(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記移動制限部による移動制限を解除するとき、前記電磁石を駆動して前記第2の可動部材を前記第2の固定部材に吸着する請求項1又は2に記載の射出成形機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金型装置は、成形品の種類に応じて交換される。新しい金型装置を取り付けるとき、金型装置は取り付け面にボルトで仮止めされた後、型閉じされ、型締め状態でボルトを増し締めして本止めされる。ボルトの代わりに、油圧や磁力を利用したクランプ装置などが用いられてもよい。
【0007】
本止め作業は、射出成形機のカバーに設置されるドアを開けて行われるので、制御部による誤作動を防止するため、ドアが開いている状態では型締装置への電流供給が自動で停止される。
【0008】
この状態において、トグル機構を用いる方式は予め発生させた型締力を保持できるが、電磁石を用いる方式は型締力を保持できなかった。そのため、電磁石を用いる方式では、本止め作業が困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、型締装置への電流供給を停止した状態において金型装置の取り付けを可能とする射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明の一の態様による射出成形機は、
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
該第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間に配設される第2の固定部材と、
該第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方に形成され、他方を吸着して型締力を発生させる電磁石と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間隔を調整する調整部と、
前記第2の可動部材と前記第2の固定部材との間に所定のギャップを形成した状態で、前記第2の可動部材の型開き方向への移動を制限する移動制限部と、
該移動制限部を作動して前記第2の可動部材の型開き方向への移動を制限した後、前記調整部を駆動して前記第1の可動部材を型閉じ方向に移動させ、所定の型締力を発生させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様による射出成形機は、
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
該第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間に配設される第2の固定部材と、
該第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方に形成され、他方を吸着して型締力を発生させる電磁石と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間隔を調整する調整部と、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材との間に所定のギャップを形成した状態で、前記第2の可動部材の型開き方向への移動を制限する移動制限部と、
前記電磁石を駆動して型締力を発生させた後、所定の型締力を維持するように、前記移動制限部を作動して前記第2の可動部材の型開き方向への移動を制限する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、型締装置への電流供給を停止した状態において金型装置の取り付けを可能とする射出成形機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機の型閉じ時の状態を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。
【0016】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは該フレームFr上に敷設される2本のレールよりなるガイド、11は固定プラテン(第1の固定部材)である。固定プラテン11は、型開閉方向(図において左右方向)に延びるガイドGdに沿って移動可能な位置調整ベースBa上に設けられてよい。尚、固定プラテン11はフレームFr上に載置されてもよい。
【0017】
固定プラテン11と対向して可動プラテン(第1の可動部材)12が配設される。可動プラテン12は可動ベースBb上に固定され、可動ベースBbはガイドGd上を走行可能である。これにより、可動プラテン12は、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能である。
【0018】
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と平行にリヤプラテン(第2の固定部材)13が配設される。リヤプラテン13は、脚部13aを介してフレームFrに固定される。
【0019】
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14を介して固定プラテン11がリヤプラテン13に固定される。タイバー14に沿って可動プラテン12が進退自在に配設される。可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。尚、ガイド穴の代わりに、切欠部を形成するようにしてもよい。
【0020】
タイバー14の前端部(図において右端部)には図示されないネジ部が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0021】
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ取り付けられ、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない溶融樹脂がキャビティ空間に充填される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0022】
吸着板22(第2の可動部材)は、可動プラテン12と平行に配設される。吸着板22は取付板27を介してスライドベースSbに固定され、スライドベースSbはガイドGd上を走行可能である。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13よりも後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。尚、取付板27はなくてもよく、この場合、吸着板22はスライドベースSbに直に固定される。
【0023】
ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進するのに伴って前進させられて可動プラテン12を前進させ、型開き時に吸着板22が後退するのに伴って後退させられて可動プラテン12を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分にロッド39を貫通させるためのロッド孔41が形成される。
【0024】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるための型開閉駆動部であって、例えば可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。尚、リニアモータ28は可動プラテン12とフレームFrとの間に配設されてもよい。
【0025】
リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備える。固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、スライドベースSbの移動範囲に対応させて形成される。可動子31は、スライドベースSbの下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0026】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。可動子31の位置を検出する位置センサ53が配置される。
【0027】
コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられる。それに伴って、吸着板22及び可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。リニアモータ28は、可動子31の位置が設定値になるように、位置センサ53の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
【0028】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0029】
尚、型開閉駆動部として、リニアモータ28の代わりに、回転モータ及び回転モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構、又は油圧シリンダ若しくは空気圧シリンダなどの流体圧シリンダなどが用いられてもよい。
【0030】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13と吸着板22との間に吸着力を生じさせる。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。
【0031】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39などによって型締装置10が構成される。
【0032】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。吸着部51は、吸着板22の吸着面(前端面)の所定の部分、例えば、吸着板22においてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の吸着面(後端面)の所定の部分、例えば、ロッド39のまわりには、電磁石49のコイル48を収容する溝45が形成される。溝45より内側にコア46が形成される。コア46の周りにコイル48が巻装される。リヤプラテン13のコア46以外の部分にヨーク47が形成される。
【0033】
尚、本実施形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部51を設けてもよい。また、電磁石49のコイル48の数は、複数であってもよい。
【0034】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0035】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリなどを備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給する。制御部60には、型締力センサ55が接続される。型締力センサ55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。型締力センサ55は、例えばタイバー14の伸び量を検出する歪みゲージなどで構成される。型締力センサ55によって検出された荷重は、制御部60に送られる。
【0036】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0037】
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。
図2の状態(型開きの状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給して、リニアモータ28を駆動する。可動プラテン12が前進して、
図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられ、型閉じ工程が終了する。型閉じ終了時に、リヤプラテン13と吸着板22との間、即ち電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδ0(以下、「型閉じ終了時ギャップδ0」という)が形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0038】
続いて、制御部60の型締め処理部62は、型締め工程を制御する。型締め処理部62は、電磁石49のコイル48に電流を供給し、電磁石49に吸着部51を吸着する。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達し、可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が生じる。
【0039】
型締力は型締力センサ55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、型締力が設定値になるように型締め処理部62がコイル48に供給される電流を調整し、フィードバック制御する。この間、射出装置17において溶融させられた溶融樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充填される。
【0040】
キャビティ空間内の樹脂が冷却固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締め処理部62は、
図1の状態において、電磁石49のコイル48への電流供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退し、
図2に示すように、可動金型16が後退して型開きが行われる。
【0041】
次に、
図3及び
図4に基づいて金型装置19の交換作業について説明する。
図3は、金型装置19の仮止め作業後にピン82をピン孔81に挿入した状態を示す。
図4は、所定の型締力を発生させた状態を示す。
【0042】
金型装置19の交換時に、新しい金型装置19は、クレーンなどで吊持された状態で、固定プラテン11にボルトで仮止めされる。その後、可動プラテン12が前進して金型装置19に接触し、続いて、金型装置19が型締めされる。型締め状態で、固定金型15が固定プラテン11に、可動金型16が可動プラテン12にそれぞれボルト又はクランプ装置などで本止めされる。本止め作業は、射出成形機のカバーに設置されるドアを開けて行われるので、型締装置10への電流供給を停止した状態(以下、「停止状態」ともいう)で行われる。制御部60による誤作動を防止するためである。停止状態は、各種検出器の検出結果に基づいて動作がフィードバック制御される駆動源(例えば、電磁石49、リニアモータ28、及び後述の型厚調整用モータ71を含む)の駆動制御が自動で停止されるサーボオフ状態であってよい。停止状態では、電磁石49のコイル48への電力供給が遮断されるので、電磁石49による吸着力が発生しない。
【0043】
加えて、金型装置19の交換時に、金型装置19の厚さが変わると、型閉じ終了時ギャップδ0が目標値となる可動プラテン12と吸着板22との間隔が変わる。型閉じ終了時ギャップδ0を目標値とするのは、所定の型締力を効率的に得るためである。型閉じ終了時ギャップδ0が広すぎると、所定の型締力を得るためコイル48に供給する電流が過大になる。型閉じ終了時ギャップδ0が狭すぎると、吸着時にリヤプラテン13に吸着板22が接触し、吸着力の一部がロッド39を介して可動プラテン12に伝達しなくなるおそれがある。
【0044】
そこで、射出成形機は、停止状態において本止め作業を可能とするため、また、金型装置19の厚さに応じて可動プラテン12と吸着板22との間隔を調整するため、型厚調整部70と、移動制限部としてのピン止め部80とを備える。
【0045】
型厚調整部70は、金型装置19の厚さに応じて可動プラテン12と吸着板22との間隔を調整する。型厚調整部70は、型厚調整用モータ71、ギヤ72、ナット73、ロッド39などによって構成される。ロッド39は吸着板22の中央部分を貫通し、ロッド39の後端部にねじ43が形成される。ねじ43と、吸着板22に回転自在に支持されたナット73とが螺合させられる。ナット73の外周面に図示されないギヤが形成され、このギヤと、型厚調整用モータ71の出力軸71aに取り付けられたギヤ72が噛合させられる。ナット73及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、ナット73の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。
【0046】
所定の電流を供給して型厚調整用モータ71を駆動すると、ナット73がねじ43に対して所定量回転し、吸着板22に対するロッド39の位置が調整される。よって、可動プラテン12と吸着板22との間隔が調整される。
【0047】
型厚調整用モータ71は、サーボモータであってよく、型厚調整用モータ71の出力軸71aの回転量などを検出するエンコーダ部71bを含んでよい。型厚調整用モータ71の駆動用コイルに供給される電流は、可動プラテン12と吸着板22との間隔が目標値になるように、エンコーダ部71bの検出結果に基づいてフィードバック制御される。
【0048】
また、型厚調整用モータ71は、ブレーキ付きのモータであってよい。型厚調整用モータ71のブレーキ部71cは、一般的な構成であってよく、例えば電磁石を含む電磁ブレーキで構成される。電磁ブレーキは、電磁石のブレーキ用コイルが通電されるとき型厚調整用モータ71の出力軸71aの回転を許容し、ブレーキ用コイルが通電されていないとき出力軸71aの回転を制限する。尚、ブレーキ部71cは、電磁石の代わりにエアシリンダなどを駆動源として有してもよく、電磁ブレーキに限定されない。
【0049】
ピン止め部80は、リヤプラテン13と吸着板22との間に所定のギャップδ1(以下、「初期ギャップδ1」という)を形成した状態で吸着板22の後退を制限する。ピン止め部80は、固定側の部材と、可動側の部材との間に配置される。例えばピン止め部80は、固定側の部材に形成されるピン孔81、及び可動側の部材に設けられるピン82などで構成される。
【0050】
ピン孔81は、例えばフレームFrに形成される。ピン孔81は、ピン82よりも僅かに大きく形成されている。ピン孔81は、前後方向に間隔をおいて複数(図には1つのみ図示)形成されてもよい。尚、ピン孔81は、フレームFrの代わりに、ガイドGdなどに形成されてもよく、ピン孔81を形成する固定側の部材は、特に限定されない。
【0051】
ピン82は、ピン孔81から抜け出たときに吸着板22の後退を許容し、ピン孔81に挿入されたときに吸着板22の後退を制限する。吸着板22の後退を制限すると共に、可動プラテン12の前進を可能とするため、ピン82は、可動側の部材のうち、ロッド39を基準として吸着板22側に配される部材に支持されてよい。例えば、ピン82は、スライドベースSbに進退不能に支持される。
【0052】
尚、ピン孔81とピン82の配置は逆であってもよく、ピン孔81を可動側の部材に設け、ピン82を固定側の部材に設けてもよい。
【0053】
ピン止め部80は、ピン82を挿抜方向に案内するガイド部83、及びピン82を挿抜方向に移動させる駆動部84などをさらに含んでよい。ガイド部83は例えばスライドベースSbに形成されるガイド孔を含む。駆動部84は、電動式でも油圧式でもよく、例えばスライドベースSbに固定される。
【0054】
次に、上記構成とした型厚調整部70及びピン止め部80の動作について説明する。この動作は、
図3に示す金型装置19の仮止め作業後に行われる。型厚調整部70の動作は制御部60の型厚調整処理部63によって制御され、ピン止め部80の動作は制御部60のピン止め処理部64によって制御される。
【0055】
先ず、制御部60は、ピン82とピン孔81との位置合わせを行うため、リニアモータ28を駆動する。位置合わせ後、ピン止め処理部64は、駆動部84を駆動してピン82をピン孔81に挿入する。よって、初期ギャップδ1が形成された状態で、吸着板22の後退が制限される。このとき、可動プラテン12は金型装置19に接触していない。
【0056】
次いで、型厚調整処理部63は、型厚調整部70を駆動して、可動プラテン12と吸着板22との間隔を広げる。吸着板22の後退は制限されているので、可動プラテン12が前進して、可動金型16及び固定金型15を介して固定プラテン11に接触する。
【0057】
引き続き、型厚調整処理部63は、型厚調整部70を駆動して、可動金型16を固定金型15に押し付け、所定の型締力を発生させる。このとき、タイバー14が伸びるので、可動プラテン12がさらに前進して、可動プラテン12と吸着板22との間隔がさらに広がる。
【0058】
型締力は、型厚調整部70が駆動停止された後も、ピン止め部80によって維持される。よって、ドアが開いた状態、即ち停止状態において型締力を維持できるので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0059】
停止状態において、型締力を解放する方向へのナット73の回転をブレーキ部71cの制動力によって制限し、型締力を維持してよい。尚、ナット73の回転は、ナット73とねじ43との摩擦力によってもある程度制限することができる。
【0060】
金型装置19の本止め作業後、ドアが閉じると、停止状態が自動的に解除される。その後、ピン止め処理部64は、駆動部84を駆動してピン82をピン孔81から抜き出し、ピン止め部80による吸着板22の移動制限を解除する。
【0061】
ところで、ドアが閉じたとき、型締力は維持されたままであるので、型締力によってピン82がピン孔81の後端(図において左端)に押し付けられている。尚、ピン82とピン孔81の配置が逆の場合、ピン孔81の前端がピン82に押し付けられる。
【0062】
そこで、ピン止め部80による吸着板22の移動制限を解除するとき、制御部80は、電磁石49を駆動してリヤプラテン13に吸着板22を吸着してよい。吸着力によって、ピン82が前方に押され、ピン82をピン孔81の後端に押し付ける力が緩和されるので、ピン82をピン孔81から容易に抜き出すことができる。吸着力によってピン82を前方に押す力が過大とならないように、電磁石49のコイル48に供給される電流の電流値が制御される。
【0063】
ピン82がピン孔81から抜け出ると、金型装置19の交換作業が終了する。その後、新しい金型装置19を用いた射出成形が可能となる。
【0064】
ところで、型締力が金型装置19に加わると、タイバー14が伸びる。型締力が解放されると、タイバー14が弾性復元するので、固定プラテン11、金型装置19、可動プラテン12、及び吸着板22が一体的に後退し、吸着板22とリヤプラテン13との間に形成されるギャップが広がる。そのため、本止め作業時におけるタイバー14の伸び量と略同じ量だけ、型閉じ終了時ギャップδ0(
図1参照)が初期ギャップδ1(
図3及び
図4参照)よりも広がる。
【0065】
そこで、上記伸び量と略同じ量だけ、初期ギャップδ1を型閉じ終了時ギャップδ0の目標値よりも狭く設定してよい。金型交換後に、型閉じ終了時ギャップδ0を目標値に近づける作業が不要となる。上記伸び量は、試験などで求められ、型締力センサ55で検出することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、ピン止め部80によって吸着板22の後退を制限しながら、型厚調整部70を駆動して型締力を発生させたが、電磁石49を駆動して型締力を発生させた後、ピン止め部80によって吸着板22の後退を制限してもよい。ピン止め部80は、電磁石49が駆動停止された後も、吸着板22の後退を制限するので、所定の型締力を維持することができる。よって、ドアが開いた状態、即ち停止状態において所定の型締力を維持することができるので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。この変形例では、上記の実施形態と同様に、本止め作業時にタイバー14が伸びているので、初期ギャップδ1を型閉じ終了時ギャップδ0の目標値よりも狭く設定してよい。この変形例では、金型装置19の厚さに応じて型厚調整部70を駆動してピン孔81とピン82との位置合わせを行ってよい。また、この変形例では、可動プラテン12やロッド39の後退を制限することにより、吸着板22の後退を制限してもよく、ピン82が配される可動側の部材は特に限定されない。ピン孔81とピン82の配置は逆であってもよい。
【0068】
また、上記の実施形態及び上記の変形例において、ピン孔81にピン82を挿入した後、型厚調整部70を駆動してピン82をピン孔81の後端に押し付けてもよい。この場合、ピン孔81は前後方向に長い長孔であってよく、ピン孔81とピン82との位置合わせ要求精度を緩和することができる。
【0069】
また、上記の実施形態及び上記の変形例において、移動制限部は、ピン止め部の代わりに、例えば一般的なブレーキなどで構成されてもよく、移動制限部の構成は特に限定されない。