(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774669
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント回路基板を製造するめっき設備
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20150820BHJP
C25D 21/10 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
C25D7/06 B
C25D21/10 301
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-246562(P2013-246562)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-48532(P2015-48532A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2013年11月28日
(31)【優先権主張番号】102131339
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514300672
【氏名又は名称】鼎展電子股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】蔡 水河
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−228492(JP,A)
【文献】
特開平09−241886(JP,A)
【文献】
特開2002−322596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00− 9/12
C25D 13/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面を有するめっき溶液を貯めることに用いられる槽体と、
該槽体の中に設けられる少なくとも2つのガイドロールと、
該めっき溶液に接触せずに、該槽体の中で、且つ該めっき溶液の液面上に設けられ、前記ガイドロールにより搬送経路を形成して連続的に被めっき物を搬送し、該搬送経路の少なくとも一部には該被めっき物を該めっき溶液の該液面下に浸す少なくとも2つの陰極ロールと、
該搬送経路の異なる両側に設けられ、且つ該めっき溶液の該液面下に浸たされ、該被めっき物の平面と平行に設けられる少なくとも2つのめっき用陽極と、
該槽体の中に設けられ、該めっき用陽極と平行な2つの側面に複数の貫通孔を有する分離タンクと、を備え、
前記被めっき物を搬送する前記搬送経路はガイドロールの配置により、U字形、V字形、又は三角形の搬送経路を形成するとともに、前記何れかの搬送経路は液面との間に夾角を形成し、
前記少なくとも2つのガイドロールは、水平、垂直、又は液面と夾角をなし、
前記めっき溶液が分離タンクを通して該槽体の中に流れ込み、且つ、前記分離タンクの2つの側面に形成された貫通孔を通して、該めっき用陽極に近づく該被めっき物へ該めっき溶液を噴射することを特徴とするめっき設備。
【請求項2】
該陰極ロールの材料は、金属、又は金属と非金属からなる複合材料である請求項1に記載のめっき設備。
【請求項3】
該陰極ロールの材料は、ステンレス鋼、銅、チタン、又は前記金属と非金属からなる複合材料である請求項2に記載のめっき設備。
【請求項4】
該陰極ロールは、水平、垂直、又は液面と夾角をなす請求項1に記載のめっき設備。
【請求項5】
該槽体の中に設けられ、被めっき物が被めっき溶液に流体衝撃されて発生した擾乱を減少するための、少なくとも1つの圧力逃がし溝をさらに備える請求項1に記載のめっき設備。
【請求項6】
該圧力逃がし溝は、複数の貫通孔を有する請求項5に記載のめっき設備。
【請求項7】
該圧力逃がし溝の前記貫通孔は、該めっき溶液を該槽体の中に流れ込ませて、被めっき物が被めっき溶液に流体衝撃されて発生した擾乱を減少することに用いられる請求項6に記載のめっき設備。
【請求項8】
該圧力逃がし溝の材料は、耐酸、耐アルカリ材料を含む請求項5に記載のめっき設備。
【請求項9】
該耐酸、耐アルカリ材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、或ポリエチレン(PE)を含む請求項8に記載のめっき設備。
【請求項10】
該めっき用陽極は、金属である請求項1に記載のめっき設備。
【請求項11】
該めっき用陽極は、銅、ステンレス鋼又はチタンである請求項1に記載のめっき設備。
【請求項12】
該めっき用陽極は、チタンメッシュ又はチタン板である請求項11に記載のめっき設備。
【請求項13】
該めっき用陽極の表面に、酸化イリジウム、酸化タンタル又はその組み合わせを有する請求項12に記載のめっき設備。
【請求項14】
該めっき用陽極は、該めっき溶液の該液面下に浸すように、それぞれ該搬送経路の両側に設けられた2つのめっき用陽極である請求項1に記載のめっき設備。
【請求項15】
該分離タンクの断面は、四角形、逆三角形、三角形、又は複数の管状構造を呈する請求項1に記載のめっき設備。
【請求項16】
該分離タンクの前記貫通孔は、円孔状又はハニカム状である請求項1に記載のめっき設備。
【請求項17】
前記被めっき物は、フレキシブルプリント回路基板を含む請求項1に記載のめっき設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント回路基板を製造するめっき設備に関し、特に、分離タンクを有するめっき設備に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント回路基板を製造するための従来のめっき設備は、通常、ロールツーロール(roll‐to‐roll)構造を有し、被めっき物は、上記めっき設備において、複数のガイドロールによって水平又は垂直に連続的に搬送される。めっき槽体内に注ぎ込まれるめっき溶液は、めっき時間が長くなるほど、めっき溶液における金属イオンの濃度が低下するため、連続的にめっき処理が可能となるように、新しいめっき溶液をめっき槽体の中に続けて注ぐ必要がある。
【0003】
例えば、一般的に、従来の銅めっき線は、ほとんどフレキシブル回路基板に作製される。水平又は垂直に搬送するめっき設備に関わらず、止まり穴又は厚み付け銅膜を形成する際に、通常、槽内には1つ又は、2つのめっき用陽極のみを有し、フレキシブル回路基板の片面のみをめっきし、又はフレキシブル回路基板の両面を同時にめっきする。ところが、上記めっきでは、めっき時間が長いので、時間と設備のコストが増大する。
【0004】
さらに、一般的には、フレキシブルな被めっき物として、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)又はポリイミド(polyimide;PI)に、蒸着(evaporation)、スパッタリング(sputtering)又は化学堆積法(chemical deposition)によって、めっきの導電先端材料として使用する導電層を形成する。しかしながら、導電層が超薄型金属層(例えば、銅膜)であるため、従来の工程のように治具で被めっき物を固定することができず、コンベヤーを形成し且つ陰イオンを提供するために、陰極ロールを使用する必要がある。
【0005】
従来のめっき設備では、古いめっき溶液と新しいめっき溶液の間で、金属イオン濃度の差異が発生することがある。攪拌手段によって上記問題を解決する効果は限られる。一方、攪拌手段によって新しい溶液、及び古いめっき溶液を混合する際に、めっき溶液における金属イオンの正しい濃度を制御しにくく、また被めっき物の両側が高電流領域に属し、異なるバッチによってめっき層の厚みが不均一になる恐れがあるため、金属イオンの濃度の均一性の向上がさらに重要になる。
【0006】
したがって、従来のめっき設備による欠陥を解決した新しいフレキシブルプリント回路基板を製造するめっき設備が、現在、望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のめっき設備の欠陥を解決し、且つめっき溶液の均一な混合及びめっき効率の向上の目的を達成するためのめっき設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、めっき設備を提供することにある。このめっき設備は、槽体と、複数のガイドロールと、少なくとも1つの陰極ロールと、少なくとも1つのめっき用陽極と、分離タンクと、を備える。槽体は、めっき溶液を貯めることに用いられ、且つめっき溶液は槽体の中に注ぎ込まれる際に液面を有する。
【0009】
前記ガイドロールは、槽体の中に設けられ、搬送経路によって連続的に被めっき物を搬送する。被めっき物は、搬送経路の少なくとも一部で、めっき溶液の液面下に浸される。
【0010】
陰極ロールは、めっき溶液に接触せずに、槽体の中且つめっき溶液の液面上に設けられる。陰極ロールは、該被めっき物に陰イオンを提供し、めっき溶液における金属イオンを還元し、被めっき物に金属層を形成する。
【0011】
めっき用陽極は、めっき溶液の液面下に浸されるように、搬送経路の上に設けられる。めっき用陽極は、被めっき物の平面に平行又は垂直となるように設けられる。めっき用陽極は、酸化して金属イオンをめっき溶液の中に生成し、金属イオンが陰イオンを有する被めっき物によって還元され、金属層を形成する。
【0012】
分離タンクは、槽体の中に設けられ、且つ分離タンクの少なくとも1つの側面に複数の貫通孔を有する。めっき溶液は、分離タンクを通して槽体の中に流れ込み、且つ実際にめっき用陽極に近づく被測物へ噴射される。
【0013】
本発明の一実施例によると、上記搬送経路は、U字型、V字形又は三角形を含む。
【0014】
本発明の一実施例によると、上記搬送経路は、U字型である。
【0015】
本発明の一実施例によると、上記ガイドロールは、水平、垂直、又は液面と夾角をなす。
【0016】
本発明の一実施例によると、上記陰極ロールの材料は、金属、又は金属と非金属からなる複合材料である。
【0017】
本発明の一実施例によると、上記陰極ロールの材料は、ステンレス鋼、銅、チタン、又は上記金属と非金属からなる複合材料である。
【0018】
本発明の一実施例によると、上記陰極ロールは、水平、垂直、又は液面と夾角をなす。
【0019】
本発明の一実施例によると、上記めっき設備は、槽体の中に設けられて、被めっき物がめっき溶液に流体衝撃されて擾乱が発生することで鍍膜層の厚みの均一性に影響を及ぼすことを減少するための、少なくとも1つの圧力逃がし溝をさらに備える。
【0020】
本発明の一実施例によると、上記圧力逃がし溝は、複数の貫通孔を有する。
【0021】
本発明の一実施例によると、上記圧力逃がし溝の前記貫通孔は、めっき溶液を槽体の中に流れ込ませて、被めっき物がめっき溶液に流体衝撃されて擾乱が発生することで鍍膜層の厚みの均一性に影響を及ぼすことを減少することに用いられる。
【0022】
本発明の一実施例によると、上記圧力逃がし溝の前記貫通孔は、めっき溶液の中に複数の気泡を形成して、めっき溶液を均一に混合することに用いられる。
【0023】
本発明の一実施例によると、上記圧力逃がし溝の材料は、耐酸・耐アルカリ材料である。
【0024】
本発明の一実施例によると、上記圧力逃がし溝の材料は、ポリ塩化ビニル(poly vinyl chloride;PVC)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)又はポリエチレン(PE)を含む。
【0025】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極は、金属である。
【0026】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極は、銅、ステンレス鋼又はチタンである。
【0027】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極は、チタンメッシュ又はチタン板である。
【0028】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極の表面は、酸化イリジウム、酸化タンタル又はその組み合せを含む。
【0029】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極は、めっき溶液の該液面下に浸すように、それぞれ搬送経路の両側に設けられた2つのめっき用陽極である。
【0030】
本発明の一実施例によると、上記めっき用陽極ペアは、めっき溶液の液面下に浸すように、それぞれU字型搬送経路の両側に設けられる。
【0031】
本発明の一実施例によると、上記分離タンクの断面は、四角形、逆三角形、三角形、又は複数の管状構造である。
【0032】
本発明の一実施例によると、上記分離タンクの前記貫通孔は、円孔状又はハニカム状である。
【0033】
本発明の一実施例によると、上記被めっき物は、フレキシブルプリント回路基板を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施例によるめっき設備を示す断面模式図である。
【
図2A】本発明の一実施例によるめっき設備を示す断面模式図であり、圧力逃がし溝が含まれる。
【
図2B】本発明の一実施例によるめっき設備を示す断面模式図であり、圧力逃がし溝が含まれる。
【
図3B】本発明の一実施例によるめっき設備を示す上面図である。
【
図4A】本発明の一実施例によるめっき設備を示す断面模式図であり、分離タンクの断面が逆三角形を呈する。
【
図4B】本発明の一実施例によるめっき設備を示す断面模式図であり、分離タンクの断面が三角形を呈する。
【
図5A】本発明の一実施例による分離タンクの貫通孔の形状を示す。
【
図5B】本発明の一実施例による分離タンクの貫通孔の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、実施例と図面を合わせて、本発明を詳しく説明するが、図面又は記述において、類似又は同様な部分に対して同じ符号又は番号を用いる。図面では、簡素化又は便宜に示すように、実施例の形状又は厚みは拡大することがあり、図面における素子の部分については文字で説明する。示されていない又は説明していない素子は、当業者の公知の各種仕様であってよいことは、理解すべきである。
【0036】
図1は、本発明の一実施例によるめっき設備100を示す断面模式図である。
図1において、めっき設備100は、槽体110と、複数のガイドロール120と、少なくとも1つの陰極ロール121と、少なくとも1つのめっき用陽極130と、分離タンク140と、を備える。
【0037】
槽体110は、めっき溶液150を貯めることに用いられる。めっき溶液150は、槽体110に注ぎ込まれる際に液面151を有する。本発明の一実施例において、槽体は、底板、2つの側板、及び2つの越流板(overflow plate)からなる。本発明の一実施例において、めっき溶液は、金属イオンを含む。金属イオンは、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、スズイオン又は銀イオンであってよいが、これらに限定されない。
【0038】
ガイドロール120は、槽体110の中に設けられる。ガイドロール120は、槽体の中に並列して搬送経路を形成し、且つ搬送経路によって連続的に被めっき物160を搬送する。本発明の一実施例において、ガイドロールは、水平、垂直、又は液面と夾角をなす。
【0039】
被めっき物160は、搬送経路の少なくとも一部で、めっき溶液150の液面151下に浸される。本発明の一実施例において、搬送経路は、例えば、U字型、V字形又は三角形であってよいが、これらに限定されない。本発明の別の実施例において、搬送経路は、U字型であり、
図1に示すように、一部の搬送経路は、めっき溶液の液面下に浸たされる。本発明の一実施例において、被めっき物は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)又は、フレキシブル銅箔基板(FCCL)を含むが、これらに限定されない。
【0040】
陰極ロール121は、めっき溶液150に接触せずに、槽体110の中且つめっき溶液150の液面151上に設けられる。陰極ロール121は陰イオンを被めっき物160に提供し、めっき溶液150における金属イオンを還元し、且つ金属層を被めっき物160に生成する。本発明の一実施例において、陰極ロールの材料は、金属であり、例えば、ステンレス鋼、銅、チタン又は上記金属と非金属からなる複合材料であってよいが、これらに限定されない。本発明の別の実施例において、陰極ロールの表面が研磨つや出し処理をされる。
【0041】
めっき用陽極130は、めっき溶液150の液面151下に浸されるように、搬送経路に設けられる。めっき用陽極130は、被めっき物160の平面上に平行に設けられる。めっき用陽極130は、陽イオンを提供し、且つ酸化して金属イオンをめっき溶液150の中に生成する。本発明の一実施例において、めっき用陽極は、めっき溶液の液面下に浸されるように、それぞれ搬送経路の異なる両側に設けられた2つのめっき用陽極である。本発明の別の実施例において、2つのめっき用陽極は、
図1に示すように、めっき溶液の液面下に浸されるように、それぞれU字型搬送経路の異なる両側に設けられる。本発明のさらに他の実施例において、めっき用陽極は、金属であり、例えば、銅、ステンレス鋼又はチタンであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施例において、めっき用陽極は、チタンメッシュ又はチタン板であり、その上に酸化イリジウム、酸化タンタル又はその組み合せをさらに含む。
【0042】
分離タンク140は、槽体110の中に設けられ、且つ分離タンク140の少なくとも1つの側面に複数の貫通孔141を有する。めっき溶液150は、分離タンク140を通して槽体110の中に流れ込み、且つ実際にめっき用陽極130に近づく被めっき物160へ噴射される。本発明の一実施例において、分離タンクの断面は、四角形、逆三角形、三角形、又は複数の管状構造を呈する。
【0043】
図1において、めっき溶液150は、矢印Aの方向に沿って分離タンク140の中に注入され、且つ矢印Bの方向に沿って貫通孔141からめっき用陽極130に近づく被めっき物160へ噴射される。過剰のめっき溶液150の液面151は、槽体110を超え、矢印Cに示すように、槽体110から越流することになる。
【0044】
図2Aは、本発明の一実施例によるめっき設備200aを示す断面模式図であり、圧力逃がし溝210aが含まれる。
図2Aにおいて、
図1との主な相違点は、めっき設備200aの構造組成は、めっき設備200aの中に圧力逃がし溝210a、2つの陰極ロール121及び2つのめっき用陽極130を設ける点である。
【0045】
圧力逃がし溝210aは、槽体110の底部に設けられる。圧力逃がし溝210aは開口211を有し、新しいめっき溶液を注ぎ込むことに用いられる。圧力逃がし溝210aも複数の貫通孔212を有し槽体110の内部に向かって、槽体110内のめっき溶液を均一に混合することに用いられる。
【0046】
被めっき物160の両側には、それぞれ2つの陰極ロール121及び2つのめっき用陽極130を有する。このように、同時に被めっき物160の異なる2つの表面をめっきでき、めっき効率を増速し、生産性を向上させるようにする。
【0047】
図2Bは、本発明の一実施例によるめっき設備200bを示す断面模式図であり、圧力逃がし溝210bが含まれる。
図2Bにおいて、めっき設備200bの構造組成は、圧力逃がし溝210bは、槽体110の両側まで延伸される以外、
図2Aと同様である。
【0048】
圧力逃がし溝210bは、槽体110の両側まで延伸されるため、圧力逃がし溝210b上の貫通孔212によって、新しいめっき溶液をめっき用陽極に近づく被めっき物へ噴射し、被めっき物がめっき溶液に流体衝撃されて擾乱が発生することで鍍膜層の厚みの均一性に影響を及ぼすことを減少することに用いられる。本発明の一実施例において、圧力逃がし溝の材料は、耐酸・耐アルカリ材料を含む。本発明の別の実施例において、圧力逃がし溝の材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)を含む。
【0049】
本発明の一実施例において、被めっき物の両側に設けられる陰極ロールとめっき用陽極の組み合せによって、めっき効率を増速でき、且つ生産性を大幅に向上させる。本発明の一実施例において、被めっき物のめっき速率は、200%向上することができる。
【0050】
一方、本発明の実施例によって提供されためっき設備はともに分離タンクを有し、新しく且つ濃度が正しいめっき溶液を槽体の中に提供することに用いられる。めっき溶液は、めっき時間が長くなるほど、めっき溶液における金属イオンの濃度が低くなる。従って、本発明の実施例において、分離タンク上の貫通孔によって、新しく且つ濃度が正しいめっき溶液をめっき用陽極に近づく被めっき物へ噴射することができ、効果的に被めっき物のコーティングの品質を向上させるようにする。
【0051】
他方、本発明の実施例によって提供されためっき設備はともに2つのめっき用陽極を有し、めっき効率を増加し、生産性を向上させることに用いられる。めっき設備において、被めっき物は、めっき用陽極に近づかないとめっき効果がない。従って、本発明の実施例において、2つのめっき用陽極を搬送経路の異なる両側に設けることによって、電場の相互干渉を回避する一方で、同じコーティング厚みのめっき時間を短縮でき、生産性を向上させるようにする。
【0052】
図3Aは、
図1のめっき設備100を示す上面図である。
図3Aにおいて、被めっき物160は、槽体110の両側に位置するガイドロール120に沿ってめっき溶液150の中に浸される。分離タンク140は、槽体110の中央に位置し、分離タンク140両側の貫通孔141は、矢印Bの方向に沿って、新しいめっき溶液150を被めっき物160に噴射する。
【0053】
図3Bは、本発明の一実施例によるめっき設備300を示す上面図である。
図3Bにおいて、めっき設備300は、槽体310と、複数のガイドロール320と、少なくとも1つの陰極ロール321と、少なくとも1つのめっき用陽極330と、分離タンク340と、を備える。槽体310は、めっき溶液350を貯めることに用いられる。ガイドロール320は、槽体の中に並列して搬送経路を形成し、且つ搬送経路によって連続的に被めっき物360を搬送する。めっき用陽極330は、搬送経路に設けられ、且つ被めっき物360の平面に平行に設けられる。
【0054】
分離タンク340は、槽体310の中央に位置し、分離タンク340両側の貫通孔は、矢印Bの方向に沿って、新しいめっき溶液350を被めっき物360に噴射する。
【0055】
図3Bにおいて、めっき設備300のガイドロール320及び陰極ロール321はともにめっき溶液350の液面に対して垂直となる点が
図3Aと異なる。ガイドロール320は、槽体310の中に設けられ、且つめっき溶液350の液面下に位置し、陰極ロール321は、めっき溶液350に接触せずに、槽体310の外に設けられる。被めっき物360が、搬送経路上にある場合に、被めっき物360は、めっき溶液350の液面下に位置し、且つめっき溶液350の液面に対して垂直である。
【0056】
図4Aは、本発明の一実施例によるめっき設備400aを示す断面模式図であり、分離タンク440aの断面が逆三角形を呈する。
図4Aにおいて、めっき設備400aは、槽体410と、複数のガイドロール420と、少なくとも1つの陰極ロール421と、少なくとも1つのめっき用陽極430と、分離タンク440aと、を備える。
【0057】
めっき設備400aのガイドロール420はV字型搬送経路となり、且つV字型搬送経路によって連続的に被めっき物460を搬送する。搬送経路はV字型を呈するため、分離タンク440aの断面が逆三角形を呈する。新しいめっき溶液450は、矢印Aの方向に沿って分離タンク440aに注ぎ込まれ、分離タンク440a上の貫通孔441によって、めっき溶液450を矢印Bの方向に沿って、めっき用陽極430に近づく被めっき物460に噴射する。過剰のめっき溶液450の液面451は、矢印Cの方向に沿って、槽体410から越流することになる。
【0058】
その中、陰極ロール421は陰イオンを被めっき物460に提供し、めっき溶液450における金属イオンを還元し、且つ金属層を被めっき物460に生成することに用いられる。めっき用陽極430は、陽イオンを提供し、且つ酸化して金属イオンをめっき溶液450の中に生成する。
【0059】
本発明の一実施例において、陰極ロールの材料は、金属であり、例えばステンレス鋼、銅又はチタンであってよいが、これらに限定されない。本発明の別の実施例において、陰極ロールの表面が研磨つや出し処理をされる。本発明のさらに他の実施例において、めっき用陽極は、金属であり、例えば、銅、ステンレス鋼又はチタンであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施例において、めっき用陽極は、チタンメッシュ又はチタン板であり、その上に酸化イリジウム、酸化タンタル又はその組み合せをさらに含む。
【0060】
図4Bは、本発明の一実施例によるめっき設備400bを示す断面模式図であり、分離タンク440bの断面は、三角形を呈する。第4Bにおいて、めっき設備400bは、槽体410と、複数のガイドロール420と、少なくとも1つのめっき用陽極430と、分離タンク440bと、を備える。
【0061】
めっき設備400aのガイドロール420は三角形搬送経路となり、且つ三角形搬送経路によって連続的に被めっき物460を搬送する。搬送経路は三角形を呈するため、分離タンク440bの断面は三角形を呈する。新しいめっき溶液450は、矢印Aの方向に沿って分離タンク440bに注ぎ込まれ、分離タンク440b上の貫通孔441によって、めっき溶液450を矢印Bの方向に沿って、めっき用陽極430に近づく被めっき物460に噴射する。過剰のめっき溶液450の液面451は、矢印Cの方向に沿って、槽体410から越流することになる。
【0062】
その中、陰極ロール421は陰イオンを被めっき物460に提供し、めっき溶液450における金属イオンを還元し、且つ金属層を被めっき物460に生成することに用いられる。めっき用陽極430は、陽イオンを提供し、且つ酸化して金属イオンをめっき溶液450の中に生成する。
【0063】
本発明の一実施例において、陰極ロールの材料は、金属であり、例えばステンレス鋼、銅又はチタンであってよいが、これらに限定されない。本発明の別の実施例において、陰極ロールの表面が研磨つや出し処理をされる。本発明のさらに他の実施例において、めっき用陽極は、金属であり、例えば、銅、ステンレス鋼又はチタンであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施例において、めっき用陽極は、チタンメッシュ又はチタン板であり、その上に酸化イリジウム、酸化タンタル又はその組み合せをさらに含む。
【0064】
図5A、
図5Bは本発明の一実施例による分離タンク500a及び500bの貫通孔510a及び510bの形状を示す。一般的に、分離タンク上の貫通孔の形状は、例えば、円孔状、ハニカム状、三角形、四角形、又はその他の幾何形状であってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施例において、分離タンク500a上の貫通孔510aの形状は、円孔状であり、
図5Aに示すようなものである。本発明の別の実施例において、分離タンク500b上の貫通孔510bの形状は、ハニカム状であり、
図5Bに示すようなものである。
【0065】
本発明の実施例において、分離タンクは直接に新しく且つ濃度が正しいめっき溶液をめっき用陽極に近づく被めっき物に供給することができるため、コーティングの品質を顕著に向上させることができる。また、圧力逃がし溝をめっき設備に設けることで、従来の攪拌による混合方法と取り替えることができ、迅速且つ均一に混合する効果を達成し、且つ新しいめっき溶液を槽体の中に補充することもできる。一方、2つのめっき用陽極を被めっき物の搬送経路に設けることによって、同じコーティングの厚みのめっき時間を短縮でき、めっき設備の生産性を大幅に向上させる。
【0066】
本発明の実施例を前述の通りに開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができ、したがって、本発明の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0067】
100、200a、200b、300、400a、400b めっき設備
110、310、410 槽体
120、320、420 ガイドロール
121、321、421 陰極ロール
130、330、430 めっき用陽極
140、340、440a、440b、500a、500b 分離タンク
141、212、441、510a、510b 貫通孔
150、350、450 めっき溶液
151、451 液面
160、360、460 被めっき物
210a、210b 圧力逃がし溝
211 開口
A、B、C 矢印