特許第5774464号(P5774464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774464
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150820BHJP
   H01M 8/00 20060101ALI20150820BHJP
   H01M 8/06 20060101ALI20150820BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20150820BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20150820BHJP
   H01M 8/12 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   H01M8/04 P
   H01M8/00 Z
   H01M8/06 G
   H01M8/04 Z
   F24H1/00 631A
   !H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-284923(P2011-284923)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-134916(P2013-134916A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100167025
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100136227
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴将
(72)【発明者】
【氏名】定兼 修
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−049979(JP,A)
【文献】 特開2004−006217(JP,A)
【文献】 特開2001−102063(JP,A)
【文献】 特開2005−011644(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/134719(WO,A1)
【文献】 特開2005−025986(JP,A)
【文献】 特開2011−163679(JP,A)
【文献】 特開2008−164191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池スタックと、発電に伴って発生する熱を回収して温水を得る熱交換器と、温水を貯留する貯湯槽と、前記燃料電池スタックの発電電力を制御する制御装置と、を備える燃料電池システムであって、
前記制御装置は、
前記貯湯槽が満蓄状態にあることを検出する満蓄状態検出手段と、
前記改質器に供給する燃料の単価を取得する燃料単価取得手段と、
前記燃料単価に基づいて、想定される最大発電電力(L)から、システムの運転維持コストのために発電電力を小にしても発電コストが低下しなくなる発電電力(M)までの範囲内で、系統電力に対する発電メリットが最大となる発電電力を算出する発電メリット最大発電電力算出手段と、
前記貯湯槽が満蓄状態のときに、前記発電メリットが最大となる発電電力に基づいて、前記燃料電池スタックの発電電力を制御する発電電力制御手段と、を含んで構成され、
前記発電メリットは、系統電力の購入コストと、現在の燃料単価での燃料電池の発電コストとの差として求められることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電メリット最大発電電力算出手段は、前記燃料単価をパラメータとして前記発電メリット最大発電電力を予め記憶させたテーブルを有し、このテーブルから、前記燃料単価に基づいて、前記発電メリット最大発電電力を検索により求めることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記発電電力制御手段は、定格最大発電電力と、需要電力と、前記発電メリットが最大となる発電電力とから、最も小さい値を選択して、これに制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
本燃料電池システムは、緊急時を除き発電を停止しない連続運転を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
燃料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池スタックと、発電に伴って発生する熱を回収して温水を得る熱交換器と、温水を貯留する貯湯槽と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記貯湯槽が満蓄状態にあることを検出したときに、
前記改質器に供給する燃料の単価に基づいて、想定される最大発電電力(L)から、システムの運転維持コストのために発電電力を小にしても発電コストが低下しなくなる発電電力(M)までの範囲内で、系統電力に対する発電メリットが最大となる発電電力を算出し、
前記発電メリットが最大となる発電電力に基づいて、前記燃料電池スタックの発電電力を制御し、
前記発電メリットは、系統電力の購入コストと、現在の燃料単価での燃料電池の発電コストとの差として求めることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項6】
前記発電メリット最大発電電力を算出する際は、前記燃料単価をパラメータとして前記発電メリット最大発電電力を予め記憶させたテーブルを用い、このテーブルから、前記燃料単価に基づいて、前記発電メリット最大発電電力を検索により求めることを特徴とする請求項5記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項7】
本燃料電池システムは、緊急時を除き発電を停止しない連続運転を行うことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に燃料単価を考慮した発電電力の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、一般に、コージェネレーションシステムとして、発電ユニットと、給湯ユニットとを含んで構成される。
【0003】
発電ユニットは、燃料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガス中の水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタック(燃料電池セルの組立体)と、発電に伴って発生する熱を回収して温水を得る熱交換器とを含んで構成される。
【0004】
給湯ユニットは、発電ユニット側の熱交換器により得た温水を貯留すると共にこの温水を給湯負荷に対して供給可能に構成された貯湯槽を含んで構成される。
【0005】
このような燃料電池システムでは、需要電力に応じて、発電電力が最大となるように、発電電力を制御していた。詳しくは、需要電力を検出し、検出された需要電力と定格最大発電電力(例えば700W)とから、小さい方の値を選択して、これに制御していた。
【0006】
また、特許文献1には、次のような技術が提案されている。温水装置に蓄えている温水が満水状態に接近したと判別すると、需要電力が高くかつ温水需要が低いことを条件として、燃料電池による発電を継続した場合の発電継続コストと、商用電源から供給される商用電力を購入した場合の電力購入コストとを比較し、比較の結果、発電継続コストが電力購入コストよりも小さい場合、温水装置に蓄えられている温水を排出させる。その一方、発電継続コストが電力購入コストより小さくはない場合、燃料電池を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−049979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の一般的な技術のように、需要電力に応じて発電電力が最大となるように発電を行い、貯湯槽の温水が満蓄になっても常に発電電力が最大となるように運転する場合は、貯湯槽が満蓄状態のときには、熱利用できないので、燃料電池の発電コストが系統電力の購入コストを上回る分がそのままデメリットとなり、経済的でないという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1のように、燃料電池の発電を続ける方が経済的であるといっても温水を排出してしまうことはエネルギーの無駄である。また、発電継続コストが電力購入コストより大きい場合に発電を停止させるという選択は、起動停止が比較的容易なタイプの燃料電池システムに採用し得たとしても、連続運転を基本とし起動停止を繰り返すことが難しいタイプの燃料電池システムには採用できず、汎用性に乏しい。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑み、貯湯槽が満蓄状態のときに発電を停止することなく経済性を追求できるようにした燃料電池システム及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、改質ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池スタックと、発電に伴って発生する熱を回収して温水を得る熱交換器と、温水を貯留する貯湯槽と、前記燃料電池スタックの発電電力を制御する制御装置と、を備えることを前提とする。
【0012】
ここにおいて、本発明では、上記の課題を解決するために、前記制御装置は、前記貯湯槽が満蓄状態にあることを検出する満蓄状態検出手段と、前記改質器に供給する燃料の単価を取得する燃料単価取得手段と、前記燃料単価に基づいて、想定される最大発電電力(L)から、システムの運転維持コストのために発電電力を小にしても発電コストが低下しなくなる発電電力(M)までの範囲内で、系統電力に対する発電メリット(系統電力の購入コストと現在の燃料単価での燃料電池の発電コストとの差)が最大となる発電電力を算出する発電メリット最大発電電力算出手段と、前記貯湯槽が満蓄状態のときに、前記発電メリットが最大となる発電電力に基づいて、前記燃料電池スタックの発電電力を制御する発電電力制御手段と、を含んで構成される。
【0013】
言い換えれば、本発明では、前記制御装置により、前記貯湯槽が満蓄状態にあることを検出したときに、前記改質器に供給する燃料の単価に基づいて、想定される最大発電電力(L)から、システムの運転維持コストのために発電電力を小にしても発電コストが低下しなくなる発電電力(M)までの範囲内で、系統電力に対する発電メリット(系統電力の購入コストと当該燃料単価での燃料電池の発電コストとの差)が最大となる発電電力を算出し、前記発電メリットが最大となる発電電力に基づいて、前記燃料電池スタックの発電電力を制御するように、燃料電池システムを運転する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯湯槽が満蓄状態となったときは、燃料単価を考慮して、系統電力に対する発電メリットが最大となるように発電電力を制御するため、コージェネレーションシステムとして熱利用できないときの経済性を向上させることができる。
【0015】
また、制御の変更のみで、本体コストを増加させることなく、燃料電池ユーザーの光熱費削減効果を増加させることができる。
【0016】
また、熱利用できないときも発電を停止することがないため、連続運転を基本とする燃料電池システムに好適に適用でき、汎用性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す燃料電池システムの構成図
図2】燃料単価別のFC発電コストを系統電力の購入コストと対比して示す図
図3】発電電力制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す燃料電池システムの構成図である。
【0019】
燃料電池システムは、その主要部をなす発電ユニット中核部1と、発電ユニット中核部1の発電電力を取り出すパワーコンディショナー(PCS)10と、発電ユニット中核部1での発電に伴って発生する熱(廃熱)を回収して温水を得る熱交換器11と、温水を貯留する貯湯槽12と、これらの制御装置20と、を含んで構成される。尚、発電ユニット中核部1の他、PCS10、熱交換器11及び制御装置20は、図1に一点鎖線で囲んで示すように発電ユニットとして1つの筐体内に収納される。貯湯槽12は図示しない貯湯ユニットとして別の筐体内に収納される。
【0020】
発電ユニット中核部1は、燃料供給部2と、脱硫部3と、水供給部4と、水気化部5と、改質器(水素発生部)6と、空気供給部7と、燃料電池スタック8と、オフガス燃焼部9とを含んで構成され、主には、燃料(水素含有燃料)を改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器6と、改質ガスと空気とを反応させて発電する燃料電池スタック8とから構成される。
【0021】
発電ユニット中核部1は、燃料電池スタック8にて改質ガス中の水素と空気中の酸素とを反応させて発電を行うが、燃料電池スタック8の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cell )、固体酸化物形燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell )、リン酸形燃料電池(PAFC;Phosphoric Acid Fuel Cell )、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC;Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。尚、燃料電池スタック8の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0022】
燃料供給部2は、水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料を脱硫部3へ供給する。炭化水素系燃料としては、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。また、炭化水素系燃料としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類が挙げられる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。
【0023】
脱硫部3は、燃料供給部2から供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部3は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部3の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部3は、脱硫した水素含有燃料を改質器6へ供給する。
【0024】
水供給部4は、改質用の水を水気化部5へ供給する。水気化部5は、水を加熱し気化させることによって、水蒸気を生成する。水気化部5における水の加熱には、例えば、改質器6の熱、オフガス燃焼部9の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、発電ユニット1内で発生した熱を用いてもよいし、また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いてもよい。水気化部5は、生成した水蒸気を改質器6へ供給する。
【0025】
改質器6は、脱硫部3からの水素含有燃料を改質触媒によって改質し、水素リッチな改質ガスを発生させる。改質器6での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。尚、燃料電池スタック8に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒によって改質する改質器6の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、燃料電池スタック8のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、改質器6の他に、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。改質器6は、水素リッチガスを燃料電池スタック8のアノード8Aへ供給する。
【0026】
空気供給部7は、燃料電池スタック8のカソード8Cへ空気を供給する。空気供給部7に不純物除去フィルタや酸素富化フィルタを備えるようにしてもよい。
【0027】
燃料電池スタック8は、改質器6からの水素リッチガス及び空気供給部7からの空気を用いて発電を行う。燃料電池スタック8は、水素リッチガスが供給されるアノード8Aと、空気が供給されるカソード8Cと、アノード8Aとカソード8Cとの間に配置される電解質8Eと、を備えている。燃料電池スタック8は、後述するパワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。燃料電池スタック8は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び空気をオフガスとして、オフガス燃焼部9へ供給する。
【0028】
オフガス燃焼部9は、燃料電池スタック8から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部9によって発生する熱は、改質器6へ供給され、改質器6での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0029】
ここで、燃料電池スタック8として固体酸化物形燃料電池(SOFC)が採用された場合の発電ユニット中核部1について、より詳細に説明する。この場合、燃料電池スタック8の電解質8Eは、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等のセラミックからなり、高温下にて酸化物イオンを伝導する。アノード8Aは、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと水素リッチガス中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。カソード8Cは、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、空気中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。アノード8A側で酸化反応が行われるため、水素リッチガスに一酸化炭素が含有されていてもよい。従って、改質器(水素発生部)6から、一酸化炭素を除去する構成を省略することができる。また、燃料電池スタック8の作動温度が高温であるため、発電ユニット中核部1では、燃料電池スタック8からの熱を、例えば、改質器6、水気化部5、その他の箇所にて有効に利用することができる。
【0030】
パワーコンディショナー(PCS)10は、発電ユニット中核部1の燃料電池スタック8で発生した直流電力を取り出すものであり、また、インバータを備え、直流電力を交流電力に変換して、家庭内の電気機器(負荷)EIに供給する。尚、燃料電池の発電電力が電気機器EIの需要電力に満たない場合は、商用電力系統CEからの系統電力が補助電力として電気機器EIに供給される。
【0031】
熱交換器11は、発電ユニット中核部1での発電に伴って発生する熱(燃料電池スタック8にて発生する熱、オフガス燃焼部9の熱、あるいは排ガスの熱などの廃熱)を回収して温水を得る。
【0032】
貯湯槽12は、熱交換器11により得た温水を貯留すると共に、この温水を給湯負荷に対して供給可能に構成されている。
【0033】
すなわち、熱交換器11は、その一次側通路と二次側通路との間で熱交換するもので、一次側通路には、発電ユニット中核部1からの廃熱回収通路13が接続されている。そして、二次側通路には、貯湯槽12の底部から引き出されて貯湯槽12の上部へ戻る循環通路14a、14bが接続されている。貯湯槽12の底部と熱交換器11との間の循環通路14aには、循環用のポンプ15が介装されている。
【0034】
従って、循環用のポンプ15を駆動すると、貯湯槽12の底部付近に存在する比較的低温の水が循環通路14aにより熱交換器11に供給され、熱交換器11にて発電ユニット中核部1からの廃熱との間で熱交換がなされる。これにより、水が加熱されて温水が得られる。熱交換器11にて得た温水は、循環通路14bにより貯湯槽12の上部へ戻される。このような循環が繰り返されて、貯湯槽12に温水が貯留される。
【0035】
尚、貯湯槽12には、その上部から温水を取り出す温水取出通路16が設けられると共に、その底部へ水道水を補給する水補給通路17が設けられる。
【0036】
制御装置20は、燃料電池スタック8の発電電力などを制御するもので、マイクロコンピュータにより構成され、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイスなどを備えている。
【0037】
燃料電池スタック8の発電電力の制御のため、制御装置20には、パワーコンディショナー10から各種情報が入力される。具体的には、パワーコンディショナー10に備えられる各種計測器(図示せず)により、燃料電池スタック8の出力電圧、出力電流及び発電電力、更にはパワーコンディショナー10を介して電気機器EIへ供給される電力が計測され、これらが制御装置20へ入力される。
【0038】
制御装置20にはまた、計測器21から信号が入力される。計測器21は商用電力系統CEから電気機器EIへ供給される補助電力を計測し、補助電力の計測値を制御装置20へ出力する。電気機器EIの需要電力は、パワーコンディショナー10側からの供給電力と商用電力系統CE側からの補助電力との和として算出される。
【0039】
制御装置20にはまた、貯湯槽12の底部及び上部の各所定レベルに設けた温度センサ22a、22bから信号が入力される。これらの温度センサ22a、22bにより検出される温度がいずれも高温側のしきい値を超えたことを検出することで、貯湯槽12の満蓄状態を検出することができる。
【0040】
制御装置20にはまた、燃料単価の入力部30が接続されており、例えば通信手段を用いて、燃料供給部2により改質器6へ供給している燃料の現在の単価を入力可能に構成されている。
【0041】
制御装置20による発電電力の制御は、燃料供給部2のポンプ及び/又は制御弁を介して改質器6へ燃料供給量を制御、及び、水供給部4のポンプ及び/又は制御弁を介して改質器6への改質用水供給量を制御して、燃料電池スタック8への改質ガス(アノードガス)の供給量を制御し、また、空気供給部7のポンプ及び/又は制御弁を介して燃料電池スタック8への空気(カソードガス)の供給量を制御することによって、行う。
【0042】
従って、制御装置20は、電気機器EIの需要電力に応じて、燃料電池スタック8の発電電力目標値を設定し、これに従って(発電電力目標値を得るように)、燃料、水及び空気の供給量を制御することにより、燃料電池スタック8の発電電力を制御する。
【0043】
制御装置20はまた、パワーコンディショナー10を制御する。具体的には、燃料電池スタック8の発電電力目標値に基づいて、燃料電池スタック8から取り出す電流を設定・制御する。より詳しくは、燃料電池スタック8の発電電力目標値を燃料電池スタック8の出力電圧(瞬時値)で除算して、電流目標値を設定し、この電流目標値に従って、燃料電池スタック10から取り出す電流を制御する。
【0044】
次に、本実施形態における、制御装置20での、電気機器EIの需要電力に応じた燃料電池スタック8の発電電力目標値の設定について、詳細に説明する。
【0045】
燃料電池スタック8の発電電力は、基本的には電気機器EIの需要電力に対応させるが、需要電力が発電可能な最大電力である定格最大発電電力(例えば700W)を超える場合は、周知のように、発電電力を定格最大発電電力に制限し、不足分は系統電力により補う。
【0046】
従来は、このように定格最大発電電力の範囲内で、需要電力に応じて、発電量が最大となるように発電を行っており、貯湯槽12のお湯が満蓄となっても、常に発電量が最大となるように運転している。
【0047】
しかし、燃料単価によっては当該発電量を得るための発電コストが系統電力の購入コストを大きく上回るので、貯湯槽12が満蓄状態となったときに、コージェネレーション効果がなくなると、需要家のメリットが失われてしまう。
【0048】
その一方、連続運転を基本とし起動停止を繰り返すことが難しいタイプの燃料電池システムでは、発電を停止させることは緊急時を除き極力避けたい。
【0049】
図2は、FC電力について、燃料(例えばLPG)の価格別(基準価格の120%、基準価格、基準価格の80%、基準価格の60%)に、横軸に発電電力(W)をとって、縦軸に発電コスト(円/min)を示したものである。また、系統電力について、横軸を購入電力(W)、縦軸を購入コスト(円/min)として点線で示してある。
【0050】
この図2を参照すると、LPG価格が基準価格の60%のときは、発電電力=Lのときに、発電メリット(購入コスト−発電コスト)が最大となる。
【0051】
また、LPG価格が基準価格の80%のときも、わずかではあるが、発電電力=Lのときに、発電メリット(購入コスト−発電コスト)が最大となる。
【0052】
また、LPG価格が基準価格のときは、全域で発電コストが購入コストを上回るが、発電電力=Mのときに、発電メリット(購入コスト−発電コスト)が最大、言い換えれば購入コストと発電コストとの差が小さくなって、発電デメリットが最小となる。
【0053】
また、LPG価格が基準価格の120%のときも同様で、発電電力=Mのときに、発電メリット(購入コスト−発電コスト)が最大、言い換えれば購入コストと発電コストとの差が小さくなって、発電デメリットが最小となる。尚、Mより小の領域は、システムの運転維持コストのために発電電力を小にしても発電コストがほぼ低下しない領域である。
【0054】
従って、燃料価格に応じて、発電メリットが最大となる発電電力を決定し、これに制御し、不足分は系統電力で補うことにより、経済的な運転が可能となる。
【0055】
尚、この図2では、燃料価格によって、発電電力=L又はMのいずれかで、発電メリットが最大となったが、発電効率等によっては、L点とM点の中間で、発電メリットが最大となる場合もある。
【0056】
発電メリットの計算方法は、次の通りである。
(1)LPG単価を(円/J)で表すものとすると、LPG価格(円/m3)より、次式により、LPG単価(円/J)を算出する。
LPG単価(円/J)=LPG価格(円/m3)/LPG発熱量(J/m3)
(2)所望の発電電力を得るときのFC発電コスト(円/min)を、次式により算出する。
発電コスト(円/min)=発電電力(W)/発電効率×60×LPG単価(円/J)
(3)FC発電電力と同一の電力を系統電力から得るときの系統電力の購入コスト(円/min)を,次式により算出する。
購入コスト(円/min)=発電電力(W)×60/(3600×1000)×電力単価(円/kWh)
(4)発電メリット(円/min)を、次式のように、購入コストから発電コストを減算して算出する。
発電メリット(円/min)=購入コスト−発電コスト
【0057】
従って、
発電メリット(円/min)=発電電力(W)×(電力単価/(3600×1000)−LPG単価(円/J)/発電効率)×60
となる。
【0058】
従って、LPG単価が高く、(電力単価/(3600×1000)−LPG単価(円/J)/発電効率)が負の値になる場合は、発電出力を下げる方が、発電メリットが大きくなる(デメリットが小さくなる)。
【0059】
図3は、制御装置20による発電電力制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンはシステム起動と共に開始し、システム停止と判定されるまで繰り返し実行される。
【0060】
S1では、パワーコンディショナー10側からの供給電力と商用電力系統CE側からの補助電力との和として、電気機器EIの需要電力W1を検出する。
【0061】
S2では、貯湯槽12の底部及び上部の各所定レベルに配置した温度センサ22a、22bの信号に基づき、貯湯槽12が満蓄状態か否かを判定する。尚、温度センサ22a、22bの検出温度の全てが高温側のしきい値を超えているときに満蓄状態と判定する。この部分が満蓄状態検出手段に相当する。
【0062】
ここでの判定の結果、満蓄状態でない場合は、S3へ進み、満蓄状態である場合は、S4〜S6へ進む。
【0063】
S3では、貯湯槽12が満蓄状態ではなく、まだ熱利用が可能であるので、発電メリットを演算することなく、発電電力が最大となるように、発電電力目標値を設定する。すなわち、定格最大発電電力W0と、需要電力W1とから、小さい方の値を、発電電力目標値とする。従って、発電電力目標値=min(W0,W1)である。
【0064】
S4では、貯湯槽12が満蓄状態で、これ以上の熱利用が望めないため、発電メリットの演算のため、先ず、燃料単価(LPG単価)を読込む。この部分が燃料単価取得手段に相当する。
【0065】
S5では、燃料単価に基づいて、発電メリット(系統電力購入コスト−FC発電コスト)が最大となる発電電力W2を算出する。この部分が発電メリット最大発電電力算出手段に相当する。
【0066】
尚、図2の関係から、予め、燃料単価をパラメータとして発電メリット最大発電電力W2を記憶させたテーブルを作成しておけば、このテーブルから、燃料単価に基づいて、発電メリット最大発電電力W2を検索により求めることができる。
【0067】
また、前述のように、(電力単価/(3600×1000)−LPG単価(円/J)/発電効率)を計算し、これが負の値になる場合に、発電メリット最大発電電力W2を低側の所定値(図2のM値)に設定するようにしてもよい。
【0068】
S6では、定格最大発電電力W0と、需要電力W1と、発電メリット最大発電電力W2とから、最も小さい値を、発電電力目標値とする。従って、発電電力目標値=min(W0,W1,W2)となる。この部分が後述のS7と共に発電電力制御手段に相当する。
【0069】
S3又はS6での発電電力目標値の設定後は、S7へ進む。
S7では、設定された発電電力目標値に従って、この発電電力目標値を得るように、燃料、水及び空気の供給量を制御することにより、燃料電池スタック8の発電電力を制御する。また、この発電電力目標値に基づいて、パワーコンディショナー10を介して、燃料電池スタック8から取り出す電流(掃引電流)を設定・制御する。
【0070】
本実施形態によれば、貯湯槽12が満蓄状態となったときは、燃料単価を考慮して、系統電力に対する発電メリット(すなわち、系統電力購入コスト−FC発電コスト)が最大となるように発電電力を制御するため、コージェネレーションシステムとして熱利用できないときの経済性を改善し、燃料電池ユーザーの光熱費を軽減することができる。
【0071】
また、熱利用できないときも発電を停止することがないため、連続運転を基本とし起動停止を繰り返すことが難しいタイプの燃料電池システム(SOFCシステムなど)に好適に適用でき、汎用性も向上する。従って、発電ユニットと貯湯ユニットとを備えるコージェネレーションシステムであれば、方式を問わず採用可能である。
【0072】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1 発電ユニット中核部
2 燃料供給部
3 脱硫部
4 水供給部
5 水気化部
6 改質器
7 空気供給部
8 燃料電池スタック
9 オフガス燃焼部
10 パワーコンディショナー(PCS)
11 熱交換器
12 貯湯槽
13 廃熱回収通路
14a、14b 循環通路
15 循環用のポンプ
16 温水取出通路
17 水補給通路
20 制御装置
21 計測器
22a、22b 温度センサ
30 燃料単価の入力部
図1
図2
図3