(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774636
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】形状記憶医療機器及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
A61M25/09 550
A61M25/09 500
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-125780(P2013-125780)
(22)【出願日】2013年6月14日
(62)【分割の表示】特願2009-549266(P2009-549266)の分割
【原出願日】2008年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-230375(P2013-230375A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年7月16日
(31)【優先権主張番号】60/900,202
(32)【優先日】2007年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/028,555
(32)【優先日】2008年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】ボウン,マシュー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】バッツ,エム・デイヴィッド
【審査官】
大町 真義
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−049571(JP,A)
【文献】
米国特許第5827241(US,A)
【文献】
米国特許第5452726(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部端及び遠心端を規定する棒状本体を備え、
当該棒状本体は、前記基部端と前記遠心端との間に位置し、少なくとも部分的に形状記憶材料で構成され、前記棒状本体の非偏向部により規定される長手軸から偏向している成形部を有し、
前記成形部は、前記棒状本体の前記基部端近傍に配設されており、
且つフレキシブルであり医療機器を前記基部端から被せることができることを特徴とする成形ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記形状記憶材料は、形状記憶合金であることを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記形状記憶合金は、ニッケル及びチタンを含有することを特徴とする請求項2に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記形状記憶合金は、ニチノールを含有することを特徴とする請求項3に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記成形部は、前記長手軸に対して角度θだけ偏向した部位を有することを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記成形部は、前記ガイドワイヤが、患者の脈管系内でその成形部の位置を超えて進行することを防止することを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記成形部は、患者の体の切開部に位置した機器と相互に作用して、前記ガイドワイヤが前記患者の脈管系内を更に進むことを防止することを特徴とする請求項6に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記成形部は、負荷が与えられたときに実質的に変形可能なものであり、前記成形部は、前記負荷が取り除かれたときに非変形形状に戻ることを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記成形部は、半円形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記成形部は、展性を有し、前記ガイドワイヤの使用前、使用中、又は使用後において、使用者により成形されることを特徴とする請求項1に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項11】
基部端及び遠心端を有するガイドワイヤの棒状本体であって、前記基部端及び遠心端の間に位置してニチノールを含有する所定部分を有する本体を規定し、前記所定部分は、前記棒状本体の基部端近傍にあり、且つフレキシブルであり医療機器を前記基部端から被せることができ、
前記本体の非偏向部の長手軸に対して偏った方向に前記所定部分を拘持し、
前記偏った方向のままで前記所定部分を熱処理して、前記偏った方向での拘持が解除された後も前記所定部分がその偏りを維持するようにし、
前記所定部分の前記拘持を終えることを特徴とするガイドワイヤの形成方法。
【請求項12】
前記所定部分の前記拘持を終える前に、前記所定部分を冷却することを特徴とする請求項11に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項13】
前記所定部分を熱処理する工程は、ニチノール材料内で相転移が起こるように前記所定部分を熱処理することを特徴とする請求項11に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項14】
前記所定部分を熱処理する工程は、約500℃と約550℃の間の範囲のある温度で、前記所定部分を熱処理することを特徴とする請求項11に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項15】
前記所定部分は、ある半径で規定される曲がりを有する半円形状であることを特徴とする請求項11に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項16】
基部端及び遠心端を有するガイドワイヤの棒状本体を規定すると共に、前記基部端近傍に位置し、ニチノールを含有する、前記本体の基部を規定し、
前記基部を熱処理して、前記基部が展性を有して、前記ガイドワイヤの使用者により曲げられるようにし、
前記基部を冷却することを特徴とするガイドワイヤの形成方法。
【請求項17】
前記基部を熱処理する工程は、約30秒から約15分までの範囲のある時間だけ前記基部を熱処理することを特徴とする請求項16に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項18】
前記基部を熱処理する工程は、約500℃から約550℃までの範囲のある温度で、前記中間部を熱処理することを特徴とする請求項16に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項19】
前記基部を冷却する工程は、水槽内で前記基部を冷却することを特徴とする請求項16に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項20】
前記ガイドワイヤ本体の全体がニチノールを含有し、前記ガイドワイヤ本体の遠心部は熱処理されないことを特徴とする請求項16に記載のガイドワイヤの形成方法。
【請求項21】
棒状本体を備える成形ガイドワイヤであって、
前記本体は、
ニチノールを含有する遠心部と、
ステンレス鋼を含有する基部であって、当該基部の非偏向部により規定される長手軸から偏向している成形部を有する基部と、
を備え、前記成形部はフレキシブルであり、医療機器を前記基部から被せることができることを特徴とする成形ガイドワイヤ。
【請求項22】
前記成形部は、半円形状であることを特徴とする請求項21に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項23】
前記基部及び遠心部は、溶接により互いに結合されていることを特徴とする請求項21に記載の成形ガイドワイヤ。
【請求項24】
前記遠心部は、前記基部よりも相対的に屈曲に対する耐性があることを特徴とする請求項21に記載の成形ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療機器に関する。特に、本発明の実施形態は、成型基部端を有して各種機器の脈管内の位置付けを補助できる、例えばガイドワイヤのような医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、患者の脈管内における医療機器の位置付けを補助するために広く採用されている。ガイドワイヤを形成するのに共通して採用される1つの材料としては、ニチノール(nitinol)、つまりニッケルとチタンの合金である。ニチノールは、優れた屈曲耐性や、ガイドワイヤを容易に患者の脈管系内で進めるという特性を呈するから、多くのガイドワイヤとして好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガイドワイヤを患者の脈管系内で所望の位置以上に進めないことは、一般的に有効なことである。しかしながら、患者に挿入している間、臨床者により適切に固持されていないと、ガイドワイヤは、血流や他の要因により、意図せずに、また本意ではなく押され、脈管系内を更に進んでしまう。ガイドワイヤが、かかる意図しない進行の前に、所望の位置に留まっていたのであれば、臨床者は、ガイドワイヤを部分的に引張り出し、改めてそれを位置付けしなければならず、時間と労力がかかると共に患者を傷付ける可能性を増していた。故に、当該分野ではこれらの課題を克服する必要性があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、当該分野の上述の要求や他の要求を鑑みて為されたものである。簡略化して言うと、本発明の実施形態は、医療応用分野で使用される成形ガイドワイヤに関するものである。ガイドワイヤは、使用中、患者の体内でそのガイドワイヤが意図せずに前進してしまうことを防止するように、成型されている。
【0005】
一実施形態においては、ガイドワイヤは、基部端と遠心端を有する棒状本体を有している。ガイドワイヤ本体は、更に、その基部端と遠心端の間に位置する成形部を規定している。ガイドワイヤの成形部は、少なくとも部分的に、ニチノールのような形状記憶材料から成っており、ガイドワイヤ本体の非偏向部により規定される長手軸から偏向している。
【0006】
その成形部は、一実施形態においては、ガイドワイヤの基部端のところに配設されており、使用中に、ガイドワイヤが患者の脈管系内を不本意に更に進んでしまうことを防いでいる。ガイドワイヤの成形部は、患者の切開部において、組織又は機器と接触し、それによりガイドワイヤがそれ以上進まないようになっている。その成形部については、半円や幾何学形状のようないろいろな形状構成が考えられる。
【0007】
他の実施形態においては、ニチノールガイドワイヤの基部は、展性を有して臨床者により偏向させることができるように処理がなされる。このようなことを利用して、成形部が形成される前に、ニードル、導入器等の各種機器を、ガイドワイヤの基部端に被せることができる。偏向部を含むような成形又は展性ガイドワイヤを形成する方法も開示されている。
【0008】
更に他の実施形態においては、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの箇所に応じて異なった材料で構成できるようになっている。例えば、ガイドワイヤの基部は、ステンレス鋼を含んでいる一方、遠心部はニチノールを含んでいる。このように構成されたガイドワイヤは、ステンレス鋼で形成されているという理由から基部端において容易に偏らせて成形することができ、一方、ニチノールの遠心部は、所望の屈曲耐性特性を有し続ける。それらの2つの部位は、溶接又は他の適当な処理により互いに結合できる。
【0009】
本発明のこれらの、また他の特徴は、以下の記述及び添付の請求の範囲から、より完全に明らかになるであろうし、また以下に明らかにされた発明の実施化により理解が可能であろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記の、また他の利点及び特徴を更に明確にするために、発明の更なる特定記述が、添付図面に示された特定の実施形態を参照しつつなされる。なお、これらの図面は、発明の典型的な実施形態を表わしているのみであり、従ってその範囲を限定するものと考えられてはならない。本発明は、添付図面を使用することにより、更に具体的に、また詳細に記述され、また説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態により構成されたガイドワイヤの側面図である。
【
図2】
図2は、ニードルアセンブリを通して受け入れられる
図1のガイドワイヤを示す側面図である。
【
図3】
図3は、他の実施形態により構成されたガイドワイヤの基部を示す側面図である。
【
図4】
図4は、更に他の実施形態により構成されたガイドワイヤの基部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、また更に他の実施形態により構成されたガイドワイヤの基部を示す側面図である。
【
図6】
図6は、ニチノール材料の典型的な遷移ヒステリシス曲線を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態により構成されたガイドワイヤの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
同様の構成には同様の参照符号が付された図面が以後参照される。図面は、発明の例的実施形態の図式表現であり、発明を限定するものではないし、必然的に縮小拡大されたものでもない。
【0013】
図1−7は、本発明の実施形態の各種特徴を表わしており、一般的に、医療応用範囲において使用されるガイドワイヤを意図しているものである。ここに開示されたガイドワイヤは、基部以外の部分の軸から偏向したその基部を有しており、使用中にガイドワイヤが意図せずに患者の体内へ進行してしまうことを防止している。一実施形態においては、ガイドワイヤは、少なくとも部分的には、ニチノールのような形状記憶材料から成っている。偏向した基部を含むようなガイドワイヤを形成する方法も開示されている。
【0014】
まず
図1を参照すると、一実施形態として構成された、10で一般参照されるガイドワイヤが示されている。そこに示されている通り、ガイドワイヤ10は、基部端14及び遠心端16を規定している棒状本体12を備えている。この実施形態においては、遠心端16近傍に先端部20があり、それは本体12の周りに巻かれたコイル22を有している。コイル22は、皮膚の切れ目からガイドワイヤが外傷を伴うことなく患者の脈管内を進むことを補助している。一旦患者の脈管内に入り込むと、先端部20のコイル22は、その脈管を循環する血液のような液体の流れを阻害してしまう、ということに注目すべきである。そのように、液体のコイル22との相互作用により、ガイドワイヤ10の遠心端に直接かかる力が生ずるので、先端部20が脈管系内を不本意に深く入り込んでしまいがちである。本発明の各実施形態は、そのようなことが発生するのを防止するためのものである。他の実施形態においては、ガイドワイヤ本体の遠心端の先端部は、他の構成を有していてもよく、その構成としては、例えば、脈管の壁を傷付けることなく、患者の脈管系における蛇行経路を通してガイドワイヤが進むことができるようにした“J型”先端がある。
【0015】
この実施形態によれば、ガイドワイヤは、更に、30で一般参照される成形基部(“成形部”)を有している。示されている通り、成形部30は、ガイドワイヤ10の基部端14の近傍に位置している。成形部30は、使用中にガイドワイヤ10が患者の脈管系内に意図せずに進んでしまうことを防止するような構成となっている。例示の実施形態においては、成形部30は、長手軸32から偏向して半径Rの半円形の曲がりとなっている。しかしながら、示されている通り、また以下に議論する通り、成形部は、各種の形体のうちのいずれをもとることができる。
【0016】
図1と共に
図2を参照すると、そこには、ニードルアセンブリ40と動作可能に係合して受け入れられるガイドワイヤ10が示されている。かかるニードルアセンブリ42は、一実施形態においては、ガイドワイヤ10を患者の脈管系内に導入するために使用される。示されている通り、ガイドワイヤ10は、ニードルアセンブリ40のニードル42とそれに装着されているルーアー取付け部43の双方を貫通する。しかしながら、ガイドワイヤ10の成形部30は、ルーアー取付け部43を貫通できないような大きさ及び構成となっており、それによりガイドワイヤ10が脈管系内のある点より先に進行してしまうことを防止している。他の応用においては、成形部は、導入器のような他の機器の一部分と相互に作用したり、又は切開部近傍の患者の組織と相互に作用して、ガイドワイヤが更に進むことを防いでいる。
【0017】
ガイドワイヤ10の成形部30は、一実施形態においては、いくらかフレキシブルであり、ニードル、導入器等のような医療機器を、基部端14からガイドワイヤに被せることができるようになっている。そうである一方、成形部30は、十分に硬く、変形させる負荷が一旦取り除かれると、偏向状態に戻るようになっている。
【0018】
一実施形態によれば、ガイドワイヤ10の成形部30は、形状記憶合金、強磁性形状記憶材料、形状記憶重合体等の形状記憶材料から成っている。この“形状記憶材料”は、変形の後、又は変形を及ぼす負荷がそこから取り除かれた後に、とりわけより高温の周囲温度において、以前に定められたある形状に戻ることができる(“超弾性”)材料、すなわち適切な熱処理(“一方向効果”)が為されたときにその幾何形状を“記憶”している材料のことをここでは意味している。
【0019】
形状記憶材料の一例としては、ニチノール、すなわち、実施の例として概ね55−56%のニッケルと44−45%のチタンを含んだ合金がある。一実施形態においては、成形部30がニチノールを含有している。上述のように、ニチノールは、屈曲耐性特性を有していることからガイドワイヤの優れた材料として採用できる。しかしながら、ニチノールガイドワイヤにおいて曲げ部又は成形部を形成することは、その形状記憶特性から困難なことであった。以下に開示のように、本発明の実施形態は、ニチノールガイドワイヤにおいて、
図1及び2に示す成形部30のような曲げ部を形成することを熟考している。成形部30の全部又は一部がニチノールで構成されていてもよいし、ガイドワイヤ10の全体がニチノールを含むようになっていてもよいことに注意すべきである。なお、ニチノール材料におけるニッケルとチタンの相対濃度は、ここで特に明示で記述されているものから変更することも可能である。
【0020】
一実施形態においては、ガイドワイヤ10は、約0.018から0.038インチの範囲の直径を有しており、また約35から180センチの範囲の長さを有している。しかし、他の直径及び長さも無論可能である。
【0021】
例として、形状記憶材料としては、黄銅−アルミニウム合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金、ニッケル−チタン合金等の合金がある。形状記憶合金の形状記憶特性は、低対称性から高対称性結晶構造への温度依存性マルテンサイト相変態によるものである。それらの結晶構造は、マルテンサイトとオーステナイトとして知られている。形状記憶合金がその結晶構造を変化させる温度は、その合金の特性であり、組成比率をいろいろ変えてやることにより調整できる。ここで、A
s及びA
fを、マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態が始まる温度とそれが終わる温度とする。例として、A
s(オーステナイト開始)は、いくつかの材料においては、概ね150℃から200℃の範囲であり、A
f(オーステナイト終了)は、2℃から20℃以上の温度範囲で変化する。
【0022】
多くの形状記憶合金は、形状記憶と超弾性的な振る舞いの双方を呈する。合金構成及び材料の熱−機械的処理の履歴がこれらの特性を表出する温度を規定している。形状記憶合金がそのA
f温度以上で機械的に変形されると超弾性が起こる。この変形により、オーステナイトからマルテンサイトへの応力誘導相変態が起こる。応力誘導マルテンサイトは、そのA
f以上の温度で不安定であるので、応力が取り除かれると、その材料は、即座に撥ね戻り、オーステナイト相及びその応力印加前の状態に戻る。例えば、相変態ヒステリシス曲線310を示すグラフ300を
図6に示す。
【0023】
一実施形態においては、少なくとも部分的にニチノールでできた基部を有するガイドワイヤは、
図1及び2に示すような成形部30を規定するために、“形状設定焼きなまし”処理を施すことができる。そうするために、ガイドワイヤ10の基部端14近傍の部分が所望の形状に変形され、その所望の形状が拘持、つまり強制的に維持される。これは、鋳型又は他の適した装置で達成できる。ガイドワイヤ10のその部分は、その後、熱処理される。実際の温度や熱処理回数は、成形された部分の特性構成及び性質に応じていろいろ変わるのであるが、一実施形態においては、ガイドワイヤのその部分は、500−550℃で加熱され、その後、例えば水による急冷などにより急速冷却される。超弾性及び形状記憶特性の維持に加えて、この処理により、ガイドワイヤのその部分に、
図1及び2に示すガイドワイヤ10の成形部30の半円構成のような、所望の形状が与えられる。
【0024】
成形部30は、ニチノールガイドワイヤに形成できる各種の形状及び偏向のうちの単なる一例にすぎない。
図3−5は、この原理の各種の例を描いている。具体的には、
図3は、ガイドワイヤ本体12の非偏向部の長手軸32に対して曲がった、ガイドワイヤ10の基部成形部130を示している。成形部130は、軸32に対して角度θとなるように偏向されている。
図4は、ガイドワイヤ本体12の軸32に対して直角θとなっている基部成形部230を示している。
図5は、偏向の更に他の例であり、ガイドワイヤの基部端14と遠心端16の中間の部分が、台地に似た幾何形状とされており、それにより成形中央部330が形成されている。故に、成形部は、ガイドワイヤの基部近傍に位置させることもできるし、ガイドワイヤに沿った他の中間の箇所に位置させることもできることを認識すべきである。更に、成形部は、各種の形状のうちの如何なるものも採用でき、それらには、例えばフック形状、円、半円、四角、他の幾何学的形状又は部分、他の角度を有する形状又は部分があることを認識すべきである。
【0025】
更に他の実施形態においては、ニチノール又は他の適した形状記憶材料で製造されたガイドワイヤのその部分は、まずその部分を偏向させることなく、熱処理(例えば焼きなまし)される。所望の温度でこのように処理することにより、ガイドワイヤのその部分は、超弾性特性を失い、展性を有するようになる。後に、臨床者がそのガイドワイヤを患者の脈管系内に進めるときに、そのガイドワイヤの基部は、熱処理された部分が展性を有することから、屈曲耐性特性を維持している。これにより、臨床者がガイドワイヤの例えば基部を曲げてフック又は他の角度を有する部材を形成し、ガイドワイヤ10が患者の脈管系内に進行することを防ぐことができるようになっている。ある可能な実施の態様においては、臨床者は、ガイドワイヤの基部を曲げる前に、ガイドワイヤを覆ってニードル又は他の医療機器(例えば脈管拡張機器、カテーテル)を進めることができる。一実施形態においては、全体の長さが約50cmのニチノールガイドワイヤの10cmの基部が熱処理されて展性を有するようになる。ガイドワイヤの残りの40cmは処理されないままであり、それにより好ましい屈曲耐性特性を維持することとなる。上述の各部分の長さは、特定の使用状況の必要性に応じて可変である。
【0026】
この実施形態のガイドワイヤの基部は、約200から約450℃の範囲の温度で、約30秒から約15分まで間、熱処理される。ガイドワイヤは、従来のオーブン、IRオーブン、レーザー、又は他の適当な方法で熱処理される。ある様相においては、熱処理に引き続き、ガイドワイヤは、水槽に入れられる。なお、上で特定された温度及び時間パラメータは、特定の適用環境に応じて変更可能である。
【0027】
他の実施形態においては、ガイドワイヤは、その箇所に応じて異なる材料で構成できる。このことは
図7に示されており、ここではガイドワイヤ10は本体112を有している。ガイドワイヤ本体112は、基部112A及び遠心部112Bを有している。基部端14から始まって成形部30を含む、ガイドワイヤ本体112の一部分である基部112Aは、ステンレス鋼を含有しており、それにより成形部を形成するよう、基部に曲げ性を与えている。
【0028】
これに対し、遠心端16から延びる遠心部112Bはニチノールを含有し、それによりその遠心部は好適な屈曲耐性特性を有するようになっている。基部112A及び遠心部112Bは、接着、溶接等の如何なる適した処理によっても結合可能である。基部112A及び遠心部112Bにより画定される、ガイドワイヤ10の相対部分は、特定の適用環境に応じていろいろな形をとることができる。更に、ステンレス鋼及びニチノールに加えて、又はそれらに代えて、他の材料が、ガイドワイヤのそれぞれの部位に使用できることに注意すべきである。
【0029】
上記議論はガイドワイヤに焦点を当てるものであるが、他の実施形態においては、本発明の原理は、例えば静脈内カテーテルと共に使用される補剛部材のような他の医療機器に適用可能である。また、ガイドワイヤの成形部の長さは、適用環境の特定の必要性に応じていろいろと変更可能である。
【0030】
本発明は、その精神又は根本特性から離脱しない限り、他の特定の形態で実施化可能である。記述された実施形態は、全ての点において例示であり、限定するようなものではないと考えられるべきである。故に、本発明の範囲は、上述の記述よりはむしろ添付の請求の範囲により示される。各参考発明と等価の意味及び範囲内にある全ての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。
ここで、以下に参考発明を記載する。この参考発明は、出願当初の参考発明1〜26に対応している。
参考発明1は、基部及び遠心部を規定する棒状本体を備え、当該本体は、基部端と遠心端との間に位置し、少なくとも部分的に形状記憶材料で構成され、前記本体の非偏向部により規定される長手軸から偏向している成形部を有することを特徴とする成形ガイドワイヤである。
参考発明2は、前記形状記憶材料は、形状記憶合金であることを特徴とする参考発明1に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明3は、前記形状記憶合金は、ニッケル及びチタンを含有することを特徴とする参考発明2に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明4は、前記形状記憶合金は、ニチノールを含有することを特徴とする参考発明3に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明5は、前記成形部は、前記長手軸に対して角度θだけ偏向した部位を有することを特徴とする参考発明1に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明6は、前記成形部は、前記ガイドワイヤが、患者の脈管系内でその成形部の位置を超えて進行することを防止することを特徴とする参考発明1に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明7は、前記成形部は、患者の体の切開部に位置した機器と相互に作用して、前記ガイドワイヤが前記患者の脈管系内を更に進むことを防止することを特徴とする参考発明6に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明8は、前記成形部は、負荷が与えられたときに実質的に変形可能なものであり、前記成形部は、前記負荷が取り除かれたときに非変形形状に戻ることを特徴とする参考発明1に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明9は、前記成形部は、前記ガイドワイヤ本体の前記基部端近傍に配設されていることを特徴とする参考発明7に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明10は、前記成形部は、半円形状をしていることを特徴とする参考発明9に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明11は、前記成形部は、展性を有し、前記ガイドワイヤの使用前、使用中、又は使用後において、使用者により成形されることを特徴とする参考発明1に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明12は、基部端及び遠心端を有するガイドワイヤの棒状本体であって、前記基部端及び遠心端の間に位置してニチノールを含有する中間部を有する本体を規定し、前記本体の非偏向部の長手軸に対して偏った方向に前記中間部を拘持し、前記偏った方向のままで前記中間部を熱処理して、前記偏った方向での拘持が解除された後も前記中間部がその偏りを維持するようにし、前記中間部の前記拘持を終えることを特徴とするガイドワイヤの形成方法である。
参考発明13は、前記中間部の前記拘持を終える前に、前記中間部を冷却することを特徴とする参考発明12に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明14は、前記中間部を熱処理する工程は、ニチノール材料内で相転移が起こるように前記中間部を熱処理することを特徴とする参考発明12に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明15は、前記中間部を熱処理する工程は、約500℃と約550℃の間の範囲のある温度で、前記中間部を熱処理することを特徴とする参考発明12に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明16は、前記中間部は、前記ガイドワイヤ本体の基部端近傍にあることを特徴とする参考発明12に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明17は、前記中間部は、ある半径で規定される曲がりを有する半円形状であることを特徴とする参考発明16に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明18は、基部端及び遠心端を有するガイドワイヤの棒状本体を規定すると共に、前記基部端近傍に位置し、ニチノールを含有する、前記本体の基部を規定し、前記基部を熱処理して、前記基部が展性を有して、前記本体の使用者により曲げられるようにし、前記基部を冷却することを特徴とするガイドワイヤの形成方法である。
参考発明19は、前記基部を熱処理する工程は、約30秒から約15分までの範囲のある時間だけ前記基部を熱処理することを特徴とする参考発明18に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明20は、前記基部を熱処理する工程は、約500℃から約550℃までの範囲のある温度で、前記中間部を熱処理することを特徴とする参考発明18に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明21は、前記基部を冷却する工程は、水槽内で前記基部を冷却することを特徴とする参考発明18に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明22は、前記ガイドワイヤ本体の全体がニチノールを含有し、前記ガイドワイヤ本体の遠心部は熱処理されないことを特徴とする参考発明18に記載のガイドワイヤの形成方法である。
参考発明23は、棒状本体を備える成形ガイドワイヤであって、前記本体は、ニチノールを含有する遠心部と、ステンレス鋼が含有する基部であって、当該基部の非偏向部により規定される長手軸から偏向している成形部を有する基部と、を備えることを特徴とする成形ガイドワイヤである。
参考発明24は、前記成形部は、半円形状であることを特徴とする参考発明23に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明25は、前記基部及び遠心部は、溶接により互いに結合されていることを特徴とする参考発明23に記載の成形ガイドワイヤである。
参考発明26は、前記遠心部は、前記基部よりも相対的に屈曲に対する耐性があることを特徴とする参考発明23に記載の成形ガイドワイヤである。