【実施例】
【0028】
以下の具体的実施例により開示される実施形態を更に説明するが、これにより本開示の範囲又は内容が限定されると解釈されるべきでない。
【0029】
以下に説明する実施例の不可逆性ケモクロミック水素センサの調合マトリックスを、
図3の表1に示す。実施例で記載されるよう行ったケモクロミック水素曝露試験のデータを、
図2に示す。
【0030】
試験対象となる不可逆性ケモクロミック水素センサを、テープ成形した。テープ成形工程は、金属酸化物担体粒子とPGM化合物、シリコーンRTV3145、及び反応促進剤又はコントラスト剤を使う場合はモリブデン酸アンモニウム((NH
4)
6Mo
7O
24)との混合物である顔料パウダーの検量を含む。金属酸化物担体と混合したPGM化合物(及び、任意でモリブデン酸アンモニウム)を乳鉢で粉砕し、シリコーンRTV3145と混合した。そして、この混合物をこすり取り、テープで固定した1枚の平らなワックスペーパーに塗布した。シリコーン顔料ペーストが徐々に薄膜へと引延ばされるよう、ドクターブレードを用いた。準備した試料の膜厚は、概して10ミルであった。
【0031】
一晩かけてシートを硬化させた後、シートをカットして、水素曝露試験用のシート試料とした。各試料は、1 3/8インチ四方にカットされた。ワックスペーパーは、シートの薄さとサランラップ(登録商標)のような貼りつきやすさから、試験の際に各試料の裏面に残った。試験前に左上隅近くに小さな切れ目を入れて各試料に目印を付け、その後、コニカミノルタ社製CR−10の計器を用いて測色測定を行い、シート試料の四隅のそれぞれと中央部の5箇所のΔL*、 Δa*及びΔb*値を得た。そして、試料をバッジホルダ上に(膜の露出した側を下にして)載置した。水素発生装置により生成した水素を、バッジホルダの底部内の細管に流した。試料をバッジホルダ上に載置した後、上部に蓋をした。
【0032】
水素流への一貫した直接的曝露を確実とするため、遮断弁を用いた。各試験前には、バッジ試料ホルダへと流れを切り替える前に、水素流を安定化させた。設定時間の間、各試料を水素に曝した後、バッジホルダから取り出し、コニカミノルタ社製CR−10の計器でシート試料上の5箇所の色変化の程度を測定した。試料の色変化が測定可能である限り、この工程を繰り返した。変色反応速度に基づき、一括試験の時間は、数分から1時間以上に及んだ。
【0033】
実施例1:参考PdO/TiO
2水素センサ;従来技術
開示される実施形態との比較の基準として、TiO
2担体粒子上に沈着したPdO粒子を含むケモクロミック水素センサを調合した。ビーカー内で、50mlの脱イオン(de-ionized:DI)水と5.0gのAldrich社製TiO
2試料を混合した。磁気攪拌棒で、1時間にわたって混合物を連続的に攪拌し、その後、70℃の温度まで加熱した。別のビーカー内で、10mlのDI水と0.25gのPdCl
2と2.5mlの濃縮HClを混合した。PdCl
2溶液を、ゆっくりと慎重に担体溶液に添加した。飽和NaOH溶液を用いて、pHレベルを10〜11の間に維持した。一旦全てのPdCl
2を担体と混合したところで、70℃で1時間の攪拌を続けながら、濃縮HClを使って溶液のpHを8まで下げた。1時間後、加熱を停止し、溶液を濾過した。数回にわたってDI水で残渣を洗浄し、100℃に設定した乾燥炉内に乾燥するまで留置した。一旦乾燥させたところで、PdO/TiO
2ケモクロミック顔料試料を粉末状に粉砕し、ガラスバイアル瓶に入れた。
【0034】
実施例2:本発明の一実施形態に係るPdO/SrTiO
3水素センサ
ビーカー内で、50mlの脱イオン(DI)水と5.0gのAldrich社製SrTiO
3試料を混合した。磁気攪拌棒で、1時間にわたって混合物を連続的に攪拌し、その後、70℃の温度まで加熱した。別のビーカー内で、10mlのDI水と0.25gのPdCl
2と2.5mlの濃縮HClを混合した。PdCl
2溶液を、ゆっくりと慎重に担体溶液に添加した。飽和NaOH溶液を用いて、pHレベルを10〜11の間に維持した。一旦全てのPdCl
2を担体粒子と混合したところで、70℃で1時間の攪拌を続けながら、濃縮HClを使って溶液のpHを8まで下げた。1時間後、加熱を停止し、溶液を濾過した。数回にわたってDI水で残渣を洗浄し、100℃に設定した乾燥炉内に乾燥するまで留置した。一旦乾燥させたところで、PdO/SrTiO
3ケモクロミック水素センサ試料を粉末状に粉砕し、ガラスバイアル瓶に入れた。
【0035】
実施例3:本発明の一実施形態に係るPdO/ZrO
2水素センサ
ビーカー内で、50mlの脱イオン(DI)水と5.0gのFisher社製ZrO
2試料を混合した。磁気攪拌棒で、1時間にわたって混合物を連続的に攪拌し、その後、70℃の温度まで加熱した。別のビーカー内で、10mlのDI水と0.25gのPdCl
2と2.5mlの濃縮HClを混合した。PdCl
2溶液を、ゆっくりと慎重に担体溶液に添加した。飽和NaOH溶液を用いて、pHレベルを10〜11の間に維持した。一旦全てのPdCl
2を担体粒子と混合したところで、70℃で1時間の攪拌を続けながら、濃縮HClを使って溶液のpHを8まで下げた。1時間後、加熱を停止し、溶液を濾過した。数回にわたってDI水で残渣を洗浄し、100℃に設定した乾燥炉内に乾燥するまで留置した。一旦乾燥させたところで、PdO/ZrO
2ケモクロミック水素センサ試料を粉末状に粉砕し、ガラスバイアル瓶に入れた。
【0036】
実施例4:本発明の一実施形態に係るPdO/CeO
2水素センサ
ビーカー内で、50mlの脱イオン(DI)水と6.8gのAldrich社製CeO
2試料を混合した。磁気攪拌棒で、1時間にわたって混合物を連続的に攪拌し、その後、70℃の温度まで加熱した。別のビーカー内で、10mlのDI水と0.25gのPdCl
2と2.5mlの濃縮HClを混合した。PdCl
2溶液を、ゆっくりと慎重に担体溶液に添加した。飽和NaOH溶液を用いて、pHレベルを10〜11の間に維持した。一旦全てのPdCl
2を担体粒子と混合したところで、70℃で1時間の攪拌を続けながら、濃縮HClを使って溶液のpHを8まで下げた。1時間後、加熱を停止し、溶液を濾過した。数回にわたってDI水で残渣を洗浄し、100℃に設定した乾燥炉内に乾燥するまで留置した。一旦乾燥させたところで、PdO/CeO
2試料を粉末状に粉砕し、ガラスバイアル瓶に入れた。
【0037】
実施例5:本発明の一実施形態に係るPdO/SrZrO
3水素センサ
ビーカー内で、50mlの脱イオン(DI)水と5.0gのAldrich社製SrZrO
3試料を混合した。磁気攪拌棒で、1時間にわたって混合物を連続的に攪拌し、その後、70℃の温度まで加熱した。別のビーカー内で、10mlのDI水と0.25gのPdCl
2と2.5mlの濃縮HClを混合した。PdCl
2溶液を、ゆっくりと慎重に担体溶液に添加した。飽和NaOH溶液を用いて、pHレベルを10〜11の間に維持した。一旦全てのPdCl
2を担体粒子と混合したところで、70℃で1時間の攪拌を続けながら、濃縮HClを使って溶液のpHを8まで下げた。1時間後、加熱を停止し、溶液を濾過した。数回にわたってDI水で残渣を洗浄し、100℃に設定した乾燥炉内に乾燥するまで留置した。一旦乾燥させたところで、PdO/SrZrO
3試料を粉末状に粉砕し、ガラスバイアル瓶に入れた。
【0038】
実施例6:Pd有機塩を用いて形成した本発明の一実施形態に係るPd有機塩/TiO
2水素センサ
0.2gのPd(OCOCH
3)
2を、70℃で10mlの氷酢酸に溶解させた。得られた溶液2mlを、3gのTiO
2粉末(Aldrich社製)に添加し、混濁液を注意深く混合し、一晩放置して乾燥させた。
【0039】
実施例7:Pd有機塩を用いて形成した本発明の一実施形態に係るPd有機塩/TiO
2水素センサ
0.12gのPd(OCOCH
3)
2を、70℃で10mlの氷酢酸に溶解させた。得られた溶液を、2.5gのTiO
2粉末(Aldrich社製)に添加し、混濁液を注意深く混合し、一晩放置して乾燥させた。
【0040】
実施例8:Pd有機塩を用いて形成した本発明の一実施形態に係るPd有機塩/ZrO
2水素センサ
0.12gのPd(OCOCH
3)
2を、70℃で10mlの氷酢酸に溶解させた。得られた溶液を、2.5gのZrO
2粉末に添加し、混濁液を注意深く混合し、一晩放置して乾燥させた。
【0041】
実施例9:PGM有機塩を用いて形成した本発明の一実施形態に係るPd有機塩/MoO
3水素センサ
0.2gのPd(OCOCH
3)
2を、70℃で10mlの氷酢酸に溶解させた。得られた溶液2mlを、3gの無水モリブデン酸(MoO
3)に添加し、混濁液を注意深く混合し、一晩放置して乾燥させた。
【0042】
実施例10:完全カプセル化用のシリコーンを含む水素センサ
実施例1〜9で調合した中から選択した水素センサ粉末0.3〜0.6gを、十分な湿気硬化型シリコーン・シーラント(ダウコーニング社製、R3145 RTV接着剤・シーラントクリア)に手作業で混合し、全体を3〜10gとした(
図3の表1、試料SR−1−5H〜SR−1−6G参照)。未硬化の水素センサ粉末/シーラントを用いて、ゴムシート指示薬を準備した。ドローダウンブレードを用いて未硬化の顔料/シーラントを塗った実験台の上に1枚の平らなワックスペーパーを載置し、硬化する準備ができた均一な材料シートを配置した。24〜48時間後、まだ膜に付着しているワックスペーパーと共に、薄いゴム状シートを取り除いた。このワックスペーパーの裏側シートを細かく切断して水素指示薬テープとして用い、水素ガスに曝した。
図2に示される水素ガス曝露時間の経過後、元は白からベージュ色だった硬化後の化合物は、灰色へと変化した。水素室から取り出した後も、色は灰色のままであった。
【0043】
実施例11:反応促進剤を含む水素センサ
反応促進剤の作用を実証する実験において、MoO
3又は(NH
4)
6Mo
7O
24を、水素センサのPGM(例えば、Pd)原子含有量当たりの金属イオン等価物が1〜40までの様々なレベルに変えて本発明の実施形態に係る水素センサに添加すると、ケモクロミック水素センサは水素との接触により、モリブデン錯体及び/又は酸化物がない場合よりも視覚的に濃い色を示した。また、色変化の程度と速度についても、
図2に実証するように、モリブデン錯体及び/又は酸化物がない場合に比べ、大幅に増加されることがわかった。
【0044】
実施例12:カプセル化したPdO/MoO
3水素センサ
実施例9で上述したPd有機塩/MoO
3水素センサ粉末0.5gを、十分な湿気硬化型シリコーン・シーラント(ダウコーニング社製、R3145 RTV接着剤・シーラントクリア)に手作業で混合し、全体を3gとした(表1、試料SR−1−6I〜K及びSR−1−6L〜N参照)。未硬化の顔料/シーラントを用いて、ゴムシート指示薬を準備した。ドローダウンブレードを用いて未硬化の顔料/シーラントを塗った実験台の上に1枚の平らなワックスペーパーを載置し、硬化する準備ができた均一な材料シートを配置した。24〜48時間後、まだ膜に付着しているワックスペーパーと共に、薄いゴム状シートを取り除いた。このワックスペーパーの裏側シートを細かく切断して水素指示薬テープとして用い、水素ガスに曝した。
図2に示される水素ガス曝露時間の経過後、元は白からベージュ色だった硬化後の化合物は、灰色へと変化した。水素室から取り出した後も、色は灰色のままであった。
【0045】
本実施例においては、色強度が、他の試料のものを遥かに上回っていることに留意されたい。無水モリブデン酸(MoO
3)担体によるケモクロミック効果が加わったことがその理由と思われる。MoO
3は、水素への曝露によって青色に還元された形態(MoO
3‐X)に変換されることが知られている。しかし、この過程は非常に遅い(担体としてMoO
3のみを含むブランクの(即ち、顔料無しの)バッチにより、
図2において明確に示されるように)。Pd有機塩の存在は、自動触媒効果をもたらすと考えられ、MoO
3の還元形態への還元を大幅に加速する。一方、モリブデン酸化物の還元形態が、Pd有機塩から金属Pdへの更なる変換を促進する。組合せの効果として、Pd/MoO
3水素センサは、ほぼ真っ黒な色となる。しかし、長時間(日数)経過後に、モリブデン酸化物の還元形態からその元来の酸化形態への酸化に起因して、顔料の幾分かの脱色作用があり得ることに留意されたい。しかし、この作用は、Pd有機塩から金属Pdへ還元によって達成された着色に変化を与えるものではない。
【0046】
実施例13:RTVマトリックス内の色対比
水素センサの色対比の測定ΔΕ*を、マトリックス比3(又は6)対100(膜)の顔料のRTVマトリックス内で行った。試料の比色パラメータa*、b*及びL*を、100%の水素ガスに曝す前後に測定し、ΔΕ*を決定した。その結果を
図2に示す。
【0047】
上記に開示される様々な実施形態を説明してきたが、これらが説明のみの目的で示されており、限定の目的で示されているわけではないことが理解されるべきである。本明細書中に開示された主題には、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、本開示に従って様々な変更を行うことができる。また、特定の特徴を幾つかの実施例のうちの1つのみに関して開示したが、この様な特徴は、所定の又は特定の応用に望ましく有利なように、他の実施例の1つ以上の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0048】
従って、本開示による主題の範囲は、上記に明示する実施形態のいずれによっても制限されるべきではない。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるべきである。
【0049】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけであり、限定となることを意図しない。本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないと明確に示さなければ複数形を同様に含んで意味する。更に用語「含んでいる(including)」、「含む(include)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」又はそれらの変形は、詳細な記載及び/又は特許請求の範囲のいずれにおいても使用される程度に、そのような用語は用語「含む(comprising)」と同様の様式で包括的であることを意図する。
【0050】
別段の記載がない限り、本明細書に使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の実施形態が属する当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に規定されるもの等、用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と整合性がとれる意味を有すると解釈されるべきであること、及び本明細書にそのように明確に規定されない限り、理想的又は非常に形式的な意味において解釈されることにはならないことが更に理解される。