特許第5774799号(P5774799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000003
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000004
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000005
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000006
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000007
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000008
  • 特許5774799-保護膜形成用複合シート 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774799
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20150820BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150820BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
【請求項の数】5
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-508641(P2015-508641)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2014058699
(87)【国際公開番号】WO2014157426
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-66682(P2013-66682)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151362(JP,A)
【文献】 特開2009−130320(JP,A)
【文献】 特開2012−207179(JP,A)
【文献】 特開2010−56328(JP,A)
【文献】 特開2013−21270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/02
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートと、前記粘着剤層に貼付された保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの粘着剤層に貼付された面と反対側の面に貼付された剥離フィルムとを備え、
試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの前記保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの間の剥離力最大値をα(mN/25mm)、前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最小値をβ(mN/25mm)、前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最大値をγ(mN/25mm)とすると、α、β、γが以下の(1)〜(3)の関係を有する保護膜形成用複合シート。
β≧70 ・・・(1)
α/β≦0.50 ・・・(2)
γ≦2000 ・・・(3)
【請求項2】
試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの硬化後の前記保護膜形成用フィルムと前記粘着シートの剥離力最大値をγ’(mN/25mm)とすると、以下の(4)の関係を満たす請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
γ’≦2000 ・・・(4)
【請求項3】
前記基材が、ポリプロピレンフィルム若しくはその架橋フィルム、又はこれらのうちの少なくとも一方と他のフィルムの積層フィルムである請求項2に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
前記粘着剤層が、非エネルギー線硬化型粘着剤又はエネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤からなる請求項1〜3のいずれかに記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項5】
前記保護膜形成用フィルムが充填材を含み、前記保護膜形成用フィルムにおいて、充填材の含有量が45〜80質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体保護を目的とする保護膜形成用フィルムが粘着シート上に形成されてなる保護膜形成用複合シートであって、特に、保護膜形成用フィルムとダイシングテープの機能を兼ね備えた保護膜形成用複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェースダウン方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式において、半導体チップは、バンプなどの電極が形成されたチップ表面が基板等に対向されて接合される一方で、チップ裏面が剥き出しとなるため、保護膜によって保護されている。保護膜は、例えば樹脂コーティング等によって形成されていたが、近年、保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付することにより形成される手法も採用されつつある。
また、半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作成する際、半導体ウエハを固定するために、半導体ウエハの裏面にダイシングテープが貼付されることが広く知られている。
【0003】
保護膜形成用フィルムとダイシングテープは、製造コストの低減や工程の簡略化等を目的として一体にされ保護膜形成用複合シートとして使用されることがある。保護膜形成用複合シートは、具体的には、基材の上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートの粘着剤面に、保護膜形成用フィルムが貼付されて構成される(特許文献1〜4等参照)。特許文献1、2では、この保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの剥離力を特定の範囲に調整することが開示されている。特許文献3、4では、粘着剤層として、放射線の照射により、フリップチップ型半導体裏面用フィルムに対する粘着力が低下する放射線硬化型や、放射線照射により予め硬化されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−151362号公報
【特許文献2】特開2012−33637号公報
【特許文献3】特開2011−228450号公報
【特許文献4】特開2011−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記保護膜形成用複合シートは、ロール状にされ、或いは枚葉シートの積層品として搬送、使用されるのが一般的であり、その場合、保護膜形成用複合フィルム上には保護用の剥離フィルムが貼付されている。剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートをウエハに貼付する際に剥離除去されるが、剥離フィルムの剥離除去と同時に、保護膜形成用フィルムと粘着剤層との間で層間剥離が生じることがある。
しかし、層間剥離が発生した保護膜形成用複合シートを使用して半導体チップを作成すると、粘着剤層によるウエハの保持性能が劣りダイシング時に不具合が生じたり、保護膜によって半導体チップを保護する性能が低下したりすることがある。
【0006】
また、保護膜形成用複合シートがウエハに貼付され、ウエハがダイシング工程によりチップ化された後、各保護膜付きのチップは、保護膜硬化前に粘着剤層から剥離されるのが一般的である。しかし、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの剥離力が高くなると、チップ剥離時にチップに余計な力が作用し、チップ欠け等のチップ不良が生じることがある。
【0007】
これら層間剥離やチップ不良は、特許文献1、2のように、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの剥離力を調整することで、いずれか一方はある程度防げるが、これらの両方を十分に防止することは困難である。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてされたものであり、剥離フィルムを剥離する際の粘着剤層と保護膜形成用フィルム間の層間剥離を防止しつつ、チップ不良を生じさせることなく保護膜付きの半導体チップをピックアップできるようにする保護膜形成用複合シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、保護膜付きの半導体チップをピックアップする際、チップ不良が起こりにくくするために、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの剥離力の最大値を所定の値以下としつつも、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの間の層間剥離を防止するためには、これらの間の剥離力最小値も制御することが必要であることを見出した。そして、その最小値を所定の値よりも大きくしつつも、その最小値と、保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの剥離力の比を所定の値にすることが必要であることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]基材上に粘着剤層が設けられてなる粘着シートと、前記粘着剤層に貼付された保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの粘着剤層に貼付された面と反対側の面に貼付された剥離フィルムとを備え、
試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの前記保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの間の剥離力最大値をα(mN/25mm)、前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最小値をβ(mN/25mm)、前記粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最大値をγ(mN/25mm)とすると、α、β、γが以下の(1)〜(3)の関係を有する保護膜形成用複合シート。
β≧70 ・・・(1)
α/β≦0.50 ・・・(2)
γ≦2000 ・・・(3)
[2]試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの硬化後の前記保護膜形成用フィルムと前記粘着シートの剥離力最大値をγ’(mN/25mm)とすると、以下の(4)の関係を満たす[1]に記載の保護膜形成用複合シート。
γ’≦2000 ・・・(4)
[3]前記基材が、ポリプロピレンフィルム若しくはその架橋フィルム、又はこれらのうちの少なくとも一方と他のフィルムの積層フィルムである上記[2]に記載の保護膜形成用複合シート。
[4]前記粘着剤層が、非エネルギー線硬化型粘着剤またはエネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤からなる[1]〜[3]のいずれかに記載の保護膜形成用複合シート。
[5]前記保護膜形成用フィルムが充填材を含み、前記保護膜形成用フィルムにおいて、該充填材の含有量が45〜80質量%である[1]〜[4]のいずれかに記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、粘着シートと保護膜形成用フィルムの間で層間剥離を生じさせることなく、剥離フィルムを保護膜形成用フィルムから剥離することができる。また、保護膜付きのチップをピックアップされる際に、チップ欠け等によるチップ不良が生じることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の保護膜形成用複合シートの模式的な断面図である。
図2】本発明の保護膜形成用複合シートの具体例を示す断面図(A)、及び平面図(B)を示す。
図3】本発明の保護膜形成用複合シートの使用状態の一例を示す断面図である。
図4】本発明の保護膜形成用複合シートの具体例を示す断面図(A)、及び平面図(B)を示す。
図5】本発明の保護膜形成用複合シートの使用状態の一例を示す断面図である。
図6】本発明の保護膜形成用複合シートの具体例を示す断面図(A)、及び平面図(B)を示す。
図7】本発明の保護膜形成用複合シートの使用状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」の一方もしくは双方を意味する用語として使用する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」の一方もしくは双方を意味する用語として使用する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」の一方もしくは双方を意味する用語として使用する。
[保護膜形成用複合シート]
保護膜形成用複合シート10は、図1に示すように、基材11上に粘着剤層12が設けられてなる粘着シート16と、粘着剤層12に貼付された保護膜形成用フィルム13と、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12に貼付された面と反対側の面に貼付された剥離フィルム14とを備えるものである。
【0013】
[各層間の剥離力]
本発明では、試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの保護膜形成用フィルム13と剥離フィルム14の間の剥離力最大値をα(mN/25mm)、粘着シート16と保護膜形成用フィルム13の間の剥離力最小値をβ(mN/25mm)、粘着シート16と保護膜形成用フィルム13の間の剥離力最大値をγ(mN/25mm)とすると、α、β、γが以下の(1)〜(3)の関係を有する。なお、α、β、γは、保護膜形成用フィルム13を硬化する前の剥離力最大値又は剥離力最大値をいう。なお、これら剥離力α、β、γの測定方法は、後述するとおりである。
β≧70 ・・・(1)
α/β≦0.50 ・・・(2)
γ≦2000 ・・・(3)
【0014】
剥離力最小値βが70mN/25mm未満となると、剥離力最小値βと剥離力最大値αとの差を大きくすることができず、剥離力比α/βを0.5以下に制御するのが困難となる。
また、剥離力最小値βは、250mN/25mm以上であることが好ましい。剥離力最小値βを250mN/25mm以上とした場合には、保護膜形成用フィルムが貼付される粘着剤層の粘着性を比較的高いものとすることができる。その結果、後述するように、リングフレームに貼付される領域に粘着性の高い再剥離粘着剤層を別途設けたり、粘着剤層を複数層にしたりするなどの特段の処置をせずとも、粘着シートをリングフレームに高い粘着力で固定することが可能となる。また、剥離力最小値βが高い場合には、上述の(2)の関係を満たす剥離力最大値αの値の幅が広がり好ましい。保護膜形成用フィルムに貼付される剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートを製造する際に工程フィルムとして用いたものをそのまま使用する場合も多い。そのため、選択し得る剥離力最大値αの値が広い、具体的には、剥離力最大値αの大きい剥離フィルムを使用できるようになると、採り得る保護膜形成用複合シートの製造方法の態様が制限されにくくなる。
【0015】
剥離力最大値γは2000mN/25mmより大きくなると、後述するように未硬化の保護膜形成用フィルム付きのチップを粘着剤層からピックアップする際、チップ欠け等のチップ不良が生じることがある。ここで、剥離力最大値γは、チップ欠け等のチップ不良を少なくする観点から1700mN/25mm以下であることが好ましく、1000mN/25mm以下であることがより好ましい。
【0016】
また、剥離力比α/βが0.50より大きくなると、粘着シートと保護膜形成用フィルムの間で層間剥離が生じやすくなる。層間剥離をより生じにくくする観点から、剥離力比α/βは0.40以下がより好ましい。また、剥離力比α/βは、特に限定されないが、0.03以上が好ましく、0.07以上がより好ましい。剥離力比α/βをこれら下限値以上とすることで、剥離力最大値αが小さくなりすぎるのを防止することができる。
剥離フィルムの剥離力最大値αは特に限定されないが、20mN/25mm以上が好ましい。剥離力最大値αを20mN/25mm以上とすることで、剥離フィルムの意図しない剥離等を防止することができる。そのような観点から、剥離力最大値αは、30mN/25mm以上がより好ましい。また、剥離力最大値αは、特に限定されないが、300mN/25mm以下が好ましい。300mN/25mm以下とすることで、剥離力比α/βを所望の値に調整しやすくなる。また、そのような観点から剥離力最大値αは、100mN/25mm以下がより好ましい。
【0017】
また、本発明の保護膜形成用複合シートでは、試験片巾25mm、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minで測定したときの硬化後の保護膜形成用フィルムと粘着シートの剥離力最大値をγ’(mN/25mm)とすると、以下の(4)の関係を満たすことが好ましい。なお、剥離力最大値γ’の測定方法は後述するとおりである。
γ’≦2000 ・・・(4)
【0018】
本発明では、後述するように、保護膜形成用フィルムを加熱して硬化した後に、その保護膜形成用フィルム付きのチップを粘着剤層からピックアップすることがある。この場合には、上記したように硬化後の剥離最大値γ’が2000mN/25mm以下とすると、ピックアップ時にチップ欠け等のチップ不良が生じにくくなる。硬化後の剥離力最大値γ’は、チップ不良を少なくする観点から1700mN/25mm以下であることが好ましく、1000mN/25mm以下であることがより好ましく、500mN/25mm以下であることがさらに好ましく、300mN/25mm以下であることが最も好ましい。なお、保護膜形成用フィルムを硬化した後に、チップを粘着剤層からピックアップする場合には、未硬化の保護膜形成用フィルム付きのチップを粘着剤層からピックアップすることはないため、粘着シートと未硬化の保護膜形成用フィルムの間の剥離力を規定することに技術上の意義はないように思える。しかしながら、上述のとおり、剥離力比α/βを所定の数値以下とすることで、未硬化の保護膜形成用フィルムを被着体に貼付するに当たり、剥離フィルムを剥離する際の粘着剤層と保護膜形成用フィルム間の層間剥離を生じにくくするという本発明の作用効果を得ることができる。
【0019】
以下、保護膜形成用複合シートを構成する各部材についてさらに詳細に説明する。
(粘着シート)
[基材]
基材は、粘着剤層及び保護膜形成用フィルムを支持するためのものであって、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどのフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルムも用いることができる。
これらのうちでも、耐熱性を有し、粘着シートのピックアップ適性、エキスパンド適性が得られやすい観点から、ポリプロピレンフィルム若しくはその架橋フィルム、又はこれらのうちの少なくとも一方と他のフィルムの積層フィルムが好ましい。基材が耐熱性を有していることで、次のような利点がある。保護膜形成用フィルムを加熱して硬化した後に、その保護膜形成用フィルム付きのチップを粘着剤層からピックアップするプロセスに本発明の保護膜形成用複合シートを供した場合においても、耐熱性を有する基材は、保護膜形成用フィルムとともに加熱される際に受ける、熱によるダメージが小さい。したがって、このような基材が受ける熱によるダメージに起因した工程不具合が発生する可能性を低減することができる。
基材の厚さは、使用目的や状況に応じて適宜定めればよいが、通常50〜300μm、好ましくは60〜100μmの範囲である。また、基材には、その上に設けられる粘着剤層との接着性を向上させる目的で、所望により、サンドブラストや溶剤処理などによる凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、電子線照射、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理などの酸化処理などを施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0020】
[粘着剤層]
粘着剤層は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤等を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としてはエネルギー線硬化型粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、粘着剤としてエネルギー線硬化型粘着剤を用いる場合には、例えば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型のエネルギー線硬化型粘着剤、または、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された添加型のエネルギー線硬化型粘着剤などを使用できる。
【0021】
エネルギー線硬化型粘着剤を使用する場合には、本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、エネルギー線硬化型粘着剤が硬化されていることが好ましい。その場合、保護膜形成用複合シートを製造する際、粘着剤層を保護膜形成用フィルムに重ね合わせる前に、粘着剤層にエネルギー線を照射させて硬化させることが好ましい。これにより、剥離力最大値γ、γ’を低下させて、上記特定の値にすることができるとともに、保護膜形成用フィルムとともにチップを粘着シートからピックアップすることをさらに容易にすることができる。ただし、エネルギー線硬化型粘着剤は、使用前、すなわち、剥離シートを剥離する前に予め硬化されていればよく、例えば、粘着剤層を保護膜形成用フィルムに重ね合わせた後に硬化させてもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートは、粘着剤層が非エネルギー線硬化型粘着剤からなるものであるか、またはエネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤からなる場合に、よりその作用効果が発揮される。その理由は以下の通りである。
エネルギー線硬化型粘着剤を硬化せずに粘着剤層に用いた場合には、保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを剥離する際にはエネルギー線硬化型粘着剤の粘着性を高いまま維持し、保護膜形成用フィルムと粘着剤層の間の層間剥離が生じることを防止できる。そして、その後、保護膜形成用フィルム付きチップをピックアップするまでの間にエネルギー線照射によりエネルギー線硬化型粘着剤の粘着性を低減し、ピックアップ適性も向上させることができる。一方で、粘着剤層が非エネルギー線硬化型粘着剤からなるものであるか、またはエネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤からなる場合には、このような手段を採用できないため、ピックアップ適性と、保護膜形成用フィルムと粘着剤層の間の層間剥離の防止の両立が困難だからである。
なお、非エネルギー線硬化型粘着剤とは、エネルギー線が照射されても硬化が起こらない粘着剤であり、具体的には、内在型のエネルギー線硬化型粘着剤、及び紫外線(エネルギー線)硬化性の化合物(モノマー成分及び/又はオリゴマー成分)のいずれも含有しない粘着剤である。
非エネルギー線硬化型粘着剤およびエネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤のうちでも、エネルギー線硬化型粘着剤を硬化した粘着剤を用いることが、硬化後の剥離最大値γ’を十分に低減させることができる観点から、より好ましい。
粘着剤層の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは1〜60μm、より好ましくは1〜30μmである。
【0022】
<アクリル系重合体(A)>
本発明では、粘着剤としては、アクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤としては、アクリル系重合体(A)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。本発明では、重量平均分子量を1万以上にすることで、凝集力を高めることができ、ピックアップ時の保護膜形成用フィルムへの粘着剤残りを抑制することができる。200万以下にすることで、安定した粘着剤層塗膜が得られる。また、上記範囲とすることで、凝集力を高めつつ、粘着剤層に適度な粘着性を付与することができ、上記した剥離力最小値β、及び剥離力最大値γ、γ’を上記した特定の値にしやすくなるという利点がある。
また、アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70〜30℃、さらに好ましくは−60〜20℃の範囲にある。上記範囲とすることで、凝集力を高めつつ、粘着剤層に適度な粘着性を付与することができ、上記した剥離力最小値β、及び剥離力最大値γ、γ’を上記した特定の値にしやすくなるという利点がある。
【0023】
アクリル系重合体(A)は、少なくとも構成モノマーに、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有する重合体であり、後述する架橋剤(B)の官能基と反応する官能基(以下、「反応性官能基」ともいう)を有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート;シクロアルキル基の炭素数が1〜18程度のシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3−エポキシシクロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N−メチロールアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーが共重合されていてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
アクリル系重合体(A)は、反応性官能基を含有することにより、後述する架橋剤(B)の官能基と反応して三次元網目構造を形成し粘着剤層の凝集性を高めることができ、それにより、剥離力最大値γ、γ’を上記した特定の値にしやすくなる。アクリル系重合体(A)の反応性官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が挙げられるが、後述するように架橋剤として好ましく使用される有機多価イソシアネート化合物と選択的に反応させやすいことから、水酸基を含むことが好ましい。
反応性官能基は、上述した水酸基含有(メタ)アクリレートやアクリル酸等の反応性官能基を有する単量体を用いてアクリル系重合体(A)を構成することで、アクリル系重合体(A)に導入できる。
反応性官能基を有するモノマー(以下、反応基含有モノマーともいう。)は、アクリル系重合体(A)の全構成モノマー中の0.3〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることが好ましい。反応基含有モノマーをこの範囲で含有することで、凝集力を高めつつ、粘着剤層に適度な粘着性を付与することができ、上記したように剥離力最小値β、及び剥離力最大値γ、γ’を上記した特定の値にしやすくなる。
また、アクリル系重合体(A)は、構成モノマーとして、上記したアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜10のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはアルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、その含有量は、全構成モノマー中の30〜99.7質量%であることが好ましく、35〜99質量%であることがより好ましい。
このように、アルキル(メタ)アクリレートを所定量含有すると、凝集力を高めつつ、粘着剤層に適度な粘着性を付与することができ、上記した剥離力最小値β、及び剥離力最大値γ、γ’を上記した特定の値にしやすくなる。
【0025】
内在型のエネルギー線硬化型粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用する場合、アクリル系重合体(A)としては、水酸基含有(メタ)アクリレート等の反応性官能基を有する単量体と、その反応性官能基と反応する反応基及び炭素−炭素二重結合を含有する化合物(以下、不飽和基含有化合物とする)とを予め反応させて得た反応物を、他のモノマーと共重合して得たものが挙げられる。また、アクリル系重合体(A)は、反応基含有モノマーを含む構成モノマーからアクリル系重合体を重合した後、該反応基含有モノマーに由来する反応性官能基と、不飽和基含有化合物とを反応させたものであってもよい。不飽和基含有化合物に含有される反応基としては、イソシアネート基等が挙げられる。また、不飽和基含有化合物の具体例としては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
本発明では、アクリル系重合体(A)の構成モノマーを適宜変更することによって、上記した剥離力β、γ、γ’を調整することができる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜2程度のアルキル(メタ)アクリレートや、酢酸ビニル等を配合すると、剥離力β、γ、γ’の値が小さくなりやすくなる。
また、反応基含有モノマーの量を、後述する架橋剤(B)とともに多くすると、剥離力β、γ、γ’の値が小さくなりやすく、反応基含有モノマーの量を架橋剤(B)の量とともに少なくすると、剥離力β、γ、γ’の値が大きくなりやすい傾向にある。
【0027】
<架橋剤(B)>
粘着剤層を得るための粘着剤組成物には、アクリル系重合体(A)に加えて、架橋剤(B)が配合されることが好ましい。例えば、粘着剤のベースポリマーとして、アクリル系重合体(A)が使用される場合、架橋剤(B)としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤等が挙げられ、反応性の高さから有機多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0028】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、イソシアヌレート体、 アダクト体(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物、例えばトリメチロールプロパンアダクトキシリレンジイソシアネート等)や、有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0029】
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアネート、リジンイソシアネートおよびこれらから得られる上記に挙げた誘導体等が挙げられる。
【0030】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0031】
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0032】
金属キレート系架橋剤の具体な例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート系架橋剤;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート系架橋剤;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート系架橋剤などが挙げられる。
【0033】
架橋剤(B)は、上記列挙された架橋剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明では、架橋剤(B)の量を適宜調整することで、上記した剥離力β、γ、γ’を調整することができる。例えば、架橋剤(B)の量を多くすると、剥離力β、γ、γ’の値が小さくなりやすく、架橋剤(B)の量を少なくすると、剥離力β、γ、γ’の値が大きくなりやすい。
具体的には、架橋剤(B)は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.3〜45質量部配合されることが好ましく、0.5〜35質量部配合されることがより好ましく、3〜15質量部配合されることが特に好ましい。架橋剤の配合量を上記範囲とすることで、剥離力β、γ、γ’の値を上記したような特定の値にしやすくなる。また、架橋剤の量を3〜15質量部とすることで、剥離力最小値βと剥離力最大値γの剥離力差や、硬化前の剥離力γと硬化後の剥離力γ’の剥離力差を小さくすることもできる。
【0034】
なお、本発明では、粘着剤層は、単層でもよいが複数層であってもよい。
粘着剤層が、複数層設けられる場合も、保護膜形成用フィルムに接する粘着剤層は、上記した剥離力β、γ、γ’を適切な値にすることができるように適宜配合が調整される。
一方、保護膜形成用フィルムに接しない基材側に設けられる粘着剤層は、例えば、基材との密着性を高めるように配合が調整されてもよい。また、後述するリングフレームに対する粘着力を高め、さらにはリングフレームに対する再剥離性に優れる配合に調整されてもよい。
例えば、粘着剤層が基材側に設けられた第1の粘着剤層と、保護膜形成用フィルムに接する第2の粘着剤層とを有する場合、第1の粘着剤層におけるアクリル系重合体(A)100質量部に対する架橋剤(B)の質量部が、第2の粘着剤層におけるアクリル系重合体(A)100質量部に対する架橋剤(B)の質量部より少なくすることが好ましい。
また、粘着剤組成物には、他の成分として、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤、可塑剤、光重合開始剤等を配合してもよい。
【0035】
[保護膜形成用フィルム]
保護膜形成用フィルムは、フィルムの形態で粘着剤層の上に積層されたものである。
保護膜形成用フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜250μm、さらに好ましくは7〜200μmである。
保護膜形成用フィルムは、バインダー樹脂(a)、及び熱硬化性成分を含む保護膜形成用組成物から形成されることが好ましく、保護膜形成用組成物は、さらに、各種物性を改良するため、必要に応じ他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの各成分について具体的に説明する。
<バインダー樹脂(a)>
バインダー樹脂(a)はその造膜性を発揮し、保護膜形成用フィルムにシート形状を維持せしめ、また、可とう性を与えることを主目的とした重合体化合物である。バインダー樹脂(a)としては、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー、フェノキシ樹脂等を用いることができるが、好ましくはアクリル系重合体(a1)からなるアクリル系樹脂が用いられる。
【0036】
<アクリル系重合体(a1)>
アクリル系重合体(a1)を構成するモノマーとしては、粘着剤層のアクリル系重合体(A)を構成するモノマーとして例示したモノマーを用いることができる。
アクリル系重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル系重合体(a1)の重量平均分子量が上記下限値以上とすることで、剥離力最大値γ、γ’が大きくなりすぎず、チップのピックアップ不良が起こりにくくなる。アクリル系重合体(a1)の重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、被着体に対する保護膜形成用フィルムの追従性を良好にすることができる。
アクリル系重合体(a1)のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル系重合体(a1)のTgを上記下限値以上とすることで、剥離力最大値γ、γ’を低くでき、ピックアップ不良が起こることを防ぐことができる。また、アクリル系重合体(a1)のTgを上記上限以下とすることで、ウエハへの接着力を良好にすることができる。
【0037】
アクリル系重合体(a1)は、反応性官能基を有するモノマーを含有することが好ましく、その含有量は、アクリル系重合体(a1)の全構成モノマー中の0.3〜50質量%含有されることが好ましく、1〜40質量%含有されることが好ましい。
反応性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基等を使用してよいが、後述する熱硬化性樹脂(b)としてエポキシ樹脂を用いる場合に、アクリル系重合体(a1)にエポキシ樹脂との適度な相溶性を付与することができることから、エポキシ基が好ましい。
【0038】
また、アクリル系重合体(a1)は、構成モノマーとして、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜10のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはアルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、その含有量は、全構成モノマー中の30〜99.7質量%であることが好ましく、35〜99質量%であることがより好ましい。
【0039】
なお、バインダー樹脂(a)は、保護膜形成用フィルムの全質量(固形分換算)に占める割合として、通常10〜80質量%、好ましくは15〜50質量%である。
【0040】
<熱硬化性成分>
熱硬化性成分は、硬化により硬質の保護膜を半導体チップ上に形成させるための成分であり、通常、熱硬化性樹脂(b)と、その熱硬化性樹脂(b)を熱硬化するための熱硬化剤(c)からなる。
<熱硬化性樹脂(b)>
熱硬化性樹脂(b)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。
【0041】
熱硬化性樹脂(b)に使用されるエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、たとえば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ樹脂の一部が不飽和炭化水素基を含む基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、たとえば、エポキシ基へアクリル酸を付加反応させることにより合成できる。あるいは、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物などが挙げられる。不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、具体的な例としてはビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられ、好ましくはアクリロイル基が挙げられる。
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有さないエポキシ樹脂と比較してアクリル系樹脂との相溶性が高い。このため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を含む保護膜形成用フィルムを用いることで、半導体チップの信頼性が向上する。
【0042】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、特に制限されないが、接着剤の硬化性や硬化後の強度や耐熱性の観点からは好ましくは300〜30000、さらに好ましくは400〜10000、特に好ましくは500〜3000である。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは100〜1000g/eqであり、より好ましくは300〜800g/eqである。
【0043】
<熱硬化剤(c)>
熱硬化剤(c)は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられ、特に好ましくはフェノール性水酸基が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
また、不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂の水酸基の一部を、不飽和炭化水素基を含む基で置換してなる化合物あるいは、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を含む基が直接結合した化合物などが挙げられる。不飽和炭化水素基は、上述した不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂にて例示した通りである。
【0044】
熱硬化剤の分子量は好ましくは60〜30000、より好ましくは70〜10000、さらに好ましくは80〜3000である。
保護膜形成用フィルムにおける熱硬化剤(c)の含有量は、熱硬化性樹脂(b)100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が上記下限値以上とすることで、保護膜形成用フィルムの硬化性が良好になる。
【0045】
保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性樹脂(b)と熱硬化剤(c)の合計(熱硬化性成分)は、バインダー樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部以下、より好ましくは40〜160質量部以下、さらに好ましくは70〜130質量部である。
【0046】
<硬化促進剤(d)>
保護膜形成用フィルムを形成するための保護膜形成用組成物には、硬化促進剤(d)が配合されてもよい。硬化促進剤(d)は、保護膜形成用フィルムの硬化速度を調整するために用いられる。好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0047】
硬化促進剤(d)は、熱硬化性成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の量で含まれる。硬化促進剤(d)を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着特性を有し、また、優れた保護性能を有することになる。
【0048】
<着色剤(e)>
保護膜形成用フィルムを形成するための保護膜形成用組成物には、着色剤(e)が配合されていてもよい。保護膜形成用フィルムは、半導体チップを機器に組み込んだ際、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽して、半導体チップの誤作動を防止することができるため、着色剤(e)を含有することが好ましい。また、着色剤(e)を含有することで、保護膜形成用フィルムを硬化して得た保護膜に、製品番号やマーク等を印字した際の文字の識別性を向上させることができる。すなわち、半導体チップの保護膜を形成した背面には、品番等が通常レーザーマーキング法により印字されるが、保護膜が着色剤(e)を含有することで、印字部分と、非印字部分のコントラスト差が大きくなり識別性が向上する。
【0049】
着色剤(e)としては、有機または無機の顔料又は染料が用いられる。染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの染料であっても用いることが可能である。また、顔料も、特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
これらの中では、電磁波や赤外線の遮蔽性が良好で、かつレーザーマーキング法による識別性をより向上させることが可能な黒色顔料がより好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体チップの信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤(e)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
着色剤(e)の配合量は、保護膜形成用フィルムの全質量(固形分換算)に占める割合として、好ましくは0.01〜25質量%、より好ましくは0.03〜15質量%である。
【0050】
<カップリング剤(f)>
無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤(f)を、保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性、密着性を向上させるために保護膜形成用組成物に配合してもよい。また、カップリング剤(f)を使用することで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0051】
カップリング剤(f)としては、上記バインダー樹脂(a)、熱硬化性樹脂(b)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。カップリング剤(f)としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0052】
カップリング剤(f)を用いる場合、カップリング剤は、バインダー樹脂(a)、熱硬化性樹脂(b)、及び硬化剤(c)の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。カップリング剤(f)の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0053】
<充填材(g)>
保護膜形成用組成物には、さらに、充填材(g)を配合し、保護膜形成用フィルムに充填材(g)を含有させてもよい。充填材(g)を配合することにより、保護膜に耐湿性、寸法安定性などを与えることが可能になる。また、保護膜形成用フィルムを硬化して得られる保護膜の強度を高め、耐擦過性を向上させたり、保護膜の表面にレーザーマーキングを施す際に、コントラストを高めたりすることができる。充填材としては、具体的には無機フィラー等が挙げられる。
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでは、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが特に好ましい。また、上記無機フィラーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上記の効果をより高めるためには、充填材(g)の含有量は、保護膜形成用フィルム全体に対して、通常45〜80質量%、好ましくは55〜70質量%である。
一方、充填材(g)の含有量がこのように比較的多い範囲にあると、保護膜形成用フィルムと粘着剤層との間での層間剥離は生じやすくなる傾向にある。これは、保護膜形成用フィルムと粘着剤層との界面において、充填材(g)と粘着剤層との接点の接着は、バインダー樹脂(a)と粘着剤層との接点の接着よりも弱いためと考えられる。したがって、この場合には粘着剤層と保護膜形成用フィルム間の層間剥離を防止する本発明の効果がいっそう発揮される。
【0054】
<架橋剤(h)>
保護膜形成用フィルムを得るための保護膜形成用組成物には、架橋剤(h)が配合されていてもよい。架橋剤(h)が配合されると、バインダー樹脂(a)の官能基が、架橋剤(h)を介して架橋することが可能になる。架橋剤(h)が配合されることで、保護膜形成用フィルムの初期接着力および凝集力を調節することが可能になる。架橋剤(h)としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられ、具体的には、粘着剤層で使用される架橋剤(B)として例示したものが挙げられる。
【0055】
イソシアネート系の架橋剤を用いる場合、アクリル系重合体(a1)等のバインダー樹脂(a)は、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤がイソシアネート基を有し、アクリル系重合体(a1)が水酸基を有すると、架橋剤とアクリル系重合体(a1)との反応が起こり、保護膜形成フィルムに架橋構造を簡便に導入することができる。
【0056】
架橋剤(h)を用いる場合、架橋剤(h)は、バインダー樹脂(a)100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部で用いられる。
【0057】
[剥離フィルム]
剥離フィルムとしては、上記剥離力比α/βを0.50以下とできる限り、従来公知の剥離フィルムを適宜使用可能である。剥離フィルムは、具体的には、特に限定されないが、剥離フィルム基材の一方の面に剥離剤層が形成されたものが好ましく、剥離剤層を構成する剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、あるいはアルキド樹脂系剥離剤、オレフィン樹脂系剥離剤、アクリル樹脂系剥離剤、長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤、ゴム系剥離剤などの非シリコーン系剥離剤が用いられるが、これらの中でシリコーン系剥離剤が好適である。
【0058】
剥離剤層は、剥離フィルム基材の一の面に、剥離剤および所望により硬化剤、希釈剤等からなる剥離剤溶液を塗布した後、乾燥し、硬化させることにより形成することができる。なお、塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0059】
シリコーン樹脂系剥離剤としては、溶剤型および無溶剤型のものがある。溶剤型シリコーン樹脂は、溶剤希釈して塗工液とするため、高分子量・高粘度のポリマーから低粘度の低分子量ポリマー(オリゴマー)まで、幅広く使用することができる。そのため、無溶剤型と比較して、剥離性の制御が容易であり、要求される性能(品質)に合わせた設計がし易い。また、シリコーン樹脂系剥離剤としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のものがある。付加反応型シリコーン樹脂は、反応性が高く生産性に優れ、縮合反応型と比較すると、製造後の剥離力の変化が小さい、硬化収縮が無い等のメリットがあるため、剥離剤層を構成する剥離剤として使用することが好ましい。
【0060】
付加反応型シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、従来の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤として慣用されているものを用いることができる。この付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば、分子中に官能基として、ビニル基等のアルケニル基、ヒドロシリル基などの求電子性基を有するものが、熱硬化が容易な付加反応型シリコーン樹脂として挙げられ、このような官能基を有するポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部または全部をフェニル基等の芳香族官能基に置換したものなどを用いることができる。
【0061】
このシリコーン樹脂系剥離剤には、必要に応じて、シリカ、シリコーンレジン、帯電防止剤、染料、顔料その他の添加剤を添加してもよい。
【0062】
塗工した剥離剤の塗膜を硬化させるには、塗工機のオーブンで加熱処理するか、加熱処理した後に紫外線照射を併用するか、いずれでもよいが、後者の方が基材フィルムの熱収縮しわの発生防止、シリコーンの硬化性、基材フィルムへの剥離剤の密着性の点で好ましい。
【0063】
なお、塗膜の硬化に紫外線照射を併用する場合は、剥離剤に光開始剤を添加することが望ましい。光開始剤としては特に制限は無く、紫外線や電子線の照射によりラジカルを発生するもので慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。この光開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケン類、α−ジケトン、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0064】
アルキド樹脂系剥離剤としては、一般に架橋構造を有するアルキド樹脂が用いられる。架橋構造を有するアルキド樹脂層の形成は、例えばアルキド樹脂、架橋剤および所望により硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層を加熱硬化させる方法を用いることができる。また、アルキド系樹脂は、長鎖アルキル変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂等の変性物であってもよい。
【0065】
オレフィン樹脂系剥離剤としては、結晶性オレフィン系樹脂が用いられる。この結晶性オレフィン系樹脂としては、ポリエチレンや結晶性ポリプロピレン系樹脂などが好適である。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック構造又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体や、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらの結晶性オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
アクリル系剥離剤としては、一般に架橋構造を有するアクリル系樹脂が用いられる。アクリル系樹脂は、長鎖アルキル変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等の変性物であってもよい。
【0067】
長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体などが用いられる。
【0068】
ゴム系剥離剤としては、例えば、天然ゴム系樹脂、およびブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム系樹脂などが用いられる。
【0069】
剥離剤層の厚さは、特に限定されないが、0.01〜1μmであることが好ましく、0.03〜0.5μmであることがより好ましい。
【0070】
剥離フィルム基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0071】
[保護膜形成用複合シートの具体的構成]
以下、保護膜形成用複合シートの具体的構成について詳細に説明する。
本発明では、保護膜形成用フィルムは、例えば、被着体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)と同一形状、又はウエハより大きい形状を有しており、好ましくは円形に形成される。粘着剤層は、例えば、保護膜形成用フィルムよりも一回り大きく形成され、粘着剤層の外周部には、保護膜形成用フィルムが積層されない領域(外周領域)がある。このように、粘着剤層が一回り大きい場合、粘着剤層の外周部は、後述するように、保護膜形成用複合シートがリングフレームに固定されるときに、リングフレームに貼付される領域になる。
なお、粘着剤層の外周部には、保護膜形成用フィルムを取り囲むように再剥離粘着剤層が設けられてもよい。この場合、保護膜形成用複合シートは、再剥離粘着剤層を介してリングフレームに固定されることになる。
【0072】
再剥離粘着剤層は、公知の再剥離型粘着剤で形成される。再剥離型粘着剤は、リングフレームに貼付された後、リングフレームから外す際にリングフレーム上に糊残りが発生しないものであれば特に制限はない。具体的には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が使用可能である。また、再剥離粘着剤層は、通常環状であるが、C字形状等の環状の一部が欠けた形状であってもよい。再剥離粘着剤層は、単層でもよいし、複数層からなってもよい。
【0073】
また、本発明では、粘着剤層が複数層から構成される場合、基材側の粘着剤層が、保護膜形成用フィルムに接する粘着剤層よりも一回り大きく形成されることが好ましい。この場合、基材側の粘着剤層の外周部が、リングフレームに貼付される領域になる。
【0074】
[保護膜形成用複合シートの使用方法]
本発明の保護膜形成用複合シートは例えば以下のように使用されるものである。
本発明では、まず、保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを剥がし、保護膜形成用複合シートの外周部をリングフレームに貼付する。ここで、リングフレームに貼付されるのは、再剥離粘着剤層が設けられる場合には、再剥離粘着剤層であるが、再剥離粘着剤層がない場合には、粘着剤層が直接リングフレームに貼付される。
その後、リングフレームに固定された保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムの中央部分に、被着体であるウエハを貼付する。次いで、ウエハと保護膜形成用フィルムの積層体は一体的にダイシングされ、保護膜形成用フィルム付きの半導体チップとして個別化される。個別化された半導体チップは、コレット等の汎用手段によりピックアップされる。
ここで、保護膜形成用フィルムは、熱硬化されることにより、保護膜となるものであるが、通常、保護膜形成用フィルムは、ピックアップされた後に熱硬化され、その熱硬化により裏面に保護膜を有する半導体チップ(保護膜付きチップ)を得ることができる。ただし、本発明では、保護膜形成用フィルムは、ピックアップされる前に熱硬化されるものであってもよい。
【0075】
以上のようにして得られた保護膜付きチップは、フェースダウン方式で基板等の上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、保護膜付きチップは、ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することによっても、半導体装置を製造することもできる。
【0076】
[保護膜形成用複合シートの具体例]
次に、図2〜7を用いて、保護膜形成用複合シートの具体例、及びその使用方法を説明する。
図2では、基材11の上に粘着剤層12が設けられるとともに、これら基材11及び粘着剤層12からなる粘着シート16を分断するように環状の切れ込み17が入れられ、切り込み17の内側が本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する。切り込み17の外側はカス部となる。保護膜形成用複合シート10の粘着剤層12の上には、粘着剤層12より一回り小さい保護膜形成用フィルム13が設けられ、粘着剤層12の外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となる。保護膜形成用フィルム13の上に設けられた剥離シート14は、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13の両方に貼付される。
この保護膜形成用複合シート10は、剥離フィルム14が剥離され、剥離フィルム14が上記カス部とともに除去された後、図3に示すように、リングフレーム18に粘着剤層12の外周部が貼付され、これにより、リングフレーム18に固定される。リングフレーム18に固定された保護膜形成用複合シート10は、その保護膜形成用フィルム13にウエハ19が貼付され、その後、上記したダイシング工程、ピックアップ工程が行われるものである。
【0077】
図4に示す保護膜形成用複合シート10では、保護膜形成用フィルム13が設けられない粘着剤層12の上面に、再剥離粘着剤層15が積層される点で図1の構成と異なり、剥離フィルム14は、保護膜形成用フィルム13及び再剥離粘着剤層15に貼付されている。また、切り込み17は、基材11、粘着剤層12に加えて再剥離粘着剤層15も分断しており、本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する切り込み17の内側では、再剥離粘着剤層15は、保護膜形成用フィルム13を取り囲む円環状となる。この保護膜形成用複合シート10では、図5に示すように、再剥離粘着剤層15がリングフレーム18に貼付されることにより、リングフレーム18に固定される。
【0078】
図6では、基材11の上に第1の粘着剤層12Aが設けられるとともに、これら基材11及び第1の粘着剤層12Aを分断するように環状の切れ込み17が入れられ、切り込み17の内側が本発明の保護膜形成用複合シート10を構成する。切り込み17の外側はカス部となる。保護膜形成用複合シート10の第1の粘着剤層12Aの上には、第1の粘着剤層12Aより一回り小さい第2の粘着剤層12B,保護膜形成用フィルム13がこの順に設けられ、第1の粘着剤層12Aの外周部は保護膜形成用フィルムが設けられない領域となる。保護膜形成用フィルム13の上に設けられた剥離シート14は、保護膜形成用フィルム13及び第1の粘着剤層12Aの両方に貼付される。
この保護膜形成用複合シート10は、図7に示すように、リングフレーム18に第1の粘着剤層12Aの外周部が貼付され、リングフレーム18に固定されるものである。
【0079】
[保護膜形成用複合シートの製造方法]
以下、保護膜形成用複合シートの製造方法を説明する。
<保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体の作製>
上記保護膜形成用フィルムを構成する各成分を適宜の割合で、適当な溶媒中で又は無溶媒で混合してなる保護膜形成用組成物を、剥離フィルム上に塗布乾燥し、剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成する。次いで、この保護膜形成用フィルムにさらに剥離フィルムを貼付して、剥離フィルム/保護膜形成用フィルム/剥離フィルムの三層構造からなる保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体を得る。保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体は、適宜巻き取り巻収体として保管、運搬等してもよい。なお、以上の工程においては、剥離フィルムを貼付する工程は省略し、保護膜形成用フィルムを露出したままとしてもよい。
【0080】
<粘着シートの作製>
粘着剤層を構成する各成分を適宜の割合で、適当な溶媒中で又は無溶媒で混合してなる粘着剤組成物を、剥離フィルム上に塗布し乾燥することで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成し、その後、粘着剤層に基材を貼り合わせることで、剥離フィルム付き粘着シートを得る。剥離フィルム付き粘着シートは、適宜巻き取り巻収体として保管、運搬等してもよい。
また、粘着剤組成物を、剥離フィルム上に塗布する代わりに、直接基材に塗布して粘着剤層を形成し、その後、粘着剤層にさらに剥離フィルムを貼り合せて、剥離フィルム付き粘着シートとしてもよい。この場合には、剥離フィルムを貼り合わせる工程は省略して粘着剤層は露出したままでもよい。
【0081】
<貼り合わせ>
その後、保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体から必要に応じて一方の剥離フィルムを剥離するとともに、剥離フィルム付粘着シートから必要に応じて剥離シートを剥離し、粘着シートの粘着剤層面に、保護膜形成用フィルムを貼り合わせて、保護膜形成用複合シートを作製することができる。
【0082】
<型抜き加工>
上記保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体は、必要に応じて型抜き加工が施された後に、粘着シートに貼り合わされてもよい。
型抜き加工は、上記保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体を、一方の剥離フィルムと、保護膜形成用フィルムを切断するように、ウエハと同サイズもしくは一回り大きい例えば円形にハーフカットし、その後、一方の剥離フィルムの全てと保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形よりも外に存在するものを除去することで行われる。これにより、剥離フィルム上に、円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが形成されてなる、保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを得ることができる。
ハーフカットは、通常、先に除去すべき一方の剥離フィルムの側から刃を入れる。また、通常、保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムは、長尺状のものであって、円形の保護膜形成用フィルムが長手方向に多数設けられ、例えば、巻き取られて巻収体とされる。
この保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを、保護形成用フィルム側が粘着剤層に接するように、粘着シートに貼り合わせ、その後切り込みを入れることで、図2に示す保護膜形成用複合シートを得ることができる。
【0083】
<再剥離粘着剤層の形成>
まず、上記した保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体と同様の方法で、剥離フィルム/再剥離粘着剤層/剥離フィルムの三層構造からなる再剥離粘着剤層の剥離フィルム上担持体を作製する。
この再剥離粘着剤層の剥離フィルム上担持体は、一方の剥離フィルムと再剥離粘着剤層とを切断するように、ウエハよりも一回り大きい例えば円形のハーフカットを施し、その後、ハーフカットを施した円形の再剥離粘着剤層と、工程用剥離フィルムの全てを除去する。これにより、円形部分が切り抜かれた形状を有する再剥離粘着剤層が、剥離フィルムの一方の面に積層されてなる、再剥離粘着剤層付き剥離フィルムを得ることができる。
この再剥離粘着剤層付き剥離フィルムは、上記の剥離フィルム上に、円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが形成されてなる保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムに貼り合わせ、その後、例えば再剥離粘着剤層側の剥離フィルムを剥がすことで、一方の面に、保護膜形成用フィルムと、その外側に配置された円環状の再剥離粘着剤層とを有する剥離フィルムを得ることができる。この剥離フィルムは、再剥離粘着剤層と保護膜形成用フィルムが粘着剤層に接するように、粘着シートに貼り合わせ、その後切り込みを入れることで、例えば、図4に示す保護膜形成用複合シートを得ることができる。
【0084】
なお、粘着剤層を2層以上設ける場合には、2層目以降の粘着剤層は、上記のように作製した1層目の粘着剤層の上に積層してもよいが、保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体を作製する際に、保護膜形成用フィルムの上に積層してもよい。この場合の2層目以降の粘着剤層の積層方法は、例えば粘着剤組成物を保護膜形成用フィルムに塗布し、乾燥することにより行ってもよいが、粘着剤層と保護膜形成用フィルムのピックアップの際の剥離性を考慮した場合には、剥離フィルムの上に形成した粘着剤層を転写することにより行うことが好ましい。なお、保護膜形成用フィルム上に積層された粘着剤層は、型抜き加工で保護膜形成用フィルムとともに、型抜きされてもよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0086】
本発明における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
<剥離力最大値α>
保護膜形成用複合シートサンプルを巾25mm×長さ180mmに切り取り、基材側全面を両面テープでアクリル板(巾70mm×長さ150mm×厚さ2mm)に固定し、剥離フィルムを剥離する時の荷重を測定することで剥離力とした。条件は、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minとした。測定長さは100mmとし、測定の最初10mmと最後10mmは有効値から除外した。測定には、万能引張試験機(オリエンテック社製、装置名「TENSILON UTM−4−100」)を用いた。
得られた測定値のうち最大のものを保護膜形成用フィルムと剥離フィルムの間の剥離力最大値αとした。
【0087】
<剥離力最小値β、剥離力最大値γ>
保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムが形成されている部分を巾25mm×長さ180mmに切り取り、剥離フィルムを剥離して、保護膜形成用フィルム側をシリコンウエハ[直径:15.24cm(6インチ)、厚み:700μm]に貼付し、粘着シートを保護膜形成用フィルムから剥離する時の荷重を測定することで剥離力とした。条件は、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minとした。測定長さは100mmとし、測定の最初10mmと最後10mmは有効値から除外した。得られた測定値のうち最小のものを粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最小値βとし、最大のものを剥離力最大値γとした。
【0088】
<剥離力比α/β>
上記で得られた剥離力最大値α及び剥離力最小値βを用いて、計算式[剥離力比α/β=剥離力最大値α/剥離力最小値β]から剥離力比α/βを算出した。
【0089】
<剥離力最大値γ’>
保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムが形成されている部分を巾25mm×長さ180mmに切り取り、剥離フィルムを剥離して、保護膜形成用フィルム側をシリコンウエハ[直径:15.24cm(6インチ)、厚み:700μm]に貼付したものを130℃2時間加熱して保護膜形成用フィルムを硬化させた。その後、粘着シートを保護膜形成用フィルムから剥離する時の荷重を測定することで剥離力とした。条件は、剥離角度180度、測定温度23℃、引張速度300mm/minとした。測定長さは100mmとし、測定の最初10mmと最後10mmは有効値から除外した。得られた測定値のうち最大のものを粘着シートと保護膜形成用フィルムの間の剥離力最大値γ’とした。
【0090】
<保護膜形成用複合シート貼付試験>
リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて、各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後、ウエハ[直径:20.32cm(8インチ)、厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した。その際の保護膜形成用複合シートの状況を下記の基準OKおよびNGで目視評価した。
OK・・・(試験を10シート行った時に粘着シートからの保護膜形成用フィルムの剥がれまたは浮きが見られない)
NG・・・(試験を10シート行った時に粘着シートからの保護膜形成用フィルムの剥がれまたは浮きが1シート以上発生する)
【0091】
<ピックアップ試験>
[加熱硬化前]
リンテック株式会社製テープマウンターRAD2700を用いて、各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後、シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ)、厚み:150μm]およびリングフレームに貼付した後、ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ、チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は、10シートに対して行った。
<ピックアップ試験>
[加熱硬化後]
リンテック社製テープマウンターRAD2700を用いて、各保護膜形成用複合シートを剥離フィルムを剥がした後、シリコンウエハ[直径:20.32cm(8インチ)、厚み:150μm]およびリングフレームに貼付したものを130℃2時間加熱して保護膜形成用フィルムを硬化させた。その後、ダイシング(チップサイズ5mm×5mm)した。粘着シート側よりニードルで突き上げ、チップ欠け・保護膜形成用フィルム剥がれの状況を目視評価した。試験は、10シートに対して行った。
【0092】
以上の加熱硬化前、加熱硬化後のピックアップ試験は、ウエハ欠けやウエハからの保護膜形成用フィルムの剥がれが見られたシートの数で評価した。
A・・・加熱硬化前、加熱硬化後のピックアップ試験のいずれでも、ウエハ欠け、フィルム剥がれが見られたシートがない。
B1・・・加熱硬化前のピックアップ試験でウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートはなかったが、加熱硬化後の試験では、ウエハ欠けやウエハからのフィルム剥がれが見られたシートが1または2シートあった。
B2・・・加熱硬化前のピックアップ試験でウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートはなかったが、加熱硬化後の試験では、ウエハ欠けやウエハからのフィルム剥がれが見られたシートが3シート以上あった。
C1・・・加熱硬化前のピックアップ試験では、ウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートが1又は2シートあったが、加熱硬化後のピックアップ試験ではウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートはなかった。
C2・・・加熱硬化前のピックアップ試験では、ウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートが3シート以上あったが、加熱硬化後のピックアップ試験ではウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートはなかった。
D・・・加熱硬化前、加熱硬化後のピックアップ試験のうち、いずれか一方では、ウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートが1シート又は2シートあり、他方ではウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートが1シート以上あった。
F・・・加熱硬化前、加熱硬化後のピックアップ試験のいずれでも、ウエハ欠けやフィルム剥がれが見られたシートが3シート以上あった。
【0093】
実施例1
[保護膜形成用組成物の調整]
以下の組成(質量比)のメチルエチルケトン溶液(固形濃度50質量%)を調整し、保護膜形成用組成物とした。
バインダー樹脂(a)/熱硬化性樹脂(b)/熱硬化剤(c)/硬化促進剤(d)/着色剤(e)/カップリング剤(f)/充填材(g)=17/17/0.3/0.3/2/0.4/63
バインダー樹脂(a):モノマーとしてブチルアクリレートを55質量%、メチルアクリレートを10質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレートを15質量%、グリシジルメタクリレートを20質量%含むアクリル系重合体(a1)(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度−28℃)
熱硬化性樹脂(b):液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180−200)60質量%、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量800−900)10質量%、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量274−286)30質量%の混合エポキシ樹脂
熱硬化剤(c):ジシアンアミド(旭電化製 アデカハ−ドナー3636AS)
硬化促進剤(d):2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール(四国化成工業(株)製 キュアゾール2PHZ)
着色剤(e):カーボンブラック(三菱化学社製 #MA650、平均粒径28nm)
カップリング剤(f):γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−403 メトキシ当量12.7mmol/g、分子量236.3)
充填材(g):平均粒径3μmの不定形シリカフィラー
【0094】
[保護膜形成用フィルムの作製]
まず、剥離フィルム(1)(SP−PET381031、リンテック社製、38μm)に、保護膜形成用組成物を、乾燥後の厚さが25μmとなるようにナイフコーターで塗工し、その後乾燥して保護膜形成用フィルムを作製した。次いで、保護膜形成用フィルムに、剥離フィルム(2)(SP−PET381130、リンテック社製、38μm)を積層し、保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体として巻き取った。得られた保護膜形成用フィルムの剥離フィルム上担持体の巻収体は、300mmの幅に裁断したものであった。
上記で作成した巻収体の幅方向における中央に、剥離フィルム(2)と保護膜形成用フィルムを切断するように、直径220mmの円形のハーフカットを連続的に施した。その後、剥離フィルム(2)の全て及び保護膜形成用フィルムのうちハーフカットを施した円形の外に存在するものを除去した。これにより、剥離フィルム(1)上に、円形でかつ露出している保護膜形成用フィルムが多数形成された、保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムを得た。
【0095】
[粘着剤組成物の調整]
以下の組成のメチルエチルケトン溶液(固形濃度30質量%)を調整し、粘着剤組成物とした。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)=100/10(質量比)
アクリル系重合体(A):モノマーとしてブチルアクリレートを40質量%、2−エチルヘキシルアクリレートを55質量%、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを5質量%含むアクリルポリマー(重量平均分子量:60万、ガラス転移温度−60℃)
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(タケネートD110N、三井化学株式会社製)
【0096】
[粘着シートの作製]
剥離フィルム(3)(SP−PET381031、リンテック社製、38μm)上に粘着剤組成物をナイフコーターで塗工し、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布乾燥した。次に、乾燥後の粘着剤層に、コロナ処理を施したポリプロピレンフィルム(三菱樹脂株式会社製、80μm)からなる基材を積層し、剥離フィルム付き粘着シートを作製した。得られた剥離フィルム付き粘着シートは、巻き取り、かつ300mmの幅に裁断して巻収体とした。
次いで、剥離フィルム付き粘着シートから剥離フィルム(3)を除去して得た粘着シートを、上記で得られた保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムの保護膜形成用フィルム側に貼り合わせた。その後、その重ねあわせた積層体に、内径270mm、外径290mmの環状の切り込みを入れ、図2に示す保護膜形成用複合シートを得た。
【0097】
実施例2
保護膜形成用組成物が塗工される剥離フィルム(1)を、剥離フィルム(4)(SP−PET381130、リンテック社製、38μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
【0098】
実施例3
保護膜形成用組成物が塗工される剥離フィルム(1)を、剥離フィルム(5)(SP−PET382150、リンテック社製、38μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
【0099】
実施例4
粘着剤組成物を以下の組成に変更した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)=100/5(質量比)
アクリル系重合体(A):モノマーとしてブチルアクリレートを69質量%、メチルアクリレートを30質量%、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを1質量%含むアクリルポリマー(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度−40℃)
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、BHS8515)
【0100】
実施例5
粘着剤組成物を以下の組成に変更した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)=100/0.5(質量比)
アクリル系重合体(A):モノマーとしてメチルアクリレートを85質量%、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを15質量%含むアクリルポリマー(重量平均分子量:37万、ガラス転移温度6℃)
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(トーヨーケム製、BHS8515)
【0101】
実施例6
保護膜形成用フィルム付き剥離フィルムの剥離フィルム上において、円形の保護膜形成用フィルムの外側に、内径230mmの再剥離粘着剤層を形成した。再剥離粘着剤層はスチレン・ブタジエン共重合ゴム系粘着剤(旭化成ケミカルズ社製、25μm)の単層品とした。
また、粘着剤組成物を以下の組成に変更し、粘着シートが剥離フィルム付きの保護形成用フィルムに重ねられる前に、剥離フィルム付き粘着シートの粘着剤層に対して、紫外線照射(照度220mW/cm2、光量200mJ/cm2)を行った以外は実施例1と同様にして、図4に示される保護膜形成用複合シートを得た。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)/光重合開始剤=100/0.5/3(質量比)
アクリル系重合体(A):2−エチルヘキシルアクリレート40質量%、酢酸ビニル40質量%、及び2−ヒドロキシルエチルアクリレート20質量%から重合した重合体(重量平均分子量:40万、ガラス転移温度−30℃)が側鎖に有する水酸基に、その水酸基の数を100molとした場合の80molに相当する分子数の2−イソシアナトエチルメタクリレートを付加したアクリル系重合体
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、BHS8515)
光重合開始剤:BASF社製、イルガキュア184
【0102】
実施例7
剥離フィルム(1)に塗工、乾燥して作製した保護膜形成用フィルム上に、厚さが10μmの第2の粘着剤層を積層し、ハーフカットをする際に第2の粘着剤層も保護膜形成用フィルムとともに円形に型抜きした以外は、実施例1と同様に実施し、図6に示す保護膜形成用複合シートを得た。なお第2の粘着剤層を構成する粘着剤の組成は以下の通りであった。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)=100/30(質量比)
アクリル系重合体(A):モノマーとしてブチルアクリレートを85質量%、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを15質量%含むアクリルポリマー(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度−50℃)
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(タケネートD110N、三井化学株式会社製)
【0103】
比較例1
剥離フィルム(1)を剥離フィルム(8)(SP−PET38T124−2、リンテック株式会社製、38μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
【0104】
比較例2
剥離フィルム(1)を剥離フィルム(9)(SP−PET38AL−5、リンテック株式会社製、38μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
【0105】
比較例3
粘着剤組成物を以下の組成に変更し、粘着シートが剥離フィルム付きの保護形成用フィルムに重ねられる前に、剥離フィルム付き粘着シートの粘着剤層に対して、紫外線照射(照度220mW/cm2、光量200mJ/cm2)を行った以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)/光重合開始剤=100/0.5/3(質量比)
アクリル系重合体(A):2−エチルヘキシルアクリレート80質量%、及び2−ヒドロキシルエチルアクリレート20質量%から重合した重合体が側鎖に有する水酸基に、その水酸基の数を100molとした場合の80molに相当する分子数の2−イソシアナトエチルメタクリレートを付加したアクリル系重合体
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、BHS8515)
光重合開始剤:BASF社製、イルガキュア184
【0106】
比較例4
粘着剤組成物を以下の組成に変更した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを得た。
アクリル系重合体(A)/架橋剤(B)=100/0.1
アクリル系重合体(A):モノマーとしてブチルアクリレートを74質量%、メチルアクリレートを25質量%、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを1質量%含むアクリルポリマー
架橋剤(B):芳香族性ポリイソシアネート(トーヨーケム株式会社製、BHS8515)
【0107】
【表1】
【0108】
以上のように、実施例1〜7では、剥離力最小値βが70mN/25mm以上、剥離力比α/βが0.50以下であることにより、剥離フィルムを保護膜形成用フィルムから剥がした時に、保護膜形成用フィルムと粘着剤層の間に層間剥離が生じなかったため、貼付試験の結果が良好となった。また、実施例1〜7では、硬化前の剥離力最大値γが2000mN/25mm以下であったため、加熱硬化前にチップをピックアップした際のピックアップ試験の結果が全て良好となった。同様に、実施例1〜4、6〜7では、硬化後の剥離力最大値γ’も2000mN/25mm以下であったため、加熱硬化後にチップをピックアップした際のピックアップ試験の結果も良好となった。
一方で、比較例1〜3では、剥離力比α/βが0.50以上であっため、剥離フィルムを保護膜形成用フィルムから剥がした時に、保護膜形成用フィルムと粘着剤層の間に層間剥離が生じ、貼付試験の結果が良好でなかった。また、比較例4では、硬化前及び硬化後の剥離力最大値γ、γ’の両方が2000mN/25mmより大きかったため、ピックアップ試験で良好な結果が得られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7