(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774383
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】切断機用カバー装置及び切断機用カバー装置を装着した切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/16 20060101AFI20150820BHJP
B28D 1/04 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
B23D45/16
!B28D1/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-134388(P2011-134388)
(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公開番号】特開2013-838(P2013-838A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英治
【審査官】
齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−095602(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0092709(US,A1)
【文献】
特開2010−058248(JP,A)
【文献】
特開2010−036269(JP,A)
【文献】
特開平07−136840(JP,A)
【文献】
実開昭59−074040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/16
45/04
B28D 1/04
B27B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、
前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記可変部材を、回転操作可能に設けられ、外周に回転中心からの距離が異なる前記当接部を複数形成したカム部材としたことを特徴とする切断機用カバー装置。
【請求項2】
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、
前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記可変部材を、スライド操作可能に設けられ、前記他方との当接側に高さが異なる前記当接部を複数形成した階段状部材としたことを特徴とする切断機用カバー装置。
【請求項3】
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、
前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、
前記固定カバーに、前記傾動体の傾動に伴う前記切断機との干渉を回避する円弧状の開口部を形成して、前記傾動体の下部に、前記傾動体の下側で前記開口部を閉塞するガード部材を連結する一方、前記ベース又は前記固定カバーに、前記傾動体が下限の傾動位置へ近づくに従って前記ガード部材を前記開口部から離間させて前記傾動体の下限の傾動位置への傾動を許容する傾斜案内部を形成したことを特徴とする切断機用カバー装置。
【請求項4】
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、
前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記可変部材を、前記傾動体の傾動中心と前記回転工具の回転中心との間に配置したことを特徴とする切断機用カバー装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の切断機用カバー装置の前記傾動体に装着され、先端に設けた円盤状の回転工具が前記固定カバーで覆われてなることを特徴とする切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベース上に設けて切断機の回転工具を覆う固定カバーに対し、該回転工具を装着した傾動体の傾動位置を変更することにより、ベースから下方へ突出する回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置、切断機用カバー装置を装着した切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、円盤状の回転工具を駆動する切断機に備えられる切断機用カバー装置が、回転工具を覆い、この切断機用カバー装置に、被切断材に対する回転工具の切り込み深さを調整する機能を持たせたことが開示されている。特許文献1の切断機用カバー装置では、傾動体に、回転工具を回転可能に保持し、傾動体における傾動軸を中心とした周方向外面を移動可能な深さ止め具を設けた上で、切断機用カバー装置に固定されたカバー本体に、前記深さ止め具と連結可能な連結手段を設けている。
【0003】
この切断機用カバー装置によれば、深さ止め具を前記周方向外面を移動させて設定したい切り込み深さに対応させた傾動体の所望の位置に固定した後に、回転工具を保持した傾動体をカバー本体に向けて傾動させることで、深さ止め具と連結手段を介在させて、傾動体をカバー本体と連結させることができる。したがって切断機の作動中に、回転工具を被切断材に切り込む深さを一定に保つことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−111853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の切断機用カバー装置では、被切断材に対する回転工具の切り込み深さを調整するために、被切断材に当接するベースの下方への回転工具の突出量を変更する場合には、深さ止め具を傾動体に固定する操作と、深さ止め具をカバー本体の連結手段に連結させる操作とを行う必要があった。したがって、ユーザに対し複数の操作を強いることになるため、前記回転工具の突出量を変更する操作が簡単であるとは言い難かった。
【0006】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、回転工具をベースの下方へ突出させる量を簡単に変更できる切断機用カバー装置、切断機用カバー装置を装着した切断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る切断機用カバー装置は、ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け
、前記可変部材を、回転操作可能に設けられ、外周に回転中心からの距離が異なる前記当接部を複数形成したカム部材としたことを特徴とする。
【0009】
請求項
2の発明は、
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記可変部材を、スライド操作可能に設けられ、前記他方との当接側に高さが異なる前記当接部を複数形成した階段状部材としたことを特徴とする。
【0010】
請求項
3の発明は、
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記固定カバーに、前記傾動体の傾動に伴う前記切断機との干渉を回避する円弧状の開口部を形成して、前記傾動体の下部に、前記傾動体の下側で前記開口部を閉塞するガード部材を連結する一方、前記ベース又は前記固定カバーに、前記傾動体が下限の傾動位置へ近づくに従って前記ガード部材を前記開口部から離間させて前記傾動体の下限の傾動位置への傾動を許容する傾斜案内部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項
4の発明は、
ベース上に、切断機の先端に設けた円盤状の回転工具を縦向き状態で覆う固定カバーを設け、前記固定カバー内に、前記固定カバーに上下方向へ傾動可能に連結されて前記切断機が装着される傾動体を設けて、前記固定カバーに対する前記傾動体の傾動位置の変更により、前記ベースから下方へ突出する前記回転工具の突出量を変更可能とした切断機用カバー装置であって、前記固定カバーと前記傾動体とのいずれか一方に、前記傾動体の下方への傾動に伴って他方と当接する当接部を複数有し、前記当接部の選択操作によって異なる前記傾動位置を設定可能な可変部材を設け、前記可変部材を、前記傾動体の傾動中心と前記回転工具の回転中心との間に配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項
5の発明に係る切断機は、請求項1ないし
4のいずれかに記載の切断機用カバー装置の前記傾動体に装着され、先端に設けた円盤状の回転工具が前記固定カバーで覆われてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1
乃至4の発明に係る切断機用カバー装置及び請求項
5の発明に係る切断機によれば、可変部材における当接部の選択操作によるだけで、傾動体の下方への傾動位置を変更できる。よって、傾動体に装着された切断機の回転工具がベースの下方へ突出する量を簡単に変更できる。
特に、請求項
1の発明によれば、カム部材を回転操作して異なる当接部を選択するだけで、傾動体の下方への傾動位置を変更できる結果、前記回転工具がベースの下方へ突出する量を変更できる。
特に、請求項
2の発明によれば、階段状部材をスライド操作して異なる当接部を選択するだけで、傾動体の下方への傾動位置を変更できる結果、前記回転工具がベースの下方へ突出する量を変更できる。
特に、請求項
3の発明によれば、固定カバーに形成した円弧状の開口部を、ガード部材で閉塞することで、例えば回転工具で被切断材を切断するときに粉塵が開口部から固定カバーの外部に飛散せず、加えてゴミ等の異物が開口部から固定カバー内に侵入することを防止できる。
特に、請求項
4の発明によれば、可変部材を設けた切断機用カバー装置は、省スペース化を実現したコンパクトなものになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1のカッタの側面図である。
【
図2】同カッタが備えるカッタ用カバー装置の斜視図である。
【
図3】同カッタ用カバー装置内に配置された傾動フレームと、カム部材と、回転操作レバーとの分解斜視図である。
【
図4】同カッタ用カバー装置のカム部材に形成された円弧状の凹部に傾動フレームの突起部が当接した状態を示した図である。
【
図7】傾動フレームを下限の傾動位置に傾動させた状態を示す同カッタ用カバー装置の斜視図である。
【
図8】実施形態2のカッタにおけるカッタ用カバー装置の階段状部材に形成された凹部に傾動フレームの突起部が当接した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1ないし
図7を参照しつつ説明する。
図1ないし
図4に示すようにカッタ1は、カッタ用カバー装置10と、カッタ本体40とを備えている。なお、カッタ用カバー装置10は本発明の切断機用カバー装置の一例であり、カッタ本体40は本発明の切断機の一例である。
【0016】
カッタ用カバー装置10は、ベース20と固定カバー30とを備えている。ベース20は、金属によって方形状に形成されている。ベース20は、例えば石材等の被切断材W(
図1参照。)の上面に面接触させて当接するように用いる。ベース20には開口部21が設けられ、この開口部21を通じて後述のダイヤモンドカッタ43(
図1参照。)をベース20の下方へ突き出すことが可能である。固定カバー30は、合成樹脂製でベース20の上面に固定することで立設されている。固定カバー30の外面には、固定カバー30の内部と連通する集塵筒31が設けられている。この集塵筒31には、吸引ホースを介して集塵機が接続可能である。
【0017】
カッタ本体40は、
図1に示すようにモータ収容部41とグリップ部45とを備えている。モータ収容部41の先端には、モータ(図示せず)の回転が伝達されるスピンドル42(
図4参照。)が取り付けられている。このスピンドル42は固定カバー30の内部に突出している。グリップ部45は、モータ収容部41の上方に固定されている。操作者は手でグリップ部45を握ってカッタ40を操作する。グリップ部45の後端側には、コード46が接続されている。コード46によって、モータを働かせる電力が供給される。
【0018】
固定カバー30の内部には、
図1ないし
図4に示すように円盤状のダイヤモンドカッタ43と、傾動フレーム35とが配置されている。ダイヤモンドカッタ43は、ベース20に対して垂直な姿勢でスピンドル42に取り付けられて、固定カバー30は、
図1に示すようにダイヤモンドカッタ43を縦向き状態で覆っている。上記のモータが回転してスピンドル42が回転すること伴って、ダイヤモンドカッタ43が回転駆動する。なお、ダイヤモンドカッタ43は本発明の円盤状の回転工具の一例である。
【0019】
傾動フレーム35は、固定カバー30内に支えられた傾動支点軸36を中心として、ベース20に対して上下方向へ傾動可能とされていると共に、トーションばねB1によって傾動フレーム35の上限の傾動位置P1に付勢されている。この傾動フレーム35には、
図2ないし
図4に示すように傾動フレーム35の貫通孔37と同心で円環状のホルダ部38が一体に形成されている。ホルダ部38には、上記のモータ収容部41の前方に取り付けられてスピンドル42を軸支するギヤケース47が嵌め合わされて装着される。
【0020】
図4に示すように固定カバー30の側面には、傾動支点軸36を中心として円弧状に湾曲した形状の開口部39が設けられている。傾動フレーム35を傾動させると、ギヤケース47から突出したスピンドル42に取り付けられたダイヤモンドカッタ43を、回転可能な状態でベース20の下面に当接する被切断材Wに対して上下移動させることができる。これに伴って、ベース20の開口部21を通じてダイヤモンドカッタ43をベース20の下方へ突き出す量(以下、突出量という。)を変更できる。このときスピンドル42は開口部39を貫通状態で前記上下移動できるため、固定カバー30とスピンドル42との干渉を回避できる。なお、傾動フレーム35は本発明の傾動体の一例である。
【0021】
図2ないし
図4に示すように傾動フレーム35の下部には、合成樹脂製のガード部材50が固定カバー30の上下方向へ回動可能に連結されている。傾動フレーム35の下部には、傾動フレーム35の一部を左右方向へ切り起こした切り起こし部35A、35Bが一対形成されている。各切り起こし部35A、35Bには、軸部材51の挿通孔が設けられている。ガード部材50の上部には、軸部材51の軸受孔50A、50B(
図4参照。)が一対形成されている。軸部材51は両切り起こし部35A、35Bの挿通孔に挿通されて、軸部材51の両端は、両軸受孔50A、50Bに圧入されている。その上で、軸部材51にはコイルばねBが嵌め合わされて、コイルばねBの一端部が傾動フレーム35に係止されている。
図4に示すように傾動フレーム35の上限の傾動位置P1では、コイルばねBの付勢力によってガード部材50は、傾動フレーム35の下側で開口部39を閉塞する位置に保持される。
【0022】
また
図2、3及び
図5に示すようにベース20の上面には、傾斜案内部60が立設されている。傾斜案内部60は、ガード部材50と対向する前側が前方に向けて下り傾斜した傾斜面61を備えている。傾動フレーム35をベース20に対して近づく下方向に傾動させるときは、ガード部材50は、軸部材51を支点として固定カバー30の上方向へ回転しながら傾斜面61上を滑り開口部39から離れて固定カバー30の下方向へ案内される。その結果、傾動フレーム35を前記下限の傾動位置P2(
図7参照。)に傾動させることが可能になる。
図7に示すように傾動フレーム35が前記下限の傾動位置P2に移動すると、ガード部材50における傾斜面61と当接していた面が、ベース20の上面と接触する。
【0023】
さらに
図2及び
図3に示すように固定カバー30は、合成樹脂製の保護カバー32を備えている。保護カバー32は、固定カバー30に取り付けられて傾動支点軸36や可変部材としてのカム部材70を外側から覆う。保護カバー32には、保護カバー32内に固定軸(図示せず。)を突出させた回転操作レバーLが回転可能な状態で保持されている。カム部材70は、回転操作レバーLの固定軸に連結されている。ここでは固定軸を、カム部材70に形成された略矩形形状の角孔部71に嵌着することで、カム部材70を前記固定軸に連結した。これにより、カム部材70を回転操作レバーLと一緒に回転させることができる。
【0024】
カム部材70の外周面には、
図3及び
図4に示すように円弧形状の凹部72が複数(ここでは6つ)形成されている。複数の凹部72は、カム部材70の回転中心R1からの距離を異ならせて周方向にそれぞれ形成されている。
図4に示すようにカム部材70は、傾動フレーム35の傾動中心(傾動支点軸の傾動中心36A)と、ダイヤモンドカッタ43の回転中心(スピンドル42の回転中心42A)との間に配置されている。
【0025】
また
図3及び
図4に示すように、傾動フレーム35には突起部35Cが一体に形成されている。この突起部35Cは、傾動フレーム35をベース20に対して近づく下方向へ傾動させることに伴って凹部72と当接可能に形成されている。本実施形態では、回転操作レバーLの回転操作に伴って、傾動フレーム35を前記下方向へ傾動させたときに突起部35Cが当接する凹部72が異なるように選択できる。よって、6つの凹部72から選択した凹部72にそれぞれ対応させて傾動フレーム35の傾動位置を異ならせることが可能になる。その結果、ダイヤモンドカッタ43の突出量を6段階(ここでは0mm〜25mm)に切り替え可能とした。本実施形態では、傾動フレーム35に取り付けられた固定部材33によって傾動フレーム35を異なる傾動位置に固定可能とした。なお、円弧形状の凹部72は本発明の当接部の一例である。
【0026】
次に本実施形態のカッタ1の動作を説明する。操作者は、カッタ1の動作スイッチをオン状態にし手でグリップ部45を持ってベース20側へ押し下げて、モータ収容部41がベース20に近づくように移動させる。このとき傾動フレーム35は、傾動支点軸36を中心として、ベース20に対して近づくように傾動する。
図4には回転操作レバーLを回転操作してダイヤモンドカッタ43の突出量(0mm)を選択することで、該突出量に対応する凹部72Aに傾動フレーム35の突起部35Cが当接した状態を示した。この状態では、操作者がグリップ部45をベース20側へ押し下げても、カム部材70によって傾動フレーム35の下方向への傾動が阻止されて、傾動フレーム35が上限の傾動位置P1に保持される。よって
図1に示すように、ダイヤモンドカッタ43はベース20の下方へ突き出すことがない。
【0027】
一方、例えば前記突出量として5mmを選択するために回転操作レバーLを時計方向に回転操作した場合には、回転操作レバーLの固定軸に連結されたカム部材70も時計方向に回転する。その後操作者がグリップ部45をベース20側へ押し下げると、傾動フレーム35は、カム部材70の回転中心R1から凹部72Aまでの距離r1と、前記回転中心R1から他の凹部72Bまでの距離r2との差分値(r1−r2)に相当する移動量だけ前記傾動位置P1から下方へ移動可能となる。最終的に傾動フレーム35の突起部35Cが凹部72Bに当接することで、傾動フレーム35は、突起部35Cと凹部72Bとが当接する傾動位置に位置決めされる。したがって、ダイヤモンドカッタ43の突出量を5mmに保ち、ダイヤモンドカッタ43が被切断材Wに切り込まれて被切断材Wを切削できる。被切断材Wの切削時に発生した粉塵は、集塵筒31から吸引ホースを介して集塵機へ回収される。このとき、ガード部材50は固定カバー30の開口部39を閉塞するため、固定カバー30の内部と外部とが連通しない。よって、粉塵が固定カバー30の外部へ飛散することを防止でき、ゴミ等の異物が開口部39から固定カバー30の内部に侵入することも防止できる。
【0028】
ここでは、
図4を用いダイヤモンドカッタ43の突出量として0mmと5mmとを選択した例を示したが、回転操作レバーLを回転操作することで、前記突出量として10mm〜25mmを選択した場合にも、傾動フレーム35は、選択した突出量に対応する凹部72と突起部35Cとが当接する傾動位置に位置決めされる。これにより、ダイヤモンドカッタ43の突出量を選択した値に保つことができる。
【0029】
<実施形態1の効果>
本実施形態のカッタ用カバー装置10及びカッタ用カバー装置10を備えたカッタ1では、回転操作レバーLと一緒にカム部材70を回転操作して異なる円弧状の凹部72を選択するだけで、傾動フレーム35の下方向への傾動位置を変更できる。その結果、傾動フレーム35に装着されたダイヤモンドカッタ43の突出量を簡単に変更できる。
【0030】
また、固定カバー30の側面に形成した開口部39をカード部材50で閉塞することで、ダイヤモンドカッタ43で被切断材Wを切削するときに粉塵が開口部39から固定カバー30の外部に飛散せず、加えてゴミ等の異物が開口部39から固定カバー20の内部に侵入することを防止できる。
【0031】
さらにカム部材70を、傾動フレーム35の傾動中心と、ダイヤモンドカッタ43の回転中心との間に配置したため、カム部材70を設けたカッタ用カバー装置10は、省スペース化を実現したコンパクトなものになる。
【0032】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を
図8を参照しつつ説明する。ここでは実施形態1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。
図8に示すカッタ用カバー装置10Aは、階段状部材80を備えている。この階段状部材80は、実施形態1と同様に保護カバー(図示せず。)で覆われている。階段状部材80の前面には、棒状のスライド操作レバー81が突設されている。保護カバーには、保護カバーの前後方向(
図8の左右方向)に長い長孔が形成されている。スライド操作レバー81は、前記長孔から保護カバーの外側へ突出するように配置されている。スライド操作レバー81を前記前後方向へスライド操作することで、階段状部材80もベース20上を前後方向へスライド可能となる。
【0033】
階段状部材80の上端面には、階段状部材80の下端面からの高さを異ならせた凹部82が階段状となるように複数(ここでは5つ)形成されている。階段状部材80も、実施形態1のカム部材70と同様に、傾動フレーム35の傾動中心と、ダイヤモンドカッタ43の回転中心との間に配置されている。
【0034】
本実施形態では、スライド操作レバー81のスライド操作に伴って、傾動フレーム35が下方向へ傾動したときに突起部35Cが当接する凹部82が異なるように選択できる。よって実施形態1と同様に傾動フレーム35の傾動位置を異ならせることができ、ダイヤモンドカッタ43の突出量を5段階(ここでは0mm〜20mm)に切り替え可能とした。なお凹部82は本発明の当接部の一例である。
【0035】
次に本実施形態のカッタ用カバー装置10Aを備えたカッタの動作を説明する。
図8には、スライド操作レバー81をスライド操作してダイヤモンドカッタ43の突出量として0mmを選択することで、該突出量に対応する凹部82Aに突起部35Cが当接した状態を示した。この状態では、実施形態1と同様に傾動フレーム35が上限の傾動位置P1に保持されて、ダイヤモンドカッタ43はベース20の下方へ突き出すことがない。
【0036】
一方、例えば前記突出量として20mmを選択するためにスライド操作レバー81を保護カバー30の後方側(
図8の右方向)へスライド操作することで、階段状部材80を前記後方側へスライドさせる。その後操作者がグリップ部45をベース20側へ押し下げると、傾動フレーム35は、階段状部材80の下端面から凹部82Aまでの高さH1と、前記下端面から他の凹部82Eまでの高さH2との差分値(H1−H2)に相当する移動量だけ前記傾動位置P1から下方へ移動可能となる。最終的に突起部35Cが凹部82Eに当接することで、傾動フレーム35は、突起部35Cと凹部82Eとが当接する傾動位置に位置決めされる。したがって、ダイヤモンドカッタ43の突出量を20mmに保ち、ダイヤモンドカッタ43が被切断材Wに切り込まれて被切断材Wを切削できる。
【0037】
図8では、ダイヤモンドカッタ43の突出量として0mmと20mmとを選択した例を示したが、スライド操作レバー81をスライド操作することで、前記突出量として10mm等を選択した場合にも、傾動フレーム35は、選択した突出量に対応する凹部82と突起部35Cとが当接する傾動位置に位置決めされる。これにより、ダイヤモンドカッタ43の突出量を選択した値に保つことができる。
【0038】
<実施形態2の効果>
本実施形態のカッタ用カバー装置10A及びカッタ用カバー装置10Aを備えたカッタでは、スライド操作レバー81によって階段状部材80をスライド操作して異なる凹部82を選択するだけで、傾動フレーム35の下方への移動を変更できる。その結果、傾動フレーム35に装着されたダイヤモンドカッタ43の突出量を変更できる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態1とは異なり、カム部材を傾動フレーム35に回転操作可能に保持した上で、カム部材の凹部と当接可能な突起部を、固定カバー30に備えられた保護カバー32に設け、傾動フレーム35を、凹部と突起部が当接する傾動位置に位置決めしてもよい。
【0040】
また上述した実施形態1、2とは異なり、傾斜案内部60を固定カバー30側に固定して、カード部材50が傾斜案内部60の前側に設けた傾斜面61を滑りながら固定カバー30の下方向へ案内されるようにしてもよい。さらに上述した実施形態1とは異なり、カム部材の外周面に凹部72を5つ以下又は7つ以上形成することで、ダイヤモンドカッタ43の突出量を多段階に切り替え可能としてもよい。加えて上述した実施形態2とは異なり、階段状部材の上端面に凹部82を階段状となるように4つ以下又は6つ以上形成することで、ダイヤモンドカッタ43の突出量を多段階に切り替え可能としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・カッタ、10、10A・・カッタ用カバー装置、20・・ベース、30・・固定カバー、35・・傾動フレーム、36A・・傾動支点軸の傾動中心(傾動フレームの傾動中心)、39・・固定カバーの開口部、42A・・スピンドルの回転中心(ダイヤモンドカッタの回転中心)、43・・ダイヤモンドカッタ、50・・ガード部材、60・・傾斜案内部、70・・カム部材、72・・カム部材の凹部、80・・階段状部材、82・・階段状部材の凹部、H1、H2・・階段状部材の下端面から階段状部材の凹部までの高さ、P2・・傾動フレームの下限の傾動位置、R1・・カム部材の回転中心、r1、r2・・カム部材の回転中心からカム部材の凹部までの距離。