特許第5774680号(P5774680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774680中間電極層および圧電材料層が交互に配置された積層体を有するアクチュエータの製造工程
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774680
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】中間電極層および圧電材料層が交互に配置された積層体を有するアクチュエータの製造工程
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20150820BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20150820BHJP
   H01L 41/27 20130101ALI20150820BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20150820BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20150820BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/083
   H01L41/27
   H01L41/293
   F02M51/00 E
   F02M51/06 N
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-508545(P2013-508545)
(86)(22)【出願日】2011年5月5日
(65)【公表番号】特表2013-530518(P2013-530518A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】FR2011051019
(87)【国際公開番号】WO2011138562
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月22日
(31)【優先権主張番号】1053545
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】マレク, ナディム
(72)【発明者】
【氏名】ルヴァン, ローラン
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−188473(JP,A)
【文献】 特開2001−244514(JP,A)
【文献】 特開平07−221360(JP,A)
【文献】 特開2006−108638(JP,A)
【文献】 特開平04−237172(JP,A)
【文献】 特開2003−243738(JP,A)
【文献】 特開平05−267738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
F02M 51/00
F02M 51/06
H01L 41/083
H01L 41/27
H01L 41/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力超音波を発生させるのに適しており、中間電極層(7)および圧電材料層(6)が交互に配置された積層体を備えたアクチュエータ(5)の製造工程であって、
中間電極層(7)および圧電材料層(6)が交互に配置された最初の積層体(5)を形成するステップであって、前記積層体(5)の各端部が圧電材料層(6)または中間電極層(7)である、形成するステップと、
隣接する層(6、7)を互いにしっかりと接合するステップと、
前記最初の積層体(5)を、基本ユニット(5A)に切断するステップと、
各基本ユニット(5A)の前記中間電極層(7)を互いに接続するステップと、
含み、
当該中間電極層(7)が、前記基本ユニット(5A)の当該中間電極層(7)を受け入れるように意図された切り欠き(8A)を備えた接続電極(8)を使用して、互いに接続され、当該接続電極(8)が、少なくとも部分的に、前記最初の積層体(5)の前記圧電材料層(6)中の凹部(6B)の中に位置することを特徴とする、製造工程。
【請求項2】
隣接する層(6、7)を互いにしっかりと接合する前記ステップが、接着接合またははんだ付けするステップであることを特徴とする、請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記中間電極層(7)の対応する視認可能な面に接続電極(8)を溶接するステップを含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の工程。
【請求項4】
前記中間電極(7)の厚さが、100μm〜1mmの範囲内であることを特徴とする、請求項3に記載の工程。
【請求項5】
前記最初の積層体(5)の前記圧電材料層(6)中の前記凹部(6B)が、前記圧電材料層(6)に形成された孔(6A)を通して前記圧電材料層(6)を切断することによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の工程。
【請求項6】
前記最初の積層体(5)の前記圧電材料層(6)中の前記孔(6A)が円形であることを特徴とする、請求項5に記載の工程。
【請求項7】
前記孔(6A)がドリル加工によって得られることを特徴とする、請求項6に記載の工程。
【請求項8】
前記最初の積層体(5)の前記圧電材料層(6)が、凹部(6B)が設けられた2つの対向する端部を有し、前記最初の積層体(5)の前記中間電極層(7)が、凹部(7B)が設けられた1つの端部を有することを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の工程。
【請求項9】
前記最初の積層体(5)の2枚の連続する中間電極層(7)の、凹部(7B)が設けられた前記それぞれの端部が、互いに向かい合って位置していることを特徴とする、請求項8に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、圧電材料に基づくアクチュエータの製造工程であり、より詳細には、電極層および圧電材料層の、少なくとも1つの積層体を備えたアクチュエータの製造工程である。このアクチュエータは、自動車産業における流体インジェクタ(例えば燃料噴射器)において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射器は、燃焼を改善して汚染物質の排出を低減する目的で、極めて微細な燃料の噴霧を形成するために使用される。圧電型の超音波流体インジェクタ(piezoelectric ultrasonic fluid injectors)により、燃焼室内への燃料の浸透を制御することができるようになり、したがって、希薄混合気または成層混合気での動作を可能にする。
【0003】
圧電型または磁歪型の超音波流体インジェクタは、以下を注入する目的で使用することができる。
− 直接噴射式または予燃焼室式のディーゼルエンジンにおけるディーゼル燃料または任意の他の燃料
− 直接噴射式または間接噴射式のガソリンエンジンにおけるガソリン燃料または任意の他の燃料
− 内燃機関、またはガスタービンなどにおける任意の他の燃料
− 再生型デポリューションシステム(例えば亜酸化窒素トラップまたは微粒子トラップ(一般には微粒子フィルタ(PF)と称される))の燃料
【0004】
超音波インジェクタは、流体を分断することによって流体噴霧を生成する。図1は、このようなインジェクタ1を示している。インジェクタ1は、インジェクタ本体2および流体入口3を備えており、流体入口3を通って流体が高圧で入る。インジェクタ1では、流体は、振動する機械的装置を通過し、この機械的装置は、ニードル弁のヘッド4をその弁座40から離すことによって得られるオリフィスである。このオリフィスは、超音波周波数で開閉する。機械的励起の供給源は、圧電セラミックの積層体5、または、磁歪材料もしくは類似する特性を有する材料の棒である。これらの電気活性材料には、適切な電源によって電力が供給される。
【0005】
以下の説明では、圧電材料層の積層体を備えたアクティブアレイ(active array)(すなわちアクチュエータ)を想定する。このアクティブアレイは、閉じたノズルインジェクタ(closed nozzle injector)および開いたノズルインジェクタ(open nozzle injector)の両方において使用することができる。
【0006】
圧電セラミック積層体は、従来、2つの形態をとる。
【0007】
第一の形態として、1〜5mmの単一厚さを有する厚いセラミック層による積層体であって、リングまたは孔のあいた円盤の形であり、予圧ねじ(preload screw)を積層体に軸方向に通すことができる積層体が知られている。この積層体は、また、厚さ数十ミクロン〜数百ミクロンの金属合金からなる中間電極を備えている。このタイプのアセンブリは、産業規模での生産において技術的およびコスト的な問題が生じる。
【0008】
その理由として、このタイプの積層体では、完全な再現性を得るためには、予圧ねじを挿入することができるように、部品の孔あけに関連する追加の機械加工が要求される。さらに、このタイプの積層体では、各セラミックおよび各中間電極層の各面がサブミクロン平坦性を持つことが要求され、すなわち、層によって積層体を形成する前に各層の両面を慎重に研磨しなければならない。
【0009】
第二の形態として、小さい単一厚さ(一般には約100μm(マイクロメートルまたはミクロン))を有するセラミック層の積層体であって、厚さ数ミクロン(例えば約5μm)の中間電極を備えており、中間電極がセラミックの上に堆積している積層体が知られている。この場合、中間電極は、例えば、導電性材料によって満たされたポリマーを使用して、接続電極に接続されており、接触領域は、高さ数ミクロン(例えば5μm)にわたり中間電極と局所的に接触している。このタイプのアセンブリは、一方で接続を形成することが難しいので、他方で呼の接続が接触領域(5μm以下)では機械的に脆弱であるので、問題を引き起こす。したがって、このアセンブリは、高出力超音波(power ultrasound)を発生させるのに適しておらず、また、導電性ポリマーが燃料と反応するため、存在する液体または気体の炭化水素に対する十分な耐性を備えていない。
【0010】
高出力超音波は、超音波周波数(一般には10kHz〜100kHzの範囲内)での大きな振幅(約5〜10μm)、高い負荷(約40MPa)の振動運動によって発生する。高出力超音波に関連する問題として、中間電極と接続電極とが接触している接合部に相当な剪断応力が発生しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、これらの欠点を克服することである。
【0012】
本発明は、特に、厚い電極層および圧電材料層の積層体を備えたアクチュエータを、単純かつ低コストで、かつ高い精度で製造することのできる工程を提供する。
【0013】
したがって、本発明の主題は、高出力超音波を発生させるのに適しており、中間電極層および圧電材料層が交互に配置された積層体を備えたアクチュエータの製造工程である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による工程は、
− 中間電極層および圧電材料層が交互に配置された最初の積層体(initial stack)を形成するステップであって、積層体の各端部が圧電材料層または中間電極層である、ステップと、
− 隣接する層を互いにしっかりと接合するステップと、
− 最初の積層体を基本ユニット(elementary unit)に切断するステップと、
− 各基本ユニットの中間電極層を互いに接続するステップと、
を含んでいる。
【0015】
隣接する層を互いにしっかりと接合するステップは、接着接合またははんだ付けするステップであることが有利である。
【0016】
本工程は、接続電極を、中間電極層の対応する視認可能な面(visible face)に溶接するステップを含んでいることができる。中間電極層の厚さは、数百ミクロンとすることができる。したがって、中間電極層の厚さは、100μm〜1mmの範囲内とすることができる。
【0017】
中間電極層は、基本ユニットの中間電極層を受け入れるように意図された切り欠きを備えた接続電極を使用して互いに接続することができ、接続電極は、少なくとも一部分を、最初の積層体の圧電材料層中の凹部(indent)の中に位置させることができる。
【0018】
最初の積層体の圧電材料層中の凹部は、圧電材料層に形成された孔を通るように圧電材料層を切断することによって得ることができる。
【0019】
最初の積層体の圧電材料層における孔は、円形であることが好ましい。
【0020】
孔は、ドリル加工によって得ることができる。
【0021】
最初の積層体の圧電材料層は、凹部が設けられた2つの対向する端部を有することが有利であり、最初の積層体の中間電極層は、凹部が設けられた1つの端部を有することができる。
【0022】
最初の積層体の2枚の連続する中間電極層の、凹部が設けられたそれぞれの端部は、互いに向かい合って位置していることが有利である。
【0023】
以下では、本発明について、添付の図面を参照しながら例示を目的として説明する。本発明の上記以外の特徴および利点は、以下の説明を読み進めることによってさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】上述した燃料噴射器を示す図である。
図2A】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図2B】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図2C】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図2D】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図2E】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図2F】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図2G】第1の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程の各ステップを示す図である。
図3A】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図3B】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図3C】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図3D】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図3E】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
図3F】第2の実施形態における、本発明によるアクチュエータの製造工程のさまざまなステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
工程の開始時、圧電セラミックおよび中間電極を、セラミックおよび電極の積層体が正しく整列するように注意しながら、あらかじめ組み付ける必要がある。これによって、厚いセラミック(厚さ数ミリメートル)と中間電極(厚さ数百ミクロン)との一体的な多層積層体が得られる。セラミック層のそれぞれを通って印加される電界を使用してセラミック層を励起することを可能にするために、セラミックと中間電極とを交互に積み重ねなければならない。電界は、当該セラミック層の両側の2面に位置する2つの中間電極の端子に電圧を印加した結果として発生する。
【0026】
図2Aに示したように、本工程は、大きな圧電セラミックシート6と大きな中間電極箔7とを積層することで開始する。
【0027】
圧電セラミックシート6は、一般には寸法150mm×100mmを有し、厚さが1mm〜5mmとすることができる。
【0028】
中間電極7は金属箔とすることができ、その寸法は150mm×100mm、厚さは好ましくは100μm〜1mmの範囲内である。中間電極7は、一般には、銅合金、チタン合金、または銀合金からなる。
【0029】
選択する金属は、最適化するべきパラメータ、例えば、音響伝達、はんだ付けまたは接着の接合面における応力の低減、中間電極と接続電極の接続の容易性によって決まる。
【0030】
第2のステップにおいては、例えば図2Bに示したように、平行六面体5が得られるように積層体をはんだ付けまたは接着接合する。
【0031】
ほぼ完璧な幾何学形状が得られるように、平行六面体5の6つの平面を調整することができる。この平行六面体5の寸法は、一般には、150mm×100mm、高さ40mmとすることができる。
【0032】
平行六面体5、圧電セラミックシート6、および中間電極箔7の大きさおよび形状は、一例として示したものであり、これらに限定されない。例えば、100mm×100mmの断面領域を有するシートおよび箔を使用することもできる。
【0033】
はんだ付けまたは接着接合は、充填材の役割も果たす接合工程であり、平坦性の不良が補正され、したがって圧電セラミックシート6および中間電極箔7の両面に超微細研磨を施す必要がなくなる。シートと箔とをしっかりと接合するもう1つの利点として、以降に平行六面体5を最初に扱うときと、その後に基本ユニット5Aを扱うときに、固定手段(clamping means)を使用する必要がない。
【0034】
次いで、平行六面体5を切断して基本ユニット5Aを得る。これらの基本ユニット5Aは、例えば上述した超音波インジェクタの高出力超音波を発生することができるアクチュエータを製造するのに適する大きさ(すなわち、面積約15mm×15mm×40mm)のものであることが好ましい(図2C)。非限定的なもう1つの例として、この寸法を20mm×20mm×40mmとすることができる。
【0035】
図2Dは、はんだ付けまたは接着接合された平行六面体5を切断した結果として得られた、正方形断面を有する(例えば15mm×15mmの)基本ユニット5Aを示している。
【0036】
圧電セラミックシート6それぞれにおいて電界が得られ、かつセラミック層6それぞれに誘導される動きの位相が逆向きになるように中間電極7を相互接続する目的で、接続電極8を使用する必要がある。
【0037】
図2E図2F、および図2Gは、第1の実施形態を示している。
【0038】
この第1の実施形態によると、接続電極8は波形であり、中間電極7と接触する平坦な領域を備えている。接続電極8は、例えばレーザ光を使用して、中間電極7に溶接されている。中間電極7と接続電極8は、中間電極7の視認可能な面において接触している。この接触およびレーザ溶接が可能であるのは、厚さが数百ミクロン、好ましくは厚さ100μm〜1mmの範囲内の中間電極7が使用されているためである。この厚さは、多層積層体に採用され、導電性接着剤を使用して接続電極に接続される極めて薄い中間電極(数ミクロン)の厚さと比較される。特に、中間電極7と接続電極8とを互いに溶接(例えばスポット溶接)することによって、高出力超音波用として適切な、(特に剪断応力に対して)ずっと強い接合部が形成される。中間電極7と接続電極8との間の接触領域の全体または一部分を、スポット溶接することができる。
【0039】
図2Fは、組立後の積層体を示している。
【0040】
組立てがはんだ付けによって達成される場合、本工程は、当業者に周知である技術を使用して、基本ユニット5Aをバイアスさせる(biasing)ステップで終了することが好ましい。この動作は、適切な電圧を印加すること、および適切な温度にされた誘電油9の中に積層体を浸すことによって行われる(図2G)。
【0041】
この第1の実施形態においては、図から理解できるように、中間電極7と接続電極8が平坦な領域を介して接続されており、接続電極8の形状は、電気アークや短絡が防止されるように、逆バイアスされた中間電極7から十分に離れて維持されるように適切に設計されている。図2E図2F、および図2Gにおいては、この適切に設計された形状は、2つの平坦な領域の間に湾曲したセクションを備えている。
【0042】
図3A図3Fは、第2の実施形態を示している。この第2の実施形態においては、例えば図3Aに示したような、各中間電極7と同じ高さの切り欠きを含んだ直線状の厚い接続電極8を使用することを想定することができる。このタイプの接続電極8により、よりコンパクトな基本アクチュエータユニット5Aを得ることができる。接続電極8と中間電極7との間の接触領域は、切り欠き8Aによって大きくすることが可能である。切り欠き8Aは、接続電極8の幅全体にわたり形成された溝であることが好ましい。
【0043】
中間電極7に切り欠き8を介して接続電極8を接続する目的で、圧電セラミック層6すべての、接続電極8に面している面に、凹部6Bを形成する必要がある。
【0044】
接続電極8と逆バイアスされた中間電極7との間に十分な距離を存在させる目的で、さらに、これら中間電極7の、接続電極8に面している面に凹部7Bを形成する必要がある。このようにすることで、接続電極8と逆バイアスされた中間電極7との間の電気アークや短絡が防止される。
【0045】
凹部6Bおよび/または凹部7Bは、例えば、ほぼ半円形とすることができる。これらの半円形は、孔を切断した結果として得ることができる。この実施形態においては、アクチュエータの製造工程は、圧電材料シート6および中間電極箔7にドリル加工するステップを含んでいることができる。
【0046】
図3B図3C、および図3Dに従って、圧電セラミックシート6に孔6Aを形成する。シート6の幅全体にわたり一列の孔6Aを形成する。これらの孔6Aの中心は、平行六面体5を切り出した後に得られる基本ユニット5Aの幅に実質的に等しい孔間距離をあけて配置されている。次いで、切断後に得られる基本ユニット5Aの長さに実質的に等しい間隔で、シート6に沿って縦方向に、この一列の孔6Aを再形成する。この間隔は、孔6Aの中心を通る、各列の軸線の間であるものと定義する。
【0047】
箔7の幅全体にわたり一列の孔が形成されるように、中間電極箔7においても孔7Aを同様に形成する。しかしながら、箔7の縦方向には、一列の孔7Aを2倍の間隔で反復的に形成する。
【0048】
本例は、正方形断面を有する基本ユニット5Aの形成に対応する。当然ながら、本例は本発明を制限するものではなく、当業者には、製造すべき基本ユニットの所望の断面に応じて、孔の位置を変更することができるであろう。
【0049】
セラミックシート6および中間電極箔7に孔6Aおよび孔7Aを形成する。これらのシート6およびこれらの箔7を、はんだ付け、または接着接合によって交互に接合し、次いで、平行六面体5を孔6Aの中心を通って横方向に切断する。
【0050】
図3Bは、圧電セラミックシート6および中間電極7のドリル加工を示している。したがって、セラミックシート6は孔6Aを含んでおり、中間電極7は孔7Aを含んでいる。したがって、中間電極箔7は、シートに沿って縦方向は、セラミックシート6の孔の1/2の数の孔を有する。さらに、2枚の連続する中間電極箔7は、一方の箔を他方に対して半回転だけ回転させることによって得られる。この形態の利点として、製造される中間電極箔7が同じであり、1枚おきに回転させることで積層体が形成される。
【0051】
次いで、積層体5が形成されるように、圧電セラミックシート6および中間電極箔7を交互に重ねる(図3C)。はんだ付けまたは接着接合の後、平行六面体5が得られ(図3D)、これを切断して基本積層体5Aを得る(図3E)。セラミックシート6の孔6Aの中心を通る軸線に沿って横方向に、かつ孔6Aの列の間を通る軸線に沿って縦方向に切断が実行される。
【0052】
次いで、切り欠きが形成されている接続電極8の切り欠き8Aを、中間電極7と同じ高さに位置させ、切り欠き8Aと中間電極7との間の接触領域を、例えばレーザ光を使用して溶接する。このようにすると、例えば図3Fに示すような、一体に接続された基本積層体5Aが得られる。溶接は、レーザ溶接に限定されず、当業者に公知である任意の適切な溶接方法を使用することができる。
【0053】
溶接動作は、特に、はんだ付けによってしっかりとした接合が得られている場合、溶接ステップの中で、当業者に公知である技術を使用して積層体をバイアスさせるステップことを含むことができる。
【0054】
このステップは、上述したように、適切な電圧を印加し、適切な温度にされた誘電油の中に積層体を浸すことによって行う。
【0055】
正方形断面の基本ユニット5Aが適切ではなく、円形断面が要求されることがある。(第2の実施形態に特定の)この変形形態においては、凹部を含む基本ユニット5Aから開始し、接続電極を溶接する前に、正方形断面を有するユニット5Aを円形断面を有する一体ユニットに変換するように、機械加工工具上で正方形断面を有するユニット5Aを回転させることだけが必要とされる。接続電極の切り欠きは、これらの円盤形状の中間電極に適する任意の形状とすることができる。
【0056】
この場合、凹部により、中間電極を接続電極と接触させることができるようにすることが有利である。次いで、接触の品質は、正方形断面の一体基本ユニットの場合に得られる品質と同じになる。
【符号の説明】
【0057】
1 インジェクタ
2 インジェクタ本体
3 流体入口
4 ニードル弁のヘッド
40 弁座
5 積層体
5 平行六面体
5A 基本ユニット
5A 基本アクチュエータユニット
6 圧電セラミックシート
6A 孔
6B 凹部
7 中間電極
7 中間電極箔
7A 孔
7B 凹部
8 接続電極
8A 切り欠き
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F