(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774541
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】圧縮成形用型、圧縮成形装置及び圧縮成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20150820BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20150820BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20150820BHJP
B29C 33/68 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/18
B29C43/32
B29C33/68
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-99908(P2012-99908)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-226693(P2013-226693A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】川本 佳久
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−264704(JP,A)
【文献】
特開2009−272398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 33/68
B29C 43/18
B29C 43/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する二つの型を備え、一方の型の表面に、フィルムが吸着被覆される圧縮成形用型であって、
前記一方の型の表面には、キャビティの外周に、前記フィルムを吸着保持する第1吸着溝とその内側で前記フィルムを吸着する第2吸着溝とがそれぞれ形成され、
前記第2吸着溝における内側の溝側面を外側の溝側面よりも緩い傾斜面に形成して、第2吸着溝の断面形状を内外に非対称な拡がり形状となっていると共に、前記一方の型の前記第1吸着溝が形成される外側表面と前記第2吸着溝が形成される内側表面との間に段差を設け、前記第1吸着溝が形成される前記外側表面は、前記第2吸着溝が形成される前記内側表面よりも前記他方の型の表面に近接している、
ことを特徴とする圧縮成形用型。
【請求項2】
前記第2吸着溝における前記外側の溝側面を垂直面とした、
請求項1に記載の圧縮成形用型。
【請求項3】
前記一方の型が下型である、
請求項1または2に記載の圧縮成形用型。
【請求項4】
前記請求項1または2に記載の圧縮成形用型を備え、
前記一方の型の表面をフィルムで被覆すると共に、該フィルムで被覆された一方の型のキャビティに樹脂材料を供給して圧縮成形する、
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項5】
前記一方の型が下型である、
請求項4に記載の圧縮成形装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の圧縮成形用型の前記一方の型に、フィルムを供給する工程と、
前記一方の型における前記第1吸着溝を介して前記フィルムの外周部を吸着固定する工程と、
前記一方の型における前記第2吸着溝を介して前記フィルムを吸引する工程と、
前記一方の型におけるキャビティを真空引きして前記フィルムを前記一方の型の表面に沿って被覆する工程と、
キャビティ内に樹脂材料を供給して型締めする工程と、
を含むことを特徴とする圧縮成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形によって半導体チップ等を樹脂封止するのに好適な圧縮成形用型、それを用いた圧縮成形装置及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、基板に搭載した半導体チップを圧縮成形によって樹脂封止することが行われており、その際に、成形された樹脂封止品の金型からの離型を容易するために離型フィルム(リリースフィルム)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この離型フィルムは、金型に供給されると、金型の表面に形成された複数の吸着溝を介して真空吸引され、金型の表面に沿って密着被覆される。
【0004】
図8は、従来の金型の下型表面に形成された吸着溝及び離型フィルムを示す要部の拡大断面図である。
【0005】
下型1Aは、枠型1aaとこれに昇降自在に挿嵌された圧縮型1abとを備えており、両型1aa,1abによってキャビティCが構成される。
【0006】
枠型1aaの上面には、二つの吸着溝5,6aがそれぞれ形成されており、各吸着溝5,
6aは、それぞれが図示されていない吸気路を介して真空吸引装置に連通接続されている。
【0007】
離型フィルム4が、下型1Aに供給載置されると、枠型1aaの外周側の吸着溝5を介して真空吸引されて離型フィルム4の外周が吸着保持される。
【0008】
次に、吸着溝5よりも内周側の吸着溝6aを介して離型フィルム4の内周側を吸引し、更に、キャビティC側の図示しない吸着溝を介して離型フィルム4を吸引して、離型フィルム4を下型1Aの表面に吸着被覆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−166415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
下型1Aに供給された離型フィルム4は、上述のように、先ず外側の吸着溝5を介して吸引して離型フィルム4を吸着固定し、次いで、内側の吸着溝6aを介して吸引することで、外周で固定された離型フィルム4を伸ばして緊張させる。その後、キャビティC側を真空引きして離型フィルム4を、キャビティCを構成する下型1Aの表面に沿って密着被覆する。
【0011】
離型フィルム4の吸着溝5,6aによる吸引処理において、離型フィルム4を伸ばして緊張させる内側の吸着溝6aは、その断面形状が内外に対称なV形あるいは角形であったために、吸着溝6aに被さった限られた領域での引っ張り作用を発揮するだけで、キャビティC側にまで引っ張り作用が十分及ばず、キャビティC側の離型フィルム4部分にシワが生じることがあった。
【0012】
キャビティC側の離型フィルム4部分にシワが生じると、真空引きによって離型フィルム4がキャビティを構成する下型1Aの表面に密着被覆させても、シワの一部が残ったままとなることがある。この離型フィルム4のシワの部分が、樹脂封止品内に入り込み、硬化収縮や摩擦抵抗力の影響によって、樹脂封止品と離型フィルムとを離す離型が困難となることがある。
【0013】
また、離型フィルム4におけるシワの形状が、キャビティ内で成形される樹脂封止品に転写されて樹脂封止品の品質不良を引き起こすことがある。
【0014】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、フィルムを使用する圧縮成形において、シワの発生を防止してシワに起因する不具合を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0016】
(1)本発明は、互いに対向する二つの型を備え、一方の型の表面に、フィルムが吸着被覆される圧縮成形用型であって、前記一方の型の表面には、キャビティの外周に、前記フィルムを吸着保持する第1吸着溝とその内側で前記フィルムを吸着する第2吸着溝とがそれぞれ形成され、前記第2吸着溝における内側の溝側面を外側の溝側面よりも緩い傾斜面に形成して、第2吸着溝の断面形状を内外に非対称な拡がり形状と
なっていると共に、前記一方の型の前記第1吸着溝が形成される外側表面と前記第2吸着溝が形成される内側表面との間に段差を設け、前記第1吸着溝が形成される前記外側表面は、前記第2吸着溝が形成される前記内側表面よりも前記他方の型の表面に近接している。
【0017】
本発明の圧縮成形用型によると、開放された二つの型の一方の型にフィルムを供給し、先ず、第1吸着溝によってフィルムの外周部を一方の型の表面に吸着固定する。次に、その内側の第2吸着溝によってフィルムを吸着し、その際にフィルムが伸ばされる。この場合、第2吸着溝の外側の溝側面よりも内側の溝側面が緩く傾斜しているので、フィルムに働く吸引力の合力は斜め外方に向かうことになり、キャビティに被さる離型フィルム部分は外方に向けて伸ばされる。従って、その後にキャビティ側を真空引きする際に、予め引き伸ばされたフィルムはキャビティを構成する一方の型の表面にシワの発生なく密着被覆される。これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことができ、樹脂封止品の品質不良等を引き起こすのを防止することができる。
また、一方の型に吸着されるフィルム部分が、外側表面と内側表面との境界にある段差の角に押し付けられることになり、この角部での摩擦抵抗によって、第2吸着溝の外側におけるフィルムのキャビティ側への引きずり移動が阻止される。従って、第2吸着溝の外側におけるフィルムの固定が確実になることで、第2吸着溝の吸引によりキャビティに被さるフィルム部分の外方への引き伸ばしが一層効果的に実行される。
また、第2吸着溝の吸引によって一方の型の表面に吸着されるフィルム部分が、外側上面と内側上面との境界にある段差の角に押し付けられることになり、この角部での摩擦抵抗によって、第2吸着溝の外側におけるフィルムのキャビティ側への引きずり移動が阻止される。
【0018】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第2吸着溝における前記外側の溝側面を垂直面とした。
【0019】
この実施態様によると、フィルムに働く吸引力の合力は効率よく斜め外方に向かうことになり、キャビティに被さる離型フィルム部分の外方への引き伸ばしを好適に行うことができる。
【0020】
(3)本発明の他の実施態様では、
前記一方の型が下型である。
【0024】
(4)本発明の圧縮成形装置は、本発明の圧縮成形用型を備え、前記一方の型の表面をフィルムで被覆すると共に、該フィルムで被覆された一方の型のキャビティに樹脂材料を供給して圧縮成形する。
(5)本発明の好ましい実施態様では、前記一方の型が下型である。
【0025】
本発明の圧縮成形装置によると、圧縮成形用型の一方の型の表面に形成された第2吸着溝は、外側の溝側面よりも内側の溝側面が緩く傾斜しているので、キャビティに被さるフィルム部分を外方に向けて効率的に伸ばすことができ、その後にキャビティ側を真空引きする際に、予め引き伸ばされたフィルムはキャビティを構成する一方の型の表面にシワの発生なく密着被覆される。これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことができ、樹脂封止品の品質不良等を引き起こすのを防止することができる。
【0026】
(6)本発明の圧縮成形方法は、本発明の圧縮成形用型の前記一方の型に、フィルムを供給する工程と、前記一方の型における前記第1吸着溝を介して前記フィルムの外周部を吸着固定する工程と、前記一方の型における前記第2吸着溝を介して前記フィルムを吸着する工程と、前記一方の型におけるキャビティを真空引きして前記フィルムを前記一方の型の表面に沿って吸着被覆する工程と、キャビティ内に樹脂材料を供給して型締めする工程とを含む。
【0027】
本発明の圧縮成形方法によると、外側の第1吸着溝とその内側に位置する第2吸着溝を介してフィルムを順次吸引することで、フィルム外周部の吸着固定、及び、キャビティに被さるフィルム部分の外方への引き伸ばしを行うことができ、その後のキャビティ側での真空引きによって、フィルムを、キャビティを構成する一方の型の表面にシワの発生なく密着被覆することができる。従って、その後の型締め成形によって得られる樹脂封止品内にシワが入り込んだり、転写されたりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明によれば、外側の第1吸着溝でフィルムの外周部を吸着固定した上で、内側の第2吸着溝の吸引作用でフィルムを的確に引き伸ばすことができ、その後の真空引きによってフィルムをシワの無い状態でキャビティを構成する型の表面全体に密着して被覆することができる。
【0029】
これによって、フィルムのシワが、樹脂封止品内に入り込むことを防ぐことができ、樹脂封止品の品質不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は圧縮成形装置の要部の概略を示す縦断正面図である。
【
図3】
図3は樹脂封止工程を示す縦断正面図である。
【
図5】
図5は樹脂封止工程を示す縦断正面図である。
【
図6】
図6は樹脂封止工程を示す縦断正面図である。
【
図7】
図7は樹脂封止工程を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
〔実施形態1〕
図1に、本発明の実施形態に係る圧縮成形装置の要部の概略構成が示されている。
【0033】
この実施形態の圧縮成形装置に用いられる圧縮成形用型1は、キャビティCを構成する下型1Aと、半導体チップ2が実装された基板3を下向きに支持して昇降する上型1Bとの二つの型を備えており、互いに対向している。
【0034】
一方の型である下型1Aは、枠型1aaとこれに昇降自在に挿嵌された圧縮型1abとから構成されている。
【0035】
下型1Aにおける枠型1aaの上面は、外側上面F1が内側上面F2よりも高い段差Hをもって形成され、その外側上面F1に、下型1Aの上面に供給載置された離型フィルム4を吸着固定する第1吸着溝5が形成され、内側上面F2に、離型フィルムフ4を吸引して伸ばす第2吸着溝6が形成されている。
【0036】
各吸着溝5,6は、その下部が、図示しない吸気路を介して真空吸引装置に連通接続されている。なお、外側上面F1と内側上面F2との間に段差Hを形成することなく、同じ高さに形成してもよい。
【0037】
前記第1吸着溝5は、
図2の一部拡大図に示すように、その断面形状が上拡がりの逆台形に形成される。第2吸着溝6は、その断面形状が上拡がりに形成され、かつ、第2吸着溝6の外側の溝側面s1が垂直面に形成されるとともに、内側(キャビティ側)の溝側面s2は緩い傾斜面に形成されている。すなわち、第2吸着溝6の断面形状が、内外に非対称の上拡がり形状に設定されている。
【0038】
この実施形態の圧縮成形用型1は以上のように構成されており、この圧縮成形用型1を用いた圧縮成形について以下に説明する。
【0039】
(1)先ず、開放された圧縮成形用型1に離型フィルム4が供給され、下型1Aの上に位置決め載置される。
【0040】
(2)次いで、離型フィルム4が、第1吸着溝5を介して吸引されて、
図3に示すように、離型フィルム4の外周部が枠型1aaの外側上面F1に吸着固定される。
【0041】
第1吸着溝5は、断面形状が内外対称な逆台形状であるので、この第1吸着溝5全体の吸引合力は直下方に向けて作用し、離型フィルム4を内外方向へずれ動くことなく外側上面F1に確実に吸着固定することができる。
【0042】
(3)次に、第2吸着溝6を介して吸引されて離型フィルム4が伸ばされる。この場合、第2吸着溝6の外側の溝側面s1が垂直面であるのに対して、内側の溝側面s2が緩く傾斜しているので、離型フィルム4に働く吸引力の合力は斜め下外方に向かうことになり、キャビティCに被さる離型フィルム4部分は外方に向けて伸ばされる。
【0043】
なお、第2吸着溝6の吸引作用によって内側上面F2に吸着される離型フィルム部分が、外側上面F1と内側上面F2との境界にある段差の角に押し付けられることになり、この角部での摩擦抵抗によって、第2吸着溝6の外側における離型フィルム4のキャビティC側への引きずり移動が阻止される。従って、第2吸着溝6の外側における離型フィルム4の固定が確実になることで、第2吸着溝6の吸引によりキャビティCに被さる離型フィルム4部分の外方への引き伸ばしが一層効果的に実行される。
【0044】
(4)離型フィルム4の上記吸引が完了すると、
図5に示すように、下型1AのキャビティCが枠型1aaと圧縮型1abとの嵌合部などに形成されている吸気路を介して真空引きされ、これによって離型フィルム4はキャビティCを構成する下型1Aの表面に沿って変形されながら被覆される。この際、離型フィルム4は引き伸ばされているので、シワが発生することなくキャビティCを構成する下型1Aの表面の全体に密着されて被覆されることになる。
【0045】
(5)次に、
図5中に示すように、キャビティCへ樹脂材料7を所定量だけ注入した後、
図6に示すように、基板3を支持した上型1Bの下降、圧縮型1abの上昇が行われて型締めがなされる。
【0046】
(6)樹脂材料7が硬化すると、
図7に示すように、圧縮成形用型1を開放して樹脂封止品が取り出されるとともに、使用済みの離型フィルム4が搬出される。
【0047】
以上で1回の封止成形が完了し、以降、上記処理が繰り返される。
【0048】
この実施形態によれば、離型フィルム4は、シワを生じることなく、下型
1Aの表面に沿って密着被覆されるので、離型フィルム4のシワが、樹脂封止品内に入り込むことがなく、樹脂封止品の品質不良を防止することができる。
〔他の実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0049】
(1)離型フィルム4は1枚ずつ供給してもよく、また、原反ロールから繰り出した離型フィルム4を所定量ずつ圧縮成形用型1に供給する形態で実施することもできる。
【0050】
(2)第2吸着溝6における外側の溝側面s1は垂直であることが望ましいが、若干外側に傾斜してもよい。
【0051】
(3)上記実施形態とは逆に、第1吸着溝5が設けられる外側上面F1を、第2吸着溝6が設けられる内側上面F2より低くして実施することもできる。
【0052】
(4)本発明は、下型1Aと上型1Bとを上下反転して配置する仕様のものに適用することもできる。
【0053】
(5)上述の実施形態では、離型フィルムに適用して説明したけれども、本発明は、離型フィルムに限らず、転写用フィルム等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮成形用型
1A 下型
1B 上型
2 半導体チップ
3 基板
4 離型フィルム
5 第1吸着溝
6 第2吸着溝
C キャビティ
F1 外側上面
F2 内側上面
s1 溝側面(外側)
s2 溝側面(内側)
H 段差