(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は請求項1に係る発明の実施例である照明付きの化粧鏡セットを示している。この化粧鏡セットは、鏡ユニット11、左右の側板12,13、上方の上板14、及び支持台15を備えている。鏡ユニット11は長方形の鏡21とその鏡21の裏面に張り合わされた平板22とを有する。平板22は樹脂、木、或いは金属からなり、鏡21のサイズと同一サイズを有しても良いし、若干大きくても良い。左側の側板12は鏡ユニット11の左側端部に角度調整自在に連結され、右側の側板13は鏡ユニット11の右側端部に角度調整自在に連結されている。上板14は鏡ユニット11の上側端部に角度調整自在に連結されている。鏡ユニット11と側板12,13及び上板14各々との間には
図2に示すように蝶番機構16が形成されており、その蝶番機構16によって上記の角度調整自在な連結が可能となっている。その角度調整範囲は鏡ユニット11と側板12,13及び上板14各々とがほぼ水平となる角度から、鏡ユニット11に対して側板12,13及び上板14を折りたたんだ状態における角度までを含む。
【0013】
側板12,13各々の垂直方向(上下方向)の長さは鏡ユニット11の垂直方向の長さと同一であるが、水平方向(左右方向)の長さは鏡ユニット11の水平方向の長さの1/2以下である。
【0014】
側板12,13各々の表面には4つの有機EL(Electro Luminescence)パネル(面光源)25a〜25d,26a〜26dが垂直方向に並べて接着によって取り付けられている。有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dは同一のものであり、例えば、13cm×13cmの正方形状をしている。また、上板14には3つの有機ELパネル(面光源)27a〜27cが水平方向に並べて接着によって取り付けられている。有機ELパネル27a〜27cは
図1では有機ELパネル25a〜25c,26a〜26dより小さいサイズのものとなっているが、同一の大きさでも良い。
【0015】
支持台15は台座15aと支柱15bとからなり、楕円平板の台座15aに対して垂直に支柱15bは連結している。支持台15は側板12,13及び上板14を含む鏡ユニット11を支持するために支柱15bが鏡ユニット11に取り外し自在に連結している。例えば、鏡ユニット11の低部には連結孔(図示せず)が形成され、支柱15bの先端部がその連結孔に差し込まれることにより支持台15と鏡ユニット11とが結合するようになっている。
【0016】
上記した構成を有する
図1の化粧鏡セットにおいては、側板12,13及び上板14各々を鏡ユニット11との連結部分(上記の蝶番機構16)を回転軸としてメークアップアーチスト等の利用者(ユーザ)が操作することにより側板12,13及び上板14各々と鏡ユニット11との角度を個別に調整することができる。すなわち、鏡21の鏡面に映し出されるモデル等の化粧対象者の像を側板12,13及び上板14各々の有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cによる発光によって好適に照らし出すように側板12,13及び上板14各々と鏡ユニット11との角度を個別に調整することができる。
【0017】
また、側板12,13及び上板14各々は有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dを有する状態で
図3に示すように折りたたむことができる。この折りたたんだ状態で側板12,13同士が接触することはないが、上板14が側板12,13の一部と重なり合う。有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cの厚みが薄いために有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cが破損或いは変形することなく側板12,13及び上板14各々を折りたたむことができる。
【0018】
更に、支持台15を鏡ユニット11から取り外して支持台15と鏡ユニット11及び側板12,13部分とを分離し、上記のように鏡ユニット11に対して側板12,13及び上板14を折りたたんだ状態にすることにより化粧鏡セットの搬送が容易となる。
【0019】
次に、
図1の化粧鏡セットの有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々及びその駆動系について説明する。
【0020】
有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々はフルカラーの照明用発光パネルであり、
図4に示すように、ガラス基板51上に発光色がR(赤)G(緑)B(青)である有機EL素子50R,50G,50Bがストライプ状に形成されている。なお、
図4はストライプの直線に直交する方向の断面を示している。
【0021】
それらの有機EL素子50R,50G,50B各々は陽極52、ホール注入層53、ホール輸送層54、RGB発光層55R,55G,55B、電子輸送層56、そして陰極57の順に積層された構造を有し、有機EL素子50R,50G,50B間はバンク58で仕切られている。また、各有機EL素子50R,50G,50Bの陽極52上にはバスライン59が形成されており、バスライン59によって陽極52への給電が行われるようになっている。陽極52は例えば、スパッタ法により膜厚70nmのITO膜からなる。ホール注入層53はCuPcからなり、厚さ20nmである。ホール輸送層54はNPBからなり、厚さ20nmである。R(赤)発光層55RはCPBをホスト材料とし、Ir(phq)
2tpyをドーパントとしており、G(緑)発光層55GはCPBをホスト材料とし、Ir(ppy)
3をドーパントとしており、B(青)55BはPANDをホスト材料とし、DPAVBiをドーパントとしている。RGB発光層55R,55G,55Bの厚さは40nmである。電子輸送層56はCsxMoOxをドープしたNBphenからなり、厚さ30nmである。陰極57は膜厚70〜100nmのAl膜からなる。なお、この有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cの内部構造は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0022】
図1の化粧鏡セットは有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cを駆動する駆動装置(駆動手段)を備えている。駆動装置は
図5に示すように、AC−DCコンバータ61、制御部62、メモリ63及び操作部64を有している。AC−DCコンバータ61は交流電圧を直流電圧に変換して出力する。AC−DCコンバータ61の出力電圧は直流電源として有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々及び制御部62に供給される。制御部62は、AC−DCコンバータ61の出力電圧を電源として動作し、例えば、CPUで構成され、有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々の上記のRGBの有機EL素子50R,50G,50B毎の駆動電流を制御することにより有機ELパネル毎の発光(発光色及び輝度)を個別に制御する。
【0023】
制御部62には更に、メモリ63及び操作部64が接続されている。メモリ63には制御部62の制御で必要なプログラムやデータが保存される。操作部64は有線又は無線のリモコンとして備えられている。
【0024】
操作部64には、
図6に示すように、電源ボタン70とシーンボタン75a〜75eとが設けられている。ユーザによる操作部64の電源ボタン70の操作によって電源が投入された後においては、シーンボタン75a〜75eのいずれか1の操作が可能となる選択部である。
【0025】
メモリ63には複数のシーン各々に対応した有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々のRGB各々の数値がデータとして予め記憶されている。シーンとしては例えば、オフィス、ホテルラウンジ、ディナーパーティ、ファションショー、及びアウトドアがある。このようなシーン毎に有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々の最適な発光色及び輝度に対応してRGB各々の数値がデータとしてメモリ63に記憶されている。メモリ63に記憶されたデータのうちの有機ELパネル25b,26b,27b各々の発光色のデータはいずれのシーンにおいても白色となるように設定されている。
【0026】
シーンボタン75a〜75eのうちの例えば、シーンボタン75aが押圧操作されると、制御部62はシーンボタン75aに対応したシーンのデータ(有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々のRGB各々の数値)をメモリ63から読み出す。制御部62は読み出したデータに応じて有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々の赤緑及び青の発光色の各有機EL素子50R,50G,50Bの駆動電流を供給する。有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々はメモリ63のシーンボタン75aに対応したデータが示す発光色及び輝度にて発光する。この結果、シーンボタン75aを操作すると、シーンボタン75aに対応したシーンに好適な照明状態を作り出すことができる。
【0027】
この有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cの駆動時において、有機ELパネル25b,26b,27b各々は
図7に示すように白色発光する。ここでいう白色とは、色温度で例えば、2700〜6700Kの範囲の色である。側板12,13の有機ELパネル25b,26bは鏡21の鏡面に映し出されるべき化粧対象者像P1の目が通常位置する高さの線A1上に存在する。有機ELパネル25b,26bは垂直方向に上記したように13cmの幅を有しているので、その範囲内にほとんどの化粧対象者の目の位置は収まる。また、有機ELパネル27bは鏡21の鏡面を左右に2等分する垂直方向の直線A2上に存在する。よって、左右及び上方の3方向からの有機ELパネルによる照明となると共に有機ELパネル25b,26b,27bの発光色が白色となることにより化粧対象者の目を中心として顔が白色で照明されるので鏡21の鏡面に映し出される化粧対象者像を立体的に視認することができる。また、照明用に有機ELパネルによる面光源を用いているため、点光源を用いた場合に比べて化粧対象者が同じ照度であっても眩しいことはない。従って、上記した実施例によれば、化粧に最適な照明状態を作り出すことができる。
【0028】
なお、実際には化粧対象者によって鏡21の鏡面に映し出される目の位置は異なるので、白色発光させる有機ELパネルをパネル25b,26bに固定しないでユーザによる操作部64への入力操作に応じて白色発光させる有機ELパネルを選択的に指定できるようにしても良い。
【0029】
また、目の位置に対応して有機ELパネル25b,26b各々の発光面を全て白色発光させるのではなくて、目の位置に実際に対応する有機ELパネル25b,26b各々の発光面の垂直方向の一部領域だけを白色発光させても良い。更に、その一部領域をユーザによる操作部64への入力操作に応じて調整できるようにしても良い。
【0030】
更に、上記した実施例においては、上板14に複数の有機ELパネル27a〜27cが取り付けられているが、上板14には1つの有機ELパネルだけが取り付けられても良く、その場合にはその1つの有機ELパネルが白色発光する。
【0031】
図8は本発明の他の実施例として
図1の化粧鏡セットの駆動装置の構成を示している。
図8に示した駆動装置においては、カメラ65が制御部62に接続されている。その他の構成は
図5に示した駆動装置と同一であり、
図8においては同一符号を用いて示している。
【0032】
カメラ65は
図9に示すように鏡ユニット11の平板22の上部に取り付けられている。しかしながら、左右の側板12,13、及び上方の上板14のいずれかに設けられても良いし、ユーザが手に持って操作しても良い。カメラ65は本化粧鏡セットにおける化粧対象者の顔を例えば、上記の操作部64の電源ボタン70が押圧操作された直後に撮影してその撮影画像の映像信号を制御部62に供給する。
【0033】
カメラ65と制御部62とは鏡ユニット11の鏡面に映し出された化粧対象者の目の位置を検出する検出部を構成する。
【0034】
制御部62は、映像信号が供給されると、
図10に示すように、映像信号が示す画像から化粧対象者の顔の目の位置及び化粧対象者の顔の中心線を認識する(ステップS1)。このステップS1の認識には例えば、テンプレートマッチング技法による顔認識及び顔パーツ認識技術が用いられる。ステップS1の認識結果である目の位置に対応した高さ位置の有機ELパネルを有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dのうちから選択する(ステップS2)。また、ステップS1の認識結果である顔の中心線上に位置する有機ELパネルを有機ELパネル27a〜27cのうちから選択する(ステップS3)。ステップS2及びS3で選択した有機ELパネルを白色発光させる(ステップS4)。すなわち、ステップS2及びS3で選択した有機ELパネル各々を白色発光させるためにそれらの有機ELパネル各々赤緑及び青の発光色の各有機EL素子50R,50G,50Bに駆動電流が供給される。また、シーンボタン75a〜75eのうちの押圧操作された1つのシーンボタンを検出し(ステップS5)、操作された1つのシーンボタンに対応するシーンのデータ(ステップS2及びS3で選択した有機ELパネル以外の有機ELパネルのデータ)を読み出し(ステップS6)、読み出したデータに応じてステップS2及びS3で選択した有機ELパネルを除く有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27c各々の赤緑及び青の発光色の各有機EL素子50R,50G,50Bの駆動電流を供給する(ステップS7)。
【0035】
この結果、
図11に示すように、鏡21の鏡面に映し出された化粧対象者像P2の目の高さの位置A3に存在する側板12,13各々上のいずれか1つの有機ELパネル(例えば、有機ELパネル25b,26b)が白色発光し、同時にその化粧対象者像P2の顔の中心線A4上に存在する上板14上のいずれか1つの有機ELパネル(例えば、有機ELパネル27b)が白色発光するので、鏡21の鏡面に映し出される化粧対象者像P2を立体的に視認することができる。これにより化粧に最適な化粧状態を作り出すことができる。また、操作された1つのシーンボタンに対応したシーンに適切な照明状態を得ることもできる。
【0036】
上記した実施例の化粧鏡セットにおいては、
図12に示すように、有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dが側板12,13に対する角度を調整可能され、有機ELパネル27a〜27cが上板14に対する角度を調整可能されても良い。
図12に示した有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d各々においては、鏡ユニット11側の辺を回転軸として有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dの角度調整が可能である。例えば、側板12,13と有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dとを蝶番機構(図示せず)を介して連結することにより有機ELパネル25a〜25d各々の鏡ユニット11側の辺を回転軸とすることができる。有機ELパネル27a〜27cについても、有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dの場合と同様の蝶番機構(図示せず)を介して上板14と連結することにより有機ELパネル25a〜25d各々の鏡ユニット11側の辺を回転軸とすることができる。また、
図12に示したように、側板12,13には有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cと対応する位置に有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cが入り込める大きさの開口部31a〜31d,32a〜32d,33a〜33cを形成しても良い。このように有機ELパネル25a〜25d,26a〜26dを側板12,13に対して、また有機ELパネル27a〜27cが上板14に対して角度調整可能にすることにより、有機ELパネル毎に任意の角度に調整することができるので、より適切な照明状態を作り出すことができる。
【0037】
図13は単一の面光源の発光面を複数の領域に分けて領域毎に個別に駆動する照明付き化粧鏡セットを示している。例えば、
図1に示した実施例においては、側板12,13及び上板14各々には複数の有機ELパネル25a〜25d,26a〜26d,27a〜27cが取り付けられているが、
図13に示すように側板12,13各々には単一の長手の有機ELパネル25,26がその長手方向を垂直方向として取り付けられ、上板14には単一の長手の有機ELパネル27がその長手方向を水平方向として取り付けられても良い。この
図13の照明付き化粧鏡セットにおいては、有機ELパネル25,26,27各々の発光面を
図13に破線で示すように複数の領域、例えば、4つの領域28a〜28d,29a〜29d,30a〜30cに領域分けし、上記した実施例のパネル毎の駆動と同様に、操作部におけるユーザによる入力操作に応じて制御部が領域毎に駆動しかつ発光色及び輝度をシーンに対応させて調整することが行われる。また、有機ELパネル27の鏡面を左右に2等分する線位置に対応した領域30bと、有機ELパネル25,26各々の発光面のうちの鏡面に映し出されるべき化粧対象者像の目の位置に対応した領域28b,29bとが白色発光するように有機ELパネル25,26,27が駆動される。このような駆動により、上記した実施例と同様に鏡21の鏡面に映し出された化粧対象者像を立体的に視認することができる。