【文献】
Rao Z. et al.,Journal of Applied Microbiology,2008年10月17日,Vol.105, No.6,pp.1768-1776
【文献】
ATSUMI SHOTA,NON-FERMENTATIVE PATHWAYS FOR SYNTHESIS OF BRANCHED-CHAIN HIGHER ALCOHOLS AS BIOFUELS,NATURE,英国,NATURE PUBLISHING GROUP,2008年 1月 1日,V451 N7174,P86-90
【文献】
NAKAMURA C E,METABOLIC ENGINEERING FOR THE MICROBIAL PRODUCTION OF 1,3-PROPANEDIOL,CURRENT OPINION IN BIOTECHNOLOGY,英国,2003年10月 1日,pp.454-459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、バシラス科(Bacillaceae)、ストレプトミセス科(Streptomycetaceae)およびコリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)から選択される、請求項1または2に記載の微生物。
【実施例】
【0086】
実施例1
2−ケト酸デカルボキシラーゼコード遺伝子およびヒドロキシアルデヒドレダクターゼコード遺伝子を発現する株の構築:MG1655(pME101−kivDll−yqhD−TT07)
1.1 α−ケト−イソ吉草酸デカルボキシラーゼをコードする乳酸連鎖球菌のkivDの過剰発現のためのプラスミドpM−Ptrc01−kivDll−TT07の構築
α−ケト−イソ吉草酸デカルボキシラーゼをコードする乳酸連鎖球菌kivDの合成遺伝子はGeneart (Germany)により作製された。この遺伝子のコドン使用およびGC含量は供給者のマトリックスに従って大腸菌に適合させた。この合成遺伝子の発現は構成的Ptrcプロモーターにより駆動した。転写ターミネーターを遺伝子の下流に付加した。この構築物を供給者のpMベクターにクローニングし、配列決定により確認した。必要に応じて、この合成遺伝子をpME101ベクター(このプラスミドはプラスミドpCL1920(Lerner & Inouye, 1990, NAR 18, 15 p 4631)に由来する)にクローニングした後に、大腸菌株を形質転換させた。
【0087】
Ptrc01−kivDll−TT07:
制限部位(BamHI、HindIII、EcoRV)(配列番号1):
【化1】
Ptrc01プロモーター(配列番号2):
【化2】
大腸菌(
CAG34226.)に対して至適化されたkivDll遺伝子配列(配列番号3):
【化3】
ターミネーター配列T7Te(参照:Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24.)(配列番号4):
【化4】
制限部位(SmaI、BamHI、EcoRI)(配列番号5):
【化5】
【0088】
低コピーベクターからの発現のために、pME101プラスミドを次のように構築した。pCL1920プラスミドを、オリゴヌクレオチドPME101FおよびPME101Rを用いてPCR増幅し、lacI遺伝子を担持するベクターpTRC99AからのBstZ17I−XmnI断片とPtrcプロモーターを増幅されたベクターに挿入した。得られたベクターをNcoIおよびBamHIで制限酵素処理し、kivDll遺伝子を担持するベクターをAflIIIおよびBamHIで制限酵素処理した。次に、kivDll含有断片をベクターpME101にクローニングした。得られたプラスミドをpME101−kivDll−TT07と呼んだ。
pME101F(配列番号6):
【化6】
PME101R(配列番号7):
【化7】
【0089】
1.2 α−ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼをコードする乳酸連鎖球菌のkivDとメチルグリオキサールレダクターゼをコードする大腸菌のyqhDの過剰発現のためのプラスミドpME101−kivDll−yqhD−TT07の構築
pME101ベクターおよびkivDll遺伝子を担持するベクターをSnaBIおよびBglIIで制限酵素処理し、yqhD含有断片をベクターpME101にクローニングし、得られたプラスミドをpME101−kivDll−yqhD−TT07と呼んだ。
【0090】
yqhD遺伝子を大腸菌MG1655株のゲノムDNAから、オリゴヌクレオチドyqhD FおよびyqhD R:
yqhD F(配列番号8)
【化8】
・SnaBI制限部位の付加のための領域(斜体太字の大文字)
・3153357〜3153385の大腸菌MG1655 yqhD領域と相同な領域(小文字)
yqhD R(配列番号9)
【化9】
・3154540〜3154518の大腸菌MG1655 yqhD領域と相同な領域(大文字)
・BglII制限部位の付加のための領域(斜体太字の小文字)
を用いてPCR増幅した。
PCR増幅した断片を制限酵素SnaBIおよびBglIIで切断し、ベクターpME101−kivDll−TT07のSnaBI−BglII部位にクローニングし、ベクターpME101−kivDll−yqhD−TT07を得た。
【0091】
実施例2
エチレングリコール経路フラックスが増強された株:MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA Ptrc18−gpmB(pME101−kivDll−yqhD−TT07)の構築
2.1 MG1655 ΔsdaA ΔsdaB株の構築
sdaA遺伝子を欠失させるために、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能であった。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔsdaAF(配列番号10)
【化10】
・sdaA遺伝子の配列(1894941〜1895020)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔsdaAR(配列番号11)
【化11】
・sdaA遺伝子の配列(1896336〜1896254)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0092】
オリゴヌクレオチドΔsdaAFおよびΔsdaARを用いて、pKD4プラスミドからカナマイシン耐性カセットを増幅した。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入した(pKD46)。カナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を以下に定義されるオリゴヌクレオチドsdaAFおよびsdaARを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaA::Kmと呼んだ。
sdaAF(配列番号12):
【化12】
(1894341〜1894360の配列と相同)
sdaAR(配列番号13):
【化13】
(1896679〜1896660の配列と相同)
【0093】
次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、ΔsdaA::Kmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドsdaAFおよびsdaARを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaA::Kmと呼んだ。次に、DsdaB::CmをMG1655 ΔsdaA::Km株に形質導入により導入した。まず、MG1655 ΔsdaB::Cmを、従前に記載したものと同じ方法を以下のオリゴヌクレオチド:
ΔsdaBF(配列番号14)
【化14】
・sdaB遺伝子の配列(2927627〜2927705)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔsdaBR(配列番号15)
【化15】
・sdaB遺伝子の配列(2928960〜2928881)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
とともに用いて構築した。
【0094】
オリゴヌクレオチドΔsdaBFおよびΔsdaBRを用いて、プラスミドpKD3からクロラムフェニコール耐性カセットを増幅した。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入した(pKD46)。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドsdaBFおよびsdaBRを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaB::Cmと呼んだ。
sdaBF(配列番号16):
【化16】
(2927450〜2927468の配列と相同)
sdaBR(配列番号17):
【化17】
(2929038〜2929017の配列と相同)
ΔsdaB::Cmを移入するために、ファージP1形質導入の方法を用いた。MG1655 ΔsdaA::Km株への形質導入のために、MG1655 ΔsdaB::Cm株のファージ溶解液の調製物を用いた。
【0095】
次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、ΔsdaB::Cmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドsdaBFおよびsdaBRを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaA::Km ΔsdaB::Cmと呼んだ。その後、カナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去した。次に、カナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入した。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性カセットの欠損を、従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(sdaAF/sdaARおよびsdaBF/sdaBR)を用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 DsdaA ΔsdaBと呼んだ。
【0096】
2.2 MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF6株の構築
pykF遺伝子を欠失させるために、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能であった。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔpykFF(配列番号18)
【化18】
・pykF領域の配列(1753689〜1753766)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔpykFR(配列番号19)
【化19】
・pykF領域の配列(1755129〜1755051)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0097】
オリゴヌクレオチドΔpykFFおよびΔpykFRを用いて、プラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅した。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入した(pKD46)。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドpykFFおよびpykFRを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔpykF::Kmと呼んだ。
pykFF(配列番号20):
【化20】
(1753371〜1753392の配列と相同)
pykFR(配列番号21):
【化21】
(1755518〜1755495の配列と相同)
ΔpykF::Kmを移入するために、ファージP1形質導入の方法を用いた。MG1655 ΔsdaA ΔsdaB株に形質導入するために、MG1655 ΔpykF::Km株のファージ溶解液の調製物を用いた。
【0098】
次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、ΔpykF::Kmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドpykFFおよびpykFRを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF::Kmと呼んだ。
【0099】
その後、カナマイシン耐性カセットを除去した。次に、カナマイシン耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入した。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットの欠損を、従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(sdaAF/sdaAR、sdaBF/sdaBRおよびpykFF/pykFR)を用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykFと呼んだ。
【0100】
2.3 MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA Ptrc18−gpmB株の構築
3−ホスホグリセル酸のレベルを高めるために、突然変異体Ptrc18−gpmAおよびPtrc18−gpmBを構築する。まず、ホスホグリセル酸ムターゼgpmA遺伝子の発現を低減するために、プロモーターを活性の弱い改変型の構成的trcプロモーターに置き換える。このPtrc18−gpmAを形質導入によりMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF株に導入する。
【0101】
まず、MG1655 Ptrc18−gpmA::Km株を、従前に記載したものと同じ方法を以下のオリゴヌクレオチド:
Ptrc18−gpmAF(配列番号22)
【化22】
・gpmA遺伝子の配列(786771〜786819)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
・trcプロモーター配列(−35および−10ボックスが下線で示される)の領域(斜体の大文字)
Ptrc18−gpmAR(配列番号23)
【化23】
・gpmA遺伝子の上流領域の配列(786903〜786819)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
とともに用いて構築する。
【0102】
オリゴヌクレオチドPtrc18−gpmAFおよびPtrc18−gpmARを用いて、プラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入し(pKD46)、ここで発現したRedリコンビナーゼ酵素により相同組換えが可能となる。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドgpmAFおよびgpmARを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 Ptrc18−gpmA::Kmと呼ぶ。
gpmAF(配列番号24):
【化24】
(786673〜786695の配列と相同)
gpmAR(配列番号25):
【化25】
(787356〜787333の配列と相同)
【0103】
この改変Ptrc18−gpmA::Kmを移入するために、ファージP1形質導入を用いる。以下のプロトコールを二段階で行い、まず、MG1655 Ptrc18−gpmA::Km株のファージ溶解液を調製し、次に、MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF株に形質導入を行う。この株の構築は上記されている。
【0104】
1−P1ファージ溶解液の調製
・10mlのLB+Km 50μg/ml+グルコース0.2%+CaCl2 5mMにMG1655 Ptrc18−gpmA::Km株の一晩培養物100μlを接種する。振盪しながら37℃で30分間インキュベートする。
・MG1655株に100μlのファージ溶解液P1を加える(約1.10
9ファージ/ml)。
・37℃で3時間、総ての細胞が溶解するまで振盪する。200μlのクロロホルムを加え、ボルテックスにかける。
・4500gで10分間遠心分離を行い、細胞残渣を除去する。
・上清を無菌試験管に移し、200μlのクロロホルムを加える。
・溶解液を4℃で保存する。
【0105】
2−形質導入
・LB培地中、MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF株の一晩培養物5mlを1500gで10分間遠心分離する。
・2.5mlの10mM MgSO4、5mM CaCl2に細胞ペレットを懸濁させる。対照試験管:細胞100μl
・MG1655 Ptrc18−gpmA::Km株のファージP1 100μl−供試試験管:細胞100μl+MG1655 Ptrc18−gpmA::Km株のファージP1 100μl
・振盪せずに300Cで30分間インキュベートする。各試験間に1Mクエン酸ナトリウム100μlを加え、ボルテックスにかける。
・1mlのLBを加える。
・振盪しながら37℃で1時間インキュベートする。
・試験管を7000rpmで3分間遠心分離した後、LB+Km50μg/mlのディッシュ上に拡げる。
・37℃で一晩インキュベートする。
【0106】
3−株の確認
次に、カナマイシン耐性形質転換体を選択し、プロモーターPtrc18−gpmA::Kmの改変を、従前に記載したオリゴヌクレオチドgpmAFおよびgpmARを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA::Kmと呼ぶ。次に、Ptrc18−gpmBを形質導入によりMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA::Km株に移入する。まず、従前に記載したものと同じ方法を以下のオリゴヌクレオチド:
Ptrc18−gpmBR(配列番号26)
【化26】
・gpmB遺伝子の配列(4631414〜4631366)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
・trcプロモーター配列(−35および−10ボックスが下線で示される)の領域(斜体の大文字)
Ptrc18−gpmBF(配列番号27)
【化27】
・gpmB遺伝子の上流領域の配列(4631280〜4631365)(ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
とともに用いて構築する。
【0107】
オリゴヌクレオチドPtrc18−gpmBFおよびPtrc18−gpmBRを用いて、プラスミドpKD3からクロラムフェニコール耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入し(pKD46)、ここで発現したRedリコンビナーゼ酵素により相同組換えが可能となる。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドgpmBFおよびgpmBRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 Ptrc18−gpmB::Cmと呼ぶ。
gpmBF(配列番号28):
【化28】
(4630906〜4630932の配列と相同)
gpmBR(配列番号29):
【化29】
(4631823〜4631803の配列と相同)
【0108】
改変Ptrc18−gpmB::Cmを移入するために、ファージP1形質導入を用いる。MG1655 Ptrc18−gpmB::Cm株のファージ溶解液を、MG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA::Km株への形質導入に用いる。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、Ptrc18−gpmB::Cmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドgpmBFおよびgpmBRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA::Km Ptrc18−gpmB::Cmと呼ぶ。その後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去する。次に、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入する。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットの欠損を、従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(gpmAF/gpmARおよびgpmBF/gpmBR)を用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA Ptrc18−gpmBと呼ぶ。
【0109】
2.4 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA Ptrc18−gpmB(pME101−kivDll−yqhD−TT07)株の構築
次に、pME101−kivDll−yqhD−TT07プラスミドをMG1655 ΔsdaA ΔsdaB ΔpykF Ptrc18−gpmA Ptrc18−gpmB株に導入する。
【0110】
実施例3
1,3−プロパンジオール経路フラックスが増強された株:MG1655 ΔmetA ΔpykF ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1(pME101−kivDll−yqhD−TT07)(pMA−aaoro)の構築
3.1 MG1655 ΔmetA株の構築
metA遺伝子を欠失させるために、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能である。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔmetAF(配列番号30):
【化30】
・metA領域の配列(4212310〜4212389)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔmetAR(配列番号31):
【化31】
・metA領域の配列(4213229〜4213150)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0111】
オリゴヌクレオチドΔmetAFおよびΔmetARを用いて、プラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅した。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入した(pKD46)。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドmetAFおよびmetARを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔmetA::Kmと呼んだ。
metAF(配列番号32):
【化32】
(4212203〜4212232の配列と相同)
metAR(配列番号33):
【化33】
(4213301〜4213272の配列と相同)
【0112】
その後、カナマイシン耐性カセットを除去した。次に、カナマイシン耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入した。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットの欠損を従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(metAF/metAR)を用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔmetAと呼んだ。
【0113】
3.2 MG1655 ΔmetA ΔpykF株の構築
ΔpykF::Kmを移入するために、ファージP1形質導入を用いた。MG1655 ΔmetA株への形質導入のためにMG1655 ΔpykF::Km株のファージ溶解液の調製物(上記)を用いた。
【0114】
次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、ΔpykF::Kmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドpykFFおよびpykFRを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔmetA DpykF::Kmと呼んだ。
【0115】
3.3 MG1655 DmetA DpykF DthrLABC::TT07−Ptrc−thrA*1株の構築
アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼのフィードバック耐性対立遺伝子thrA
*1の発現を増強するために、以下のプラスミドを構築した:thrA
*1を得るためのpSB1およびthrLABCオペロンをPtrc−thrA
*1対立遺伝子により置き換えるためのpSB2。
プラスミドpSB1はプラスミドpCL1920(Lerner & Inouye, 1990, NAR 18, 15 p 4631)に由来し、プロモーターPtrcから発現されたトレオニンに対するフィードバック耐性が低減された(Lee et al. 2003 J. Bacteriol. 185, 18 pp. 5442-5451)アスパルトキナーゼ/ホモセリンthrA
*対立遺伝子を担持する。pSB1の構築のため、thrAを、以下のオリゴヌクレオチド:
BspHIthrA(配列番号34):
【化34】
・thrA遺伝子の配列(341〜371)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/)に参照配列)と相同な領域(小文字)
・BspHI制限部位および余分な塩基のための領域(大文字)
SmaIthrA(配列番号35):
【化35】
・thrA遺伝子の配列(2871〜2841)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/)に参照配列)と相同な領域(小文字)
・SmaI制限部位および余分な塩基のための領域(大文字)
を用いてゲノムDNAからPCR増幅した。
【0116】
PCR増幅した断片を制限酵素BspHIおよびSmaIで切断し、ベクターpTRC99A(Stratagene)のNcoI/SmaI部位にクローニングした。低コピーベクターからの発現のために、pME101プラスミドを次のように構築した。pCL1920プラスミドを、オリゴヌクレオチドPME101FおよびPME101Rを用いてPCR増幅し、lacI遺伝子とPtrcプロモーターを担持するpTRC99AベクターからのBstZ17I−XmnI断片を増幅されたベクターに挿入した。得られたベクターとthrA遺伝子を担持するベクターをApaIおよびSmaIで制限酵素処理し、thrA含有断片をベクターpME101にクローニングした。ThrAをフィードバック阻害から解放するために、オリゴヌクレオチドThrA SF forおよびThrA SF revを用い、部位特異的突然変異誘発(Stratagene)により突然変異thrAS345Fを導入し、ベクターpSB1を得た。
PME101F(配列番号36)
【化36】
PME101R(配列番号37)
【化37】
ThrA SF for(配列番号38)
【化38】
ThrA SF rev(配列番号39)
【化39】
【0117】
thrLABCオペロンを欠失させ、それをPtrc−thrA
*1対立遺伝子で置き換えるために、Datsenko & Wanner (2000)のより記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともに、クロラムフェニコールまたはクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットだけでなく付加的DNAの挿入も可能となる。このために、以下のプラスミドpSB2を構築した。
【0118】
プラスミドpSB2はプラスミドpUC18(Norrander et al., Gene 26 (1983), 101- 106)に由来し、Ptrc−thrA
*1対立遺伝子と結合したクロラムフェニコール耐性カセットを担持し、双方をthrLの上流領域とthrCの下流領域の間にクローニングした。
【0119】
pSB2の構築のために、thrLの上流領域およびthrCの下流領域を、以下のオリゴヌクレオチド:
HpaIupthrLF(配列番号40)
【化40】
・thrL領域の配列(4638698〜4638731)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・HpaIおよびEcoRI制限部位と余分な塩基のための領域(大文字)
BstZ17IupthrLR(配列番号41)
【化41】
・thrL領域の配列(87〜60)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・T7te転写ターミネーター配列のための領域(太字の大文字)(Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24.)
・BstZ17I、BamHI、SfoIおよびSmaI制限部位からなる多重クローニング部位のための領域(大文字)
BamHIdownthrCF(配列番号42)
【化42】
・thrC領域の配列(5021〜5049)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・T7te転写ターミネーター配列のための領域(太字の大文字)(Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24.)
・BstZ17I、BamHI、SfoIおよびSmaI制限部位からなる多重クローニング部位のための領域(大文字)
HpaIdownthrCR(配列番号43)
【化43】
・thrC領域の配列(6054〜6031)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・HpaIおよびEcoRI制限部位と余分な塩基のための領域(大文字)
を用い、ゲノムDNAからPCR増幅した。
【0120】
まず、「upthrL」および「downthrC」断片を、それぞれHpaIupthrLF/BstZ17IupthrLRおよびBamHIdownthrCF/HpaIdownthrCRオリゴヌクレオチドを用い、MG1655ゲノムDNAからPCR増幅した。次に、「upthrL−downthrC」断片を、HpaIupthrLF/HpaIdownthrCRオリゴヌクレオチドを用い、「upthrL」および「downthrC」PCR断片(T7Te転写ターミネーターとBstZ17I、BamHI、SfoIおよびSmaI制限部位からなる多重クローニング部位からなるオーバーラッピング領域を有する)から増幅した。「upthrL−downthrC」PCR断片を制限酵素HpaIで切断し、pUC18ベクターのEcoRI/SfoI部位にクローニングし、pUC18−DthrLABC::TT07−SMCプラスミドを得た。
【0121】
次に、クロラムフェニコール耐性カセットを、以下のオリゴヌクレオチド:
BstZ17CmF(配列番号44)
【化44】
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(小文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
・BstZ17I制限部位および余分な塩基のための領域(大文字)
BamHICmR(配列番号45)
【化45】
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(小文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
・BamHI制限部位および余分な塩基のための領域(大文字)
を用い、pKD3ベクターからPCR増幅した。
【0122】
PCR断片を制限酵素BstZ17IおよびBamHIで切断し、pUC18−ΔthrLABC::TT07−SMCプラスミドのBstZ17I/BamHI部位にクローニングし、pUC18−ΔthrLABC::TT07−SMC::Cmプラスミドを得た。
【0123】
最後に、Ptrc−thrA
*1対立遺伝子を、制限酵素SfoIおよびSmaIを用いてpSB1プラスミドから切断し、pUC18−ΔthrLABC::TT07−SMC::CmプラスミドのSfoI/SmaI部位にクローニングし、pUC18−ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::CmプラスミドまたはpSB2を得た。
【0124】
このpSB2プラスミドをEcoRI制限酵素で切断することにより、ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cm断片を得た後、エレクトロポレーションによりMG1655株に導入し(pKD46)、ここで発現したRedリコンビナーゼ酵素により相同組換えが可能となる。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドthrA
*1FおよびthrA
*1Rを用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cmと呼ぶ。
thrA
*1F(配列番号46):
【化46】
(thrL領域の配列(4638276〜4638297)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同)
thrA
*1R(配列番号47)
【化47】
thrC領域の配列(6345〜6325)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同)
組換えプラスミドをDNA配列決定により確認した。
【0125】
ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cmを移入するために、ファージP1形質導入を用いる。MG1655 ΔmetA DpykF::Km株への形質導入のために、MG1655 ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cm株のファージ溶解液の調製物を用いる。
【0126】
次に、カナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドthrA
*1FおよびthrA
*1Rを用いたPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔmetA ΔpykF::Km ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1::Cmと呼ぶ。
【0127】
その後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去することができる。次に、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入する。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットの欠損を、従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(metAF/metAR、pykF/pykFRおよびhrF/thrA
*1R)を用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔmetA ΔpykF ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1と呼ぶ。
【0128】
3.4 プラスミドpMA−aaoroの構築
アミノ酸オキシダーゼをコードするロドコッカス・オパカスaao遺伝子の合成遺伝子はGeneart (Germany)により作製された。この遺伝子のコドン使用およびGC含量は供給者のマトリックスに従って大腸菌に適合させた。この合成遺伝子の発現は構成的Ptrcプロモーターにより駆動した。この構築物を供給者のpMAベクターにクローニングし、配列決定により確認した。
Ptrc01−aaoro:
制限部位(KpnI、EcoRI、SmaI)(配列番号48):
【化48】
Ptrc01プロモーターおよびRBS(配列番号49):
【化49】
大腸菌(
AY053450.)に対して至適化されたaaoro遺伝子配列(配列番号50):
【化50】
制限部位(BgIII、EcoRV、PacI、SacI、XbaI、HindIII)(配列番号51):
【化51】
【0129】
3.5 MG1655 ΔmetA ΔpykF ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA*1(pME101−kivDll−yqhD−TT07)(pMA−aaoro)株の構築
次に、pME101−kivDll−yqhD−TT07およびpMA−aaoroプラスミドをMG1655 ΔmetA ΔpykF ΔthrLABC::TT07−Ptrc−thrA
*1株に導入する。
実施例4
1,4−ブタンジオール経路フラックスが増強された株:MG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA ΔgdhA(pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−prpE−TT02)(pME101−kivDll−yqhD−TT07)の構築
4.1 MG1655 ΔaceBAK ΔsucCD株の構築
【0130】
aceBAK遺伝子を欠失させるため、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能である。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔaceBAKF(配列番号52):
【化52】
・aceB領域の配列(4213531〜4213610)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔaceBAKR(配列番号53):
【化53】
・aceK領域の配列(4218298〜4218220)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0131】
オリゴヌクレオチドΔaceBAKFおよびΔaceBAKRを用いてプラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入する(pKD46)。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドaceB AKFおよびaceB AKRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔmetA::Kmと呼ぶ。
aceBAKF(配列番号54):
【化54】
(4213251〜4213274の配列と相同)
aceBAKR(配列番号55):
【化55】
(4218728〜4218702の配列と相同)
【0132】
sucCD遺伝子を欠失させるため、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能である。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔsucCDF(配列番号56):
【化56】
・sucC領域の配列(762268〜762347)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔsucCDR(配列番号57):
【化57】
・sucD領域の配列(764241〜764168)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0133】
オリゴヌクレオチドDsucCDFおよびDsucCDRを用いて、プラスミドpKD3からクロラムフェニコール耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入する(pKD46)。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドsucCDFおよびsucCDRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD::Cmと呼ぶ。
sucCDF(配列番号58):
【化58】
(761887〜761914の配列と相同)
sucCDR(配列番号59):
【化59】
(764555〜764527の配列と相同)
ΔaceBAK::Kmを移入するため、ファージP1形質導入の方法を用いる。MG1655 ΔsucCD::Cm株への形質導入のためにMG1655 DaceBAK::Km株のファージ溶解液の調製物を用いる。
【0134】
次にカナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、ΔaceBAK::Kmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドaceBAKFおよびaceBAKRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD::Cm ΔaceBAK::Km株と呼ぶ。
【0135】
その後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去することができる。次に、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入する。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットの欠損を、従前に用いたものと同じオリゴヌクレオチド(aceBAKF/aceBAKRおよびsucCDF/sucCDR)を用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD ΔaceBAKと呼ぶ。
【0136】
4.2 MG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA ΔgdhA株の構築
arcA遺伝子を欠失させるため、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能である。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔarcAF(配列番号60):
【化60】
・arcA領域の配列(4638322〜4638245)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔarcAR(配列番号61):
【化61】
・arcA領域の配列(4637621〜4637699)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0137】
オリゴヌクレオチドDarcAFおよびDare ARを用いてプラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入する(pKD46)。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドarcAFおよびarcARを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔarcA::Kmと呼ぶ。
arcAF(配列番号62):
【化62】
(4638746〜4638727の配列と相同)
arcAR(配列番号63):
【化63】
(4637308〜4637328の配列と相同)
ΔarcA::Kmを移入するため、ファージP1形質導入を用いる。MG1655 ΔsucCD ΔaceBAK株への形質導入のためにMG1655 DarcA::Km株のファージ溶解液を用いる。
【0138】
次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、ΔarcA::Kmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドarcAFおよびarcARを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA::Kmと呼ぶ。
gdhA遺伝子を欠失させるため、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。オリゴヌクレオチドΔgdhAFおよびΔgdhARを用いてプラスミドpKD3からクロラムフェニコール耐性カセットを増幅する。
ΔgdhAF(配列番号64):
【化64】
・遺伝子gdhAの上流配列(1840348〜1840397)(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔgdhAR(配列番号65):
【化65】
・gdhA遺伝子の末端および下流領域の配列(1841767〜1841718)(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(太字の大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655(pKD46)株に導入する。次にクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、オリゴヌクレオチドPtrc−gdhAverFおよびgdhA Rを用いるPCR分析により確認する。
Ptrc−gdhAverF(配列番号66):
【化66】
・gdhA遺伝子の上流領域の配列(1840168〜1840188)(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域
gdhA R(配列番号67):
【化67】
・gdhA遺伝子の下流領域の配列(1842274〜1842293)(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域
【0139】
得られた株をMG1655 ΔgdhA::Cmと呼んだ。
ΔgdhA::Cmを移入するために、ファージP1形質導入を用いる。MG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA::Km株への形質導入のためにMG1655 ΔgdhA::Cm株のファージ溶解液を用いる。
【0140】
次にカナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、ΔgdhA::Cmを、従前に定義されたオリゴヌクレオチドPtrc−gdhAverFおよびgdhA Rを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA::Km ΔgdhA::Cmと呼ぶ。
【0141】
その後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去することができる。次にカナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位に作用するFLPリコンビナーゼを有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションにより組換え部位に導入する。42℃で一連の培養を行った後、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットの欠損を、従前に用いたもの同じオリゴヌクレオチド(aceBAKF/aceBAKR、sucCDF/sucCDR、arcAF/arcAR、およびgdhAverF/gdhA R)を用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA ΔgdhAと呼ぶ。
【0142】
4.3 クロストリジウム・アセトブチリカムの二官能性アセトアルデヒド−CoA/アルコールデヒドロゲナーゼadhE2および大腸菌のプロピオニル−CoAシンセターゼprpE遺伝子の過剰発現のためのプラスミド:pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−prpE−TT02の構築
二官能性アセトアルデヒド−CoA/アルコールデヒドロゲナーゼをコードするクロストリジウム・アセトブチリカム由来のadhE2遺伝子をプラスミドpUC19にクローニングした。プロピオニル−CoAシンセターゼをコードするprpE遺伝子をadhE2の上流にクローニングした。オリゴヌクレオチドadhE2Ca FおよびadhE2Ca Rを用い、adhE2遺伝子をクロストリジウム・アセトブチリカムATCC824株のメガプラスミドpSol1からPCR増幅した(33722〜36298番)。
adhE2Ca F(配列番号68):
【化68】
・KpnI、BamHI、ApaI制限部位の付加のための領域(太字の小文字)
・プロモーターPtrc01の付加のための領域(下線の小文字)
・オペレーター配列OP01の付加のための領域(斜体の小文字)
・SnaBI制限部位の付加のための領域(太字の大文字)
・RBS01配列の付加のための領域(小文字)
・C.アセトブチリカムadhE2領域33722〜33752と相同な領域(下線の大文字)
adhE2Ca R(配列番号69):
【化69】
・HindIII、SacI制限部位の付加のための領域(大文字)
・ターミネーターTT02の付加のための領域(下線太字の小文字)
・PacI、XbaI、NheI、AvrII制限部位の付加のための領域(斜体文字)
・C.アセトブチリカムadhE2領域36264〜36298と相同な領域(下線の大文字)
【0143】
このPCR断片をBamHIおよびHindIIIで消化し、同じ制限酵素で消化したベクターpUC19にクローニングした。得られたプラスミドをpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−TT02と呼んだ。
prpE遺伝子を増幅するために、鋳型としての大腸菌の染色体DNAとプライマーprpE FおよびprpE Rを用いてPCRを行う。
prep F(配列番号70):
【化70】
・制限部位XbaIおよびBamHIの付加のための領域(太字下線の文字)
・351910〜351932の領域(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域(小文字)
prep R(配列番号71):
【化71】
・制限部位BamHI、NheI、AvrII、SnaBIIの付加のための領域(太字下線の文字)
・353816〜353797の領域(http://www.ecogene.org/blast.php)と相同な領域(小文字)
【0144】
このPCR断片をXbaIおよびNheIで消化し、同じ制限酵素で消化したベクターpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−TT02にクローニングした。得られたプラスミドをpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−prpE−TT02と呼んだ。
【0145】
4.4 MG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA ΔgdhA(pUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−prpE−TT02)(pME101−kivDll−yqhD−TT07)株の構築
次にpUC19−Ptrc01/OP01/RBS01−adhE2ca−prpE−TT02およびpME101−kivDll−yqhD−TT07プラスミドをMG1655 ΔsucCD ΔaceBAK ΔarcA ΔgdhA株に導入する。
実施例5
エルレンマイヤーフラスコにおけるエチレングリコール生産株の発酵
【0146】
500mlバッフル付きエルレンマイヤーフラスコ培養にて、10g/lのMOPSおよび10g/lのグルコースを添加し、pH6.8に調整した改変M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)を用い、株の性能を評価した。必要であればスペクチノマイシンを50mg/l濃度で加え、かつ/または必要であればクロラムフェニコールを30mg/l濃度で加えた。24時間前培養物を用い、50ml培養系にOD600nmが約0.3となるように接種した。培養物をシェーカー上、37℃、200rpmで、培養培地中のグルコースが消費されるまで維持した。培養の終了時に、グルコースおよび主要な生成物を、分離にBiorad HPX 97Hカラムを、検出に屈折計を用い、HPLCにより分析した。エチレングリコールの生産を、Hewlett Packard 5973シリーズマスセレクティブデテクター(EI)およびHP−INNOWaxカラム(25m長、内径0.20mm、フィルム厚0.20ミクロン)と組み合わせたHewlett Packard 6890シリーズガスクロマトグラフを用いたガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)により確認した。生成したエチレングリコールの保持時間および質量スペクトルをエチレングリコール標品と比較した。生産株と対照株の性能の比較を下表に示す(生産株の構築については下記参照)
【0147】
【表1】
【0148】
実施例6
エチレングリコール経路フラックスが増強された株:MG1655 ΔpykF(pME101−kivDll−yqhD−yeaB−TTOT)(pCC1BAC−serA)の構築
6.1 乳酸連鎖球菌のヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼkivD、大腸菌のヒドロキシアルデヒドレダクターゼyqhDおよびホスホヒドロキシピルビン酸ホスファターゼyeaB遺伝子の過剰発現のためのプラスミド:pME101−kivDll−yqhD−yeaB−TT07プラスミドの構築
yeaB含有断片をXbaIおよびBglIIで制限酵素処理し、同じ制限酵素で処理したベクターpME101−kivDll−yqhDにクローニングし、得られたプラスミドをpME101−kivDll−yqhO−yeaB−TT07と呼んだ。
yeaB遺伝子を、オリゴヌクレオチドyeaB FおよびyeaB Rを用い、大腸菌MG1655株のゲノムDNAからPCR増幅した。
yeaB F(配列番号72)
【化72】
・BstZ17I、EcoRIおよびBglII制限部位の付加のための領域(斜体太字の大文字)
・リボソーム結合部位の付加のための領域(下線の小文字)
・大腸菌MG1655 yeaB領域1894195〜1894215(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
yeaB R(配列番号73)
【化73】
・大腸菌MG1655 yeaB領域1894772〜1894745(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(太字の大文字)
・ターミネーター配列T7Te(Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24参照)と相同な領域(下線の大文字)
・PsiI、PvuII、XbaI、BstZ17I、XmnI、PacI、SacIおよびAvrII制限部位の付加のための領域(斜体の大文字)
【0149】
PCR増幅した断片を制限酵素XbaIおよびBglIIで切断し、ベクターpME101−kivDll−yqhD−TT07のXbaI−BglII部位にクローニングし、ベクターpME101−kivDll−yqhD−yeaB−TT07を得た。
【0150】
6.2 大腸菌のホスホグリセル酸デヒドロゲナーゼserAの過剰発現のためのプラスミド:pCC1BAC−serAプラスミドの構築
serA遺伝子の発現を増強するために、この遺伝子を、その適切なプロモーターを用い、コピーコントロールベクターpCC1BAC(Epicentre)から発現させた。
このため、serA遺伝子を、オリゴヌクレオチドserA FおよびserA Rを用い、大腸菌ゲノムから増幅した。PCR産物を酵素XbaIおよびSmaIを用いて制限酵素処理し、同じ制限酵素で処理したベクターpUC18(Stratagene)にクローニングした。得られたベクターをpUC18−serAと呼んだ。
serA F(配列番号74):
【化74】
・遺伝子serAの配列(3055199〜3055220)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・XbaI部位を担持する領域(太字の文字)
serA R(配列番号75):
【化75】
・遺伝子serA領域の配列(3056880〜3056861)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・SmaIおよびHindIII部位を担持する領域(太字の文字)
遺伝子serAをコピーコントロールベクターpCC1BACに移入するため、ベクターpUC18−serAを酵素HindIIIで制限酵素処理し、HindIIIクローニングレディーpCC1BAC(Epicentre)にクローニングした。
得られた構築物を確認し、pCC1BAC−serAと呼んだ。
【0151】
6.3 MG1655 ΔpykF(pME101−kivDll−yqhD−yeaB−TT07)(pCC1BAC−serA)株の構築
MG1655 ΔpykF株の構築は従前に詳説されている(パート2.2)。次にpCC1BAC−serAプラスミドおよびpME101−kivDll−yqhD−yeaB−TT07プラスミドをMG1655 ΔpykF株に導入した。
【0152】
実施例7
乳酸連鎖球菌の遺伝子kivDによりコードされているヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼ活性の証明
7.1 KivDの特性決定のための株:BL21(pPAL7−kivDll)の構築
KivDタンパク質の特性決定を行うため、対応する遺伝子を発現ベクターpPAL7(Bio-rad)から発現させた。
このために、kivD遺伝子を、オリゴヌクレオチドpPAL7−kivDll FおよびpPAL7−kivDll Rを用い、乳酸連鎖球菌ゲノムから増幅した。PCR産物を酵素HindIIIおよびEcoRIを用いて制限酵素処理し、同じ制限酵素で処理したベクターpPAL7にクローニングした。得られたベクターをpPAL7−kivDllと呼んだ。
pPAL7−kivDll F(配列番号76):
【化76】
・乳酸連鎖球菌kivD遺伝子の合成遺伝子の配列と相同な領域(斜体の文字)
・精製に好都合とするために短いN末端アミノ酸延長部を含むタグ無しタンパク質を生じるのに必要なヌクレオチドを担持する領域(太字の文字)
・HindIII制限部位を担持する領域(下線の文字)
pPAL7−kivDll R(配列番号77):
【化77】
・乳酸連鎖球菌kivD遺伝子の合成遺伝子の配列と相同な領域(斜体の文字)
・EcoRI制限部位を担持する領域(下線の文字)
次にpPAL7−kivDllプラスミドをBL21(DE3)コンピテント細胞株(Invitrogen)に導入した。
【0153】
7.2 タンパク質KivDの過剰生産
タンパク質KivDの過剰生産を、2lエルレンマイヤーフラスコにて、2.5g/lのグルコースおよび100mg/lのアンピシリンを添加したLB培養液(Bertani, 1951, J. Bacteriol. 62:293-300)を用いて行った。一晩前培養物を用い、500ml培養系にOD
600nmが約0.15となるように接種した。この前培養は、2.5g/lのグルコースおよび100mg/lのアンピシリンを添加したLB培養液50mlを入れた500mlエルレンマイヤーフラスコで行った。培養をまずシェーカー上、37℃、200rpmでOD
600nmが約0.5となるまで維持し、その後、培養物を25℃、200rpmの第二のシェーカーにOD
600nmが0.6〜0.8となるまで(約1時間)移した後、500μMのIPTGで誘導を行った。培養を25℃、200rpmで、OD
600nmが4前後となるまで維持した後に止めた。細胞を4℃にて7000rpmで5分遠心分離した後、−20℃で保存した。
【0154】
7.3 タンパク質KivDの精製
7.3.1 工程1:細胞不含抽出物の調製
約188mgの大腸菌バイオマスを30mlの100mMリン酸カリウムpH7.6およびプロテアーゼ阻害剤カクテルに懸濁させた。この細胞懸濁液(15ml/コニカル試験管)を50mlコニカル試験管中、氷上で、30秒間隔で30秒8回音波処理した(Bandelin sonoplus、70W)。音波処理後、細胞を室温で30分、5mM MgCl2および1UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。4℃、12000gで30分の遠心分離により細胞残渣を除去した。
【0155】
7.3.2 工程2:アフィニティー精製
生産者が推奨するプロトコールに従い、Profinityカラム(BIORAD、Bio−Scale Mini Profinity exactカートリッジ5ml)での親和性により、粗細胞抽出物からタンパク質を精製した。粗抽出物を100mMリン酸カリウムpH7.6で平衡化した5ml Profinity exactカートリッジにのせた。このカラムを10カラム容量の同じバッファーで洗浄し、4℃にて、100mMリン酸カリウムpH7.6、100mMフッ化物とともに一晩インキュベートした。2カラム容量の100mMリン酸カリウムpH7.6で、カラムからタンパク質を溶出させた。タグは樹脂に強く結合したままで、精製タンパク質が遊離した。タンパク質を含有する画分をプールし、100mMリン酸カリウム、150mM NaClおよび10%グリセロールpH8に対して透析した。タンパク質濃度を、ブラッドフォールドタンパク質アッセイを用いて測定した。
【0156】
7.4 ヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼアッセイ
7.4.1 5−ヒドロキシ−2−ケトペンタン酸の化学合成
5−ヒドロキシ−2−ケトペンタン酸の化学合成は刊行物:Friedhelm Korte, Karl Heinz Buchel, α-Hydroxyalkyliden-lacton-Umlagerung, X. α-Hydroxyalkyliden-lacton-Umlagerung in waβriger Salzsaure Chemische Berichte, Volume 92 Issue 4, Pages 877-883 (1959)に記載されている。
【0157】
7.4.2 4−ヒドロキシ−2−ケト酪酸の化学合成
4−ヒドロキシ−2−ケト酪酸の化学合成は刊行物:R S Lane; EE Dekker; (1969).2-keto-4-hydroxybutyrate. Synthesis, chemical properties, and as a substrate for lactate dehydrogenase of rabbit muscle Biochemistry., 8(7), 2958-2966に記載されている。
【0158】
7.4.3 ヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼアッセイ
ヒドロキシケト酸の脱炭酸は、結合酵素アッセイを用いて30℃で測定した。ヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼ活性アッセイは、総容量1ml中、50mMリン酸カリウムバッファーpH6、0.2mM NADH、1mM MgSO4、0.5mMチアミン二リン酸、72単位/mlのサッカロミセス・セレビシエ由来アルコールデヒドロゲナーゼ、10mMの中和ヒドロキシケト酸(ヒドロキシピルビン酸または4−ヒドロキシ−2−ケト酪酸または5−ヒドロキシ−2−ケトペンタン酸)および約40μgの精製タンパク質を用いて行った。分光光度計にて340nmでNADHの消費をモニタリングした。基質を欠いた対照アッセイにおいて検出された活性を、基質を含むアッセイにおいて検出された活性から差し引いた。1単位のヒドロキシケト酸デカルボキシラーゼ活性は、30℃で1分間に1μmolのヒドロキシケト酸の脱炭酸を触媒するのに必要な酵素量である(ε340nm=6290M−1cm−1)。
【0159】
7.5 精製酵素の活性
【表2】
【0160】
実施例8
大腸菌の遺伝子yqhDによりコードされているヒドロキシアルデヒドレダクターゼ活性の証明
8.1 YqhDの特性決定のための株:MG1655 ΔpykF::Km(pTRC99A−yqhD)の構築
8.1.1 MG1655 ΔyqhD::Km株の構築
yqhD遺伝子を欠失させるために、Datsenko & Wanner (2000)により記載されている相同組換え法を用いた。この方法により、関与する遺伝子の大部分を欠失させるとともにクロラムフェニコールまたはカナマイシン耐性カセットの挿入が可能である。このために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
ΔyqhDF(配列番号78)
【化78】
・yqhD領域の配列(3153377〜3153456)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(小文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
ΔyqhDR(配列番号79)
【化79】
・yqhD領域の配列(3154540〜3154460)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(大文字)
・カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)
【0161】
オリゴヌクレオチドΔyqhDFおよびΔyqhDRを用い、プラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅する。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションによりMG1655株に導入する(pKD46)。次にカナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドyqhDFおよびyqhDRを用いるPCR分析により確認する。保有株をMG1655 ΔyqhD::Kmと呼ぶ。
yqhDF(配列番号80):
【化80】
(3153068〜3153100の配列と相同)
yqhDR(配列番号81):
【化81】
(3154825〜3154797の配列と相同)
【0162】
8.1.2 プラスミドpTRC99A−yqhDの構築
YqhDタンパク質の特性決定を行うために、対応する遺伝子をベクターpTRC99A(Amersham)から発現させた。このために、yqhD遺伝子を、オリゴヌクレオチドyqhD F pTRC99A FおよびyqhD R pTRC99A Rを用い、大腸菌ゲノムから増幅した。PCR産物を、酵素HindIIIおよびBspHIを用いて制限酵素処理し、NcoI−HindIII制限酵素で処理したベクターpTRC99Aにクローニングした。得られたベクターをpTRC99A−yqhDと呼んだ。
yqhD F pTRC99A F(配列番号82):
【化82】
・遺伝子yqhDの配列(3153377〜3153408)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(下線の文字)
・BspHI制限部位(太字の文字)
yqhD R pTRC99A R(配列番号83):
【化83】
・遺伝子yqhDの配列(3154540〜3154483)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(下線の文字)
・HindIII制限部位(太字の文字)
次にpTRC99A−yqhDプラスミドをMG1655 ΔyqhD::Km株に導入した。
【0163】
8.2 タンパク質YqhDの過剰生産
タンパク質YqhDを37℃、好気性条件下、2.5g/lのグルコースおよび50mg/lのアンピシリンおよび50mg/lのカナマイシンを含む500ml LB培地の入った2lバッフル付きエルレンマイヤーフラスコで過剰産生した。これらのフラスコをオービタルシェーカーにて200rpmで振盪した。550nmで測定した光学密度が0.5単位に達した際に、フラスコを25でインキュベートした。光学密度が1.2単位に達した際に、IPTGを終濃度500μMとなるように加えることによりYqhDタンパク質の生産を誘導した。培養物が3.5単位を超える光学密度に達した際に遠心分離によりバイオマスを採取した。上清を廃棄し、ペレットを−20℃で保存した。
【0164】
8.3 タンパク質YqhDの精製
8.3.1 工程1:細胞不含抽出物の調製
400mgの大腸菌バイオマスを70mlの50mM Hepes pH7.5およびプロテアーゼ阻害剤カクテルに懸濁させた。細胞をRosettセルRZ3中、氷上で、30秒間隔で30秒8回音波処理した。音波処理後、細胞を室温で1時間、1mM MgCl2および1UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。4℃、12000gで30分の遠心分離により細胞残渣を除去した。上清を粗抽出物として維持した。
【0165】
8.3.2 工程2:硫酸アンモニウム沈殿
粗抽出物を50%濃度の硫酸アンモニウムで沈殿させ、固体の硫酸アンモニウム(300g/l)を氷上で粗抽出物に加えた。4℃で15分のインキュベーションの後、混合物を4℃、12000gにて15分遠心分離した。上清を廃棄し、沈殿を50mlの50mM Hepes pH7.5、1 M硫酸アンモニウムに溶解させた。
8.3.3 工程3:疎水性クロマトグラフィー
【0166】
Akta Purifier(GE Healthcare)を用い、前工程からのタンパク質抽出物を、同じバッファーで平衡化した5ml HiTrap PhenylHPカラム(GE Healthcare)にのせた。カラムを10カラム容量の同じバッファーで洗浄した。タンパク質を、1Mから0.5Mへの10カラム容量の硫酸アンモニウム勾配と0.5Mから0Mへの20カラム容量の硫酸アンモニウム勾配の2段階の勾配で溶出させた。溶出後、カラムを10カラム容量の50mM Hepes pH 7.5で洗浄した。カラムの流速は2.5ml/分とし、2.5ml画分を回収した。タンパク質を含有する画分をプールし、50mM Hepes pH7.5で透析し、1.14μg/μlの濃度まで濃縮した。
【0167】
8.4 ヒドロキシアルデヒドレダクターゼアッセイ
8.4.1 4−ヒドロキシブチルアルデヒドの化学合成
4−ヒドロキシブチルアルデヒドの化学合成は刊行物:N°158 Transposition des dihydro-2.5 furannes en dihydro-2.3 furannes. - Application a la preparation de l'hydroxy-4 butanal; par R. PAUL, M. FLUCHAIRE et G. GOLLARDEAU.
Bulletin de la Societe Chimique de France, 668-671, 1950に記載されている。
【0168】
8.4.2 グリコールアルデヒドおよび4−ヒドロキシブチルアルデヒドレダクターゼアッセイ
グリコールアルデヒドおよび4−ヒドロキシブチルアルデヒドレダクターゼ活性は、分光光度計にて波長340nmおよび30℃の一定温度でNADPH酸化の初速を測定することによりアッセイした。グリコールアルデヒドまたは4−ヒドロキシブチルアルデヒドを基質として用いた反応混合物は、20mM Hepes pH7.5、0.1mM硫酸亜鉛、0.2mM NADPH、2μgの精製酵素を最終容量1mlで実施した。反応混合物を30℃で5分インキュベートした後、基質(グリコールアルデヒドまたは4−ヒドロキシブチルアルデヒド)を終濃度10mMで加えることにより反応を開始させた。基質を欠いた対照アッセイ(ブランク)を並行して測定し、NADPHの非特異的酸化(ε340nm=6290M−1cm−1)を考慮に入れるため、対照に対して測定された値をアッセイに対して測定された値から差し引いた。1単位の酵素活性は、このアッセイ条件下で1分間に1μmolの基質を消費した酵素の量と定義した。特異的酵素活性はタンパク質1mg当たりの単位として表した。
【0169】
8.4.3 3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドレダクターゼ活性アッセイ
基質3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)に対するYqhDの活性は刊行物:Hongmei Li; Jia Chen; Hao Li; Yinghua Li; Ying Li; (2008). Enhanced activity of yqhD oxidoreductase in synthesis of 1,3-propanediol by error-prone PCR Prog Nat Sci., 18 (12), 1519-1524に記載されている。これらの筆者は3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドレダクターゼアッセイに5mM塩化亜鉛、1mM EDTAおよび1mM β−メルカプトエタノールを使用した。
【0170】
8.5 精製酵素の活性
【表3】
【0171】
実施例9
大腸菌の遺伝子serCによりコードされているL−セリントランスアミナーゼ活性の証明
9.1 SerCの特性決定のための株:BL21(pPAL7−serC)株の構築
SerCタンパク質の特性決定を行うため、対応する遺伝子を発現ベクターpPAL7(Bio-rad)から発現させた。
このために、serC遺伝子を、オリゴヌクレオチドpPAL7−serC FおよびpPAL7−serC Rを用い、大腸菌ゲノムから増幅した。PCR産物を、酵素HindIIIおよびEcoRIを用いて制限酵素処理し、同じ制限酵素で処理したベクターpPAL7にクローニングした。得られたベクターをpPAL7−serCと呼んだ。
pPAL7−serC F(配列番号84):
【化84】
・遺伝子serCの配列(956876〜956904)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(太字の文字)
・HindIII制限部位を担持する領域(下線の文字)
pPAL7−serC R(配列番号85):
【化85】
・遺伝子serC領域の配列(957964〜957937)(ウェブサイトhttp://www.ecogene.org/に参照配列)と相同な領域(太字の文字)
・EcoRI制限部位を担持する領域(下線の文字)
次にpPAL7−serCプラスミドをコンピテントBL21(DE3)細胞(Invitrogen)に導入した。
【0172】
9.2 タンパク質SerCの過剰生産
実施例7.2と同じプロトコールを適用し、タンパク質SerCの過剰生産を行った。
【0173】
9.3 タンパク質SerCの精製
9.3.1 工程1:細胞不含抽出物の調製
約280mgの大腸菌バイオマスを45mlの100mMリン酸カリウムpH7.6およびプロテアーゼ阻害剤カクテルに懸濁させた。細胞懸濁液(15ml/コニカル試験管)を50mlコニカル試験管中、氷上で、30秒間隔で30秒8回音波処理した(Bandelin sonoplus、70W)。音波処理後、細胞を室温で30分、5mM MgCl2および1UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。4℃、12000gで30分の遠心分離により細胞残渣を除去した。
【0174】
9.3.2 工程2:アフィニティー精製
製造者が推奨するプロトコールに従い、Profinityカラム(BIORAD、Bio−Scale Mini Profinity exactカートリッジ5ml)での親和性により、粗細胞抽出物からタンパク質を精製した。粗抽出物を100mMリン酸カリウムpH7.6で平衡化した5ml Profinity exactカートリッジにのせた。このカラムを10カラム容量の同じバッファーで洗浄し、室温にて、100mMリン酸カリウムpH7.6、100mMフッ化物とともに30分インキュベートした。2カラム容量の100mMリン酸カリウムpH7.6で、カラムからタンパク質を溶出させた。タグは樹脂に強く結合したままで、精製タンパク質が遊離した。タンパク質を含有する画分をプールし、100mM Tris HCl、150mM NaClおよび10%グリセロールpH8に対して透析した。タンパク質濃度を、ブラッドフォールドタンパク質アッセイを用いて測定した。
【0175】
9.4 L−セリントランスアミナーゼ活性アッセイ
L−セリントランスアミナーゼ活性アッセイのため、約30μgの精製酵素を、総容量300μl中、50mM Tris−HClバッファーpH8.2、3mM L−セリン、1mM α−ケトグルタル酸を含有するバッファーに加えた。この反応物を30℃で60分インキュベートした。反応生成物(ヒドロキシピルビン酸)をLC−MS/MSにより直接測定した。
【0176】
9.5 精製酵素の活性
【表4】
【0177】
実施例10
サッカロミセス・セレビシエの遺伝子GPP2によりコードされている3−ホスホヒドロキシピルビン酸ホスファターゼ活性の証明
10.1 GPP2scの特性決定のための株:BL21(pFAL7−gpp2sc)の構築
GPPタンパク質の特性決定を行うため、対応する遺伝子を発現ベクターpPAL7(Bio-rad)から発現させた。
このために、gpp遺伝子を、オリゴヌクレオチドpPAL7−gpp2sc FおよびpPAL7−gpp2sc Rを用い、サッカロミセス・セレビシエゲノムから増幅した。PCR産物を、酵素HindIIIおよびBamHIを用いて制限酵素処理し、同じ制限酵素により処理したベクターpPAL7にクローニングした。得られたベクターをpPAL7−gpp2scと呼んだ。
pPAL7−gpp2sc F(配列番号86):
【化86】
・遺伝子gpp2領域の配列(280680〜280655)(ウェブサイトhttp://www.yeastgenome.org/に参照配列)と相同な領域(太字の文字)
・HindIII制限部位を担持する領域(下線の文字)
pPAL7−kivDll R(配列番号87):
【化87】
・遺伝子gpp2領域の配列(279928〜279954)(ウェブサイトhttp://www.yeastgenome.org/に参照配列)と相同な領域(太字の文字)
・BamHI制限部位を担持する領域(下線の文字)
次にpPAL7−gpp2scプラスミドをコンピテントBL21(DE3)細胞(Invitrogen)に導入する。
【0178】
10.2 タンパク質GPP2scの過剰生産
実施例7.2と同じプロトコールを適用し、タンパク質GPP2scの過剰生産を行った。
【0179】
10.3 タンパク質GPP2scの精製
10.3.1 工程1:細胞不含抽出物の調製
約294mgの大腸菌バイオマスを45mlの100mMリン酸カリウムpH7.6およびプロテアーゼ阻害剤カクテルに懸濁した。細胞懸濁液(15ml/コニカル試験管)を50mlコニカル試験管中、氷上で、30秒間隔で30秒8回音波処理した(Bandelin sonoplus、70W)。音波処理後、細胞を室温で30分、5mM MgCl2および1UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。4℃、12000gで30分の遠心分離により細胞残渣を除去した。
【0180】
10.3.2 工程2:アフィニティー精製
製造者が推奨するプロトコールに従い、Profinityカラム(BIORAD、Bio−Scale Mini Profinity exactカートリッジ5ml)での親和性により、粗細胞抽出物からタンパク質を精製した。粗抽出物を100mMリン酸カリウムpH7.6で平衡化した5ml Profinity exactカートリッジにのせた。このカラムを10カラム容量の同じバッファーで洗浄し、室温にて、100mMリン酸カリウムpH7.6、100mMフッ化物とともに一晩インキュベートした。2カラム容量の100mMリン酸カリウムpH7.6で、カラムからタンパク質を溶出させた。タグは樹脂に強く結合したままで、精製タンパク質が遊離した。タンパク質を含有する画分をプールし、100mMリン酸カリウム、150mM NaClおよび10%グリセロールpH8に対して透析し、0.22μg/μlの濃度まで濃縮した。
タンパク質濃度を、ブラッドフォールドタンパク質アッセイを用いて測定した。
【0181】
10.4 3−ホスホヒドロキシピルビン酸ホスファターゼ活性アッセイ
10.4.1 3−ホスホヒドロキシピルビン酸の化学合成
3−ホスホヒドロキシピルビン酸の化学合成は刊行物:CE Ballou; H Hesse; R Hesse; (1956).The Synthesis and Properties of Hydroxypyruvic Acid Phosphate J Am Chem Soc, 78 (15), 3718-3720に記載されている。
10.4.2 3−ホスホヒドロキシピルビン酸ホスファターゼ活性アッセイ
【0182】
総容量300μl中、3−ホスホヒドロキシピルビン酸ホスファターゼ活性アッセイは、50mM Tris−HClバッファーpH8.2、5mM MgCl
2、3.6mM 3−ホスホヒドロキシピルビン酸および約6μgの精製酵素(Gpp)を用いて行った。反応物を30℃で120分インキュベートした。反応生成物(ヒドロキシピルビン酸)をLC−MS/MSにより直接測定した。
【0183】
10.5 精製酵素の活性
【表5】
【0184】
実施例11
エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオール生産の最大収量のシミュレーション
11.1 シミュレーションに用いるパラメーター
シミュレーションは、本発明者らのMETEX専売ソフトウエアMETOPT(商標)を用いて行った。中枢代謝ネットワーク、あらゆるバイオマス前駆体の代謝経路および上記のような特定の生産経路を含む、大腸菌の簡略化された代謝ネットワークを用いた。大腸菌で慣例のバイオマス組成を用いた。各特異的ジオールにつき2つのシミュレーションを行った。第一のシミュレーションは理論的最大収量を計算するものであり(増殖も維持エネルギーも考えずにモデルの化学量論だけを考慮する)、第二のシミュレーションは、増殖速度0.1h
−1および維持エネルギー5mmol
ATP・gDW−1h
−1を考慮して実際の最大収量を計算するものである。シミュレーションは総て、グルコースの特異的取り込み率3mmol・gDW
−1h
−1で行った。エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールに関しては、好気性条件でシミュレーションを行った。特に1,4−ブタンジオールでは、好気性条件と嫌気性条件の双方でシミュレーションを行った。嫌気性条件では、増殖速度は0.1h
−1とすることができなかった。増殖速度は利用可能なATPに応じて達成可能な最大増殖速度である。
11.2 シミュレーション結果
【0185】
【表6】