水)600gを入れる(洗浄水)。また、別のガラス製1Lビーカーに3.5°dHの水600gを入れる(すすぎ水)。洗浄水とすすぎ水は25±1℃に管理する。スライドガラスセット板に汚れピース1組(6枚)をセットし、洗浄水中に入れ、洗浄力試験器(回転速度250±10r/min)を用いて1分間洗浄する。次に、洗浄水からスライドガラス板をすすぎ水中に入れ換え、洗浄力試験器(回転速度250±10r/min)を用いて1分間すすぐ。すすぎが終了したら24時間自然乾燥し、汚れピース6枚を1組とし、4桁天秤で質量を測定する(z)。以下の式で洗浄率を求める。
洗浄率(%)={(y)−(z)}/{(y)−(x)}×100
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表1〜3の結果から、実施例の組成物は低温保存安定性とすすぎ性に優れていることが分かった。
【0070】
実施例1及び5と比較例1〜9を比較すると、(d)成分を含有すると低温保存安定性に優れ、すすぎ性の良い洗浄剤として実施し得るが、(d)成分を含有しないと、配合終了直後に常温で均一透明な外観を示す組成物が得られないか、あるいは低温保存安定性が十分でないことが分かった。
【0071】
また、実施例6〜8より本発明品は、低温保存安定性、洗浄力、起泡力、及び泡消え性を併せ持つことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の手洗い用食器洗浄剤組成物はすすぎ性と低温保存安定性を両立し、手洗い用食器洗浄剤組成物として適している。