特許第5774509号(P5774509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774509
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20150820BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G03G15/01 Y
   G03G21/14
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-14087(P2012-14087)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-168521(P2012-168521A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】13/025,646
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・クルシンスキ
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ピー・マンデル
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−117312(JP,A)
【文献】 特開2006−309106(JP,A)
【文献】 特開2011−18042(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0008077(US,A1)
【文献】 特開2006−47990(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0002745(US,A1)
【文献】 特開2000−250280(JP,A)
【文献】 米国特許第6188418(US,B1)
【文献】 特開2001−228675(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0059041(US,A1)
【文献】 特開2007−79013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 21/14
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ベルト印刷システムであって、
第1および第2の印刷ステーションであって、画像パネルを有する周回中間転写ベルトと、画像パネル上にマーキング材料を配置する構成とされたマーキングユニットと、マーキング材料を画像パネルから基質媒体に転写する転写点とをそれぞれ含む前記印刷ステーションと、
その上に基質媒体を支持するよう適合させた複数の媒体パネルを有する周回媒体移送ベルトであって、各転写点を通って媒体パネルを移送し、画像パネルから基質媒体へのマーキング材料の転写を促進するよう構成され、第1と第2の印刷ステーションの画像パネルは画像パネルに関連する転写点において媒体パネルのうちの少なくとも1枚に周期的に合致し、パネル複合体を形成する媒体移送ベルトと、
第1と第2の印刷ステーションのうちの少なくとも1つのマーキングユニットを制御し、各パネル複合体ごとに個別にマーキング材料の位置を調整し、各パネル複合体に関連する複合見当合わせ誤差を補償するコントローラとを備え
少なくとも1つのテストパターンを各パネル複合体について印刷して各パネル複合体に対応する複合見当合わせ誤差を検出し、画像位置補正因子群を各パネル複合体ごとに印刷される該少なくとも1つのテストパターンに基づき生成し、該画像位置補正因子群が各パネル複合体ごとの少なくとも1つの画像補正因子を含み、ここでコントローラはパネル複合体ごとの画像位置補正因子群を適用してマーキングユニットを制御し、マーキング材料の位置を調整する、印刷システム。
【請求項2】
前記印刷システムは多色刷り印刷システムであり、第1の印刷ステーションのマーキングユニットが第1のカラーマーキング材料を配置し、第2の印刷ステーションのマーキングユニットが第2のカラーマーキング材料を配置し、複合見当合わせ誤差は、媒体移送ベルトと第1の印刷ステーションに関連する中間転写ベルトと第2の印刷ステーションに関連する中間転写ベルトのうちの少なくとも1つに関連する周期的なベルト揺れ誤差に起因して基質媒体上の第2のカラーマーキング材料に対する第1のカラーマーキング材料のミスアライメントから帰着する色重ね見当合わせ誤差である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各パネル複合体は、第1の印刷ステーションからの画像パネルのうちの1枚と、第2の印刷ステーションからの画像パネルのうちの1枚と、媒体移送ベルトからの媒体パネルのうちの1枚とを含み、第1の印刷ステーションからの画像パネルは、第1の印刷ステーションの転写点において媒体パネルのうちの1枚に周期的に合致し、第2の印刷ステーションからの画像パネルは、第2の印刷ステーションの転写点において媒体パネルのうちの1枚に周期的に合致する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記パネル複合体のうちの第1の複合体に関連する前記複合見当合わせ誤差のうちの第1の誤差は、媒体パネルのうちの第1の1枚と、第1の印刷ステーションからの画像パネルのうちの第1の1枚と、第2の印刷ステーションからの画像パネルのうちの第1の1枚とに関連するミスアライメントを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複合見当合わせ誤差のうちの第1の誤差は、媒体移送ベルトと各中間転写ベルトの複数の周回に基づき算出される平均的な複合見当合わせ誤差に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、第1と第2の印刷ステーションそれぞれからの画像パネルについての媒体パネルの最小公倍数に基づきパネル複合体の量を特定し、かつ該コントローラは、前記最小公倍数に基づいて画像位置補正因子群を生成する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示実施形態は、色重ね見当合わせ誤差から印刷欠陥を打ち消す印刷システムの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムは、印刷プロセス期間中に画像および/または基質媒体を搬送して移送するベルトを用いることができる。例えば、印刷システムにはこの印刷システムの印刷部を介して基質媒体を移送する媒体移送ベルトを含めることができ、かつ/または基質媒体に画像を転写する前にその上に画像を形成することができる中間転写ベルトを含めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多色刷り印刷システムでは、印刷プロセス期間中に用いるベルトの非理想的な動きから色重ね見当合わせ誤差を招来することがある。例えば、ベルトはローラ周りに周回する際に遷移しあるいは脇に逸れ、ベルトをその予想位置あるいは経路から逸脱させることがある。これらの周期的ベルト揺れ誤差はベルトがローラ周りに周回する際に変化し、ベルトの異なる箇所に異なるベルト揺れ誤差が生じることがある。色重ね見当合わせ誤差は、印刷システムの印刷品質を落とす印刷欠陥として顕在化することがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願明細書に例示する態様によれば、第1と第2の印刷ステーションと周回媒体移送ベルトとコントローラとを含む複数ベルト印刷システムが提供される。第1と第2の印刷ステーションはそれぞれ、画像パネルを有する周回中間転写ベルトと、マーキング材料を画像パネル上に配置する構成としたマーキングユニットと、画像パネルから基質媒体にマーキング材料を転写する箇所の転写点とを含んでいる。周回媒体移送ベルトは、その上に基質媒体を支持するよう適合させた媒体パネルを有する。媒体移送ベルトは、媒体パネルを各転写点を通って移送し、画像パネルから基質媒体へのマーキング材料の転写を容易にする構成とされている。第1と第2の印刷ステーションの画像パネルは、この画像パネルに関連する転写点において媒体パネルの少なくとも1つに周期的に合致し、パネル複合体を形成する。コントローラは、第1と第2の印刷ステーションの少なくとも1つのマーキングユニットを制御し、各パネル複合体ごとに個別にマーキング材料の位置を調整し、各パネル複合体に関連する複合見当合わせ誤差を補償する。
【0005】
本願明細書に例示する態様によれば、印刷ヘッドと周回媒体移送ベルトとコントローラとを含む直接マーキング印刷システムが提供される。印刷ヘッドが、基質媒体上に画像を印刷する。周回媒体移送ベルトは、基質媒体を支持する媒体パネルを有する。媒体移送ベルトは、印刷ヘッドを通って媒体パネルを移送する構成としてある。各媒体パネルには画像位置補正因子が関連していて、媒体移送ベルトが印刷ヘッドを通って媒体パネルを移送する際に印刷ヘッドの少なくとも1つについての媒体パネルの見当合わせ誤差を補償する。コントローラは、印刷ヘッドのうちの第1のヘッドを制御し、画像位置補正因子に応答して各媒体パネルごとに個別にマーキング材料の配置を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】印刷システムに用いることのできる例示的ベルトシステムを示す。
図2】例示的なモジュール式重ね刷り(MOP)ベルト装置を有する例示的な多色刷り印刷システムを示す。
図3】用紙直接型(DOP)あるいはインクジェット式印刷システムとして実装した例示的な多色刷り印刷システムである。
図4】印刷システム内のローラ周りを周回する媒体移送ベルトおよび/または中間転写ベルトの例示的な側方(例えば、プロセス交差)ベルト揺れ誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例示的な実施形態は、印刷システム内の色重ね見当合わせ誤差から生ずる印刷欠陥を軽減する印刷システムの較正に関する。色重ね見当合わせ誤差の1つの原因は、周期的ベルト揺れ誤差とされることがある。実施形態は、1以上のベルト上のパネルを特定し、パネルごとの画像位置補正因子に基づき画像配置を調整する色重ね見当合わせ設定を実装することができる。印刷システムは、1以上のパネルに対し異なる較正パラメータを用い、パネル単位基準でかつ/または固有のパネル複合体に基づき色重ね見当合わせ誤差を軽減することができる。
【0008】
本願明細書に用いる「印刷システム」は、基質媒体上に画像を形成する装置や機械や一連の装置等を指す。
【0009】
本願明細書に用いる「マーキング材料」は、画像印刷用の物質を指す。マーキング材料の幾つかの例には、「インク」あるいは「トナー」が含まれる。インクは通常液体形状にて貯蔵され、トナーは通常固体形状にて貯蔵されるが、インクおよび/またはトナーは様々な形状にて貯蔵することができる。例えば、インクは液体形状あるいは固体形状として貯蔵することができる。
【0010】
本願明細書に用いる「基質媒体」は、用紙(例えば、用紙シートや長尺の用紙ウェブや一連の用紙等)や透過原稿や羊皮紙やフィルムや繊維やプラスチックやその上に画像を印刷あるいは配置することのできる他の基質等の有形の媒体を指す。
【0011】
本願明細書に用いる「画像」は、印刷システム内のベルトあるいは基質媒体上に視覚的に描画されたコンピュータファイルのコンテンツの視覚的表現や転載や複製等の、何かの視覚的表現や転載や複製を指す。画像には、これらに限定はされないが、文字、図形、写真、パターン、絵、さらに文字、図形と写真とパターンの組み合わせ等を含めることができる。
【0012】
本願明細書に用いる「ベルト」や「無端ベルト」は、その上に形成された画像を移送あるいは搬送して基質媒体に転写する「中間転写ベルト」および/または印刷システム内で基質媒体を移送あるいは搬送する「媒体移送ベルト」を指す。
【0013】
本願明細書に用いる「分化」は、分割や区分化や仕切り等を指し、何かを物理的か視覚的かそれ以外で分化することを指したり、指さなかったりできる。
【0014】
本願明細書に用いる「パネル」は、画像を配置し、かつ/または基質媒体を配置する箇所のベルト上の位置あるいは場所を指す。パネルの位置は予め規定するか所定位置とすることができ、かつ/またはベルトの周回に合わせ変化させることができる。「画像パネル」は画像を配置する箇所のベルト上の位置あるいは場所を指し、「媒体パネル」は基質媒体を配置する箇所の位置あるいは場所を指す。パネルは、画像あるいは基質媒体を受容するようベルトに沿った近似位置とすることができる。一部事例にあっては、基質媒体および/または画像はベルト上でパネル間の所定箇所に配置し、見当合わせ誤差の補償時に外挿が使用できるようにすることができる。
【0015】
本願明細書に用いる「周期的ベルト揺れ誤差」は、ベルトが周回する際に定期的に発生するベルトの予測し、意図し、かつ/または計画した揺れにおける偏差を指す。
【0016】
本願明細書に用いる「見当合わせする」と「見当合わせ」は、固定基準に対する画像パネルおよび/または媒体パネルの適切なアライメントの割り出しを指す。
【0017】
本願明細書に用いる「見当合わせ誤差」は、実質固定された基準位置に対するパネルの予想し、意図し、所望し、かつ/または計画した位置の偏差を指し、「複合見当合わせ誤差」は、1以上の実質固定された基準位置に対する複数のベルトからの複数のパネルの累積的で全体的で集約的で統合的等の見当合わせ誤差を指す。
【0018】
本願明細書に用いる「ベルト揺れ誤差値」は、ベルト上のパネルについてのベルト揺れ誤差に関連する数値を指し、それは印刷システム内でベルトがローラ周りを周回する際に識別し、計測し、かつ/または特定することができる。
【0019】
本願明細書に用いる「色重ね見当合わせ誤差」は、画像中の1以上の他の色のマーキング材料の位置に対する色マーキング材料の予想し、所望し、意図しかつ/または計画した位置からの偏差を指す。
【0020】
本願明細書に用いる「印刷ステーション」は、基質媒体上に画像を配置し、転写し、形成し、あるいは他の方法で生成する印刷システム内の一部署を指す。
【0021】
本願明細書に用いる「画像マーキングユニット」あるいは「マーキングユニット」は、ベルトあるいは基質媒体上に画像を配置し、形成し、転写し、あるいは他の方法で生成するユニットを指す。
【0022】
本願明細書に用いる「コントローラ」は、印刷システムの1以上の構成要素を制御し、かつ/または印刷システムが実行する1以上のプロセスを遂行する命令あるいは指示を実行する処理装置を指す。
【0023】
本願明細書に用いる「画像位置補正因子」は、マーキング材料がベルトおよび/または基質媒体上に配置される箇所の位置を制御する1以上の画像マーキングユニットに関連する1以上のパラメータを指す。画像位置補正因子は、マーキング材料がベルトおよび/または基質媒体上に配置される箇所の位置を調整するよう特定される数値とすることができ、ベルト揺れ誤差値を用いて生成することができる。
【0024】
本願明細書に用いる「パネル複合体」は、少なくとも1つの転写点に合致するパネル群を指し、媒体移送ベルト上の少なくとも1枚の画像パネルと、ベルトが周回する際に転写点に合致する中間転写ベルト上の1枚の画像パネルとを含めることができる。
【0025】
図1は、印刷システムに使用することのできる例示的なベルトシステム100を示す。ベルトシステム100には、ローラ112周りの張力にて支持する無端ベルト110を含めることができる。ベルト110は、中間転写ベルトや媒体移送ベルトや光受容体ベルト等とすることができる。例えば、ベルト110は、モジュール式重ね刷り(MOP)印刷システム内の中間転写ベルトや、MOP印刷システムや用紙直接(DOP)印刷システム内の静電媒体移送ベルトや真空媒体移送ベルト等の媒体移送ベルトとすることができる。1以上のローラ112を駆動モータ(図示せず)により回動可能に駆動し、ローラ112周りにベルト110を周回させることができる。本実施形態は2個のローラ112を含んでいるが、ベルトシステム100には追加のローラを用いることができることを当業者はし得る。
【0026】
ベルト110は、パネル120に分化させることができる。一部実施形態では、パネル120はベルト110が中間転写ベルトである場合に画像が配置される位置に関連付けることができる。一部実施形態では、パネル120はベルト110が媒体移送ベルトである場合に基質媒体を配置することのできる位置に関連付けることができる。こうして、画像および/または基質媒体はパネル位置にてベルト110上に配置することができる。この手法を用いることで、その上に画像あるいは基質媒体を配置する前にベルト110上に画像あるいは基質媒体を配置すべき箇所を特定することができ、ベルト110上の他のパネルの位置に対しベルト110上のそれらの位置に基づきパネルを割り出すことができる。本例では、ベルト110は10枚のパネルを含む。一部実施形態では、ベルト110が中間転写ベルトである場合、パネル寸法はベルト110上に配置する画像の大きさおよび/またはその上に画像を転写する基質媒体の大きさに依存させることができる。一部実施形態では、ベルト110が基質媒体移送ベルトである場合、パネルの寸法および/または間隔は基質媒体の大きさに依存させることができる。ベルト110上のパネルの数は、ベルト110の長さ、加えてパネル120の寸法および/または間隔にもまた依存させることができる。
【0027】
パネル120は点線を用いて図示したが、ベルト110上に視覚的にあるいはそれ以外でパネル120を区画したり、しなかったりできることを、当業者はし得る。一部実施形態では、ベルト110には印刷システム内の1以上のセンサにより検出してベルト110が周回を行なった時点を割り出すことのできる始端マーカ130を含めることができる。一部実施形態では、パネル120は始端マーカ130に対するベルト110上のその位置に基づき識別しかつ/または割り出すことができる。
【0028】
ベルト110の動作期間中、ベルト110がローラ112周りを周回する際に周期的ベルト揺れ誤差が生ずることがある。例えば、ベルト110はローラ112上を脇に逸れ、ベルト110がローラ112周りを周回する際にベルト110の側方位置がプロセス交差方向に遷移することがある。周期的ベルト揺れ誤差はベルト110が周回する際に変動することがあるが、ベルト110上の特定のパネルに対応する周期的ベルト揺れ誤差を実質固定基準位置に対し相関付け、ベルト110上の特定のパネルに対応する周期的ベルト揺れ誤差をベルト上のパネルが実質固定された基準位置を通過する度に概ね予測可能とすることができる。これらの周期的ベルト揺れ誤差は、ベルトが中間転写ベルトである場合はベルト110上にマーキング材料を配置する箇所の位置に影響を及ぼすことがあり、かつ/またはベルトが基質媒体移送ベルトである場合に基質媒体をベルト上に配置する箇所の位置に影響を及ぼすことがある。周期的ベルト揺れ誤差の結果として、ベルト110上のマーキング材料および/または基質媒体の位置は予想しあるいは意図した位置とは異なることがあり、そのことで予想位置からのベルト位置の偏差に起因して印刷プロセス期間中に印刷欠陥を引き起こすことがある。これらの印刷欠陥が、印刷プロセスを用いて生成される印刷物の品質を低下させることがある。
【0029】
プロセス方向および/またはプロセス交差方向に誘起する周期的ベルト揺れ誤差はベルトの一周周回と同期することがあり、かくしてこれらの周期的ベルト揺れ誤差の少なくとも一部をベルト110の各周回ごとに実質反復可能とし、周期的ベルト揺れ誤差をベルト110がローラ112周りを周回する際にベルト110上のパネル位置の関数となるようにできる。すなわち、周期的ベルト揺れ誤差はベルトの周回周波数とその対応する高調波周波数にて発生することがある。こうして、周期的ベルト揺れ誤差はベルト110上の特定のパネル120に関連付けることができる。例えば、ベルト110の各周回ごとに反復して発生する第1のベルト揺れ誤差値はパネル120の第1の1枚について特定することができ、ベルト110の各周回ごとに反復して発生する第2のベルト揺れ誤差値はパネル120の第2の1枚について特定することができ、以下同様とすることができる。周期的ベルト揺れ誤差は、例えば、ベルトの円錐度や応力や歪の変動、ベルトの肉厚変動あるいはベルトの縫い目領域の欠陥等が原因となることがある。
【0030】
図2は、単一の基質媒体経路を有する例示的なモジュール式重ね刷り(MOP)ベルト装置を有する8色静電写真プリンタ等の例示的な8色プリンタ200を示す。印刷機200は、媒体移送ベルト210と印刷ステーション220と印刷ステーション240と1以上のコントローラ285と有形のコンピュータ可読記憶媒体290とを含む。例示実施形態は2箇所の印刷ステーションと1個の媒体移送ベルトとを有する8色プリンタを示しているが、より多くのあるいはより少ないマーキング材料色を持たせることのできる他の実施形態を実装できること、かつ/または他の実施形態により多くのあるいはより少ない印刷ステーションを含めることができることを、当業者はし得る。
【0031】
媒体移送ベルト210は、印刷ステーション220,240を通過してプロセス方向202に基質媒体を移送するのに用いることができる。媒体移送ベルト210はローラ212周りに所定張力にて支持されており、1以上のこのローラを1以上の駆動モータ(図示せず)により回動可能に駆動し、媒体移送ベルト210を周回させることができる。本実施形態では、媒体移送ベルト210は矢印214で示す時計回り方向に周回する。清掃ユニット215を移送ベルト210の近傍に配置し、ベルト210をこれが周回する際に清掃することができる。例えば、清掃ユニットは移送ベルト210上に配置されたマーキング材料を除去することができる。媒体移送ベルト210は、媒体パネル216に分化することができる。媒体移送ベルト210上の媒体パネル216の数は、媒体移送ベルト210の長さと媒体移送ベルト210が移送する基質媒体の寸法および/または間隔とに基づかせることができる。本実施例では、媒体移送ベルト210は16個の媒体パネル216に分化する。媒体移送ベルト210は、媒体移送ベルト210の周回周波数に対応する周期的なベルト揺れ誤差を呈することがある。本実施例は16枚の媒体パネルを含むが、媒体移送ベルト210をより多いかまたはより少ない媒体パネルに分化することができること、かつ/または媒体移送ベルト210が移送する基質媒体の大きさが変更されたときに媒体パネルの数を変えることができることを、当業者は認識しよう。
【0032】
一部実施形態では、媒体移送ベルト210は基質媒体を静電移送ベルトに吸着するのに静電荷を用いる静電移送ベルトとすることができる。静電荷は基質媒体を媒体移送ベルトに「固着」させ、印刷プロセス期間中の基質媒体の動きを抑制する。基質媒体が静電移送ベルト上にある間、基質媒体に力が作用して静電荷から生ずる吸引力に打ち勝ち、かつ/または静電荷が除去されない限り、基質媒体は通常は遷移しない。かくして、基質媒体は通常、それが静電移送ベルト上に配置されている間は遷移しない。
【0033】
一部実施形態では、媒体移送ベルト210を真空移送ベルト上の所定箇所に基質媒体を保持する吸引を用いる真空移送ベルトとすることができる。この吸引が基質媒体を媒体移送ベルトに対し「固着」させ、印刷プロセス期間中の基質媒体の動きを抑制する。基質媒体が真空移送ベルト上にある間、基質媒体に力が作用して吸引から生ずる力に打ち勝ち、かつ/または吸引力が除去されない限り、基質媒体は通常は遷移しない。かくして、基質媒体は真空移送ベルト上に配置されている間は通常遷移はしない。
【0034】
印刷ステーション220,240には、それぞれローラ224が支持する中間転写ベルト222,242と、中間転写ベルト222,242上にそれぞれマーキング材料を配置して画像あるいは部分的画像を形成する画像マーキングユニット群226,246と、印刷プロセスに関連する様々なパラメータを検出するセンサ268とを含めることができる。中間転写ベルト222,242は、それぞれ転写点232,252において基質媒体へ転写する前に、その上に画像あるいは部分的画像を配置する中間面として使用することができる。中間転写ベルト222,242は、ローラ224周りに所定張力でもって支持する無端ベルトとすることができる。1以上のローラ224を、中間転写ベルト222および/または中間転写ベルト242を媒体移送ベルト210とは逆方向に周回させるように回動可能に駆動することができる。例えば、本実施形態では、中間転写ベルト222,242を矢印225により示す反対時計回りに周回させることができる。
【0035】
本実施形態では、中間転写ベルト222,242は3個のローラにより支持してあり、ここでは中間転写ベルト222を支持するローラのうちの1個が転写点232において中間転写ベルト222と媒体移送ベルト210との係合を容易にする転写ローラ230であり、中間転写ベルト242を支持するローラ224のうちの1個が転写点252において中間転写ベルト242と媒体移送ベルト210との係合を容易にする転写ローラ250である。中間転写ベルト222,242が媒体移送ベルト210に係合する圧力は、媒体移送ベルト210に対する転写ローラ230,250の位置を制御することで調整することができる。
【0036】
1例として、転写ローラ230,250を媒体移送ベルト210に向けて遷移させ、中間転写ローラ222,242が媒体移送ベルト210に係合する圧力を増大させることができる。別の例では、転写ローラ230,250を媒体移送ベルト210から離間遷移させ、中間転写ベルト222,242が媒体移送ベルト210に係合する圧力を減少させることができる。一部実施形態では、転写ローラ230,250の位置を基質媒体の肉厚および/または重量に基づいて調整し、この基質媒体上に中間転写ベルト222,242から画像が転写する。中間転写ベルト222,242が媒体移送ベルト210に係合する圧力は、ベルトどうしの相互作用に影響を及ぼすことがあり、かつ/または周期的ベルト揺れ誤差の原因となり、転写ローラ230,250の異なる設定が異なる誤差値に帰着することがある。一部実施形態では、転写ローラ230,250の異なる位置について個別の画像位置補正因子群を生成することができる。転写ローラの位置は、転写ローラの初期設定位置からの距離として特定することができる。例えば、転写ローラの初期設定位置はゼロミリメートル(0mm)とすることができ、+1mmの位置は転写ローラを媒体移送ベルト210に向かって1mm遷移させることを指し、−1mmの位置は転写ローラを媒体移送ベルト210から1mm離間遷移させることを指す。
【0037】
中間転写ベルト222,242は、それぞれ画像パネル234,254に分化することができる。中間転写ベルト222,242上の画像パネル234,254の数は、中間転写ベルト222,242の長さと、中間転写ベルト222,242上に配置される画像の大きさと、画像を転写する基質媒体の大きさと、画像パネル間の間隔等に依存させることができる。中間転写ベルト222,242上に配置される画像は、転写点232,252において媒体移送ベルト210に配置される基質媒体に転写することができる。本実施例では、中間転写ベルト222,242はそれぞれ8枚の媒体パネルに分化してある。中間転写ベルト222,242は周期的ベルト揺れ誤差を呈し、これはベルト210の周回周波数に対応し、ベルト210上の画像パネル位置に相関付けることができる。
【0038】
本実施例は8枚の画像パネルを含んでいるが、中間転写ベルト222,242がそれを上回るかあるいは下回る画像パネルに分化できることを当業者はし得る。一部実施形態では、中間転写ベルト222に画像転写ベルト242とは異なる数の画像パネルを持たせることができる。一部実施形態では、中間転写ベルト222の長さを中間転写ベルト242の長さと実質同一とすることができる。一部実施形態では、中間転写ベルト222の長さを中間転写ベルト242の長さとは異ならしめることができる。
【0039】
一部実施形態では、媒体移送ベルトの長さを中間ベルトの長さの倍数値や整数値や分数値あるいはその他とすることができる。例えば、一部実施形態では、媒体移送ベルトを中間転写ベルト222,242の長さの2倍とし、中間転写ベルト222,242が媒体移送ベルトの毎周回ごとに2回の周回を完了するようにできる。中間転写ベルトに媒体移送ベルトを同期させ、ベルトが周回してパネル複合体を形成する際に画像パネルが転写点において媒体パネルに合致するようにできる。一部実施形態では、各ベルトの長さを互いに異ならしめることができる。例えば、媒体移送ベルト210は中間転写ベルト222の長さの3倍にでき、また中間転写ベルト242の2倍の長さにできる。ベルトの長さは整数の倍数を用いて例示したが、他の構成が可能であることを当業者はし得る。例えば、中間転写ベルトを媒体移送ベルト210の3/4倍の長さとし、画像移送ベルトが中間転写ベルト222,242の2回の周回ごとに3回の周回を完了するようにできる
【0040】
同様に、一部実施形態では、媒体パネルの数を画像パネルの数の倍数値や整数値や分数値やその他とすることができる。例えば、媒体移送ベルトに中間転写ベルトに含めることのできる画像パネルの2倍の媒体パネルを含め、各媒体パネルが中間転写ベルトごとに2枚の画像パネルに対応するようにできる。一例として、媒体移送ベルト210に16枚の媒体パネルを含めることができ、中間転写ベルト222,242にそれぞれ8枚の画像パネルを含め、パネルの最小公倍数が16となるようにできる。
【0041】
パネルの最小公倍数が16であるシステム内の各パネル複合体ごとの色重ね見当合わせ誤差を打ち消すべく、印刷システムに転写ローラの各位置ごとに可能なパネル複合体のそれぞれについて少なくとも16個の画像位置補正因子を含め、印刷システムが可能な転写ローラ設定のそれぞれについて可能なパネル複合体を網羅し、周期的ベルト揺れ誤差を打ち消せるようにすることができる。
【0042】
一部実施形態では、各ベルト上のパネルの数を互いに異ならしめることができる。例えば、媒体移送ベルト210に中間転写ベルト222の3倍のパネルを持たせることができ、また中間転写ベルト242の2倍のパネルを持たせることができる。ベルト上のパネルの数は整数倍を用いて例示したが、他の構成が可能であることを当業者はし得る。例えば、媒体移送ベルト210に15枚の媒体パネルを含めることができ、中間転写ベルトに8枚の画像パネルを含め、パネルの最小公倍数が百二十(120)となるようにできる。本実施例では、百二十(120)の画像位置補正因子群を用い、転写ローラの所与の位置についてパネル単位準拠で色重ね見当合わせ誤差を打ち消すことができる。
【0043】
周期的ベルト揺れ誤差は、ベルト210,222,242が周回する際変化することがある。ベルト210,222,242上のパネル216,234および/または254のうちの特定のものに対応する周期的ベルト揺れ誤差を、それぞれ1以上の実質固定された基準位置に対し相関付け、ベルト210上の媒体パネル216のうちの特定のものに対応する周期的ベルト揺れ誤差を、ベルト上のパネルが転写点232および/または252を通過するつど概ね予測可能とすることができる。例えば、媒体パネル216に対応する周期的ベルト揺れ誤差を転写点232,252に相関付けることができ、中間転写ベルト234に対応する周期的ベルト揺れ誤差を転写点232および/またはマーキングユニット226の位置に相関付けることができ、中間転写ベルト242に対応する周期的ベルト揺れ誤差を転写点252および/またはマーキングユニット246に相関付けることができる。こうして、印刷システム200内のベルト210,222,242は、実質反復可能な周回当り周期的ベルト揺れ誤差を具体的に示すことができる。
【0044】
中間転写ベルト222,242はそれぞれ転写点230,250において媒体移送ベルト210と相互作用させることができ、そのことでベルト210,222,242に関連する周期的ベルト揺れ誤差が原因とされる複合見当合わせ誤差に帰着することがある。ベルト間の相互作用は、複合見当合わせ誤差にて顕在化することのある他の印刷誤差を引き起こすこともある。かくして、印刷誤差は印刷ステーション220および/または印刷ステーション240の転写ローラ設定に応じて変化することがある。累積誤差は印刷システムからの印刷出力中に欠陥として顕在化することがあり、印刷システムからの印刷出力の品質を劣化させることがある。
【0045】
画像マーキングユニット群226,246はそれぞれ中間転写ベルト222,242に沿って配置することができ、また中間転写ベルト222,242上にマーキング材料を配置し、中間転写ベルト222,242上に画像または部分的画像を形成する構成とされる。本実施形態では、印刷ステーション220内の画像マーキングユニット群226に中間転写ベルト222の一部に沿って順に配置される4個の画像マーキングユニット235〜238を含めることができ、画像マーキングユニット群246に4個の画像マーキングユニット255〜258を含めることができる。
【0046】
一部実施形態では、各画像マーキングユニット235〜238は中間転写ベルト222上に色の異なるマーキング材料を配置する。例えば、画像マーキングユニット235は中間転写ベルト222上に黒色マーキング材料(K)を配置することができ、画像マーキングユニット236は中間転写ベルト222上に藍色マーキング材料(C)を配置することができ、画像マーキングユニット237は中間転写ベルト222上に黄色マーキング材料(Y)を配置することができ、画像マーキングユニット238は中間転写ベルト222上に赤紫色マーキング材料(M)を配置することができる。一部実施形態では、各画像マーキングユニット255〜258は中間転写ベルト242上に色の異なるマーキング材料を配置する。例えば、画像マーキングユニット255は中間転写ベルト242上に赤色マーキング材料(R)を配置することができ、画像マーキングユニット256は中間転写ベルト242上に緑色マーキング材料(G)を配置することができ、画像マーキングユニット257は中間転写ベルト242上に青色マーキング材料(B)を配置することができ、画像マーキングユニット258は中間転写ベルト242上に透明マーキング材料を配置することができる。こうして、印刷システム200は2箇所の印刷ステーションどうしにより分割された8色の異なる色を用いて画像を形成することができる。各画像マーキングユニットには色の異なるマーキング材料を実装することができるが、画像マーキングユニットの一部、または全てに同一の色マーキング材料が実装できたり、あるいは画像マーキングユニットのいずれも同一の色マーキング材料でなく実装できることを当業者はし得る。さらにまた、印刷システムにより多くのあるいはより少ない印刷ステーションを含めることができ、また各印刷ステーションにより多くのあるいはより少ない画像マーキングユニットを含めることができることを、当業者はし得る。
【0047】
一部実施形態では、各画像マーキングユニット235〜238,255〜258には光導電ドラム260と清掃器261と消去ランプ(図示せず)と帯電器262とレーザスキャナ263と現像ユニット264と第1の転写ロール265とを含めることができ、そのそれぞれを各光導電ドラム260周りにドラムの周回方向(図2の時計回り方向)に沿って配置することができる。清掃器261は、光導電ドラム260上に残留する先の画像のマーキング材料を除去し、ドラム260を次の画像向けに準備させる。消去ランプはドラム260を静止化解除し、ドラム260上に先に配置された画像に関連するドラム260上の全ての残留電荷を除去する。帯電器262はドラムを電気的に帯電させ、ドラムがレーザスキャナ263から潜像を受容できるようにする。レーザスキャナ263は、被帯電ドラム260上に光を照射してドラム260上に潜像を形成する。現像ユニット264がドラム上にマーキング材料画像を形成し、これが転写ローラ265を用いて中間転写ベルトへ転写される。
【0048】
センサ268は、印刷プロセスに関連する様々なパラメータを検出することができる。一部実施形態では、一部センサ268はマーク・オン・ベルト(MOB)センサとすることができる。一部実施形態では、少なくとも一部のセンサ268が媒体移送ベルト210上の基質媒体の存在を検出することができ、一部のセンサ268が中間転写ベルト222および/または中間転写ベルト242上の画像の存在を検出することができ、一部のセンサ268を用い、中間転写ベルト222と中間転写ベルト242と媒体移送ベルト210および/または媒体移送ベルト210が移送する基質媒体上に配置された画像の色見当合わせ誤差を検出することができる。
【0049】
本実施形態では、各印刷ステーション220,240にセンサ270とセンサ271とセンサ272とを含めることができる。センサ270は、中間転写ベルト222,242上に配置された画像または部分的画像を検出するよう配置することができる。例えば、センサ270のうち1個は印刷ステーション220用の画像マーキングユニット235に隣接させて下流に配置することができ、センサ270のうち1個を印刷ステーション240用の画像マーキングユニット255に隣接させて下流に配置することができる。センサ271は転写点232,252の近傍でかつ上流に中間転写ベルト222,242の上に配置された画像を検出するよう配置し、画像または部分的画像の基質媒体への転写前に中間転写ベルト222,242上の画像または部分的画像をセンサ271が検出できるようにすることができる。センサ272は基質媒体に転写された画像を検出するよう配置することができ、また印刷ステーション220用の転写点232の下流に配置することができ、印刷ステーション240用の転写点252の下流に配置することができる。
【0050】
色見当合わせ誤差e_IOT1は、画像マーキングユニット235〜238による画像または部分的画像の形成期間中に発生することがある。一部実施形態では、センサ232はこれら色見当合わせ誤差を検出することができる。色見当合わせ誤差e_IOP1は、画像マーキングユニット235から転写点232までの画像の転写期間中に、ローラ周りにベルト222が周回する際の中間転写ベルト222のミスアライメントに起因して発生することがある。一部実施形態では、センサ234はこれら色見当合わせ誤差を検出することができる。単一の中間転写ベルト連結片プリンタとして実装する実施形態では、色見当合わせ誤差e_IOT1は、追加の色重ね見当合わせ誤差とは対照的に画像対用紙見当合わせ誤差として顕在化することがあり、何故なら色(例えば、黄色や赤紫色や藍色や黒色)はe_IOP1移送部分の期間中に同量だけ移動するからである。
【0051】
色見当合わせ誤差e_ETBは、転写点232から転写点252への基質媒体の移送期間中に、媒体移送ベルト210のミスアライメントに起因して発生することがある。一部実施形態では、センサ272はこれらの色見当合わせ誤差の検出に用いることができる。色見当合わせ誤差e_IOT2は、画像マーキングユニット255〜258による中間転写ベルト242上の画像または部分的画像の形成期間中に、ベルト242のミスアライメントに起因して発生することがある。一部実施形態では、センサ240はこれらの色見当合わせ誤差を検出することができる。色見当合わせ誤差e_IOP2は、画像マーカユニット255から転写点252への画像あるいは部分的画像の転写期間中に、ベルト242がローラ周りを周回する際の中間転写ベルト242のミスアライメントに起因して発生することがある。一部実施形態では、センサ271はこれらの色見当合わせ誤差を検出することができる。
【0052】
一部実施形態では、印刷システム200にはベルト上の基準点を検出してベルトの始端位置を割り出し、ベルトが一周回を完了する時点を識別する1以上のセンサ280を含めることができる。この手法を用いることで、印刷システム200は始端マーカに対するパネルの位置に基づきパネルを追尾しかつ/または割り出すことができ、パネル単位準拠で色重ね見当合わせ誤差の軽減を容易にすることができる。
【0053】
1以上のコントローラ285を実装し、印刷システム200による較正ならびに印刷プロセスの遂行を容易にすることができる。1以上のコントローラ285は、ベルト210,222および/または252が周回する速度を制御するローラ212,224の駆動モータ(図示せず)と、転写ローラ230,250の位置と、センサ信号を受け取って処理するセンサ268と、画像位置を制御する画像マーキングユニット235〜238,255〜258と、非一過性コンピュータ可読記憶媒体290と交信状態に置くことができる。記憶媒体290には、較正プロセス292と印刷プロセス294を実行する命令を記憶させることができる。記憶媒体290はまた、印刷システム200の1以上の構成ごとにパネルについての誤差値296と画像位置補正因子298を記憶させることができる。記憶媒体290には、実行時に印刷システムが較正プロセス292および/または印刷プロセス294を実行できるようにする命令を記憶させることができる。非一過性のコンピュータ可読記憶媒体の幾つかの実施例には、フロッピードライブやハードドライブやコンパクトディスクやテープドライブやフラッシュドライブや光ドライブやリード・オンリー・メモリ(ROM)やランダム・アクセス・メモリ(RAM)等を含めることができる。
【0054】
例示較正プロセスでは、印刷システム200により印刷することのできるテストパターンを用いて色重ね見当誤差を検出することができる。印刷ステーション220の画像マーキングユニット235〜238は、ベルト222上の1以上の画像パネルについて中間転写ベルト222上に部分テストパターンを形成することができる。一部実施形態では、中間転写ベルト222上に配置されたテストパターンをセンサ270および/またはセンサ271により検出し、媒体移送ベルト210により移送する基質媒体に対しテストパターンを転写する前に、中間転写ベルト222が原因となる色重ね見当合わせ誤差を検出することができる。テストパターンは、予想位置からのマーキング材料位置における偏差の検出を容易にするよう形成でき、かつ/またはマーキング材料間の相対位置(色重ね)の検出を容易にするよう形成でき、例えば1つの色のマーキング材料が別の色のマーキング材料に対し配置される場所が検出できる。
【0055】
テストパターンは、転写点232において、中間転写ベルト222上の画像パネルから、媒体移送ベルト210の媒体パネル上に位置し、それによって移送される基質媒体に対し転写することができる。一部実施形態では、基質媒体に転写されるテストパターンを印刷ステーション220下流のセンサ272により検出し、基質媒体が第2の印刷ステーション250に達する前に色重ね見当合わせ誤差を検出することができる。
【0056】
印刷ステーション240の画像マーキングユニット255〜258は、ベルト242上の1以上の画像パネルについて中間転写ベルト242上に部分的なテストパターンを形成することができる。一部実施形態では、中間転写ベルト242上に配置されたテストパターンをセンサ270および/またはセンサ271により検出し、媒体移送ベルト210により移送する基質媒体に対しテストパターンを転写する前に、中間転写ベルト242が原因となる色重ね見当合わせ誤差を検出することができる。テストパターンは、予想位置からの画像マーキングユニットからのマーキング材料位置の偏差の検出を容易にするよう形成でき、かつ/またはマーキング材料間の相対位置(色重ね)の検出を容易にし、例えば1つの色のマーキング材料が別の色のマーキング材料に対し配置される場所が検出できるよう形成することができる。
【0057】
テストパターンは、転写点250において、中間転写ベルト242上の画像パネルから、媒体移送ベルト210により媒体パネル上に位置決めされて移送される基質媒体に対し、転写することができる。中間転写ベルト242上に配置されたテストパターンの基質への転写が、基質媒体の完全テストパターンを形成する。一部実施形態では、基質媒体に転写されるテストパターンを印刷ステーション240下流のセンサ272により検出し、基質媒体が第2の印刷ステーション240に達する前に色重ね見当合わせ誤差を検出することができる。
【0058】
例示印刷プロセスでは、印刷システムは印刷ジョブ用に構成される。例えば、基質媒体の大きさや転写ローラの位置や1以上の画像を特定する。ベルト上のパネルの数と位置は、印刷ジョブの構成に基づき定められる。まず、用紙シート等の基質媒体は媒体移送ベルト210により印刷ステーション220,240により移送される。1以上のコントローラが転写ローラの所与の位置について記憶媒体からパネルについて画像位置補正因子を検索し、画像マーキングユニットに画像位置補正因子を設定し、印刷処理期間中にパネル単位準拠および/または各固有パネル複合体ごとに色重ね見当合わせ誤差を軽減することができる。画像位置補正因子により、画像マーキングユニットは、画像マーキングユニットが中間転写ベルト222上にマーキング材料を配置する位置を調整し、パネル単位準拠および/または各固有パネル複合体ごとに色重ね見当合わせ誤差を打ち消すことができる。
【0059】
基質媒体は、媒体移送ベルト210の媒体パネルのうちの1枚に配置される。媒体移送ベルトは印刷ステーション220を通って基質媒体を移送し、中間転写ベルト222から基質媒体へ第1の部分的画像を転写する。部分的画像は、基質媒体が転写点232に達する前に画像マーキングユニット235〜238により中間転写ベルト222の画像パネルのうちの1枚に配置される。その上に部分的画像を配置する画像パネルをその上に基質媒体を配置する媒体パネルに対応させ、媒体パネルと画像パネルとが転写点に実質同時に到達し、中間転写ベルトから基質媒体への部分的画像の転写を成し遂げるようにしてある。
【0060】
一旦基質媒体が中間転写ベルト222から部分的画像を受容すると、画像パネル位置は清掃され、別の部分的画像の受容に向けた準備を整え、基質媒体は印刷ステーション240に向けたプロセス方向への移送を継続する。第2の部分的画像を、基質媒体をその上に配置する媒体パネルに対応する中間転写ベルト242上の画像パネル上に配置させ、媒体パネルと画像パネルとが実質同時に転写点252に到達するようにする。移送媒体ベルト210は転写点252を通って基質媒体を移送し、この転写点において第2の部分的画像が中間転写ベルト242から基質媒体へ転写されて最終画像を形成する。
【0061】
図3は、媒体移送ベルト310と、画像マーキングユニット群320を含む印刷ステーション318と、1以上のコントローラ340と、センサ350と、非一過性コンピュータ可読記憶媒体360とを有する例示的な用紙直接(DOP)あるいはインクジェット印刷システム300(以下、「印刷システム300」)である。媒体移送ベルト310は、図2の媒体移送ベルト210と同様の態様にて実装することができる。媒体移送ベルト310はローラ312周りに所定の張力にて支持することができ、1以上のローラを1以上の駆動モータ(図示せず)により回動可能に駆動し、媒体移送ベルト310を周回させることができる。本実施形態では、媒体移送ベルト310は矢印314で示す時計回り方向に周回する。清掃ユニット315は、移送ベルト310の近傍に配置し、ベルト310をそれが周回する際に清掃することができる。例えば、清掃ユニットは移送ベルト310上に配置されたマーキング材料を取り除くことができる。媒体移送ベルト310は媒体パネル316に分化することができ、媒体移送ベルト310が一周回を終えた時点を割り出すのに用いることのできるベルト始端マーカを含めることができる。媒体移送ベルト310は、矢印305で示す時計回りの方向に周回させることができる。本実施形態では、媒体移送ベルト310は10枚の媒体パネルを含んでいるが、この媒体移送ベルト310により多いかあるいはより少ない媒体パネルを含めることができ、基質媒体をベルト周縁に沿う任意の箇所に配置できることを当業者は認識し得る。さらにまた、本実施形態における「パネル」はベルトに沿う大まかな位置を指示することを意図するものであり、基質媒体を配置できる位置を、ベルト上の固定位置や静的位置あるいは特定の予め定められた位置に限定することを意図するものではないことを当業者は認識し得る。例えば、「パネル」2と3の間の所定位置でベルト上に配置した基質媒体用に用いる補正は、ベルト上のその位置に視認される誤差を最も良く補正するよう外挿しうる。
【0062】
本実施形態では、印刷ステーション318内の画像マーカユニット群320は画像マーキングユニット321〜328を含んでいる。画像マーキングユニット321〜328は、基質媒体が画像マーキングユニット321〜328を通過する際に基質媒体上に直接マーキング材料を配置する頁幅大の印刷ヘッド330として形成することができる。各マーキングユニット321〜328は基質媒体上に色の異なるマーキング材料を配置し、印刷システム300を8色プリンタとすることができる。印刷ヘッドには、この印刷ヘッドの底部全体に分布させた印刷ノズル332を含めることができ、これらを介してマーキング材料を噴射して基質媒体上に画像を印刷することができる。印刷ヘッドを制御し、マーキング材料を配置する基質媒体上の位置に基づき被選択印刷ノズルからマーキング材料を噴射することができる。
【0063】
基質媒体が画像マーキングユニットから画像マーキングユニットへ移動する際の媒体移送ベルト310の周期的ベルト揺れ誤差が、色重ね見当合わせ誤差に帰着することがある。周期的ベルト揺れ誤差は、ベルト310が周回する際変化することがある。ベルト310上の媒体パネル316のうちの特定のパネルに対応する周期的ベルト揺れ誤差を1以上のマーキングユニット321〜328に対し相関付け、ベルト310上の媒体パネル316のうちの特定のパネルに対応する周期的ベルト揺れ誤差を、ベルト310上のパネル316が1以上のマーキングユニット321〜328を通過する度に概ね予測可能とすることができる。ベルト310の周回に付随する周期的ベルト揺れ誤差は、ベルト310の一周周期に相関付けることができる。こうして、周期的ベルト揺れ誤差に関する誤差値はパネル単位準拠で識別でき、印刷システム300はパネル単位準拠で画像マーキングユニットを較正することで周期的ベルト揺れ誤差を打ち消すことができる。
【0064】
1以上のコントローラ340を実装し、印刷システム300による較正プロセスと印刷プロセスの遂行を容易にすることができる。1以上のコントローラ340は、ベルト310を周回させる速度を制御するローラ312の駆動モータ(図示せず)と、センサ信号を受け取って処理するセンサ350と、画像位置を制御する画像マーキングユニット321〜328と、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体360と交信状態とすることができる。記憶媒体360には、較正プロセス362と印刷プロセス364とを実行する命令を記憶させることができる。記憶媒体360には、1以上の構成の印刷システム300向けの媒体パネル316に関する誤差値366と画像位置補正因子368もまた記憶させことができる。記憶媒体360には、実行時に印刷システムに較正プロセス362および/または印刷プロセス364を実行させる命令を記憶させることができる。非一過性のコンピュータ可読記憶媒体の幾つかの例には、フロッピードライブやハードドライブやコンパクトディスクやテープドライブやフラッシュドライブや光ドライブやリード・オンリー・メモリ(ROM)やランダム・アクセス・メモリ(RAM)等を含めることができる。
【0065】
例示較正プロセスでは、色重ね見当合わせ誤差は印刷システム300により印刷することのできるテストパターンを用いて検出することができる。例えば、このテストパターンは印刷システムやスキャナおよび/または他のデバイス内のセンサと交信状態にある1以上のコントローラを用いて分析することができる。印刷ステーション318の画像マーキングユニット321〜328は、媒体移送ベルト310の媒体パネル316上の基質媒体位置にテストパターンを形成することができる。一部実施形態では、基質媒体上に配置されるテストパターンは、印刷ステーション318の下流に位置するセンサ350のうちの1つにより検出し、色重ね見当合わせ誤差を検出することができる。
【0066】
例示印刷プロセスでは、印刷システムは印刷ジョブ用に構成してある。例えば、基質媒体の大きさと1以上の画像が特定される。ベルト上のパネルの数と位置は、印刷ジョブ用の構成に基づいて定めることができる。まず、用紙シート等の基質媒体は、媒体移送ベルト318により印刷ステーション318を通ってプロセス方向302に移送され、基質媒体が媒体移送ベルト310の媒体パネルに実質整列配置されるようにする。1以上のコントローラが記憶装置からパネルについて画像位置補正因子を検索し、画像マーキングユニットに画像位置補正因子を設定し、色重ね見当合わせ誤差が印刷処理期間中にパネル単位準拠で軽減できるようにする。画像位置補正因子により、画像マーキングユニットは、画像マーキングユニットの印刷ヘッドから印刷ステーション318を通過する基質媒体上にマーキング材料が配置される位置を調整し、パネル単位準拠で色重ね見当合わせ誤差を打ち消すことができる。
【0067】
基質媒体は、媒体移送ベルト310の媒体パネルの1つに配置される。媒体移送ベルトは印刷ステーション318を通って基質媒体を移送し、このステーションが画像マーキングユニット321〜328を用いて基質媒体に画像を配置する。
【0068】
画像が基質媒体上に一旦配置されると、基質媒体は位置ステーション318から遠ざかるプロセス方向への移送を継続し、画像マーキングユニットは画像をその上に配置する基質媒体を移送する次の画像パネルに関する少なくとも1つの画像位置補正因子を受け取る。かくして、印刷システム300はパネル単位準拠で周期的ベルト揺れ誤差を補償することができ、ここで各パネルは較正プロセス期間中に生成される画像位置補正因子に対応させることができる。
【0069】
表1は初期設定転写ローラ位置に関する補正テーブルであり、これはMOP印刷システムとして実装された印刷システムにより遂行される較正プロセスに応答して生成することができる。本実施例では、印刷システムには8枚の画像パネルを有する媒体移送ベルトと各4枚の画像パネルを有する中間転写ベルトを含め、初期設定転写ローラ位置に対し8個の可能な組み合わせが存在するようにできる。本実施例の画像位置補正因子は、1以上の画像マーキングユニットをプロセス交差方向に調整する値に対応し、転写ローラの初期設定位置に関連する印刷システム内の周期的ベルト揺れ誤差を打ち消すようマーキング材料を配置する箇所を切り換える。表1に類似の補正テーブルは、印刷システムが転写ローラ位置と画像パネルの列が皆無である点を除き用紙直接(DOP)印刷システムである場合に生成することができ、何故ならDOP印刷システムは通常これらの構成要素を含まないからである。
【表1】
【0070】
図4は、印刷システム200および/または300内でローラ周りを周回する媒体移送ベルトおよび/または中間転写ベルトの例示的な側方(例えば、プロセス交差)周期的ベルト揺れ誤差を示すグラフ400である。グラフ400のX軸402はベルトの一周回を表わし、グラフのY軸404は周回する際にベルトが移動するミリメートル(mm)単位の距離を表わし、ここで初期設定や予想しかつ/または意図したベルト位置はゼロミリメートル(0mm)である。ベルトの周回に対するパネル位置を指示すべく、パネルマーカ410をグラフ400内に含めてある。本実施例では、ベルトに8枚のパネルを含めることができる。グラフ400に示す如く、ベルトの周回周期と実質同一の周期を有する定期的な周期的ベルト揺れ誤差が存在する。
【0071】
本実施例では、異なるベルト周回ごとに周期的ベルト揺れ誤差の大きさにおけるばらつきを示すべく、ベルト3周回分が重畳させてある。各周回は、対応パネルごとに同様の周期的ベルト揺れ誤差値に帰着することがある。一部実施形態では、較正期間中にベルトの一周回につき1個のテストパターンにて各パネルから2以上のテストパターンを印刷することができる。複数回の周回に亙り1枚のパネルについて特定された誤差値を平均し、パネルごとの平均化誤差値を算出し、これをそのパネルについての画像位置補正因子の算出に用いることができる。
図1
図2
図3
図4