特許第5774384号(P5774384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5774384-低温の液体のためのピストンポンプ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774384
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】低温の液体のためのピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 15/08 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   F04B15/08
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-137404(P2011-137404)
(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2012-2224(P2012-2224A)
(43)【公開日】2012年1月5日
【審査請求日】2014年2月27日
(31)【優先権主張番号】00988/10
(32)【優先日】2010年6月21日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】511151341
【氏名又は名称】ファイブズ、クリオメック、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】FIVES CRYOMEC AG
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ドルボ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−257034(JP,A)
【文献】 特公昭44−028067(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温の液体のためのピストンポンプであって、
−シリンダヘッド室(1)とシリンダライナ(2)とをポンプシリンダ(3)内に有し、
−シリンダライナ(2)内に導かれるポンプピストン(4)を有し、
−シリンダヘッド室(1)内に配置されているバルブヘッド(5)を有し、
−ポンプシリンダ(3)上に配置可能なシリンダヘッド(6)を有し、
シリンダヘッド室(1)は、シリンダライナ(2)とシリンダヘッド(6)との間のポンプシリンダ(3)内に構成されており、
ポンプピストン(4)は、シリンダライナ(2)内でピストン行程作用のために往復運動するように構成されており、
−ポンプピストン(4)は、切頭円錐形に形成されたピストン先端部(40)を有し、
−バルブヘッド(5)は、出口開口部(56)を有しピストン先端部(40)に対応する空洞(50)を有し、
−排出弁(23)は、出口開口部(56)に隣接して、シリンダヘッド(6)にめり込むように配置されており、
ピストン先端部(40)は、ピストンポンプ行程が最大の際に空洞(50)の領域を貫通するように構成されている
ことを特徴とするピストンポンプ。
【請求項2】
ピストン先端部(40)の切頭円錐形の形態は、当該切頭円錐形の高さが当該切頭円錐形の底面の直径より大きい、というように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のピストンポンプ。
【請求項3】
排出弁(23)は、バルブエンドパッドとして構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のピストンポンプ。
【請求項4】
バルブヘッド(5)のシリンダライナ側とシリンダヘッド側の当接面(52、54)は、それぞれ、ラッピング処理された平らな表面を有している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う低温の液体のためのピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特には低温の液体のためのピストンポンプに関しており、当該ピストンポンプは、
−シリンダヘッド室とシリンダライナとをポンプシリンダ内に有し、
−シリンダライナ内に導かれるポンプピストンを有し、
−シリンダヘッド室内に配置されているバルブヘッドを有し、
−ポンプシリンダ上に配置可能なシリンダヘッドを有し、
シリンダヘッド室は、シリンダライナとシリンダヘッドとの間のポンプシリンダ内に構成されており、
ポンプピストンは、シリンダライナ内でピストン行程作用のために往復運動するように構成されている。
【0003】
ピストンポンプ(プランジャーポンプ(Tauchkolbenpumpen、Plungerpumpen)とも呼ばれる)は、基本的には、多数の応用において知られている。当該ピストンポンプは、常に排出用の要素(ピストン)を有しており、当該排出用の要素は、ポンプ作業空間で軸方向の運動を実施する。前述の場合、排出用の要素は、ポンプピストンであり、ポンプ作業空間は、バルブヘッド内とシリンダライナ内とに存在している。当該軸方向の運動は、シリンダライナ内のポンプピストンの往復運動である。
【0004】
前述のタイプのピストンポンプは、特には超高圧用に設計される低温ポンプに利用される。例えば、500バール〜1500バール乃至それ以上の範囲の作動圧力を伴う、液体窒素あるいは液体メタンのような媒体のための低温ポンプである。
【0005】
このようなポンプの例は、米国特許出願公開US2003/0080512号明細書に記載されている。当該文書は、冒頭で述べられた構造を有する、あるタイプの超高圧用の低温ポンプを示している。
【0006】
当該米国特許出願公開US2003/0080512号明細書では、環状の小室が、シリンダライナと密閉されたシリンダヘッドとの間のポンプシリンダの要素内に形成されており、当該シリンダヘッドは、高圧状態の低温の液体のための出口管を有している。当該環状の小室には、バルブヘッドが設置されており、低圧状態の低温の液体のための流入管が、当該環状の小室と結合している。バルブヘッドは、斜めに配置された導管を有し、低温の液体は、当該導管を介して吸引される。バルブヘッドは、軸方向に配置された凹部を排出側に有し、当該凹部には、密閉されたシリンダヘッドに当接する排出弁が、突入している。当該排出弁は、完全にバルブヘッドの内側に取り付けられた状態である。ポンプピストンは、底部において短い切頭円錐形に形成されたピストン先端部と、切頭円錐形状部上に形成された中央突出カム(Nocken)と、を有している。ポンプピストンの最大ピストン行程では、当該カム(Nocken)は、シリンダヘッドのわずかな窪みに入り込み、ピストン先端部の切頭円錐形の底部は入り込まない。そのため、当該領域では機械的な排出が起こらないため、この解決方法では、当該窪みと当該排出弁との間の排出管は、低温媒体から全く解放されない。比較可能な形態のピストン先端部を有するピストンポンプは、さらに、以下の欠点を有する。すなわち、各ポンプピストン行程において、ピーク圧力ないしはサージ圧力(Druckstoesse)が発生し、増大する作動圧力に伴って、当然、素材に対する常に高い周期的負荷(Wechselbelastung)をも意味する。これは、長い間には、素材疲労や破損といった結果をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高いないしは非常に高い作動圧力用に設計されつつ、確実に故障なく作動する、低温の液体のためのピストンポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴によって解決される。
【0009】
本発明に従う低温の液体のためのピストンポンプにおいては、基本的に以下の通りである。
−切頭円錐形の形態からなるピストン先端部を有するポンプピストンが利用されており、
−バルブヘッドは、出口開口部を有しピストン先端部に対応する空洞を有し、
−排出弁は、出口開口部に隣接して、シリンダヘッドに入り込むように配置されており、
−ピストン先端部は、ピストンポンプ行程が最大の際に空洞の領域を貫通するように構成されている。
【0010】
当該ピストン先端部は、バルブヘッドの空洞にぴったり合うように形作られ、最大ピストン行程では、当該空洞の領域に完全に入り込むので、低温媒体は、各ピストンポンプ行程で機械的に常に、バルブヘッドから実際上完全に排除される。加えて、排出弁もまた、バルブヘッドの出口開口部に直接隣接して、密閉された圧力管に入り込むように配置されているため、実際上、低温媒体が残留できるポンプ作動室内の空洞がなく、媒体の残留による機能障害は、格段に減少する。
【0011】
ピストン先端部が切頭円錐形に形成されることによって、ピーク圧力(Druckstoesse)が格段に軽減されるため、ピストンポンプの耐用年数及び信頼性が高められる。ピストン先端部の切頭円錐形の形態は、当該切頭円錐形の高さが当該切頭円錐形の底面の直径より大きい、というように構成されているため、円錐角が浅いことにより、際だって小さいサージ圧力(Druckstoesse)が生じる。
【0012】
バルブヘッドの単純な構造は、更なる利点をもたらす。排出弁は、もはやバルブヘッドの領域に配置されていないため、バルブヘッド表面を容易に手直しすることが可能になる。バルブヘッド表面は、とりわけ、シリンダライナとのバルブヘッドの接触面、及び、シリンダライナは、例えばラッピング処理のような、微細加工方法を用いた表面の円滑化を必要とする。そのため、加工表面を埋め込むことは、回避することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ピストンポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態が、図面に基づいて説明される。
【0015】
図1は、以下を有する、低温の液体のためのピストンポンプを示している。すなわち、
−ポンプシリンダ3内のシリンダヘッド室1及びシリンダライナ2と、
−シリンダライナ2内に導かれるポンプピストン4と、
−シリンダヘッド室1内に配置されているバルブヘッド5と、
−ポンプシリンダ3上に設置可能なシリンダヘッド6と、
を有している。シリンダヘッド室1は、シリンダライナ2とシリンダヘッド6との間のポンプシリンダ3内に配置されており、ポンプピストン4は、シリンダライナ2内でピストン行程作用のために往復運動するように構成されている。当該図面では、ポンプピストン4は、最大ポンプピストン行程位置にある。
【0016】
ポンプシリンダ3は、シリンダヘッド室1の領域につながるインレットフランジ11を有するインレット10を有し、ポンピング対象の低温媒体は、当該インレットフランジ11を介して、低圧力下でシリンダヘッド室1に到達する。更に、ポンプシリンダ3は、ガス抜き排出口12を有している。当該ガス抜き排出口12も、シリンダヘッド室1に接続されており、当該ガス抜き排出口12を介して、気化した低温媒体が、外に出ることが可能である。更に、ポンプシリンダ3は、ポンプシリンダ3とシリンダライナ2との間の円筒殻形の中間空間14と接続している漏出液排出口13を有している。ここに集結し得る漏出液は、当該漏出液排出口13を介して、外に出ることが可能である。ポンプシリンダ3の更なる構造上の詳細は、本発明の機能にとっては重要ではないため、ここでは記述されない。
【0017】
ポンプシリンダ3は、シリンダヘッド6によって密閉される。シリンダヘッド6は、ポンプシリンダ3上において、シール状態でネジ止めされて、装着されている。シリンダヘッド6は、排出口フランジ21に当接する排出口20を有する。排出口20の側で、当該排出口フランジ21は、シリンダヘッド6上において、シール状態でネジ止めされて、装着されている。低温媒体は、高圧下では、当該排出口20を介して外に出ることが可能である。シリンダヘッド6は、軸方向に配置された排出管22を有しており、当該排出管22内のシリンダヘッド室側では、排出弁23が、バルブエンドパッド(Ventilpilz)の形態で深くめり込むように配置されている。シリンダヘッド6は、シリンダヘッド室側において、平らな当接面24を有している。
【0018】
シリンダライナ2は、本質的に、中空シリンダの形状を有しており、当該シリンダライナ2は、ポンプシリンダ3内で軸方向に沿って、シリンダライナ2の外表面とポンプシリンダ3の内平面との間に前述の薄い円筒殻形の中間領域14がある、といった態様で配置されている。シリンダライナ2は、シリンダヘッド室側に、平らな当接面30とはめこみ凹部31とを有している。当該はめ込み凹部31内には、圧力ばね32とバルブプレート33とが配置され、それらは共にインレットバルブを形成している。
【0019】
ポンプピストン4は、シリンダライナ2内において、軸方向にスライドして導かれ、切頭円錐形に形成されたピストン先端部40を有している。ピストン先端部40の切頭円錐形は、当該切頭円錐形の高さが当該切頭円錐形の底部の直径より大きい、というように構成されている。後者は、本質的に、ポンプピストン4の横断面に対応し、切頭円錐形の底部の移動範囲内でバルブプレート33の形態に適合されている。
【0020】
ポンプピストン4は、ピストン先端部に近い領域に、複数のリング溝42と複数のPTFE/ブロンズリング43、44、45と一つの案内リング46とからなる、ラビリンス状の構成を有するシール領域41を有している。PTFE/ブロンズリング43、44、45は、構造上及び機能上は基本的に知られており、例えば冒頭に記載された米国特許出願公開US2003/0080512号明細書にも記載されている。これらは、ポンプピストン4の駆動領域とポンプ作動室との間に、超高圧下でさえ効果的なシール(パッキン)をもたらすのに、役立つ。
【0021】
シリンダライナ2とシリンダヘッド6との間のシリンダヘッド室1内に設置されるバルブヘッド5は、本質的に、リング溝状の外側切り込み(Ausseneinkerbung)を有する中空シリンダの形状を有している。当該中空シリンダは、軸方向に配置されて貫通する空洞50によって形成され、当該空洞50は、ポンプピストン4のピストン先端部40の形態に対応している。いくつかの供給管51が、外側切り込み(Ausseneinkerbung)の領域から、バルブプレート33の領域にあるシリンダライナ側の内表面に通じている。具体的には、バルブプレート33がインレットバルブ機能の主要部分である供給管51の横断面を覆う、という態様である。更に、バルブヘッド5は、シリンダライナ側に当接面52を有しており、当該当接面52は、銅パッキン53を介して、シリンダライナ2の小室側の当接面30に当接している。更に、バルブヘッド5は、シリンダヘッド側に更なる当接面54を有しており、当該当接面54は、更なる銅パッキン55を介して、シリンダヘッド6の小室側の当接面24に当接している。この結果、インレット領域(シリンダヘッド室1)と排出領域(排出管22)とは、高い作動圧力下でさえ、互いにシール(パッキン)しあう、という状態が実現される。
【0022】
バルブヘッド5は、シリンダヘッド側に出口開口部56を有する。バルブヘッド5が取り付けられた状態では、出口開口部56は、排出弁23に当接している。ポンプピストン4のピストン先端部40とバルブヘッド5の空洞50とは、ピストンポンプ行程が最大の際に、空洞50の領域が、ピストン先端部40によって完全に貫通されて塞がれる、というように設計される。この態様においては、ピストンポンプ行程が最大の際に、ポンプ作動室に無視可能な微量のポンピング対象の低温媒体だけがとどまる。
【0023】
本発明によるピストンポンプは、以下のように機能する。すなわち、ポンプピストン4が戻る際に、バルブヘッド5の空洞50内に、及び、シリンダライナ2のはめこみ凹部31の領域内に、中空空間が発生する。当該中空空間は、ポンプ作動室と呼ばれる。この時に発生する吸引作用によって、低温媒体が、供給管51とバルブプレート33とを介して、当該ポンプ作動室内に吸引される。従って、ポンプ作動室は、ピストンポンプ行程が最小の際に、最大の大きさを維持する。続いて生じるポンプピストン4の突出の際には、バルブプレート33は閉まり、排出弁23が開く。従って、(図1に示されるように)ピストンポンプ行程が最大の際に、前もってポンプ作動室内に吸引された低温媒体の全てが、排出管22を介して排出される。
【0024】
ピストン先端部40の提案される形態によって、サージ圧力(Druckstoesse)が格段に軽減され得て、ピストンポンプの耐用年数及び信頼性が高められ得る、ということが実現される。ピストン先端部の切頭円錐形は、当該切頭円錐形の高さが当該切頭円錐形の底面の直径より大きい、というように形成されるため、円錐角が浅いことにより、際だって小さいサージ圧力(Druckstoesse)が生じる。原理的に、ピストン軸Aに対して本質的に垂直に方向付けられたピストン先端部に当接する圧力面は、大幅に縮減されるか、最小限に抑えられる。
【符号の説明】
【0025】
1 シリンダヘッド室
2 シリンダライナ
3 ポンプシリンダ
4 ポンプピストン
5 バルブヘッド
6 シリンダヘッド
10 インレット
11 インレットフランジ
12 ガス抜き排出口
13 漏出液排出口
14 中間空間
20 排出口
21 排出口フランジ
22 排出管
23 排出弁
24 当接面
30 当接面
31 はめこみ凹部
32 圧力ばね
33 バルブプレート
40 ピストン先端部
41 シール領域
42 リング溝
43 PTFE/ブロンズリング
44 PTFE/ブロンズリング
45 PTFE/ブロンズリング
46 案内リング
50 空洞
51 供給管
52 当接面(シリンダライナ側)
53 銅パッキン
54 更なる当接面(シリンダヘッド側)
55 更なる銅パッキン
56 出口開口部
A ピストン軸
図1