特許第5774562号(P5774562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774562
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20150820BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20150820BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20150820BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20150820BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   C03C15/00 A
   H01L21/302 104Z
   H01L21/302 101E
   B08B7/00
   C03C23/00 A
   G02F1/1333 500
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-189288(P2012-189288)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-47086(P2014-47086A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 修
(72)【発明者】
【氏名】福島 達也
(72)【発明者】
【氏名】朴 永太
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/128673(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/105331(WO,A1)
【文献】 特開2006−216853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成されるフラットパネルディスプレイ用のガラス基板の製造方法であって、
半導体素子が形成されるガラス基板の表面である第1表面の反対側の表面である第2表面を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程で洗浄された前記第2表面をエッチングするエッチング工程と、
を備え、
前記エッチング工程でエッチングされる前の前記第2表面の表面抵抗より、前記エッチング工程でエッチングされた後の前記第2表面の表面抵抗が小さくなるように、前記第2表面は、前記洗浄工程で洗浄され、前記エッチング工程でエッチングされ
前記洗浄工程において、前記第2表面は、プラズマ洗浄処理が行われ、
前記エッチング工程において、前記第2表面は、プラズマ状態のキャリアガス中に生成されるフッ素系エッチングガスを用いるドライエッチング処理が行われ、
前記エッチング工程でエッチングされた後の前記第2表面は、0.3nm以上、かつ、0.5nm未満のRaを有する、
ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において、前記第2表面は、前記キャリアガスとしてアルゴンが用いられ、エッチャントとして四フッ化炭素が用いられる前記ドライエッチング処理が行われる、
請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2表面におけるケイフッ化アンモニウムの沈着が抑制されるように、前記第2表面は、前記エッチング工程でエッチングされる、
請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程において、前記第2表面は、アルゴンプラズマ洗浄処理が行われる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス基板は、液晶表示装置用ガラス基板である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング工程で前記第2表面がエッチングされた前記ガラス基板の端部を研磨および研削する端面加工工程と、
前記端面加工工程の後に行われる前記ガラス基板の第2の洗浄工程と、
をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイの製造にガラス基板が用いられている。フラットパネルディスプレイの製造工程において、ガラス基板表面にTFT(Thin Film Transistor)等の半導体素子を形成するために、ガラス基板は、半導体製造装置の反応容器内のサセプタに載置されて、成膜処理される。ガラス基板に複数種類の薄膜を形成するため、成膜処理は、複数の半導体製造装置によって複数回行われる。成膜処理が行われる度に、ガラス基板はサセプタから取り外される。このとき、ガラス基板を載置するサセプタの金属表面と、ガラス基板表面との間において、摩擦による静電気、すなわち、剥離帯電が発生して、ガラス基板に静電気が蓄積される。このため、複数回の成膜処理が行われたガラス基板は、大量の静電気を蓄積する。特に、液晶表示装置に用いられる無アルカリガラスからなるガラス基板は、その表面が帯電されやすく、静電気が除去されにくい。そして、剥離帯電の発生が繰り返されると、ガラス基板は、サセプタの金属表面に対して、静電気によって貼り付きやすくなる。これにより、ガラス基板をサセプタから取り外す際に、ガラス基板に過度な力を与えることでガラス基板を破損させてしまう場合がある。また、剥離帯電によって蓄積された静電気に起因する電圧は、ガラス基板表面に形成された半導体素子を破壊してしまう場合がある。
【0003】
このような状況の下、フラットパネルディスプレイの製造工程における、表面の帯電が発生しにくいガラス基板の製造が提案されている。例えば、特許文献1(特開2005−255478号公報)に開示されるガラス基板は、電極線や各種デバイスが形成される第1表面と、第1表面の反対側の第2表面とを有する。第2表面は、物理的研磨または化学処理された面であり、0.3nm〜10nmのRa(算術平均粗さ)を有する。第2表面の粗面化処理によって、ガラス基板の帯電が抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガラス基板に静電気が蓄積されてガラス基板表面が帯電している場合においても、ガラス基板表面から静電気破壊(ESD)を伴うことなく電荷が漏洩して静電気が放出されれば、ガラス基板表面の帯電が抑制された状態になる。
【0005】
ここで、ガラス基板表面をエッチング処理により粗面化する場合、エッチング処理が行われる雰囲気およびエッチャントに起因して、エッチングされるガラス基板表面に、ケイフッ化アンモニウムの結晶が沈着する場合がある。ケイフッ化アンモニウムの結晶が沈着付着すると、ガラス基板表面から除去することが非常に困難である。そして、ケイフッ化アンモニウムの結晶が沈着したガラス基板表面では、電荷の漏洩が起こりにくく、ガラス基板からの静電気の放出が阻害されてしまう。
【0006】
また、近年、電極配線材料の開発が進み、比抵抗の小さい電極材料をガラス基板上に配線することが可能になった。それにより、電極配線の膜厚は、例えば、150nm未満と薄くなってきている。比抵抗の小さい電極材料としては、銅系の材料、例えば、Ct/Ti配線およびCu/Mo配線がある。さらに、TFTを構成するゲート絶縁膜も、微細化のために、例えば、20μm未満と薄くなってきている。そのため、静電気の放出による帯電抑制に関するより厳しい対策が、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板の製造工程に求められている。
【0007】
本発明の目的は、表面の帯電が効果的に抑制されるガラス基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガラス基板の製造方法は、半導体素子が形成されるフラットパネルディスプレイ用のガラス基板の製造方法である。ガラス基板の製造方法は、洗浄工程と、エッチング工程とを備える。洗浄工程では、第2表面が洗浄される。第2表面は、半導体素子が形成されるガラス基板の表面である第1表面の反対側の表面である。エッチング工程では、洗浄工程で洗浄された第2表面がエッチングされる。エッチング工程でエッチングされる前の第2表面の表面抵抗より、エッチング工程でエッチングされた後の第2表面の表面抵抗が小さくなるように、第2表面は、洗浄工程で洗浄され、エッチング工程でエッチングされる。
【0009】
本発明に係るガラス基板の製造方法において、ガラス基板の第1表面は、フラットパネルディスプレイの製造工程において、TFT等の半導体素子が形成される面であり、ガラス基板の第2表面は、フラットパネルディスプレイの製造に用いられる前に、洗浄処理およびエッチング処理が行われる面である。第2表面の表面抵抗は、洗浄処理およびエッチング処理によって減少する。第2表面の表面抵抗が小さいほど、第2表面において電荷が移動しやすく、ガラス基板に蓄積された静電気が第2表面から放出されやすい。そのため、洗浄処理およびエッチング処理において第2表面の表面抵抗を小さくする表面処理を行うことで、ガラス基板の第2表面の帯電が効果的に抑制される。
【0010】
また、エッチング工程において、第2表面は、キャリアガスとしてアルゴンが用いられ、エッチャントとして四フッ化炭素が用いられるドライエッチング処理が行われることが好ましい。
【0011】
キャリアガスとして窒素を用いて、第2表面のドライエッチング処理を行う場合、ドライエッチング時のプラズマ放電エネルギーにより、エッチャントである四フッ化炭素の一部と、窒素の一部とが反応して、フッ化アンモニウムが生成される。フッ化アンモニウムは、ガラス基板に含まれるケイ素と反応して、ケイフッ化アンモニウムが生成される。生成されたケイフッ化アンモニウムの結晶は、第2表面に沈着して、ガラス基板の第2表面からの静電気の放出を阻害する。そのため、キャリアガスとしてアルゴンを用いることで、第2表面におけるケイフッ化アンモニウムの沈着が抑制され、ガラス基板の第2表面の帯電が効果的に抑制される。
【0012】
ガラス基板の第2表面に付着している有機物は、大気圧プラズマ洗浄によって除去される。大気圧プラズマ洗浄処理が行われる雰囲気中に存在する窒素の一部は、洗浄工程において、第2表面に残留している有機物と反応して結合する。この場合、エッチング工程において、第2表面に残留している有機物と結合している窒素に起因して、上述したように、ケイフッ化アンモニウムが生成されて第2表面に沈着する。従って、大気圧プラズマ洗浄処理が行われる雰囲気中に存在する窒素は、少ないほど好ましい。
【0013】
また、洗浄工程において、第2表面は、アルゴンプラズマ洗浄処理が行われることが好ましい。アルゴンプラズマ洗浄処理では窒素が用いられないので、ガラス基板の第2表面にケイフッ化アンモニウムが沈着することが抑制される。
【0014】
また、ガラス基板は、液晶表示装置用ガラス基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るガラス基板の製造方法によって製造されたガラス基板は、表面の帯電が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るガラス基板の断面図である。
図2】実施形態に係るガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。
図3】プラズマ洗浄装置の一例を示す図である。
図4】ドライエッチング装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)ガラス基板の製造方法の概略
本発明に係るガラス基板の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るガラス基板の製造方法によって製造されるガラス基板10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる。ガラス基板10は、例えば、0.2mm〜0.8mmの厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmのサイズを有する。
【0018】
図1は、ガラス基板10の断面図である。ガラス基板10は、一方の主表面である素子形成表面12aと、他方の主表面である粗面化表面12bとを有する。素子形成表面12aは、FPDの製造工程において、TFT等の半導体素子、ポリシリコン薄膜およびITO(Indium Thin Oxide)薄膜等からなる複数層の薄膜が形成される面である。そのため、一般的に、素子形成表面12aは、算術平均粗さRaが0.2nm以下である極めて滑らかな面である。一方、粗面化表面12bは、後述するように、ガラス基板10の製造工程において、エッチング処理によって微小な凹凸が形成される面である。本実施形態において、ガラス基板10の粗面化表面12bは、ドライエッチングによって表面処理される。
【0019】
ガラス基板10の一例として、以下の組成を有するガラスが挙げられる。(a)SiO2:50質量%〜70質量%、(b)Al23:10質量%〜25質量%、(c)B23:5質量%〜18質量%、(d)MgO:0質量%〜10質量%、(e)CaO:0質量%〜20質量%、(f)SrO:0質量%〜20質量%、(g)BaO:0質量%〜10質量%、(h)RO:5質量%〜20質量%(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種である。)、(i)R’ 2O:0質量%〜2.0質量%(R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。)、(j)SnO2、Fe23およびCeO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物。上記の組成を有するガラスは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容される。
【0020】
ガラス基板10は、フロート法およびダウンドロー法等により成形される。本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法を用いるFPD用のガラス基板10の製造工程について説明する。図2は、ガラス基板10の製造工程を表すフローチャートの一例である。ガラス基板10の製造工程は、主として、熔解工程(ステップS10)と、清澄工程(ステップS20)と、攪拌工程(ステップS30)と、成形工程(ステップS40)と、徐冷工程(ステップS50)と、採板工程(ステップS60)と、切断工程(ステップS70)と、粗面化工程(ステップS80)と、端面加工工程(ステップS90)とからなる。熔解工程S10と、清澄工程S20と、攪拌工程S30と、成形工程S40と、徐冷工程S50と、採板工程S60と、切断工程S70とは、ガラス原料からガラス基板10が製造される基板製造工程である。粗面化工程S80は、ガラス基板10の粗面化表面12bがドライエッチングにより粗面化される表面処理工程である。次に、各工程の概略を説明する。
【0021】
熔解工程S10では、熔解槽において、バーナー等の加熱手段によりガラス原料が熔解され、1500℃〜1600℃の高温の熔融ガラスが生成される。ガラス原料は、所望の組成のガラスを実質的に得ることができるように調製される。ここで、「実質的に」とは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容されることを意味する。熔融ガラスは、熔解槽の底部に設けられた流出口から下流工程に送られる。
【0022】
清澄工程S20では、清澄槽において、熔解工程S10で生成された熔融ガラスをさらに昇温させることで、熔融ガラスの清澄が行われる。清澄槽において、熔融ガラスの温度は、1600℃〜1800℃、好ましくは1650℃〜1750℃に上昇させられる。清澄槽では、熔融ガラスに含まれるO2、CO2およびSO2の微小な泡が、ガラス原料に含まれるSnO2等の清澄剤の還元により生じたO2を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上する。
【0023】
攪拌工程S30では、攪拌槽において、清澄工程S20で清澄された熔融ガラスが攪拌され、化学的および熱的に均質化される。攪拌槽では、熔融ガラスは鉛直方向に流れながら、軸回転するスターラーによって攪拌され、攪拌槽の底部に設けられた流出口から下流工程に送られる。また、攪拌工程S30では、ジルコニアリッチの熔融ガラス等、熔融ガラスの平均的な比重と異なる比重を有するガラス成分が攪拌槽から除去される。
【0024】
成形工程S40では、オーバーフローダウンドロー法によって、攪拌工程S30で攪拌された熔融ガラスからガラスリボンが成形される。具体的には、成形セルの上部から溢れて分流した熔融ガラスが、成形セルの側壁に沿って下方へ流れ、成形セルの下端で合流することでガラスリボンが連続的に成形される。熔融ガラスは、成形工程S40に流入する前に、オーバーフローダウンドロー法による成形に適した温度、例えば、1200℃まで冷却される。
【0025】
徐冷工程S50では、成形工程S40で連続的に生成されたガラスリボンが、歪みおよび反りが発生しないように温度制御されながら、徐冷点以下まで徐冷される。
【0026】
採板工程S60では、徐冷工程S50で徐冷されたガラスリボンが、所定の長さごとに切断される。
【0027】
切断工程S70では、採板工程S60で所定の長さごとに切断されたガラスリボンが、所定の大きさに切断されて、ガラス基板10が得られる。
【0028】
粗面化工程S80では、後述するように、切断工程S70で得られたガラス基板10の粗面化表面12bの表面粗さを増加させる表面処理が行われる。粗面化工程S80は、主として、ガラス基板10の粗面化表面12bを洗浄する洗浄工程と、洗浄工程で洗浄された粗面化表面12bをエッチングするエッチング工程とからなる。
【0029】
端面加工工程S90では、粗面化工程S80で粗面化表面12bが表面処理されたガラス基板10の端部を研磨および研削する。
【0030】
なお、端面加工工程S90の後に、ガラス基板10の洗浄工程および検査工程が行われる。洗浄工程および検査工程の詳細は省略する。最終的に、ガラス基板10は梱包されて、FPDの製造業者に出荷される。FPD製造業者は、ガラス基板10の素子形成面12aにTFT等からなる薄膜を形成して、FPDを製造する。
【0031】
(2)粗面化工程の詳細
次に、粗面化工程S80で行われる、粗面化表面12bの洗浄工程およびエッチング工程について、それぞれ説明する。
【0032】
(2−1)洗浄工程
洗浄工程では、粗面化表面12bのプラズマ洗浄処理が行われる。プラズマ洗浄処理は、例えば、大気圧プラズマ洗浄処理およびアルゴンプラズマ洗浄処理である。
【0033】
図3は、プラズマ洗浄装置の一例を示す図である。プラズマ洗浄装置20は、搬送ローラ22により搬送されるガラス基板10の一方の主表面であり、搬送ローラ22と接触する面である粗面化表面12bに、洗浄ノズル21からプラズマ状態のガスを吹き付ける。洗浄ノズル21は、ガラス基板10の幅方向に延びたスリット状のノズルである。洗浄ノズル21は、プラズマ状態のガスの供給路23と、供給路23の両側に設けられる一対の対向電極24と、一対の対向電極24のそれぞれの表面を覆う誘電体26とを有する。供給路23の端部は、プラズマ状態のガスの照射口であり、ガラス基板10の粗面化表面12bに対向している。プラズマ状態のガスの原料として、窒素および酸素の混合ガスである空気、および、アルゴン等が用いられる。窒素および酸素の混合ガスを用いる場合、例えば、N2:500L/minとO2(CDA):500cc/minとの混合ガス(N2:O2=500:0.5)を流してプラズマ洗浄を行う。
【0034】
プラズマ洗浄装置20では、プラズマ状態で活性化されたガスを、ガラス基板10の粗面化表面12bに吹き付けることにより、粗面化表面12bに付着している有機物の薄膜を除去する。有機物の薄膜は、後のエッチング処理において、マスクとして機能する。そのため、エッチング処理の前に、粗面化表面12bから有機物の薄膜を除去する洗浄処理を行う。
【0035】
なお、粗面化表面12bの洗浄工程において、プラズマ洗浄処理を行う代わりに、オゾンガスの吹き付け処理、および、紫外線の照射処理を行うことにより、有機物の薄膜を除去することもできる。洗浄工程では、少なくとも、有機物を酸化または改質させることにより、有機物の薄膜が除去されればよい。
【0036】
(2−2)エッチング工程
エッチング工程では、粗面化表面12bのドライエッチング処理が行われる。ドライエッチング処理は、例えば、フッ素系のエッチングガスを用いるエッチング処理である。
【0037】
図4は、ドライエッチング装置の一例を示す図である。ドライエッチング装置30は、搬送ローラ32により搬送されるガラス基板10の一方の主表面であり、搬送ローラ32と接触する面である粗面化表面12bに、エッチングノズル31からエッチングガスを吹き付ける。エッチングノズル31は、ガラス基板10の幅方向に延びたスリット状のノズルである。エッチングガスは、プラズマ状態のキャリアガス中に、四フッ化炭素および水の混合ガスを通過させることにより生成されるフッ化水素である。フッ化水素によって、ガラス基板10の粗面化表面12bは粗面化される。キャリアガスとしては、窒素およびアルゴン等が用いられる。例えば、キャリアガスとして窒素を用い、かつ、エッチャントとして四フッ化炭素を用いる場合、CF4:100cc/minとN2:10L/min〜15L/minとの混合ガス(CF4:N2=1:100〜150)を流してドライエッチングを行う。
【0038】
エッチング工程では、搬送ローラ32によるガラス基板10の搬送速度を調整することで、エッチング処理に要する時間を調整し、また、粗面化表面12bに吹き付けられるエッチングガスの流量を調整することができる。エッチング工程が行われる前に、ガラス基板10の粗面化表面12bは、洗浄工程において有機物の薄膜が除去されているので、粗面化表面12bは均一にエッチングされる。なお、エッチング工程後の粗面化表面12bは、0.30nm〜0.60nmのRa(算術平均粗さ)を有することが好ましい。また、エッチング工程後の粗面化表面12bは、0.5nm未満のRaを有することがより好ましい。フラットパネルディスプレイの製造工程では、フラットパネルディスプレイの重量を軽減するために、ガラス基板の裏面をスリミングする場合がある。その際、Raが0.5nm以上あると、スリミングによる欠陥が増えて、歩留まりが低下する場合がある。
【0039】
(3)特徴
(3−1)
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、ガラス基板10の粗面化表面12bは、プラズマ洗浄装置20およびドライエッチング装置30を用いて表面処理される。プラズマ洗浄装置20による洗浄処理、および、ドライエッチング装置30によるエッチング処理は、エッチング処理によって粗面化表面12bの表面抵抗が小さくなるように行われる。
【0040】
ガラス基板10の粗面化表面12bの表面抵抗が小さいほど、粗面化表面12bにおいて電荷が移動しやすい。そのため、粗面化表面12bの表面抵抗が小さいほど、粗面化表面12bから電荷が漏洩しやすく、粗面化表面12bの帯電がより効果的に抑制される。すなわち、ガラス基板10の粗面化表面12bのエッチング処理を、粗面化表面12bの表面抵抗が小さくなるように行うことで、ガラス基板10に蓄積された静電気は、粗面化表面12bから放出されやすくなる。
【0041】
フラットパネルディスプレイの製造工程において、ガラス基板10の素子形成表面12aには、TFT等の半導体素子、ポリシリコン薄膜およびITO薄膜等からなる複数層の薄膜が形成される。素子形成表面12aに成膜処理が行われる度に、ガラス基板10は、半導体製造装置の反応容器内のサセプタから取り外される。このとき、ガラス基板10を載置するサセプタの金属表面と、ガラス基板10の粗面化表面12bとの間において、剥離帯電が発生する。剥離帯電によってガラス基板10に静電気が蓄積されると、ガラス基板10の粗面化表面12bは、サセプタの金属表面に対して、静電気によって貼り付きやすくなる。これにより、ガラス基板10をサセプタから取り外す際に、ガラス基板10に過度な力を与えることでガラス基板10を破損させてしまう場合がある。また、剥離帯電によって蓄積された静電気に起因する電圧は、ガラス基板10の素子形成表面12aに形成された半導体素子等を破壊してしまう場合がある。
【0042】
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、ガラス基板10に蓄積された静電気が粗面化表面12bから放出されやすく、粗面化表面12bの帯電が効果的に抑制される。従って、フラットパネルディスプレイの製造工程において、ガラス基板10の破損、および、ガラス基板10の表面に形成された半導体素子等の破壊を効果的に抑制することができる。
【0043】
(3−2)
ガラス基板10の粗面化表面12bのエッチング工程では、エッチャントのキャリアガスとして、アルゴンが用いられることが好ましい。
【0044】
キャリアガスに窒素が含まれる場合、エッチャントである四フッ化炭素の一部と、窒素の一部とが反応して、フッ化アンモニウムが生成される。フッ化アンモニウムは、ガラス基板10に含まれるケイ素と反応して、ケイフッ化アンモニウムが生成される。ケイフッ化アンモニウムの結晶は、粗面化表面12bに沈着して、ガラス基板10の粗面化表面12bからの静電気の放出を阻害する。また、ケイフッ化アンモニウムの結晶は、ガラス基板10の表面から除去することが非常に困難である。従って、キャリアガスとしてアルゴンを用いることで、粗面化表面12bにおけるケイフッ化アンモニウムの沈着が抑制され、粗面化表面12bの帯電がより効果的に抑制される。
【0045】
(3−3)
ガラス基板10の粗面化表面12bの洗浄工程では、ガラス基板10の粗面化表面12bは、アルゴンプラズマ洗浄されることが好ましい。
【0046】
大気圧プラズマ洗浄処理が行われる雰囲気中に存在する窒素は、洗浄工程後に粗面化表面12bに残留している有機物と反応して結合する。そのため、エッチング工程において、粗面化表面12bに残留している有機物と結合している窒素に起因して、上述したように、ケイフッ化アンモニウムが生成されて粗面化表面12bに沈着する。従って、プラズマ洗浄装置20を用いる粗面化表面12bの洗浄工程では、雰囲気中に存在する窒素が少ないほど好ましい。また、アルゴンプラズマ洗浄処理では窒素が用いられないので、ガラス基板10の粗面化表面12bにケイフッ化アンモニウムが沈着することが、より効果的に抑制される。
【0047】
(4)実施例
本発明に係るガラス基板の製造方法の実施例として、ガラス基板の一方の主表面を粗面化処理して、表面抵抗の変化を測定した。具体的には、複数のガラス基板に対して、互いに異なる条件下で洗浄処理およびエッチング処理を行って、エッチング処理された表面の表面抵抗を測定した。また、洗浄処理およびエッチング処理が行われていないガラス基板の表面の表面抵抗を測定した。さらに、ガラス基板表面の帯電性、および、Ra(算術平均粗さ)を測定した。なお、ガラス基板として、ボロアルミノシリケートガラスを用いた液晶表示装置用のガラス基板を使用した。
【0048】
最初に、ガラス基板の一方の主表面を、プラズマ洗浄装置を用いて洗浄した。洗浄工程では、プラズマ状態の窒素と酸素との混合ガスを用いる大気圧プラズマ洗浄、または、プラズマ状態のアルゴンを用いるアルゴンプラズマ洗浄の2種類の洗浄のいずれかを行った。プラズマ状態のガスを、毎分所定の量、ガラス基板の表面に吹き付けて、ガラス基板の表面を洗浄した。
【0049】
次に、洗浄処理を行ったガラス基板の表面を、ドライエッチング装置を用いてエッチングした。エッチング工程では、プラズマ状態のキャリアガス中に、四フッ化炭素および水の混合ガスを通過させることにより、エッチングガスであるフッ化水素を生成した。そして、生成されたエッチングガスを、毎分所定の量、ガラス基板の表面に吹き付けて、ガラス基板の表面をエッチングした。
【0050】
次に、洗浄工程およびエッチング工程からなる粗面化処理が施されたガラス基板から、一辺が50mmである正方形の試料を切り出して、エッチングされたガラス基板表面の評価を行った。
【0051】
第一に、ガラス基板表面の表面抵抗を測定した。表面抵抗の測定は、温度25℃、湿度55%の環境下で、表面抵抗計(トレック・ジャパン株式会社製、MODEL 152−1)を使用して行った。
【0052】
第二に、ガラス基板表面の帯電性を評価した。帯電性の評価は、温度25℃、湿度50%の環境下で行った。具体的には、最初に、ガラス基板をテーブルに載置して、真空吸着によって、所定の時間、ガラス基板とテーブル表面とを密着させた。次に、ピンを用いて、ガラス基板を持ち上げてテーブル表面から剥離した。次に、表面電位計(オムロン株式会社製)を使用して、ガラス基板表面の帯電量を測定した。以上の工程を、所定のインターバルを置いて4回繰り返して、ガラス基板表面の最大帯電量を測定した。そして、ガラス基板表面の最大帯電量が小さいほど、ガラス基板表面の帯電性が低いと判定した。
【0053】
第三に、ガラス基板表面のRa(算術平均粗さ)を測定した。Raの測定は、原子間力顕微鏡(ParkSystems社製、モデルXE−100)を使用して行った。測定条件は、ノンコンタクトモードで、スキャンエリアを1μm×1μm、スキャンレートを0.8Hzとした。これにより、ガラス基板の表面プロファイル形状を取得して、Raを測定した。
【0054】
下記の表1には、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2および参考例からなる5枚のガラス基板に関して、洗浄処理およびエッチング処理の条件、表面抵抗の測定結果、帯電性の評価結果、および、Raの測定結果が示されている。参考例は、洗浄処理およびエッチング処理が行われていないガラス基板に関する。表1に示されるRaは、ガラス基板の幅方向の中央部について測定したデータである。
【0055】
【表1】
【0056】
表1において、「洗浄ガス」は、洗浄工程において、ガラス基板表面に吹き付けられるプラズマ状態のガスの原料を表し、「キャリアガス」は、エッチング工程において使用されるキャリアガスの原料を表す。「洗浄ガス」の列に記載の「混合」は、プラズマ状態の窒素と酸素との混合ガスを用いることを表す。
【0057】
表1によると、実施例1および実施例2に示されるように、エッチング工程において、キャリアガスとしてアルゴンを用いてドライエッチング処理を行うことで、表面抵抗が低下することが確認された。また、実施例2に示されるように、洗浄工程において、アルゴンプラズマ洗浄を行うことで、表面抵抗がより低下することが確認された。一方、洗浄工程において、大気圧プラズマ洗浄を行ったガラス基板は、表面抵抗の明確な低下が確認されなかった。また、ガラス基板表面の表面抵抗が低いほど、ガラス基板表面の帯電量が小さくなり、帯電がより効果的に抑制されることが確認された。
【0058】
以上より、ガラス基板の粗面化工程において、キャリアガスとしてアルゴンを用いてドライエッチング処理を行うことで、ガラス基板表面の表面抵抗が低下し、その結果、ガラス基板表面の帯電性が低下することが確認された。すなわち、キャリアガスとしてアルゴンを用いてドライエッチング処理されたガラス基板は、表面に剥離帯電が発生した場合においても、表面から電荷が漏洩しやすいため、表面の帯電が効果的に抑制されることが判明した。
【0059】
以上、本発明に係るガラス基板の製造方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および変更が施されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 ガラス基板
12a 素子形成表面(第1表面)
12b 粗面化表面(第2表面)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2005−255478号公報
図1
図2
図3
図4