(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧縮型を、前記離間した位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記突起の先端部が、前記枠型の内周面の前記段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばす位置まで圧縮する前記工程では、前記フィルムを延ばす位置で、前記樹脂を加熱硬化させる、
請求項5または6に記載の圧縮成形方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、基板に搭載した半導体チップを、圧縮成形によって樹脂封止することが行われており、その際に、成形された樹脂封止品の金型からの離型を容易するために離型フィルムが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この離型フィルムを使用した圧縮成形による樹脂封止は、例えば、次のようにして行われる。
【0004】
すなわち、
図8(a)に示すように、図示しない上金型に対向する下金型24は、樹脂封止品の側面を形成する枠状の枠金型22と、この枠金型22内を上下方向に移動可能な圧縮金型23とを備えている。
【0005】
半導体素子20を搭載した基板21を上型に固定し、下型24の表面に、離型フィルム25を吸着して被覆し、この離型フィルム25を被覆した下型24で形成されるキャビティ内に、成形用樹脂26を供給し、上下両型を型締めする。更に、圧縮金型23を、上方へ移動させて成形用樹脂26を加熱溶融させて圧縮することにより、
図8(b)に示すように、成形用樹脂26を硬化させて樹脂封止を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、離型フィルム25を被覆した下型24の圧縮金型23を、キャビティ内の成形用樹脂26を圧縮するために、上方へ移動させる際に、圧縮金型23を移動させた分、下型24の表面に沿って被覆された離型フィルム25が余分になって表面から剥がれて離型フィルム25が弛むことになる。このため、下型24の表面に被覆した離型フィルム25に「シワ(皺)」が発生し易い。
【0008】
図9は、この離型フィルム25のシワの発生を説明するための金型の要部の断面図である。
【0009】
図9(a)は、離型フィルム25が被覆された下型24のキャビティ内に成形用樹脂26が供給され、上型27と下型24の枠金型22とによって、離型フィルム25及び基板21をクランプした初期状態を示している。
【0010】
この初期状態から圧縮金型23を上方へ移動させて加熱溶融した成形用樹脂26を圧縮すると、圧縮金型23を上方へ移動させた分、下型24の表面に沿って被覆された離型フィルム25が余分になって表面から剥がれて離型フィルム25が弛み、
図9(b)に示すように、シワ25aが発生することになる。
【0011】
この離型フィルム25のシワ25aの部分が、樹脂封止品内に入り込み、硬化収縮や摩擦抵抗力の影響によって、樹脂封止品と離型フィルム25とを離す離型が困難となることがある。
【0012】
また、離型フィルム25におけるシワ25aの形状が、キャビティ内で成形される樹脂封止品に転写されて樹脂封止品の品質不良を引き起こすことがある。
【0013】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、フィルムを使用する圧縮成形において、フィルムに発生するシワを除去できるようにしてシワに起因する不具合を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0015】
本発明の圧縮成形用型は、第1の型と該第1の型に対向する第2の型とを備え、該第2の型は、枠状の枠型と、該枠型に嵌合して、前記第1の型に対して近接離間する方向に移動可能な圧縮型とを有
し、前記第1の型と前記枠型とで基板がクランプされ、前記枠型および前記圧縮型それぞれの表面にフィルムが被覆され、前記第2の型のキャビティに樹脂が供給された初期状態から、前記圧縮型が、樹脂封止品の厚さに対応する位置まで前記第1の型に近接する方向へ移動して圧縮成形する圧縮成形用型であって、前記圧縮型の前記第1の型に対向する面の外周縁には、
前記初期状態の前記圧縮型において先端部が前記第1の型に対して離間する突起が形成され、前記枠型の内周面
には、前記初期状態における前記圧縮型の前記突起より前記第1の型に近接する側
に段部が形成さ
れ、前記圧縮型が、前記突起が前記段部から離間している前記初期状態から、前記第1の型に近接する方向へ移動して前記段部と一致するまで圧縮成形し、前記圧縮型が、さらに前記第1の型に近接する方向に移動することによって前記突起が前記段部よりも前記第1の型に近接することによって、前記フィルムが延ばされて圧縮成形する。
【0016】
好ましい実施態様では、前記枠型の枠の開口は、前記段部よりも前記第1の型に対して近接する側が、離間する側に比べて大きい。
他の実施態様では、前記圧縮型は、前記初期状態から前記突起と前記段部とが一致するまでの移動量の2倍以上、前記第1の型に近接する方向に移動できる。
【0017】
本発明の圧縮成形用型によると、第2の型の表面にフィルムを被覆して樹脂を供給して圧縮成形する場合に、第2の型の圧縮型を、第1の型に近接する方向に移動させて圧縮すると、圧縮型の移動量に応じて第2の型の表面に被覆されたフィルムが弛んで枠型の内周面の段部付近にシワが生じるが、圧縮型の第1の型に対向する面の外周縁には、突起が形成されているので、圧縮型を、枠型の内周面に沿って更に前記近接する方向へ移動させると、前記突起が、フィルムを前記近接する方向へ突き出すようにしてシワを延ばして除去することができる。
【0018】
これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことにより、樹脂封止品の品質不良を引き起こすのを防止することができる。
【0019】
本発明の圧縮成形装置は、本発明の圧縮成形用型を備え、前記第2の型の表面をフィルムで被覆すると共に、該フィルムで被覆された第2の型のキャビティに樹脂を供給して圧縮成形するものである。
【0020】
本発明の圧縮成形装置によると、第2の型の表面にフィルムを被覆して樹脂を供給して圧縮成形する場合に、第2の型の圧縮型を、第1の型に近接する方向に移動させて圧縮すると、第2の型の表面に被覆されたフィルムが弛んで枠型の内周面の段部付近にシワが生じるが、圧縮型を、枠型の内周面に沿って更に前記近接する方向へ移動させると、圧縮型の前記突起が、フィルムを前記近接する方向へ突き出すようにしてシワを延ばして除去することができ、これによって、フィルムのシワが、樹脂成形品内に入り込むことを防ぐことにより、樹脂成形品の品質不良を引き起こすのを防止することができる。
【0022】
本発明の圧縮成形方法は、第1の型と該第1の型に対向する第2の型とを備え、該第2の型は、枠状の枠型と、該枠型に嵌合して、前記第1の型に対して近接離間する方向に移動可能な圧縮型とを有し、前記第2の型の表面がフィルムで被覆されると共に、該フィルムで被覆された第2の型のキャビティに樹脂を供給して圧縮成形する方法であって、前記圧縮型は、前記第1の型に対向する面の外周縁に突起を有し、前記枠型は、該枠型の内周面の前記第1の型に近接する側に段部を有しており、前記フィルムが被覆されると共に、前記樹脂が供給された前記第2の型の前記圧縮型を、該圧縮型の前記突起の先端部が、前記枠型の内周面の前記段部よりも、前記第1の型に対して離間した位置に保持する工程と、前記圧縮型を、前記離間した位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記突起の先端部が、前記枠型の内周面の前記段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばす位置まで圧縮する工程と、を備え、前記圧縮型を、前記離間した位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記フィルムを延ばす位置まで圧縮する前記工程は、前記圧縮型を、前記離間した位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記突起の先端部と前記枠型の内周面の前記段部とが一致する位置まで圧縮する第1工程と、前記圧縮型を、前記一致する位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記突起の先端部が、前記枠型の内周面の前記段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばす位置まで圧縮する第2工程とを含む。
【0023】
他の実施態様では、前記第1工程における前記圧縮型の移動量と前記第2工程における前記圧縮型の移動量とが等しい。
【0024】
更に、他の実施態様では、前記圧縮型を、前記離間した位置から前記第1の型に対して近接する方向に移動させて、前記突起の先端部が、前記枠型の内周面の前記段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばす位置まで圧縮する前記工程では、前記フィルムを延ばす位置で、前記樹脂を加熱硬化させる。
【0025】
本発明の圧縮成形方法によると、表面がフィルムで被覆された第2の型のキャビティに樹脂を供給し、第2の型の圧縮型を、該圧縮型の突起の先端部が、枠型の内周面の段部よりも、第1の型に対して離間した位置に保持し、圧縮型を、前記離間した位置から第1の型に対して近接する方向に移動させて、突起の先端部が、枠型の内周面の段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばす位置まで圧縮するので、この圧縮の途中で、第2の型の表面に被覆されたフィルムが弛んで枠型の内周面の段部付近にシワが生じるが、圧縮型を、前記近接する方向に更に移動させることによって、突起の先端部が、枠型の内周面の段部よりも前記近接する方向に突き出して前記フィルムを延ばすので、段部付近のシワを延ばして除去することができる。
【0026】
これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことにより、樹脂封止品の品質不良を引き起こすのを防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第2の型の表面にフィルムを被覆して樹脂材料を供給して圧縮成形する場合に、第2の型の圧縮型を、第1の型に近接する方向に移動させて圧縮すると、第2の型の表面に被覆されたフィルムが弛んで枠型の内周面の段部付近にシワが生じるが、圧縮型の外周縁には、突起が形成されているので、圧縮型が、枠型の内周面に沿って更に前記近接する方向に移動すると、前記突起が、フィルムを前記近接する方向へ突き出すようにしてシワを延ばして除去することができる。
【0028】
これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことにより、樹脂封止品の品質不良を引き起こすのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧縮成形装置の要部の概略構成を示す図である。
【0032】
この実施形態の圧縮成形装置は、上型1と、当該上型1に対向して配置される下型2とを有する金属製の圧縮成形用型を備えている。この圧縮成形用型は、金属製に限らず、セラミックスなどの他の材料で構成されてもよく、一部に他の材料を用いるものであってもよい。
【0033】
圧縮成形用型の下型2は、上下方向に延びる矩形の開口3を有する枠状の枠型4と、この枠型4の矩形の枠に嵌合して上型1に対して接近或いは離間する方向(上下方向)に移動可能な圧縮型5とを備えている。なお、枠型4の開口3は、矩形に限らず、円形等であってもよい。上型1及び下型2は、図示しないプレス機構に連結され、両型1,2を接離可能に構成されている。また、上型1及び下型2には、図示しないヒータが内蔵されており、下型2の枠型4と圧縮型5とによって形成されるキャビティ3aに供給される樹脂材料を加熱させることが可能となっている。
【0034】
この実施形態の圧縮成形装置は、例えば、複数の半導体チップ6を搭載した基板7を、圧縮成形によって樹脂封止するものであり、その際に、成形した樹脂封止品と下型2との離型を容易にするために、離型フィルム(リリースフィルム)8が、下型2の表面に被覆される。
【0035】
この離型フィルム8は、図示しないフィルム供給機構によって供給され、下型2の表面に沿って該表面を覆うように図示しない吸着機構によって吸着保持される。
【0036】
この実施形態では、離型フィルム8を用いた圧縮成形において、離型フィルム8のシワを除去できるように、下型2を次のように構成している。
【0037】
図2は、この実施形態の下型2の部分断面図である。
【0038】
この実施形態では、圧縮型5の上型1に対向する面、すなわち、圧縮型5の表面5bの外周縁には、上方に突出するシワ除去用の突起5aが形成されている。この突起5aは、圧縮型5の表面
5bの矩形の外周縁に沿ってその全周に亘って形成されている。なお、この突起5aは、必ずしも外周縁の全周に亘って形成する必要はなく、その一部に形成してもよい。
【0039】
この突起5aの外周は、圧縮型5の外周に連設されており、枠型4の矩形の枠に摺接する。突起
5aの突出先端部は、水平な平坦面5a1となっており、この平坦面5a1から内方へ傾斜して表面5bに連なる傾斜面5a2となっている。突起5aは、圧縮型5の表面5bから突出しておればよく、その形状は、特に限定されず、例えば、平坦面の幅を変えた形状、平坦面をなくして先端部に丸味を持たせた形状やその他の形状等であってもよい。
【0040】
この実施形態では、枠型4の上型1に近接する側の内周面には、段部4aが形成されており、この段部4aは、矩形の枠型4の内周面に沿ってその全周に亘って形成されている。なお、この段部4aも上記突起5aと同様に、必ずしも内周面の全周に亘って形成する必要はなく、その一部に形成してもよい。
【0041】
この枠型4の段部4aは、枠型4における圧縮型5との摺動面の外方へ水平に突出しており、該段部4aを境界として、段部4aよりも上方は枠の開口3が大きく、段部4aよりも下方は、枠の開口3が小さくなっている。即ち、平面的に見て、キャビティ3aの外側(外周囲)に段部4aが設けられて構成されている。段部4aは、水平な平坦面を有するのが好ましいが、傾斜した傾斜面を有するものとしてもよい。この段部4aによる段差、すなわち、枠型4の上面から段部4aの平坦面までの距離はh2である。
【0042】
圧縮型5の突起5aの高さh1は、種々の条件、例えば、成形品の樹脂封止厚さ、離型フィルム8の種類、封止温度等に応じて、適宜選択することができる。
【0043】
この圧縮型5の突起5aの先端位置と枠型4の段部4aの位置との距離h3は、下型2の表面に離型フィルム8を被覆し、この離型フィルム8を被覆した下型2のキャビティ内に樹脂材料を供給して上下の型1,2を閉じた初期状態の位置(初期位置)から圧縮型5を上方へ移動させて樹脂材料を圧縮して加熱硬化させる上限位置までの全移動量(全ストローク)の1/2程度であるのが好ましい。この実施形態では、全移動量を2B(mm)とすると、その1/2の高さB(mm)としている。
【0044】
言い換えると、枠型4の段部4aは、圧縮型5が前記初期位置にあるときに、圧縮型5の突起5aの先端の平坦部5a
1よりも上方に位置するように形成される。図例では、圧縮型5が前記初期位置にあるときに、枠型4の段部4aは、突起5aの先端の平坦面5a
1よりも突起5aの高さB(h3)だけ上方の位置に形成されている。
【0045】
この実施形態で、圧縮型5を、初期位置から移動量Bだけ上方へ移動させると、段部4aと突起5aの先端の平坦面5a
1とが並んで段差のない、面一な状態となる。
【0046】
次に、この圧縮成形用型を用いた具体的な圧縮成形方法について、
図3の部分断面図に基づいて説明する。なお、この
図3では、基板7のみを示し、半導体チップは省略している。
【0047】
図3(a)は、下型2の表面に離型フィルム8を吸着して被覆し、下型2のキャビティ内に顆粒状の樹脂9を充填し、上型1と下型2の枠型4とによって、離型フィルム8及び基板7をクランプした初期状態を示し、
図3(b)は、樹脂9の少なくとも一部が加熱溶融し、下型2の圧縮型5を上方へ移動させた型締めの途中の状態を示し、
図3(c)は、下型2の圧縮型5を更に上方の上限位置まで移動させて型締めが完了し、樹脂9を加熱硬化させて樹脂封止が完了した状態を示している。
【0048】
図3(a)に示される離型フィルム8の被覆は、フィルム供給機構によって上型1と下型2との間に供給された離型フィルム8を、下型2の吸引孔(図示せず)から吸引して表面に吸着させることによって行われる。
【0049】
その後、顆粒状の樹脂9を下型2のキャビティ内に供給する。このとき、樹脂9を下型2のキャビティへ供給する前に、予めヒータで下型2を、樹脂9が加熱溶融する所定温度近傍まで加熱しておくのが好ましい。
【0050】
半導体チップを搭載した基板7の半導体チップ側を下方向に向けて上型1に吸着固定した状態で、下型2を上昇させて、上型1と下型2の枠型4とによって基板7及び離型フィルム8をクランプする。このクランプした状態が、
図3(a)の初期状態である。
【0051】
この初期状態では、下型2の圧縮型5の突起5aは、枠型4の内周面の段部4aよりも下方、すなわち、段部4aよりも上型1から離間した初期位置に保持されており、この初期位置では、枠型4の段部4aによる段差と、圧縮型5の突起5aの平坦面5a
1による二つの段差が形成されている。離型フィルム8は、これら段差に沿って枠型4の表面、内周面及び圧縮型5の表面に沿うように被覆される。
【0052】
次に、ヒータによって樹脂9の少なくとも一部が加熱溶融し、第1工程として、下型2の圧縮型5を、枠型4に沿って上方へ移動させて圧縮し、
図3(b)に示すように、圧縮型5の突起5aの先端の平坦面5a
1を、枠型4の内周面の段部4aと一致させて同じ高さとし、一つの段差とする。このとき、溶融した樹脂(流動性を有する樹脂)9に、基板7に搭載された半導体チップが浸漬される。
【0053】
この圧縮型5の上方への移動に伴って、その移動量の分、枠型4の内周面及び圧縮型5の表面に沿うように被覆された離型フィルム8が余分となって一部が剥がれて弛み、段部4aによる段差の周辺部にシワ8aが生じる。
【0054】
次に、第2工程として、圧縮型5を、
図3(c)に示すように、樹脂封止品(成形品)の厚さに対応する上限位置まで上方向へ移動させ、所要圧力で圧縮成形する。圧縮型5が上方へ移動することによって、圧縮型5の突起5aが、枠型4の段部4aよりも上型1に近接する方向へ突き出して離型フィルム8のシワ8を押し上げるように引き延ばしシワ8aを除去する。
【0055】
このように圧縮型5の上限位置では、離型フィルム8を延ばしてシワ8aを除去し、このシワ8aが除去された状態で、溶融樹脂が加熱硬化するのに必要な所要時間が経過し、その後、上下型1,2を型開きし、圧縮成形された樹脂封止品を得る。
【0056】
図4は、上述の圧縮型5の上方への移動によるシワ8aの除去について説明するための部分断面図であり、
図4(a)〜(c)が、
図3(a)〜(c)にそれぞれ対応する。
【0057】
また、
図5は、上述の
図9の従来例の
図4に対応する部分断面図であり、
図4及び
図5を参照しながら、従来例と比較して、本実施形態のシワの除去について説明する。なお、
図5の従来例では、下型2´は、内周面に段差のない枠状の枠型4´と、表面に突起のない圧縮型5´とを備えている。
【0058】
図4(a)及び
図5(a)に示される初期状態において、基板7の表面から圧縮型5,5´の表面5bまでの距離、すなわち、初期深さをA(mm)とする。
【0059】
また、Aは、初期状態でのキャビティ3aの深さであり、圧縮型5の表面5bと下型2の型面との距離である。
【0060】
この初期状態では、本実施形態の
図4(a)に示すように、枠型4の段部4aによる段差と、圧縮型5の突起5aの平坦面5a
1による二つの段差が形成され、離型フィルム8は、これら段差に沿って枠型4の表面、内周面及び圧縮型5の表面に沿うように被覆される。
【0061】
この初期状態の位置(初期位置)から圧縮型5,5´を上方へ移動量B(mm)移動させる。これによって、従来例では、
図5(b)に示すように、圧縮型5´が上方へ移動量B(mm)移動したことによって、その分、離型フィルム8が余分となって、枠型4´の内周面の離型フィルム8が弛み、高さが約B/2(mm)のシワ8aが、横方向に突き出すように生じる。
【0062】
これに対して、本実施形態では、
図4(b)に示すように、圧縮型5が上方へ移動量B(mm)移動したことによって、圧縮型5の突起5aの先端の平坦面5a
1が、枠型4の内
周面の段部4aと同じ高さ位置となる。
【0063】
また、圧縮型5が上方へ移動量B移動することによって、その移動量Bの分、離型フィルム8が余分となって、枠型4の段部4aの内周面の離型フィルム8が弛み、圧縮型5の突起5aで押し上げられるようにして、高さが約B/2(mm)のシワ8aが上方へ突き出すように生じる。このとき、基板7の表面から圧縮型5,5´の表面までの距離は、A−Bとなる。
【0064】
次に、圧縮型5,5´を、上方へ更に移動量B移動させて、上限位置とする。
【0065】
従来例では、この移動量B(mm)の圧縮型5´の上方への移動によって、その移動量Bの分、離型フィルム8が更に弛み、
図5(c)に示すように、シワ8aが更に突出して高さが約B(mm)となる。
【0066】
これに対して、本実施形態では、
図4(c)に示すように、圧縮型5を、上方へ移動量B(mm)移動させると、圧縮型5の突起5aが、移動量Bの分だけ上方へ突き出してシワ8aを押し上げるようにしてシワ8aを延ばし、シワ8aを除去することができる。このとき、基板7の表面から圧縮型5,5´の表面5bまでの距離は、A−2Bとなる。なお、この距離A−2Bは、段部4aによる段差h2以上とされる(A−B−B≧h2)。
【0067】
以上のように、この実施形態では、圧縮型5が、初期位置から上限位置までの全移動量2B移動する際に、高さ約Bのシワ8aが生じるのを、高さBの突起5aで離型フィルム8を突き上げるようにして延ばして除去するものである。
【0068】
この実施形態の圧縮成形用型の効果を評価するために、
図2に示す本発明の実施例の下型2と、比較例として、
図6に示す下型2´とをそれぞれ用いて同じ条件で圧縮成形を行って電子部品の樹脂封止を行った。
【0069】
図6に示す比較例の下型2´では、圧縮型5には、
図2の実施例と同様に外周縁に突起5aが形成されているが、枠型4´は、
図2の実施例と異なり、段部4aが設けられていない。
【0070】
図7(a),(b)は、
図2の実施例の下型2及び
図6の比較例の下型2´を用いて樹脂封止された成形品の端部を示す断面図である。
【0071】
比較例の下型2´を用いて樹脂封止された成形品では、
図7(b)に示すように、シワによる欠損部分9´が生じたのに対して、実施例の下型2を用いて樹脂封止された成形品では、シワは認められず、欠損部分も生じなかった。
【0072】
以上のように、この実施形態によれば、離型フィルム8のシワ8aを除去できるので、離型フィルム8のシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことにより、樹脂封止品の品質不良を引き起こすのを防止することができる。
【0073】
しかも、圧縮型5の外周縁に形成した突起5aと、枠型4の内周面に形成した段部4aという簡単な構成によって、離型フィルム8のシワを除去することができ、複雑な機構や調整を必要としない。
【0074】
上述の実施形態では、離型フィルムに適用して説明したけれども、本発明は、離型フィルムに限らず、転写用フィルム等に適用してもよい。
【0075】
また、樹脂9は、顆粒状に限らず、粉状やシート状などの固体樹脂であってもよいし、液状樹脂であってもよい。
【0076】
また、顆粒状の樹脂等の固体樹脂は加熱されて溶融化されることにより、また、液状樹脂は加熱されることにより、流動性を有する樹脂となると共に、熱硬化性の樹脂を用いる場合、熱硬化することになる。
【0077】
また、前記実施例では、熱硬化性の樹脂を用いる例を示したが、熱可塑性の樹脂を用いても良い。