特許第5774758号(P5774758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 木村 健の特許一覧 ▶ 木村 紀子の特許一覧 ▶ 佐藤 淳子の特許一覧 ▶ 木村 茂の特許一覧

特許5774758排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置
<>
  • 特許5774758-排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置 図000002
  • 特許5774758-排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置 図000003
  • 特許5774758-排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置 図000004
  • 特許5774758-排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5774758
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20150820BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20150820BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20150820BHJP
   B01J 19/30 20060101ALI20150820BHJP
   C01B 31/20 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   B01D53/50 200
   B01D53/50 245
   B01D53/62
   B01D53/18 120
   B01J19/30
   C01B31/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-223223(P2014-223223)
(22)【出願日】2014年10月31日
【審査請求日】2014年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592205610
【氏名又は名称】木村 健
(73)【特許権者】
【識別番号】599038547
【氏名又は名称】木村 紀子
(73)【特許権者】
【識別番号】514280248
【氏名又は名称】佐藤 淳子
(73)【特許権者】
【識別番号】599038558
【氏名又は名称】木村 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100070183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100131303
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 徳人
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−030020(JP,U)
【文献】 実開昭63−058697(JP,U)
【文献】 特開昭49−054274(JP,A)
【文献】 実開昭50−096645(JP,U)
【文献】 実公昭48−025395(JP,Y1)
【文献】 特開2008−012401(JP,A)
【文献】 特開2003−305328(JP,A)
【文献】 実開昭49−072049(JP,U)
【文献】 実公昭41−002826(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−098520(JP,U)
【文献】 実公昭49−027481(JP,Y1)
【文献】 特開平05−031355(JP,A)
【文献】 実開昭48−032643(JP,U)
【文献】 実開昭63−058694(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00− 1/08
B01D 1/00− 8/00
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/96
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
C01B 31/00−31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径と長さの略等しい薄肉円筒体の筒壁に、該薄肉円筒体直径の3分の1〜3分の2の穴径の円形の窓を、薄肉円筒体の周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物を、該円筒体直径の異なる大小2種類の充填物を用意し、小さい方の充填物(以下「小充填物」という)を大きい方の充填物(以下「大充填物」という)の内径側に装入するとともに、吊り下げ保持具により小充填物を大充填物の円筒体に吊り下げ状態で緩く保持させることにより小充填物が大充填物の円筒体内面に沿って動き回り自在に構成してなる排ガス処理用充填物。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理用充填物を、ガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる石灰石ー石膏法排煙脱硫装置。
【請求項3】
請求項1に記載の排ガス処理用充填物を充填し、ガスの流れ方向を水平とした炭酸ガス吸収装置。
【請求項4】
請求項1に記載の排ガス処理用充填物を、ガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる石灰石ー石膏法排煙脱硫装置を形成するとともに、これに続いて請求項1に記載の排ガス処理用充填物を充填してなる炭酸ガス吸収装置を連設してなることを特徴とした排煙脱硫および炭酸ガス吸収装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や発電所、ゴミ焼却場等から排出される亜硫酸ガスを除去するための排煙脱硫あるいは炭酸ガス回収装置において使用される気・液接触を効率的に促進させるための充填物、および該充填物を充填してなる排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年工場や発電所などから排出される亜硫酸ガス等を含有する排ガスあるいは燃焼排ガスから大気汚染源となる物質を除去する手段としては、例えばガス導入部と、導入した排ガスに吸収液を接触させて脱硫する仕上げ脱硫部を備えた脱硫装置本体の上記した仕上げ脱硫部の後流側で排ガス中の煤塵を除去する湿式の電気集塵部および排ガス冷却部を備えた仕上げ排煙脱硫装置及びこれを用いた排ガス処理システムが知られている(特開2011−177674号公報)。
【0003】
また排ガスに吸収液を噴霧する複数のスプレノズルを有したスプレヘッダと、その下流側にミストエリミネータを備えて排ガス中の硫黄酸化物を吸収、除去する吸収塔を備えた排煙脱硫装置において、上記スプレヘッダとミストエリミネータとの間に、スプレヘッダのスプレノズルよりも小さい微粒液滴にして排ガス流れに対して向流噴霧する複数の二流体スプレノズルを有する除塵用のスプレヘッダを設けるようにした湿式排煙脱硫装置も知られている(特開2013−6125号公報)。
【0004】
さらに吸収塔内に冷媒使用のガスクーラと、該ガスクーラに供給する冷媒の流量を調節する冷媒流量調整弁と、ガスクーラを通過する被処理ガスの温度を測定する温度計と、温度計の測定値の測定値に基づいて冷媒流量を調整する制御部と、前記ガスクーラにより被処理ガスを冷却し、被処理ガス中の水分を凝縮してその凝縮水を回収する手段とを備えた湿式排煙脱硫装置も知られている(特開2013−39527号公報)。
【0005】
さらに、排ガスに吸収液を噴霧するスプレノズルを有するスプレヘッダと、スプレノズルから噴霧した吸収液を貯留する底部のタンクと、タンク内の吸収液を上記スプレノズルに循環させる配管とを設けた吸収塔、および該吸収塔本体に排ガスを導入する入口ダクトと、上端に出口ダクトを備えた脱硫装置において、前記入口ダクトの吸収塔本体近傍上部に吸収塔本体内に向けて吸収液を噴霧するとともに、その噴霧形状が落下するスプレノズルからの噴霧吸収液に対向する方向に平面部を有する平面状となる複数の平面ノズルを設けた排煙脱硫装置も知られている(特開2013−158765号公報)。そして、回転円筒体内において、排ガスと吸収剤との接触を、より効率的にするために籠型回転円筒体内に気液接触用充填物を充填するようにした本発明者らによる有害ガスの脱硫装置も知られている(特許第4418987号公報および特開2013−237017号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−177674号公報
【特許文献2】特開2013−6125号公報
【特許文献3】特開2013−39527号公報
【特許文献4】特開2013−158765号公報
【特許文献5】特許第4418987号公報
【特許文献6】特開2013−237017号公報
【特許文献7】特許第4505041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1〜4に開示された装置は、排ガス処理装置本体がいずれも垂直方向に排ガスを流す構造のものである。上記の特許文献のものに限らず従来の多くの排ガス処理装置が垂直方向に排ガスを流す方式のものが多い。その理由は排ガスを垂直方向に流す方式のほうが実験がしやすいという点にあった。しかし物理的に考えると排ガスを垂直に流す方式の場合、直径Dの円筒を用いて排ガスを垂直方向に流す場合には循環させる必要処理液量は上記のDに比例する。これに対して排ガスを水平方向に流す場合には循環させる必要処理液量はDに比例することになる。
【0008】
つまり、
直径30mの排ガス処理方式の場合の吸収液散布部分の面積は、

排ガス吸収塔(ガス流れ垂直) π/4 × 30 × 30 = 706.5m
排ガス吸収装置(ガス流れ水平) 30 × 3 = 90m (排煙脱硫の場合には長さ3m程度で済むことについては既に本発明者による特許文献6および7に記載の実施例および実験例により知られている)
よって、706.5/90 ≒ 7.85

となる。

排ガス吸収塔の場合の吸収液散布はスプレー方式であるので、 100m /m.h
回転充填層の場合、充填層であるので 50m /m.h とすれば全処理液量は、
排ガス吸収塔で 100×706.5 = 70,650m / h
排ガス流れが水平の場合 50×90 = 4,500m / h
であるため、 70,650/4,500 ≒ 15.7 となる。
【0009】
したがって、とくに近時の排煙脱硫や炭酸ガスの回収における大規模化に伴って排ガス処理装置の直径Dも必然的に大きくなるわけであるから当然に排ガスの流れ方向については水平方向が有利であることがわかる。このような知見に基づいて本発明者はすでに既述した特許文献5および特許文献6の発明を開発するに至ったものである。この特許文献5および6に開示した石灰石―石膏法による排煙脱硫方式の場合、長さは3m程度で済む。つぎに処理装置内での排ガスの流れを垂直方向にした場合と、水平方向にした場合における排ガス通風の圧力損失について考えてみると、排ガスの流れを垂直方向にした場合、例えば吸収液を上方から下方に向けるとともに排ガスの流れを下方から上方に向けて排気するようにした場合には吸収液の流れが排ガスの排気流れの抵抗となるために通風の圧損失が大きい。
【0010】
これに対して排ガスの流れを水平方向とした場合においては吸収液の流れが排ガスの通風流れを阻害することが少ない。
すなわちこの場合の圧力損失の関係は、
排ガス流れが垂直方向の場合 > 排ガスの流れが水平方向の場合
ということになり、排ガス通風の風車動力については、排ガスの流れが水平方向の場合のほうが小さく有利であることがわかる。また吸収液のマクロの流れを直列多段に配列し、吸収液の吸収効率を向上させることも可能となる。
以上のことから、直径が3.8m以下の小規模な排ガス処理装置では排ガス吸収塔の垂直方向のほうが有利であるが、直径が3.8mを超える処理装置である場合においては水平方向にしたほうが有利であることがわかった。
【0011】
一方、石灰石―石膏法排煙脱硫の化学反応プロセスについては次のように考えられる
SO2 + H2O ⇔ H2SO3 (1)
CaCO3 ⇔ Ca2+ + CO32− (2)
Ca2+ + H2SO3 ⇔ CaSO3 + 2H+ (3)
CaSO3 十 1/2 O2 + 2H2O → CaSO4 ・2H2O (4)
上記の反応の速さを考えるために理科年表 溶液化学の部物の153頁(515頁)を見ると、そこには、〔気体の水に対する溶解度〕と〔難溶塩の溶解度積〕の表が表示されており、水に対する亜硫酸ガスの溶解度は塩化水素に次いで大きいことがわかる。
【0012】
そこで炭酸カルシウムについてみると、難溶塩として分類され、その溶解度積は、
3.6 × 10-9 とされている。前記した化学反応プロセス(3)の反応は塩基と酸の反応であるので反応速度は速い。
したがって(1)〜(3)の反応は亜硫酸で石灰石粒子を溶解させる反応であると考えることができる。
そしてこの場合、既述した化学反応プロセスの説明からも理解できるように、回転充填層は石灰石粒子溶出の攪拌槽であるともいえる。この場合装置が大型化するほど攪拌槽の直径も拡大し、吸収液の落下高さが拡大し、また落下速度を増して攪拌効果がより一層大きくなる。すなわち吸収液の1回の落下に伴う化学反応量は回転充填層の直径が大きいほど増大することがわかる。
【0013】
つぎに炭酸ガスの回収について考えると、これには有機アミン類や炭酸カリウムを吸収剤として使用することと、該吸収剤を再生させる工程も含まれる。従って再生処理工程に送られる吸収剤は炭酸ガスを十分に吸収して役割を果たし終えたものであることが望ましい。なぜならば十分に反応機能を発揮しなかった吸収剤を再生工程に供給することは再生のための熱エネルギーを無駄に浪費することになるからである。なおSO2に比べるとCO2の水に対する溶解度が低いため既述したように排ガスの流れを水平方向とするとともに、吸収液の流れについては吸収剤の反応効率を高めるために直列多段の吸収方式としたほうが有利である。
【0014】
一方排ガス処理装置内における気液接触を促進させるための排ガス処理用充填物について、最も重要なことは既述した特許文献5に記載されているものをはじめとした各種の複雑な構造の充填物に比べて低コストで実用性の高いものであることが前提となる。そして更に気液接触面積をできる限り大きくするとともに、通風の圧損失をできるだけ小さくする必要がある。これまでの各種の複雑な構造の充填物は専ら気液接触面積を増大する考え方に基づくものばかりであり、その機械的強度やスケーリング(石膏の付着)防止の対策および製造コストの低減を考慮したものは殆どない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明者は、気液接触面を大きく確保することは勿論のこととし、さらに充填物に加わる耐衝撃性と、耐摩耗性、高く積み重ねることによる耐荷重性とを備えた耐久性を向上させることに加え、さらにスケーリングが付着しにくく、また付着しても除去しやすい構造を有し、また排煙脱硫装置や炭酸ガス吸収装置として、また発電装置内の一部として長期にわたり安定した使用に耐えうる構造であり、しかも在来品に比して低コストでの入手が可能な気液接触充填物を開発した。またかかる気液接触充填物を充填した排ガス処理装置を開発した。
【0016】
したがって本発明の充填物においては、回転充填層の長さが比較的短いため、該回転充填層の長さが3mのものが4m〜5m程度となってもさほど支障がない。むしろ充填物の表面積の多少の減少は犠牲にしつつも、第1に排ガスの通風圧損失を可能な限り小さくすること、第2に、機械的強度に優れ、耐久性を損なわないこと、第3に円筒内面のスケーリングしやすい部分の面積を減少させること、第4に、充填物1個あたりの材料重量を大幅に減少させること、に重点をおいて開発をした。
この場合に、本発明者は、1mφの実験装置において、75mmφ×75mmφのポールリングを、また3.2mφと4.5mφの実機においては特注により線径を太くしたネットリングの使用を試みたが、例えば直径が25m〜30m程度の300万Nm3/h級の大容量排煙脱硫装置に対応できるかは疑問が残った。
【0017】
また現在知られている気液接触充填物のうち、最も機械的強度が高く、しかも単純構造なものはラシヒリングである。充填塔内に装入される充填物であるラシヒリングは耐蝕性を良好にした陶磁器類や高分子物質なども用いられている例もある。充填塔の内部では液が充填物の表面に沿って流下し、ガスは充填物間の隙間を上昇して気・液の接触がおこなわれる。そこで、この機械的強度が高いラシヒリングをベースとして上記した大容量排煙脱硫装置において、より確実に排煙脱硫装置や炭酸ガスの吸収を可能とすべく本発明の排ガス処理用充填物および該充填物を充填した排ガス処理装置を開発した。
【0018】
つまり、上記したラシヒリングは回転充填層内に装入して使用する場合、充填物はランダムな充填により転動可能となるが、個々の充填物(ラシヒリング)はガスの流れ方向に対して時々刻々と方向を変える。この場合に充填物の円筒軸方向がガスの流れ方向と一致する場合にはガスが流れやすく、また充填物の円筒軸方向がガスの流れ方向と交差する向きになった場合にはガスが流れにくくなる。その結果回転充填層全体としてのガスの流れの圧損失が大きくなる欠点がある。そこで本発明においてはこの点を改良し、回転充填層内におけるガス圧損失を著しく減少させるとともに円筒内周面における面積をやや小さくしてスケーリング付着を減少させ、しかも低コストの気・液接触用充填物を開発した。
【0019】
第1の発明は、薄肉円筒体の筒壁に該円筒体直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓を、円周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物に関する。また薄肉円筒体の筒壁に直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓を、円周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物をガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる排ガス処理装置にも関する。
また第2の発明は、上記した第1の発明の充填物の機能をさらに高めるために、上記した第1の発明の充填物と同一構造からなる円筒体直径の異なる大小2種類の充填物を用意し、小さい方の充填物(以下「小充填物」という)を大きい方の充填物(以下「大充填物」という)の内径側に装入するとともに、吊り下げ保持具により小充填物を大充填物の円筒体に吊り下げ状態で担持させてなる排ガス処理用充填物に関する。また該大小2種類の充填物を組み合わせてなる排ガス処理用充填物をガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる排ガス処理装置にも関する。
【発明の効果】
【0020】
第1発明の排ガス処理用充填物によれば、薄肉円筒体の筒壁に円筒体直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓を、周方向に複数設けてなるために、ガス水平方向流れ方式の回転処理装置内において、ガス流が充填物の両端開口部の軸線方向と交差したとしても、筒壁に形成された複数の窓からもガス流通過が可能であるために、排ガス流れの圧損失がきわめて減少して排ガス処理効率が著しく向上する。また薄肉円筒体の筒壁面が窓を形成したことにより円筒内面積が減少し、そのためにスケーリングの付着が減少し、メンテナンス性が向上し、また構造が簡単であることからコストの著しい削減をはかることができる。
さらに上記の構成よりなる排ガス処理用の充填物をガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなるためにガス圧損失を著しく減少し、排煙処理効率を向上させることができる。
【0021】
第2発明の排ガス処理用充填物によれば、使用時において大充填物の円筒体内に吊り下げられた状態の小充填物が大充填物の円筒体内面に沿って動き回る結果、大充填物の円筒内面のクリーニングが促進され、また第1発明の結果小さくなった気液接触面積を増大させることができる。同時に吊り下げ保持具も小充填物の円筒体内面に沿って摺動するため小充填物の内周面を自動的にクリーニングすることができ、大小の充填物の耐久性を大幅に増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1発明の実施例である排ガス処理用充填物の斜視図。
図2】第2発明の実施例である排ガス処理用充填物の断面図。
図3】回転充填層内に本発明の排ガス処理用充填物を装入した状態のガス水平方向流れ方式排ガス処理装置の概略をあらわした要部縦断面図。
図4図3におけるA-A線矢視方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(排ガス処理用充填物の構成)
以下において、第1発明に係る排ガス処理用充填物11の実施形態について説明する。
本発明に係る排ガス処理用充填物11は、図1に例示したように、薄肉円筒体1の筒壁に円筒体1の開口直径aの3分の1〜3分の2の穴径bの窓2を、該円筒体1の円周方向に複数設けてなる。なお図1の実施例では窓2が筒壁の周方向に4箇所形成されている。この場合の窓2の径について、これを開口直径aの3分の1以下とすると排ガスの流れの抵抗が大きくなり圧損失が大きくなるのでこれ以上小さくはできない。また逆に窓2の径を開口直径aの3分の2を超えてしまうと圧損失がさらに減少するものの排ガス処理用充填物14の強度が低下するので、窓2の径については開口直径aの3分の2までとするのが限界点であることが実験の結果明らかとなった。
【0024】
また薄肉円筒体を構成する円筒体1の素材については、耐久強度を向上させるためにプラスチックあるいはグラファイトの使用が望ましい。しかしこれに限定されるものではなく他の金属材料やセラミック類、硬質ゴム、あるいはテフロン(登録商標)やテフロンコーチング等の使用も可能である。薄肉円筒を構成する円筒体1は本発明者の実施例では90mmφ×90mm(円筒長さ)×3mm(肉厚)のプラスチックのものを用い、この筒壁に40mmφの窓2を該円筒体1の周方向等間隔毎に4箇所形成した。これをガス水平方向流れ方式排ガス処理装置の回転充填層内に多数装入して実験を試みたところ、排ガスの圧損失が少なく、しかも吸収液との接触効率がきわめて良好であった。
【0025】
また円筒体1の筒壁に形成される窓2の大きさについては、該円筒体1の直径の3分の1未満ではガス流の圧損失が多く、また逆に円筒体1の直径の3分の2を超えると薄肉円筒体としての十分な強度を保持できなくなる。したがってこの場合における窓2の大きさは円筒体1の直径の3分の1〜3分の2の穴径であることが必要であることが実験の結果明らかとなった。
【0026】
さらに上記した窓2を円筒体1の周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物をガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる排ガス処理装置とした場合、排ガスの圧損が少なく、しかも気液接触が効率的におこなわれ、理想的な排ガス処理がおこなわれる。
【0027】
(排ガス処理装置の構成)
本発明における排ガス処理用充填物11を装入する排煙脱硫装置の一例を、図3および図4にあらわした石灰石―石膏法の排煙脱硫装置に適用する場合をもとに説明する。図3には有害ガス脱硫装置の一例が示されており、3は固定ダクト、13はかご型回転円筒体、11はかご型回転円筒体10内に装入されるところの、上記した薄肉円筒体1からなる気液接触充填物(「排ガス処理用充填物」以下同じ)、12はかご型回転円筒体10の下部に形成されたスラリー貯留槽、15はスラリー貯留層12内のスラリーを汲み上げて前記したかご型回転円筒体10の上方から側方外周面にかけて還流させるスラリー循環ポンプをあらわしている。さらに固定ダクト3は図3において水平方向に向けて一定の長さを有し、片側にガス導入口4を、また反対側にはガス排出口5をそれぞれ備えるとともに、略中央部を下方および正面ならびに背面方向に膨らませて内部にかご型回転円筒体10を設置可能な内部空間が形成されている。
【0028】
またかご型回転円筒体10は、90φ×長さ:90mm×厚み:3mm程度の大きさの充填物をランダムな状態で多数充填するために、円周面には80〜85mm程度の間隔で格子状に形成されている。かご型回転円筒体10は固定ダクト3内に、片側の側面をガス導入口4側に、また他側の側面をガス排出口5側にそれぞれ対面させて水平軸8を中心に一対のボス7a・7bによって回転自在に支承されており、しかもその左右側側面は、内部に装入される気液接触充填物11が外方に漏れない程度の隙間(80〜85mm程度)の格子状に形成されている。さらにかご型回転円筒体10は、その径が大きい場合においては固定ダクト3のガス排出方向側から見て前記した水平軸8を中心に、これと同軸の小径筒体、およびこれより径大な中径筒体、および放射状の隔壁(何れも図示省略)をもって回転円筒体10の内部空間を複数の空間に分隔すると、かご型回転円筒体10の回転に伴って起こりやすいところの、内部に装入した気液接触充填物11の偏りを防止して均等に位置させることができ、脱硫効率をより一層向上させることができる。
【0029】
なお、かご型回転円筒体10を支承する水平軸8は、一端をガス導入口4側に、また他端をガス排出口5側に、それぞれ軸受9aおよび9bにより支承されている。また気液接触充填物11は既述したように図1に示したとおり、かご型回転円筒体10内において転動が可能なように構成されている。さらにスラリー貯留層12は前記した固定ダクト3の底部に付設され、かご型回転円筒体10の下部に位置して形成されている。なお13は空気吹き込み装置、14は攪拌装置、16a・16bはガスシールプレートをあらわしている。なお、スラリー貯留層12の底部にはバルブ17を介して石膏を取り出すためのパイプ18が接続されている。スラリー貯留層12内に貯留されるスラリーはこの場合石灰石粉スラリーが用いられ、石灰石スラリー供給パイプ19よりスラリー貯留層12内に供給される。
【0030】
スラリー循環ポンプ15はスラリー貯留層12内のスラリーを汲み上げて前記かご型回転円筒体10の上部外周面および側面に散布する。この場合に、汲み上げポンプ15(P)によりスラリー貯留層12内より汲み上げられたスラリーは、パイプ15a・15bを介してかご型回転円筒体10の水平軸8を基準とした周方向片側寄りの上方外周面および側面部に噴射されるが、かご型回転円筒体10の水平軸8を基準とした周方向片側への寄り加減を適宜調整することによりスラリー重量バランスの偏りを利用してかご型回転円筒体10の回転速度を調整するものとする。
【0031】
(排ガス処理装置の作用・効果)
上記の石灰石―石膏法による排煙脱硫装置の構成において、石灰石スラリー供給パイプ19より石灰石粉スラリーがスラリー貯留層12内に継続的に供給される。供給されたスラリーは貯留層12内において空気吹き込み装置13によりエアパージされながら攪拌装置14により常時撹拌されて十分に酸素富化され、スラリー還流手段であるパイプ15のポンプPにより汲み上げられてパイプ15aおよび15bを介してかご型回転円筒体10内に分散灌液する。
【0032】
またこの分散灌液は必ずしもスプレーノズルを必要とするものではなく、単に供給パイプの先端より流下させるだけでもよい。この場合に気液接触充填物11などの充填物を充填したかご型回転円筒体10は、水平軸8を中心に回転する対称形状であるところから僅かなトルクにより回転することができる。したがってかご型回転円筒体10への分散灌液は、この場合かご型回転円筒体10の水平軸8を基準とした周方向片側寄り(回転させようとする方向寄り)の上方外周面および側面部に噴射して大量に還流させることによりかご型回転円筒体10は水車の原理により回転を開始することができる。
【0033】
またこれに伴ってかご型回転円筒体10の反回転側に比して回転方向側のかご型回転円筒体10の半円部を流下するスラリー量のほうが多いために、その重量に比例したトルクも働き、その結果かご型回転円筒体10は継続して回転を続けることができる。
一方、かご型回転円筒体10の所要回転速度については、固定ダクト3内を通過するガスがかご型回転円筒体10内を通過する際にスラリーに対して十分に気液接触がなされればよいわけであるから、3rpm程度で十分である。なおこの場合1rpmを下回ると気液接触は不十分となる傾向がある。また逆に7rpmを超えてもその効果は殆ど変わらない。したがって1〜7rpmの範囲内であるのが理想である。
【0034】
また、これらのかご型回転円筒体10の所要回転速度については、スラリー還流手段15のポンプPによるスラリー汲み上げ量を調整することにより容易に調整することができるほか、かご型回転円筒体10の外周面に正回転用または逆回転用のバケットまたは受圧板を設置し、それぞれのバケットまたは受圧板へのスラリーの流量を調整することによっても容易に調整することができる。有害ガスは図示しない送風機によりガス導入口4から固定ダクト3内に導入され、中央のかご型回転円筒体10を通過してガス排出口5側へと送り出され、ミストセパレータ6を経て排気される。
【0035】
一方かご型回転円筒体10に還流されたスラリーは、かご型回転円筒体10内を流下するスラリーの重力およびかご型回転円筒体10自体の回転の影響を受けながら気液接触充填物11などの表面を流下し、その際に形成されるスラリー液膜が固定ダクト3内を通過するガスとの広い面積での気液接触による反応を行いつつ貯留槽12内に落下する。貯留層12内に落下したスラリーはガスとの気液接触により多量の石膏を含んでいる。貯留層12内では攪拌装置14により撹拌しながら空気吹き込み装置13によりエアパージがおこなわれ、新鮮な酸素を補給しつつ石灰石粉を溶解させながらスラリーを順次循環させる。
【0036】
上記の構成による場合に、かご型回転円筒体10内には充填物11がランダムに充填されており、各充填物11にはそれぞれ周壁面に複数の窓2が形成されているために、排ガスの流れ方向と充填物11の円筒軸方向とが交差する場合でも排ガスの通風圧損失が低減され、風車動力も低減される。またかご型回転円筒体10全体の重量も減少し、しかもその回転動力も減少する。なお充填物11については肉厚を増し、あるいは円筒直径をより大きくすることにより機械的強度を増すことができる。
【0037】
既述したように図3・4の装置での気液接触反応プロセスは石灰石粒子の溶出が律速段階であるため、充填物11の周壁面に窓2を形成することにより表面積を減少しても排ガスの吸収機能を低下させることはない。
【0038】
(炭酸ガス吸収装置に用いる場合)
炭酸ガス吸収の装置は大型装置となるため、充填層の高さは高くなるが、本実施例の充填物11はそれらへの使用に十分に耐えられる機械的強度を有する。なおこの場合に本発明の充填物11の円筒軸方向を排ガスの流れ方向と一致させるとともに、該円筒体1内に機械的強度では劣るが表面積の大きな市販の充填物を別途内装することにより両者の機能を低コストに十分に発揮させることができる。またこの場合に吸収液の流下について直列多段方式を採用することができるために水に対する溶解度の少ないCO2をさらに効果的に吸収させることができる。
【0039】
さらにCO2の吸収については排煙脱硫の場合と異なり、ガスの吸収量が非常に多い。
因みにSO2は 1,000ppm程度 つまり 0.1%程度であるのに対し、CO2は 5〜10%であるから、仮に5%としても 5/0.1 = 50倍 ということになる。
このためCO2の吸収においては充填層の長さが長くなる可能性があり、この場合には圧損失が小さいという特徴を持った本発明の充填物がより一層有効に働くものと考えられる。また反応量が非常に多いので吸収剤の種類如何によっては反応熱の発生による温度上昇を防止するため、固定充填層内に熱交換装置を設置する工夫もなされている(特許文献7参照)。
【0040】
上記したように排煙脱硫装置と炭酸ガス吸収装置とで本発明の充填物11について、これを充填方法を変えるだけで共用することができるためにこの面での低コスト化もはかれ、地球環境保全の面でもきわめて有意義である。また第1発明の排ガス処理用充填物11を用いた場合に、排煙脱硫装置あるいは炭酸ガス吸収装置としては、共に排ガスの流れが水平方向となるので、これらを1つの装置として一体化することも可能となり、諸設備の構成を大幅に簡略化させることが可能となる。
【0041】
(第2発明について)
上記第1発明の排ガス処理用充填物11の別の実施例を第2発明として以下の通り提案する。
図2には第2発明に係る排ガス処理用充填物11aの構造が断面にてあらわされている。
第2発明に係る排ガス処理用充填物11aは、前記した第1の発明の充填物の機能をさらに高めるために、図2に断面にてあらわしたように、上記した第1の発明の充填物と同一構造からなる円筒体直径の異なる大小2種類の充填物を用意し、小さい方の充填物(以下「小充填物」という)1Bを大きい方の充填物(以下「大充填物」という)1Aの内径側に装入するとともに、吊り下げ保持具Tにより小充填物1Bを大充填物1Aの円筒体内径側に緩く吊り下げ状態で担持させてなる。
【0042】
吊り下げ保持具Tは、この場合ステンレス針金が用いられ、大充填物1Aの軸方向長さより幾分長くした中央部を小充填物1Bの内径壁面に沿わせるとともに、その左右両端方向を直角同方向に折り曲げて大充填物1Aの端部に余裕をもたせた状態で大充填物1Aの外周方向に立ち上がらせて立ち上がり部T1・T1を形成し、さらに該立ち上がり部T1・T1の先端部分を大充填物1Aの外周面に沿わせるべく前記吊り下げ保持具Tの小充填物1Bの内径側の部分と平行となるように直角に折り曲げて係止部T2・T2の各両端を突き合わせる方向に向けて小充填物1Bを大充填物1Aに緩く保持させるべく構成されている。
【0043】
また上記した小充填物1Bを大充填物1Aに緩く保持させた図2に記載されている大小2種類の充填物を組み合わせてなる排ガス処理用充填物を第1発明と同様に、図3および図4に記載されているガス水平方向流れ方式かご型回転円筒体10内に多数充填して用いることも可能であり、これによれば第1発明以上に排ガス処理能力を向上させることができる。
【0044】
(別の実施例)
さらに、直径と長さの略等しい薄肉円筒体1の筒壁に、該薄肉円筒直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓2を、薄肉円筒の周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物11、あるいは上記第2発明の排ガス処理用充填物11aを、ガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなる石灰石ー石膏法排煙脱硫装置を形成するとともに、これに続いて排ガスの水平流れ方向に直径と長さの略等しい薄肉円筒体1の筒壁に、該薄肉円筒直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓2を、薄肉円筒の周方向に複数設けてなる排ガス処理用充填物11、あるいは上記第2発明の排ガス処理用充填物11aを充填してなる炭酸ガス吸収装置を連設して構成した場合においては排煙脱硫と炭酸ガス吸収とを同時に実施することができ、より効率的な排ガス処理を実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 円筒体
1A 大充填物
1B 小充填物
2 窓
3 固定ダクト
4 ガス導入口
5 ガス排出口
6 ミストセパレータ
7a・7b 軸受
8 水平軸
9a・9b ボス
10 かご型回転円筒体
11 気液接触(排ガス処理用)充填物
11a 気液接触(排ガス処理用)充填物
12 スラリー貯留槽
13 空気吹き込み装置
14 攪拌装置
15 スラリー循環ポンプ
15a・15b パイプ
16a・16b ガスシールプレート
17 バルブ
18 パイプ
19 石灰石スラリー供給パイプ
T 吊り下げ保持具
T1 立ち上がり部
T2 係止部



【要約】      (修正有)
【課題】排ガス処理液との気液接触効率を低下させることなく低コストで排ガスの通風圧損の少ない充填物を得る。
【解決手段】薄肉円筒体1の筒壁に該筒体直径の3分の1〜3分の2の穴径の窓2を、周方向に複数設けることにより、排ガス流れの圧損失がきわめて減少し排ガス処理効率が著しく向上し、また窓2を形成したことにより薄肉円筒体1の筒壁面面積が減少したためにスケーリングの付着が減少し、メンテナンス性が向上しまた構造が簡単であることからコストの著しい削減をはかることができ、更に上記の構成よりなる排ガス処理用の充填物をガス水平方向流れ方式の回転処理装置内に多数充填してなるために、排ガス圧損失を著しく減少させ、排煙処理効率を向上させることができる排ガス処理用充填物。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4