特許第5774477号(P5774477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774477
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】オンチップ臓器デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20150820BHJP
   A01N 1/02 20060101ALN20150820BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20150820BHJP
【FI】
   C12M3/00 Z
   !A01N1/02
   !C12Q1/02
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2011-512022(P2011-512022)
(86)(22)【出願日】2009年6月4日
(65)【公表番号】特表2011-528653(P2011-528653A)
(43)【公表日】2011年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2009004008
(87)【国際公開番号】WO2009146911
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2011年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/058,766
(32)【優先日】2008年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513254763
【氏名又は名称】ティスユーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TissUse GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ウヴェ・マルクス
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−515958(JP,A)
【文献】 特表2007−537759(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/040015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 5/00−5/28
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの培地補給タンク(2)と、
(b)幹細胞キャビティ(9)および少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)であって、ここで幹細胞キャビティ(9)は少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)に流体連通される、と、
(c)少なくとも1つの培地廃液タンク(5)と、
を含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)であって、ここで、
培地補給タンク(2)が、マイクロ流体補給チャネル(6)によって少なくとも1つの臓器成長区分(3)におよび少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)に連通されており、
少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)がマイクロ流体廃液チャネル(7)により少なくとも1つの培地廃液タンク(5)に連通されている、
デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)と少なくとも1つの培地廃液タンク(5)の間におよび/または少なくとも1つの臓器キャビティの内部に、少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)が配置されている、請求項1に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項3】
幹細胞キャビティ(9)が100μm未満の直径を有する、請求項1または2に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項4】
臓器キャビティ(4)が、
(a)生分解性マイクロキャリア;
(b)加圧手段;
(c)コラーゲンウェブ;
(d)石灰化ゾーン;
(e)さらなる培地補給タンクに連通している毛細管;
(f)臓器キャビティを通して二次流れを提供するための脈動加圧手段を各々備えた少なくとも2つのタンク;
(g)1つ以上の電極;
(h)フィブリンゲル;
(i)合成ポリペプチドゲル;
(j)架橋タンパク質;
(k)織りおよび/または不織ポリマー繊維;
(l)電磁場力;
(m)マイクロポンプ;
(n)センサー基板;
(o)センサー;および
(p)光ファイバ、
からなる群から選択される構造を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項5】
成長区分が、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)に対して半径方向に配置されている2つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項6】
1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)および/または少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)が顕微鏡検査可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項7】
センサー(8、8a、8b)が、
(a)pHセンサー;
(b)pOセンサー;
(c)検体捕捉センサー;
(d)伝導度センサー;
(e)プラズモン共鳴センサー;
(f)温度センサー;
(g)COセンサー;
(h)NOセンサー;
(i)走化性センサー;
(j)サイトカインセンサー;
(k)イオンセンサー;
(l)電位差センサー;
(m)電流測定センサー;
(n)フロースルーセンサー;
(o)充填センサー;
(p)インピーダンスセンサー;
(q)伝導度センサー;
(r)電磁場センサー;
(s)表面音響波(SAW)センサー;および
(t)代謝センサー;
からなる群から選択される、請求項〜6のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項8】
2つ以上のセンサー(8、8a、8b)が、1つの臓器キャビティ(4)から培地廃液タンク(5)までの流路内に配置されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)。
【請求項9】
上部閉鎖層(14)、臓器キャビティ層(15)および下部閉鎖層(16)を含む臓器成長区分層(13)またはその一部分に対して培地層(12)を流体密封式にボンディングするステップを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の製造方法。
【請求項10】
(a)細胞または組織切片の懸濁液を、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)内に投入するステップと、
(b)1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を流体密封式に封止するステップと、
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内に臓器および/またはオルガノイドを確立する方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で確立された1つ以上の臓器および/またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験する方法であって;
(a)1つ以上の臓器および/またはオルガノイドを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を提供するステップまたは、
請求項10に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で臓器および/またはオルガノイドを確立する方法を実施するステップ、
(b)臓器および/またはオルガノイドに対して1つ以上の被験化合物を添加するステップ、
(c)臓器および/またはオルガノイドを顕微鏡で査定するステップ;および/または
1つ以上のセンサー(8、8a、8b)により判定可能な1つ以上のパラメータを判定するステップ、を含む方法。
【請求項12】
臓器またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験するかまたは臓器またはオルガノイドの機能を検査するための、1つ以上の臓器および/またはオルガノイドを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細胞画像形式および例えば2光子顕微鏡検査法によるオンライン観察に適した小型チップフォーマットで臓器またはオルガノイドならびに幹細胞ニッチを確立または維持できるようにする好ましくはセンサー制御式の内蔵型オンチップ臓器デバイス、および例えば化合物の活性、薬力学および薬学動態を試験するため、または臓器またはオルガノイドならびに幹細胞ニッチの自己集合、ホメオスタシス、損傷、再生または相互作用、ならびに成熟、加齢、死および時間生物学の現象を研究するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アーキテクチャと機能性の間の厳しい相関関係のパラダイムは、地上の全てのレベルの生物学的存在にあてはまる。これらの生物学的複雑性レベルの増大は、何百万年という進化の過程の中で段階的に出現してきた。存在は、外部環境のわずかな変化に誘発される確率が最も高く、この変化が次の複雑性レベルへと自己集合する能力を作り出した。人間については、分子、細胞、オルガノイド組織、臓器、系および最終的に個々の生物自体がこれらのレベルを表わすものと考えられた。現在では、ほぼ全ての臓器および系が多数の機能的に自立的な同一の構造単位によって構築されていることが証明されている。これらのオルガノイド単位は、数個の細胞層から数ミリメートルに至るまでの非常に小さい寸法を有する。肝小葉、腎臓ネフロン、皮膚の真皮および表皮、腸粘膜、膵臓のランゲルハンス島、大脳皮質および小脳の灰白色および白質、および成人静止状態促進幹細胞ニッチは、全て卓越した機能性および高度に可変的な集塊状幾何形状を有するこのようなヒトオルガノイド構造のほんの一例である。それぞれの臓器の内部におけるこのようなミクロオルガノイドの際立った機能性、高度の自立性および多重性のため、任意の物質に対するそれらの反応性パターンは、臓器全体を代表するものであるように思われる。自然は、臓器および系の最も卓越した機能を行わせるために、極めて微細ではあるが高性能な生物学的構造を創造した。所与の臓器内部でのこれらの構造の増殖は、部分的な臓器損傷の間に機能性が完全に失われることがないようにするための自然による危機管理ツールである。一方、進化の上ではこの概念のおかげで、単機能ミクロオルガノイド単位を構築するためにほぼ同一のマスタープランをなおも使用しながら、所与の種のニーズに合わせて臓器のサイズおよび形状を(例えばマウスおよびヒトの肝などのように)容易に調整することができた。ヒトへの曝露が予想される物質試験にとって比類のない傑出した可能性は、試験管内でヒトミクロオルガノイドの等価物を確立することの中に見出される。最初のオンチップ臓器デバイスは、新規共培養用細胞培養容器(IdMOC)と呼ばれ、非特許文献1により2004年に記述された。このデバイスは、ゲルで覆われた従来の6ウェル平板における異なる組織の静上培養に基づくものであり、拡散ベースの半固体培地を通して異なる培地を連通させる。それ以来、試験管内でより自然にアーキテクチャおよび生体内環境をエミュレートする培養システムおよびバイオリアクターを開発するための多大な努力が払われてきた。非特許文献2により包括的要約が示されている。数多くの異なる組織、例えば尿細管(非特許文献3)または神経組織(非特許文献4)のために、微小灌流培養システムが開発されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Li et al(Chem.Biol.Interaction)
【非特許文献2】M.A.Swartz et al:Capturing complex 3D tissue physiology in vitro.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.,7,211-224,2006
【非特許文献3】Minuth et al:The formation of pores in the basal lamina of regenerated renal tubules.Biomaterials,29,2749-2756,2008
【非特許文献4】Hillenkamp et al:Maintenance of adult porcine retina and retinal pigment epithelium in perfusion culture:Characterization of an organotypic in vitro model.Experimental Eye Research,86,661-668,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の3D培養系およびバイオリアクターは、いずれのものも、外部機器とは独立した内蔵型でオンライン観察可能なチップ環境における異なるオルガノイドのサイズ、形状および栄養上の必要条件に関する要件を満たすように設計されていなかった。例えばヒトオルガノイドの創出に対し本発明を応用することにより、化学物質、薬剤、栄養補助食品および薬用化粧品などの物質に対する新たな品質のバイオセーフティおよび効能試験を、人体における曝露に先立ち想定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(a)少なくとも1つの培地補給タンク(2)、
(b)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)であって、培地補給タンク(2)が、マイクロ流体補給チャネル(6)によって少なくとも1つの臓器成長区分(3)に連通されているデバイスに関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、
(a)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含み、かつ、
(b)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)が少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)を含みかつ/またはこれに連通されている、
内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)に関する。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、
(a)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含み、かつ
(b)臓器成長区分(3)が少なくとも幹細胞キャビティ(9)を含む、
内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)に関する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、
成長区分層(13)またはその一部分に対して培地層(12)を流体密封式にボンディングするステップを含む、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の製造方法に関する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、
(a)内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を解除可能な形で係合させるための保持手段(18)と、(b)内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)上の対応するコネクタを供給ユニット(17)に接続するための電気コネクタ(19)とを含む、作動中に本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を保持するための供給ユニット(17)に関する。
【0010】
(a)細胞または組織切片の懸濁液を、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)内に投入するステップと、
(b)1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を流体密封式に封止するステップと、
を含む、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内に臓器および/またはオルガノイドを確立する方法。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で確立された1つ以上の組織、臓器および/またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験する方法であって;
(a)1つ以上の組織、臓器および/またはオルガノイドを含む本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を提供するステップまたは、
本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で臓器および/またはオルガノイドを確立する方法を実施するステップ、
(b)臓器および/またはオルガノイドに対して1つ以上の被験化合物を添加するステップ、
(c)臓器および/またはオルガノイドを顕微鏡で査定するステップ;および/または
1つ以上のセンサー(8、8a、8b)により判定可能な1つ以上のパラメータを判定するステップ、を含む方法に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、組織、臓器またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験するかまたは臓器またはオルガノイドの機能を検査するための、1つ以上の組織、臓器および/またはオルガノイドを含む本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】上部閉鎖層(14)および臓器キャビティ層(15)を含む、部分的に組み立てられた内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の1区分の好ましい一実施形態の俯瞰図である。上部閉鎖層(14)および臓器キャビティ層(15)は互いに重なり合っているため、ここで描かれている俯瞰図では識別できず、したがって、上部閉鎖層(14)と臓器キャビティ層(15)はこの図において符号が付されていない。この区分は、各々3個の臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む6個の個別臓器成長区分(3)を含む。その中に含まれているフィーチャを明らかにするため、部品は半透明で描かれている。しかしながら、一部の好ましい実施形態では、上部閉鎖層(14)および/または臓器キャビティ層(15)を生産するために用いられる材料は、部分的にまたは完全に半透明である。上部培地層(12)(図示せず)から補給された培地は、マイクロ流体補給チャネル(6)を通って、好ましくは臓器成長区分(3)の中心まで流れ、臓器成長区分(3)内に含まれる1、2、3またはそれ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)までの培地の均等な分布を可能にする。好ましくは、培地は、臓器キャビティ層(15)内に位置設定されている幹細胞キャビティ(9)の反対側に位置づけされた出口(10)から臓器成長区分内に補給される。こうして、幹細胞は新鮮な培地と共に隣接する臓器キャビティ(4、4a、4b)内に流入し、それぞれの臓器および/またはオルガノイドを構成する細胞集団を補充/再生させてよい。1つの臓器成長区分(3)の臓器キャビティ(4、4a、4b)は、好ましくは、異なる組織、臓器および/またはオルガノイドを形成する、異なる細胞集団で満たされ、このため例えば、2つ以上の臓器またはオルガノイドに対する1つの化合物の効果を試験することなどが可能になる。臓器キャビティ(4、4a、4b)は好ましくは微細構造化されて、それぞれに所望された臓器および/またはオルガノイドの形への細胞集団の組織化を支援する。一部の組織、臓器および/またはオルガノイドは特定のミクロ環境、例えば変化する圧力、臓器キャビティ内部の培地二次流、特殊な付加的培地などが形成するおよび/または維持されることを必要とする。臓器キャビティ(4)は、例えばニューロンの確立および/または維持を支援する複数の別々のマイクロキャビティを提供するように構造化されている。臓器キャビティ(4a)は、例えば骨および/または軟骨構造の確立および/または維持を支援する加圧された環境を提供するように構造化されている。臓器キャビティ(4b)は、例えば血管新生化された皮膚の確立および/または維持を支援する臓器キャビティ内部の二次流を提供するように構造化されている。臓器キャビティ(4、4a、4b)は好ましくは、上端部を上部閉鎖層(14)により画定され、下端部を下部閉鎖層(16)により確定され、一方キャビティの側面は臓器キャビティ層(15)内に形成されている。こうして、臓器の成長および/または維持に必要とされる微細構造は同様に、臓器キャビティ(4、4a、4b)の上端部および/または下端部によって提供されてもよい。好ましくは、培地がマイクロ流体廃液チャネル(7、7a、7b)内に流入できるようにする出口は、入口(10)から臓器キャビティ(4、4a、4b)内に流入するあらゆる培地が、廃液チャネル(7、7a、7b)の入口を通って臓器キャビティから外に流れる前に臓器キャビティ(4、4a、4b)全体を通って優先的に流れるような形で、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)とは反対の位置に位置設定される。廃液培地は次に、好ましくは臓器成長区分(3)内部の各臓器キャビティ(4、4a、4b)について別々のチャネル(7、7a、7b)を通って、流路内にある1つ以上のセンサー(8、8a、8b)まで流れる。こうして、所与の化合物および/または環境変化に対する応答を、臓器成長区分(3)の臓器キャビティ(4、4a、4b)内に含まれる各々の臓器および/またはオルガノイドについて個別に査定することができる。その後、培地は、培地廃液タンク(5)内に流入する。臓器成長区分(3)の全ての臓器キャビティ(4、4a、4b)の廃液培地さらには1つの内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の全ての臓器成長区分について共通の培地廃液タンク(5)を提供することが可能であるものの、各々の臓器成長区分の廃液培地についてまたは好ましくは各々の臓器キャビティ(4、4a、4b)について1つの培地廃液タンク(5)を提供して廃液培地の混合を回避することが好ましい。同様に、1つの臓器成長区分(3)内部または異なる臓器成長区分(3)内部に同じ微細構造を有する全ての臓器キャビティが1つの廃液培地に連通されて、異なる臓器またはオルガノイドからの廃液の混同を回避することも好ましい。臓器成長区分(3)の各々の臓器キャビティ(4、4a、4b)が別々の廃液タンク(5)に連通されている好ましい実施形態においては、個々の廃液培地タンク(5)からの廃液培地の全てまたは試料を引き抜きさらに1つの臓器および/またはオルガノイドからの各廃液培地を個別に分析することが可能である。廃液培地タンク(5)キャビティは好ましくは培地層(12)(図示せず)内に位置設定される。この図に示されている好ましい実施形態では、対応する矩形開口部が上部閉鎖層(14)および臓器キャビティ層(15)内に設けられている。したがって、この実施形態においては、培地廃液タンク(5)はほぼ内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)全体を通って下部閉鎖層(16)の底面と培地層(12)の上端部の間に延在し、こうして廃液培地を保持するための最大の空間を提供している。
図2A】上部閉鎖層(14)、臓器キャビティ層(15)および下部閉鎖層(16)を含む臓器成長区分層(13)と培地層(12)とを含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の好ましい一実施形態の展開図である。培地層(12)は、上部および下部閉鎖層の間で臓器成長区分層(15)内にある臓器成長区分(3)へのアクセスを可能にするカットアウトを含む。これらのカットアウトは、好ましくは下にあるそれぞれの臓器成長区分(3)のカットアウトとサイズが同じであって、臓器成長区分(3)内部の各臓器キャビティ(4、4a、4b)へのアクセスを可能にしている。好ましくは、それぞれの臓器またはオルガノイドを確立するのに使用される細胞集団好ましくは細胞懸濁液および/または組織切片は、このカットアウトを通して臓器キャビティ(4、4a、4b)内に直接投入され、このカットアウトはその後、投入された細胞集団の汚染を避けるために封止される。好ましくは、このシールは流体密封性であるが気体透過性である。あるいは、細胞集団全体は、培地と共にマイクロ流体補給チャネル(6)を通っておよび/または付加的なアクセスポートを通って直接幹細胞キャビティ(9)内に導入されてよい1つ以上の幹細胞から生成される。さらに、培地補給タンク(2)が培地層(12)内部に位置づけされている。このタンクには好ましくは、所要培地を培地補給タンク(2)内に供給できるようにするためのアクセスポートが備わっており、または、培地層(12)に予備充填された培地補給タンクが備わっていてよく、これには空気が培地補給タンクに入ることができるようにする開口部が備わっていてよい。融通性をもたせるように、予備充填された培地補給タンク(2)を含む培地層(12)は、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を形成するべくユースポイントで臓器成長区分層(13)に連通されてよく、あるいは完全に組立てられた内蔵型オンチップ臓器デバイスには、予備充填された培地補給タンク(2)かまたはユースポイントで充填される空の培地補給タンク(2)のいずれかが備わっていてよい。さらに、培地層(12)は1つ以上の培地廃液タンク(5)を含む。これらは、臓器成長区分(3)、特にその中に含まれた臓器キャビティ(4、4a、4b)に流体連通している。個々の臓器キャビティを、好ましくは内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の内部にある1つまたは複数の培地廃液タンク(5)と連通させる流路(7、7a、7b)の中に、センサー(8、8a、8b)が位置設定されていることが好ましい。この図に示されている好ましい実施形態において、類似の形状およびサイズのカットアウトが上部閉鎖層、臓器キャビティ層および培地層内に設けられて、培地廃液タンク(5)を形成する。下部閉鎖層(16)には、(i)臓器キャビティ(4、4a、4b)の底部、培地補給タンク(2)にあってもよくまたは下部閉鎖層の任意の他の部分に位置づけされていてもよい加熱手段(11)に電力を提供するため、および/または(ii)好ましくは臓器キャビティ(4、4a、4b)の内部にあり、または下部閉鎖層の任意の他の部分に位置づけされてもよいセンサーデバイスおよび/またはアクチュエータ(加圧手段、ポンプ、温度センサーなど)に接続するため;および/または(iii)センサー(8、8a、8b)に接続するための電気コネクタ(19)が設けられている。
図2B】下部閉鎖層(16)の上面の俯瞰図である。ここで示されているのは、好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO)製である加熱手段(11)、好ましくは白金製の蛇行構造である温度センサー(23)、および好ましくは金製の電気コネクタ(19)である。同様にして導電性経路は金製である。下部閉鎖層(16)は好ましくはガラス製で、少なくとも臓器成長区分(3)の領域内で半透明であり、透過型顕微鏡検査を可能にしている。好ましくは、下部閉鎖層(16)には、臓器成長区分(3)内部の温度を制御するための温度センサーが設けられている。
図3】3つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む臓器成長区分(3)の好ましい実施形態の展開図である。この好ましい実施形態において、臓器キャビティ(4、4a、4b)は、微細構造を含む上部閉鎖層(14)、所要の微細構造の大部分を提供する臓器キャビティ層(15)および神経の成長に適合された臓器キャビティ内のインピーダンスを査定するために例えばインピーダンス測定手段(22)などを提供する下部閉鎖層(16)によって、各々閉鎖されるかまたは少なくとも部分的に上面で閉鎖されている。
図4A】3つの異なる構造を有する臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む臓器成長区分(3)を含む臓器キャビティ層(15)の好ましい実施形態の1区分の俯瞰図である。臓器成長区分(3)の内部にある臓器キャビティ(4、4a、4b)内への培地流は、幹細胞キャビティ(9)に並置されているマイクロ流体補給チャネルの出口(10)(この実施形態では上部閉鎖層上に位置設定されているため図示せず)から出発し、臓器キャビティ(4、4a、4b)内に入り、3本の別々のマイクロ流体廃液チャネル(7、7a、7b)を通って流出する。流体流の方向は、白色矢印により示されている。好ましくは、臓器キャビティ内部の流れは、成長区分の中央の培地出口から成長区分の周囲にある廃液チャネル(7、7a、7b)の入口に向かって半径方向外向きである。血管が新生した皮膚の確立/維持のための環境を提供する成長キャビティ(4b)内では、臓器キャビティ(4b)のサイドチャンバ内にある加圧手段またはポンプによって、二次流体流(21)がもたらされる。
図4B】成人幹細胞キャビティ(9)の好ましい実施形態が3つの臓器キャビティ(4、4a、4b)の中心に位置づけされている、3つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む臓器成長区分(3)の一部の3次元図である。
図5】3つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む臓器成長区分(3)の中央セグメントを含む好ましい臓器キャビティ層(15)の一区分の上面図(A)と底面図(B)である。臓器キャビティ(4、4a、4b)の上部および下部の封止は、それぞれ上部閉鎖層と下部閉鎖層(図示せず)により提供される。図版Aは、出口(10)で終結するマイクロ流体補給チャネル(6)を示す。図版Bは、出口(10)の反対側に位置設定されている幹細胞キャビティ(9)を示している。
図6】内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の好ましい実施形態の断面図である。ここで示されているのは、培地層(12)と臓器成長区分層(13)であり、これらは、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の底面側で対応するコネクタに解除可能な形で接続されている電気コネクタ(19)を含む少なくとも1つの接点表面をも提供する、保持手段(18)によって所定の場所に保持されている。供給ユニット(17)は、例えば加熱、圧送および/または電気的刺激のための電力を提供し、好ましくは、1つ以上のセンサーからの信号を評価および/または表示するためのデータ処理ユニットを含む。
図7】内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の両側に保持用手段(18)を含む一体型供給ユニット(17)の好ましい実施形態の三次元図である。内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を供給ユニット(17)に接続する電気コネクタ(19)およびそれぞれの臓器成長区分(3)内の過剰の熱を表示する過熱表示手段(20)。
図8図8の3つの図版A、BおよびCは、各々、異なる幹細胞キャビティ(9)の3次元図と断面図を示す。図版Aは、例示的新生児幹細胞ニッチキャビティ(9a)を示し;図版Bは、例示的出生前/出生後の幹細胞ニッチキャビティ(9b)を示し;図版Cは、例示的成人静止状態促進(quiescence−promoting)幹細胞ニッチキャビティ(9c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について以下でさらに詳述する前に、本発明が変更され得るものであって、本明細書中で記述されている特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないということを理解すべきである。同様に本明細書で使用されている用語が、特定の実施形態を記述するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するように意図されておらず、本発明は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるものであるということも理解すべきである。別段の定義づけのないかぎり、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0015】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",Leuenberger,H.G.W,Nagel,B.and Koelbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerlandに記載されている通りに定義される。
【0016】
本明細書および後続する特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「〜含む(comprise)」という用語および「comprises」および[comprising]などの変形形態は、記載された整数またはステップまたは一群の整数またはステップを含み入れることを意味するが、任意の他の整数またはステップまたは一群の整数またはステップを除外することは意味しない。以下のくだりにおいて、本発明の異なる態様がさらに詳細に定義される。このように定義された各々の態様は、別段の指示が明確にないかぎり任意の他の1つのまたは複数の態様と組合わされてよい。詳細には、好ましいまたは有利であるものとして示されたあらゆる特徴が、好ましいまたは有利であるものとして示された他のあらゆる1つまたは複数の特徴と組合わされてよい。
【0017】
本明細書の本文全体を通して複数の文献が引用される。本明細書中で引用される文献(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、メーカーの仕様書、使用説明書などを含む)は各々、上掲であるか下掲であるかを問わず、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書中のいかなる事項も、本発明が、先行する発明によるそのような開示に先行する権利を有さないことを認めるものとみなすべきではない。
【0018】
以下では、本明細書中で頻繁に使用される用語のいくつかの定義が提供されている。これらの用語は、本明細書の残りの部分においてそれが使用される毎に、それぞれに定義された意味および好ましい意味を有するものである。
【0019】
「自己分泌因子」とは、細胞により分泌され、その因子を分泌した同じ細胞の維持、成長または分化を支援および仲介する全ての物質である。
【0020】
「傍分泌因子」とは、1つの細胞により分泌され、それとは別のただし隣接する細胞の維持、成長および分化を支援および仲介する全ての物質である。
【0021】
「自己調和(self−conditionning)」とは、改善された細胞挙動を導く全ての因子を表わす用語である。
【0022】
「分化」とは、培養細胞の組織特異的機能の発達を意味する。
【0023】
「維持」とは、所与の細胞培養プロセス内で所与の組織の全ての機能を恒常に保つ能力を表わす用語である。
【0024】
「生体細胞材料」とは、細胞、細胞集合体、組織、オルガノイドおよび臓器を表わす用語である。
【0025】
「細胞」とは、脊椎動物または無脊椎動物の細胞系または一次細胞を意味する。
【0026】
「組織」とは、患者または動物から採取した生検材料または外植片を意味する。
【0027】
「オルガノイド」とは、少なくとも1つの臓器または組織機能を示し、好ましくは大部分の臓器または組織機能を示す、試験管内の異なるタイプの細胞の人工的で新たに生成された機能的細胞集合体を意味する。
【0028】
臓器とは、天然臓器の全ての機能を示す試験管内の異なるタイプの細胞の人工的で新たに生成された機能的細胞集合体を意味する。
【0029】
「培地(medium)」(複数形「media」)とは、細胞の培養のための物質および栄養素を伴う、成長支援液体を意味する。
【0030】
「サプリメント」とは、例えば精製サイトカインまたは組換え型サイトカインまたは成長因子などの明確な組成を有し得るかまたは血清などのように画定されていない、細胞の機能を誘発または修飾する目的で培地に添加すべき物質を表わす。
【0031】
「マトリックス」とは、細胞の増殖、分化、機能あるいは臓器またはオルガノイド形成を増強する物質または物質の混合物を意味する。マトリックス材料は、表面上にコーティングされてよく、あるいは、細胞付着を最適化するかまたは三次元培養を可能にするため多数の利用分野において提供されてよい。本発明に関連して使用可能なマトリックスは、例えばヒドロゲル、発砲体、布帛または不織布などを含むさまざまな形状をとり得る。マトリックス材料は、天然に発生するマトリックス物質例えば細胞外マトリックスタンパク質、好ましくはコラーゲン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、小マトリックス細胞タンパク質、小インテグリン結合糖タンパク質、成長因子またはプロテオグリカンを含んでいてよく、あるいは、例えば非分解性ポリマー、例えばポリアミド繊維、メチルセルロース、アガロースまたはアルギン酸塩ゲルまたは分解性ポリマー、例えばポリラクチドなどの人工的マトリックス物質を含んでいてよい。
【0032】
「マイクロ流体工学」は、幾何学的に小規模、典型的にはサブミリメートル規模に制約された流体の挙動、精確な制御および操作に関係する。マイクロ流体工学とは、(i)小さい体積(μl、nl、plまたはfl)、(すなわち臓器キャビティは好ましくは1mm以下の体積を有し、マイクロ流体チャネルは、0.005〜2バールすなわち0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5または2.0バールの圧力で一日あたり0.1〜2mmの間の培地の流れを許容することができる)、および(ii)小さいサイズ(すなわち100ナノメートル前後から数百マイクロメートルのチャネル直径)の一方または両方を意味する。本発明に関して、マイクロ流体チャネルは好ましくは100nm〜1mmの間、好ましくは0.5μm〜200μmの間、より好ましくは1μm〜100μmの間、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100μmの直径を有する。チャネルの開口部が円形断面を有していない場合には、この開口部は好ましくは、以上で記した通りの円形断面を有するチャネルについての表面積の範囲および好ましい範囲に入る表面積を有する。
【0033】
先行技術の細胞培養システムに付随する問題を克服するため、本発明は、
(a)少なくとも1つの培地補給タンク(2)、
(b)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)であって、培地補給タンク(2)が、マイクロ流体補給チャネル(6)によって少なくとも1つの臓器成長区分(3)に連通されているデバイスを提供する。
【0034】
「内蔵型」という用語は、少なくとも1つの臓器成長区分(3)内の臓器、組織またはオルガノイドの分化および維持に必要な培地およびサプリメントがオンチップ臓器デバイス(1)の内部から提供される、すなわち少なくとも1つの培地タンク(2)がオンチップ臓器デバイス(1)内部に含まれ、オンチップ臓器デバイス(1)内のマイクロ流体チャネル(6)を通って臓器成長区分(3)および/または1つ以上の臓器成長区分(3)内に含まれる1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)に連通されているという事実を意味する。こうして、外部流体タンクから流体を提供する流体連通は全く存在しない。したがって、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は、培地そしてその後臓器成長区分(3)内部の細胞を汚染する危険性なく、取扱い、移動させることができる。さらに、気体培地例えばO/COが受動的にすなわち環境から膜または生体適合性ポリマーホイルを通して培地中に拡散することによって臓器成長区分に提供されることが好ましい。この膜またはポリマーホイルは、好ましくは流体密封性である。また、これは、オンチップ臓器デバイスの取扱いを可能にするためにも好ましいことである。好ましくは、膜またはホイルは、臓器成長区分(3)を少なくとも部分的に被覆し、かくしてO/COが臓器キャビティを通って流れる培地内に拡散できるようにする。好ましい実施形態においては、膜は、細胞が臓器キャビティ内に投入された後に形成または取付けられるか、あるいはオンチップ臓器デバイスの一部を成す。したがって、好ましい実施形態において、オンチップ臓器デバイスは、外部気体培地供給へのコネクタを一切含まず、かつ/または、培地を積極的に曝気するための装置を含んでいない。好ましくは、培地は、臓器成長区分(3)を通って再循環されず、臓器成長区分(3)を通って1つ以上の培地タンク(2)から1つ以上の培地廃液タンク(5)内に流される。
【0035】
「オンチップ臓器デバイス」とは、好ましくは、互いに流体密封式連通状態にある多数の個別に構造化され微細構造化された層から作られ、流体密封式環境ひいては好ましくは無菌環境を提供することのできるアセンブリを意味する。このデバイスは、好ましくは、例えば標準マイクロタイタープレートまたはストリップのサイズを有する、標準的なハイスループット構成において使用されるように寸法決定される。こうして、好ましくは、幅は2〜10cmの間、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10cmでありかつ/または長さは3〜15cmの間、好ましくは3、4、5、6、7、8、9、10、11、1、12、13、14または15cmであり、かつ/または高さは0.2〜10mmの間、より好ましくは1〜4mmの間すなわち0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1,8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0または10.0mmである。標準的マイクロタイタープレートフォーマットに適合するためには、幅対長さの比は、好ましくは約1:3である。特に好ましいサイズは、幅2.5cm、長さ7.5cmおよび高さ3mmである。
【0036】
好ましい材料にはSiO、ガラスおよび合成ポリマーが含まれる。好ましい合成ポリマーには、ポリスチロール(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPSE)、エポキシド樹脂(EP)、不飽和ポリエステル(UP)、フェノール樹脂(PF)、ポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、メラミン樹脂(MF)、シアネートエステル(CA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびそれらの混合物が含まれる。特に好ましい合成ポリマーは、光学的に透明であり、例えばポリスチロール(PS)、ポリカーボネート(PC)、およびポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。
【0037】
臓器成長区分(3)は、ひとたび細胞/組織が臓器成長区分(3)内に投入された時点で例えばPTFE膜、フィブリンシート、スプレー式バンドエイドシートまたは凝固製品シートなどの膜を含めた適切な手段によってまたは例えばPDMSなどのポリシロキサンのような可撓性材料製のリップなど開口部を被覆する可撓性シートによって本質的に流体密封性でかつ気体透過性かまたは流体密封性で気体透過性の方法で被覆され得る、好ましくは培地入口、培地出口、幹細胞キャビティ(以下参照)、センサー(以下参照)、それぞれのオルガノイドまたは臓器を形成する細胞の大部分を保持する臓器キャビティ(4)(以下参照)、および/または、開放表面を含めた、オルガノイドおよび/または臓器の分化および/または維持のためのミクロ環境全体を提供するオンチップ臓器デバイス(1)内部の微細構造化された領域である。好ましい実施形態においては、このような可撓性シートは臓器成長区分全体を被覆し、各臓器キャビティ(4、4a、4b)の部域内に切れ目を有し、個々の臓器キャビティ(4、4a、4b)へのこの切れ目を通したアクセスを可能にする。可撓性シートは、アクセス後に膜を封止し直す必要なく臓器成長区分(3)がアクセス可能状態を維持するという利点を有する。好ましくは被覆された表面は流体密封性であるが気体透過性を有し、こうして臓器成長区分内の細胞と環境の間のOおよびCOの交換を可能にする。好ましくは、臓器成長区分は、ほぼ円であるかまたは円の形状を有し、これは臓器成長区分が2つ以上の臓器キャビティを含む場合に有利である。この好ましい実施形態においては、臓器成長区分はほぼ平坦な円筒の形状を有するが、これは完全に中空ではなく、本明細書全体を通して概説されている構造および微細構造を含む。臓器成長区分の直径対高さの比率は、好ましくは2:1〜6:1の間、より好ましく3:1〜5:1の間である。詳細には、2、3、4、5、6、7、8以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む場合、円の中心に出口(10)を有するマイクロ流体補給チャネル(6)を通して培地を提供することが可能であることから、円形構造が有利である。次に、培地は、各々が円のセグメントの形状を有し三次元で見た場合に円筒のセグメントの形状を有する臓器キャビティ(4、4a、4b)の間で均等に分配される。好ましくは、成長区分は0.1〜3cm、好ましくは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0cmの表面積を有し、特に好ましい成長区分は0.3〜0.7cmの間、好ましくは0.56cmの表面積を有する。成長区分は、円形状である場合、0.1〜1cmの間、好ましくは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9また1.0、最も好ましくは0.6cmの直径を有することが好ましい。典型的にはオンチップ臓器デバイスは、2つ以上の臓器成長区分(3)を含む。各臓器成長区分(3)について示された好ましいサイズから見て、オンチップ臓器デバイス上に多数の別々の臓器成長区分を嵌め込むことが可能である。好ましくは、1つのオンチップ臓器デバイスは、3〜2000個の間、好ましくは3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、30、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240またはそれ以上の臓器成長区分(3)を含む。好ましいマイクロタイタープレート様のフォーマットにおいては、6、24、96、384またさらには1536個の臓器成長区分(3)がオンチップ臓器デバイス上で2:3の矩形マトリックス内に配置される。
【0038】
以上で記した通り、臓器成長区分(3)は、大部分の細胞すなわち少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、98%またはそれ以上の細胞を臓器成長区分内に含まれた状態に保持する「臓器キャビティ」と呼ばれるキャビティを含む。この臓器キャビティ(4、4a、4b)は好ましくは、各々特定の臓器のための適切な寸法、形状および栄養分を有し、ミクロアーキテクチャおよびミクロ環境に必要な要素を付加的に導入しかつ場合によりオンチップ臓器デバイスに細胞懸濁液、細胞クラスタおよび/または組織切片を投入するためのアクセスを提供し、以下でさらに詳述するように特定のタイプの細胞を誘引し/維持するように適切な材料でコーティングされている。さらに、以下でより詳細に説明する通り、実際には細分されて特定の組織または臓器タイプのために適正な環境をシミュレートするのに必要とされ得る複数の「サブキャビティ」を形成してよい臓器キャビティには、センサー、マイクロアクチュエータなどが備わっていてよい。1つの成長区分内の各臓器キャビティが異なる臓器および/またはオルガノイドのため、例えばニューロン、心臓組織、軟骨、骨および/または血管が新生した皮膚のための適切なミクロ環境を提供することが好ましい。このようにして、複数の組織、オルガノイドおよび/または臓器に対する1つの特定の化合物の効果を同時に査定することが可能である。あるいは、1つの臓器成長区分は、同一タイプの2つ以上の臓器キャビティを含むことができ、このため並行して2、3、4個またはそれ以上の臓器キャビティから得た結果を平均することにより、統計的有意性がさらに高い所与の化合物の効果の測定が可能になる。さらに、1つの臓器成長区分は、各測定のための標準として役立ち得る特定の細胞型の細胞を含む1つの臓器キャビティを含んでいてよい。典型的には、臓器成長区分内部の1臓器キャビティは、1×10〜0.01mmの間、好ましくは100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06および0.05mm好ましくは1mmの体積を有する。所与の成長区分内部の各臓器キャビティが、類似の(例えば±20%)または同一の体積を有することが好ましい。成長区分が2つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む場合、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)に対してそれらを半径方向に配置することが好ましい。この好ましい実施形態において、臓器キャビティ(4、4a、4b)は、ディスクの円錐形セグメントの形で配置されていることが好ましく、ここでこのディスクは臓器成長区分(3)である。
【0039】
臓器キャビティは好ましくは、全て流体連通状態にある1つの主キャビティと1つまたは2つのサイドキャビティを含むかまたはそれらで構成されている2、3個またはそれ以上のキャビティへと細分割することで部分構造化される。臓器キャビティは好ましくは、それぞれに所望されるオルガノイドおよび/または臓器の成長および維持を支援するのに適した環境を画定する目的で、リッジ、チャネル、漏斗を提供する構造化された内部表面を含む。こうして、臓器成長区分(3)内部の臓器キャビティ(4、4a、4b)は、特定の臓器(例えば肺胞、皮膚の表皮および真皮、腸粘膜、肝小葉または腎臓ネフロン)または具体的系(微小血管系、神経系の灰白質)の機能的に自立した最小構造単位の自己集合、維持および/または再集合のための空間を提供する。生体内での定方向臓器集合のために自然が有する主要な構成単位は、寸法、形状、栄養特性、ミクロアーキテクチャ(例えば細胞外マトリックスおよび膜ならびに表面の特性)および局所的ミクロ環境(例えばモルフォゲンおよびケモカイン勾配)であり、これらは、本発明のオンチップ臓器デバイスにおいてシミュレートされている。臓器区分は、好ましくは毛包を含み、任意には両方の臓器キャビティを連通する微小血管系を含む皮膚の表皮および真皮と肝小葉といった臓器の組合せの成長を支援する構造を有する臓器キャビティの組合せを含むことが好ましい。
【0040】
好ましい臓器キャビティ(4、4a、4b)は、脳組織(4)、骨/軟骨ハイブリットオルガノイド(4a)および好ましくは毛包を伴う血管が新生した皮膚(4b)のための適切な環境を提供するように設計されている。さらに好ましい組織は、肝切片、腎臓または腸粘膜である。
【0041】
中枢神経組織培養法のために設計された臓器キャビティ(4)の好ましい実施形態において、臓器キャビティには、例えば皮質または小脳の灰白質(周辺から中央に向かって、顆粒細胞層、分子細胞層およびプルキンエ細胞層および神経により形成された白質層)の維持用に3、4、5または6個の別々の空間が備わっている。この臓器キャビティの3つの灰白質区分には、脳のそれぞれの部分の組織切片が投入されるか、またはそれぞれのニューロンが満たされ、必要な量のグリア細胞と混合される。区分間の壁は、樹状突起および軸索の通過を可能にする。軸索を基礎とする神経は、幹細胞キャビティ(9)(以下参照)に直接連通されたセグメント内に位置設定され、したがって、幹細胞キャビティ(9)の上部部分を通って、その他の臓器キャビティ(4)まで進入することができる。関連するセグメントの底面にインピーダンス測定手段を備えることが可能であり、これは、機能的灰白質層連通の再確立を検査するためのセンサーとして用いられてよい。
【0042】
関節内に存在するような骨/軟骨ハイブリッドオルガノイドの培養法向けに設計された臓器キャビティ(4a)の好ましい実施形態において、臓器キャビティは中央骨部域と軟骨部域を表わす周辺部分に細分割されている。好ましくは骨部域より大きい軟骨部域には、コラーゲンマトリックス、軟骨芽細胞および軟骨細胞が投入され、このセグメントの周囲の小さいニッチ内に一体化された加圧手段により常時または周期的に加圧される。このセグメントは、好ましくは酸素を透過しないホイルまたは可撓性シートにより流体密封状態にされている上部閉鎖層(14)を好ましくは用いてその上面が閉鎖される。中央骨セグメントに対する界面には、例えば骨形態形成タンパク質(BMP)などの骨成長因子がコーティングされてよい。骨セグメントには優先的に、破骨細胞および骨芽細胞が投入された石灰化コラーゲンマトリックスまたは骨髄検鏡(bone marrow specula’s)が投入されてよい。
【0043】
血管新生された皮膚の等価物の培養法向けに設計された臓器キャビティ(4b)の好ましい実施形態においては、2つの周辺タンクと流体密封式連通状態にあり生分解性または合成ポリマーで形成された微細血管によって、内皮細胞は内壁に対し集密的に付着し周囲の組織内へと外に成長することができるようになる。タンク間には、血管を通して血液または血液代用品を循環させるため、圧送手段が設けられる。臓器キャビティには細胞外皮膚マトリックスおよびケラチノサイト懸濁液および/または皮膚の組織切片が満たされてよい。さらに、セグメント内に毛包を播種し、かくして臓器キャビティ内に血管新生した皮膚等価物を発達させるためのアーキテクチャおよびミクロ環境を提供してよい。任意には、分解性マトリックスまたは予め組立てられたマイクロチャネルが設けられ、それに内皮細胞が播種されて、臓器キャビティの内部または臓器成長区分(3)内の2つ以上のまたは全ての臓器キャビティ(4、4a、4b)の間に毛細血管網を形成させる。
【0044】
好ましい実施形態では、臓器キャビティは、500μmの最大長を有する肝臓セグメントの成長を可能にする離隔された環境を提供すること、肝臓セグメント全体を横断してO勾配を提供すること、そして極肝細胞に「血管側」と「胆汁側」を提供することによって、肝臓セグメントの形成を支援するように設計されている。生成され得る胆汁は全て、その目的で設けられたマイクロチャネルを通して別々の廃液タンクにドレンすることができる。こうして、肝臓セグメントの供給を中心すなわち臓器セグメントから受け、一方、任意には別々の胆汁廃棄用マイクロチャネルを含めた廃液は周辺に位置設定される。コラーゲンマトリックスを含む細孔または予備構造化された合成足場を用いて類洞細胞の付着およびディッセ腔(disse gap)の形成を可能にすることが想定されている。肝細胞層が、内皮細胞およびクッパー細胞との最適な相互作用のために半固体または固体マトリックスの内部で臓器キャビティ内に埋込まれることが想定されている。
【0045】
オンチップ臓器デバイスの作動中、成長区分(3)内部で2、3、4、5個またはそれ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)内に別々に形成された2、3、4、5個またはそれ以上の異なる組織、オルガノイドまたは臓器が相互に作用してよい。相互作用は、例えばその他のキャビティ内への(4)からの神経の外殖および/または(4b)からの微細毛細血管の外殖を通して臓器キャビティ間で発生してよい。このような相互作用は、所望の通りに開放または閉鎖されてよい2つの異なる臓器キャビティ(4、4a、4b)の間の別々に提供された連通用チャネル/開口部を通しておよび/または中央にある幹細胞キャビティ(9)を通して行われてよい。以上ですでに示した通り、臓器キャビティ(4、4a、4b)内部および/または臓器成長区分(3)内部の培地流を可能にする毛細管を備えることが好ましい。その目的で、内皮細胞が占有している可能性のある分解性マイクロチャネルまたは分解性マトリックス、例えばマトリゲルを臓器成長区分内に配置して、2つ以上の臓器キャビティを連通させてよい。このとき内皮細胞は、マトリックスの誘導を用いて成長することになる。あるいは、合成細胞を含まない循環網を設けてもよい。臓器キャビティ(4、4a、4b)内のオルガノイドおよび/または臓器から有意な損傷信号が発出されている場合、骨芽細胞支持細胞および造血幹細胞から構成される、幹細胞キャビティ(9)の底面で形成され得かつ制約された流体流を有する造血幹細胞ニッチを含む幹細胞キャビティ(9)内の静止状態幹細胞は、例えば骨および軟骨臓器キャビティ内でのこのような損傷を再生させるかもしれない。
【0046】
培地補給タンク(2)は、臓器成長区分内で細胞を分化させかつ/または維持するのに必要な培地および/またはサプリメントを保持する。本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス内に含まれる培地補給タンクのサイズは、(i)内臓型培養法の所要期間および(ii)所要培地交換速度、を含めた複数のパラメータによって決定される。典型的には、培地補給タンクは、培養一日あたりの1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)の体積に対して、連通する臓器キャビティの数および培養日数を乗じたものを超える培地、および必要に応じてサプリメントを含む。好ましい実施形態において、内蔵型培養法期間は少なくとも10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、60日、70日、80日または90日以上である。したがって、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイスの内部に収納されている培地補給タンク(2)のサイズは(n・v・X・t)という式に基づいて計算できる。なお式中、nは臓器キャビティの数を表わし、vは臓器キャビティの体積を表わし(全ての臓器キャビティの体積が類似している、すなわち±20%であることを仮定し、そうではない場合は臓器キャビティの個々の体積を合計しなくてはならない)、Xは一日あたりの培地交換速度を表わし、tは内臓型培養法期間を表わす。nの好ましい値は、18〜96の間であり、vについては0.5〜2mmであり、Xについては0.5〜2の間、tについては14〜90の間である。典型的には、培地廃液タンクは、少なくとも培地補給タンクの体積に対応する体積を有する。典型的実施形態において、内蔵型オンチップ臓器デバイスの内部に含まれる培地補給タンク(2)は2ml〜5mlの間の体積を有する。この流体流量を考えると、典型的には、あらゆる所要気体培地が臓器キャビティを被覆する気体透過性膜を通して臓器キャビティ内に拡散しかつ培地補給タンク(2)内に戻ることができることから、負圧の増大を回避するために培地補給タンク(2)に通気システムを提供する必要は全くない。通気システムが無いのは、好ましい実施形態であるが、これはそれにより培地補給タンクの汚染の危険性が最小限におさえられるからである。臓器成長区分(3)内に確立されかつ/または維持されるべき細胞、組織、オルガノイドまたは臓器のタイプに応じて、全ての細胞、組織、オルガノイドまたは臓器の分化および/または維持を支援するために1つのタイプの培地で充分であるか、または、異なる培地を異なる臓器成長区分(3)におよび/または異なる培地を1つの臓器成長区分(3)内の異なる臓器キャビティ(4、4a、4b)に提供することが必要になるかもしれない。同様に、それぞれ例えば分化中および維持中などの異なる時点で2つ以上の異なる培地を提供することが必要となるかもしれない。こうして、オンチップ臓器デバイス(1)は、一部の実施形態において、マイクロ流体補給チャネル(6)を通して臓器成長区分と流体連通状態にある2、3、4、5、6、7個以上の異なる培地補給タンク(2)を含んでいてよい。一部の細胞、組織、オルガノイドまたは臓器は第2の培地を必要とするかもしれないことから、1つの培地補給タンク(2)は、このような第2の培地を必要とする細胞型のためのミクロ環境を提供するように設計されている所与の臓器成長区分(3)内の1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)のみと流体連通状態にあってよい。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つのマイクロ流体補給チャネル(6)は、1つ以上の臓器成長区分(3)と培地補給タンク(2)を流体連通している。マイクロ流体補給チャネルの直径は好ましくは100nm〜1mmの間、好ましくは0.5μm〜200μmの間、より好ましくは1μm〜100μmの間である。臓器成長区分(3)に対するサプリメントおよび/または被験化合物の別々の投与を可能にするさらなる出口がマイクロ流体補給チャネル(6)に設けられていることが好ましい。1つの臓器成長区分内部において2つ以上の臓器キャビティの間でサプリメントおよび/またはそれぞれの被験化合物が確実に均等に分配されるように培地とサプリメントおよび/または被験化合物を混合できるようにするため、マイクロ流体補給チャネル(10)の出口から充分な距離のところにこのような出口を位置づけすることが好ましい。
【0048】
各々の臓器成長区分に対する培地および/またはサプリメントの流量を制御するためには、培地補給タンク(2)から臓器成長区分(3)までに流路内に流量制御手段を提供することが可能である。このような流量制御は、好ましくは外部圧力源、外部機械式ポンプ、一体型機械式マイクロポンプまたは動電機構により実施される。連続流システム内のプロセス監視能力は、例えばナノリットル範囲までもの分解能を提供するMENS技術などに基づく高感度のマイクロ流体流量センサーを用いて達成可能である。こうして、このようなデバイスは、臓器成長区分へおよび/または臓器成長区分からのいずれかの流路に存在してもよい。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)はさらに、臓器成長区分(3)の内部に少なくとも1つの幹細胞キャビティ(9)、好ましくは新生児、出生前/後、および/または成人の幹細胞キャビティを含む。幹細胞キャビティは、異なる分化段階における幹細胞の維持のために適した環境を提供する臓器成長区分(3)内部の微細構造化領域である。こうして、幹細胞は、幹細胞キャビティ(9)内に独立して移動してもよいし、または臓器成長区分(3)の内部に含まれた1つ以上の臓器キャビティ内に導入された細胞と共にまたはそれとは独立して幹細胞キャビティ(9)内に直接導入されてもよい。生体内での幹細胞キャビティ(9)の形成を導く要素は、寸法、形状、表面特性(例えばフィーダー細胞)、栄養特性そして流体プロフィールである。好ましくは幹細胞キャビティは1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)に流体連通され、それぞれのオルガノイドおよび/または臓器の再生および維持を助けるように幹細胞がさまざまな臓器キャビティ(4、4a、4b)内に移動できるようにしている。幹細胞キャビティが80μm未満10μm超の開口部により少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)に流体連通されていることが好ましい。好ましくは幹細胞キャビティ(9)は、10〜200μmの間、好ましくは100μm未満の直径を有する。幹細胞キャビティ内に含まれた幹細胞に、臓器成長区分(3)内に含まれた2つ以上の臓器キャビティと類似のアクセスを許容するためには、幹細胞キャビティ(9)が臓器キャビティ(4、4a、4b)に対し等距離で位置設定されていることが好ましい。2、3、4、5、6個またはそれ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む臓器成長区分(3)が円形形状を有する好ましい実施形態においては、臓器成長区分(3)の中心に幹細胞キャビティ(9)が配置されることが好ましい。さらに、新鮮な培地に対する幹細胞キャビティ内の幹細胞の好ましいアクセスを可能にするマイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)と反対側に幹細胞キャビティ(9)が配置されることがさらに好ましい。好ましくは、幹細胞キャビティは、マトリックスとしての基底膜でライニングされている。このような基底膜は、上皮細胞と線維芽細胞の界面相で生成されてよく、こうして、幹細胞キャビティを確立する第1のステップにおけるデノボ合成を通して提供されてもよいし、あるいは基底膜を含むものとして公知の脱細胞組織に由来してもよく、幹細胞での播種に先立ち幹細胞キャビティ内に導入されてもよい。このような基底膜は、幹細胞キャビティ、好ましくは新生児、出生後および/または成人の幹細胞キャビティ内の幹細胞の付着および維持を支援する。
【0050】
新生児幹細胞キャビティは、新生児幹細胞を誘引し/維持するのに適した環境を提供する幹細胞キャビティである。新生児の発育を促進する新生児幹細胞キャビティの好ましい実施形態は、中空体、好ましくは中空円筒である。この中空体、例えば円筒は好ましくは、200μm〜1,000μmの間、好ましくは400μmの高さおよび80μm〜300μm好ましくは100μmの直径を有する。わずか1つの臓器成長キャビティ(4、4a、4b)がこの幹細胞キャビティと流体連通していることが好ましい。好ましくは、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)および1つまたは複数の臓器成長区分に対する流体連通は、培地がこの幹細胞キャビティ内に位置設定された幹細胞全体にわたり中空円筒を通って流れるような形で位置づけされている。キャビティが円形臓器成長区分の内部にある場合、それが臓器成長区分(3)の表面積の10%未満、好ましくは2.5%未満に及ぶことが好ましい。好ましくは、臓器キャビティ(4、4a、4b)に対する流体連通は、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口とは反対の幹細胞キャビティ(9)側にある。好ましくは、円筒は、マイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)に対して円筒の下部部分においてのみ円錐形臓器キャビティと連通されている。この開口部は好ましくは幹細胞キャビティの底面から約150〜約450μm好ましくは約300μmの高さを有し、これは、非対称性分裂する初期原腸胚(embryonic gastrula)のおおよその直径に等しい。好ましくは、新生児幹細胞キャビティはコーティング、マトリックスおよび/またはフィーダー層を含まない。幹細胞キャビティ内の胞胚および原腸胚形成は、対称性幹細胞分裂により数日以内に発生する。優先的には、幹細胞キャビティにはこの目的で卵黄嚢培地が満たされてよい。この培地は、それが臓器および/またはオルガノイドを確立するためのみに使用される場合、培地補給タンク(2)または第2の培地補給タンクから提供されてよく、または、新生児幹細胞をキャビティ内に播種する時点で幹細胞キャビティ内に導入されてもよい。卵黄嚢培地が培地補給タンク(2)から提供される場合、非対称性分裂に合わせた灌流が、臓器キャビティ(4、4a、4b)、好ましくは単一臓器キャビティへの組織の発達を導く。臓器キャビティは好ましくは約3mmの長さを有する。新生児幹細胞キャビティおよびそれから発達した組織、臓器およびオルガノイドを含む臓器成長区分(3)は好ましくは、基本的研究において、好ましくは多細胞生物界全てを網羅する発達生物学において、ならびに物質の胎児毒性試験のために使用される。
【0051】
出生前および出生後の幹細胞キャビティは、妊娠中および小児期の間の臓器および組織の成熟および急速な成長を促進する、出生前および出生後の幹細胞を誘引し/維持するために適した環境を提供する幹細胞キャビティである。出生前および出生後の幹細胞キャビティの好ましい実施形態は、低い流体流量を有する部域を伴う中空体好ましくは円筒である。幹細胞ニッチとも呼んでよいこの部域内の流体流量は、幹細胞キャビティ(9)のその他の部分における流体流量に比較して低減されている。したがって、大部分の培地は幹細胞キャビティ(9)内へ入りそれから出て臓器キャビティ(4、4a、4b)内へと流れ、この特定の部域内には流入しない。中空体、好ましくは円筒の高さは200μm〜1,000μmの間、好ましくは400μmである。直径は好ましくは10μm〜300μmの間にあり、好ましくは10μm〜200μmの間、例えば20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200μmである。複数のすなわち2、3、4、5個またはそれ以上の好ましくは同一の臓器成長キャビティ(4、4a、4b)が出生前および出生後の幹細胞キャビティと流体連通状態にあることが好ましい。好ましくは、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)に対する流体連通は、中空体の中央、好ましくは円筒の中央に位置づけされる。この1つまたは複数の開口部は好ましくは、(マイクロ流体補給チャネル(6)の出口との関係における)幹細胞キャビティの底面から約100〜約300μm、好ましくは約200μmという距離を有し、こうして幹細胞キャビティ(9)内の出生前および出生後幹細胞の維持にとって好適である、幹細胞キャビティ底面の培地流量が少ない部域が形成される。開口部は、好ましくはスリット状である。こうして好ましい実施形態においては、培地はマイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)を通って幹細胞キャビティ(9)の上面内に流れ込み、これから出て幹細胞キャビティ(9)の中央区分内の臓器キャビティに入る。低流量の部域は、中空部分、好ましくは円筒の下部部分内に位置設定されている。臓器特異的な出生前および出生後幹細胞ニッチをこの部域内で確立させるために、これらのニッチは好ましくは、キャビティの下部部分の表面にまたは生体起源または合成起源の微細孔性マイクロキャリア材料に接着された幹細胞ニッチ特異的フィーダー細胞層で構成されている。対応する幹細胞は、幹細胞キャビティ内に、好ましくは幹細胞キャビティの底面に直接移送され、例えば出生前または新生血清培地流を用いて恒常な条件下で培養される。培地流が最小限であり栄養素供給が主として拡散により提供されているニッチの底面にあるニッチの下部部分においては、対称性幹細胞分裂により幹細胞自己再生が確保される。より大きい組織クラスタにまで細胞が成長するにつれて、より高いニッチ領域内に栄養素勾配そして培地の乱流が出現し、明確なサイズ、形状、ミクロ環境およびアーキテクチャの同一の臓器キャビティ(4、4a、4b)へ向かう臓器前駆細胞の非対称性分裂および流出を支援する。出生前および出生後の幹細胞キャビティおよびそれから発達した組織、臓器およびオルガノイドを含む臓器成長区分(3)が、好ましくは基礎的研究、好ましくは出生前および出生後の生涯の間の幹細胞ニッチの機能性および臓器成熟に関する研究において使用される。これらはさらに、好ましくは小児期の間のそれらのバイオセーフティまたは作用機序に関する物質の毒物学、薬力学または薬物動態のために使用されるのが好ましい。
【0052】
成人幹細胞キャビティは、成人幹細胞を誘引し/維持するのに適した環境を提供する幹細胞キャビティである。別個の臓器の成人静止状態促進幹細胞ニッチの形成を促進する成人幹細胞キャビティの好ましい実施形態は低い流体流量を有する部域を伴う中空体、好ましくは円筒である。幹細胞ニッチとも呼んでよいこの部域内の流体流量は、幹細胞キャビティ(9)のその他の部分における流体流量に比較して低減されている。したがって、大部分の培地は幹細胞キャビティ(9)内へ入り、そこから外へ臓器キャビティ(4、4a、4b)内へと流入し、この特定の部域内には入らない。中空体、好ましくは円筒の高さは200μm〜1,000μmの間、好ましくは400μmである。直径は好ましくは10μm〜300μmの間にあり、好ましくは10μm〜200μmの間である。複数のすなわち2、3、4、5個またはそれ以上の好ましくは異なる臓器成長キャビティ(4、4a、4b)が成人の幹細胞キャビティと流体連通状態にあることが好ましい。好ましくは、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)に対する流体連通は、中空体の中央、好ましくは円筒の中央に位置づけされ、好ましくはスリット状の形で幹細胞キャビティの上面まで延在する。1つまたは複数の開口部は好ましくは、幹細胞キャビティの底面から約100〜約400μm、好ましくは約300μmという(マイクロ流体補給チャネル(6)の出口との関係における)距離を有し、こうして幹細胞キャビティ(9)内の成人幹細胞の維持にとって好適である低い培地流量を伴う幹細胞キャビティの底面にある部域が形成される。こうして好ましい実施形態においては、培地はマイクロ流体補給チャネル(6)の出口(10)を通って幹細胞キャビティ(9)の上面内に流れ込み、幹細胞キャビティ(9)の底面区分に入ることなくこれから出て臓器キャビティに入る。好ましい実施形態において、ただしこれに限定されることなく、皮膚の濾胞隆起幹細胞ニッチ、小腸の陰窩底部円形幹細胞ニッチ、肺の気管支肺胞幹細胞ニッチ、血液再構成用の造血幹細胞ニッチ、神経組織再生用の脳室下帯幹細胞ニッチまたはホルモン腺維持用の幹細胞ニッチが、幹細胞キャビティ(9)の内部で形成される。オルガノイドおよび臓器系の特定の組合せに応じて、集中型臓器栄養摂取および調節の管理は、好ましくは幹細胞キャビティ(9)内を横断することにより1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)から別の臓器キャビティ(4、4a、4b)まで延在し得る神経および血管を含めた臓器またはオルガノイドに対する補助的構造の形成を導く。
【0053】
好ましくは、確立すべき幹細胞ニッチに特異的な幹細胞キャビティ(9)内、好ましくはキャビティ(9)の下部部分内にフィーダー細胞、マトリックスおよび幹細胞を導入することによって、成人幹細胞キャビティ(9)内に臓器特異的成人静止状態促進幹細胞ニッチが確立される。異なる臓器の成人生理学的幹細胞ニッチを構成する構成要素の概説が、D.L.Jones and A.J.Wagers:No place like home:anatomy and function of the stem cell niche.Nature Reviews/Molecular Cell Biology,V.9,pp.11-21,January 2008によって示されており、特にそれぞれの幹細胞キャビティの確立のための要件(例えばコーティング、成長因子、細胞外マトリックス構成要素)についてのその教示に関して、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0054】
幹細胞を幹細胞キャビティ(9)内部に維持するのを助けるかもしれない接着分子を、インテグリン、カテニン、カドヘリン、その他の細胞接着タンパク質またはその組合せの中から選択することができる。幹細胞キャビティ(9)内部に幹細胞を維持するのに適した接着分子は、好ましくはα6インテグリン、β1インテグリン、β−カテニン、E−カドヘリン、N−カドヘリン、または前記タンパク質のうちの2つ以上の組合せから選択され得るが、それらに限定されない。幹細胞キャビティ(9)は同様に、幹細胞のための支持細胞として作用する細胞をも含んでいてよい。適切な支持細胞は、骨芽細胞、血管細胞、陰窩線維芽細胞、パネート細胞、皮膚線維芽細胞、血管細胞、星状細胞、セルトリ細胞、間質細胞および前記細胞のうちの2つ以上の組合せといった細胞型リストの中から選択されてよいが、これらに限定されるわけではない。当業者であれば、1つまたは複数の適切な支持細胞の選択が、幹細胞キャビティ(9)内に維持すべき幹細胞により左右されるものであるということを認識している。詳細には、造血幹細胞(HSC)に対する支持体としては骨芽細胞が適しており;HSC、脳室下帯(SVZ)幹細胞、顆粒細胞層下部(SGZ)幹細胞および精原幹細胞(SSC)のための支持体としては血管細胞が適しており;陰窩底部円柱細胞(CBC)のための支持体としては陰窩線維芽細胞ならびにパネート細胞が適しており;濾胞隆起幹細胞のための支持体としては皮膚繊維芽細胞が適しており;SVZ幹細胞およびSGZ幹細胞のための支持体としては星状細胞が適しており、SSCのための支持体としてはセルトリ細胞ならびに間質細胞が適している。さらに、幹細胞キャビティ(9)の機械的特性が幹細胞機能に影響を及ぼすことも企図されている。詳細には、幹細胞キャビティ(9)の相対的弾性または剛性は、幹細胞分化の決定を直接修飾する可能性がある(D.L.Jones and A.J.Wagers(2008)、上掲書)。例えば、間葉系幹細胞(MSC)の神経分化を促進するために、比較的弾性ある基質を幹細胞キャビティ(9)に使用してよい。対照的に、幹細胞キャビティ(9)内で剛性基質を選択することは、MSCの骨芽細胞分化に有利に作用する。最後に、中間的剛性を有する基質は、骨格筋系統への分化を促す。幹細胞キャビティ(9)に対して幹細胞の維持、分化および/または静止状態に影響を及ぼす1つ以上の因子を添加することがさらに企図されている。例えば、オステオポンチン(OPN)は、HSCニッチ内の幹細胞の拡張を抑制し(W.P.Daley et al.:Extracellular matrix dynamics in development and regenerative medicine.J.Cell Science(2008)v.121,pp.255-264)、同じ効果を求めて幹細胞キャビティ(9)に添加されてよい。使用可能であるかもしれないその他の例示的因子は、造血幹細胞因子(SLF)、Wnt、Notch、アンジオポエチン−1(ANG1)、骨形成タンパク質(BMP)、ソニック・ヘッジホッグ(Shh)およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)である。
【0055】
構成要素が半固体培地、好ましくはアガロース、メチルセルロースまたはアルギン酸塩中に包埋されることが好ましい。好ましくは、臓器キャビティには、それぞれ所望のオルガノイドおよび/または臓器の形成に必要とされるマトリックス、コーティング、細胞懸濁液または細胞クラスタ、例えば組織切片が投入される。好ましくは、例えば成人血清または合成完全培地を含む恒常な培地流が提供される。流れの量は、幹細胞キャビティ(9)の底面に形成するかもしれない幹細胞ニッチを妨げることのないようなものである。形状および幾何形状のため、成人幹細胞ニッチが専ら拡散による栄養素の供給を受けることが好ましい。1つまたは別の臓器キャビティの中でひとたび血管新生または神経成長が起こると、神経および微小毛細血管は、幹細胞ニッチの上部部分を通ってその他の臓器キャビティの中に容易に進入することができ、こうして同じ臓器成長区分のその他のオルガノイドの神経を支配するかまたは血管を新生させる。系全体がひとたび自然のホメオスタシスに到達した時点で、被験物質を適用することができる。幹細胞ニッチの細胞は大部分は静止状態にあり、臓器キャビティから損傷信号を受けとった場合にのみ臓器セグメントを再生するために活性化され得る。1つ以上の成人幹細胞キャビティおよびそれから発達した組織、臓器およびオルガノイドを含む臓器成長区分(3)が好ましくは、基本的研究、好ましくは成人幹細胞ニッチ、臓器生理学およびホメオスタシスについての研究において使用される。さらに、これらの臓器成長区分(3)は好ましくは、消費者の健康に関わる物質の試験のために使用される。
【0056】
さらに、幹細胞キャビティ(9)は円筒形であることが好ましい。これは、幹細胞キャビティ(9)が臓器成長区分(3)の中心にある場合に特に好ましい形状である。
【0057】
第2の態様において、本発明は、
(a)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含み、かつ、
(b)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)が少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)を含みかつ/またはこれに連通されているオンチップ臓器デバイス(1)、好ましくは内蔵型オンチップ臓器デバイスに関する。好ましくは、第2の態様に係る内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は、少なくとも1つの培地補給タンク(2)をさらに含み、ここでこの培地補給タンク(2)は、マイクロ流体補給チャネル(6)によって少なくとも1つの臓器成長区分(3)に、およびその中に含まれる少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)に連通されている。第2の態様に関して使用されている全ての用語、例えば「内蔵型」、「臓器区分(3)」、「臓器キャビティ(4、4a、4b)」および「培地補給タンク」という用語は、以上で概説した通りの意味および好ましい意味を有し、「センサー」という用語は、以下で概説する通りの意味を有する。さらに、臓器区分(3)が少なくとも1つ、好ましくは1つの幹細胞キャビティ(9)、好ましくは新生児、出生前/出生後または成人の幹細胞キャビティをさらに含んでいることが好ましい。
【0058】
第3の態様においては、本発明は、
(a)少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む少なくとも1つの臓器成長区分(3)、
を含み、かつ
(b)臓器成長区分(3)が幹細胞キャビティ(9)を含む、
オンチップ臓器デバイス(1)、好ましくは内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)に関する。
【0059】
この第3の態様に関連して、使用されている用語、例えば「臓器成長区分」、「臓器キャビティ」および「幹細胞キャビティ」といった用語は、本発明の第1の態様について示された意味および好ましい意味を有する。臓器成長区分(3)の内部に以上で概説された特性を有する幹細胞キャビティ(9)を備えると、臓器および/または組織の内部または近辺で休眠中ではあるものの増殖コンピテントであり続けている幹細胞によって臓器および組織が補充される自然の状況がシミュレートされるために、臓器キャビティ(4、4a、4b)内に維持された組織、オルガノイドおよび臓器のための改善された培養系が提供される。
【0060】
本発明の第3の態様に係るオンチップ臓器デバイス(1)は、好ましくは少なくとも1つの培地補給タンク(2)を含み、ここで培地補給タンク(2)はマイクロ流体補給チャネル(6)により少なくとも1つの臓器成長区分(3)に連通されている。ここでもこれに関連して、「培地補給タンク(2)」および「マイクロ流体補給チャネル(6)」という用語は、本発明の第1の態様に関して以上に概説したものと同じ意味および好ましい意味を有する。
【0061】
本発明の任意の態様に係るオンチップ臓器デバイス(1)にコネクタを通して取付けられている、すなわち個別の存在である分離した培地廃液タンクを備えることが可能である。この場合、デバイスが作動している間、デバイスからあらゆる廃液培地を取り出し、廃棄することができる。しかしながら、本発明の任意の態様に係るオンチップ臓器デバイスが、少なくとも1つの培地廃液タンク(5)をさらに含み、ここで少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)がマイクロ流体廃液チャネル(7)により少なくとも1つの培地廃液タンク(5)に連通されていることが好ましい。この好ましい実施形態においては、液体の提供および廃棄の要件は全て本発明のオンチップ臓器デバイスの内部に組込まれ、このため融通性がさらに増し、汚染の危険性は減少する。内部に全ての臓器キャビティ(4、4a、4b)を含む各臓器成長区分(3)は、1つのマイクロ流体廃液チャネル(7、7a、7b)を通して連通されてよいが、各臓器キャビティが、その臓器キャビティ(4、4a、4b)のために特異的に設けられた培地廃液タンク(5)に別々に連通されていることが好ましい。
【0062】
それぞれ臓器成長区分および臓器キャビティ内で確立されかつ/または維持される細胞、組織、オルガノイドおよび/または臓器の特性は、それぞれ、臓器成長区分(3)および臓器キャビティ(4、4a、4b)からまたは臓器キャビティ(4、4a、4b)内部でドレンされた培地フロースルーの中で監視可能である。このような特性には、分泌されたまたは放出された物質、修飾された基質、インピーダンスの変更、電気パルス、機械的力などが含まれてよい。これらの特性を検出するためには、本発明のオンチップ臓器デバイス(1)のいずれの態様においても、少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)が少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)と少なくとも1つの培地廃液タンク(5)の間および/または少なくとも1つの臓器キャビティの内部に配置されていることが好ましい。このようなセンサー(8、8a、8b)は、当該技術分野において公知であり、好ましくは、pHセンサー;pOセンサー;検体捕捉センサー;表面音響波センサー(SAW)、センサー;プラズモン共鳴センサー;温度センサー;COセンサー;NOセンサー;走化性センサー;サイトカインセンサー;イオンセンサー;電位差センサー;電流測定センサー;フロースルーセンサー;充填センサー;インピーダンスセンサー;伝導度センサー;張力センサー;電磁場センサー;および代謝センサー、からなる群から選択される。査定され得る細胞、組織、オルガノイドおよび/または臓器の特性は、それぞれの細胞、組織、オルガノイドおよび/または臓器によって左右される。こうして、1つの臓器成長区分(3)の内部で別々の臓器キャビティ内に含まれる、異なる細胞、組織、オルガノイドおよび/または臓器のために異なるセンサーが設けられることが想定される。電気的に活性な細胞、オルガノイドおよび臓器のためには、多重微小電極アレイが強力な技術である。A.Robitzki et al:Cells on a chip - the use of electric properties for highly sensitive monitoring of blood-derived factors involved in angiotensin II type 1 receptor signaling.Cell Physiol.Biochem.16(1-3),51-58 2005。電気生理学的に不活性な細胞およびオルガノイドのためには、J.Aguilo et al:Impedance dispersion width as a parameter to monitoring living tissues. Physiol.Meas.26(2),165-173,2005に記載されているようなインピーダンス分光法を適用すべきである。代替的にまたは付加的には、システムの融通性を増大させるため、または2つ以上の特性を同時に監視するために、流路内に2つ以上、例えば2、3、4または5個の異なるセンサーが設けられる。例えば、所与の物質を代謝させる肝臓オルガノイドの能力を試験する場合、フロースルー中の代謝産物の量およびオルガノイド内で発生するかもしれないあらゆるアポトーシスまたは壊死を決定することが必要であるかもしれない。1mm超の厚みの深さまで組織に進入する2光子励起顕微鏡検査と組み合わせた生細胞、オルガノイドまたは臓器画像形成を、オンチップ臓器デバイス(1)の内部のあらゆる幹細胞または臓器キャビティに適用することができる。さらなる好ましい実施形態において、内蔵型オンチップ臓器デバイスは、少なくとも1つの培地補給タンク(2)および/または少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)内の温度を決定するように配置された温度センサーをさらに含む。
【0063】
代替的にまたは付加的には、感知物質(sensing substance)例えばpH知覚物質が培地に添加され、培地と共に流動する。好ましくは、このような知覚物質(ensory substance)は、培地補給タンク(2)中に予め含まれていてもよく、別のタンク内に含まれていてもよく、かつ既定の間隔をとって、または一定の測定を実施するために必要とされる時点で添加されてもよく、あるいは、膜または可撓性シートを通って、臓器成長区分(3)内に直接、好ましくは臓器キャビティ(4、4a、4b)に直接添加されてもよい。典型的には、このような感知物質は、例えばpH、pO、塩濃度、温度、検体の有無などの環境の変化に応じて、化学的および/または物理的特性を改変する。このような物理的特性の改変は、例えば吸収または発光特性、例えば蛍光性の変化、または感知物質の酸化還元電位の変化であってよい。一部の好ましい実施形態において、このような感知物質は、臓器キャビティ(4、4a、4b)の内部で固定化されていてよく、またはマイクロビーズまたはナノビーズの上または内部に固定化されていてよい。本発明の目的では、「マイクロビーズ」という用語は、20μm〜0.5μmの直径を有する好ましくは円形の粒子を意味し、「ナノビーズ」という用語は、0.5μm未満の直径を有する好ましくは円形の粒子を意味する。このようなビーズの寸法により、これらのビーズは、培地と共に流動してもよいし、または、臓器キャビティととどまってもよい。臓器キャビティ(4、4a、4b)内部のマクロビーズまたはナノビーズ、好ましくは大きすぎて培地流と共に運ぶことのできないビーズの動きに影響を及ぼすため、オンチップ臓器デバイス内で生成される磁場または電場により移動させられるかもしれない磁気コアまたは磁化可能なコアをビーズに備えることが想定される。このようなビーズは同様に、成長セグメントの上面の開口部を通じて添加されてよく、この開口部はその後封止し直されてもよいし、または開口部を被覆する可撓性シートを通してこのような再封止を提供してもよい。
【0064】
オルガノイドまたは臓器を確立させ維持するのに適切な環境を提供するため、臓器キャビティ(4)は、4つのタイプ、すなわち微細構造、化学修飾構造、起動手段および知覚手段から選択される1つ以上の構造またはそれらの組合せを含む。典型的には、臓器キャビティは、組織特異的微細構造および化学修飾構造を含む。
【0065】
「微細構造」には、例えば幹細胞キャビティから適正なタイプの細胞を誘発して臓器キャビティ内に移動させるかまたは臓器キャビティ(4、4a、4b)内部に付加的な細胞付着表面積またはミクロ環境を提供することを最終目的として提供される例えば3次元の、好ましくは生分解性のポリマー足場が含まれる。微細構造は生分解性であってよく、これはすなわち、経時的にそれらが化学的にも機械的にも分解されることを意味する。この分解が起こるにつれて、細胞は、独自の細胞外マトリックスを分泌し、これが細胞の生存および機能において重大な役割を果たす。正常な組織内では、組織の構成性細胞と周囲の細胞外マトリックスの間には、活発で動的な相互交換が存在する。この分野における最近の発見は、W.P.Daley et al:Extracellular matrix dynamics in development and regenerative medicine,Journal of Cell Science,121,255-264の中にまとめられている。細胞外マトリックスは細胞の形態学的特性および表現型形質を調節し、かつ分裂、分化さらには細胞死さえも誘発し得る化学信号を提供する。さらに、細胞は同様に常時細胞外マトリックスを再配置している。細胞は細胞外マトリックスを分解すると同時に再構築し、自らまたは部域内に移動するかもしれないその他の細胞が後に使用されるよう化学物質をマトリックス内に分泌する。同様に、細胞外マトリックスは、胎生発育において最も重要な構成要素の1つであることも観察された。先駆的細胞は、後続する細胞が適切な最終的表現型に分化するのを助ける化学信号を分泌する。例えば、このような化学信号は、神経堤細胞の軸索、平滑筋細胞またはニューロンへの分化をひき起こす。微細構造には好ましくは、マイクロキャリア、好ましくはコラーゲンマイクロキャリア;石灰化ゾーン、好ましくは石灰化コラーゲン;合成ポリペプチドゲル、好ましくはポリアミノ酸ゲル、例えば臓器キャビティを通って延在し、さらなる1つまたは複数の培地補給タンクに連通され得るグルタミンゲル毛細管;および織りおよび/または不織ポリマー中空繊維、好ましくはポリエーテルスルホンまたはポリラクチド繊維が含まれる。このような微細構造は好ましくは、ひとたびオンチップ臓器デバイスが少なくとも部分的にまたは完全に組立てられた時点で、臓器キャビティ内に導入される。こうして微細構造は好ましくは、以上で概説した通り、リッジ、チャネルまたは漏斗などのような付加的な下部構造を提供しうる臓器キャビティを形成する材料から分離している。
【0066】
本明細書中で使用される「化学修飾構造」という用語は、薄い層、典型的には単分子層中で臓器キャビティ(4、4a、4b)の表面の全体または一部分に対して接着、例えば吸収、共有結合または非共有結合されている物質に関するものである。好ましい例としては、ペプチド、タンパク質、例えば骨形態形成タンパク質(BMP)、ニューロン成長因子、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、インターロイキン、インターフェロン、インテグリン、セレクチン、または上述のタンパク質および架橋タンパク質の受容体、好ましくはペプチドまたはタンパク質を含むRGDモチーフ、例えばアルブミン、トランスフェリン、インスリンまたはフィブリンが含まれる。タンパク質の架橋のためには、グルタルアルデヒドを含めた当該技術分野で公知のさまざまな架橋剤を使用することができる。キャビティの一部分に局所的に付着するため、表面の光化学増感を応用することができる。
【0067】
好ましくは臓器キャビティ(4、4a、4b)の内部に、自然の環境をより完全にシミュレートするために起動手段が設けられ、これは化学的合図(chemical cue)に加えて、特異的組織、オルガノイドおよび/または臓器の確立および維持に必要とされる物理的合図をも提供する。こうして、このような起動手段には、例えば骨および軟骨形成のために必要に応じて細胞集団に圧力を加えることにより細胞の物理的状態を変化させ、臓器キャビティの一部分内で流体を前後に圧送して、消化管内に見出される通りに毛細管血流または組織界面をシミュレートし、熱または電気的刺激を提供する手段が含まれる。このような起動手段には、好ましくは、臓器キャビティを通して二次流れを提供するため所与の臓器キャビティの分離したサブキャビティの中に位置設定された少なくとも1つの脈動加圧手段、1つ以上の電極、電磁場力、または圧電素子を含めたマイクロポンプ、前後に揺動する弾性膜、「マイクロ心臓」と呼ばれる単収縮するペースメーカー細胞/心筋細胞が播種された弾性中空球、表面音響波エンジン(SAW)または、臓器キャビティの内部で膜に作用する磁気ピストンが含まれる。
【0068】
あるいは、表面に付着されたリガンドおよび磁気コアまたは磁化可能なコアを伴い、或る細胞型または細胞群に優先的に結合するビーズを用いることによって、および磁場または電場を印加することによって、臓器キャビティの内部でまたは臓器キャビティの中へまたは外へ、単一の細胞または臓器部分を移動させてもよい。適切なビーズは当業者には周知であり、マイクロビーズまたはナノビーズのいずれかとしてもたらされる。ビーズのタイプの選択は、電場または磁場を印加するときに移動させられるはずの細胞の数によって決定され、かくして、マイクロおよびナノビーズの両方が使用されることもある。内蔵型オンチップ臓器デバイスは、このようなビーズが一定量予め投入された状態ですでに組立てられていてもよいし、または必要に応じて、好ましくは臓器キャビティの開口部を通してビーズが投入されてもよい。
【0069】
発達中のまたは発達したオルガノイドまたは臓器の分化および健康状態または、代謝活性、アポトーシスを起こした細胞の数、増殖細胞の数などを含むその他のいくつかの特性を査定するために、臓器キャビティ(4、4a、4b)内に知覚手段が設けられ、これによって、例えばマイクロ流体廃液区画への流路内に位置設定されたセンサー(8、8a、8b)と比べた場合により直接的にセンサーが細胞へアクセス可能となる。好ましいセンサーとしては、温度センサー;出口廃液チャネル内に位置づけされプラズモン共鳴を用いて観察可能である多数の金製マイクロ表面上に結合されたサイトカイン特異的抗体または臓器キャビティの表面に好ましくは付着されているセンサー物質;および臓器キャビティに対し異なる波長の光を提供しかつ臓器キャビティ内で発光、反射または吸着され得るあらゆる光を検出できるようにする光ファイバが含まれる。センサー物質は、所与の合図に応答して測定可能な物理的または化学的特性を変える物質である。以上で概説した通り、このような表面は同様に、臓器キャビティ(4、4a、4b)の内部に位置づけされているマイクロビーズまたはナノビーズの表面であってよい。
【0070】
臓器キャビティ、微細構造、化学修飾構造および起動手段の内部の下部構造の特定の組合せが、特定の組織の確立および分化のための環境を提供する。
【0071】
臓器成長区分(3)の内部の臓器キャビティ(4、4a、4b)は、特定の臓器(例えば肺胞、皮膚の表皮および真皮、腸粘膜、肝小葉、腎臓ネフロン)または特定の臓器系(例えば血液系の微小血管系、神経系の灰白質)の機能的に自立した最小構造単位の自己集合、維持および/または再集合のための空間を提供する。生体内での定方向臓器集合のために自然が有する主要な構成単位は、寸法、形状、栄養特性、ミクロアーキテクチャ(例えば細胞外マトリックスおよび膜、表面の特性)および局所的ミクロ環境(例えばモルフォゲンおよびケモカイン勾配)である。臓器キャビティの好ましい実施形態が、例示として、3つのタイプの臓器(4)−脳組織、4a−骨−軟骨および4b−血管新生した皮膚)について提供され、各々の特定の臓器のための適切な寸法、形状および栄養を設定し、ミクロアーキテクチャおよびミクロ環境の付加的に必要な要素を導入しかつチップデバイス上の臓器に細胞懸濁液または組織を投入するためのアクセスを提供している。
【0072】
好ましい実施形態においては、例えば臓器キャビティ(4)は、中枢神経組織の培養法向けに設計されており、例えば、皮質または小脳の異なる灰白質層の維持のための4つの別々の空間を提供している(周辺から中心に向かって、顆粒細胞層、分子細胞層、およびプルキンエ細胞層および神経で形成された白質層)。この臓器キャビティの3つの灰白質区分には脳のそれぞれの部分の組織切片が投入されるか、またはそれぞれのニューロンが満たされ、必要な量のグリア細胞と混合される。区分間の壁は、樹状突起および軸索の通過を可能にする。軸索を基礎とする神経は、幹細胞ニッチに直接連通されたセグメント内に位置設定され、したがってニッチの上部部分を通ってその他の臓器キャビティに進入できる。関連するセグメントの底面にあるインピーダンス測定手段が、機能的灰白質層連通の再確立を検査するためのセンサーとして役立つ。
【0073】
好ましい実施形態において、キャビティ(4a)は骨/軟骨ハイブリッドオルガノイド向けの寸法、形状および栄養特性を提供する。中央のより小さなセグメントは骨部域であり、より大きな周辺部分は軟骨部域を表わす。軟骨部域は、コラーゲンマトリックス、軟骨芽細胞および軟骨細胞が投入され、このセグメントの周囲の小さいニッチ内に一体化された加圧手段により常時または周期的に加圧される。このセグメントは、酸素を透過しないホイルを用いて流体密封状態でその上面が閉鎖される。中央骨セグメントに対する界面には、骨形態形成タンパク質(BMP)がコーティングされる。骨セグメントには優先的に、破骨細胞および骨芽細胞が投入された石灰化コラーゲンマトリックスまたは骨髄検鏡が投入される。
【0074】
好ましい実施形態においては、臓器キャビティ(4b)は2つの周辺タンクと流体密封式に連通され生分解性または合成ポリマーで形成された微細血管を含み、内皮細胞が内壁に対し集密的に付着し周囲の組織内へと外に成長することができるようにしている。タンク間には、血管を通して血液または血液代用品を循環させるため、圧送手段が設けられる。臓器キャビティには細胞外皮膚マトリックスおよびケラチノサイト懸濁液または皮膚の組織切片が満たされる。さらに、セグメント内に毛包を播種し、かくして臓器キャビティ内に血管新生した皮膚等価物を発達させるためのアーキテクチャおよびミクロ環境を提供することができる。
【0075】
最終的に、このような成長セグメントを作動させて、その他のキャビティ内への4からの神経または4bからの微小毛細血管の外殖を通して、臓器キャビティ間に相互作用が発生するかもしれない。有意な損傷信号の場合、骨芽細胞フィーダー細胞および造血幹細胞から構成された例えば造血幹細胞ニッチ内の静止状態幹細胞はこのような損傷を例えば骨および軟骨臓器キャビティ内で再生し得る。
【0076】
上述の通り、臓器キャビティ(4、4a、4b)内に含まれる細胞の複数の特性をセンサーにより間接的に査定することが可能であるものの、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を顕微鏡検査することができれば、同様に好ましい。その目的のためにオンチップ臓器デバイスの全ての部品を光学的に透明な材料で製造してよい。好ましくは、1つ以上の臓器区分(3)、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)および/または少なくとも1つのセンサー(8、8a、8b)が顕微鏡検査可能である。臓器キャビティ層(15)全体を通して2光子励起顕微鏡検査を適用する生細胞画像形成は、臓器の集合および維持ならびに臓器の挙動に対する物質の効果についてのオンライン情報を提供する。上記の通り、オンチップ臓器デバイスは、好ましい実施形態において、各臓器区分(3)のための環境に対する開口部を含む。この開口部は好ましくは、臓器区分(3)自体と同じサイズを有するものである。作動中、それは、例えばスプレー式バンドエイド、例えばPDMS製の可撓性シートまたはフィブリンシートなどの半透明で流体密封式気体透過性材料で被覆されていてよい。この配置においては、例えばレーザー走査型顕微鏡検査の場合のように上から光を供給することなどにより光学顕微鏡法によって臓器キャビティ内の細胞を直接観察することが可能である。さほど高機能ではないものの同様に高い解像度の画像を提供する方法としては、透過型顕微鏡検査が用いられる。しかしながら透過型顕微鏡検査を使用するには、本発明のオンチップ臓器デバイス(1)を通して光路全体に沿って光学的透明材料を提供することが必要となる。以下でさらに詳述する通り、本発明のオンチップ臓器デバイスを組立てるために使用される微細構造化層は、好ましくはガラスまたはSiOのような光学的に半透明の材料で作られ、こうして光路に沿って光学的透明材料を提供するのに適している。例えば、加熱要素などの一部の構造が光路の内部に設置される場合、これらも同様に、インジウムスズ酸化物(ITN)で製造された加熱手段といったように、光学的に半透明の材料で製造されてよい。幹細胞キャビティ(9)内における細胞の占有および状態を確認するために、キャビティ内を顕微鏡検査できることが特に好ましい。
【0077】
本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)のマイクロ流体システムを通る流体の流れは、例えば重力によってかまたは毛細管力によって達成されてよい。しかしながら、システムを通る培地の流れを確認するためには、ひとたび湿潤化されると培地を吸収しかくして流体流を提供するのに適した吸引力を提供する親水性材料が培地廃液タンク(5)に含まれていることが好ましい。あるいは、培地補給タンク(2)と培地廃液タンク(5)の間の流路内にマイクロポンプを配置してもよい。後者の実施形態は、流体流の速度を臓器成長区分内に見られる成長条件、細胞数などにより容易に適合させることができるという点で、有利である。こうして、アポトーシス速度が上昇しかつ/または増殖速度が低下した場合、細胞に対してより優れた栄養供給が得られるように培地の流量を増加させてよい。
【0078】
以上で記したとおり、組織、オルガノイドまたは臓器の確立および維持のために必要な全てのデバイスは、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の内部に一体化されていることが好ましい。提供される利点は、二次支持ユニットおよび培地供給用で好ましくは使い捨ての手段から、内蔵型オンチップ臓器デバイスが独立しているという点である。こうして、好ましい実施形態において、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は同様に、少なくとも1つの培地補給タンク(2)、少なくとも1つの臓器キャビティ(4、4a、4b)またはその両方を加熱するように配置された加熱手段をも含んでいる。好ましくは、オンチップ臓器デバイスのこれらの区分は、細胞が由来した生物の中で見られる温度と同等の温度、例えば37℃まで加熱される。加熱手段(11)は、例えば1〜100μmの比較的薄い加熱素子を形成できる当該技術分野で公知のあらゆる材料で構成されてよい。好ましい加熱手段は、インジウムスズ酸化物、白金、金またはそれらの混合物から製造される。これらのうち、インジウムスズ酸化物は、それが光学的に半透明であるために好まれる。
【0079】
本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は、その効率の良い製造を可能にするため、好ましくは、微細構造の所要の複雑性に応じて2、3、4、5、6、7またはそれ以上の別々に製造された層から組立てられる。これらの層は、半導体の分野で一般に使用されるような、例えばフライス加工またはレーザー切断による材料の固体ブロックからの機械加工;鋳造または光リソグラフィ技法を含めたさまざまな方法によって製造可能である。1層の表面上にある構造は、対応する微細構造を有する第2層がひとたび第1層と流体密封式に連通された時点で内部閉鎖型構造となってよい。全ての層がひとたび互いに連結されてチップデバイスを形成した時点でそれが確実にモノリシックブロックとなるように、全ての層が同じ長さおよび幅を有することが好ましい。こうして、好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、培地層(12)および臓器成長区分層(13)を含むかまたはこれらで構成されている。好ましい実施形態においては、両方の層は予め組立てられ、1つのモノリシックチップとしてユースポイントまで送られ、このチップは培地補給タンク(2)中の培地および/またはサプリメントをすでに含んでいてもいなくてもよい。しかしながら、一部の実施形態では、培地層(12)が臓器成長層(13)とは別に提供され、細胞および/または組織フラグメントが臓器キャビティ(4、4a、4b)内にひとたび投入された時点でのみ臓器成長層に付着されてよい、ということが想定されている。好ましくは、オンチップ臓器デバイスまたはその部品は、無菌環境内で別々に包装される。好ましい実施形態においては、組立てられたオンチップ臓器デバイスは、高圧蒸気滅菌法および/または照射により滅菌可能である。
【0080】
培地層(12)は典型的に、0.5mm〜20mmの間、好ましくは0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0mmの厚みを有し、作動中適量の培地を提供および/または収容するようにサイズ決定されている培地補給タンク(2)および/または培地廃液タンク(5)を含む比較的単純な構造を含む。こうして、培地層は、例えば合成ポリマー、好ましくはPS、PC、PA、PI、PEEK、PPSE、EP、UP、PF、PDMS、MF、CA、PTFEおよびそれらの混合物、特にPS、PCおよびポリシロキサン、好ましくはPDMSから注型により製造されることが好ましい。以上で概説されているように、本発明の内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は、臓器成長区分(3)、好ましくは臓器キャビティ(4)および/または幹細胞キャビティ(9)へのアクセスを各々可能にする1つ以上の開口部を含んでいることが好ましい。これらの開口部は、好ましい実施形態において、細胞および/または組織フラグメントをそれぞれの臓器キャビティ(4、4a、4b)内に投入するために用いられる。こうして、培地層(12)は好ましくは、サイズおよび数が臓器成長区分層(13)内の臓器成長区分(3)に対応するカットアウトを含む。
【0081】
好ましい実施形態において、培地補給タンク(2)および/または培地廃液タンク(5)は培地層(12)内に配置されている。これらの構造は、好ましい実施形態では培地層内に設けられている1つまたは複数の開口部と干渉しないような形で培地層内に配置されるのが好ましく、こうして臓器成長区分層(13)内の培地層の下に配置されているそれぞれ臓器成長区分(3)および臓器キャビティ(4、4a、4b)に対する気体培地のアクセスを可能にする。臓器成長区分層(13)は好ましくは、以上でより詳細に概略説明する通りの全ての構造を含み、組織、オルガノイドおよび臓器の分化および維持のため、構造的、化学的および物理的合図を含む必要な環境を提供する。したがって、それは、骨または軟骨の発達、血管新生した皮膚の発達または神経の成長のための微細構造を含む。必要な構造のサイズが小さいことから、光リソグラフィ技術が使用されることが多く、したがって、材料はSiO、GaAs、ガラスまたはそれらの組合せを含めた半導体技術の分野で一般に使用される材料と同様のものであることが好ましい。
【0082】
好ましい実施形態において、臓器成長区分層(13)は、上部閉鎖層(14)、臓器キャビティ層(15)および下部閉鎖層(16)を含むかまたはこれらにより構成される。3層は合わさって臓器成長区分(3)を画定し、ここで上部層はそれぞれ臓器成長区分(3)および臓器キャビティ(4、4a、4b)の上端部を画定し、臓器キャビティ層は臓器キャビティの側面を提供し、下部閉鎖層は、それぞれ臓器成長区分(3)および臓器キャビティ(4、4a、4b)の下端部を画定する。
【0083】
上部閉鎖層(14)は好ましくは20μm〜2mmの間、好ましくは、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000μmの厚みを有する。それは、臓器成長層内のマイクロ流体チャネルを培地層から流体的に分離する。しかしながら、それは、培地層内の対応する開口部との流体連通を可能にする開口部を含み、例えば培地層(12)から外におよびその中に戻るような培地の流れを可能にする。上述の通りの適切な手段により後に閉鎖されてよい臓器キャビティ(4、4a、4b)および/または幹細胞キャビティ(9)内に細胞を投入する場合に、臓器成長区分(3)好ましくは臓器キャビティ(4、4a、4b)へのアクセスを可能にするように、さらなる開口部を設けてもよい。上部閉鎖層(14)はさらに、臓器成長区分(3)の部域内に臓器特異的表面構造を含んでいてよく、この構造が、臓器成長区分(3)または臓器キャビティ(4、4a、4b)を部分的または全体的に被覆する。好ましくは、上部閉鎖層(14)の材料は、SiOまたはガラスであり、最も好ましくはガラスである。
【0084】
臓器キャビティ層(15)は、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)および/または幹細胞キャビティ(9)および任意にはマイクロ流体チャネルを含む。臓器キャビティ層が臓器キャビティを含むと述べる場合、臓器キャビティ(4、4a、4b)の体積の大部分が臓器キャビティ層(15)内に設けられ、こうして臓器キャビティの側面が提供されるということが意図されている。臓器キャビティ層(15)は好ましくは100μm〜10mm、好ましくは100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、550、600、650、700、750、800、850、900、1000μm、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0mmの厚みを有する。特に好ましい厚みは、透過型顕微鏡検査により臓器キャビティおよび/または幹細胞キャビティ内の細胞を常時監視できるようにするため、250〜750μmの間である。臓器キャビティ層(15)の厚みは、所要体積の臓器キャビティ(4、4a、4b)が提供されるような形で選択される。好ましくは、臓器成長層(15)の材料はSiOまたはガラス、最も好ましくはSiOである。
【0085】
下部閉鎖層(16)は好ましくは、20μm〜2mmの間、好ましくは30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、550または600μmの厚みを有する。それは、外部環境から臓器キャビティ層(15)内の開口部および/またはマイクロ流体チャネルを流体的に分離する、すなわち好ましくはそれは開口部をもたない。好ましくは、下部閉鎖層の材料はSiOまたはガラス、最も好ましくはガラスである。好ましくは、下部閉鎖層(16)は、以下のもののうちの1つ以上を含む:加熱手段(11)、センサー手段、好ましくは温度感知手段またはデバイスを保持用手段(18)の対応する電気コネクタ(19)に接続するための電気コネクタ。
【0086】
以上で概説した通り、本発明のオンチップ臓器デバイスは、完全に組立てられた形でユースポイントに送られてよく、同様に、それぞれの組織、オルガノイドおよび/または臓器の成長および分化に必要とされる全ての培地および/またはサプリメントをも含んでいてよい。こうして、好ましい実施形態において、培地タンク(2)は、細胞成長培地を含む。
【0087】
さらなる態様において、本発明は、成長区分層(13)またはその部品に対し流体密封式に培地層(12)をボンディングするステップを含む、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の製造方法に関する。このようなボンディングは、当該技術分野で公知の接着剤またはそれぞれの材料に応じて溶接により行われてよい。
【0088】
オンチップ臓器デバイスは同様に、例えば以下で概略説明される通りの保持手段(18)などを通してオンチップ臓器デバイスに取付けられてよい任意の電源とは独立して、マイクロポンプ圧送、センサー機能などの或る種の機能を提供するためのエネルギー源、例えばバッテリも含んでいてよい。さらに、オンチップ臓器デバイスは、オンチップ臓器デバイスの状態を外部に伝達するため、LED、放射線透過装置などの信号手段を含んでいてよい。例えば、温度が予め設定された温度範囲から外れた場合にオンチップ臓器デバイス上のLEDが点滅することが想定される。
【0089】
内蔵型オンチップ臓器デバイスは、それが好ましくは細胞、組織、オルガノイドおよび/または臓器を独立して維持するための全ての特徴を含むことから、自由に移動させてよい。しかしながら、好ましい実施形態においては、オンチップ臓器デバイスは、作動中内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を保持するために特別に適合された供給ユニット(17)の中に設置される。この供給ユニット(17)は、
(a)内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を解除可能な形で係合させるための保持手段(18)と、
(b)内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)上の対応するコネクタと供給ユニット(17)を接続するための電気コネクタ(19)と、
を含む。
【0090】
供給ユニット(17)は典型的には、温度、酸化、pHなどのデバイスの条件の変化についてデバイスのオペレータに警告するための表示灯または音響表示器などの表示器手段を含む。オンチップ臓器デバイス(1)内に含まれている起動手段およびセンサーを調節し評価するのに必要な回路を統合することが想定されているが、供給ユニット上にこれらの機能を統合することも同様に可能である。これは、オンチップ臓器デバイスが、1回のインキュベーション期間の後廃棄される使い捨てのデバイスである実施形態において有利である。したがって、供給ユニット(17)が調節手段を含むことが好ましい。典型的には、これらの手段は、例えばオンチップ臓器デバイス内部の温度、オンチップ臓器デバイス内部の流体流量または、一部の組織により必要とされるかもしれない電気的刺激を決定し、例えば予め設定されたパラメータにしたがってこれらのパラメータを調整する。
【0091】
好ましい実施形態においては、供給ユニット(17)は、少なくとも2つのオンチップ臓器デバイス(1)を互いに重ねて保持することができる保持手段(18)を含む。
【0092】
さらなる態様では、本発明は、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で臓器および/またはオルガノイドを確立する方法に関する。この方法は、
(a)上述した第1、第2および第3の実施形態にしたがって細胞または組織切片の懸濁液を、1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)内、好ましくは内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内に投入するステップと、
(b)1つ以上の臓器キャビティ(4、4a、4b)を流体密封式に封止するステップと
を含む。
【0093】
例えばマイクロシリンジなどの適切な手段を用いて例えば上部閉鎖層(14)内の開口部を通して臓器キャビティ内に細胞または1つまたは複数の組織切片を直接投入するか、または、後に構造およびその中に設けられた表面に接着する臓器キャビティを通して培地と共に細胞を流すことが可能である。このような投入作業は手作業であっても完全に自動化されていてもよい。後者の場合、ステッパデバイスが、場合に応じて封止、再封止または自動封止されてよい臓器成長区分(3)の開口部を通して、任意の所要培地、細胞または物質を投入することが好ましい。臓器キャビティ(4、4a、4b)内に導入される細胞のタイプは、確立すべきオルガノイドまたは臓器により左右される。好ましくは、細胞の懸濁液は、全能性または多能性幹細胞、系列拘束細胞、分化細胞、細胞外マトリックス構成要素またはその混合物を含む。組織切片は、オルガノイドまたは臓器が幹細胞またはその他のより分化された前駆細胞から確立される場合にあてはまる可能性がある適正な分化のための要件が求められること無く、臓器キャビティ内部で再集合させる必要しかないことから、これらの切片を臓器キャビティ(4、4a、4b)内に投入することが特に好ましい。
【0094】
フィブリン接着剤のような臓器キャビティシーラント内に細胞が投入された後で環境から臓器キャビティ(4、4a、4b)を封止するためには、生体適合性あるポリマーホイルスプレー式包帯または凝固製品を使用してよい。好ましくは、シーラントは、流体密封性ではあるものの気体透過性の層または膜を臓器キャビティ(4、4a、4b)の開口部を横断して提供する。
【0095】
後続するステップにおいて、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)は臓器またはオルガノイドが形成されるまでインキュベートされる。典型的には、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間のインキュベーションが、このような臓器またはオルガノイド形成が完了するまで必要とされる。
【0096】
オンチップ臓器デバイスの特質は、専用の流体的連通およびタンクがすでに内蔵型オンチップ臓器デバイス内部に設けられているため外部供給、特に培地および/または廃液廃棄から独立しているという点にある。インキュベーションは好ましくは、温度の外部制御無くおよび/または規定の雰囲気を提供することなく、および/または外部無菌性を提供することなく実施される。
【0097】
さらなる態様において、本発明は、内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で確立された1つ以上の臓器および/またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験する方法であって;
(a)1つ以上の臓器および/またはオルガノイドを含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)を提供するステップまたは、
上述の通り内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)内で臓器および/またはオルガノイドを確立する方法を実施するステップ、
(b)臓器および/またはオルガノイドに対して1つ以上の被験化合物を添加するステップ、
(c)臓器および/またはオルガノイドを顕微鏡で査定するステップ;および/または
1つ以上のセンサーにより判定可能な1つ以上のパラメータを判定するステップを含む。
【0098】
この方法で使用されるセンサーは、オンチップ臓器デバイスから流出する培地を監視するセンサー(8、8a、8b)であってよく、または臓器キャビティの内部に位置設定されたセンサーであってもよい。
【0099】
さらなる態様において、本発明は、臓器またはオルガノイドに対する1つ以上の被験化合物の効果を試験するかまたは臓器またはオルガノイドの機能を検査するための、1つ以上の臓器および/またはオルガノイドを含む内蔵型オンチップ臓器デバイス(1)の使用に関する。好ましくは、1つ以上の被験化合物の効能、副作用、バイオセーフティまたは作用機序が決定される。
【符号の説明】
【0100】
(1)内蔵型オンチップ臓器デバイス
(2)培地補給タンク
(3)臓器成長区分
(4、4a、4b)臓器キャビティ
(5)培地廃液タンク
(6)マイクロ流体補給チャネル
(7、7a、7b)マイクロ流体廃液チャネル
(8、8a、8b)センサー
(9)幹細胞キャビティ
(9a)新生児幹細胞ニッチキャビティ
(9b)出生前/出生後幹細胞ニッチキャビティ
(9c)成人静止状態促進幹細胞ニッチキャビティ
(10)マイクロ流体補給チャネル(6)の出口
(11)加熱手段
(12)培地層
(13)臓器成長区分層
(14)上部閉鎖層
(15)臓器キャビティ層
(16)下部閉鎖層
(17)供給ユニット
(18)保持手段
(19)電気コネクタ
(20)過熱表示器手段
(21)二次流体流
(22)インピーダンス測定手段
(23)温度センサー
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C