特許第5774718号(P5774718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌ・ブイ・ペリコーン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774718
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】メラニン促進局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20150820BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20150820BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20150820BHJP
   A61Q 19/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/35
   A61K8/46
   A61K8/41
   A61Q19/04
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-542007(P2013-542007)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公表番号】特表2013-544283(P2013-544283A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】US2011059323
(87)【国際公開番号】WO2012074672
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2013年7月29日
(31)【優先権主張番号】12/957,016
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512168917
【氏名又は名称】エヌ・ブイ・ペリコーン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】N.V.PERRICONE LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ブイ・ペリコーン
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/025264(WO,A1)
【文献】 特開2010−083893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0086471(US,A1)
【文献】 特表2010−530386(JP,A)
【文献】 特表2009−515910(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0035241(US,A1)
【文献】 特開2003−300861(JP,A)
【文献】 特開2005−112786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に適用するためのサンレスタンニング組成物であって、
チロシン、N−アセチルチロシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択される少なくとも1つのドーパミン前駆体の有効量、ならびにクルクミンの有効量からなるメラニン上方制御のための相乗的組み合わせならびに
皮膚科学的に許容される担体
を含む組成物。
【請求項2】
ドーパミン前駆体がタンニング組成物の〜30重量パーセント存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
ドーパミン前駆体がタンニング組成物の〜20重量パーセント存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
ドーパミン前駆体がタンニング組成物の10〜15重量パーセント存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
ドーパミン前駆体がN−アセチルチロシンである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
ドーパミン前駆体がN−アセチルチロシンとフェニルアラニンの組み合わせである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
クルクミンがタンニング組成物の0.05〜10重量パーセント存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
クルクミンがタンニング組成物の1.0〜5重量パーセント存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
クルクミンがタンニング組成物の2.0重量パーセント存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
フェニルイソチオシアネートをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
フェニルイソチオシアネートがタンニング組成物の0.5〜10.0重量パーセント存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
フェニルイソチオシアネートがタンニング組成物の1.0〜8.0重量パーセント存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
フェニルイソチオシアネートがタンニング組成物の2.0〜5.0重量パーセント存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚科学的に許容される担体がヒアルロン酸ナトリウム、フォスファチジルコリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、シアバター、スクアラン、シリコーンおよびジメチルエタノールアミンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
α−ヒドロキシ酸、カフェイン、ビタミンD3、ケルセチン、スルフォラファン、ならびにアスパラギン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅の混合物からなる群から選択される1つ以上の薬剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
組成物のpHが2.5〜6.0の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
組成物のpHが3.0〜5.5の範囲である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
組成物のpHが3.8〜5.0の範囲である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
組成物がローション剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
〜15重量パーセントのドーパミン前駆体;
1〜3重量パーセントのクルクミン;および
重量パーセントのフェニルイソチオシアネート
を含むサンレスタンニング組成物であって、バランスが水であり、該ドーパミン前駆体がチロシン、N−アセチルチロシン、フェニルアラニン、およびその混合物からなる群から選択される、組成物。
【請求項21】
水相、油相、水性ジメチルエタノールアミン混合物、チロシン、N−アセチルチロシンおよびフェニルアラニンから選択されるドーパミン前駆体、クルクミン、ならびに防腐剤を含むサンレスタンニング組成物を製造する方法であって、
水相を油相に添加すること;
水相を油相と混合すること;
38〜40℃まで冷却すること;
8℃の温度でジメチルエタノールアミン混合物を添加すること;
生じた混合物に35℃の温度でドーパミン前駆体およびクルクミンを添加すること;
ホモジナイズすること;
防腐剤を添加すること;ならびに
適量の水を添加して全体を100.00にすること
である工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚を黒くする(サンレスタンニング)組成物および方法、すなわちドーパミン前駆体およびクルクミンに基づいて皮膚を黒くする組成物および方法に関する。これらの組成物を製造する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
日焼けした皮膚は、一般に個人の外見の望ましい美的要素である。日焼けした外見は、健康で、若々しく、かつ一般的により魅力的に見えることと関連する。
【0003】
自然の日焼け(タンニング)工程は、太陽光、特に紫外(UV)光への曝露によって引き起こされ、皮膚が色素メラニンを発現する時に生じる。メラニンは、その光化学的特性に起因する光防護機能を果たす。それは、有害なUV光線を吸収し、エネルギーを熱に変換する。これは、悪性メラノーマおよび他の皮膚癌の形成と関連する間接的なDNA損傷を防ぐ。
【0004】
日焼けの原因である紫外周波数は、しばしばUVAおよびUVB領域に分けられる。UVAは、既存のメラニンがメラニン形成細胞から放出され、酸素と結びつく(酸化する)原因となり、次いでそれは皮膚に実際の黄褐色を作り出す。UVBは、メラニン産生の増加を誘発する。UVB曝露は、曝露後約2日で日焼けをもたらすであろう。UVA、および特にUVBは、活性酸素種の形成の原因となり得、次いでそれは直接的に、および様々な生化学的経路を通じてDNAを損傷する。UV照射の有害作用はよく理解されており、UV照射は他の発癌物質よりも、世界的により癌と関連している。Nyugen et al., Nonmelanoma skin cancer, Curr Treat Opt Oncol 3: 193-203 (2002)。
【0005】
太陽光の効果を模倣するために、日焼けマシーン(タンニングベッド)が用いられている。日焼けマシーンは、日焼けをもたらすのに効果的なスペクトルのUVを放射するように設計された蛍光体混合物を有するいくつかの蛍光ランプを用いる。ほとんどの日焼けマシーンは、主としてUVA照射を放射する。
【0006】
太陽光または日焼けマシーンと関連するUV照射のリスクを回避するために、UVを照射することなく日焼けした外見を提供する製品が開発されている。それゆえ、日焼けした外見を提供するために、サンレスタンニング製品、例えばセルフ・タナー(self-tanners)およびスプレー・タン(spray tans)が開発されている。
【0007】
入手可能なサンレスタンニング製品のほとんどは、有効成分としてジヒドロキシアセトン(DHA)を含有するローション剤および噴霧剤である。DHAは、皮膚表面上のケラチンの死んだ層の一部であるアミノ酸基と化学的に反応する。様々なアミノ酸はDHAと異なって反応し、黄色〜褐色の異なる色調を生成する。得られた色素は、メラノイジンと呼ばれている。これらは、メラニンと類似した色彩を有する。DHAベースの製品の使用に起因する人工的な日焼け着色は、使用者のケラチン層の特性に依存して、色および均一性が変化しうる。いくつかの人工的な日焼け製品では、DHAに加えてエリトルロース(erythulose)が用いられている。エリトルロース(Erythulose)はDHAと同一の方法で皮膚表面に作用するが、異なる色の範囲を提供する。ジュグロン、およびローソンも、日焼け剤(bronzing agents)として用いられている。
【0008】
サンレスタン(太陽光線を用いない日焼け)を生成するために用いられる他の薬剤は、皮膚表面着色剤、例えば合成色素、天然着色剤および酸化鉄を含む。これらの美容方法は、十分な、自然な外観の、長持ちする日焼けを提供しない。さらに、着色剤は洗い落とされ得、または織物の染みの原因となりうる。
【0009】
皮膚着色と関連する主に2つのタイプのメラニンがある:ユーメラニンおよびフェオメラニンである。ユーメラニンが黒色または褐色の皮膚着色を提供する一方、フェオメラニンは淡いピンクの皮膚および赤毛の着色を提供する。
【0010】
メラニンは、酵素チロシナーゼ(メラノサイト皮膚細胞によって形成される)によってチロシンから生成される。チロシナーゼはチロシンをジヒドロキシフェニルアラニン(l−ドーパ)に変換し、次いでドーパキノンに変換する。次いでドーパキノンはユーメラニンまたはフェオメラニンに変換される。
【0011】
皮膚におけるメラニンの産生を刺激する製品が提案されている。例えば、メラニン前駆体、例えばチロシンおよびメラニンの形成を触媒するのに必要である酵素チロシナーゼの使用が提案されている。例えば、米国特許第4,515,773号(Herlihy)は、ヒト表皮を日焼けさせるための組成物に向けられている。組成物は10mM〜1M濃度の前駆体、例えばチロシン、フェニルアラニンおよびカテコール誘導体を含有しており、酵素チロシナーゼと共に基剤の至る所に分布している。
【0012】
米国特許第5,061,480号(Marcheseら)は皮膚日焼け組成物に向けられており、チロシン有効成分が非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばBRIJ、TWEENまたはARLACEL)と相乗的に作用し、皮膚への透過速度を増加させる組成物を開示している。リボフラビンまたはアデノシン三リン酸の添加が、皮膚日焼け色素を生成する酸化工程を促進することが開示されている。チロシンまたはチロシンの誘導体は、0.2〜0.5重量パーセントで存在すると教示されている。
【0013】
しかしながら、そのような製品は有意なサンレスメラニン産生を提供するのに効果的ではなく、商業的に成功していない。
【0014】
米国特許公開2005/0175556号(Gupta)(その開示は参照することによって本明細書に援用される)は、チロシナーゼ酵素によるメラニン合成の増強に基づいて皮膚を黒くする組成物に向けられている。Guptaは、(i)少なくとも1つのチロシン基質剤(substrate agent)、(ii)少なくとも1つのチロシン活性剤、および任意に医薬担体を含む、皮膚を黒くする局所用組成物を開示している。全ての実施例は、チロシナーゼ基質として、ムクナプルリエンス抽出物(Mucuna prurience extract)またはジヒドロキシフェニルアラニン(D−およびL−ドーパ)を教示している。チロシン活性剤としてATP銅およびグルタチオン銅が教示されている。
【0015】
しかしながら、産業界では、効果的で、かつ、合成化合物または金属を用いる活性化を必要としないサンレスタンニング組成物が依然として必要とされている。望ましくは、サンレスタンニング化合物は、チロシン活性剤として自然に存在する植物ベースの化合物を用いて製剤化されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概略
本発明は、ドーパミン前駆体とクルクミンの相乗的組み合わせで構成されるサンレスタンニング組成物を提供する。
【0017】
1つの実施態様では、少なくとも1つのドーパミン前駆体の有効量、クルクミンの有効量、および皮膚科学的に許容される担体を含む、皮膚に適用するためのサンレスタンニングローション剤が提供される。
【0018】
ドーパミン前駆体はチロシン、N−アセチルチロシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択され、約1〜約30重量パーセント存在する。好ましい実施態様では、ドーパミン前駆体は約5〜約20重量パーセント存在し、最も好ましくは、約10〜約15重量パーセント存在する。
【0019】
クルクミンは約0.05〜約10重量パーセント存在する。好ましい実施態様では、クルクミンは約1.0〜約5重量パーセント存在し、最も好ましくは、約2.0重量パーセント存在する。
【0020】
皮膚科学的に許容される担体は、ヒアルロン酸ナトリウム、フォスファチジルコリン、パルミチン酸イソプロピル、セテアリルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、シアバター(shae butter)、スクアラン、シリコーンおよびジメチルエタノールアミンのいずれかを含んでよい。組成物のpHは約2.5〜約6.0の範囲である。好ましい実施態様では、組成物のpHは約3.0〜約5.5の範囲であり、最も好ましくは、約3.8〜約5.0の範囲である。
【0021】
いくつかの実施態様では、組成物はさらにフェニルイソチオシアネートを約0.5〜約10.0重量パーセント含んでよい。好ましい実施態様では、フェニルイソチオシアネートは約1.0〜約8.0重量パーセント存在し、最も好ましくは、約2.0〜約5.0重量パーセント存在する。
【0022】
さらなる実施態様では、組成物は、α−ヒドロキシ酸、カフェイン、ビタミンD3、ケルセチン(quercertin)、スルフォラファン、ならびにアスパラギン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、およびグルコン酸銅の混合物のいずれかを含んでよい。
【0023】
さらに別の実施態様では、本発明は約10〜約15重量パーセントのドーパミン前駆体、約1〜約3重量パーセントのクルクミンおよび約4〜約6重量パーセントのフェニルイソチオシアネートを含むサンレスタンニング組成物であって、バランス(balance)が皮膚科学的に許容される担体であり、該ドーパミン前駆体がチロシン、N−アセチルチロシン、フェニルアラニン、およびその混合物からなる群から選択される組成物を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、水相、油相、水性DMAE混合物、ドーパミン前駆体、クルクミン、および防腐剤を含むサンレスタンニング組成物を製造する方法を提供する。組成物は、水相を油相に添加すること;水相を油相と混合すること;38〜40℃まで冷却すること;約38℃の温度でDMAE混合物を添加すること;生じた混合物に約35℃の温度でドーパミン前駆体およびクルクミンを添加すること;ならびにホモジナイズすることによって製造される。次いで、防腐剤が添加され、組成物に適量の水が添加され、100.00%となる。
【0025】
さらなる実施態様では、皮膚を黒くする方法が提供される。該方法は、少なくとも1つのドーパミン前駆体、および該ドーパミン前駆体と相乗的に作用してメラニン産生を上方制御するクルクミンの有効量を皮膚に投与する工程を含む。この実施態様では、ドーパミン前駆体は約10〜約15重量パーセント存在してよく、クルクミンは約1.0〜約5重量パーセント存在してよい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
チロシン(Tyr)は非必須アミノ酸であり、アミノ酸、フェニルアラニン(Phe)から合成される。それは、多くの高タンパク質食品、例えば大豆製品、ニワトリ、シチメンチョウ、魚、ピーナッツ、アーモンド、アボカド、ミルク、チーズ、ヨーグルト、カッテージチーズ、ライマメ、カボチャ種子、およびゴマ種子に見られる。PheのTyrへの変換は、酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、モノオキシゲナーゼによって触媒される。この酵素は、フェニルアラニンの6炭素芳香族環の末端にヒドロキシル基の付加をもたらす反応を触媒し、それによってそれはチロシンになる。チロシンは疎水性である一方、フェニルアラニンよりも有意に可溶性である。
【化1】
【0027】
チロシンは紫外照射を吸収し、タンパク質の吸光度スペクトルに寄与する。チロシンはいくつかの重要な神経伝達物質、例えばドーパミン(ドーパ)の構成要素でもあり、メラニン生成を助ける。2つのタイプのメラニンがある:フェオメラニン(黄色、赤色)およびユーメラニン(黒色、褐色)である。
【0028】
メラニン産生の生合成経路を、以下に示す。
【化2】
【0029】
ユーメラニンおよびフェオメラニンの両方の生合成経路の最初の2工程は、チロシナーゼによって触媒される。チロシナーゼは銅ベースの酵素であり、フェノール類(例えばチロシン)の酸化を触媒し、次いでメラニンおよび他の色素を生成する。チロシナーゼ酵素の活性部位内の2つの銅原子は二酸素と反応し、高反応性化学中間体を形成し、次いで基質を酸化する。チロシナーゼは、5,6−ジヒドロキシインドールのインドール−5,6−キノンへの酸化も媒介する。チロシナーゼはTyrのドーパへの変換において役割を果たすが、近年、チロシンからのドーパの形成は、大部分は非酵素的経路から生じることが示されている。Hearing et al., From Melanocytes to melanoma: the progression to malignancy 2006 Humana Press Inc., NJ at p. 581を参照のこと。
【0030】
ドーパキノンは2つの経路によってシステインと結合し、ベンゾチアジンおよびフェオメラニンを生成することができる:
【化3】
【0031】
あるいは、ドーパキノンはロイコドーパクロムに変換され、次いで2つのさらなる経路でユーメラニンに変換することができる:
【化4】
【0032】
本発明は、メラニン産生におけるフェニルアラニンおよびチロシンの役割を認識し、クルクミンと組み合わせてドーパミン前駆体を含んでヒト皮膚においてメラニン産生を促進する組成物を提供する。本発明の組成物は、日光の有害作用なく皮膚への色素沈着を提供するために用いられてよい。本発明の組成物は、ドーパミン前駆体をクルクミンと皮膚科学的に許容される担体中で組み合わせることによって製造されてよい。
【0033】
本発明において、用語「皮膚」は、皮膚の表皮層および皮層を指す。本明細書で用いられている用語「皮膚」は、広義で用いられており、顔、体、および首の皮膚を意味する。
【0034】
本発明の目的のために、用語「ドーパミン前駆体」は、フェニルアラニン、チロシンおよび/またはN−アセチルチロシンを指す。
【0035】
上記のように、フェニルアラニンはチロシンの前駆体である。N−アセチルチロシンはL−チロシンのアセチル化誘導体である。通常、L−チロシンは安定性が低く、水への溶解度も低く、バイオアベイラビリティの減少をもたらしうる。アセチル化は、アミノ酸の溶解度および安定性を増強し、それゆえ水性製剤に望ましく、さらに皮膚への透過を可能にし、そこでアミノ酸はタンパク質と相互作用することができる。
【0036】
ドーパミン前駆体はクルクミンと共に用いられる。クルクミンは、ジンジャーファミリー(ショウガ科)のメンバーである一般的なインドのスパイス、ターメリックの主要なクルクミノイドである。クルクミンはフリーラジカルスカベンジャーおよび抗酸化剤として作用し、脂質過酸化および酸化的DNA損傷を阻害する。クルクミノイドは、グルタチオンS−トランスフェラーゼを誘発し、チトクロムP450の強力な阻害剤である。
【0037】
クルクミンの効果は、そのバイオアベイラビリティを増加させると考えられる油中水乳剤にクルクミンを溶解させることによって、本発明において増強される。
【0038】
いずれの理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の製剤中のクルクミンは、メラニン形成細胞のメラニン産生を刺激するUV照射への曝露と通常関連するストレスの状態をシミュレートしていると考えられる。ドーパミン前駆体とクルクミンの相乗的組み合わせは、メラニン産生を上方制御し、日焼け効果を提供する。さらに、DHAと異なり、化合物は水と反応せず、それゆえ、角質層の内層および外層、ならびに生きた皮膚組織と反応することができる。
【0039】
示したように、これらの成分は、異なる比率の成分の利用および/または増粘剤、例えばガムもしくは他の形態の親水性コロイドの包含によって、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤または噴霧剤に製剤化することができる。好ましい実施態様はローション剤である。別の可能な実施態様は、霧状ミストにて皮膚上に噴霧されうる溶液である。ローション剤、クリーム剤、ゲル剤および溶液は、本明細書で皮膚的に、または皮膚科学的に許容される担体と称され、当業者に周知の慣用の技術を用いて製剤化される。本明細書で用いられている用語「サンレスタンニング組成物」は、ドーパミン前駆体、クルクミン、担体、およびいずれかのアジュバント、増粘剤、賦形剤など、本明細書に記載されているものを含み、ヒトの皮膚に適用される完成品を意味するものとする。
【0040】
本発明の局所用組成物は、組成物の他の成分と物理的および化学的に適合することを条件に、皮膚ケア組成物および化粧品に一般に見られる付加的成分、例えば、着色剤、皮膚軟化剤、皮膚調整剤、乳化剤、保湿剤、防腐剤、抗酸化剤、芳香剤、キレート剤等を含有することができる。
【0041】
防腐剤は、限定されるものではないが、C−Cアルキルパラベンソルビン酸およびフェノキシエタノールを含み、典型的には、全組成物に基づいて、約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲の量にて存在している。好ましい防腐剤はISP社のOptiphen(商標)Plus、すなわち、フェノキシエタノール、ソルビン酸および皮膚軟化剤ベースの混合物を特徴とする液体防腐剤製剤である。
【0042】
皮膚軟化剤は、典型的には全組成物の約0.01%〜5%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、炭化水素、脂肪エステル、脂肪アルコール、鉱油、ポリエーテルシロキサンコポリマー、およびその混合物を含む。好ましい皮膚軟化剤は、スクアラン、シアバター(shae butter)およびパルミチン酸イソプロピルである。
【0043】
保湿剤は、典型的には全組成物の約0.1重量%〜約5重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、多価アルコール、例えばグリセロール、ポリアルキレングリコール(例えば、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール)ならびにその誘導体、アルキレンポリオールおよびそれらの誘導体、ソルビトール、ヒドロキシソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3−ジブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトキシル化グリセロール、プロポキシル化グリセロール、ならびにその混合物を含む。好ましい保湿剤はシアバター(shae butter)である。
【0044】
乳化剤は、典型的には組成物の約0.5重量%〜約10重量%の量にて存在し、限定されるものではないが、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアレス2、ステアレス20、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、シリコーン、ジメチルエタノールアミン(DMAE)、フォスファチジルコリン(PPC)およびその混合物を含む。好ましい乳化剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、Promulgen−D(登録商標)(Amercholコーポレーションによって販売されている75%セトステアリルアルコールと25%エトキシレートセトステアリルアルコールの混合物)、Arlacel165(Crodaインコーポレーテッドによって販売されているステアリン酸グリセリルおよびステアリン酸PEG−100)、シリコーン(Dow Corning200Fluid、350CST)、DMAEおよびPhosphlipon90G(Phospholipid GmbHによって販売されている10%脂肪酸を含むフォスファチジルコリン)である。
【0045】
キレート剤は、典型的には約0.01重量%〜約2重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにその誘導体および塩、ジヒドロキシエチルグリシン、酒石酸、ならびにその混合物を含む。
【0046】
抗酸化剤は、典型的には、組成物の約0.02重量%〜約5重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);ビタミンCおよび/またはビタミンC誘導体、例えばアスコルビン酸の脂肪酸エステル、特にパルミチン酸アスコルビル;ブチル化ヒドロアニソール(BHA);フェニル−α−ナフチルアミン;ヒドロキノン;没食子酸プロピル;ノルジヒドロキアレチン酸;ビタミンEおよび/またはビタミンEの誘導体、例えばトコトリエノールおよび/またはトコトリエノール誘導体;パントテン酸カルシウム;緑茶抽出物;混合ポリフェノール;ならびにこれらのいずれかの混合物を含む。特に好ましい抗酸化剤は皮膚に付加的利点を提供するもの、例えば緑茶抽出物ケルセチンである。
【0047】
緩衝剤は多くの組成物に利用される。本発明の組成物には酸性媒体が好ましい。好ましくは、緩衝剤の量は、約2.5〜約6.0、より好ましくは約3.0〜約5.5、最も好ましくは約3.8〜約5.0の範囲のpHを有する組成物をもたらす量である。典型的な緩衝剤は、化粧品に一般に見られる化学的および物理的に安定な薬剤であり、補助成分でもある化合物、例えばクエン酸、リンゴ酸、およびグリコール酸緩衝剤を含んでよい。好ましい緩衝剤は、グリコール酸である。
【0048】
本発明のいくつかの実施態様は、ドーパミン前駆体およびクルクミンに加えて、少なくとも1つの他の補助成分を、典型的には組成物の約0.05〜約10重量%の範囲にて含有する。補助成分は、限定されるものではないが、イソチオシアネート、カフェイン、ビタミンD3、リポ酸;α−ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸もしくは乳酸;アスコルビン酸およびその誘導体、特にアスコルビン酸の脂肪酸エステル;または、トコトリエノールおよびトコトリエノール誘導体、ならびにトコトリエノールもしくはトコトリエノール誘導体で強化されたビタミンE組成物の1つ以上を含む。好ましい補助剤は、グリコール酸、カフェインおよびSepitonic(商標)M3(Seppic社、アスパラギン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅を含有する)である。
【0049】
特に好ましい補助成分は、イソチオシアネートである。イソチオシアネートは硫黄含有化合物である。多くの植物由来の天然イソチオシアネートは、カラシ油の酵素的変換によって生成される。1つの好ましい実施態様では、本発明はワサビマスタードまたはその抽出物、例えばワサビマスタードから得られたメチルチオヘキシルイソチオシアネートを用いる。本発明の他の実施態様は、フェニルイソチオシアネートを取り込んでいてよい。別の可能な実施態様は、アブラナ科の野菜、例えばブロッコリーから得られるイソチオシアネート、スルフォラファンを含んでよい。イソチオシアネートは、発癌および腫瘍形成を阻害し、それゆえ癌の発生および増殖に対する有用な化学予防剤であることが示されている。Talalayら、Sulforaphane mobilized cellular defenses that protect skin against damage by UV radiation, Proc Natl Acad Sci USA 2007 104(44): 17500-17505。
【0050】
私の米国特許第5,376,361号;5,409,693号;5,545,398号;5,554,647号;5,574,063号;5,643,586号;5,709,868号;5,879,690号;6,051,244号;6,191,121号;6,296,861号;6,437,004号;6,979,459号;7,037,512号;7,226,608号;および7,438,896号(参照することによって本明細書に援用される)に開示されている付加的成分および方法も用いられてよい。
【0051】
一般的に、本発明の方法の実施において、局所用組成物は皮膚領域、例えば体および顔の皮膚領域に、所定の間隔で局所的に適用され、それぞれの連続する適用と共にゆっくりとした色の発生が見られるのが一般的である。これまでの臨床研究に基づいて決定する限り、有害な副作用には遭遇していない。
【0052】
表皮の色素層に濃い着色が生成されることが本発明の利点であり、死細胞層のみを着色するDHAと異なり、着色は自然な剥離工程を通じて急速に失われることはない。組成物が水性であることも本発明の利点である。サンレスタンニング組成物に一般に用いられるハーシャー(Harsher)溶媒は、必要でない。それゆえ、組成物はより安全で、より安定で、しばしばDHAベースの製品と関連する望ましくない臭いを有さない。
【0053】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施態様をさらに記載および立証している。実施例は単に説明目的で提供されているのであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその多くのバリエーションが可能である。
【実施例】
【0054】
実施例Iおよび実施例IIは、慣用の混合技術を用いて以下の成分を組み合わせることによって製造される水中油型乳剤である。
【表1】
【0055】
製剤:適切な容器中、第2相成分を第1相成分中に攪拌しながら分散させる。混合物を38〜40℃まで冷却し、第3相を加える。温度が約35℃に達した時、第4相成分を加える。得られた混合物をおよそ30分間ホモジナイズする。混合物をスイープ混合し(sweep mixed)、必要であれば第5相を加える。
【0056】
得られたローション剤は約3.8〜5.0のpHを有し、良好な物理的および化学的安定性を示し、濃い着色発生特性を示し、サンレスタン(太陽光線を用いない日焼け)を提供するためにヒト皮膚に局所適用するのに有用である。
【0057】
実施例IおよびIIの製剤の有効性の予備試験において、両製剤はサンレスタンニングを誘発するのに効果的であることが分かり、実施例Iの製剤は1日1回の適用で約4週間後に皮膚を黒くする目に見える結果を提供し、実施例IIの製剤は1日1回の適用で約3週間後に皮膚を黒くする目に見える結果を提供した。それゆえ、本発明は、少なくとも1つのドーパミン前駆体、および該ドーパミン前駆体と相乗的に作用してメラニン産生を上方制御するクルクミンの有効量を皮膚に投与することによって皮膚を黒くする方法を含む。
【0058】
上記記載は当業者に本発明を実施する方法を教示する目的で提供されているのであって、該記載を読んだ当業者にとって明らかであろうその全ての明らかな修正およびバリエーションを詳述することは意図されていない。しかしながら、全てのそのような明らかな修正およびバリエーションは、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。文脈が明確に反対の記載をしていない限り、特許請求の範囲は、そこで意図されている目的を満たすために効果的ないずれかの順序で、請求項に記載の成分および工程を含むことが意図されている。