特許第5774691号(P5774691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズの特許一覧

<>
  • 特許5774691-ユニット型波動歯車装置 図000002
  • 特許5774691-ユニット型波動歯車装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774691
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ユニット型波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20150820BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20150820BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20150820BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20150820BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
   F16C19/36
   F16C33/34
   F16C33/60
   F16C35/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-514852(P2013-514852)
(86)(22)【出願日】2011年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2011002720
(87)【国際公開番号】WO2012157022
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅士
(72)【発明者】
【氏名】横山 晃啓
(72)【発明者】
【氏名】白澤 直巳
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/050435(WO,A1)
【文献】 特開平09−280326(JP,A)
【文献】 国際公開第03/050428(WO,A1)
【文献】 特開2010−091073(JP,A)
【文献】 特開平10−096452(JP,A)
【文献】 特開平09−250608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 19/36
F16C 33/34
F16C 33/60
F16C 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のユニットハウジング(2)と、
前記ユニットハウジング(2)の内部に同軸状態に配置した波動歯車機構(3)と、
前記波動歯車機構(3)の中心を貫通して当該波動歯車機構(3)と同軸状態に延びる入力軸(4)とを有し、
前記ユニットハウジング(2)は、筒状部材(5)と、当該筒状部材(5)における軸線(1a)方向の一方の第1端面(5a)に固定したエンドプレート(6)と、前記筒状部材(5)における前記軸線(1a)方向の他方の第2端面(5b)の側に配置した2段クロスローラベアリング(7)から構成されており、
前記2段クロスローラベアリング(7)は、前記筒状部材(5)の前記第2端面(5b)に固定した外輪(11)と、当該外輪(11)の内側に同心状態に配置した中間輪(12)と、当該中間輪(12)の内側に同心状態に配置した内輪(13)と、前記外輪(11)および前記中間輪(12)の間に形成されている矩形断面の外側軌道(14)と、当該外側軌道(14)内に転動自在の状態で挿入されている複数の外側ローラ(15)と、前記中間輪(12)および前記内輪(13)の間に形成されている矩形断面の内側軌道(16)と、当該内側軌道(16)内に転動自在の状態で挿入されている複数の内側ローラ(17)とを備えており、
前記波動歯車機構(3)は、円環状の剛性内歯歯車(21)と、当該剛性内歯歯車(21)の内側に同軸状態に配置した可撓性外歯歯車(22)と、当該可撓性外歯歯車(22)の内側に同軸状態に配置した波動発生器(23)とを備え、前記可撓性外歯歯車(22)は円筒形状をした可撓性の胴部(22a)と、当該胴部(22a)における前記2段クロスローラベアリング(7)の側の端から半径方向の外方に広がっているダイヤフラム(22b)と、当該ダイヤフラム(22b)の外周縁に一体形成されている円環形状をした剛性のボス(22c)と、前記胴部(22a)における前記エンドプレート(6)の側の端部の外周面部分に形成した外歯(22d)とを備え、前記剛性内歯歯車(21)は前記筒状部材(5)に固定され、前記ボス(22c)は前記中間輪(12)に固定され、前記波動発生器(23)は当該波動発生器(23)の中心部を貫通して延びている前記入力軸(4)に固定されており、
前記入力軸(4)における前記2段クロスローラベアリング(7)の側の軸端部(4b)が前記内輪(13)に固定されており、
前記ボス(22c)は前記中間輪(12)における内側の円環状端面(12g)の外周
側の端面部分に固定され、
前記内側ローラ(17)のローラサイズは、前記外側ローラ(15)のローラサイズよりも小さく、
前記内側ローラ(17)のローラ中心(L2)は、前記外側ローラ(15)のローラ中心(L1)に対して、前記軸線(1a)に沿った方向において、前記円環状端面(12g)の側にオフセットした位置にあることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項2】
請求項1において、
前記内側ローラ(17)のローラ中心(L2)の前記外側ローラ(15)のローラ中心(L1)に対するオフセット量(Δ)は、前記内側軌道(16)の軌道幅の1/2から、当該軌道幅と前記外側軌道(14)の軌道幅との加算値の1/2までの範囲内の値であることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項3】
請求項2において、
前記オフセット量(Δ)は、前記外側軌道(14)の軌道幅の1/2であることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項4】
請求項1において、
前記中間輪(12)における円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さは、少なくとも、前記外輪(11)の円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さの2倍であることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項5】
請求項1において、
前記入力軸(4)における前記エンドプレート(6)の側の軸端部は当該エンドプレート(6)の中心貫通穴(6a)を通って外側に突出している突出軸端部(4d)であり、
前記突出軸端部(4d)および前記内輪(13)を回転入力部材の側に連結固定可能となっていることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項6】
請求項5において、
前記入力軸(4)および前記内輪(13)を貫通して延びる中空部(4c、13c)を備えていることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記外側軌道(14)および前記内側軌道(16)は、前記外輪(11)、前記中間輪(12)および前記内輪(13)において、それらの一方の端面に近い位置に形成されており、
前記中間輪(12)および前記内輪(13)における前記端面には、それぞれ、ローラ挿入用の挿入孔(12f、13f)が形成され、これらの挿入孔が栓(18、19)によって封鎖されていることを特徴とするユニット型波動歯車装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品点数が少なく組立が容易であり、軸線方向のいずれの側からでもモータ軸に連結可能なユニット型波動歯車装置に関する。
【0002】
波動歯車装置としては、波動歯車機構がハウジング内に組み込まれているユニット型のものが知られており、特許文献1、2に開示されている。これらの特許文献に開示のユニット型波動歯車装置は、装置軸線方向の両側に配置した第1の端板および第2の端板と、これらの間に配置されたクロスローラベアリングとから構成されているハウジング内にシルクハット型の波動歯車機構が組み込まれている。また、装置中心を貫通して延びている入力軸は、その両端部において、それぞれボールベアリングを介して第1の端板および第2の端板によって回転自在の状態で支持されている。
【0003】
特許文献1、2に開示のユニット型波動歯車装置は、クロスローラベアリングの内側に同心状に波動歯車機構が組み込まれている。よって、装置軸線方向の寸法を小さくすることができ、ユニット型波動歯車装置の偏平化に有利である。なお、クロスローラベアリングとしては、特許文献3において多段クロスローラベアリングが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−250608号公報
【特許文献2】特開平09−280326号公報
【特許文献3】WO2003/050428号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ユニット型波動歯車装置の用途によっては、小型化よりも、部品点数を削減して組立性を向上させたいという要求が強い場合がある。また、大きなモーメント負荷を受けることができるユニット型波動歯車装置が必要とされる場合もある。
【0006】
本発明の課題は、このような要求を満たすことのできるユニット型波動歯車装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のユニット型波動歯車装置では、そのユニットハウジングにおける軸線方向の一方の端部が、同心状に内側クロスローラベアリングおよび外側クロスローラベアリングが形成されている2段クロスローラベアリングによって規定されている。2段クロスローラベアリングにおいては、その内輪、中間輪および、これらの間に形成した内側軌道に挿入した複数個の内側ローラによって内側クロスローラベアリングが構成され、外輪、中間輪および、これらの間に形成した外側軌道に挿入した複数個の外側ローラによって外側クロスローラベアリングが構成されている。中間輪に固定した可撓性外歯歯車は、外側クロスローラベアリングを介してユニットハウジングによって回転自在に支持され、内輪に固定した入力軸および当該入力軸に固定した波動発生器は、内側クロスローラベアリングを介して中間輪によって回転自在に支持されている。
【0008】
すなわち、後述の実施の形態を参照して説明すると、本発明のユニット型波動歯車装置(1)は、
筒状のユニットハウジング(2)と、
前記ユニットハウジング(2)の内部に同軸状態に配置した波動歯車機構(3)と、
前記波動歯車機構(3)の中心を貫通して当該波動歯車機構(3)と同軸状態に延びる
入力軸(4)とを有し、
前記ユニットハウジング(2)は、筒状部材(5)と、当該筒状部材(5)における軸線(1a)方向の一方の第1端面(5a)に固定したエンドプレート(6)と、前記筒状部材(5)における前記軸線(1a)方向の他方の第2端面(5b)の側に配置した2段クロスローラベアリング(7)から構成されており、
前記2段クロスローラベアリング(7)は、前記筒状部材(5)の前記第2端面(5b)に固定した外輪(11)と、当該外輪(11)の内側に同心状態に配置した中間輪(12)と、当該中間輪(12)の内側に同心状態に配置した内輪(13)と、前記外輪(11)および前記中間輪(12)の間に形成されている矩形断面の外側軌道(14)と、当該外側軌道(14)内に転動自在の状態で挿入されている複数の外側ローラ(15)と、前記中間輪(12)および前記内輪(13)の間に形成されている矩形断面の内側軌道(16)と、当該内側軌道(16)内に転動自在の状態で挿入されている複数の内側ローラ(17)とを備えており、
前記波動歯車機構(3)は、円環状の剛性内歯歯車(21)と、当該剛性内歯歯車(21)の内側に同軸状態に配置した可撓性外歯歯車(22)と、当該可撓性外歯歯車(22)の内側に同軸状態に配置した波動発生器(23)とを備え、前記可撓性外歯歯車(22)は円筒形状をした可撓性の胴部(22a)と、当該胴部(22a)における前記2段クロスローラベアリング(7)の側の端から半径方向の外方に広がっているダイヤフラム(22b)と、当該ダイヤフラム(22b)の外周縁に一体形成されている円環形状をした剛性のボス(22c)と、前記胴部(22a)における前記エンドプレート(6)の側の端部の外周面部分に形成した外歯(22d)とを備え、前記剛性内歯歯車(21)は前記筒状部材(5)に固定され、前記ボス(22c)は前記中間輪(12)に固定され、前記波動発生器(23)は当該波動発生器(23)の中心部を貫通して延びている前記入力軸(4)に固定されており、
前記入力軸(4)における前記2段クロスローラベアリング(7)の側の軸端部(4)が前記内輪(13)に固定されており、
前記ボス(22c)は前記中間輪(12)における内側の円環状端面(12g)の外周側の端面部分に固定され、
前記内側ローラ(17)のローラサイズは、前記外側ローラ(15)のローラサイズよりも小さく、
前記内側ローラ(17)のローラ中心(L2)は、前記外側ローラ(15)のローラ中心(L1)に対して、前記軸線(1a)に沿った方向において、前記円環状端面(12g)の側にオフセットした位置にあることを特徴としている。
【0009】
ここで、本発明のユニット型波動歯車装置においては、入力軸におけるエンドプレートの側の軸端部を、当該エンドプレートの中心貫通穴を通って外側に突出させた突出軸端部としておくことが望ましい。端板の側を回転入力側とする場合には、当該突出軸端部をモータ軸に連結すればよく、反対側の2段クロスローラベアリングの側を回転入力側とする場合には、当該2段クロスローラベアリングの内輪をモータ軸に連結すればよい。
【0010】
また、本発明のユニット型波動歯車装置は、入力軸および内輪を貫通して延びる中空部を備えた中空型のものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のユニット型波動歯車装置によれば、入力軸が内側クロスローラベアリングによって支持されているので、入力軸を2個のボールベアリングによって支持し、可撓性外歯歯車をクロスローラベアリングによって支持している従来のユニット型波動歯車装置に比べて、部品点数を減らすことができる。また、事前に組み立てた2段クロスローラベアリングの内輪、中間輪および外輪に、それぞれ、入力軸、可撓性外歯歯車、筒状部材を組み付ける作業を行えば良く、2枚のエンドプレートと入力軸の間にボールベアリングを組み込む作業が不要であるので、組立性も向上する。さらに、波動発生器が固定された入力軸はクロスローラベアリングによって支持されているので、従来のように2個のボールベアリングによって支持されている場合と同等以上のモーメント負荷を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したユニット型波動歯車装置の実施の形態を示す縦断面図である。
図2図1の2段クロスローラベアリングを示す端面図および縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して本発明を適用したユニット型波動歯車装置の実施の形態を説明する。ユニット型波動歯車装置1は、筒状のユニットハウジング2と、このユニットハウジング2の内部に組み込まれている波動歯車機構3と、この波動歯車機構3の中心を同軸状態に貫通して延びている入力軸4を備えている。ユニットハウジング2は、筒状部材5、当該筒状部材5における軸線1aの方向の一方の円環状端面5aに固定した円盤状のエンドプレート6、および、筒状部材5における軸線1a方向の他方の円環状端面5bの側に配置した2段クロスローラベアリング7から構成されている。
【0014】
2段クロスローラベアリング7は、ユニットハウジング2の筒状部材5の円環状端面5bに固定された外輪11と、当該外輪11の内側に同心状態に配置した中間輪12と、当該中間輪12の内側に同心状態に配置した内輪13を備えている。外輪11と中間輪12の間には矩形断面の円環状の外側軌道14が形成されており、ここには、中心軸線が交互に交差する状態に複数個の外側ローラ15が転動自在の状態で挿入されている。これら外輪11、中間輪12、外側軌道14および外側ローラ15によって、外側クロスローラベアリングが構成されている。同様に、中間輪12と内輪13の間には矩形断面の円環状の内側軌道16が形成されており、ここには、中心軸線が交互に交差する状態に複数個の内側ローラ17が転動自在の状態で挿入されている。これら中間輪12、内輪13、内側軌道16および内側ローラ17によって、内側クロスローラベアリングが構成されている。
【0015】
ユニットハウジング2内の波動歯車機構3は、円環状の剛性内歯歯車21と、当該剛性内歯歯車21の内側に同軸状態に配置した可撓性外歯歯車22と、当該可撓性外歯歯車22の内側に同軸状態に配置した波動発生器23とを備えている。可撓性外歯歯車22は円筒形状をした半径方向に撓み可能な可撓性の胴部22aと、当該胴部22aにおける2段クロスローラベアリング7の側の端から半径方向の外方に広がっているダイヤフラム22bと、当該ダイヤフラム22bの外周縁に一体形成されている円環形状をした剛性のボス22cを備えている。胴部22aにおけるエンドプレート6の側の端部の外周面部分には外歯22dが形成されている。
【0016】
波動発生器23は可撓性外歯歯車22における外歯22dが形成されている部分に嵌め込まれており、入力軸4に同軸状態に締結固定した楕円形輪郭の剛性プラグ23aと、この剛性プラグ23aの外周面に嵌めたウエーブベアリング23bとを備えている。ウエーブベアリング23bの内外輪は可撓性のものである。可撓性外歯歯車22の外歯22dが形成されている部分は楕円形に撓められており、その楕円の長軸の両端部分に位置する外歯22dの部分が、剛性内歯歯車21の内歯21aの部分に噛み合っている。
【0017】
この構成の波動歯車機構3において、その剛性内歯歯車21はユニットハウジング2の筒状部材5に締結固定されている。筒状部材5は、その外周側の部位が広幅部分5cとなっており、この内周側には幅の狭い中幅部分5dが形成され、この内周側にはより幅の狭い細幅部分5eが形成された断面形状をしている。剛性内歯歯車21の円環状端面21bは、細幅部分5eの円環状端面に締結固定されている。可撓性外歯歯車22は、その円環状のボス22cの円環状端面が、2段クロスローラベアリング7の中間輪12における内側の円環状端面12gの外周側に形成した円環状段差面12aに締結固定されている。また、波動発生器23は先に述べたように入力軸4の外周面4aに締結固定されている。
【0018】
入力軸4は2段クロスローラベアリング7の内輪13に同軸状態に締結固定されている。すなわち、内輪13の内側の円環状端面13aの内周縁部に形成した円環状凹部13bに、入力軸4の内側の軸端部4bが嵌め込まれた状態で、当該軸端部4bが内輪13に締結固定されている。入力軸4の中心貫通孔4cと内輪13の中心貫通孔部13cとは同一内径であり、これらによって、ユニット型波動歯車装置1の中心を貫通して延びる中空部が形成されている。
【0019】
ここで、入力軸4におけるエンドプレート6の側の軸端部は、当該エンドプレート6の中心貫通穴6aを通って外側に突出した突出軸端部4dとなっており、この突出軸端部4dの円環状端面には、モータ軸などの回転入力部材を連結するために用いるねじ孔4eが一定の角度間隔で形成されている。また、反対側の2段クロスローラベアリング7の内輪13における外側の円環状端面にも、モータ軸などの回転入力部材を連結するために用いるねじ孔13dが一定の角度間隔で形成されている。
【0020】
一方、2段クロスローラベアリング7の外輪11における外側の円環状端面11bには、回転出力側部材(負荷側部材)あるいは固定側の部材に連結固定するために用いるねじ孔11cが、一定の角度間隔で形成されている。また、中間輪12における外側の円環状端面12bにも、同様に、回転出力側部材(負荷側部材)あるいは固定側の部材に連結固定するために用いるねじ孔12cが一定の角度間隔で形成されている。
【0021】
なお、エンドプレート6の側において、入力軸4の突出軸端部4dの外周面とエンドプレート6の内周面の間がオイルシール31によって封鎖されている。反対側の2段クロスローラベアリング7においては、その外輪11と中間輪12の間、および、中間輪12と内輪13の間が、それぞれ、オイルシール32、33によって封鎖されている。
【0022】
この構成のユニット型波動歯車装置1においては、入力軸4の突出軸端部4dに連結固定された回転入力部材(図示せず)によって入力軸4が回転駆動される。あるいは、反対側の内輪13を介して入力軸4に連結固定された回転入力部材(図示せず)によって入力軸が回転駆動される。入力軸4が回転すると、そこに固定されている波動発生器23も一体回転する。波動発生器23が回転すると、波動発生器23によって噛み合っている可撓性外歯歯車22と剛性内歯歯車21の噛み合い位置が円周方向に移動する。この結果、両歯車の歯数差2n枚(nは正の整数)に応じた相対回転がこれら両歯車の間に発生する。剛性内歯歯車21が回転しないように固定されている場合には、可撓性外歯歯車22が回転し、これが連結固定されている中間輪12を介して減速回転が出力される。可撓性外歯歯車22が回転しないように固定されている場合には、剛性内歯歯車21が回転し、これが連結固定されている外輪11を介して減速回転が出力される。
【0023】
ここで、クロスローラベアリングを同心状に多段に配置した構造の多段クロスローラベアリングにおいては、外側のクロスローラベアリングの内輪および内側のクロスローラベアリングの外輪として機能する中間輪に予圧変形が生じ、内側および外側のクロスローラベアリングの円滑な回転を確保することが困難になるという問題がある。しかしながら、本例の2段クロスローラベアリング7は以下に述べるように構成されているので、このような問題を解消することができる。
【0024】
図2を参照して説明すると、本例の2段クロスローラベアリング7では、内側クロスローラベアリングのローラサイズ、すなわち、内側ローラ17のサイズが、外側クロスローラベアリングのローラサイズ、すなわち、外側ローラ15のサイズよりも小さい。また、内側ローラ17のローラ中心L2は、外側ローラ15のローラ中心L1に対して、これらクロスローラベアリングの軸線1aに沿った方向にオフセットした位置にある。
【0025】
このように、2段クロスローラベアリング7では、小径の内側クロスローラベアリングのローラサイズが小さく、大径の外側クロスローラベアリングのローラサイズが大きいので、2段クロスローラベアリング7を組み立てた状態において、中間輪12に対して内側および外側から作用する予圧応力の均衡化を図ることができる。また、外側クロスローラベアリングのローラ中心L1と内側クロスローラベアリングのローラ中心L2を、それらの中心軸線の方向にオフセットさせた位置としてあるので、これらが半径方向において同一平面状に位置する場合に比べて、中間輪12に生ずる予圧変形を小さくすることができる。この結果、2段クロスローラベアリング7を組み立てた状態における中間輪12の予圧変形を抑制でき、各クロスローラベアリングの円滑な回転を確保できる。
【0026】
ここで、内側ローラ17のローラ中心L2の外側ローラ15のローラ中心L1に対するオフセット量Δは、内側軌道16の軌道幅w(16)の1/2から、当該軌道幅w(16)と外側軌道14の軌道幅w(14)の加算値の1/2までの範囲内の値としておくことが望ましい。この範囲内の値よりもオフセット量が少ないと、中間輪の予圧変形を十分に抑制できないのでクロスローラベアリングの円滑な回転を確保できないおそれがある。また、この範囲内の値よりもオフセット量を多くしても、オフセットさせることによる中間輪の予圧変形抑制効果の更なる改善が得られず、2段クロスローラベアリングの中心軸線の方向の幅寸法が大きくなり、2段クロスローラベアリングの偏平化にとって望ましくない。
w(16)/2<Δ<{w(16)+w(14)}/2
【0027】
本例では、中間輪12の予圧変形を効果的に抑制しつつ、2段クロスローラベアリング7を偏平にするために、オフセット量Δが、外側軌道14の軌道幅w(14)の1/2になっており、ローラ中心L1に対してローラ中心L2が円環状端面12gの側に片寄った位置となっている。
【0028】
また、本例では、中間輪12の予圧変形を確実に防止するために、当該中間輪12における円形内周面12dから円形外周面12eまでの間の半径方向の厚さt(12)が、外輪11の円形内周面11dから円形外周面11eまでの間の半径方向の厚さt(11)の2倍以上に設定されている。
【0029】
さらに、本例では、外輪11、中間輪12および内輪13における内側の円環状端面がほぼ同一面上に位置しており、外側軌道14が外輪11、中間輪12における内側の端面に近い側にあり、内側軌道16も、中間輪12および内輪13における内側の端面に近い側にある。そして、中間輪12および内輪13における内側の端面にローラ挿入用の挿入孔12f、13fが形成され、これらが栓18、19によって封鎖されている。このように、外側軌道14、内側軌道16を、ベアリング中心軸線1aの方向において、ローラ挿入側の端面に近い側に寄せてある。したがって、2段クロスローラベアリング7の組立性を向上させることができる。
図1
図2