特許第5774803号(P5774803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774803瓶針キャップおよび該瓶針キャップを用いた輸液セットの前処置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5774803
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】瓶針キャップおよび該瓶針キャップを用いた輸液セットの前処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/162 20060101AFI20150820BHJP
   A61M 5/38 20060101ALI20150820BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20150820BHJP
   A61J 1/14 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   A61M5/162 500V
   A61M5/38 500
   A61M5/14 582
   A61J1/00 390Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-526078(P2015-526078)
(86)(22)【出願日】2015年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2015053570
【審査請求日】2015年5月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】福岡 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川生 剛
(72)【発明者】
【氏名】大澤 一幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 伊万里
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−108908(JP,A)
【文献】 特開2003−320029(JP,A)
【文献】 特開2014−217555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/162
A61J 1/14
A61M 5/14
A61M 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓶針の挿入口からキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設したことを特徴とする瓶針キャップ。
【請求項2】
前記瓶針の挿入口の外側に該挿入口を閉鎖するための蓋を配設したことを特徴とする、請求項1に記載の瓶針キャップ。
【請求項3】
前記瓶針キャップが、瓶針に配設された鍔への掛止部を備えたクリップを有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の瓶針キャップ。
【請求項4】
前記瓶針キャップが、輸液チューブに係留するためのフックを有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の瓶針キャップ。
【請求項5】
前記フックが、C字型、O字型またはU字型の形状を有していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の瓶針キャップ。
【請求項6】
前記フックを、主管側の最上流部に備えられた瓶針に接続する輸液チューブに前記キャップを係留した時に、該キャップが横向きまたは瓶針の挿入口が斜め上方向きになるように該キャップに配設せしめたことを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の瓶針キャップ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の瓶針キャップを、輸液セットの分岐管または三方活栓の側管側コネクタに連結した輸液チューブの他端に接続される瓶針に装着せしめ、さらに、該輸液セットの主管側の最下流部に備えられた点滴針接続用コネクタに、点滴針接続用コネクタの挿入口からキャップ内に挿入された点滴針接続用コネクタの先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した点滴針接続用コネクタ用キャップを装着せしめたことを特徴とする、輸液セット。
【請求項8】
請求項7に記載の輸液セットをプライミング及びバックプライミングにより前処理する方法であって、瓶針キャップおよび点滴針接続用コネクタ用キャップの開口部に配設した蓋、輸液セットのクランプ、三方活栓のコックおよびクレンメが全て開放モードである前記輸液セットの主管側最上流部に備えられた瓶針を、生理食塩水が封入された輸液容器のゴム栓に刺針するという1工程で、輸液セットの内腔に生理食塩水を流入せしめ、輸液セット内の空気を押し出して瓶針キャップおよび点滴針接続用コネクタ用キャップに配設した疎水性フィルターから排気し、内腔を生理食塩水で満たすことで、プライミング及びバックプライミングを完了させることを特徴とする、該輸液セットのプライミング及びバックプライミングによる前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器への初回の刺針のみで汚染のないプライミングおよびバックプライミング操作を可能とする瓶針キャップ、該瓶針キャップを用いた輸液セット及び該輸液セットのプライミングおよびバックプライミングによる前処置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、治療用医薬を輸液として調合し、静脈内に投与する治療が行われている。治療用医薬として抗癌剤や栄養剤などを用いる輸液は、一般に、必要とされる投与量が多い。また、複数の医薬を組み合わせる場合は各輸液を順に投与しなければならず、総投与量がとても多くなる。一方で、輸液投与が続くことで血中薬剤濃度の急激な上昇が起こると、アナフィラキシーショックや不整脈などの副作用が生じる危険性が高まるため、医師および看護師は、患者の状態を確認しながら慎重に輸液の投与量を調節し続けることが求められている。しかし、注射により量を調節しながら投与することは難しく、投与時間並びに投与回数が増えると、患者の肉体的苦痛が高まり、負担が増す。そこで、患者の静脈内に、輸液を簡便かつ連続的に投与するための手法として、点滴静脈注射が広く採用されている。点滴静脈注射においては、輸液が封入された容器と患者の血管に挿入した点滴針とを接続するための医療器具として、輸液セットが利用され、従来より、輸液が封入された容器と点滴針との間を軟質チューブで連結し、当該軟質チューブの途中に点滴筒とクレンメを用いた機構とを備えたものが汎用されている。
【0003】
このような輸液セットは、点滴静脈注射を開始するまえに、予め生理食塩水などの輸液を通し、軟質チューブ中の空気を予め十分に除去するプライミング操作を行い、患者血管中にそれら空気に由来する気泡が進入しないよう十分配慮する必要がある。しかし、従来の点滴セットは、注意を払っていても、プライミング時に輸液が、輸液セット下流側端の針の先端から漏出し、病室及び病棟が汚染される事故が発生する危険性があり、それら事故を防止するための工夫が求められていた。
【0004】
そこで、点滴筒上流を分岐し、切り替え可能なプライミング流路を2つ設け、点滴筒の下方にクランプを配設し、一方のプライミング流路を用いて、初回プライミングを行い、その後プライミング流路を切り替え、点滴筒の下方のクランプを閉鎖後、もう一方のプライミング流路を用いて、残りのプライミング流路のプライミングを行い、輸液が外界に漏出する可能性を低減するように工夫した輸液セットが提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、上記提案された輸液セットは、初回プライミング時に、汚染の危険性が相対的に低いとはいえ、危険性薬剤を下方から漏出させる構造となっており、危険性薬剤の外界への漏出を十分に防ぐ点においては、工夫が求められるものであった。また、上記提案された輸液セットは、輸液セットの末端部が開放されている構造を有することから、当該末端部から排水されてくる生理食塩水などのプライミング時に用いる溶液の処理に配慮する必要があり、また、複数の作業工程からなるプライミングを少なくとも2回繰り返す必要があるなど、操作が煩雑なものとなっていた。そして、上記提案された輸液セットは、排水処理に十分配慮していても、排水されてくる生理食塩水が、意図せず、輸液セット、スタンド、点滴静脈注射に使用する機器や、病室の床にこぼれることにより、病室内の汚染や機器の障害が発生する危険性があり、さらなる工夫が求められるものであった。
【0006】
また、複数の抗癌剤を輸液にて投与する場合には、側管を多数配設したものを準備する必要があり、さらに、投与順序を守るとともに、配合禁忌の溶液の混合を避ける特別な配慮が求められる。しかし、輸液に用いる容器は、外観が類似していることが多い。そのため、容器に挿す瓶針の順番の取り違えや異なる抗癌剤溶液の輸液ライン中での混合、及び投与順序の間違いなどの事故が生じ易い。そこで、輸液調製時に各容器にラベルを貼付したり注意書きを行う等によって投与手順を明示し、各容器を識別可能としたり、構成が様々に異なる輸液セット毎に標準的な使用手順を定めて事前に周知し教育するなど、ヒューマンエラーによる事故を防止するための努力がされているが、依然として操作者における誤認が生じ得る現状があり、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/021390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、輸液セットの使用前に行うプライミングおよびバックプライミング作業が、より単純な工程で、容易、簡便かつ確実に実施できるとともに、プライミングおよびバックプライミングの作業中および作業後の輸液セットからの意図せぬ液の漏出による病室内汚染や機器障害が生じるリスクを極力低減した、新たな瓶針キャップと、それを用いた輸液セット、および、該輸液セットのプライミングおよびバックプライミングの前処理方法を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、輸液セットに複数備えられた瓶針の使用順番の取り違えという人的ミスに起因する、輸液投与順序の誤りや輸液チューブ内での異なる薬剤を含む輸液の混合などの事故発生を防ぎ、標準的な使用手順を容易に定めることがなものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、瓶針の挿入口からキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設したことを特徴とする瓶針キャップである。
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の第2の手段は、前記瓶針の挿入口の外側に該挿入口を閉鎖するための蓋を配設したことを特徴とする、本発明の第1の手段の瓶針キャップである。
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の第3の手段は、前記瓶針キャップが、瓶針に配設された鍔への掛止部を備えたクリップを有していることを特徴とする、本発明の第1または第2の手段の瓶針キャップである。
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の第4の手段は、前記瓶針キャップが、輸液チューブに係留するためのフックを有していることを特徴とする、本発明の第1〜第3のいずれか1に記載の手段の瓶針キャップである。
【0013】
上記の課題を解決するための本発明の第5の手段は、前記フックが、C字型、O字型またはU字型の形状を有していることを特徴とする、本発明の第1〜第4のいずれか1に記載の手段の瓶針キャップである。
【0014】
上記の課題を解決するための本発明の第6の手段は、前記フックを、主管側の最上流部に備えられた瓶針に接続する輸液チューブに前記キャップを係留した時に、該キャップが横向きまたは瓶針の挿入口が斜め上方向きになるように該キャップに配設せしめたことを特徴とする、本発明の第4または第5に記載の手段の瓶針キャップである。
【0015】
上記の課題を解決するための本発明の第7の手段は、本発明の第1〜第6のいずれか1に記載の手段の瓶針キャップを、輸液セットの分岐管または三方活栓の側管側コネクタに連結した輸液チューブの他端に接続される瓶針に装着せしめ、さらに、該輸液セットの主管側の最下流部に備えられた点滴針接続用コネクタに、点滴針接続用コネクタの挿入口からキャップ内に挿入された点滴針接続用コネクタの先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した点滴針接続用コネクタ用キャップを装着せしめたことを特徴とする、輸液セットである。
【0016】
上記の課題を解決するための本発明の第8の手段は、本発明の第7の手段に記載の輸液セットをプライミング及びバックプライミングにより前処理する方法であって、瓶針キャップおよび点滴針接続用コネクタ用キャップの開口部に配設した蓋、輸液セットのクランプ、三方活栓のコックおよびクレンメが全て開放モードである前記輸液セットの主管側最上流部に備えられた瓶針を、生理食塩水が封入された輸液容器のゴム栓に刺針するという1工程で、輸液セットの内腔に生理食塩水を流入せしめ、輸液セット内の空気を押し出して瓶針キャップおよび点滴針接続用コネクタ用キャップに配設した疎水性フィルターから排気し、内腔を生理食塩水で満たすことで、プライミング及びバックプライミングを完了させることを特徴とする、該輸液セットのプライミング及びバックプライミングによる前処理方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の瓶針キャップは、それを輸液セットに用いることで、点滴スタンドに吊した生理食塩水が封入された輸液容器に、該輸液セットの最上流部にある瓶針を差し込むという1工程のみで、輸液セットの内部にある空気が主管側のみならず側管側も含めて速やかに排出され、同時に生理食塩水で満たされることにより、輸液セットのプライミング及びバックプライミングの作業が極めて容易かつ速やかに完了するという効果が得られる。
【0018】
そして、本発明の瓶針キャップからは、生理食塩水が一切排出されず、汚染や機器障害を引き起こさない。さらに、該キャップに、瓶針に配設された鍔への掛止部を備えたクリップを設けることで、プライミング及びバックプライミングの作業中に輸液容器を手で押圧しても、キャップが外れない。また、プライミング及びバックプライミング後は、キャップに備えられた蓋を閉じるので、キャップ内部の疎水性フィルター周辺にある生理食塩水がキャップの挿入口からこぼれ出ることがない。そのため、生理食塩水の使用量が最小限に留められ十分な残量が保持されているので、輸液容器の交換をすることなく、その後の治療においても有効に使用することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の瓶針キャップを、輸液チューブに係留するためのC字型、U字型又はO字型のフックを有するものとし、該フックを主管ルートの輸液チューブに係留させることで、輸液セットの重心を主管のチューブ側に移動させ、プライミング及びバックプライミング時や、輸液投与時における輸液スタンドの安定性を高めることができため、点滴針に異常な力がかかることがなく、液漏れや点滴針が外れるような事故が生じるリスクが大きく低減される。
【0020】
そして、本発明の瓶針キャップを用いることで、輸液セットの使用手順や輸液の投与順番に連動させて、主管ルートの輸液チューブに順番に係留させることが可能となるため、側管ルートの識別が容易となり、輸液セットの使用に関する作業手順の標準化が円滑に進み、薬剤師、医師または看護師の誤認などの人的ミスから生じる誤投与などの医療事故を防止する効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の瓶針キャップの構成と、該瓶針キャップを用いて、輸液セットのバックプライミングによる前処理を行う手順を説明する図である。(a)は瓶針2に、瓶針キャップ1が装着される前の状態を説明する図である。(b)は、瓶針2に、瓶針装着するためのキャップ1を装着した状態を説明する図である。(c)は、バックプライミングを開始し、生理食塩水5が輸液チューブ4、瓶針2および瓶針キャップ6内に流入した状態を説明する図である。(d)は、バックプライミング完了後、該キャップの蓋1dを閉めた状態を説明する図である。(e)は、バックプライミング完了後、蓋1dを閉めた状態のキャップ1を、瓶針2から外す時の方法を説明する図である。
図2】本発明のフックを有している瓶針キャップ1の構成と、該キャップを瓶針2に装着し、それを輸液チューブ4に固定する方法を説明する図である。(a)は、C字型フック1gを有する瓶針キャップを瓶針に装着する前の状態を説明する図である。(b)は、O字型フック1hを有する瓶針キャップを説明する図である。(c)は、U字型フック1iを有する瓶針キャップを説明する図である。(d)は、C字型フック1gを有するキャップを瓶針2に装着した後に、輸液チューブに固定する手順を説明する図である。
図3】本発明の、瓶針2に配設された鍔2aへの掛止部1eを備えたクリップ1fを有している瓶針キャップ1の構造と、該瓶針キャップを瓶針2に装着する方法を説明する図である。(a)は、上記の瓶針キャップを瓶針に装着する前の状態を説明する図である。(b)は、該キャップを瓶針に装着した後の状態を説明する図である。(c)は、上記の瓶針キャップがさらにC字型フック1gを有するものを説明する図である。
図4】本発明のフックを有している瓶針キャップ6を、輸液セットに複数配された側管ルートの瓶針2にそれぞれ装着し、瓶針が使用する順に上から並ぶよう、主管ルートの輸液チューブ輸液チューブ4にそれぞれ横向きに係留させ、作業手順を標準化した状態を説明する図である。
図5】本発明の瓶針キャップ1を用いた輸液セットにおける、プライミング及びバックプライミングによる前処理方法を説明する図である。
図6】本発明の瓶針キャップ1を用いた輸液セットにおける、プライミング及びバックプライミングによる前処理が完了した後、キャップ1及び10の蓋1d,10dを閉めた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、適宜図面を参照しつつ以下に説明する。
【0023】
(本発明の瓶針キャップ、該瓶針キャップを装着した輸液セットの形状・構成について)
本発明の瓶針キャップ1は、瓶針の挿入口1aからキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルター1bを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部1cと、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋1dとを配設せしめた構成を有している(図1)。
【0024】
本発明の瓶針キャップ1は、該キャップを輸液チューブに係留するためのフックを有するものとすることができる。該フックは、好ましくは、C字型の形状を有するフック1g、O字型の形状を有するフック1hまたはU字型の形状を有するフック1iとすることができる(図2(a)、図2(b)、図3(c))。そして、本発明の瓶針キャップ1を用いた輸液セットにおいて、側管側の瓶針2に被せたフックを有する瓶針キャップ1は、前記フックにより、輸液セットの最上流部に備えられた瓶針に接続された輸液チューブ4に係留したものとすることが好ましく、複数ある場合には、上から下にかけて使用順に係留したものとすることが望ましい(図4)。
【0025】
さらに、上記フックは、主管側の最上流部に備えられた瓶針に接続する輸液チューブに前記キャップを係留した時に、該キャップが横向きまたは瓶針の挿入口が斜め上方向きになるようにして、瓶針キャップ1に配設せしめたものとすることが好ましい。このようにフックを配設せしめたものとすることで、主管側の最上流部に備えられた瓶針に接続する輸液チューブに、前記キャップを横向きまたは瓶針の挿入口が斜め上方向きになるように係留させることができ、輸液セットをプライミング及びバックプライミングにより前処理した後に瓶針キャップ1の蓋1dを閉じ瓶針2を引き抜いても、生理食塩水5が瓶針キャップ1の挿入口1aからこぼれだしてくることがなく、確実にキャップ内に保持される。
【0026】
また、本発明の瓶針キャップ1は、瓶針2に配設された鍔2aへの掛止部を備えたクリップ1fを有するものとすることができる。(図3(a))。上記クリップ1fを有する瓶針キャップ1は、瓶針2に装着すると、クリップ1fにおける掛止部によって、鍔2aに確実に掛止される(図3(b))。そのため、バックプライミング時に押圧されるなどして輸液チューブ内の空気や生理食塩水からの圧力が掛かったとしても、本発明のクリップ1fを有する瓶針キャップ1は、瓶針2から外れることがなく、装着された状態を保持することができるため、バックプライミングに用いた生理食塩水が漏れ出すような事故は発生しない。
【0027】
本発明のクリップ1fを有する瓶針キャップ1は、さらに、該キャップを輸液チューブに係留するためのフックを有するものとすることができる。該フックは、好ましくは、C字型の形状を有するフック1g、O字型の形状を有するフック1hまたはU字型の形状を有するフック1iとすることができる(図3(c))。このようなフックを設けることで、本発明のクリップ1fを有する瓶針キャップ1を主管側の最上流部に備えられた瓶針に接続する輸液チューブに前記キャップを係留させた時に、該キャップが横向きまたは瓶針の挿入口が斜め上方向きになるようにすることが可能となり、プライミング及びバックプライミングに用いる生理食塩水5が漏れ出る事故が発生しない。
【0028】
本発明の瓶針キャップ1を用いた輸液セットは、各部材が、以下に示す構成を有するものとなるように接続されている。すなわち、本発明の輸液セットは、部材として、上記瓶針キャップ1と、瓶針2と、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプ3と、輸液チューブ4と、三方活栓7と、雄コネクタと、点滴筒8と、クレンメ9と、点滴針接続用コネクタと、点滴針接続用コネクタの挿入口10aからキャップ内に挿入された点滴針接続用コネクタの先端部より奥側の部位に疎水性フィルター10bを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部10cと、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋10dとを配設した点滴針接続用コネクタ用キャップ10とを有している(図5)。
【0029】
そして、液セットの最上流部に瓶針2が備えられ、該瓶針は、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプ3を備えた輸液チューブ4の一端に接続され、該輸液チューブ4の他端は三方活栓7の主管上流側コネクタ7aに接続されている。そして、該三方活栓7の側管側コネクタ7cには、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプ3を備えた輸液チューブ4の一端と、該輸液チューブ4の他端に本発明の瓶針キャップ1を被せた瓶針2が接続されている。また、該三方活栓7の主管下流側コネクタ7bには、任意で、側管側コネクタ7cに前記瓶針に装着するためのキャップ1を被せた瓶針2を接続した押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプ3を備えた輸液チューブ4の一端を接続せしめた三方活栓7をさらに1以上接続する。そして、さらに、前記下流側に位置する三方活栓7の主管下流側コネクタ7bには、雄コネクタが接続され、さらに、押圧して輸液チューブ流路を開閉するためのクランプ3を備えた輸液チューブ4の一端が接続され、該輸液チューブ4の他端には点滴筒8が接続される。そして、該点滴筒8は、クレンメ9を装着した輸液チューブ4の一端に接続され、該輸液チューブ4の他端は、点滴針接続用キャップ10を被せた点滴針接続用コネクタを接続せしめた構成を有している。そして各部材があらかじめ接続され一体化され、即使用可能な輸液セットとして提供される(図5)。
【0030】
(素材について)
本発明の輸液セットの部材を形成するために用いる材料は特に限定されないが、輸液セット並びに医療機器の部材において一般的に用いられる材料を使用することができ、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂材料およびステンレス鋼などの金属を用いることができ、輸液チューブには、ポリオレフィン系樹脂などの軟質なチューブ用の材料を用いることができる。抗癌剤など、使用する薬剤の種類によっては、ポリ塩化ビニル(PVC)から可塑剤であるポリエチレンテレフタレート(PEHP)が溶出する場合があるため、本発明の輸液セットの部材を形成するために用いる樹脂材料は、ポリ塩化ビニルは用いないものとし、好ましくは、ナイロンやポリカーボネートを用いるものとする。疎水性フィルターには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ニトロセルロースなどを用いることができ、好ましくは、ポリエチレン(PE)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるものとする。上記の各種樹脂材料は着色されたものを用いることができる。また、ステンレス鋼などの金属は、表面を発色処理したものを用いることができ、その場合は、耐腐食性の高い発色処理がされたものを用いることが好ましい。
【0031】
(製造工程について)
本発明の輸液セットは、各部材を確実に接続し、一体化された輸液セットとなるように製造する。各部材を確実に接続するための方法は特に限定されないが、輸液セットや医療機器を一体化する方法として一般に用いれる方法を用いることができ、たとえば、輸液セットなどの医療機器に一般に使用される接着剤を用いた接着や、熱や超音波などによる融着などの手法を採用することができる。一体化した輸液セットとして提供することにより、接合部が外れる危険性がなくなり、不意の液漏れが生じることによる病室内汚染や機器障害などの医療事故が、より確実に防止されることとなる。
【0032】
さらに、パッケージを開封し取り出し、即プライミング及びバックプライミングの工程を開始することが出来るよう、本発明の輸液セットは予め滅菌されたものとして提供され得る。輸液セットを滅菌する方法は特に限定されないが、輸液セットや医療機器を滅菌する方法として一般に用いられる方法が採用され、例えば、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線照射滅菌、電子線滅菌、放射線滅菌、紫外線照射滅菌、過酸化水素滅菌、エタノール滅菌の方法を用いることができる。そして、製造の容易性やコスト低減を考慮し、該滅菌方法として、好ましくは、エチレンオキサイドガス滅菌、電子線滅菌又はγ線照射滅菌を用いる。電子線滅菌は輸液セットを劣化させない程度にて行い、また、γ線照射滅菌におけるγ線の照射エネルギーは、輸液セットを劣化させない程度にて滅菌することができるよう、5kGy〜30kGy程度の範囲までとすることが好ましい。
【0033】
(本発明の瓶針キャップを用いた輸液セットにおける、プライミング及びバックプライミングによる前処理方法について)
本発明の瓶針キャップを用いた輸液セットは、患者に静脈点滴注射により輸液を投与する前に、予めプライミング及びバックプライミングによる前処理の作業を行い、輸液セット内部にある空気を排気し、生理食塩水などの溶液にて満たした状態にする。
【0034】
本発明の瓶針キャップを用いた輸液セットが封入されたパッケージを開封し、輸液セットにおける、瓶針キャップ1と蓋付きの点滴針接続用コネクタ用キャップ10とが確実に装着され、各キャップの蓋1d,10dが開放されていることを確認する。また、クランプ3が全て開放モードになっていることを確認する。側管側に瓶針が接続された輸液チューブが接続されている三方活栓のコック7dについては、三方向全てが開放モードとなっていることを確認する。また、クレンメ9が開放モードとなっていることを確認する(図5)。
【0035】
次に、点滴スタンドに、プライミング及びバックプライミングに用いるための生理食塩水6が封入された輸液容器5を吊す。そして、本発明の輸液セットの最上流部に配された瓶針2に装着されたキャップを外し、点滴スタンドに吊した該輸液容器5の栓に、輸液セットの最上流部に配された瓶針2を刺し、プライミング及びバックプライミングの作業を開始する(図5)。点滴スタンドに点滴筒8固定用ステーなどの固定用器具が備えられている場合には、それを用いて固定しても良い。なお、プライミング及びバックプライミングによる前処理には固定をしなくても良いが、点滴静脈注射開始時には、固定用器具に点滴筒8を固定し、点滴針接続用コネクタ及び点滴針に輸液セットの重量が全てかけず、点滴針を穿刺する部位に負担がかからないようにすることが好ましい。
【0036】
最上流部に配された瓶針2にセットされた輸液容器5からは、生理食塩水6が輸液チューブ4内へと流れ込み、プライミング作業が開始される。生理食塩水6は、輸液チューブ4の中にある空気を押し出しながら、下流側に配された三方活栓7の主管上流側コネクタ7aから、三方活栓7内へと流れ込む。該三方活栓7のコック7dは、三方全てが解放モードとなるようにセットされているため、流れ込んだ生理食塩水6は、三方活栓7内部の空気を押し出しながら、三方活栓の側管側コネクタ7c及び主管下流側コネクタ7bへと、さらに流れ込んでいく。
【0037】
また、上記三方活栓の側管側コネクタ7c内へと流れ込んだ生理食塩水6は、バックプライミングのための生理食塩水として、さらに接続された輸液チューブ4内を、中にある空気を押し出しながら、その先に接続された瓶針2内へと流れ込んでいく。流れ込んだ生理食塩水6は、瓶針2の内部にある空気を押し出しながら、該瓶針2の先から、該瓶針に装着した、本発明の瓶針キャップ1の内部へと流入する。そして、瓶針の先端部の周辺から疎水性フィルター1bのキャップ内側面までに存在していた空気が、流入した生理食塩水6によって押し出され、疎水性フィルター1bを通してキャップ開口部1cから外に排出され、その部分が生理食塩水6で満たされた状態となる。ここで、疎水性フィルター1bは生理食塩水6を透過させない。また、キャップ内部の、生理食塩水6が流出する瓶針2の先端部よりも根元側の部分には、空気が残った状態となる(図1(c))。
【0038】
一方、上記三方活栓7の主管下流側コネクタ7b内へと流れ込んだ生理食塩水6は、さらに、接続された輸液チューブ4内へ流入し、中にある空気を下流側へと押し出す。
【0039】
該輸液チューブ4の先に、さらに三方活栓7が接続されている場合には、流れ込んだ生理食塩水6は、バックプライミングのための生理食塩水6として、先に説明したのと同様に、三方活栓の側管側コネクタ7c〜輸液チューブ4内部〜瓶針2内部〜本発明の瓶針キャップ1の内部へと順に流入する。そして、生理食塩水6が流入する瓶針の先端部の周辺から疎水性フィルター1のキャップ内側面までに存在していた空気は、流入した生理食塩水6によって疎水性フィルター1bを通してキャップ開口部1cから外に押し出され、その部分が生理食塩水で満たされた状態となる。ここで、疎水性フィルター1bは生理食塩水6を透過させない。また、キャップ1内部の、生理食塩水6が流出する瓶針2の先端部よりも根元側の部分には、空気が残った状態となる。
【0040】
そして、上記三方活栓7の主管下流側コネクタ7b内へと流れ込んだ生理食塩水6は、さらに接続された輸液チューブ4内を、中にある空気を下流側へと押し出しながら、その先に接続された点滴筒8へと流入する。流入した生理食塩水6は、さらに接続された輸液チューブ4内を、中にある空気を下流側へと押し出しながら流れていき、点滴針接続用コネクタ内へと流入する。
【0041】
点滴針接続用コネクタ内へと流入した生理食塩水6は、その中にある空気を下流側へと押し出しながら、点滴針接続用コネクタの先端部より、点滴針接続用コネクタ用キャップ10の内部へと流入する。そして、流入した生理食塩水6は、その周辺にある空気を、さらに、疎水性フィルター10bを通してキャップ開口部10cから外に押し出し、その周辺は、生理食塩水6で満たされた状態となる。ここで、疎水性フィルター10bは生理食塩水6を透過させない。また、キャップ7内の、生理食塩水6が流出する点滴針接続用コネクタの先端部よりも根元側の部分には、空気が残った状態となる。
【0042】
このように、本発明の瓶針キャップを用いた輸液セットでは、「プライミング及びバックプライミングに用いるための生理食塩水6が封入された輸液容器5に、該輸液セットの最上流部にある瓶針2を差し込む」という1工程のみで、該輸液セット内の空気が、主管側のみならず側管側も含め速やかに排出され、同時に該輸液セットが生理食塩水で満たされることにより、プライミング及びバックプライミングによる前処理が完了する(図6)。また、本発明の輸液セットは、三方活栓を複数連結し側管が複数設けられている場合であっても、同様に、上記1工程のみで、該輸液セットの内部の空気が、主管側のみならず、複数ある側管側も含めて速やかに排出され、同時に内部が生理食塩水で満たされ、プライミング及びバックプライミングによる前処理が完了する(図6)。そして、何れの場合においても、瓶針キャップ1及び点滴針接続用コネクタ用キャップ10には、疎水性フィルター1b,10bが存在するため、蓋が開放されていても液漏れは発生しない。
【0043】
上記プライミング及びバックプライミングによる前処理の工程では、疎水性フィルター1b,10bが存在するために、不要な液は一切排出されず、病室内汚染や機器障害が発生しない。さらに、最上流部の瓶針に接続されている輸液容器に封入された生理食塩水の使用量は最小限に留められ、十分な残量が保持されるため、その後の治療において輸液容器を交換することなく、有効に使用することができる。また、本発明の瓶針キャップを用いた輸液セットは予め組み上げられ一体化されていることから、プライミング及びバックプライミングによる前処理作業において、不意の液漏れが生じることはなく、病室内汚染や機器障害が発生しない。
【0044】
プライミング及びバックプライミングによる前処理が完了した後、静脈点滴注射による治療を開始する場合には、まず、瓶針キャップ及び点滴針接続用コネクタ用キャップの蓋1d,10dを閉じる(図6)。そして、各輸液チューブに配されたクランプ3を押し、クレンメ9を閉鎖側に操作して、各輸液チューブ4を閉鎖する。また、三方活栓7のコック7dのモードを、開始する点滴静脈注射に合わせてセットし直す。
【0045】
治療薬を接続する瓶針2から、装着されている本発明の瓶針キャップ1を外す(図1(e)も参照)。また、点滴針接続用コネクタからも、装着されているキャップ10を外す。そして、該瓶針2を治療用溶液が封入された輸液容器5に刺し、点滴針接続用コネクタを点滴針に接続する。上記作業を行っても、輸液セットのチューブは閉鎖モードに設定されているため、外した瓶針2及び点滴針接続用コネクタからは、プライミング及びバックプライミングに用いた生理食塩水6が漏れ出すことはなく、病室内汚染や機器障害が発生しない。また、上記キャップ1,10は、蓋を閉めたため空気が流入せず疎水性フィルター1b,10bから空気が再び透過することもなく、さらに、生理食塩水による表面張力とキャップの開口部1c,10cからの大気圧とが作用することによって、内部の疎水性フィルター周辺にある生理食塩水6はキャップの挿入口1a,10aからはこぼれ出ることがなく、病室内汚染や機器障害が発生しない(図1(e)も参照)。
【0046】
また、本発明の別の態様では、瓶針キャップ1が、プライミング及びバックプライミングによる前処理作業中に万が一外れることを防ぐため、瓶針2に配設された鍔2aへの掛止部1eを備えたクリップ1fを有しているものとなっている。使用する際は、瓶針2に配設された鍔2aに、本発明の瓶針キャップ1が有するクリップ1fの掛止部1eを引っ掛けることにより固定する(図3(a)、図3(b)、図3(c))。
【0047】
さらに、本発明の別の態様では、瓶針キャップ1に、該キャップを輸液チューブに係留するためのフックが備えられている。C字型フック1gまたはU字型フック1iを有するキャップの場合には、該フックのC字型またはU字型の部分で輸液チューブ4を所望の位置で挟み込むようにして固定する(図2(a)、図2(b)、図2(d)も参照)。O字型フック1hの場合には、製造時にフックのO字型の穴に輸液チューブを通してあるため、フックを所望の位置にずらし、固定する(図2(b)も参照)。主管側の輸液チューブ4にフックを備えた本発明の瓶針キャップ1を固定する。複数連結した三方活栓7により側管が複数設けられている場合には、各フックを備えた本発明の瓶針キャップ1を、主管側の輸液チューブ4に固定すると良い。さらに、任意で、輸液チューブを紙テープなどで纏めておく。上記のように固定することで、本発明の瓶針キャップ1及び側管側に接続されている輸液ラインの重心が主管のチューブ側に移動し、プライミング及びバックプライミングによる前処理時や、輸液投与時における輸液スタンドの安定性が高まる。
【0048】
上記のようにして、フックを備えた瓶針キャップ1を用いると、キャップを輸液チューブに係留されたままにすることができるので、バックプライミングの後に取り外したキャップを手から滑らすなどして落下させ、キャップ内部に残る生理食塩水を飛散させてしまうことによる病室内汚染や機器障害の危険性から、開放される。
【0049】
また、複数連結した三方活栓7により側管が複数設けられている場合には、側管の使用順を混同しないように十分に配慮する必要がある。特に、異なる薬剤との配合が禁忌とされる抗癌剤などの薬剤を用いる場合には、下流側の三方活栓に接続される側管ルートを最初に用い、順次それよりも上流側の三方活栓に接続される側管ルートを用いるようにする必要がある。そこで、それぞれのフックを備えた本発明の瓶針キャップ1を、使用する順に並べて主管側の輸液チューブ4に上から順に、使用順に係留させる(図4)。このようにすると、輸液セットにおける側管ルートの使用手順が統一されるため、順番を誤認することなく、確実に使用すべき側管側チューブを選び出すことが可能となり、かつ、作業手順を標準化することが極めて容易になるため、人為的なエラーが発生する危険性から、開放される。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の輸液セットを製造し使用した実施例を示す。本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0051】
本発明の輸液セットを構成するための部材として、瓶針の挿入口からキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設したことを特徴とする瓶針キャップと、瓶針と、三方活栓と、雄コネクタと、点滴筒と、クレンメと、点滴針接続用コネクタと、輸液チューブと、押圧して輸液チューブ内の流路を開閉するためのクランプと、点滴針接続用コネクタの挿入口からキャップ内に挿入された点滴針接続用コネクタの先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設してキャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した点滴針接続用コネクタ用キャップとを用意する。
【0052】
本発明の輸液セットの形状・構成についての項、製造工程についての項における記載のようにして、上記各部材を接続し、一体化させた。そして、キャップの蓋を開放し、クランプを全て開放モードに設定し、三方活栓のコックを、三方向全てが開放モードとなるように設定し、クレンメ3を開放モードに設定して、本発明の輸液セットを製造した。
【0053】
実施例1として、図5のように、側管ルートを4つ備えた輸液セットを製造した。
【0054】
実施例2として、実施例1の瓶針キャップに換えて、該キャップに、さらに瓶針の鍔への掛止部を備えたクリップが配されたものを用い、それ以外の点は実施例1と同様にして、輸液セットを製造した。
【0055】
実施例3として、実施例1の瓶針キャップに換えて、該キャップに、輸液チューブに係留するためのC字型の形状を有しているフックが配されたものを用い、図4のようにキャップを輸液チューブに係留し、それ以外の点は実施例1と同様にして、輸液セットを製造した。
【0056】
比較例1として、実施例1の疎水性フィルターと蓋を有するキャップに換えて、開口部を閉鎖するための蓋を配設していない点のみが異なっているキャップを用い、それ以外の点は実施例1と同様にして、輸液セットを製造した。
【0057】
輸液スタンドに、生理食塩水が封入された輸液容器を吊るし、該輸液容器のゴム栓に、輸液セットの最上流部に備えられた瓶針を刺し、プライミング及びバックプライミングによる前処理の作業を開始した。実施例1〜実施例3及び比較例1の各輸液セットを用いて、それぞれ検討を行った。
【0058】
その結果、いずれの輸液セットを用いても、瓶針を輸液容器の栓に刺すという1工程のみで、輸液セットの内部が生理食塩水で満たされ、かつ、該生理食塩水により押し出された輸液セット内部の空気のみが、キャップそれぞれ配設された疎水性フィルターから排気され、輸液セットのプライミングおよびバックプライミングによる前処理が完了されたことを確認した。各部材の接続部からの生理食塩水の漏出はなかった。実施例2のものは、瓶針の鍔への掛止部を備えたクリップがキャップに配されているため、キャップが他のものよりも瓶針にしっかりと装着されていた。
【0059】
次に、プライミングおよびバックプライミングによる前処理作業が完了した上記各輸液セットのキャップの、開口部を閉鎖するための蓋を閉じた(実施例1〜3)。なお、比較例1のキャップには、蓋がない。そして、各輸液チューブに配されたクランプ3を押し、クレンメ9を閉鎖側に操作して、各輸液チューブ4を閉鎖した。また、三方活栓のコックのモードを、開始する点滴静脈注射に合わせてセットし直した。
【0060】
実施例1〜3及び比較例1のキャップを、瓶針及び点滴針接続用コネクタから外した。
【0061】
その結果、実施例1〜3のキャップは、蓋を閉じられたため、疎水性フィルターを透過して空気がキャップ内に再流入することはなく、生理食塩水による表面張力とキャップの開口部からの大気圧とが作用するため、内部の疎水性フィルター周辺にある生理食塩水がキャップの挿入口からこぼれ出ることがなかった。実施例3のものは、キャップがC字型のフックによって輸液チューブに係留されているため、瓶針及び点滴針接続用コネクタを外す際に、キャップを取り落とす心配が無かった。また、取り外した瓶針及び点滴針接続用コネクタからは、生理食塩水がこぼれ落ちることはなかった。
【0062】
しかしながら、蓋がない比較例1では、瓶針及び点滴針接続用コネクタからキャップを外すと、それらのキャップに備えられた疎水性フィルターを透過してキャップ内に空気が再び進入し、キャップ内部に残っていた生理食塩水が、キャップの瓶針又は点滴針接続用コネクタの挿入口から漏れ出して外部にこぼれてしまった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の手段により、瓶針を生理食塩水の入った輸液容器の栓に刺すという1工程のみでプライミングおよびバックプライミングによる前処理作業が実施でき、作業中および作業後に意図せぬ液の漏出がなく病室内汚染や機器障害が生じるリスクが極力低減され、生理食塩水を後の治療においても有効に活用できる。さらに、本発明の手段により、瓶針キャップに備えられたフックを用いて瓶針を輸液チューブに係留することで複数備えられた瓶針の使用順が明確なものとなり、輸液の投与順序の誤りや輸液チューブ内での輸液の混合といった人的ミスに起因する事故の発生を防ぎ、さらに、標準的な使用手順を定めることが容易な、新たな輸液セットを提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 瓶針キャップ
1a 瓶針の挿入口
1b 疎水性フィルター
1c 開口部
1d 蓋
1e 掛止部
1f クリップ
1g C字型フック
1h O字型フック
1i U字型フック
2 瓶針
2a 鍔
3 クランプ
4 輸液チューブ
4a 輸液チューブ(断面)
5 輸液容器
6 生理食塩水
7 三方活栓
7a 主管上流側コネクタ
7b 主管下流側コネクタ
7c 側管側コネクタ
7d コック
8 点滴筒
9 クレンメ
10 点滴針接続用コネクタ用キャップ
10a 点滴針接続用コネクタの挿入口
10b 疎水性フィルター
10c 開口部
10d 蓋
【要約】
本発明は、挿入口からキャップ内に挿入された瓶針の先端部より奥側の部位に疎水性フィルターを配設して、キャップ内の気体を透過させ液体および固体を透過させないようにせしめた開口部と、該開口部の外側に該開口部を閉鎖するための蓋とを配設した瓶針キャップを用い、さらに、瓶針に配設された鍔への掛止部を備えたクリップや輸液チューブに係留するためのフックを配設せしめ、それらのキャップを輸液セットに適用することで、液の漏出がない簡便な工程でプライミングおよびバックプライミングによる前処理が可能で、投与手順の人的ミスに起因する事故の発生の防止ができ、標準的な使用手順を定めることが容易な、新たな輸液セットを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6