特許第5774560号(P5774560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774560
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-181375(P2012-181375)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-36778(P2014-36778A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】島崎 正
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−220801(JP,A)
【文献】 特開2010−36041(JP,A)
【文献】 特許第5303147(JP,B2)
【文献】 特許第5203605(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/51998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生体組織に対する超音波の送受信により得られたエコー信号に基づいて、生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
該物理量算出部で算出された物理量に対応する表示形態を示す情報を有する弾性画像データを作成する弾性画像データ作成部と、
前記物理量に対応する表示形態を有する弾性画像が、前記弾性画像データに基づいて表示される表示部と、
前記被検体の心拍動と関係する値を算出する算出部と、
を備え、
前記弾性画像データ作成部は、前記物理量と前記表示形態を示す情報との対応情報であって、前記被検体の心拍動と関係する値に応じて設定される物理量の範囲において、前記表示形態を示す情報が物理量に応じて変わる対応情報に基づいて、前記弾性画像データを作成する
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記心拍動と関係する値は、心拍による心臓壁の移動量であることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記心拍動と関係する値は、心臓において、心拍動により肝臓に対する圧迫とその弛緩を行なう部分の移動量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記移動量は、前記生体組織の超音波画像において前記生体組織の特定部位をトラッキングすることにより算出されることを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記移動量は、エコー信号に基づいて算出される前記生体組織の特定部位の速度に基づいて算出されることを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記心拍動と関係する値は、心拍動と相関関係がある心機能指標であることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記心機能指標は、Ejection Fractionであることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記心拍動と関係する値が、心拍動が大きいことを示す値であるほど、弾性変形しやすいことを示す物理量を含むように、前記物理量の範囲が拡張設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記物理量の範囲の最大値が、前記被検体の心拍動と関係する値に応じて調節されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
コンピュータに、
被検体の生体組織に対する超音波の送受信により得られたエコー信号に基づいて、生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、
該物理量算出機能で算出された物理量に対応する表示形態を示す情報を有する弾性画像データを作成する弾性画像データ作成機能と、
前記物理量に対応する表示形態を有する弾性画像を、前記弾性画像データに基づいて表示させる画像表示制御機能と、
前記被検体の心拍動と関係する値を算出する算出機能と、
を実行させる超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記弾性画像データ作成機能は、前記物理量と前記表示形態を示す情報との対応情報であって、前記被検体の心拍動と関係する値に応じて設定される物理量の範囲において、前記表示形態を示す情報が物理量に応じて変わる対応情報に基づいて前記弾性画像データを作成する機能である
ことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体における生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像が表示される超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のBモード画像と、被検体における生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像とを合成して表示させる超音波診断装置が、例えば特許文献1などに開示されている。前記弾性画像は例えば以下のようにして作成される。先ず、被検体の生体組織を変形させるなどしながら超音波の送受信が行なわれ、得られたエコー信号に基づいて被検体の弾性に関する物理量が算出される。物理量は例えば歪みである。次に、算出された物理量に基づいて、弾性に応じた色を示す情報を有する弾性画像データが作成される。この弾性画像データは、物理量と色を示す情報との対応情報に基づいて作成される。対応情報においては、所定の物理量の範囲において、色を示す情報が物理量に応じて変わるようになっている。そして、このような対応情報に基づいて作成された弾性画像データに基づいて、弾性に応じた色を有する弾性画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、弾性画像を表示することができる超音波診断装置によって肝疾患の評価をすることが求められている。肝臓の弾性画像は、心拍動によって肝臓が圧迫とその弛緩を繰り返して変形することを利用して作成される。ここで、心拍動による肝臓への圧迫とその弛緩の度合は、被検体によって異なることもあり、同じ弾性を有する肝臓であっても歪みが異なる場合がある。従って、同じ弾性を有する肝臓であっても弾性画像において異なる色で表示されるおそれがある。
【0005】
このような事情から、圧迫とその弛緩の度合を考慮して作成された弾性画像を表示させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するためになされた発明は、被検体の生体組織に対する超音波の送受信により得られたエコー信号に基づいて、生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、この物理量算出部で算出された物理量に対応する表示形態を示す情報を有する弾性画像データを作成する弾性画像データ作成部と、 前記物理量に対応する表示形態を有する弾性画像が、前記弾性画像データに基づいて表示される表示部と、前記被検体の心拍動と関係する値を算出する算出部と、を備え、 前記弾性画像データ作成部は、前記物理量と前記表示形態を示す情報との対応情報であって、前記被検体の心拍動と関係する値に応じて設定される物理量の範囲において、前記表示形態を示す情報が物理量に応じて変わる対応情報に基づいて、前記弾性画像データを作成することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記観点の発明によれば、前記被検体の心拍動と関係する値に基づいて設定される所定の物理量の範囲において、前記表示形態を示す情報が物理量に応じて変わる対応情報に基づいて、前記弾性画像データが作成されるので、心拍動による生体組織への圧迫とその弛緩の度合が考慮して作成された弾性画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】第一実施形態の超音波診断装置におけるエコーデータ処理部の構成を示すブロック図である。
図3図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
図4】色変換テーブルの一例を示す図である。
図5】表示部に表示された合成超音波画像の一例を示す図である。
図6】第一実施形態の超音波診断装置における制御部の構成を示すブロック図である。
図7】第一実施形態の超音波診断装置の作用の一例を示すフローチャートである。
図8】心拍動と関係する値に応じて設定される色変換テーブルを説明する図である。
図9】第一実施形態の変形例の超音波診断装置におけるエコーデータ処理部の構成を示すブロック図である。
図10】第二実施形態の超音波診断装置における制御部の構成を示すブロック図である。
図11】第二実施形態の超音波診断装置の作用の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1図8に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。
【0010】
前記超音波プローブ2は、被検体に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコーについて、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信ビームフォーマ3で信号処理されたエコーデータは、前記エコーデータ処理部4に出力される。
【0011】
前記エコーデータ処理部4は、図2に示すように、Bモードデータ作成部41及び物理量データ作成部42を有する。前記Bモードデータ作成部41は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。Bモードデータは、前記記憶部9に記憶されてもよい。
【0012】
前記物理量データ作成部42は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、被検体における各部の弾性に関する物理量を算出して物理量データを作成する(物理量算出機能)。前記物理量データ作成部42は、例えば特開2008−126079号公報に記載されているように、一の走査面における同一音線上の時間的に異なるエコーデータに相関ウィンドウを設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記弾性に関する物理量を画素毎に算出し、一フレーム分の物理量データを作成する。従って、二フレーム分のエコーデータから一フレーム分の物理量データが得られ、後述するように弾性画像が作成される。
【0013】
前記物理量データ作成部42は、前記弾性に関する物理量として、本例では歪みを算出する。すなわち、前記物理量データは歪みのデータである。本例では、後述するように心拍動により肝臓に対する圧迫とその弛緩が行われて肝臓が変形することによる歪みが算出される。前記物理量データ作成部42は、本発明における物理量算出部の実施の形態の一例であり、また前記物理量算出機能は本発明における物理量算出機能の実施の形態の一例である。
【0014】
前記物理量データは、前記記憶部9に記憶されてもよい。
【0015】
前記表示制御部5には、前記Bモードデータ作成部41からのBモードデータ及び前記物理量データ作成部42からの物理量データが入力されるようになっている。前記表示制御部5は、図3に示すように、Bモード画像データ作成部51、弾性画像データ作成部52、画像表示制御部53を有している。
【0016】
前記Bモード画像データ作成部51は、前記Bモードデータについてスキャンコンバータ(scan converter)による走査変換を行ない、エコーの信号強度に応じた輝度を示す情報を有するBモード画像データに変換する。前記Bモード画像データは例えば256階調の輝度を示す情報を有する。
【0017】
前記弾性画像データ作成部52は、前記物理量データを、色を示す情報に変換するとともに、スキャンコンバータによる走査変換を行ない、歪みに応じた色を示す情報を有するカラー弾性画像データを作成する(カラー弾性画像データ作成機能)。前記弾性画像データ作成部52は、物理量データを階調化し、各階調に割り当てられた色を示す情報からなるカラー弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部52は、本発明における弾性画像データ作成部の実施の形態の一例であり、前記カラー弾性画像データは、本発明において物理量に対応する表示形態を示す情報を有する弾性画像データの実施の形態の一例である。表示形態を示す情報は、本例では色を示す情報である。また、前記カラー弾性画像データ作成機能は、本発明における弾性画像データ作成機能の実施の形態の一例である。
【0018】
前記弾性画像データ作成部52は、色変換テーブルTAに基づいて、前記物理量データを、色を示す情報(以下「色情報」と云う)に変換することにより、物理量に対応する色情報からなる前記カラー弾性画像データを作成する。前記色情報は、本発明における表示形態を示す情報の実施の形態の一例である。
【0019】
前記色変換テーブルTAについて説明する。色変換テーブルTAは、歪みと色情報との対応情報である。この色変換テーブルTAによって変換される色情報は、所定の階調数(0〜N)である。例えば、階調数は256である(N=255)。
【0020】
色変換テーブルTAは、例えば図4に示されたグラフで示すことができる。この図4に示された色変換テーブルTAは、傾き部分Slと水平部分Hrを有するグラフになっている。本例では、零から歪みStmaxまでの歪みの範囲Xが、前記傾き部分Slになっている。
【0021】
前記傾き部分Slにおいて、色情報は、歪みに応じて段階的に変わるように設定されている。例えば、階調0は青を示す色情報であり、階調Nは赤を示す色情報である。また、階調0と階調Nの中央の階調である階調N/2は、緑を示す色情報である。この場合、階調0から階調N/2にかけて青から緑に色が変わり、階調N/2から階調Nにかけて緑から赤に色が変わる。
【0022】
前記歪みの範囲Xにおける歪みの最大値Stmaxは階調Nに変換される。また、この最大値Stmax以上の歪みは階調Nに変換される。すなわち、前記水平部分Hrにおいては、歪みが階調Nに変換される。従って、最大値Stmax以上の歪みは、弾性画像において同じ色(例えば赤)で表示される。
【0023】
前記歪みの範囲Xは、被検体の心拍動と関係する値に応じて設定される。詳細は後述する。前記歪みの範囲Xは、本発明において、被検体の心拍動と関係する値に応じて設定される物理量の範囲の実施の形態の一例である。
【0024】
前記画像表示制御部53は、前記Bモード画像データ及び前記カラー弾性画像データを合成し、前記表示部6に表示する合成超音波画像の画像データを作成する。また、前記画像表示制御部53は、前記画像データを、図5に示すように、Bモード画像BIと弾性画像EIとが合成された合成超音波画像UIとして前記表示部6に表示させる。前記弾性画像EIは、前記Bモード画像BIに設定された領域R内に表示される(ドット(dot)で示されている)。弾性画像EIは、歪みに応じた色を有する画像である。
【0025】
前記Bモード画像データ及び前記カラー弾性画像データは、前記記憶部9に記憶されてもよい。また、前記合成超音波画像の画像データは、前記記憶部9に記憶されてもよい。
【0026】
前記表示部6は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記表示部6は、本発明における表示部の実施の形態の一例である。
【0027】
前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0028】
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)である。前記制御部8は、図6に示すように、移動量算出部81を有する。この移動量算出部81は、心拍動による心臓壁の移動量を算出する(移動量算出機能)。詳細は後述する。心臓壁の移動量は、本発明における心拍動と関係する値の実施の形態の一例である。前記移動量算出部81は、本発明における算出部の実施の形態の一例である。また、前記移動量算出機能は、本発明における算出機能の実施の形態の一例である。
【0029】
心拍動と関係する値は、心拍動による心臓壁の移動量など、心拍動について測定された値である。
【0030】
前記制御部8は、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記移動量算出機能を実行させる。また、前記制御部8は、前記移動量算出機能のほか、前記物理量算出機能、前記カラー弾性画像データ作成機能及び画像表示制御機能をはじめとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0031】
前記記憶部9は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、又はRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの半導体メモリである。
【0032】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について、図7のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、肝臓の弾性画像EIが表示される場合の作用について説明する。
【0033】
先ず、ステップS1では、心臓壁の移動量が算出される。具体的には、操作者は、前記超音波プローブ2によって被検体の心臓を含む範囲に対して超音波の送受信を行なう。そして、得られたエコー信号に基づいてBモード画像データが作成され、心臓を含むBモード画像が前記表示部6に表示される。
【0034】
Bモード画像が表示されると、操作者は、Bモード画像において、関心領域を設定する。この関心領域は、心臓壁において、肝臓に対する圧迫及びその弛緩を行なう部分を含むように設定される。
【0035】
前記移動量算出部81は、Bモード画像データに基づいて前記関心領域内の心臓壁を抽出する。移動量算出部81は、Bモード画像データの輝度に対応する情報に基づいて抽出処理を行なう。そして、前記移動量算出部81は、抽出された心臓壁の動きをBモード画像データに基づいてトラッキング(tracking)して、心臓壁の移動量を算出する。算出された心臓壁の移動量は、肝臓に対する圧迫及びその弛緩を行なう心臓壁の移動量である。
【0036】
ちなみに、操作者は、Bモード画像に関心領域を設定せずに、Bモード画像における心臓壁の輪郭を、前記操作部7のトラックボール等を用いてトレース(trace)してもよい。トレースする部分は、心臓壁において、肝臓に対する圧迫及びその弛緩を行なう部分のみであってもよい。このように心臓壁がトレースされた場合、前記移動量算出部81は、トレースされた部分の動きをBモード画像データに基づいてトラッキングして心臓壁の移動量を算出する。
【0037】
ステップS1において移動量が算出されると、ステップS2では、前記弾性画像データ作成部52が前記色変換テーブルTAを設定する。具体的には、前記ステップS1において算出された心臓壁の移動量に応じて設定された歪みの範囲Xが傾き部分Slである色変換テーブルTAが設定される(図4参照)。
【0038】
前記歪みの範囲Xは、心臓壁の移動量が大きくなるほど最大値Stmaxが大きくなり、心臓壁の移動量が小さくなるほど最大値Stmaxが小さくなるように設定される。これについて詳しく説明する。心臓壁の移動量が大きくなるほど、心拍動による肝臓に対する圧迫とその弛緩の度合は大きくなるので、肝臓の変形が大きくなる。従って、この場合の肝臓の歪み分布D1は、例えば図8に示すように、比較的歪みの大きい範囲を含む分布になる。一方、心臓壁の移動量が小さくなるほど、心拍動による肝臓に対する圧迫とその弛緩の度合は小さくなるので、肝臓の変形が小さくなる。従って、この場合の肝臓の歪み分布D2は、例えば図8に示すように、比較的歪みの小さい範囲を含む分布になる。
【0039】
ちなみに、前記歪み分布D1及び前記歪み分布D2は、同じ弾性を有する肝臓の歪み分布である。
【0040】
前記歪み分布D1の場合、すなわち心臓壁の移動量が比較的大きい場合、歪みの範囲X1が傾き部分Sl1である色変換テーブルTA1(傾き部分Sl1のみ図示)が設定される。前記歪みの範囲X1は、0から最大値Stmax1までの範囲である。一方、前記歪み分布D2の場合、すなわち心臓壁の移動量が比較的小さい場合、歪みの範囲X2が傾き部分Sl2である色変換テーブルTA2が設定される(傾き部分Sl2のみ図示)。前記歪みの範囲X2は、0から最大値Stmax2までの範囲である。Stmax1>Stmax2であり、前記歪みの範囲X2よりも、前記歪みの範囲X1の方が、大きい歪みを含む範囲になっている。ただし、図8に示す前記色変換テーブルTA1,TA2は一例である。
【0041】
心臓壁の移動量に応じて設定される前記歪みの範囲Xは、心拍動による肝臓への圧迫とその弛緩の度合の大小にかかわらず、同じ弾性を有する部分については大きく色が異なることがないように弾性画像EIが表示されるように設定される。
【0042】
ステップS2において色変換テーブルTAが設定されると、ステップS3では、弾性画像EIを含む合成超音波画像UIが表示される。具体的には、操作者は、前記超音波プローブ2によって被検体の肝臓を含む範囲に対して超音波の送受信を行なう。Bモード画像を作成するための超音波の送受信と、弾性画像を作成するための超音波の送受信とが交互に行われてもよい。
【0043】
ここで、肝臓は、心拍動によって変形を繰り返す。このように変形が繰り返されている肝臓から得られるエコー信号に基づいて、変形を歪みとしてとらえた弾性画像を含む合成超音波画像が作成される。具体的には、エコー信号が取得されると、前記Bモードデータ作成部41がBモードデータを作成し、前記物理量データ作成部42が歪みを算出して物理量データを作成する。さらに、前記Bモード画像データ作成部51が、前記Bモードデータに基づいてBモード画像データを作成し、前記弾性画像データ作成部52が、前記ステップS2で設定された色変換テーブルTAを用いて、前記物理量データに基づいてカラー弾性画像データを作成する。そして、前記画像表示制御部53が、上述の図5に示すように、前記Bモード画像データに基づくBモード画像BI及び前記カラー弾性画像データに基づく弾性画像EIが合成された合成超音波画像UIを前記表示部6に表示させる。合成超音波画像UIは、リアルタイム画像である。
【0044】
以上説明した本例によれば、心臓壁の移動量に応じて、前記色変換テーブルTAが設定されるので、心拍動による肝臓に対する圧迫とその弛緩の度合が考慮して作成された弾性画像EIを表示させることができる。そして、圧迫とその弛緩の度合にかかわらず、同じ弾性を有する部分は弾性画像EIにおいて大きく異なることがない色で表示させることができる。
【0045】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。この変形例では、前記エコーデータ処理部4は、図9に示すように前記Bモードデータ作成部41及び前記物理量データ作成部42のほか、ドプラデータ作成部43を有する。このドプラデータ作成部43は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、直交検波処理、フィルタ処理、自己相関演算処理等を含むドプラ処理を行ない、生体組織の速度を含むデータを作成する。
【0046】
この変形例の作用について、説明する。前記ステップS1では、上述のように、操作者は、心臓壁において、肝臓に対する圧迫及びその弛緩を行なう部分を含むように、Bモード画像に関心領域を設定する。前記ドプラデータ作成部43は、前記関心領域における生体組織の移動速度を含むデータを作成する。生体組織は、心臓壁である。そして、前記移動量算出部81は、前記ドプラデータ作成部43で得られた速度を時間積分して心臓壁の移動量を算出する。
【0047】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、第一実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0048】
本例では、図10に示すように、前記制御部8は、心機能指標算出部82を有する。この心機能指標算出部82は、心拍動と相関関係にある心機能指標を算出する(心機能指標算出機能)。心機能指標は、本発明における心拍動と関係する値の実施の形態の一例である。前記心機能指標算出部82は、本発明における算出部の実施の形態の一例である。また、心機能指標算出機能は、本発明における算出機能の実施の形態の一例である。
【0049】
前記心機能指標算出部82は、例えばEjection Fraction(以下、「EF」と云う)を算出する。このEFは、心臓の収縮に際して拍出される血液量やその効率にポイントをおいたポンプ機能を評価する指標である。EFは、下記(式1)によって算出される。
EF=100×(EDV−ESV)/EDV(%) ・・・(式1)
EDV:左心室の拡張期の体積
ESV:左心室の収縮期の体積
【0050】
心拍動が大きいと、EDVとESVの差が大きくなるので、EFは大きくなると考えられる。一方、心拍動が小さいと、EDVとESVの差が小さくなるので、EFは小さくなると考えられる。従って、EFは、心拍動と相関関係にあると考えられる。
【0051】
前記EDV及び前記ESVは、例えばBモード画像において左心室の輪郭を抽出することにより算出される。あるいは、前記EDV及び前記ESVは、操作者が左心室の輪郭をトレースし、トレースした輪郭をトラッキングして算出されてもよい。
【0052】
次に、本例の作用について、図11のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1′ではEFが算出される。具体的には、第一実施形態で説明したステップS1と同様に、操作者は、前記超音波プローブ2によって被検体の心臓を含む範囲に対して超音波の送受信を行なう。そして、得られたエコー信号に基づくBモード画像が表示される。
【0053】
EFを算出するためには、前記EDV及び前記ESVを算出することが必要である。これらEDV及びESVを算出するために、Bモード画像データに基づく左心室の輪郭抽出や、Bモード画像において操作者による左心室の輪郭のトレースが行われる。左心室の輪郭抽出を行なう場合、操作者によってBモード画像に関心領域が設定されてもよい。この場合、関心領域内において左心室の輪郭抽出処理が行われる。
【0054】
前記心機能指標算出部82は、Bモード画像データに基づいて左心室の輪郭のトラッキングを行なってEDV及びESVを算出し、上記(式1)を用いてEFを算出する。
【0055】
ステップS1においてEFが算出されると、ステップS2′では、前記弾性画像データ作成部52は、EFに応じて設定された歪みの範囲Xが傾き部分Slである色変換テーブルTAを設定する。前記歪みの範囲Xは、EFが大きくなるほど最大値Stmaxが大きくなり、EFが小さくなるほど最大値Stmaxが小さくなるように設定される。これについて詳しく説明する。EFが大きくなるほど、上述のように心拍動が大きくなるので、肝臓の変形が大きくなる。従って、この場合の肝臓の歪み分布は図8に示す符号D1の分布になり、歪みの範囲X1が傾き部分である色変換テーブルTA1が設定される。
【0056】
一方、EFが小さくなるほど、上述のように心拍動が小さくなるので、肝臓の変形は小さくなる。従って、この場合の肝臓の歪み分布は、図8に示す符号D2の分布になり、歪みの範囲X2が傾き部分Sl2である色変換テーブルTA2が設定される。
【0057】
ステップS2′において色変換テーブルTAが設定されると、ステップS3では第一実施形態と同様にして、肝臓を含む合成超音波画像UIが表示される。
【0058】
以上説明した本例によれば、心拍動と相関関係がある心機能評価指標であるEFに応じて、前記色変換テーブルTAが設定されるので、第一実施形態と同様に、心拍動による肝臓に対する圧迫とその弛緩の度合が考慮された弾性画像EIを表示させることができる。これにより、圧迫とその弛緩の度合にかかわらず、同じ弾性を有する部分は弾性画像EIにおいて大きく異なることがない色で表示させることができる。
【0059】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記合成超音波画像UIは、リアルタイム画像に限られるものではなく、前記記憶部9に記憶されたBモードデータ及び物理量データに基づく画像であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 超音波診断装置
6 表示部
42 物理量データ作成部(物理量算出部)
52 弾性画像データ作成部
81 移動量算出部(算出部)
82 心機能指標算出部(算出部)
TA 色変換テーブル(対応情報)
X 歪みの範囲
図1
図2
図3
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図5
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図9
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図11