(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774481
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】カメラを持つ車両の前照灯の調節不良検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/06 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
G01M11/06
【請求項の数】11
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-519020(P2011-519020)
(86)(22)【出願日】2009年5月12日
(65)【公表番号】特表2011-526369(P2011-526369A)
(43)【公表日】2011年10月6日
(86)【国際出願番号】DE2009000674
(87)【国際公開番号】WO2010000214
(87)【国際公開日】20100107
【審査請求日】2012年3月15日
(31)【優先権主張番号】102008031159.6
(32)【優先日】2008年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504041893
【氏名又は名称】アー・デー・ツェー・オートモーティブ・ディスタンス・コントロール・システムズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】メール, ヴイルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フエヒネル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ, シユテフアン
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−235949(JP,A)
【文献】
特開2004−214023(JP,A)
【文献】
特開平04−357434(JP,A)
【文献】
特開2000−193559(JP,A)
【文献】
特開平07−172232(JP,A)
【文献】
特開2004−189220(JP,A)
【文献】
特表2010−510935(JP,A)
【文献】
特表2010−511259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/06
G01M 11/00
G01J 1/00 − G01J 1/02
G01J 1/42 − G01J 1/46
G01B 11/00 − G01B 11/30
B60Q 1/00 − B60Q 1/56
B62J 6/02
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラシステムを持つ車両の前照灯の調節不良検出方法であって、
前照灯が所定の位置にあり、カメラシステムが車両に設けられて、自動車の前の前照灯の光分布パターンを検出するように向けられ、
所定の前照灯位置では、前照灯の実際光分布パターンがカメラシステムにより記録されて、所定の前照灯位置のための目標光分布パターンと比較され、
実際光分布パターンが目標光分布パターンとは相違していると、前照灯の調節不良が検出され、
実際光分布パターンが、少なくとも1つの画像における再帰反射する物体の輝度及び三次元の位置推定、或いは画像列における再帰反射する物体の時間的輝度推移と、車両の既知の自己速度とに基いて求められる、
方法。
【請求項2】
実際光分布パターンが、画像において所定の閾値より上の強度を持つ照明範囲の位置に基いて検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実際光分布パターンの位置が、車両縦軸線に対して平行な面又は車両の車線に関して評価される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
実際光分布パターンの位置が、ビデオ画像における仮想的な消失点に関して評価される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
車両が車両縦軸線に対して直角に設けられている面の前に停止している時、実際光分布パターンの位置が記録される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
調節不良検出のため前照灯が特別な光分布パターンを放射する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
比較のため、目標光分布パターンが実際光分布パターンの形に基づいて選ばれる、請求項3又は5又は6に記載の方法。
【請求項8】
調節不良の検出の際、警報信号が出力される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
調節不良の検出の際、少なくとも2つの所定の前照灯位置のための前照灯修正が行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
調節不良の検出及び運転者による修正要求後に、少なくとも2つの所定の前照灯位置のための前照灯修正が行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
制御装置を持つ制御可能な前照灯、車両に設けられて自動車の前の前照灯の光分布パターンが検出されるように向けられるカメラシステム、及び前照灯の制御装置及びカメラシステムに接続されて請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法が記録されている評価装置を含む前照灯の調節不良を検出する装置を持つ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前照灯の調節方法に関し、他の道路使用者の予期しない目くらましを防止する。ここに紹介される発明は、車両の前の周辺を検出するカメラシステム及び前照灯用制御装置を持つ任意の車両において使用される。
【背景技術】
【0002】
例えば融通のきく発光幅を持つ上向きライト援助装置のような最近の適応前照灯システムは、照明特性の変化により現在の交通状況に合わされる。このようなシステムでは、先行車両及び対向車両を識別してその位置を求めるために、カメラが使用される。その場合前照灯はこの情報により調節されて、他の道路使用者の目をくらませることなく最大の照明が行われるようにすることができる。しかし調節不良の前照灯は予期しない目くらましを生じることがある。なぜならば、所定の範囲が照明されないからである。一般に前照灯の調節は、前照灯調節装置を持つ自動車工場で行われる。この方法の欠点は、前照灯調節が車両所有者にとって時間及び費用を伴うことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、前照灯の調節不良を自動的に検出する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため本発明による方法では、カメラシステムが車両に設けられて、車両の前の範囲へ向けられている。カメラシステムは更に運転者援助システムの構成のために使用される。カメラシステムは、車両前照灯の位置に関係して現在の放射特性を検出する。前照灯の位置は例えばピッチ角及びヨー角によって示される。更に前照灯光線の目標特性が少なくとも1つの前照灯位置に対して分かっている。所定の前照灯位置において目標放射特性と実際放射特性とが相違していると、前照灯の調節不良が確認される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
実際放射特性は、空いている道路において車両作動中に求められる。車両の前で車道上の物体が検出されないと、所定の前照灯調節例えば不動作位置=0度(即ちヨー角=0度でピッチ角=0度)において、カメラ画像において見える光の強さが求められる。本発明の有利な構成では、所定の閾値より上の強度を持つ範囲が求められる。なぜならば、例えば前照灯の全照明範囲がカメラにより記録されないからである。測定精度を高めるため、複数の測定をまとめ、かつ場合によっては平均するのが有利である。
【0006】
本発明の有利な構成では、実際光分布パターンの位置が、車両縦軸線に対して平行な面特に車両の車線に関して評価される。この処置は、前照灯の調節を車両の作動中に検査できる、という利点を与える。特に車道上に物体が検出されないと、方法が空いている車道において使用される。所定の前照灯位置において、車道上の光分布パターンが検出されて、目標光分布パターンと比較され、車道に対して平行な面への光分布パターンの写像が考慮される。
【0007】
その代わりに、再帰反射する物体により局部的輝度を観察することによっても、実際光分布を求めることができる。再帰反射する物体は、しばしば車道限界を特徴づけるために使用される。画像処理において、モノカメラ又はステレオカメラの画像データに基いて物体の場所を評価できる方法が公知である。画像における再帰反射物体の輝度は、物体の場所における実際光入射に比例している。これらの方法において場合によっては、画像列における物体の時間的輝度推移も考慮される。こうして車両の既知の自己速度及び再帰反射物体の場所評価によって、実際光分布パターンを推定することができる。これらの方法は、光分布パターンを道路に対して平行な面で求めることができない場合に、特に適している。
【0008】
本発明の別の構成では、車両の車線に関して光分布パターンが評価される。直線的に延びる車線では、前照灯の光分布パターンは車線の推移に対して対称である。従ってこの構成では、カメラシステムの正確な視方向がわかっていなくてよい。画像データから車線の識別は従来技術であり、車線保持システムにおいてすでに実現されている。
【0009】
本発明の別の有利な構成では、まずビデオ画像における物体の視覚消点(展開の焦点)を走行中に求めることによって、車両縦軸線に関する光分布が求められる。視覚消点は、特に物体例えば車道標識、対向車両等の運動軌道から生じる。遠く離れた物体はまず消点又はその近くで検出され、接近すると他の画像範囲へ移動する。カメラ画像における視覚消点の位置及び場合によっては物体の運動軌道から、特に直線走行の場合車両の運動方向従って車両縦軸線の位置を推論することができる。
【0010】
本発明の別の構成では、車両が車両縦軸線に対して直角に設けられている面の前に停止している時、実際光分布パターンの位置が記録される。この場合例えば家屋又は車庫の壁の前で、調節不良検出を行うことができる。この方法は、例えば走行の開始前又は終了後に車両が停止している場合、自動的に又は運転者の希望に応じて行うことができる。
【0011】
本発明の別の構成では、調節不良検出のため前照灯が特別な光分布パターンを放射する。特に前照灯の中心部分範囲が暗くされるか、又は中心部分範囲のみで光が放射されるように、光パターンが規定される。この中心部分範囲は例えば円形か又は四角形である。
【0012】
本発明の特別な構成では、比較のため、目標光分布パターンが実際光分布パターンの形に関係して選ばれる。これは、車両縦軸線に対して平行又は直角に設けることができる面で実際光分布パターンが検出される場合、特に重要である。例えば実際光分布の投影が、車道又は車両縦軸線に対して直角な壁において記録される。実際光分布の推移は両方の場合相違しており、従って異なる目標光分布パターンと比較されねばならない
。
【0013】
本発明の好ましい構成では、調節不良の検出の際、警報信号が出力されて、運転者に調節不良を指摘する。警報信号は光、音及び/又は視覚で出力することができる。
【0014】
本発明の別の構成では、調節不良の検出の際、少なくとも2つの所定の前照灯位置のための前照灯修正が行われるので、実際光分布が目標光分布と一致する。
【0015】
本発明の別の構成では、調節不良の検出及び運転者による修正要求の際、少なくとも2つの所定の前照灯位置のための前照灯修正が行われる。運転者による修正は、例えば車両の内部にある入力装置によって行うことができる。