特許第5774555号(P5774555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5774555-入力装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774555
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20150820BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G06F3/041 522
   G06F3/044 120
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-171916(P2012-171916)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-32494(P2014-32494A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(72)【発明者】
【氏名】安江 良文
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−170617(JP,A)
【文献】 特開2003−233464(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0322351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルに設けられた複数の電極が接続され、当該複数の電極を選択的に接続する選択回路と、
前記選択回路に接続された内部抵抗を測定するためのラインと、
前記複数の電極に定電流の電源を供給する定電流源と、
前記選択回路と接続されて前記複数の電極の電圧又は前記ラインが接続された場合の測定値をそれぞれ測定するA/D変換部と、
前記選択回路を制御して、前記複数の電極の一の電圧又は前記ラインが接続された場合の測定値を前記A/D変換部に測定させ、当該複数の電極の一の電圧と、前記ラインが接続された場合の測定値に基づいて前記複数の電極の一の静電容量を算出する制御部とを有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記選択回路に接続された補正用抵抗をさらに有し、
前記A/D変換部は、前記補正用抵抗が接続された場合の測定値を測定し、
前記制御部は、前記ラインが接続された場合の測定値に基づいて、前記補正用抵抗が接続された場合の測定値から前記内部抵抗の影響による値を差し引き、前記複数の電極の一の電圧から前記内部抵抗の影響による値を差し引いて、前記複数の電極の一の静電容量を算出することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、静電容量方式のタッチパネルに設けられた電極に電荷が充電される際の充電時間と放電される際の放電時間を計測して誤検知を防止する入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この入力装置は、接触検出領域に二次元的に配置された複数の電極の対と、複数の電極の対をそれぞれ順次選択する選択回路と、選択回路によって選択された電極の対を充電する充電回路と、充電回路が電極の対に充電を開始してから予め定めた上閾値になるまでの充電時間を計測する充電時間計測回路と、充電された電極の対を放電する放電回路と、放電回路が、予め定めた上閾値まで充電された電極の対の放電を開始してから予め定めた下閾値になるまでの放電時間を計測する放電時間計測回路とを有し、充電時間と放電時間の比に基づいてタッチ領域に対する接触体の接触を検知したのか誤検知であるのかを判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−76515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す入力装置は、誤検知であるか否かを判別できるが、選択回路や計測回路等の内部抵抗が充電時間及び放電時間に与える影響を考慮したものではなく、検出誤差の影響を抑制して接触を検知するものではでない。
【0006】
従って、本発明の目的は、内部抵抗に基づく検出誤差の影響を抑制して接触を検知することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、静電容量方式のタッチパネルに設けられた複数の電極が接続され、当該複数の電極を選択的に接続する選択回路と、
前記選択回路に接続された内部抵抗を測定するためのラインと、
前記複数の電極に定電流の電源を供給する定電流源と、
前記選択回路と接続されて前記複数の電極の電圧又は前記ラインが接続された場合の測定値をそれぞれ測定するA/D変換部と、
前記選択回路を制御して、前記複数の電極の一の電圧又は前記ラインが接続された場合の測定値を前記A/D変換部に測定させ、当該複数の電極の一の電圧と、前記ラインが接続された場合の測定値に基づいて前記複数の電極の一の静電容量を算出する制御部とを有することを特徴とする入力装置を提供する。
【0008】
上記入力装置は、前記選択回路に接続された補正用抵抗をさらに有し、上記入力装置のA/D変換部は、前記補正用抵抗が接続された場合の測定値を測定し、上記入力装置の制御部は、前記ラインが接続された場合の測定値に基づいて、前記補正用抵抗が接続された場合の測定値から前記内部抵抗の影響による値を差し引き、前記複数の電極の一の電圧から前記内部抵抗の影響による値を差し引いて、前記複数の電極の一の静電容量を算出してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部抵抗に基づく検出誤差の影響を抑制して接触を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る入力装置の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、入力装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(入力装置の構成)
図1は、実施の形態に係る入力装置の構成の一例を示す概略図である。
【0012】
この入力装置1は、静電容量方式のタッチパネル3から操作者の入力操作に基づいた静電容量の変化を検出して接触座標を検出する信号処理部2と、接触検出領域の下にマトリクス状に設けられた電極30〜30を有するタッチパネル3と、信号処理部2とタッチパネル3とを接続する電極コネクタ4とを有する。
【0013】
また、入力装置1は、一例として、車両の空調やオーディオ等の操作部として、また、携帯型音楽プレイヤー、携帯電話等の電化製品の操作部として用いられる。
【0014】
信号処理部2は、一例としてIC等で構成され、選択回路としてのマルチプレクサ(以下、「MUX」という。)20と、定電流を発生する定電流源21と、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部22と、補正用抵抗のRCALと、グランドに接続されたラインLoffsetと、電界効果トランジスタのFET、FETと、制御部23とを有する。なお、RICは信号処理部2の内部抵抗である。
【0015】
MUX20は、スイッチ20−20と、スイッチ20CALと、スイッチ20offsetを有し、スイッチ20−20、スイッチ20CAL及びスイッチ20offsetのオン/オフ状態を切り替えることで、タッチパネル3の電極30〜30と、補正用抵抗RCALと、直接接地されたラインLoffsetとを順次切り替えて接続する。なお、RMSはMUX20の内部抵抗である。
【0016】
定電流源21は、定電流を発生する電源21aと、電源21aから出力される定電流の電源の外部に対する出力を制御するFET21bと、定電流源21と外部との接続を切り替えるスイッチ21cとを有する。
【0017】
A/D変換部22は、A/D変換部22と外部との接続を切り替えるスイッチ22aと、ホールド用コンデンサのCHOLDとを有する。なお、VSSは、グランド電圧を指す。
【0018】
制御部23は、MUX20のスイッチ20−20、スイッチ20CAL及びスイッチ20offsetの切り替え制御と、定電流源21のFET21bの制御及びスイッチ21cの切り替え制御と、A/D変換部22の制御及びA/D変換部22のスイッチ22aの切り替え制御と、FET及びFETの切り替え制御とを行う。なお、FET及びFETは、サージ電流対策のために設けられる。
【0019】
タッチパネル3は、接触検出領域がPET(Polyethylene terephthalate)フィルムやガラス等のカバーで覆われ、カバーの裏面に印刷やスパッタ等により導電ポリマーやITO等の導電膜を被着して形成されてマトリクス状に配置された電極30−30とを有する。なお、タッチパネル3は、表示部に重ねて設けられるものであってもよい。
【0020】
(動作)
以下に、入力装置1の動作を図1図2を参照しつつ、説明する。また、図2は、入力装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0021】
まず、制御部23はMUX20を制御して、スイッチ20offsetをオンにした状態で、A/D変換部22を制御して内部抵抗RIC及びRMS間のオフセット電圧Voffsetを測定する(S1)。
【0022】
次に、制御部23はMUX20を制御して、スイッチ20CALをオンにした状態で、A/D変換部22を制御して、定電流源21からRCALに流れる電流値Ichを以下の式(1)から算出する(S2)。なお、補正用抵抗RCAL及び内部抵抗RIC、RMS間の電圧、つまりA/D変換部22で測定される電圧をVCALとする。すると、補正用抵抗RCALに加わる電圧は、VCAL−Voffsetであるので、電流値Ichは、
【数1】
と表される。
【0023】
次に、制御部23はMUX20を制御して、電極30より順に(S3)、他の電極30〜30のスイッチ20〜20をオフにした状態とし、電極30のスイッチ20をオンにした状態で、A/D変換部22を制御して電極30に加わる電圧を測定する(S4)。
【0024】
次に、電極30の静電容量Cを以下に示す方法で、式(2)から算出する(S5)。
【0025】
まず、制御部23は、定電流源21を制御して一定時間Tchg、電極30及びホールドコンデンサCHOLDを充電する。
【0026】
次に、制御部23は、A/D変換部22を制御して電圧Vを測定する。A/D変換部22で測定される電圧をVとすると、電極30に加わる電圧は、V−Voffsetであるので、n番目の電極の静電容量Cは、
【数2】
となる。
【0027】
なお、上記したステップS4、S5の処理は、一例として、1つの電極あたり50μsec毎に行われ、すべての電極に対して行われる(S6、S7)。
【0028】
なお、利用者がタッチパネル3に触れることで接触体の一例としての指と電極30〜30との間に生じる静電容量をCとすると、A/D変換部22で測定される電圧Vは、以下に示す式(3)で表される。
【数3】
【0029】
次に、制御部23は、式(3)において算出した値に基づいて、利用者の指等が接触したタッチパネル上の座標を判定する(S8)。
【0030】
次に、制御部23は、判定したタッチパネル上の座標を接触座標値として出力する(S9)。
【0031】
なお、出力された接触座標値は、外部又は制御部23において、予め用意された座標値と制御信号とを対応付けた図示しないテーブル等を参照することにより、制御信号へと変換し、例えば、車両の空調やオーディオ等を制御したり、携帯型音楽プレイヤー、携帯電話等の動作を制御する。
【0032】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、MUX20に補正用抵抗RCAL及びラインLoffsetを接続し、ラインLoffsetを接続した場合の測定値から内部抵抗RIC及びRMSの影響による電圧増加分Voffsetを算出して、補正用抵抗RCALを接続した場合の測定値から内部抵抗RIC及びRMSの影響を受けない電流値Ichを算出して、最終的に内部抵抗RIC及びRMSの影響を受けない電極30−30の静電容量を算出したため、内部抵抗に基づく検出誤差の影響を抑制してタッチパネル3に対する接触体の接触を検知することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは調整しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 入力装置
2 信号処理部
3 タッチパネル
4 電極コネクタ
20 MUX
20-20、20CAL スイッチ
21 定電流源
21a 電源
21b FET
21c スイッチ
22 A/D変換部
22a スイッチ
23 制御部
30-30 電極
図1
図2