特許第5774754号(P5774754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774754
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】高強度光線測定システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/00 20060101AFI20150820BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20150820BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G01J1/00 F
   G01J1/02 L
   G01J1/02 F
   G01J1/04 A
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-141285(P2014-141285)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-42972(P2015-42972A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】13/953,423
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】アニキチェフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ゲインズ、デービッド
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−068690(JP,A)
【文献】 特開昭62−059820(JP,A)
【文献】 特開平01−246829(JP,A)
【文献】 特開昭63−100333(JP,A)
【文献】 特開2004−325336(JP,A)
【文献】 特開2010−091441(JP,A)
【文献】 特開平07−225151(JP,A)
【文献】 米国特許第4828384(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
G02B 5/00、5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線の強度特性を測定する方法であって、
二つの透明板に挟まれた薄膜プリズムであって、幅d、および、面積を有する全内部反射(TIR)表面を有する薄膜プリズムを含むプリズム組立体に光線を導くことと、
前記光線の一部を前記TIR表面によって積分球へ反射しつつ、前記光線の残りの部分を、前記2つの透明板を通して光線集積部へ導くことと、
前記積分球によって捕捉された光線の一部を検出することと、
該検出された光線から光線の強度特性を決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記積分球によって捕捉された前記光線の一部を検出することが、光出力量を測定することを含み、かつ、前記検出された光線から前記光線の強度特性を決定することが、前記測定された光出力量を前記TIR表面の面積で割ることによって強度を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光線の異なる区分の強度を測定するために、上述の動作を繰り返し、前記光線の強度プロファイルを決定することをさらに備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プリズム組立体に対して前記光線を移動させ、前記光線の前記異なる区分の前記強度を測定することをさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記光線は、線画像を形成する線形成光線を有する、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記薄膜プリズムは、0.05mmから1mmの範囲内の幅を有している、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記透明板が実質的に五角形状を有し、前記薄膜プリズムが実質的に台形状を有している、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記薄膜プリズムは入力表面及び出力表面を有し、該入力表面及び出力表面は、前記光線が前記入力表面を実質的に直角に通過し、反射された前記光線の一部が前記出力表面を実質的に直角に通過するように構成されている、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜プリズムの前記入力表面及び前記出力表面は反射抑制コーティングで被覆されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄膜プリズム及び前記透明板は光伝達表面を有し、該光伝達表面は、反射抑制コーティングで被覆されている、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
プリズム組立体に前記光線を導くことは、前記光線の焦点合わせを含み、これにより、前記TIR表面において前記光線が実質的に集光される、請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光線は、10Wから5kWの間の光出力量を有している、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
光線の強度特性を測定するシステムであって、
入力側に前記光線を受光するように配置され、二つの透明板によって挟まれた薄膜プリズムを含むプリズム組立体であって、該薄膜プリズムは、幅d及び全内部反射(TIR)表面を有し、該TIR表面は前記光線の一部を反射し、これにより前記光線の反射されない部分を規定する、プリズム組立体と、
前記プリズム組立体の第1の出力側に隣接して配置され、前記光線の反射部分を受光する積分球と、
前記プリズム組立体の第2の出力側に隣接して配置され、前記光線の非反射部分を受光するように配置された光線集積部と、
前記積分球に対して操作可能に配置され、前記積分球によって受光された光出力量を測定するように適合され、かつ、測定された光出力量を表す電気検出信号を生成する光検出部と、
前記光検出器と電気接続され、コンピュータ読み取り可能な媒体に具現化された指令を含む処理部であって、該指令は、前記光線の反射された部分の強度特性を決定させる指令である、処理部と、を備えるシステム。
【請求項14】
前記TIR表面は面積を有し、前記処理部は、前記測定された光出力量を前記TIR表面の面積で割ることによって強度を決定する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記薄膜プリズムの幅が0.05mmから1mmの範囲内である、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プリズム組立体を前記光線に対して移動可能に支持する可動ステージをさらに含む、請求項13から15の何れか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記透明板は実質的に五角形状を有し、前記薄膜プリズムは実質的に台形状を有している、請求項13から16の何れか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記薄膜プリズムは入力表面及び出力表面を有し、該入力表面及び出力表面は、前記光線が前記入力表面を実質的に直角に通過し、反射された前記光線の一部が前記出力表面を実質的に直角に通過するように構成されている、請求項13から17の何れか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記薄膜プリズム及び前記透明板は光伝達表面を有し、該光伝達表面は、反射抑制コーティングで被覆されている、請求項13から18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記光線は、実質的に前記TIR表面に焦点が合わせられる、請求項13から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記プリズム組立体に対して前記光線を走査するための手段をさらに備える、請求項13から20の何れか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記光線は10Wから5kWの間の光出力量を有している、請求項13から21の何れか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の開示は、光線の強度の測定に関し、より具体的には、高強度光線の少なくとも一つの強度特性を測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度(または、高光出力)の光線は、半導体基板の熱処理を含む多くの用途に使用されている。ほとんどの用途においては、明確に定義された強度プロファイルを有する高強度光線が必要とされる。例えば、レーザアニールへの適用においては、高強度光線は線画像を形成し、短軸に沿った一般的なガウス強度分布を有するとともに、長軸に沿った一般的に均一な強度分布を有する。半導体基板の熱処理に用いられる線画像用の典型的な寸法は、幅(短軸)が数百ミクロンであり、長さ(長軸)が数十ミリメートルである。このような線画像の出力量(パワー量)は、数キロワットに達する。
【0003】
光線は、測定装置に損傷を与えるため、例えば、強度プロファイルなどの上記のような高強度線の強度特性を正確に測定することは困難である。測定装置の一つのタイプでは、画像センサ、および、高強度光線の出力レベル(パワーレベル)を妥当な(損傷を与えない)出力レベルにまで減衰する減衰器を使用している。そして、このような測定装置においては、減衰された光線をCCDまたはCMOSカメラなどの光検出器に導く。
【0004】
残念ながら、このような方法では、測定結果が著しく不正確になるという問題がある。これは、減衰に常に収差が含まれ、かつ、低出力での測定では、光線が実際に使用されている高出力で実現される強度プロファイル分布を正確に表していないことが理由である。
【0005】
別のタイプの測定方法は、対向する羽根部によって形成された狭い開口部(例えば、スリット開口部)を通る高強度光線を走査することに基づいている。しかし、高出力密度が含まれる場合、低出力設定で測定が実施される必要がある。これにより、画像センサに基づく測定方法と本質的に同じ理由で、測定精度が低下する。一方、正確な測定結果を得るために高出力で強度プロファイルを測定しようとすると、一般的な結果として、過熱が起こり、これにより、羽根部に損傷が発生する。羽根材料の熱膨張も、スリット開口部の寸法および/または形状を変化させる可能性があり、測定に支障をきたす。低出力においても、この現象は起こりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
線形成光線の短軸強度プロファイルの測定は、短軸方向における走査に非常に小さなスリット、さらにはピンホールが必要とされることから、長軸の測定よりもさらに一層困難である。小さな開口部の熱膨張は、大きな開口部の熱膨張よりも起こりやすい。そのため、線形成光線の短軸に沿った強度プロファイルの測定は、通常、高度の(大幅な)減衰、あるいは、さらに低いレーザ閾値でカメラを使用して行われる。しかし、上述したように、測定精度は低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの局面は、高強度光線の少なくとも一つの強度特性を測定することにある。強度特性の例としては、強度プロファイル(出力/少なくとも一つの空間座標の関数としての単位面積)、強度の全体量又は総量(出力/単位面積)、および、光出力(強度×面積)が挙げられる。本明細書中では、特に注記がなければ、「出力(power)」との用語は「光出力」を意味する。
【0008】
本開示の一局面は、光線の強度特性を測定する方法である。本方法は、二つの透明板に挟まれた薄膜プリズムであって、幅d、および、面積を有する全内部反射(TIR)表面を有する薄膜プリズムを含むプリズム組立体に光線を導くことと、前記光線の一部を前記TIR表面によって積分球へ反射しつつ、前記光線の残りの部分を、前記2つの透明板を通して光線集積部(beam dump)へ送ることと、前記積分球によって捕捉された光線の一部を検出することと、該検出された光線から光線の強度特性を決定することと、を含む。
【0009】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記積分球によって捕捉された前記光線の一部を検出することは、光出力量を測定すること、および、前記検出された光線から前記光線の強度特性を決定することは、前記測定された光出力量を前記TIR表面の面積で割ることによって強度を決定することを含む。
【0010】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、そこでの動作を繰り返して、前記光線の異なる区分の強度を測定し、前記光線の強度プロファイルを決定することをさらに含む。
【0011】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記光線を前記プリズム組立体に対して移動させ、前記光線の前記異なる区分の前記強度を測定することをさらに含む。
【0012】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記光線は、線画像を形成する線形成光線を含んでいる。
【0013】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記薄膜プリズムは、0.05mmから1mmの範囲内の幅を有している。
【0014】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記透明板が実質的に五角形状を有し、前記薄膜プリズムが実質的に台形状を有している。
【0015】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記薄膜プリズムは入力表面及び出力表面を有し、該入力表面及び出力表面は、前記光線が前記入力表面を実質的に直角に通過し、反射された前記光線の一部が前記出力表面を実質的に直角に通過するように構成されている。
【0016】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記薄膜プリズムの前記入力表面及び前記出力表面は反射抑制(反射防止)コーティングで被覆されている。
【0017】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記薄膜プリズム及び前記透明板は光伝達表面を有し、該光伝達表面は、反射抑制コーティングで被覆されている。
【0018】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、プリズム組立体へ前記光線を導くことは、前記光線の焦点合わせを含み、これにより、前記TIR表面において前記光線が実質的に集光される。
【0019】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記光線が10Wから5kWの間の光出力量を有している。
【0020】
本開示の他の局面は、光線の強度特性を測定するシステムである。本システムは、入力側に前記光線を受光するように配置され、二つの透明板によって挟まれた薄膜プリズムを含むプリズム組立体であって、該薄膜プリズムは、幅d及び全内部反射(TIR)表面を有し、該TIR表面は前記光線の一部を反射し、これにより前記光線の非反射部分を規定するプリズム組立体と、前記プリズム組立体の第1の出力側に隣接して配置され、前記光線の反射部分を受光する積分球と、前記プリズム組立体の第2の出力側に隣接して配置され、前記光線の非反射部分を受光するように配置された光線集積部と、前記積分球に対して操作可能に配置され、前記積分球が受光した光出力量を測定するように適合され、かつ、測定された光出力量を表す電気検出信号を生成する光検出部と、前記光検出器と電気的に接続され、コンピュータ読み取り可能な媒体に具現化された指令を含む処理部であって、該指令は、前記光線の反射部分の強度特性を該処理部に決定させる指令である処理部とを含む。
【0021】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記TIR表面は面積を有し、前記処理部は、前記測定された光出力量を前記TIR表面の面積で割ることによって強度を決定する。
【0022】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記薄膜プリズムの幅が0.05mmから1mm(すなわち、0.05mm≦d≦1mm)の範囲内である。
【0023】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記プリズム組立体を前記光線に対して移動可能に支持する可動ステージをさらに含む。
【0024】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記透明板は実質的に五角形状を有し、前記薄膜プリズムは実質的に台形状を有している。
【0025】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記薄膜プリズムは入力表面及び出力表面を有し、該入力表面及び出力表面は、前記光線が前記入力表面を実質的に直角に通過し、反射された前記光線の一部が前記出力表面を実質的に直角に通過するように構成されている。
【0026】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記薄膜プリズム及び前記透明板は光伝達表面を有し、該光伝達表面は、反射抑制(反射防止)コーティングで被覆されている。
【0027】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記光線は前記TIR表面に実質的に集光される。
【0028】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記プリズム組立体に対して前記光線を走査するための手段をさらに含む。
【0029】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記光線は100Wから5kWの間の光出力量を有している。
【0030】
さらなる特徴及び利点は、詳細な説明に明記されている。また、それらの一部は詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面を含む、ここに記載された発明を実施することによって認識される。上記の背景技術等に関する記載及び下記の詳細な説明に関する記載は、単なる例示であって、特許請求の範囲に記載されている本発明の本質及び特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部を構成すると共に本明細書の一部に組み込まれる。図面は、1または複数の実施形態を示しており、詳細な説明と共に種々の実施形態の原理や動作を説明する役割を担う。このように、本開示は、添付図面と共に以下に示す詳細な説明からより完全に理解されることになるであろう。
図1A図1Aは、本開示にかかる光線強度測定システムの一例の実施形態の概略図である。
図1B図1Bは、本開示にかかる光線強度測定システムの他の例示的な実施形態の概略図である。
図2図2は、一例の線形成光線、および、それが一画像面に形成する集光された線画像の拡大図である。
図3A図3Aは、一例のプリズム組立体の分解図である。
図3B図3Bは、一例のプリズム組立体の組立図である。
図4A図4Aは、一例の線形成光線の光線追跡、および、前記プリズム組立体によって伝達され、反射された線形成光線の一部を含むプリズム組立体の図である。
図4B図4Bは、TIRプリズム組立体の前側に焦点を外された線画像を示すプリズム組立体の前面図である。
図4C図4C図4Bと同様の図であって、TIRプリズム組立体の前側において回転され焦点が外された線画像を示す図である。
図5A図5Aは、TIRプリズム組立体のプレート(板)の断面図であって、光線の一部が前記プレートを通過する様子を示す断面図である。
図5B図5Bは、TIRプリズム組立体のTIRプリズムの断面図であって、光線の他の部分がTIRプリズムのTIR表面によって反射される様子を示す断面図である。
図6A図6Aは、線形成光線によって形成された線画像の強度プロファイルの一例を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aと同様の図であって、線画像強度プロファイルの一部において重ね合わせられたTIRプリズム組立体によって規定された溝(スロット)を示す図である。
図7図7は、種々の溝の幅dに関して、図6Aの線画像の正確なプロファイルとともに、スロットチルト角度α=90°で、x(mm)に対する強度(相対強度)をプロットした図である。
図8図8は、図6Bと同様の図であって、異なるスロットサイズとスロットチルト角度αを示す図である。
図9A図9Aは、固定されたスロット角度α=5°及び異なるスロット幅dで、Y(mm)に対する相対強度をプロットした図である。
図9B図9Bは、固定されたスロット幅d=0.25mm及び異なるスロット角度αで、Y(mm)に対する相対強度をプロットした図である。
図10A図10Aは、図8と同様の図であって、x方向において別の走査方向の一例を示す図である。
図10B図10Bは、x・tan(α)に対する相対強度のプロット図であって、水平走査結果、垂直走査結果、および、正確な強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔詳細な説明〕
以降、本開示の様々な実施形態、および、添付の図面に示される複数の例について詳述する。可能な限り、同一または類似の部分の図では、同一または類似の参照番号および参照符号が用いられる。図面には決まった縮尺がなく、当業者であれば、図面は本発明の主要な部分を説明するために簡略化されていることに気づくであろう。
【0033】
下記の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に組み込まれると共にその一部を構成する。
【0034】
本願で言及されるいずれの刊行物または特許文献の全開示は、参照により組み込まれる。
【0035】
いくつかの図面において、参考のために直交座標系が描かれているが、これは特定の方向および配置方向を限定するものではない。
【0036】
図1A及び図1Bは、光線強度測定システム(「システム」)10の2つの例示的な実施形態を示す概略図である。システム10は、比較的強度の高い、あるいは、比較的光出力の高い光線(「光線」)22を受光し、処理するように構成されている。ここで、光線とは、例えば、少なくとも10Wの、さらには例えば5kWまでの光出力を有する光線である。
【0037】
図1Aは、光線22が形成され得る方法の一例を示す。光源12は、光学軸A1に沿って波長λの初期光線14を放射する。光源12は、例えば、高出力初期レーザビーム14を放射するダイオードレーザなどのレーザを含んでもよい。高出力初期レーザビーム14における名目上の波長λは、0.8から1ミクロンの間である。光線形成光学システム20は、初期光線14を受光し、レーザアニールあるいは別のタイプの材料処理など任意の用途に使用される光線22を形成する。
【0038】
一実施形態では、光線22は最短距離の長さに沿った位置(すなわち、進行方向)を有する。つまり、光線22は、図2の拡大図に示す画像面IPにおいて線画像24を形成する。図2に示す例では、光線22は、X方向において長さL、Y方向において幅Wの線画像24を形成する、収束されたあるいは焦点合わせされた光線である。
【0039】
以下の説明では、線形状の画像(すなわち、「線画像24」)は、本明細書で開示されたシステム及び装置の説明を容易にするための限定されない例として用いられる。初期光線14が線画像24を形成するとき、本明細書では「線形成画像」として言及される。低強度光線及び画像、あるいは、他の形状の光線及び画像を含む光線及び画像の他のタイプは、類似した方法でも測定され得る。本明細書で開示されるシステム及び方法は、上述した弊害が通常避けられるという理由で、高強度光線の強度を測定するのに好都合である。
【0040】
図1Aを再度参照すると、システム10は光軸A1に沿って折り返しミラーFMを選択的に含んでもよい。折り返しミラーFMは、第1の折り返された光軸A1’を規定してシステム10を折り返し、システム10をよりコンパクトにするために役立つ。一例では、折り返しミラーFMは、第1の折り返された光軸A1’が延びる方向の調節もできるように、調整可能である。これにより、光線22の進行方向に対するシステム10の配置可能性に、ある程度の順応性を持たせることができる。一例では、折り返しミラーFMは、任意の波長λあるいは光線22に関連した公知の波長帯Δλについての公知の反射率の量を与えるように構成されている。便宜上、折り返しミラーFMは、光線22の最小の減衰のみを発生させると仮定される。
【0041】
システム10は、第1の折り返された光軸A1’に沿ってTIRプリズム組立体50を含んでいる。TIRプリズム組立体50については、その分解図が図3Aに示され、その組立図が図3Bに示される。TIRプリズム組立体50の一例は、5つの側面52−56を有している(すなわち、実質的に五角形状である)。TIRプリズム組立体50は、一例において4つの側面52Bから55Bを含む薄膜平面TIRプリズム51Bを含んでいる(すなわち、実質的に台形状である)。TIRプリズム51Bは厚さdを有し、一例においてその厚さdは0.05mmから1mmの範囲内であり、他の例において0.25mmから1mmである。TIRプリズム51Bは、2つのプレート51A及び51Cの間に挟まれており、一例において2つのプレート51A及び51Cは、光線22を実質的に透過する。
【0042】
一例では、TIRプリズム51B、並びに、プレート51A及び51Cは、シリカで形成されている。研磨及びコーティングの便宜上、プレート51A及び51Cは、TIRプリズム51Bと同様の形状を取り得、TIRプリズム組立体50を形成するためにTIRプリズム51Bと光学的に接触または接着され得る。これにより、光線22をある程度吸収することによってTIRプリズム組立体50に損傷をもたらすかもしれない接着剤の必要性を排除することができる。
【0043】
一例においては、透明板51A及び51Cは、5つの側面52A−56A及び52C−56Cをそれぞれ有している。一例においては、TIRプリズム組立体50は、TIRプリズム51Bの側面55Bの表面が、面積Aを有するTIRプリズム表面を規定するように構成されている。その詳細については、以下に説明する。表面はまた、第2の折り返された光軸A1”も規定する。
【0044】
一例においても、TIRプリズム組立体50は、側面52A、52B、及び52Cが端面52において共通の平面に存在するように構成されている。TIRプリズム組立体50は、端面52が入力端面(入力側)を規定し、また、端面54及び55が第1及び第2の出力端面(出力側)を規定するように構成されている。一例では、第1の出力端面(出力側)54及び第2の出力端面(出力側)55は、折り返された光軸A1”及びA1’に対してそれぞれ直角となっている。
【0045】
再度図1Aを参照すると、システム10は、光線集積部80を含んでいる。光線集積部80は、第2の出力端面(出力側)55に隣接する第1の折り返された光軸A1’に沿って配置されている。システム10はまた、光検出システム70も含んでいる。光検出システム70は、第2の折り返された光軸A1”に沿って配置されている。一例において、光検出システム70は、入力開口部72及び内部73を有する積分球71を含んでいる。光検出部74は、積分球71の内部73内の拡散光22Dを測定するために操作可能に配置され、それに応じて、検出された拡散光22Dを表す電気検出信号SDを生成する。
【0046】
図1Bは、TIRプリズム組立体50を備えるシステム10の上面図であって、図1Aと位置合わせされた図である。さらに図1Bでは、符号71A及び71Bで示される2つの積分球71を用いた一実施形態を示している。積分球71Aは、水平走査の結果を測定するために使用される一方、積分球71Bは、垂直走査中に全て内部反射される光を測定する。垂直走査では、折り返しミラーFM、TIRプリズム組立体50、及び、光線集積部80が90°回転する。これにより、積分球71Bへの有効な全ての内部反射光の方向が自動的に変更される。一方、積分球71Aはこの測定の間は使用されない。
【0047】
また、システム10は、コンピュータの形態で示される処理部100を含み、電気検出信号SD、SD、及び、SDを受信し、処理する。一例において、処理部100は、コンピュータ読み取り可能な媒体に具現化された指令を含む。該指令は、以下で説明するような、ある演算を処理部100に実施させる。
【0048】
操作方法
システム10の操作では、光線22は、折り返しミラーFMによってTIRプリズム組立体50の入力端面(入力側)52に入射するように方向づけられるか、あるいは、直接TIRプリズム組立体50に入射する。光線22が収束している例では、光線22は、TIRプリズム51Bの側面55Bの表面に線画像24を形成するように焦点絞りされる。したがって、図3B及び図4Aに最もよく示されるように、焦点がぼかされた線画像24’は、TIRプリズム組立体50の入力端面(入力側)52及び第2の出力端面(出力側)55に形成される。この状況は、TIRプリズム組立体50の入力端面(入力側)52及び出力端面(出力側)55におけるエネルギー密度を減少させる利点を有している。このことは、これらの端面52及び55に損傷を与える可能性を減少させる。
【0049】
TIRプリズム51Bの側面55Bの表面は、光線22の比較的小さく反射された光線部22BをTIR表面によって反射させるように、角度付けられている。そして、光線部22Bは、第2の折り返された光軸A1”に沿って進み、TIRプリズム組立体50の第1の出力端面(出力側)54において、側面54Bを通過する。反射された光線部22Bの光量は、TIRプリズム51Bの幅dによって規定される。TIRプリズム51Bは、光線部22Bを(側面52Bに)通過させ、その後、(TIRプリズム51Bの側面55Bの表面に)反射させるスロットの幅dを規定するものであると考えることができる。
【0050】
光線22の強度プロファイルを測定するために、所望とする量の光線22がサンプリングされるまで、光線22はTIRプリズム組立体50に対して平行移動(translate)され、光線22の複合的な測定が実施される。この測定は、光線22を移動することによって(図4Bの矢印AW1)、TIRプリズム組立体50を移動することによって(矢印AW2)、あるいは、これらを組み合わせることによって、達成され得る。さらに、光線形成光学システム20は、光線22を移動させるように構成されていてもよい。またあるいは、光源12は、初期光線14を移動させ、これにより光線22を移動させるように構成されていてもよい。
【0051】
一例では、1つ以上の光源12、光線形成光学システム20、及び、TIRプリズム組立体50に対して可動ステージ120を操作可能に配置することができ、TIRプリズム組立体50に対して光線22を移動させる。他の例では、TIRプリズム51Bに対して光線22を回転させるために1つ以上の可動ステージ120が用いられる。これにより、図4Cに示されるように、光線22の異なるアジマス(発射方位)(アジマス角度αで示す)がサンプリングされ得る。
【0052】
図5Aは、光線22の各部分22A及び22Cが透明板51A及び51Cを直接通過する様子を示す。一方、図5Bは、TIRプリズム51Bの側面55Bの表面によって反射された光線部22Bが、側面54Bから入力開口部72を介して積分球71へ導かれる様子を示す。例示的な実施形態では、光伝達を最適化するために、透明板51A及び51Cの1つ以上の側面52A、52C及び55A、55C、並びに、TIRプリズム51Bの側面52B及び54Bに、反射防止(反射抑制)コーティングARが採用される。
【0053】
強度の演算
図6Aは、等強度線による2次元強度分布(強度プロファイル)I=I(x、y)としての線画像の一例を示す。長さL及び幅W=Lは、最小値から3番目の強度線に概ね基づいた長方形の近似値(黒、破線RA)に対応して示される。
【0054】
図6Bは、図6Aと同様の図であるが、TIR表面によって効果的に特徴付けられるため、符号55Bで表されるスリット開口部も示している。スリット開口部55Bは、X−Y座標系で、中心が位置(χ、η)で規定され、X軸に対する傾きがαで規定される。スリット開口部55Bを通過する(あるいは、より正確にはTIRプリズム51Bの側面55Bの表面によって反射される)線画像24の光は、積分球71に入射する。ここで、線画像の光24は、拡散光22Dを形成する。拡散光22Dの一部は、光検出部74で測定される。
【0055】
測定された出力Pは、以下の式で与えられる。
【数1】
【0056】
出力密度ρは、これにより、P/Aで規定されるか、あるいは、以下の式で規定される。
【数2】
【0057】
ここで、Aは、TIRプリズム51Bの側面55Bの表面の上述の面積であり、Sは、TIR表面の形状関数(例えば、長方形状)である。出力密度ρ(x、y、α)は、形状関数Sが小さなピンホールである場合、C・I(x、y)に近づく。
【0058】
線画像24のX軸(すなわち、長軸)に沿った従来の強度プロファイルの測定では、TIRプリズム51Bの入力端面(入力側)52Bは、X軸に垂直配向され、Y軸に中心が置かれ、Y軸(α=π/2,y=0∀x)に平行に走査され、線画像24の全ての幅(短寸法)を覆う。測定結果は、長軸:ρ(x,0,π/2)における分布の近似値を表す。
【0059】
最も単純だが最も一般的な場合においては、ほとんど全ての有用な適用を表す際に、強度分布は分離可能、すなわち、
【数3】
である。これにより、
【数4】
となる。
【0060】
図7は、1mm、0.7mm、0.4mmのスリット幅、および、理想的な(正確な)プロファイルについて、長軸強度分布I(x)をx(mm)に対してプロットしたものである。
【0061】
図8は、図6Bと同様の図であり、スリット開口部55BをY方向に走査した例を示す。このような走査は、等式(1)によって与えられる関数ρ(0、y、α)によって表される信号を示す。
【0062】
もし、再び
【数5】
となれば、以下の式(2)のような結果が得られる。
【数6】
【0063】
これは、垂直軸における強度分布を測定するための方策を提供する。最大許容サイズd及びαは、測定の特定の正確性によって決定される。
【0064】
図9Aは、角度α=5°及び値dが0.7mm、0.5mm、及び、0.25mmにおいて、相対強度I(y)を、理想的なプロファイル(d→0mm)とともに、y(mm)に対してプロットしたものである。図9Bは、図9Aと同様の図であって、値dが0.25mm、及び、角度α=7°、5°、2°において、相対強度I(y)を、理想的なプロファイルとともに、Y(mm)に対してプロットしたものである。
【0065】
図9A及び図9Bから、光線幅が約1mmである場合には、スリット測定において生じるシステム誤差は比較的小さいことが明らかである。このことは、最終強度測定を考慮することを可能にする。
【0066】
システム10は、垂直(y)走査の結果が水平(x)走査から算出され得ることを認識することによって単純化され得る。このことは、測定セットアップがたった一つの移動ステージを必要とすることを意味する。これらの走査(スキャン)は、完全に同等のものであり、座標xを、x・tan(α)で置き換えることのみが必要となる。図10Aは、X方向における代替的な走査方向の例を示す。一方、図10Bは、x・tan(α)に対して相対強度をプロットした例を示す。
【0067】
当業者には明白であるが、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の精神および範囲を逸脱することなく、ここに記述される本開示の好ましい実施形態に対して様々な修正を加えることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその均等範囲内において本開示の修正および変更を包含する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図7
図10B
図6A
図6B
図8
図9A
図9B
図10A