特許第5774447号(P5774447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許5774447X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム
<>
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000006
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000007
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000008
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000009
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000010
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000011
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000012
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000013
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000014
  • 特許5774447-X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774447
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】X線CT装置および被曝線量計算方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A61B6/03 330A
   A61B6/03 321H
   A61B6/03 371
   A61B6/03ZDM
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-237695(P2011-237695)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-94272(P2013-94272A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(72)【発明者】
【氏名】貫井 正健
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−105382(JP,A)
【文献】 特開2006−026417(JP,A)
【文献】 特開2008−148886(JP,A)
【文献】 特開2007−054372(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096813(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/138979(WO,A1)
【文献】 特開2008−073201(JP,A)
【文献】 特開2004−195121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象に対する本スキャンより前の事前スキャンにより得られた前記撮影対象の断層画像を表すデータを取得する取得手段と、
前記本スキャンを行う際のX線管電圧及びX線照射線量を設定する設定手段と、
前記事前スキャンのスキャン条件と、前記取得されたデータとに基づいて、前記設定されたX線管電圧にて、予め決められた基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における被曝線量が実質的に同一になるよう、前記撮影対象の断面積をアクリルまたは他の所定の物質で構成される物体の断面積に換算して成る換算断面積の大きさを表す指標値を見積もる見積手段と、
前記設定されたX線管電圧にて前記基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における前記指標値と被曝線量との対応関係において、前記見積もられた指標値に対応する被曝線量を特定する特定手段と、
前記特定された被曝線量に基づいて、前記設定されたX線管電圧及びX線照射線量にて前記本スキャンを行った場合における前記撮影対象の被曝線量を計算する計算手段と、を備えたX線CT装置。
【請求項2】
前記指標値は、前記撮影対象の断層画像において規格化されたCT値の総和である、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記指標値は、次式を用いて計算される、請求項2に記載のX線CT装置。
指標値=Σ[(imgij+1000)/a]
ただし、imgijは、前記断層画像における各画素のCT値であり、aは、前記事前スキャンのスキャン条件に含まれるX線管電圧及び前記設定されたX線管電圧によって変化する、CT値調整用のパラメータである。
【請求項4】
前記データは、前記撮影対象のヘリカルスキャン方式またはアキシャルスキャン方式によるスカウトスキャンにより得られたデータである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
撮影対象に対する本スキャンより前の事前スキャンにより得られた前記撮影対象のデータを取得する取得手段と、
前記本スキャンを行う際のX線管電圧及びX線照射線量を設定する設定手段と、
前記事前スキャンのスキャン条件と、前記取得されたデータとに基づいて、前記撮影対象に対して、前記設定されたX線管電圧にて、予め決められた基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合に得られる画像における画像ノイズの大きさを表す指標値を見積もる見積手段と、
前記設定されたX線管電圧にて前記基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における前記指標値と被曝線量との対応関係において、前記見積もられた指標値に対応する被曝線量を特定する特定手段と、
前記特定された被曝線量に基づいて、前記設定されたX線管電圧及びX線照射線量にて前記本スキャンを行った場合における前記撮影対象の被曝線量を計算する計算手段と、を備えたX線CT装置。
【請求項6】
前記見積手段は、自動露出機構の機能を用いて前記指標値を見積もる、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記データは、前記撮影対象のスカウトスキャンにより得られたデータである、請求項5または請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記計算手段は、前記設定されたX線照射線量を前記基準線量にて除した値に、前記特定された被曝線量と、所定のゲインとを乗算することにより、前記撮影対象の被曝線量を計算する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記ゲインは、該X線CT装置により計算される被曝線量と、他のX線CT装置により実質的に同一の条件で計算される被曝線量との差分を縮小するように決定される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記データは、前記撮影対象に対して過去に行われたX線CTスキャンにより得られたデータである、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記対応関係は、径の大きさが互いに異なる複数の円柱状のファントムに対してX線CTスキャンを実際に行って得られたものである、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項12】
撮影対象に対する本スキャンより前の事前スキャンにより得られた前記撮影対象の断層画像を表すデータを取得する取得ステップと、
前記本スキャンを行う際のX線管電圧及びX線照射線量を設定する設定ステップと、
前記事前スキャンのスキャン条件と、前記取得されたデータとに基づいて、前記設定されたX線管電圧にて、予め決められた基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における被曝線量が実質的に同一になるよう、前記撮影対象の断面積をアクリルまたは他の所定の物質で構成される物体の断面積に換算して成る換算断面積の大きさを表す指標値を見積もる見積ステップと、
前記設定されたX線管電圧にて前記基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における前記指標値と被曝線量との対応関係において、前記見積もられた指標値に対応する被曝線量を特定する特定ステップと、
前記特定された被曝線量に基づいて、前記設定されたX線管電圧及びX線照射線量にて前記本スキャンを行った場合における前記撮影対象の被曝線量を計算する計算ステップと、を備えた被曝線量計算方法。
【請求項13】
撮影対象に対する本スキャンより前の事前スキャンにより得られた前記撮影対象のデータを取得する取得ステップと、
前記本スキャンを行う際のX線管電圧及びX線照射線量を設定する設定ステップと、
前記事前スキャンのスキャン条件と、前記取得されたデータとに基づいて、前記撮影対象に対して、前記設定されたX線管電圧にて、予め決められた基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合に得られる画像における画像ノイズの大きさを表す指標値を見積もる見積ステップと、
前記設定されたX線管電圧にて前記基準線量のX線を照射するスキャンを行った場合における前記指標値と被曝線量との対応関係において、前記見積もられた指標値に対応する被曝線量を特定する特定ステップと、
前記特定された被曝線量に基づいて、前記設定されたX線管電圧及びX線照射線量にて前記本スキャンを行った場合における前記撮影対象の被曝線量を計算する計算ステップと、を備えた被曝線量計算方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のX線CT装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置および被曝線量計算方法並びにそのためのプログラム(program)に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、通常、撮影対象の大きさや設定されたスキャン(scan)条件に基づいて、その撮影対象の被曝線量値を計算し、これを表示する機能を有している。
【0003】
被曝線量の計算は、円柱状のアクリル(acrylics)製ファントム(phantom)を実際に撮影して得られた被曝線量の測定基準値を用いて行われる。基準となるファントムは2種類あり、一方は、主に小児や大人の頭部を想定した16cm径のファントムであり、もう一方は、主に大人の体部を想定した32cm径のファントムである。
【0004】
一般的に、X線CT装置では、まず、被検体の大人/小児の別や撮影部位などの情報に基づいて、対応する大きさのファントムの測定基準値を選択し、この測定基準値に、設定されたスキャン条件によるファクタ(factor)(重み)を乗算して、被曝線量を算出する。これにより、撮影対象の大きさを考慮した被曝線量が算出される(特許文献1,第2段落〜第4段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、撮影対象の大きさは様々であるにもかかわらず、基準となるファントムの大きさは上記の2種類だけである。そのため、大きな人も、小さな人も、適用されるファントムと、設定されたスキャン条件、例えば、管電圧、管電流、X線照射時間、ヘリカルスキャンの場合にはヘリカルピッチ等が同じであれば、同じ被曝線量が算出されることになる。つまり、撮影対象の大きさが被曝線量にうまく反映されず、適正な被曝線量が算出されないおそれがある。
【0007】
このような事情により、X線CTスキャンによる被曝線量の計算において、撮影対象の大きさをより反映させることを可能にする技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点の発明は、
撮影対象に対して本スキャン前に行われたX線による撮影により得られたデータ(data)に基づいて、所定のスキャン条件下で前記撮影対象のX線CTスキャンを行った場合に得られる画像の画質または画素値に係る特徴量であって、被曝線量との間に相関がある特徴量を見積もる見積手段と、
予め求められた前記特徴量と被曝線量との関係を参照して、前記見積手段により見積もられた特徴量と、前記所定のスキャン条件とに基づいて、設定された所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を計算する計算手段とを備えたX線CT装置を提供する。
【0009】
第2の観点の発明は、
前記関係が、前記所定の条件下での関係であり、
前記計算手段が、前記所定の条件下での前記関係を参照して、前記見積手段により見積もられた特徴量に対応する被曝線量を特定し、該特定された被曝線量に前記所望のスキャン条件によるファクタを乗算して、前記所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を算出する上記第1の観点のX線CT装置を提供する。
【0010】
第3の観点の発明は、
前記計算手段が、前記特定された被曝線量に、前記所望のスキャン条件によるファクタと、所望のゲイン(gain)とを乗算して、前記所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を算出する上記第2の観点のX線CT装置を提供する。
【0011】
第4の観点の発明は、
前記ゲインが、該X線CT装置により計算される被曝線量と、他のX線CT装置により実質的に同一の条件で計算される被曝線量との差分を縮小するように決定される上記第3の観点のX線CT装置を提供する。
【0012】
第5の観点の発明は、
前記特徴量が、画像ノイズ(noise)のレベル(level)を表す指標である上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0013】
第6の観点の発明は、
前記指標が、前記撮影対象の断層画像における画素値の分散または標準偏差である上記第5の観点のX線CT装置を提供する。
【0014】
第7の観点の発明は、
前記データが、前記撮影対象のスカウトスキャン(scout scan)により得られたデータである上記第5の観点または第6の観点のX線CT装置を提供する。
【0015】
第8の観点の発明は、
前記特徴量が、前記撮影対象の断面積を、同一の条件下での被曝線量が等しくなるように、アクリルまたは他の所定の物質で構成される物体の断面積に換算した値を表す指標である上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0016】
第9の観点の発明は、
前記指標が、前記撮影対象の断層画像における規格化された画素値の総和である上記第8の観点のX線CT装置を提供する。
【0017】
第10の観点の発明は、
前記データが、前記撮影対象のヘリカルスキャン(helical scan)方式またはアキシャルスキャン(axial scan)方式によるスカウトスキャンにより得られたデータである上記第8の観点または第9の観点のX線CT装置を提供する。
【0018】
第11の観点の発明は、
前記データが、前記撮影対象に対して過去に行われたX線CTスキャンにより得られたデータである上記第8の観点または第9の観点のX線CT装置を提供する。
【0019】
第12の観点の発明は、
前記関係が、径の大きさが互いに異なる複数の円柱状のファントムに対してX線CTスキャンを実際に行って得られたものである上記第1の観点から第11の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0020】
第13の観点の発明は、
撮影対象に対して本スキャン前に行われたX線による撮影により得られたデータに基づいて、所定のスキャン条件下で前記撮影対象のX線CTスキャンを行った場合に得られる画像の画質または画素値に係る特徴量であって、被曝線量との間に相関がある特徴量を見積もる第1のステップ(step)と、
予め求められた前記特徴量と被曝線量との関係を参照して、前記第1のステップにより見積もられた特徴量と、前記所定のスキャン条件とに基づいて、設定された所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を計算する第2のステップとを備えた被曝線量計算方法を提供する。
【0021】
第14の観点の発明は、
前記関係が、前記所定の条件下での関係であり、
前記第2のステップが、前記所定の条件下での前記関係を参照して、前記第1のステップにより見積もられた特徴量に対応する被曝線量を特定し、該特定された被曝線量に前記所望のスキャン条件によるファクタを乗算して、前記所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を算出するステップである上記第13の観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0022】
第15の観点の発明は、
前記第2のステップが、前記特定された被曝線量に、前記所望のスキャン条件によるファクタと、所望のゲインとを乗算して、前記所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を算出するステップである上記第14の観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0023】
第16の観点の発明は、
前記ゲインが、該X線CT装置により計算される被曝線量と、他のX線CT装置により実質的に同一の条件で計算される被曝線量との差分を縮小するように決定される上記第15の観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0024】
第17の観点の発明は、
前記特徴量が、画像ノイズのレベルを表す指標である上記第13の観点から第16の観点のいずれか一つの観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0025】
第18の観点の発明は、
前記特徴量が、前記撮影対象の断面積を、同一の条件下での被曝線量が等しくなるように、アクリルまたは他の所定の物質で構成される物体の断面積に換算した値を表す指標である上記第13の観点から第16の観点のいずれか一つの観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0026】
第19の観点の発明は、
前記関係が、径の大きさが互いに異なる複数の円柱状のファントムに対してX線CTスキャンを実際に行って得られたものである上記第13の観点から第18の観点のいずれか一つの観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0027】
第20の観点の発明は、
コンピュータ(computer)を、
撮影対象に対して本スキャン前に行われたX線による撮影により得られたデータに基づいて、所定のスキャン条件下で前記撮影対象のX線CTスキャンを行った場合に得られる画像の画質または画素値に係る特徴量であって、被曝線量との間に相関がある特徴量を見積もる見積手段と、
予め求められた前記特徴量と被曝線量との関係を参照して、前記見積手段により見積もられた特徴量と、前記所定のスキャン条件とに基づいて、設定された所望のスキャン条件でX線CTスキャンを行った場合の前記撮影対象の被曝線量を計算する計算手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【0028】
ここで、「所定のスキャン条件」には、例えば、X線管の管電圧、X線管の管電流(mA;ミリアンペア)とX線照射時間(s;秒)との積で定義される線量(“mAs”で表すことがある)などが含まれる。
【0029】
また、「ファクタ」としては、例えば、X線管の管電流や線量(mAs)などを用いて規定される重み係数を考えることができる。
【0030】
また、「スカウトスキャン」とは、本スキャン前に行われる、本スキャンよりも低線量のX線を用いたスキャンである。「スカウトスキャン」としては、例えば、X線源を回転させないで撮影対象に対して相対直線移動させながら、本スキャンよりも低線量のX線を照射する撮影方式や、低線量のX線を用いたヘリカルスキャンまたはアキシャルスキャンによる撮影方式などが考えられる。
【発明の効果】
【0031】
上記観点の発明によれば、設定されたスキャン条件に応じて、被曝線量と相関関係にある画像の画質または画素値に係る特徴量を特定し、被曝線量とその特徴量との関係を参照して、被曝線量を算出するので、計算の基準になる値を連続的あるいは多段階的に取ることができ、撮影対象の大きさがより反映された被曝線量を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】発明の実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第1の実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック(block)図である。
図3】第1の実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャート(flowchart)である。
図4】第1の実施形態における被曝線量計算方法を概念的に示す図である。
図5】第2の実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック図である。
図6】第2の実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態における被曝線量計算方法を概念的に示す図である。
図8】第3の実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック図である。
図9】第3の実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャートである。
図10】第3の実施形態における被曝線量計算方法を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。X線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル(table)10、および走査ガントリ(gantry)20を備えている。
【0035】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0036】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部に搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0037】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム(beam)81をコリメート(collimate)するコリメータ(collimator)23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するデータ収集装置(DAS;Data Acquisition System)25と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0038】
図2は、本実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック図である。また、図3は、本実施形態によるX線CT装置における被曝線量の計算方法を概念的に示す図である。
【0039】
本実施形態によるX線CT装置は、図2に示すように、スカウトデータ(scout
data)取得部101、スキャン条件設定部102、画像ノイズ見積部103(見積手段)、基準被曝線量特定部104(計算手段)、推定被曝線量算出部105、CTスキャンデータ(scan data)取得部106、画像再構成部107、および画像表示制御部108を備えている。
【0040】
スカウトデータ取得部101は、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、所定のスカウトスキャン条件SCで被検体40の撮影部位(撮影対象)に対してスカウトスキャンを行って、スカウトデータPSを取得する。スカウトスキャンとは、本スキャン前に行う予備的なスキャンである。スカウトスキャンとしては、例えば、X線管20のビュー角度を一定にして被検体40または走査ガントリ20をz方向に移動させながら、本スキャンよりも低線量のX線ビームを被検体40に照射して投影データを収集するスキャンが挙げられる。また例えば、本スキャンよりも低い線量のX線ビームによるヘリカルスキャンが挙げられる。
【0041】
スキャン条件設定部102は、操作者の操作に応じて、本スキャンに用いる所望のスキャン条件を設定する。スキャン条件には、スキャン範囲、X線管の管電圧、管電流、ガントリ1回転時間、ヘリカルスキャンの場合にはヘリカルピッチ(helical pitch)などのスキャンパラメータ(scan parameter)が含まれる。なお、これらのスキャンパラメータから、撮影対象をスキャンする際の、設定管電圧KVと、管電流とX線照射時間との積である設定線量real_mAsが定まる(図3参照)。
【0042】
画像ノイズ見積部103は、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が所定の基準線量ref_mAsである条件下で、撮影部位をスキャンした場合に得られる画像の画像ノイズのレベルを表す指標値NIを見積もる。なお、当該画像は、例えば、設定されたスキャン範囲内の代表的なスライス(slice)に対応する断層画像である。また、所定の基準線量ref_mAsは、例えば100〔mA・s〕である。設定管電圧KVは、例えば120〔kV〕である。
【0043】
ここでは、画像ノイズ見積部103は、設定管電圧KV,スカウトスキャン条件SC、スカウトデータSDを基に、CT自動露出機構(CT−AEC)の機能を利用して、画像ノイズの指標値NIを見積もる(図3参照)。
【0044】
CT自動露出機構は、設定管電圧KV、スカウトスキャン条件SC、スカウトデータSD、および所望の画像ノイズの指標値に基づいて、所望の画像ノイズの画像を得るためのスキャン条件として、管電圧が設定管電圧KVであるときの管電流、例えば体軸方向や回転軸方向における管電流の変調曲線を求めることができる。
【0045】
したがって、このCT自動露出機構のアルゴリズム(algorithm)を利用すれば、設定管電圧KV、スカウトスキャン条件SC、スカウトデータSD、基準線量ref_mAsから、逆に、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で撮影部位をスキャンして得られる画像の画像ノイズの指標値NIを求めることができる。なお、画像ノイズの指標値NIとしては、例えば、断層画像における画素値の分散または標準偏差を考えることができる。
【0046】
基準被曝線量特定部104は、画像ノイズの指標値NIに基づいて、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で撮影部位をスキャンしたときの撮影対象の被曝線量を、指標値NIの関数f(NI)として特定する(図3参照)。
【0047】
一般に、所定のスキャン条件下で撮影対象をスキャンした場合に、得られた画像の画像ノイズのレベルと、撮影対象の被曝線量との間には、相関関係があることが知られている。
【0048】
そこで、予め、管電圧ごとに、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下での、画像ノイズの指標値NIと撮影対象の被曝線量との関係K1を求め、これらの関係K1を基準被曝線量特定部104に記憶させておく。
【0049】
基準被曝線量特定部104は、これらの関係K1のうち、設定管電圧KVに対応する関係K1(KV)を参照し、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下での画像ノイズの指標値NIに対応する被曝線量を、被曝線量基準値f(NI)として特定する。
【0050】
なお、上記関係K1は、例えば、互いに異なる複数のファントムに対して実際にX線CTスキャンを行い、そのときの被曝線量の実測結果を基に求める。これら複数のファントムは、例えば、アクリル製で円柱形状を有しており、一般に、16cm径のファントムと、32cm径のファントムとがある。上記関係K1は、シミュレーション(simulation)によって求めてもよい。
【0051】
推定被曝線量算出部105は、被曝線量基準値f(NI)に、設定線量(mAs)real_mAsに係るファクタと、ゲインを乗算することにより、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が設定線量real_mAsであるスキャン条件下で撮影対象をスキャンした場合における、撮影部位の推定被曝線量CTDIを算出する。
【0052】
推定被曝線量算出部105は、例えば、数式(1)に従って、推定被曝線量CTDIを算出する。
【0053】
【数1】
【0054】
この数式(1)において、real_mAs/ref_mAsは、上記ファクタであり、gainは、上記ゲインである。ゲインは、被曝線量の計算値を必要に応じて調整するために用いられる。例えば、従前の計算方法や他の計算方法により算出される被曝線量との整合性をある程度持たせるために、ゲインを調整して、被曝線量の計算値を調整する。つまり、本実施形態のX線CT装置により計算される被曝線量と、他のX線CT装置により実質的に同一の条件で計算される被曝線量との差分を縮小するように決定される(図3参照)。
【0055】
CTスキャンデータ取得部106は、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、設定されたスキャン条件でCTスキャンを本スキャンとして行い、CTスキャンデータPCを取得する。なお、CTスキャンデータは、投影データともいう。
【0056】
画像再構成部107は、CTスキャンデータPCに基づいて、フィルタ(filter)逆投影処理等の画像再構成処理を行って、断層画像を再構成する。
【0057】
画像表示制御部108は、モニタ6を制御して、スカウトデータPSに基づく画像や、再構成画像、その他の情報をモニタ6の画面に表示する。
【0058】
これより、本実施形態によるX線CT装置における動作について説明する。
【0059】
図4は、本実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ステップS1では、スカウトデータ取得部101が、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、所定のスカウトスキャン条件SCに従って被検体40のスカウトスキャンを行う。これにより、撮影対部位のX線吸収特性が担持されたスカウトデータPSを取得する。画像表示制御部108は、取得されたスカウトデータPSに基づいて、被検体40のスカウト像をモニタ6の画面に表示する。
【0061】
ステップS2では、操作者が、そのスカウト像を参照しながらスキャン条件を入力する。スキャン条件設定部102は、入力されたスキャン条件を、本スキャンのスキャン条件として設定する。設定されるスキャン条件には、スキャン範囲、設定管電圧KV、設定線量(mAs)real_mAsなどが含まれる。
【0062】
ステップS3では、画像ノイズ見積部103が、CT自動露出機構の機能を利用して、設定管電圧KV、スカウトスキャン条件SC、スカウトデータSDに基づき、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsである条件下での画像ノイズの指標値NIを見積もる。
【0063】
ステップS4では、基準被曝線量特定部104が、画像ノイズと被曝線量との関係K1(KV)を参照し、見積もられた画像ノイズの指標値NIに対応する被曝線量基準値f(NI)を特定する。
【0064】
ステップS5では、推定被曝線量算出部105が、上記数式(1)に従って、設定管電圧KV、設定線量(mAs)real_mAsによるスキャン条件下での撮影部位の推定被曝線量CTDIを算出する。
【0065】
ステップS6では、画像表示制御部108が、算出された推定被曝線量CTDIをモニタ6に表示する。
【0066】
ステップS7では、スキャン条件設定部102が、操作者の操作に応じて、スキャン条件を確定させるか否かを判定する。確定させずに見直す場合には、ステップS2に戻る。確定させる場合には、ステップS8に進む。
【0067】
ステップS8では、CTスキャンデータ取得部106が、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、確定されたスキャン条件に従ってX線CTスキャンを行い、CTスキャンデータPCを取得する。なお、ここではX線CTスキャンとしてアキシャルスキャン(axial scan)を想定するが、ヘリカルスキャンであってもよい。X線CTスキャンをヘリカルスキャンとする場合には、基準被曝線量を特定する際に、ヘリカルピッチをさらに考慮する必要がある。
【0068】
ステップS9では、画像再構成部107が、取得されたCTスキャンデータPCに基づいて、フィルタ逆投影処理等の画像再構成処理を行い、断層画像を再構成する。
【0069】
ステップS10では、画像表示制御部108が、再構成された断層画像をモニタ6の画面に表示する。
【0070】
このような第1の実施形態によれば、設定されたスキャン条件に応じて、被曝線量と相関関係にある画像ノイズの指標値を特定し、被曝線量と画像ノイズとの関係を参照して、被曝線量を算出するので、計算の基準になる値を連続的あるいは多段階的に取るとこができ、被検体40の撮影部位の大きさがより反映された被曝線量を計算することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図5は、本実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック図である。また、図6は、本実施形態によるX線CT装置における被曝線量の計算方法を概念的に示す図である。
【0072】
本実施形態によるX線CT装置は、図5に示すように、第1の実施形態をベース(base)に、画像ノイズ見積部103に代えて、アクリル換算断面積見積部110を備えている。
【0073】
ここでは、スカウトデータ取得部101は、本スキャンより低い線量のX線ビームによる被検体40の撮影部位に対して低線量ヘリカルスキャンを行って、その撮影部位のスカウト断層画像imgを取得する。
【0074】
アクリル換算断面積見積部110は、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsである条件下で、撮影部位をスキャンした場合に得られる画像のアクリル換算断面積を表す指標値Sを見積もる。アクリル換算断面積とは、撮影対象の断面積を、同一の条件下での被曝線量が等しくなるように、アクリルで構成される物体の断面積に換算した値である。
【0075】
ここでは、アクリル換算断面積見積部110は、まず、設定管電圧KV,ヘリカルスカウトスキャン条件HSC、スカウト断層画像imgを基に、数式(2)に従って、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下での、撮影部位のアクリル換算断面積を表す指標値Sを求める。
【0076】
【数2】
【0077】
この数式(2)において、imgijは、スカウト断層画像imgにおける各画素のCT値(画素値)であり、aは、スカウトスキャン条件SCに含まれるスカウト管電圧SVおよび設定管電圧KVによって変化する、CT値調整用のパラメータである。例えば、設定管電圧KVが120〔kV〕であり、スカウト管電圧SVが120〔kV〕である場合には、パラメータa=1100となる。つまり、アクリル換算断面積を表す指標値Sは、撮影部位の断層画像において、管電圧によって変化しないように規格化されたCT値の総和である。ただし、ここでは、画素サイズ(スケール)は常に一定であるものとする。
【0078】
基準被曝線量特定部104は、アクリル換算断面積の指標値Sに基づいて、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で撮影部位をスキャンしたときの撮影部位の被曝線量を、指標値Sの関数g(S)として特定する(図6参照)。
【0079】
一般に、所定のスキャン条件下で撮影対象をスキャンした場合に、得られた画像のアクリル換算断面積と、撮影対象の被曝線量との間には、相関関係があることが知られている。
【0080】
そこで、予め、管電圧ごとに、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下での、アクリル換算断面積の指標値Sと撮影対象の被曝線量との関係K2を求め、これらの関係K2を基準被曝線量特定部104に記憶させておく。
【0081】
基準被曝線量特定部104は、これらの関係K2のうち、設定管電圧KVに対応する関係K2(KV)を参照し、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下でのアクリル換算断面積の指標値Sに対応する被曝線量を、被曝線量基準値g(S)として特定する。
【0082】
なお、上記関係K2は、例えば、上記関係K1の場合と同様に、16cm径のCTDIファントムおよび32cm径のCTDIファントムに対して実際にX線CTスキャンを行い、そのときの被曝線量の実測結果を基に求める。あるいは、シミュレーションによって求めてもよい。
【0083】
推定被曝線量算出部105は、被曝線量基準値g(S)に、設定線量real_mAsに係るファクタと、ゲインを乗算することにより、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が設定線量(mAs)real_mAsであるスキャン条件下で撮影部位をスキャンした場合における、撮影部位の推定被曝線量CTDIを算出する。
【0084】
推定被曝線量算出部105は、例えば、数式(3)に従って、推定被曝線量CTDIを算出する。
【0085】
【数3】
【0086】
この数式(3)において、real_mAs/ref_mAsは、上記ファクタであり、gainは、上記ゲインである。ゲインは、数式(1)の場合と同様、被曝線量の計算値を必要に応じて調整するために用いられる(図6参照)。
【0087】
これより、本実施形態によるX線CT装置における動作について説明する。
【0088】
図7は、本実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャートである。
【0089】
ステップ(step)S11では、スカウトデータ取得部101が、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、所定のヘリカルスカウトスキャン条件HSCに従って、被検体40の撮影部位に対して低線量ヘリカルスカウトスキャンを行う。そして、低線量ヘリカルスカウトスキャンにより得られたデータに対して画像再構成処理を行って、スカウト断層画像imgを生成する。画像表示制御部108は、生成されたスカウト断層画像imgをz方向に重ねて3次元画像を生成し、これを所定の方向に再投影した像を、スカウト像としてモニタ6の画面に表示する。
【0090】
ステップS12では、操作者が、そのスカウト像を参照しながらスキャン条件を入力する。スキャン条件設定部102は、入力されたスキャン条件を、本スキャンのスキャン条件として設定する。設定されるスキャン条件には、スキャン範囲、設定管電圧KV、設定線量(mAs)real_mAsなどが含まれる。
【0091】
ステップS13では、アクリル換算断面積見積部110が、上記数式(2)に従って、設定管電圧KV、ヘリカルスカウトスキャン条件HSC、スカウト断層画像imgに基づき、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsである条件下でのアクリル換算断面積の指標値Sを見積もる。
【0092】
ステップS14では、基準被曝線量特定部104が、アクリル換算断面積と被曝線量との関係K2(KV)を参照し、見積もられたアクリル換算断面積の指標値Sに対応する被曝線量基準値g(S)を特定する。
【0093】
ステップS15では、推定被曝線量算出部105が、上記数式(3)に従って、設定管電圧KV、設定線量real_mAsによるスキャン条件下での撮影部位の推定被曝線量CTDIを算出する。
【0094】
ステップS16以降は、第1の実施形態におけるステップS6以降と実質的に同じ内容なので、ここでは説明を省略する。
【0095】
このような第2の実施形態によれば、設定されたスキャン条件に応じて、被曝線量と相関関係にあるアクリル換算断面積の指標値を特定し、被曝線量とアクリル換算断面積との関係を参照して、被曝線量を算出するので、第1の実施形態と同様、計算の基準になる値を連続的あるいは多段階的に取るとこができ、被検体の大きさがより反映された被曝線量を計算することができる。また、自動露出機構の機能を利用しないで被曝線量を計算するので、自動露出機構を備えていないX線CT装置にも適用することができる。
【0096】
(第3の実施形態)
図8は、本実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック図である。また、図9は、本実施形態によるX線CT装置における被曝線量の計算方法を概念的に示す図である。
【0097】
本実施形態によるX線CT装置は、図8に示すように、第2の実施形態をベースに、過去画像読出部111をさらに備えている。
【0098】
過去画像読出部111は、同じ被検体における実質的に同じ撮影部位をスキャンして得られた過去の断層画像imgpを、画像データベース等から読み出す。この際、過去の断層画像とともに、そのときのスキャンに用いた、過去のスキャン条件PCも読み出す。
【0099】
ここでは、アクリル換算断面積見積部110は、設定管電圧KV,過去のスキャン条件PC、過去の断層画像imgpを基に、数式(4)に従って、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下での、撮影部位のアクリル換算断面積を表す指標値Sを求める。
【0100】
【数4】
【0101】
この数式(4)において、imgpijは、過去の断層画像imgpにおける各画素のCT値(画素値)であり、aは、スカウトスキャン条件SCに含まれるスカウト管電圧SVおよび設定管電圧KVによって変化する、CT値調整用のパラメータである。例えばパラメータa=1200となる。
【0102】
これより、本実施形態によるX線CT装置における動作について説明する。
【0103】
図10は、本実施形態によるX線CT装置における動作の流れを示すフローチャートである。
【0104】
ステップS31では、過去画像読取部111が、同じ被検体および撮影部位の過去の断層画像imgpを、そのときの過去のスキャン条件PCとともに、画像データベース等から読み出す。
【0105】
ステップS32では、スカウトデータ取得部101が、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御することにより、所定のスカウトスキャン条件SCに従って被検体40のスカウトスキャンを行う。これにより、撮影部位のX線吸収特性が担持されたスカウトデータPSを取得する。画像表示制御部108は、取得されたスカウトデータPSに基づいて、被検体40のスカウト像をモニタ6の画面に表示する。
【0106】
ステップS33では、操作者が、そのスカウト像を参照しながらスキャン条件を入力する。スキャン条件設定部102は、入力されたスキャン条件を、本スキャンのスキャン条件として設定する。設定されるスキャン条件には、スキャン範囲、設定管電圧KV、設定線量(mAs)real_mAsなどが含まれる。
【0107】
ステップS34では、アクリル換算断面積見積部110が、上記数式(4)に従って、設定管電圧KV、過去のスキャン条件PC、過去の断層画像imgpに基づき、管電圧が設定管電圧KVであり、線量(mAs)が基準線量ref_mAsである条件下でのアクリル換算断面積の指標値Sを見積もる。
【0108】
ステップS35以降は、第2の実施形態におけるステップS14以降と実質的に同じ内容なので、ここでは説明を省略する。
【0109】
このような第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、被検体の大きさがより反映された被曝線量を計算することができる。また、過去の断層画像を利用して被曝線量を計算するので、スカウトスキャンを行う前であっても推定被曝線量を算出することができる。
【0110】
なお、発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0111】
例えば、上記実施形態では、基準被曝線量を特定するために、画像ノイズやアクリル換算断面積を表す指標値を用いているが、スキャンによって得られる画像に係る特徴量であって、被曝線量との間に相関関係を有している特徴量であれば、いかなるものを用いてもよい。また、アクリル換算断面積は、ファントムがアクリル製である場合に都合のよい特徴量であるが、ファントムが他の材質により構成されている場合には、当該他の材質による換算断面積とするとよい。
【0112】
また例えば、上記実施形態では、推定被曝線量は、単位長さ当たりの被曝線量として、CTDI値を算出・表示することを想定しているが、他の規定による値、例えばDLP値を算出・表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 中央処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 コリメータ
24 X線検出器
25 データ収集装置
26 回転部コントローラ
29 制御コントローラ
30 スリップリング
40 被検体
40a 眼
41 スカウト像
81 X線ビーム
100 X線CT装置
101 スカウトデータ取得部
102 スキャン条件設定部
103 画像ノイズ見積部(見積手段)
104 基準被曝線量特定部(計算手段)
105 推定被曝線量算出部(計算手段)
106 CTスキャンデータ取得部
107 画像再構成部
108 画像表示制御部
110 アクリル換算断面積見積部(見積手段)
111 過去画像読出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10