【実施例】
【0045】
次に、試験例及び実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
〔試験例1〕ラクトコッカス・ラクティス菌株の取得
本発明者らは、ラクトコッカス・ラクティスに属する菌株を自然界から取得すべく、日本国内の自然界から採集したサンプルを滅菌した0.85%生理食塩水で希釈し、下記組成のDifco
TM Lactobacilli MRS Agar(Becton Deckinson and Company)に塗布し、30℃で嫌気培養した。
【0047】
〔Difco
TM Lactobacilli MRS Agar〕
プロテオース ペプトン No.3 10.0 g
牛肉エキス 10.0 g
酵母エキス 5.0 g
デキストロース 20.0 g
ポリソルベート80 1.0 g
クエン酸アンモニウム 2.0 g
酢酸ナトリウム 5.0 g
硫酸マグネシウム 0.1 g
硫酸マンガン 0.05 g
リン酸二カリウム 2.0 g
寒天 15.0 g
精製水 1000 ml
pH 6.5±0.2
121℃で15分滅菌後、シャーレに分注して平板とする。
【0048】
そして得られたコロニーの中で球菌の形態を示し、かつ塗布標本の顕微鏡観察によりグラム陽性である菌を釣菌した。これらの菌を、BL寒天培地(栄研化学社製)に画線塗布し、前記と同様の方法で嫌気培養を反復し、純粋単離された菌株を得た。
【0049】
〔BL寒天培地〕
肉エキス 3.0 g
肝臓エキス 5.0 g
酵母エキス 5.0 g
ペプトン 15.0 g
ソイペプトン 3.0 g
可溶性デンプン 0.5 g
ブドウ糖 10.0 g
リン酸二カリウム 1.0 g
リン酸一カリウム 1.0 g
硫酸マグネシウム 0.2 g
塩化ナトリウム 0.01 g
硫酸マンガン 0.00674 g
L-システイン塩酸塩 0.5 g
硫化第一鉄 0.01 g
ポリソルベート80 1.0 g
寒天 15.0 g
精製水 1000 ml
pH 7.2±0.2
121℃で15分滅菌後、50℃に冷却し、5%(V/V)馬無菌脱繊血を加え、シャーレに分注して平板とする。
【0050】
これらの菌株のゲノムDNAの塩基配列を常法により同定した。NCBI(National Center for Biotechnology Information、国立バイオテクノロジー情報センター)の国際塩基配列データベース(GenBank)上で、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)による16S リボソーマルRNA(rRNA)遺伝子配列の全長についての相同性検索を行い、それぞれのタイプストレインと98%以上の相同性を有するラクトコッカス属細菌を615株同定した。ラクトコッカス・ラクティスと98%以上の相同性を有していた550菌株のうち、ラクトースを資化し、かつラクトコッカス・ラクティス亜種のタイプストレインのうちラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスに最も相同性が高い群の菌株をラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスと同定した。得られた菌株はすべて無芽胞、非運動性の通性嫌気性グラム陽性球菌で、カタラーゼおよびガス産生はいずれも陰性であった。得られた菌株のうち、MCC1723、及びMCC1764と名付けられた菌株のrRNA遺伝子の塩基配列を、各々配列番号1及び2に示す。ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスのタイプストレイン(ATCC19435株)の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、GenBankにaccession No. M58837で登録されている。MCC1723及びMCC1764と、ATCC19435との16S rRNA遺伝子の相同性は、それぞれ99.7%および99.6%であった。
【0051】
〔試験例2〕ビフィドバクテリウム・ロンガムとの混合培養試験
まず、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株を、0.6%(W/W)酵母エ
キス及び11%(W/W)脱脂粉乳を含む培地に、培地1mlあたり1.0×10
7〜5.0×10
8 CFU接種し、37℃で4〜6時間培養して、シードカルチャーを得た。
【0052】
また、0.3%(W/W)酵母エキス及び10%(W/W)脱脂粉乳を含む培地に、試験例1で得られたラクトコッカス・ラクティスの各菌株、及び対照として特許第3068484号に記載されているラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスのタイプストレインATCC19435株、並びに国際公開第2008/099543号(特許第4772131号)に記載のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC866株を、培地1mlあたり1.0×10
6〜5.0×10
7 CFU接種し、30℃で16時間培養し、シードカルチャーを得た。
【0053】
得られたラクトコッカス・ラクティスの各菌株のシードカルチャーを培地 1mlあたり2.0×10
6〜2.0×10
7 CFUと、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株を培地 1mlあたり1.0〜5.0×10
7 CFU、さらにストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスを含むヨーグルトスターター(ダニスコ社製)を、それぞれ培地 1mlあたり2.0×10
6、2.0×10
5 CFUを接種し、37℃で8時間〜16時間培養した。この発酵乳を培養温度から10℃に急冷した。発酵乳のpH、及び含有されるビフィズス菌数を測定した。ビフィズス菌数の測定は、TOSプロピオン酸寒天培地(ヤクルト薬品工業社製)平板で40℃、2〜3日の嫌気培養にて行った。
【0054】
急冷した発酵乳をポリスチレン製の容器に分取し、10℃にて3週間保存した。発酵乳のpH、及び含有されるビフィズス菌数を測定した。複数回試験を行ったところ、発酵終了後のpHは4.4〜4.9であった。pHが約4.8〜4.9の場合の結果を表1に、pHが約4.4の場合の結果を表2に示した。表中、「nE+m」は、n×10
mを示す。
【0055】
前記と同様にして培養し、急冷した発酵乳といちごプレザーブを、発酵乳:プレザーブ=88:12(W/W)で均一になるように混合した。いちごプレザーブは、長谷川香料社製の製品を使用した。これらのいちごプレザーブ混合発酵乳はポリスチレン製の容器に分取し、10℃にて2週間保存した。発酵乳のpH、及び含有されるビフィズス菌数を測定した。結果を表3に示した。前記いちごプレザーブ混合発酵乳の官能試験の結果を表4に示した。官能評価は風味が良い(5)〜悪い(1)の5段階評価とし、5人のパネラーによる平均値を示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
異なるpHにて培養が終了した発酵乳において、10℃での保存生残性試験の結果、表1に示したpH4.8〜4.9で発酵終了した場合には、ラクトコッカス・ラクティスを添加しない系ではビフィズス菌数は3週間後にはほぼ死滅しているが、MCC1723株、MCC1764株、及び特許文献2でビフィズス菌の保存生残性効果が示されているATCC19435株を添加した系ではビフィズス菌数が3週間後も高く維持されていた。しかし、表2に示したpH4.4付近で発酵終了した場合においては、ATCC19435株を添加した系では3週間後のビフィズス菌数は非常に低い値となったが、MCC1723株及びMCC1764株を添加した系では2週間後及び3週間後のビフィズス菌数が依然維持されていることが示された。MCC1723及びMCC1764は低いpHの条件下でもビフィズス菌に酸耐性を付与し、保存生残性を向上させる効果を有していると考えられる。
【0061】
表3に示したように、発酵乳ベースにいちごプレザーブを混合した発酵乳ではプレザーブに含まれる酸によりpHが0.1〜0.3程度低下するため混合直後(保存0日後)のpHが4.6付近となり、保存中もpH4.2〜4.3の低いpHとなっていた。MCC1723株では、いちごプレザーブ混合下でも2週間保存後のビフィズス菌数が高く維持されていた。MCC866株(FERM BP-10746)でもある程度ビフィズス菌数は維持されたが、MCC1723株の場合に比べて生残率は低かった。さらに表4に示したように、MCC1723株で作製したいちごプレザーブ混合発酵乳は、5人のパネラーによる官能試験においてもMCC866株よりもヨーグルトの風味としてはあまり好まれない苦味や雑味が少なく感じられ、総じて風味が良好であるとされた。
【0062】
〔実施例1〕ドリンクヨーグルトの製造
0.3%(W/W)酵母エキス、及び10%(W/W)還元脱脂粉乳を含む培地1000mL(90℃で30分間殺菌)に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC1723株のシードカルチャーを30mL接種し、25℃で16時間培養した。一方、0.6%(W/W)酵母エキス、及び11%(W/W)脱脂粉乳を含む培地1000mL(90℃で30分間殺菌)に、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株のシードカルチャーを100mL接種し、37℃で4時間培養した。
【0063】
これとは別に、脱脂粉乳、全粉乳、蔗糖及びペクチンを混合溶解して、乳脂肪0.5%(W/W)、無脂乳固形分8.0%(W/W)、蔗糖8.0%(W/W)、ペクチン0.2%(W/W)からなる乳原料50Lを調製し、90℃で10分間殺菌し、40℃に冷却した。前記殺菌した乳原料に、前記の通り前培養を行ったラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC1723株のカルチャー500mLとビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株のカルチャー500mLを接種し、37℃で16時間培養して発酵乳を得た。
【0064】
前記発酵乳を直ちに攪拌冷却し、冷却発酵乳を15MPaの圧力で均質化し、アロエプレザーブを8%(W/W)添加混合した後、200mL容のガラス容器に充填し、密封し、ドリンクヨーグルトを得た。得られたドリンクヨーグルトは乳酸酸度0.74%、pH4.80、3.6×10
8CFU/mLのビフィズス菌を含有していた。このドリンクヨーグルトを10℃で14日間保存した時のビフィズス菌数は2.3×10
8CFU/mLであり、生残率は64%であった。
【0065】
〔実施例2〕ヨーグルトの製造(I)
還元脱脂粉乳10%(W/W)を含む培地(115℃、20分殺菌)1000mLに、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティスFERM BP-10758株のシードカルチャーを30mL接種し、37℃、16時間培養した。一方、酵母エキス0.1%(W/W)、及び還元脱脂粉乳10%(W/W)を含む培地(90℃、30分殺菌)1000mLにストレプトコッカス・サーモフィルスFERM P-17216株のシードカルチャーを30mL接種し、37℃、5時間培養した。
【0066】
なお、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティスFERM BP-10758株のシードカルチャーは、0.1%(W/W)酵母エキスおよび10%(W/W)還元脱脂粉乳を含む培地に、1.0×10
5〜1.0×10
7CFU接種し、37℃で16時間培養して得た。
【0067】
また、ストレプトコッカス・サーモフィルスFERM P-17216株のシードカルチャーは、0.1%(W/W)酵母エキスおよび10%(W/W)還元脱脂粉乳を含む培地に、1.0×10
5〜1.0×10
7CFU接種し、37℃で16時間培養して得た。
【0068】
脱脂粉乳、クリーム及び乳タンパク質を混合溶解して、乳脂肪3.0%(W/W)、無脂乳固形分12.0%(W/W)からなる乳原料50Lを調製し、70℃に加温し、15MPaの圧力で均質し、90℃で10分間殺菌し、40℃に冷却した。
【0069】
この殺菌した乳原料に、前記の通り前培養を行ったラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティスFERM BP-10758株のカルチャーを50mL、ストレプトコッカス・サーモフィルスFERM P-17216株のカルチャーを225mL、実施例1と同様の方法にて前培養を行ったラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC1723株のカルチャー250mLとビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株のカルチャー500mLを接種し、37℃で4時間培養し、直ちに攪拌冷却し、いちごプレザーブを12%(W/W)添加混合した後、100mL容の紙カップ容器に充填し、密封し、ヨーグルトを得た。
【0070】
得られたヨーグルトは、乳酸酸度0.84%、pH4.53であり、1.5×10
8CFU/mLのビフィズス菌を含有していた。このヨーグルトを10℃で14日間保存した時のビフィズス菌数は7.2×10
7CFU/mLであり、生残率は48%であった。
【0071】
〔実施例3〕ヨーグルトの製造(II)
脱脂粉乳、クリーム及び乳タンパク質を混合溶解し、乳脂肪3.0%(W/W)、無脂乳固形分12.0%(W/W)からなる乳原料50Lを調製し、70℃に加温し、15MPaの圧力で均質化し、90℃で10分間殺菌し、40℃に冷却した。
【0072】
この殺菌した乳原料に、実施例1と同様にして得られたラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC1764株のカルチャー300mLと、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株のカルチャー400mL、さらにストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスを含むヨーグルトスターター(ダニスコ社製)0.002%を接種し、37℃で8時間培養し、直ちに攪拌冷却し、ブルーベリープレザーブを10%(W/W)添加混合した後、100mL容の紙カップ容器に充填し、密封し、ヨーグルトを得た。
【0073】
得られたヨーグルトは乳酸酸度0.85%、pH4.64、2.2×10
8CFU/mLのビフィズス菌を含有していた。この発酵乳を10℃で14日間保存した時のビフィズス菌数は1.7×10
8CFU/mLであり生残率は77%であった。
【0074】
〔実施例4〕ヨーグルトの製造(III)
脱脂粉乳、クリーム及び乳タンパク質を混合溶解し、乳脂肪3.0%(W/W)、無脂乳固形分12.0%(W/W)からなるベース50Lを70℃に加温し、15MPaの圧力で均質化し、90℃で10分間殺菌し、40℃に冷却した。
【0075】
この殺菌した乳原料に、実施例1と同様にして得られたラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスMCC1723株のカルチャー500mLと、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999株の凍結菌体(森永乳業社製)1.5×10
12 CFU 、さらにストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスを含むヨーグルトスターター(ダニスコ社製)0.002%を接種し、37℃で6時間培養し、直ちに攪拌冷却し、りんごプレザーブを14%(W/W)添加混合した後、100mL容の紙カップ容器に充填し、密封し、ヨーグルトを得た。
【0076】
得られたヨーグルトは、乳酸酸度0.90%、pH4.54、3.2×10
8CFU/mLのビフィズス菌を含有していた。この発酵乳を10℃で14日間保存した時のビフィズス菌数は1.8×10
8CFU/mLであり生残率は56%であった。