特許第5774807号(P5774807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5774807狭い帯域の全方向性反射体および構造色としてのそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774807
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】狭い帯域の全方向性反射体および構造色としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20150820BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   G02B5/28
   G02B5/08 A
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2008-208255(P2008-208255)
(22)【出願日】2008年8月12日
(65)【公開番号】特開2009-42763(P2009-42763A)
(43)【公開日】2009年2月26日
【審査請求日】2011年5月30日
(31)【優先権主張番号】11/837,529
(32)【優先日】2007年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】デバシシュ バーネルジー
(72)【発明者】
【氏名】ミンジャン チャン
(72)【発明者】
【氏名】石井 正彦
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−504711(JP,A)
【文献】 特開平07−034324(JP,A)
【文献】 特表2006−506518(JP,A)
【文献】 特開平11−101913(JP,A)
【文献】 特開昭64−032201(JP,A)
【文献】 特表2005−535938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/08
C09D 1/00−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレークの形態にある全方向性構造色反射体と当該全方向性構造色反射体と混合されたバインダーとを含む塗料であって、
前記全方向性構造色反射体は、2〜4の屈折率nを有する第一の材料でできた第一の層および1〜3の屈折率nを有する第二の材料でできた第二の層を交互に有するマルチレイヤースタックであり、
前記第一の層は、外表面および第一の所定の厚さを有し、
前記第二の層は、前記第一の層の外表面にわたって広がる外表面および第二の所定の厚さを有し、
前記第一の層は、前記第二の層にわたって広がり、前記第二の層に直接に接触し、
前記第一の層および前記第二の層は、0.2〜1.0の屈折率コントラストn−nを有し
前記第一の所定の厚さ、前記第二の所定の厚さ、および0.2〜1.0の前記屈折率コントラストにより、前記マルチレイヤースタックは、0度から80度の角度から眺めたときに200ナノメートル未満の反射帯域を有し
前記全方向性構造色反射体は0度〜45度の角度から眺めたときに一定のままである構造色を示し、及び/又は前記全方向性構造色反射体の中心波長の分散は0度〜90度の入射角範囲で40nm以下であり、
前記マルチレイヤースタックが3より多い層を有する、塗料
【請求項2】
上記の屈折率nおよびn並びに屈折率コントラストn−nの条件下で、第一の層の屈折率nと第二の層の屈折率nの比n/nは1.5以下である、請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記反射帯域が0度から65度の角度から眺めたときに200ナノメートル未満である、請求項1又は2に記載の塗料。
【請求項4】
前記反射帯域が0度から65度の角度から眺めたときに100ナノメートル未満である、請求項3に記載の塗料。
【請求項5】
前記屈折率コントラストn−nが0.2〜0.6である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料。
【請求項6】
前記スタックがゼロより大きな値から10%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料。
【請求項7】
前記スタックがゼロより大きな値から5%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、請求項6に記載の塗料。
【請求項8】
前記スタックがゼロより大きな値から2%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、請求項7に記載の塗料。
【請求項9】
前記スタックが合計で7より多い層を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗料。
【請求項10】
前記フレークが0.5〜5マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗料
【請求項11】
前記フレークが5〜50マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の塗料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して反射体および反射体を作る方法に関係する。より具体的には、本発明は全方向性反射体および全方向性反射体を作る方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
顔料は特定の色として見える、なぜならばそれが光の或る波長を選択的に反射および吸収するためである。白色光、すなわち全可視光スペクトルの波長を混合したものにほぼ等しい光が顔料に出会うと、いくつかの波長は顔料の置換基および化学結合によって吸収され、そして他の波長は反射される。このタイプの発色メカニズムは光吸収に基づき、そして分子構造は概して適度の反射率(50〜60%)で広い範囲の波長を反射する。対照的に、自然は、素晴らしい色や昆虫、蝶、鳥および魚におけるメタルタイプの反射をもたらす。このような自然に見られる色は、顔料を基にするものではなく、高い屈折率材料と低い屈折材料を交互に並べたナノスケールのマルチレイヤー構造、またはナノサイズ粒子の規則的配列のいずれかから反射した光の干渉に基づくものである。これらのタイプのナノ構造アセンブリは、入射光の100%まで反射可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなタイプのナノ構造アセンブリ、例えばマルチレイヤー構造、は電磁放射の狭い反射帯域をもたらすためには利用されてこなかった。したがって、該マルチレイヤー構造を様々な角度から眺めたときの反射率が一定であり、狭い反射帯域をもたらすマルチレイヤー構造に対する要求が存在する。以下で説明されるとおり、本願発明は、可視光電磁気範囲における全方向性の狭い帯域の反射体及び/または全方向性構造色を造るために利用可能なマルチレイヤー構造を提供する。このマルチレイヤー構造を造るための方法も説明される。本発明のこれらおよびその他の長所は、ここに示される図面および議論から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マルチレイヤー構造が開示され、ここで外表面および2〜4の屈折率を有する第一の材料でできた第一の層が、1〜3の屈折率を有する第二の材料でできた第二の層の外表面にわたって広がる。このマルチレイヤースタックは、0°から80°の角度から眺めたときに200ナノメートル未満の反射帯域を有し、および紫外線、可視光線および赤外線スペクトル範囲における電磁放射の狭い範囲を反射するために使用されることができる。いくつかの例では、該マルチレイヤー構造の反射帯域が100ナノメートル未満である。また、該マルチレイヤー構造は、2%未満のレンジ対ミッドレンジ比百分率として定義される量を有することができる。
【0005】
本発明の一実施態様において、該マルチレイヤー構造はフレークの形態であってもよい。該フレークは、0.5〜5マイクロメートルの平均厚さ範囲、および5〜50マイクロメートルの平均直径を有する。いくつかの例では、構造物をコーティングするために使用可能なコーティング材料を形成するために、複数のフレークがバインダーと混ぜ合わされることができる。該コーティング材料は、様々な角度から眺めたときに一定のままである構造色を示す。本発明の該複数のフレークは、他の方法を用いて構造物に適用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、任意角の入射からの紫外、可視または赤外の磁気放射の特定の反射帯域を維持するマルチレイヤー全方向性反射体を含む。本発明は、それ自体で、狭い波長範囲の電磁放射に対する全方向性の反射体としての実用性を有する。また、本発明は該全方向性反射体を造るための方法も含む。
【0007】
本発明の全方向性反射体は、第一の屈折率を伴う第一の層および第二の屈折率を伴う第二の層を有するマルチレイヤー体である。いくつかの例では、この二つの層の屈折率間の差が0.2〜1.0の範囲であってもよく、およびこのマルチレイヤー構造は、0°から80°の角度から眺めたときに200ナノメートル未満の反射帯域を有する。他の例では、この二つの層の屈折率間の差が0.2〜0.6の範囲であってもよく、およびこのマルチレイヤー構造は、0°から65°の角度から眺めたときに100ナノメートル未満の反射帯域を有する。
【0008】
ここで、図1を参照すると、高屈折率(n)および厚さ(d)を備えた第一の材料100および低屈折率(n)および厚さ(d)を備えた第二の材料200を交互にした層を有するマルチレイヤー構造が示されている。第一の材料100は、外表面110を含み、それは第二の材料200の外表面210にわたって広がることができる。いくつかの例では、マルチレイヤー構造10は、層の合計数が3より多い。別の例では、マルチレイヤー構造10は、層の合計数が7より多い。
【0009】
垂直な電気(E)および磁気(M)ベクトル成分からなる電磁波が、入射角θでマルチレイヤー構造に入射するのが示される。この電磁波は二つの独立の電磁モード、TE(横電)モードとTM(横磁)モードに区別することができる。マルチレイヤー構造10以外の媒体の屈折率は第一の端部12においてnである。例えば、媒体が空気であるとき、nは1である。第二の端部14にある随意的な基材の屈折率は、n基材である。この随意的な基材は、マルチレイヤー構造10と適合可能な任意の材料であってよく、およびこの構造物の製造、貯蔵、輸送および/または取り扱いにおいて役に立つことができる。随意的な基材が存在する場合、その基材はマルチレイヤー構造10の製造後に除去してもよいし、またはしなくてもよい。
【0010】
電磁放射が材料表面に当たる場合、該放射の波はこの材料から反射されるかまたは材料を伝わることができる。さらに、電磁放射がマルチレイヤー構造10の第一の端部12に角度θで当たる場合、その電磁波が高屈折率層および低屈折率層の表面で作る反射角は、それぞれθおよびθである。
【0011】
スネルの法則を使用すると:
【数1】
屈折率nおよびnが既知であれば、角度θおよびθは求められる。
【0012】
全方向性反射率について、電磁放射のTEモードおよびTMモードに関する必要だが十分ではない条件として、第一の層内の最大屈折角度(θH,MAX)が第一の層および第二の層の間のインターフェースのブルースター角(θ)よりも小さいことが必要である。この条件が満足されない場合、電磁波のTMモードは第二のおよびそれに続くインターフェースで反射せず、したがってこの構造物を伝わる。
【0013】
この考察を用いると、
【数2】
および
【0014】
【数3】
【0015】
これにより、次のことが必要である:
【数4】
【0016】
式4で表されるこの必要条件に加えて、波長λの電磁波が角度θでマルチレイヤー構造に向かい、且つマルチレイヤー構造の個々の二重層が、それぞれ屈折率nおよびnを伴う厚さdおよびdを有する場合、特性変換(translation)マトリクス(F)は以下のように表現される。
【0017】
【数5】
【0018】
これは次のようにも表現可能であり:
【数6】
【0019】
ここで:
【数7】
【0020】
【数8】
【0021】
【数9】
および
【0022】
【数10】
である。
【0023】
また、
【数11】
【0024】
ここで、
【数12】
【0025】
および
【数13】
【0026】
TEおよびTMについて明確にpを解くと:
【数14】
および
【0027】
【数15】
【0028】
眺める角度に依存する帯域構造は、全反射ゾーンの、帯域端としても知られる、端部についての境界条件から得ることが可能である。本発明の目的に関して、帯域端は、所与の帯域構造について全反射ゾーンと伝送ゾーンとを分ける線(ライン)の式として定義される。
【0029】
高反射率帯域の帯域端周波数を決める境界条件は、以下によって与えられる:
【数16】
【0030】
したがって、式3から:
【数17】
【0031】
または違う表現では:
【数18】
【0032】
式15および7を結合すると、以下の帯域端の式が得られる:
【数19】
ここで、
【数20】
および:
【数21】
上記の帯域端の式の+記号は、長波長(λlong)の場合の帯域端を表し、および−記号は短波長(λshort)の場合の帯域端を表す。
【0033】
式20および21を再編すると:
TEモードについて
【数22】
および:
【0034】
TMモードについて
【数23】
である。
【0035】
帯域端についての近似解は、以下の表現で定義可能である:
【0036】
【数24】
四分の一波の設計(以下でより詳細に記載される)および互いに等しくなるように選択された交互の層の光学的な厚さを考慮すれば、この近似解は妥当である。また、交互の層の光学的な厚さが比較的小さいと、コサインは1に近づく。このようにして、式23および24は近似的な帯域端の式をもたらす:
【0037】
TEモードについて:
【数25】
【0038】
および、TMモードについて:
【数26】
【0039】
入射角の関数としてのLおよびpTMの値は、式7、8、14、15、20および21から得ることができ、それによって入射角の関数としてのTEおよびTMモードにおけるλlongおよびλshortについての計算が可能となる。
【0040】
図2を見ると、4.6の高屈折率および800ナノメートルの厚さを有する第一の材料および1.6の屈折率および1600ナノメートルの厚さを有する第二の層材料を伴うマルチレイヤーシステムでの入射角の関数としてのTEおよびTM帯域端が示されている。全方向性帯域は波長範囲で定義され、そこでは強調表示されたボックスで示されるように任意の角度から来る電磁放射が完全に反射される。図2で示される例の場合、全方向性帯域は赤外領域にあり、そして近似的には9.34マイクロメートルから15マイクロメートルの波長の間にある。
【0041】
数学的には、図2で示される全方向性の帯域は以下のように記載できる:
【数27】
【0042】
式23および式24の帯域端に対する厳密解は、以下のように表現できる:
TEモードについて:
【数28】
および、TMモードについて
【数29】
である。数値評価を用いて、上述したマルチレイヤーシステムについての厳密解と近似解の比較が図3に示される。図3は、このようにして、帯域端の式で求める近似法が妥当且つ適当であることを説明している。
【0043】
全方向性反射体の中心波長(λ)は、次の関係から求められる:
【0044】
【数30】
この中心波長は重要なパラメータとなる場合があり、というのはその値が反射される電磁波長および/または色スペクトルの近似範囲を示唆するからである。例えば、通常の入射に対して上述のマルチレイヤーシステムは、12.5マイクロメートルの中心波長をもたらし、これは図2および3で示されるプロットと一致する。
反射帯域の幅に関する示唆をもたらすことができる、もうひとつの重要なパラメータは、全方向性反射帯域内の波長のレンジ(範囲)対全方向性反射帯域内の波長のミッドレンジ比として定義される。
【0045】
この「レンジ対ミッドレンジ比」(η)は数学的に以下のように表現される:
TEモードについて、
【数31】
【0046】
および、TMモードについて、
【数32】
である。レンジ対ミッドレンジ比は百分率として表現することができ、本発明の目的に関して、この用語「レンジ対ミッドレンジ比」と「レンジ対ミッドレンジ比百分率」は同義的に使用されると理解される。さらに、「%」記号を伴って提示される「レンジ対ミッドレンジ比」の値は、「レンジ対ミッドレンジ比」の百分率の値であると理解される。TMモードおよびTEモードについてのレンジ対ミッドレンジ比は、式31および32から数値的に計算可能であり、そして図4Aおよび4Bに図解されるように、高屈折率と低屈折率の関数としてプロットできる。さらに、一度レンジ対ミッドレンジ比が決められると、対応する反射率が波長の関数としてプロット可能である。
【0047】
レンジ対ミッドレンジ比の関数としての反射率の例は、図5Aおよび5Bに図解される。図5AはTMモードレンジ対ミッドレンジ比についての二つのカーブ−0.2%に等しいηTMに関するものおよび30%に等しいηTMに関するもの−を示す。図5Bは、0°から45°の範囲にある入射角を伴って、図5Aで「A」および「B」のラベルがされたレンジ対ミッドレンジ比について対応する反射率を示す。30%のレンジ対ミッドレンジ比および0°から45°の範囲にある入射角を伴って、図5Bに図解された反射帯域は近似的に300ナノメートルである。対照的に、0.2%のレンジ対ミッドレンジ比および同上の入射角の場合、反射帯域は近似的に100ナノメートルである。
【0048】
全方向性反射体の中心波長に関して、式30は、中心波長、およびしたがって中心波長の分散が入射角の関数であることを示す。いくつかの例では、本発明の全方向性反射体が入射角の関数としての中心波長の小さな分散を有する。中心波長の分散の範囲が狭いほど、観察される色は純粋である、というのはより狭い帯域の波長が反射体から例えば人間の眼に反射されるからである。
【0049】
中心波長の分散を制御する方法は、高反射率および低反射率の関数としてのTMモードおよびTEモードについてのレンジ対ミッドレンジ比の比較検討を含んでもよい。図6は、高反射率および低反射率の関数としてのTMモードおよびTEモードについての0.2%のレンジ対ミッドレンジ比を図解する。図6で図解されるように、TMモードおよびTEモードについての高屈折率間の比較的大きな分散がケースIによって示され、中間の分散がケースIIによって示され、比較的小さな分散がケースIIIによって示される。したがって、所与のレンジ対ミッドレンジ比について、高反射率および低反射率に対する異なる値を選択することができる。
【0050】
図7Aをみると、ケースIについての波長の関数としての反射率が図解されており、ここでは高屈折率が2.61に等しく、低屈折率が1.2に等しく、および入射角は0°〜45°の範囲である。この図によって図解されるように、マルチレイヤー構造に対して通常の電磁放射の入射とマルチレイヤー構造に対して45°の電磁放射の入射を比べると、中心波長は大きく移動している。対照的に、高反射率および低反射率の間の比較的小さな差、および等しい入射角は、結果として図7Cに示されるような中心波長の小さな分散をもたらす。したがって、マルチレイヤー構造によって反射される波長の範囲を狭くするためには、第一の材料100と第二の材料200の間の反射率間の比較的小さい差が望ましい。図7Dは、ケースI、IIおよびIIIについて入射角の変化を伴う場合の中心波長の分散を定量化し、そして分散がケースIの場合の約140nmからケースIIIの場合の約40nmまで低下することを図解している。
【0051】
本発明の別の実施態様では、全方向性反射体用の交互の層の材料の屈折率および厚さを測定するために、四分の一波技術が使用可能である。この方法を用いて、高屈折率材料および低屈折率材料の光学的厚さがお互いに等しくなるように、且つ所望の反射波長の四分の一に等しくなるように、設定される。したがって、一度マルチレイヤー構造の屈折率が選択されると、個々の層の厚さは以下の式に基づいて設定される:
【0052】
【数33】
ここでθ=0のときにλ=λである。
【0053】
図8を見ると、四分の一波全方向性反射体の帯域端に対する近似解のグラフ表示が、上述したケースIIのパラメータにしたがって示される。この図はまた厳密解も示しており、それにより類似の結果が得られている。この図で図解されるように、490ナノメートルにおける狭い全方向性帯域は、図7Bで示された反射帯域と一致している。狭い全方向性帯域を得るために、中心波の分散は最小でなければならないことが理解される。したがって、式30から、中心波の分散が次のように表現できる:
【0054】
【数34】
【0055】
ここで:
【数35】
および、Fc、中心波長分散係数は次のように表現できる:
【0056】
【数36】
中心波長分散係数は、高屈折率および低屈折率の関数として図9Aに示される。したがって、式36および図9Aから、高屈折率および低屈折率の材料を適当に選択することで、中心波長の分散を低下させることができる。また、中心波長分散係数が比較的低くても、高屈折率と低屈折率の間に大きな差を示すマルチレイヤー構造は広い反射帯域を有する事実も、「広い帯域」矢印を伴う図9Aで図解される。同様に、交互の層が、第二の材料の低屈折率に近い高屈折率を伴う第一の材料を有する場合、反射した電磁放射のより高い側波帯が「高い側波帯」矢印で図解されるように生じる。このより高い側波帯は、様々な方法(説明用にはルゲートフィルターを含む)を使用することによって、低下させることができる。
【0057】
図9Bは、レンジ対ミッドレンジ比、高屈折率および低屈折率に関する目標領域を提示する。TEおよびTMモードのレンジ対ミッドレンジ比間の差が比較的大きい場合、マルチレイヤー構造の広いまたは大きい反射帯域が生じる。対照的に、レンジ対ミッドレンジ比間の差が比較的小さい場合、比較的狭い反射帯域がこのダイヤグラムで見られるような値の目標領域を伴って示される。また、図9Cおよび9Dは、高屈折率および低屈折率材料間で小さな屈折率コントラスト(0.39)が選択された場合、可視領域において狭い帯域幅の全方向性反射体が得られることを図解する。
【0058】
したがって、いくつかの例では、全方向性反射体が交互の層の材料を有し、ここで一つの材料が1〜3の低屈折率を有し且つもう一つの材料が2〜4の高屈折率を有する。また、低屈折率材料と高屈折率材料の間の差が、ここでは屈折率コントラストとして定義され、0.2〜1.0の範囲にあり、およびレンジ対ミッドレンジ比百分率が0より大きい値から10%まで変化する。他の例では、全方向性反射体の交互の層に使用される材料は、2〜3の範囲にある低屈折率を有する第一の材料、2.47〜3.38の範囲にある高屈折率を有する第二の材料を含む。さらに他の例では、高屈折率および低屈折率材料の間の差が、0.35〜0.5であってもよく、および/またはレンジ対ミッドレンジ比百分率が0より大きい値および5%であってもよい。いくつかの例では、レンジ対ミッドレンジ比百分率はまた0より大きい値から2%の範囲であってもよい。本発明の全方向性反射体の製造のために好適な材料は、上述の基準に合致するように選択される。
【0059】
表1は、狭い反射帯域を示す全方向性反射体用の、可能性のある、しかし限定はされない、高屈折率および低屈折率材料のそれぞれを示す。したがって、屈折率の差が0.2〜1.0であるように、且つレンジ対ミッドレンジ比百分率が0より大きい正の値から10%であるように、適当な材料を選択することによって、様々な角度から眺めたときに一定のままである構造色を可能にする全方向性反射体がもたらされる。いくつかの例では、本発明の全方向性反射体によってもたらされる構造色は、0°〜80°の角度から眺めたときに一定のままである。他の例では、0°〜65°の角度から眺めたときに、構造色は一定のままである。さらに他の例では、0°〜45°の角度から眺めたときに、構造色は一定のままである。
【0060】
また、表1は説明目的だけのものであり、決して本願発明の範囲を限定するものではない。屈折率の差が0.2〜1.0であり、レンジ対ミッドレンジ比百分率が0より大きい正の値から10%までである、任意の二つの層は本発明の範囲内である。また、2より多い異なる材料がマルチレイヤースタックに使用することができること、および/または交互の層のひとつが欠陥層、すなわち所望の屈折率を得るためにそこで意図的に欠陥を伴う材料でできた層であってもよいこと、も本発明の範囲内である。
【0061】
本発明の全方向性反射体は粒子、ディスク、フレークおよびそれらに類するものの形態であってもよいことが理解される。さらに、コーティングを形成するために、粒子、ディスクおよび/またはフレークは好適な有機および/または無機バインダーと混合されてもよい。したがってバインダーと本発明の全方向性反射体は、様々な角度から眺めたときに色が変わらない塗料およびコーティングをもたらすように、使用可能である。また、本発明の粒子、ディスク、および/またはフレークは、他の方法、例えば帯電、e−コーティング、粉末コーティング、スプレー堆積およびこれらに類するものを使用して、表面に適用可能であり、この結果様々な角度から眺めたときに外観において変化しない色を表面にもたらす。
【表1】
【0062】
本発明のフレークは、0.5〜5マイクロメートルの平均厚み、および5〜50マイクロメートルの平均直径を有してもよい。本発明の目的に関して、平均厚みという語は少なくとも3つの異なる厚さの測定から得た平均値として定義され、平均直径という語は少なくとも3つの異なる直径の測定から得た平均値として定義される。フレークは、そこに付着した随意的な基材を有してもよく、または独立したフレークであってもよいことが理解される。基材は、当業者に既知の任意の材料(説明用には金属、合金、プラスチック、セラミックス、ガラスおよびそれらの組み合わせを含む)から作られてもよく、およびフレークが製造された後で除去してもよいし、またはされなくてもよい。
【0063】
本発明の狭い帯域の全方向性反射体は、紫外(UV)光を反射するように設計され、製造されおよび使用できることが理解される。したがって、本発明の狭い帯域の全方向性反射体は、UV反射コーティングを製造するために使用可能であり、ここで作られたUV反射の狭い帯域の全方向性反射体は、(1)現在入手可能な塗料、染色液およびそれらに類するもの:(2)可視色をもたらす狭い帯域の全方向性反射体を含む本発明のコーティング:および/または(3)好適な透明のバインダーに加えられ、UV保護性能を有するクリアーなコーティングを製造する。本発明の狭い帯域の全方向性反射体は、電気通信および光電子デバイスで使用可能であることも理解される。
【0064】
本発明の全方向性反射体を製造する方法は、ゾルゲルプロセス、交互層の電子ガン蒸発、交互層の真空蒸発、熱的蒸発、CVDプロセス、電気化学堆積およびエッチングプロセス、高真空蒸気堆積および酸化プロセス、交互層のスパッタリング、分子−ビーム−エピタキシープロセス、熱的機械的プロセス、化学的プロセス、「レイヤー・バイ・レイヤー」プロセスによるポリ電解質多層堆積および/またはこれらの組み合わせを含む。
【0065】
このやり方で、狭い帯域幅の全方向性反射器およびそれらの製造方法が提示される。前述の図面、議論および記載は、本発明の特定の実施態様の説明であるが、それらの実施に関して限定となることを意図していない。本発明の数値的な改良および変更は、ここで示された教示を考慮すれば当業者には容易に明らかである。特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定する均等物の全てを含む。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明のマルチレイヤー構造の概略図。
図2】入射角の関数としての帯域端のグラフ表示。
図3】入射角の関数としての帯域端に関する厳密解と近似解を比較するグラフ表示。
図4A】電磁放射のTMモードに関するレンジ対ミッドレンジ比のグラフ表示。
図4B】電磁放射のTEモードに関するレンジ対ミッドレンジ比のグラフ表示。
図5A】30%および0.2%に等しいレンジ対ミッドレンジ比のグラフ表示。
図5B図5Aで示された30%および0.2%のレンジ対ミッドレンジ比の場合の対応する反射スペクトルのグラフ表示。
図6】電磁放射のTMモードおよびTEモードに関する、0.2%のレンジ対ミッドレンジ比の比較を示すグラフ表示。
図7A図6で示されたケースIの場合の波長の関数としての反射率のグラフ表示。
図7B図6で示されたケースIIの場合の波長の関数としての反射率のグラフ表示。
図7C図6で示されたケースIIIの場合の波長の関数としての反射率のグラフ表示。
図7D】ケースI、IIおよびIIIにおける中心波長の分散のグラフ表示。
図8】四分の一波長技術により設計されたマルチレイヤー構造の帯域端に関する近似解と厳密解の比較のグラフ表示。
図9A】高屈折率および低屈折率の関数としての中心波長分散係数のグラフ表示。
図9B】TEモードおよびTMモードの場合のレンジ対ミッドレンジ比のグラフ表示であって、ここで高屈折率および低屈折率の所望の領域が強調表示されている。
図9C】高屈折率材料から低屈折材料までの間で低屈折率コントラストを伴うケースの狭い帯域の全方向性反射率のグラフ表示。
図9D】高屈折率材料から低屈折材料までの間で低屈折率コントラストを伴う狭い帯域の全方向性反射設計の帯域構造のグラフ表示。
【0067】
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に記載する。
[態様1]
外表面および2〜4の屈折率を有する第一の材料でできた第一の層;および
前記第一の層の外表面にわたって広がる外表面、および1〜3の屈折率を有する第二の材料でできた第二の層;を有し、
0度から80度の角度から眺めたときに200ナノメートル未満の反射帯域を有する、マルチレイヤースタック。
[態様2]
前記反射帯域が0度から65度の角度から眺めたときに200ナノメートル未満である、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様3]
前記反射帯域が0度から65度の角度から眺めたときに100ナノメートル未満である、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様4]
前記第一の層が2.4〜3.4の屈折率を有し、および前記第二の層が2〜3の屈折率を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様5]
前記第一の層の屈折率と前記第二の層の屈折率の差が0.2〜1である、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様6]
前記第一の層の屈折率と前記第二の層の屈折率の差が0.35〜0.5である、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様7]
ゼロより大きな値から10%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様8]
ゼロより大きな値から5%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様9]
ゼロより大きな値から2%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様10]
合計で3より多い層を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様11]
合計で7より多い層を有する、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様12]
フレークの形態である、上記態様1に記載のマルチレイヤースタック。
[態様13]
前記フレークが0.5〜5マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する、上記態様12に記載のマルチレイヤースタック。
[態様14]
前記フレークが5〜50マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、上記態様12に記載のマルチレイヤースタック。
[態様15]
前記フレークがバインダーと混合されて塗料を作る、上記態様12に記載のマルチレイヤースタック。
[態様16]
前記フレークがバインダーと混合されてUV保護コーティングを作る、上記態様12に記載のマルチレイヤースタック。
[態様17]
外表面および2〜4の屈折率を有する第一の材料でできた第一の層;および
前記第一の層の外表面にわたって広がり且つマルチレイヤースタックを形成する外表面、および1〜3の屈折率を有する第二の材料でできた第二の層;を有する全方向性反射体であって、
前記第一の層の屈折率と前記第二の層の屈折率の差が0.2〜1であり;
前記マルチレイヤースタックがゼロより大きい正の百分率から10%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有し;
前記マルチレイヤースタックは、0度から80度の角度から眺めたときに200ナノメートル未満の反射帯域も有する、全方向性反射体。
[態様18]
前記反射帯域が0度から65度の角度から眺めたときに100ナノメートル未満である、上記態様17に記載のマルチレイヤースタック。
[態様19]
前記第一の層が2.4〜3.4の屈折率を有し、および前記第二の層が2〜3の屈折率を有する、上記態様17に記載のマルチレイヤースタック。
[態様20]
外表面および2.4〜3.4の屈折率を有する第一の材料でできた第一の層;
2〜3の屈折率を有する第二の材料でできた第二の層;を有する狭い帯域幅の全方向性反射体であって、
前記第一の層の外表面が前記第二の層にわたって広がり且つマルチレイヤースタックを形成し、
前記マルチレイヤースタックがゼロより大きい正の百分率から5%のレンジ対ミッドレンジ比百分率を有し;
前記マルチレイヤースタックはまた、0度から65度の角度から眺めたときに100ナノメートル未満の反射帯域を有する、狭い帯域幅の全方向性反射体。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図9D