特許第5774492号(P5774492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許577449211−ブロムウンデカン酸のアンモノリシス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774492
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシス方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 227/08 20060101AFI20150820BHJP
   C07C 227/42 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 227/40 20060101ALI20150820BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C07C227/08
   C07C227/42
   C07C227/40
   C07C229/08
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-541552(P2011-541552)
(86)(22)【出願日】2009年12月18日
(65)【公表番号】特表2012-512850(P2012-512850A)
(43)【公表日】2012年6月7日
(86)【国際出願番号】FR2009052536
(87)【国際公開番号】WO2010070228
(87)【国際公開日】20100624
【審査請求日】2012年12月17日
(31)【優先権主張番号】0807259
(32)【優先日】2008年12月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ピー, ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン, ステファニ
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許第00591027(GB,B)
【文献】 仏国特許出願公開第00988699(FR,A1)
【文献】 Industrial & Engineering Chemistry Process Design and Development,1986年,Vol.25, No.2,P.354-357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 227/08
C07C 229/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)と(ii)の段階から成る11−ブロムウンデカン酸から11−アミノ−ウンデカン酸を製造する方法:
(i)溶融したまたは溶融していない11−ブロムウンデカン酸をアンモニア水溶液中に分散する段階、
(ii) 反応媒体を攪拌下に、最初の反応装置の温度を15℃〜25℃にし、一連の反応装置で温度順次増加させ、最終反応装置の温度を26〜40℃にすることで特徴付けられる徐々に加熱する状態下で、11−ブロムウンデカン酸を過剰量のアンモニア水と反応させるアンモノリシス段階。
【請求項2】
段階(ii)を互いに直列に接続された反応装置Rl、R2、・・Rn(2≦n≦15)の配列全体で連続的に実施し、反応装置R1でアンモニア水中に分散した11−ブロムウンデカン酸を受け、各反応装置はそれぞれ独立して管理された一定温度T1、T2、・・・Tnに維持され、互いに直列に接続された2つの反応装置の間温度増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応装置R1の温度T115〜25℃にし、最終の反応装置Rnの温度Tn26〜40℃にする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各反応装置の制御を下記(a)〜(c)によって実施する請求項2または3に記載の方法:
(a)段階(i)で各成分(11−ブロムウンデカン酸およびアンモニア水)の入口温度を制御し、
(b)段階(ii)の各反応装置の過剰アンモニアの脱気を制御し、
(c)反応装置R1〜Rnを加熱する温度調節システムを使用する。
【請求項5】
反応媒体を所定反応装置から次の反応装置へ連続的に移送し、各反応装置の平均滞留時間を1時間〜30時間にし、11−ブロムウンデカン酸が完全消費される反応の全時間を20〜80時間にする請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
段階(ii)を反応装置R'1、R'2・・・R'nの配列全体(2≦n≦25)中で並列に実施し、各反応装置の供給/反応/排出サイクルは反応時間を反応装置(n)の数で割ったオフセット時間だけ互いに時間をずらして実施し、各反応装置の温度は出発温度が15〜25℃、終了温度が26〜40℃となるようにプログラムする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各反応装置の出発温度15〜25℃にし、各反応装置の最終温度26〜40℃にする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各反応装置を、反応時間を反応装置の数nで割った時間に対応するオフセット時間間隔で、供給/反応/排出サイクルに従って運転して、反応装置の配列全体の入口および出口での供給量および抜き出し量を一定、規則的かつ連続的に維持する請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
下記(i)と(ii)の段階から成る11−ブロムウンデカン酸から11−アミノ−ウンデカン酸を製造する方法:
(i)溶融したまたは溶融していない11−ブロムウンデカン酸をアンモニア水溶液中に分散する段階、
(ii) 出発温度が15〜25℃、終了温度が26〜40℃となる所定数の静止期で温度を上昇させるプログラムまたは温度上昇勾配のプログラムを有する単一の反応装置で11−ブロムウンデカン酸を過剰量のアンモニア水と反応させるアンモノリシスをバッチで実施する段階。
【請求項10】
反応装置の出発温度が15〜25℃で、反応装置の最終温度が26〜40℃である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
11−ブロムウンデカン酸の完全消費を可能にする反応の継続期間を開始温度および最終温度および温度上昇プログラムに応じて20時間〜80時間にする請求項6、7、9、10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応媒体を22℃から32℃へ温度上昇させ、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃および32℃で12時間30分間の6つの静止期を観測する請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階(ii)の終了時に得られる11−アミノウンデカン酸を濾過、洗浄、乾燥する段階(iii)をさらに有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
段階(iii)の終了時に得られる11−アミノウンデカン酸を精製する段(iv)をさらに有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記精製段階(iv)を再融解、濾過、結晶化、濾過、洗浄、乾燥の操作シーケンスによって行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アムモニアの脱気、液/液抽出、結晶化、濾過および洗浄によって、段階(iii)および/または(iv)で得られる各濾液および洗浄液中の残留11−アミノウンデカン酸を回収する段階(v)をさらに有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記精製段階(iv)で得られる11−アミノウンデカン酸を乾燥する最終段階をさらに有する請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
上記精製段階(iv)で得られる11−アミノウンデカン酸に段階(v)で回収した11−アミノウンデカン酸を加えて乾燥する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
得られた粗反応生成物中のアミノジウンデカン酸のレベルが3500ppm以下である請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
得られた粗反応生成物中のアミノジウンデカン酸のレベルが2500ppm以下である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
11−ブロムウンデカン酸を完全消費するアンモノリシスの継続時間が75時間以下である請求項1〜12、19および20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシス(ammonolysis、加アンモニア分解)方法に関するものであり、特に、短い反応時間で、不純物、特に二級アミンタイプの不純物の原因となる副反応を制限することができる条件下で実行されるアンモノリシス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化酸の11−アミノウンデカン酸は、ひまし油からアムモニアの存在下で実行されるアンモノリシス(ammonolysis)として知られた反応によって、単離できる。得られた11−アミノウンデカン酸は合成、特にホモポリマーのポリアミド、例えばリルサン(登録商標、Rilsan)PA11の縮重合用モノマーとして使用さている。このリルサン(登録商標、Rilsan)PA11は種々の主たる物理特性および耐薬品性、耐炭化水素性、衝撃強度、破断強度、耐摩耗性、耐クラック性、可撓性と、高い作業温度および長い耐劣化性の登録商標でトップクラスの性能を有する唯一のポリマーである。このポリマーの特性は縮重合時に反応媒体中に存在する不純物のレベルが一定限界を超えると変化する。従って、副生成の生成をできるだけ制限するのが望ましい。
【0003】
ハロゲン化酸をアムモニア溶液と反応させて、アミンを製造するためのホフマン法に従って、対応するアミノカルボン酸を得ることは公知である。特許文献1(フランス特許第FR 988 699号公報)にはハロゲン化酸を水溶性、アルコール性または水溶性/アルコール性のアムモニア溶液と反応させてアミノカルボン酸を製造する方法が記載されている。反応は比較的に低温で行われ、反応速度は温度とともに上昇する。一方、アミノ酸の収率は温度の上昇とともに低下する。上記文献に記載の実施例に記載の10- アミノデカン酸の製造方法では10-ブロムデカン酸を溶融状態でアムモニアを25重量%含むアンモニア水溶液に入れ、混合物を焼く15℃で攪拌する。反応は約6日で完了し、収率は77%である。
【0004】
反応温度をさらに上げてもこの流れ中に合成されるポリアミドの特性に有害な不純物の量は大きく増加しない。この流れをアミノ酸の次の精製、分離処理で処理してもポリアミドの製造コストを増加させることはない。
【0005】
非特許文献1(Gudadhe et al.,Ind. Eng.Chem. Process Des. Dev., 1986, 25, 354-357)には11−ブロムウンデカン酸のアミノ化反応の運動力学が研究されている。この文献の表Iに記載の結果は、反応温度が30℃から50℃に増加すると反応速度が増加し、11−アミノ-ウンデカン酸の収率が低下することを示している。これは不純物の量が増加することによると考えられる。
【0006】
11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシス反応中に媒体中の11−ブロムウンデカン酸および11−アミノウンデカン酸の濃度を下げることによって主たる不純物(11−ヒドロキシウンデカン酸HO-(CH2)10-000H およびアミノジウンデカン酸NH[(CH2)10-COOH]2)を生じさせる元となる副反応を制限することができる。そのためにアンモノリシス反応は水性およびヘテロ媒体中で実行される。このために11−ブロムウンデカン酸を低温(30℃以下)での溶解性が極めて低いアンモニウム塩の形の水相中に溶解させる。大過剰のアンモニア水を使用することによって11−ブロムウンデカン酸による11−アミノウンデカン酸のアミノリシス反応でアミノジウンデカン酸となるのを制限することができる。すなわち、媒体中の水溶性アンモニアの比率を11−アミノウンデカン酸に比べて極めて大きくすることによって11−アミノウンデカン酸と11−ブロムウンデカン酸とが出会う確率を大きく減らして、両者の反応性を大幅に制限する。
【0007】
しかし、反応を低温で実行すると、副反応を減らし、11−アミノウンデカン酸の選択性を上げることはできるが、反応時間(11−ブロムウンデカン酸の完全消費)が極めて長くなる結果、この反応を工業的スケールで使用することはできなくなる(22℃の等温反応で95時間)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】フランス特許第FR 988 699号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gudadhe et al. ,Ind. Eng.Chem. Process Des. Dev., 1986, 25, 354-357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシスの従来方法の欠点を克服することにある。
【0011】
本発明の目的は、副産物の生産を大幅に制限し、工業的に実行可能な短い反応時間で11−ブロムウンデカン酸をアンモノリシスする方法を提供することにある。
【0012】
本発明者は、副産物の生成を支配するのは11−アミノウンデカン酸のアンモノリシス反応の出発温度のみであるということ、従って、低温で等温で反応を実行する必要があるが、媒体の温度を規則的に上昇させ、開始時に低温の静止期(理想的には15〜25℃)を観測する必要があるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対象は、下記(i)と(ii)の段階から成る11−ブロムウンデカン酸から11−アミノ−ウンデカン酸を製造する方法にある:
(i)溶融したまたは溶融していない11−ブロムウンデカン酸をアンモニア水溶液中に分散する段階、
(ii)80時間以内に11−ブロムウンデカン酸を完全に消費でき、アミノジウンデカン酸の生成を制限し且つ11−アミノウンデカン酸を得るのに十分な状態で反応媒体を徐々に加熱する状態下かつ攪拌下に、過剰量のアンモニア水と反応させるアンモノリシス段階。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】互いに直列に接続した反応装置R'1、R'2・・・R'n(2≦n≦15)のアレーで段階(ii)を連続的に実施し、各反応装置をそれぞれ独立して管理された一定温度Tl、T2、・・・Tnに維持する、本発明のアンモノリシス方法の一つの実施例を示す図。
図2】互いに並列に接続した反応装置R'1、R'2・・・R'n(2≦n≦15)のアレーで段階(ii)を連続的に実施し、各反応装置の温度を可変にする、本発明のアンモノリシス方法の別の実施例を示す図。
図3】段階(ii)を非連続的に(バッチで)実施し、各反応装置の温度を可変にした、本発明のアンモノリシス方法の第3の実施例を示す図。
図4】6回の静止期で温度上昇をする本発明のバッチテストでの時間を関数とする温度の変化と、反応運動力学(時間を関数とする反応の進捗度)とを示す図。
図5】反応を22℃で等温で実行する比較例のバッチテストでの時間を関数とする温度の変化と、反応運動力学(時間を関数とする反応の進捗度)とを示す図。
図6】反応を32℃で等温で実行する比較例のバッチテストでの時間を関数とする温度の変化と、反応運動力学(時間を関数とする反応の進捗度)とを示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の対象は、下記(i)と(ii)の段階から成る11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシスにある:
(i)溶融したまたは溶融していない11−ブロムウンデカン酸を、アンモニアが過剰なアンモニア水溶液中に分散する段階、
(ii) 80時間以内に11−ブロムウンデカン酸を完全に消費でき且つ11−アミノウンデカン酸を得るのに十分な状態で反応媒体を徐々に加熱する状態下かつ攪拌下にアンモニア水と反応させるアンモノリシス段階。
【0016】
11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシスは下記の反応シーケンスに従って実行される:
(1)11−ブロムウンデカン酸のアンモニウム塩の形成および溶解:
Br(CH2)10-C00H5+ NH3aq −> Br-(CH2)10-COO-NH4+s −> Br-(CH2)10-COO-NH4+aq
(2)11−ブロムウンデカン酸のアンモニウム塩のアンモノリシス:
Br-(CH2)10-COO-NH4+aq+NH3aq −> NH2-(CH2)10-COO-NH4+s
(3)11−アミノウンデカン酸のアンモニウム塩の加水解離と11−アミノウンデカン酸の沈澱:
NH2-(CH2)10-COO-NH4+aq +H2O −> NH2-(CH2)10-COOHaq −> NH2-(CH2)10-COOH s
(4)11−ブロムウンデカン酸のアンモニウム塩のヒドロオキシル化:
Br-(CH2)10- COO-NH4+aq + OH- aq −> HO-(CH210-COO-NH4+aq
(5)11−ブロムウンデカン酸のアンモニウム塩のアミノリシス:
Br-(CH2)10-COO-NH4+aq + NH2-(CH2)10-COO-NH4+aq −> NH[(CH2)10-COO-] 2NH4+aq
【0017】
段階(i)は好ましくは60〜100℃の溶融した11−ブロム−ウンデカン酸(以下に、Br11と記載)を注入装置を用いて0℃〜10℃の温度のBrllに対して過剰量の濃縮アンモニア水(好ましくは20〜50重量%濃度)(例えばBr11:NH3のモル比を1:10〜1:60、好ましくは1:30)中に分散させて行う。
【0018】
11−ブロムウンデカン酸のアンモノリシス反応は特徴的な特定の温度条件下に実施する。すなわち非等温(non-isothermal)で、温度を上げながら実行する。より詳しくは、反応媒体を徐々に加熱し(温度を上昇させるプログラムを用いるか、反応媒体を固定温度に維持された一連の反応装置(ただし、2つの互いに連続した反応装置の間では温度を上昇させる)へ送る。そうすることで化学反応の速度を加速でき、11−ブロムウンデカン酸が完全に消費されるまでの反応時間を大幅に短くすることができ、すなわち80時間以下、好ましくは75時間以下に短くすることができる。
【0019】
本発明方法では同時にできる望ましくない生成物(特に、アミノジウンデカン酸)の量を減らすことができ、特に、得られた粗反応生成物中のアミノジウンデカン酸の量は3500ppm以下、好ましくは2500ppm以下である。
【0020】
本発明の第1実施例では[図1]に示すように、互いに直列に接続した反応装置R'1、R'2・・・R'n(2≦n≦15)のアレーで段階(ii)を連続的に実施し、各反応装置をそれぞれ独立して管理された一定温度Tl、T2、・・・Tnに維持する。反応装置アレーの温度プロファイルは最初の反応装置(アンモニア水中に11−ブロムウンデカン酸が分散したものを受ける反応装置)の温度を15℃〜25℃にし、一連の反応装置で温度が順次増加させ、最終反応装置の温度を好ましくは26〜40℃にすることで特徴付けられる。この実施例では反応媒体は所定反応装置から一連の反応装置へ移され、各反応装置での平均滞留時間は1時間から30時間で、11−ブロムウンデカン酸が完全に消費される反応全体持続時間は20〜80時間である。
【0021】
各反応装置の温度制御は段階(i)の供給成分(11−ブロモウンデカン酸およびアンモニア水)の供給温度の制御と、段階(ii)の各反応装置での過剰アムモニアの脱気(吸熱現象で、媒体を冷却することができる)の制御とを組み合わせ、さらに、段階(ii)の反応装置を加熱するための加熱制御システムを使用して行うのが好ましい。
【0022】
本発明の第2の実施例では[図2]に示すように、互いに並列に接続した反応装置R'1、R'2・・・R'n(2≦n≦15)のアレーで段階(ii)を連続的に実施し、各反応装置の温度を独立して可変に維持する。各反応装置は所定温度に依存する所定時間で温度上昇するプログラムを有している。各反応装置でプログラムの出発温度は15〜25℃であり、終了温度は26〜40℃であるのが好ましい。11−ブロムウンデカン酸を完全に消費する反応の継続時間は出発温度と終了温度および、温度上昇プログラムに依存するが、20〜80時間である。反応装置アレーの各反応装置の入口および出口で一定の規則かつ連続した供給および排出を維持するために、反応時間を反応装置(n)の数で割ったものに相当するオフセット時間で供給/反応/排出サイクルに従って各反応装置を運転する。
【0023】
本発明の第3の実施例では、[図3]に示すように、可変温度Tfに維持された反応装置で段階(ii)を非連続的に(バッチ式)に実施する。この場合、反応装置は所定数の静止期(stationary phase)で温度上昇し、換言すれば、選択した温度に依存する所定時間の間、温度の上昇勾配プログラムを有する。反応装置の出発温度は15〜25℃であり、反応装置の終了温度は26〜40℃であるのが好ましい。11−ブロムウンデカン酸を完全に消費できる反応の継続時間は開始温度と終了温度および温度上昇プログラムに従って20〜80時間で変化する。
【0024】
上記のアンモノリシス・プロセスの各実施例では滞留時間と反応時間とを区別する必要がある。滞留時間はプラントの形態、例えば、反応装置の容積や数によって特徴づけられる形態、流れの方向、撹拌または流速に依存し、一方、反応時間は温度および濃度を含む化学反応速度論に影響するパラメータだけに依存する。
【0025】
本発明の第3実施例では、本発明のアンモノリシスプロセスが、段階(ii)の終わりに得られる11−アミノウンデカン酸に対して行う濾過、洗浄、乾燥の段階(iii)を含む。こうして得られた反応生成物は追加の精製段階(iv)、好ましくは再融解、濾過、結晶化、濾過、水洗および乾燥のシーケンスで実行される精製段階に送ることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施例では、本発明方法は、アムモニアの脱気、液/液抽出、結晶化、濾過および洗浄によって段階(iii)および/または(iv)で得られた残留濾液および洗浄液から11−アミノウンデカン酸を回収する段階(v)をさらに含む。
【0027】
本発明のアンモノリシスプロセスは、段階(iv)で得られる、さらには段階(v)で得られる11− アミノウンデカン酸を乾燥する最終段階をさらに有する。
【0028】
こうして得られた11−アミノウンデカン酸は主としてアミノジウンデカン酸から成る不純物をわずかしか含まない。重縮合反応でモノマーとして使用した場合、非常に良好な品質のポリアミドPAllまたはリルサン(Rilsan、登録商標)を得ることができる。
以下、本発明のよりよい理解のために本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1(本発明)
6回の静止期で温度上昇するバッチテスト
400回転数/分の速度で回転する2つの5つ羽根のプロペラを有する攪拌機シャフトを備えたジャケット付き1リットル容の反応装置に、660gの32%アンモニア水を0℃で入れた。110gの溶融した11−ブロムウンデカン酸を90℃で急速に滴下して加える。反応は大気圧で行う。臭素化酸の添加が完了した時に媒体の温度の設定点を22℃にし、反応媒体を22℃〜32℃に温度上昇させ、その間に、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃および32℃で6回の12時間30分間の静止期を置いた。
【0030】
反応の進行度(%PR)は開始時の11−ブロムウンデカン酸の量を関数として消費された11−ブロムウンデカン酸のレベルとして定義される。消費された臭素化酸の量は反応によって媒体中に開放された臭素イオンの電位差測定(銀の電極棒、硝酸銀による滴定)で定量した。温度プロファイル(時間を関数とする温度)および反応の動力学(時間を関数としする%PR)は[図4]に示した。
【0031】
最終的に得られた粗反応生成物は自由流動懸濁液の形でこの段階で回収し、加熱して脱ガスした。粗生成物中のアミノジウンデカン酸の定量はHPLCで実行した。
【0032】
比較例2
22℃での等温バッチテスト
400回転数/分の速度で回転する2つの5つ羽根のプロペラを有する攪拌機シャフトを備えたジャケット付き1リットル容の反応装置に、660gの32%アンモニア水を0℃で入れた。110gの溶融した11−ブロムウンデカン酸を90℃で急速に滴下して加える。反応は大気圧で行う。臭素化酸の添加が完了した時に媒体の温度の設定点を22℃にし、11−ブロムウンデカン酸が完全に消費されるまで22℃を維持した。
【0033】
温度プロファイル(時間を関数とする温度)および反応の運動力学(時間を関数とする%PR)は[図5]に示す。最終的に得られた粗反応生成物は自由流動懸濁液の形でこの段階で回収し、加熱して脱ガスした。粗生成物中のアミノジウンデカン酸の定量はHPLCで実行した。
【0034】
比較例3
32℃での等温バッチテスト
400回転数/分の速度で回転する2つの5つ羽根のプロペラを有する攪拌機シャフトを備えたジャケット付き1リットル容の反応装置に、660gの32%アンモニア水を0℃で入れた。110gの溶融した11−ブロムウンデカン酸を90℃で急速に滴下して加える。反応は大気圧で行う。臭素化酸の添加が完了した時に媒体の温度の設定点を32℃にし、11−ブロムウンデカン酸が完全に消費されるまで徐々に32℃まで上げた。
【0035】
温度プロファイル(時間を関数とする温度)および反応の運動力学(時間を関数とする%PR)は[図6]に示す。
【0036】
最終的に得られた粗反応生成物は自由流動懸濁液の形でこの段階で回収し、加熱して脱ガスした。粗生成物中のアミノジウンデカン酸の定量はHPLCで実行した。
以上の結果を下記の[表1]に示す。
【0037】
【表1】
A2は最終粗反応生成物中のアミノジウンデカン酸のレベルを表す(ppmまたは1kgの懸濁液当たりのアミノジウンデカン酸のmg)。
【0038】
比較例2、3は11−ブロムウンデカン酸が完全に消費されるまでアンモノリシス反応を等温で行った2つの場合に対応する。この場合には11−ブロムウンデカン酸を完全に消費するまで反応媒体を6060分間の22℃に維持する必要がある(比較例2)。
【0039】
実施例3では反応媒体をより高い温度(32℃)に維持することによって反応時間を大幅に短くできる(-77.4%)が、形成されるアミノジウンデカン酸の量が非常に大きく増加することが分かる(+87.6%)。
【0040】
本発明の実施例1では22℃から32℃まで6回の静止温度相に従って温度を増加させてアンモノリシス反応を実行したものに対応する。比較例2と比較して、反応時間を短くでき(-25.9%)、しかも、アミノジウンデカン酸の量は僅かに増える(12.6%)だけである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6