(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774829
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】高電界強度バリスタ材料
(51)【国際特許分類】
H01C 7/10 20060101AFI20150820BHJP
C04B 35/453 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
H01C7/10
C04B35/00 Q
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-218764(P2010-218764)
(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公開番号】特開2011-77524(P2011-77524A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】09171946.8
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510075882
【氏名又は名称】アーベーベー テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス グリューター
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハーゲマイスター
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ベック
(72)【発明者】
【氏名】ラグナー オスタールンド
(72)【発明者】
【氏名】レト ケスラー
【審査官】
小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−329148(JP,A)
【文献】
欧州特許第00473419(EP,B1)
【文献】
米国特許第04094061(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
C04B 35/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnO相を形成するZnO、及び粒界の酸化ビスマス相を形成するBi2O3として表されるBiを含み、スピネル相をさらに含む、サージアレスタ用バリスタ材料であって、該バリスタ材料に含まれるパイロクロア相の量が、該スピネル相に対する該パイロクロア相の比が0.15未満となる量であり、
前記バリスタ材料が、それぞれMnO2、CoO、NiO、及びCr2O3として表されるMn、Co、Ni、及びCrを含むスピネル形成成分の混合物、並びに0.05mol%未満の量であるSiO2として表されるSiを含むことを特徴とする、バリスタ材料。
【請求項2】
該スピネル相に対する該パイロクロア相の比が0.1未満であることを特徴とする、請求項1に記載のバリスタ材料。
【請求項3】
目標スイッチング電界強度が250〜400V/mmの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載のバリスタ材料。
【請求項4】
Bi2O3の量が、少なくとも0.3mol%、さらに好ましくは少なくとも0.6mol%、最も好ましくは0.6mol%〜0.9mol%であり、
Sb2O3の量が1.8mol%未満であり、
Sb2O3に対するBi2O3のモル比が少なくとも0.5であり、並びに
MnO2、CoO、NiO、及びCr2O3の合計量が少なくとも2.5mol%、さらに好ましくは少なくとも3mol%である、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリスタ材料。
【請求項5】
Bi2O3の量が0.5mol%未満であり、
Sb2O3に対するBi2O3のモル比が0.4未満、好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.25未満であり、並びに
MnO2、CoO、NiO、及びCr2O3の合計量が少なくとも4mol%である、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリスタ材料。
【請求項6】
該スピネル形成成分の混合物が、Fe、Al、Ti、Mg、及びCuからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるスピネル形成成分をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバリスタ材料。
【請求項7】
Ag及びBからなる群から選択される少なくとも1つのドーパントをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバリスタ材料。
【請求項8】
Bi2O3、Sb2O3、MnO2、CoO、NiO、及びCr2O3を含む出発材料を、ZnOと混合し、ディスクに圧縮して、1000℃より高い温度にて焼成して、バリスタ材料を得る、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバリスタ材料を調製する方法。
【請求項9】
Bi2O3、Sb2O3、MnO2、CoO、NiO、及びCr2O3を含む該出発材料を、ZnOと混合する前に、600℃より高い温度で仮焼する、請求項5に記載のバリスタ材料を調製するための請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のバリスタ材料を使用して、250〜400V/mmの範囲の目標スイッチング電界強度を有するサージアレスタを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のサージアレスタ用バリスタ材料、請求項9に記載の前記バリスタ材料の調製方法、及び請求項11に記載の250〜400V/mmの範囲の目標スイッチング電界強度(target switching field strength)を有するサージアレスタ用の前記バリスタ材料の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バリスタ、すなわち、電流/電圧非線形抵抗は、当技術分野で周知であり、過電圧保護デバイスとしてよく用いられる。概して、過電圧保護デバイスは、電力系統または電子装置の回路に使用され、正常な電圧に重畳された過電圧を除去することによって、電力系統または電子装置を保護する。この過電圧保護の原理は、正常電圧において絶縁体として機能するが、過電圧が印加されたときは低抵抗を示す、バリスタの特性に基づく。
【0003】
周知のバリスタの中では、ZnO系のバリスタ材料のディスクが広く用いられている。主成分のZnO以外に、これらのバリスタ材料は、通常、バリスタの特性に影響を及ぼす多くの他の添加剤を含む。
【0004】
この点について、バリスタ材料の高い非線形特性は、主に、ZnO粒子の周囲にBi原子の単層を形成してポテンシャル障壁を作り出すBi
2O
3の存在、及びまた、粒界にさらなる欠陥を作り出すことによってポテンシャル障壁を安定化させるCo、Mn等の遷移金属の存在によるものである。従来のバリスタ材料は、粒成長を抑制するいわゆる「スピネル」を形成することによる微細構造の制御のために、数mol%の濃度で、Sb
2O
3またはSiO
2をさらに含む。
【0005】
ZnO相、粒界の酸化ビスマス相、及びスピネル相に加えて、また、少ない濃度の他のドーパントを含むことができる組成式Bi
3Sb
3Zn
2O
14で表されるパイロクロア相と呼ばれる第4の相が、通常存在する。Inada等、Japanese Journal of Applied Physics, 1980, Vol.19, No.3, 409〜419頁によれば、例えば、パイロクロア相は、約650〜750℃の温度(実際の組成に依存する)における焼成の際に現れ始め、950超〜1050℃の温度にてパイロクロアからスピネルが形成され、パイロクロア相は消滅する。それにもかかわらず、1200℃より高い温度で焼成されたバリスタでも、概して、製造における比較的ゆっくりとした冷却速度の間にパイロクロア相が再形成するために、ある程度のパイロクロア相を有する。上述のInadaによる報告によれば、パイロクロアは、非オーミック特性に何の役割も有さないと考えられている。
【0006】
良好なバリスタ材料の所望の特性は、それぞれ明確に定義されるスイッチング電圧(switching voltage)Vsまたはスイッチング電界強度(switching field voltage)Es、等式I=(V/C)
α(アルファ)によるスイッチング領域における高い非線形性係数α(アルファ)、高いエネルギーの取り込み、低い電力損失、及び耐用寿命の間の高い安定性である。
【0007】
スイッチング電圧Vsは、粒界につき約3ボルトであり、直列の粒界の合計数に依存し、それゆえに、直列のバリスタディスクの数及びブロックの大きさにも依存する。スイッチング電界強度Esは材料特性であり、材料の粒径または粒界の濃度、それぞれによって決まる。以下において、Esは、0.1mA/cm
2の電流密度におけるスイッチング電界強度として定義される。
【0008】
商業的に入手可能なバリスタ材料のほとんどは、150〜250V/mmの範囲のスイッチング電界強度を有する。それゆえに、そのような電界強度を有するバリスタは、「標準電界(normal field)バリスタ」または「中電界(medium field)バリスタ」と呼ばれ得る。その結果、150V/mm未満のスイッチング電界強度を有するバリスタは「低電界(low field)バリスタ」と呼ばれ、250V/mm超のスイッチング電界強度を有するバリスタは「高電界(high field)バリスタ」と呼ばれる。以下において、「高電界バリスタ」(Es=250〜400V/mm)及び「超高電界バリスタ」(Es>400V/mm)という表現の間にさらなる区別を設ける。
【0009】
高電界バリスタ材料は、高電圧バリスタ(または「サージアレスタ」)用に特に興味深い。というのは、その寸法を減少することができるためである。しかしながら、そのような高電界バリスタ材料を提供することは、主にその温度管理のために、非常に困難な課題である。
【0010】
一方においては、高電界バリスタの通常の連続動作の際の電力損失が、より小さい体積内で発生し、バリスタディスク及びアレスタ筐体の各部を高温で動作させる。より高い温度は、含まれる材料全ての劣化をもたらすために、望ましくなくまたは許容できないことが多い。また、通常の動作条件において高温であると、過電圧パルスの際に熱負荷を吸収するバリスタの性能が低下し、そのような負荷条件後の熱暴走の危険性が増大する。それゆえに、標準スイッチング電界強度を有するバリスタ材料と比較して、高電界バリスタ材料については、非常に低い特定の電力損失(体積及び印加電界強度に規格化された電力損失)が求められる。
【0011】
他方では、また、過電圧パルスの際の熱負荷が、より小さい体積のためにより厳しくなる。それゆえに、良好なインパルス性能も必要であり、高電流領域における高い電気的非線形性及び高エネルギー吸収性能の要求をもたらす。
【0012】
さらに、耐用寿命にわたっての電気特性の劣化を避けなければならない。
【0013】
高または超高電界強度を達成するためには、バリスタ材料の粒径を大幅に減少させる必要がある。
【0014】
粒径に影響を与え、それによりスイッチング電界強度に影響を及ぼす、いくつかの可能性が知られている。1つの選択肢は、焼成温度を低下させることであり、米国特許第4,719,064号に参照される例に関しては、より小さい粒径及びより高いスイッチング電界強度を得ている。しかしながら、これは所定の範囲内でのみ可能であり、より低い焼成温度は通常、より低い非線形性及びインパルス性能の低下をもたらす。最高温度を低下させること及び焼成中の滞留時間を減少させることによる非線形性係数の低下に関して、その影響は、例えば、Balzer等, J. Am. Ceram. Soc., vol.87, No.10(2004), 1932頁に示されている。低すぎる焼成温度のさらなる不利点は、それによって、材料が焼成の際に適切に密度が高くならないことが多く、多孔質構造を残し、エネルギー吸収性能を低下し得るという点がある。
【0015】
バリスタ材料の電気特性を調整するための他の選択肢は、化学組成を変更することである。
【0016】
従来のバリスタ材料に含まれる成分のうち、Bi
2O
3は、焼成の際に液相を形成する唯一の成分である。それゆえに、Bi
2O
3含有量の減少は、焼成の際の液相の量を減少させて、粒成長を遅くし、それによってスイッチング電界強度も増加する。しかしながら、ビスマスの減少によるスイッチング電界強度の増加の効果は、比較的小さい、さらに、より小さい粒径には、粒界を覆うため且つ安定なポテンシャル障壁を形成するために、より多くのビスマスが必要である。そうでなければ、非線形性は大きく減少する。
【0017】
上述のように、Sb
2O
3は、微細構造を制御するため及びスイッチング電界を向上するために、従来のバリスタ材料によく用いられる。アンチモンは、焼成の初期段階にて、粒成長を抑制する亜鉛アンチモンスピネルを形成することが知られている。Sb
2O
3の添加は、例えば欧州特許出願公開第0961300号に開示されている。しかしながら、以下に詳細に示すように、Sb
2O
3は、利用可能な酸化ビスマスの一部を吸収するために、バリスタ材料の非線形性及び電力損失に悪影響を有することが、最近分かった。
【0018】
より高い電界強度を得るために、0.1〜数mol%の範囲内でケイ素を添加することがさらに提案されている。この点については、例えば、米国特許第5,107,242号に参照され、酸化ケイ素が0.6〜2.0mol%の量で用いられ、前記酸化ケイ素が粒界層に偏析して、ZnO粒の成長を抑制する。ケイ素の使用は、欧州特許出願公開第0320196号、米国特許第4,920,328号、米国特許第4,719,064号、独国特許出願公開第2739848号、及び米国特許第5,075,666号にさらに教示されている。
【0019】
ケイ素の添加は、アンチモンの場合と同様の効果を有する亜鉛ケイ素スピネルの形成をもたらす。しかしながら、高含有量のケイ素を含む組成物についてのスイッチング電界強度の向上は、多くの場合、非常に素晴らしく、高電界バリスタ材料だけではなく、超高電界バリスタ材料をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
最新技術の上記の不利点を鑑みて、本発明の目的は、低電力損失レベルを有する高電界バリスタ材料を提供することである。前記バリスタ材料が、他の電気特性、すなわち、特に、非線形電流−電圧曲線(または電流密度−電界強度曲線のそれぞれ)、インパルス挙動、及び耐用寿命の安定性に関する優れた性能を有することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、請求項1に記載のバリスタ材料によって達成される。本発明の好ましい実施態様は、従属請求項に規定される。
【0022】
請求項1によれば、本発明のバリスタ材料は、ZnO相を形成するZnO、及びBi
2O
3相を形成するBi
2O
3として表されるBiを含む。バリスタ材料は、スピネル相をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】a)比較的大きい粒径を有する低電界強度バリスタ材料、及びb)a)の粒径の3分の1の直径の粒径を有する高電界強度バリスタ材料、の微細構造の模式図を示す。
【
図2】バリスタ材料のビスマス含有量の関数としての、バリスタ材料の非線形性係数α(アルファ)及びスイッチング電界強度Esのグラフ表示を示す。
【
図3】バリスタ材料のSb
2O
3含有量の関数としての、バリスタ材料のスイッチング電界強度Es、非線形性係数α(アルファ)、及び電力損失P
Lの相対的変化のグラフ表示を示す。
【
図4】バリスタ材料のSb
2O
3含有量の関数として、(規格化のためにZnOピーク[1 0 0]を用いた)スピネルピーク[4 0 0]及びパイロクロアピーク[6 2 2]の規格化強度、並びに表1に記載のバリスタ材料のスピネルに対するパイロクロアの比のグラフ表示を示す。
【
図5】3つの異なる温度における電界強度の関数として、最新技術による中電界バリスタ材料及び本発明による高電界バリスタ材料の規格化した電力損失(印加電界強度及びブロックの体積に規格化)のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
従来のバリスタ材料とは対照的に、本発明の高電界バリスタ材料は、ごくわずかのパイロクロア相を含むか、または全くパイロクロア相を含まないことを特徴とする。請求項1に規定されるように、本発明のバリスタ材料内のパイロクロア相の量は、スピネル相に対するパイロクロア相の比が0.15未満となる量である。これに関して、前記比は、CuKα(アルファ)線を用いて測定される、スピネル相の最高ピークに対するパイロクロア相の最高ピークのX線強度比を表す。しかしながら、パイロクロア及びスピネル相それ自体の最高ピークは、通常、定量には適さない。というのは、それらが、バリスタ材料の他の相と重なるためである。相の最高ピークを測定する代わりに、最高ピークに対するピーク比が知られている異なる主要ピークを測定することができる。この場合、測定したピークの強度に前記ピーク比を乗じて、最高ピークの強度を計算する必要がある。
【0025】
本発明は、焼成中のパイロクロアの形成が、バリスタ材料の非線形性の低下及びまた電力損失の増大を伴うという驚くべき発見に基づく。理論に束縛されるいかなる意図もないが、パイロクロアに結合された分のビスマスが粒界において無くなるために、低く不安定なポテンシャル障壁をもたらすと考えられる。
【0026】
この観察結果は、最新技術において教示されているもの、特に、パイロクロアは非オーミック特性に何の役割も有さないということを教示しているInada等による論文に記載されているものとは対照的である。
【0027】
本発明によってパイロクロア相を減少または避けることによって、優れた非線形性係数及び高温においてさえも非常に低い電力損失を有する高電界バリスタ材料が得られる。電力損失に関しては、本発明によって、115℃において、40mW/(cm
2*kV)未満、好ましくは35mW/(cm
2*kV)未満の値が、達成され得る。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、スピネル相に対するパイロクロア相の比は0.1未満である。
【0029】
概して、本発明の高電界バリスタ材料は、ZnO及びBi
2O
3以外に、MnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3としてそれぞれ表されるMn、Co、Ni、及びCrを含むスピネル形成成分の混合物を含む。最新技術、特に米国特許第5,107,242号の教示とはさらに対照的に、本発明のバリスタ材料に含まれるSiO
2の量は概して低く、好ましくは0.05mol%未満である。
【0030】
本発明の高電界バリスタ材料は、その成分の量を好適に選択すること及び/またはその調製の際のプロセスパラメータを好適に設定することによって得られ得る。
【0031】
本発明のバリスタ材料の第1の種類によれば、
Bi
2O
3の量は、少なくとも0.3mol%、さらに好ましくは少なくとも0.6mol%、最も好ましくは0.6mol%〜0.9mol%、
Sb
2O
3の量は1.8mol%未満、
Sb
2O
3に対するBi
2O
3のモル比は少なくとも0.5、並びに
MnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3の合計量は少なくとも2.5mol%、さらに好ましくは少なくとも3mol%、
である。
【0032】
上述のように、高濃度のアンチモンは、粒成長抑制剤として機能することによってスイッチング電界強度の増加に望ましい亜鉛アンチモンスピネルの粒子の増加を形成するだけでなく、パイロクロア相が形成されるために利用可能な酸化ビスマスの一部が吸収され、粒界の活性化について機能できないということも分かった。
【0033】
アンチモンの量を低くする、とりわけ1.8mol%未満にすることによって、パイロクロア相は減少し、上で定義した第1の種類のバリスタ材料の非線形性の向上及び電力損失レベルの低減をもたらす。
【0034】
図を参照して示されるように、Sb
2O
3が1.8mol%未満である場合は、本質的にパイロクロア相は形成されない。さらに好ましくは、Sb
2O
3の量が1.5mol%未満であり、最も好ましくは0.9mol%〜1.5mol%である。
【0035】
多量のアンチモンの代わりに、本発明の第1の種類のバリスタ材料は、遷移金属のMn、Co、Ni、及びCrを含むスピネル形成成分の混合物を含み、MnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3の合計量は、少なくとも2.5mol%、さらに好ましくは少なくとも3mol%である。それぞれ高濃度の上記の遷移金属成分の存在によって、さらなるスピネル粒子が形成されるため、Sbの添加と同様にスイッチング電界強度を増加させることができるが、パイロクロア相に結合されることによる粒界からのビスマスの除去が発生しないという大きな利点を有する。したがって、本発明のバリスタ材料においては、高品質のポテンシャル障壁の形成に影響を受けない。
【0036】
高電界強度特性を得るために、Bi含有量を大幅に減少させる必要があり、Sbドーピングを増加する必要があり、増加したSiドーピングレベルを用いる必要がある最新技術の一般的教示とは対照的に、高電界バリスタ材料の最新技術についての上記の教示にしたがって調製した材料と比較して、実験によって、本発明の第1の種類のバリスタ材料が、非線形性係数、特定の電力損失、及び長期間の安定性において優れていることが示された。
【0037】
本発明の第2の種類のバリスタ材料によれば、Bi
2O
3の量が0.5mol%未満、Sb
2O
3に対するBi
2O
3のモル比が0.4未満、好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.25未満、並びにMnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3の合計量が少なくとも4mol%である。この組成物によって、0.15未満のスピネル相に対するパイロクロア相の比が達成され得る。第2の種類のバリスタ材料を調製するための対応する方法を以下に特定する。
【0038】
さらに好ましい実施態様によれば、スピネル形成成分の混合物は、Fe、Al、Ti、Mg、及びCuからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるスピネル形成成分をさらに含む。
【0039】
さらに好ましくは、前記材料は、Ag及びBからなる群から選択される少なくとも1つのドーパントをさらに含む。
【0040】
本発明は、Bi
2O
3、Sb
2O
3、MnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3を含む出発組成物を、ZnO及び所望により残りのドーパントと混合し、ディスク、好ましくは円筒形ディスクに圧縮して、1000℃超の温度にて焼成して、バリスタ材料を得る、本発明によるバリスタ材料を調製するための方法にさらに関する。
【0041】
概して、バリスタ材料の成分は、分散剤、バインダー、及び/または潤滑剤などの有機添加剤とともに、水性懸濁液(「スラリー」)中で、分散され、粉砕され、混合される。スラリーは、スプレー乾燥によって粉末粒子に粒状化される。前記粉末は、ディスクに圧縮され、1000℃超の温度で焼成され、最終のバリスタ特性を発現させる。次いで、焼成ブロックは、通常、メタライゼーション及びグレージング加工工程に送られる。
【0042】
第2のバリスタ材料による組成物が使用される場合、出発組成物を、600℃超の温度の仮焼工程に送ってから、ZnO及び所望により残りのドーパントと混合し、円筒形ディスクに圧縮し、そして焼成することによって、0.15未満のスピネル相に対するパイロクロア相の比が得られる。
【0043】
得られる特性を鑑みると、本発明のバリスタ材料は、250〜400V/mmの範囲の目標スイッチング電界強度を有するサージアレスタ用に特に好適である。
【0044】
本発明は、次の例によってさらに説明される。
【実施例】
【0045】
バリスタ材料のディスクを、主成分としてのZnOに加えて、表1及び2に示すBi
2O
3及びSb
2O
3の量を用いて、調製した。これらの例のバリスタ材料は、約0.7mol%のMnO
2、約1.4mol%のCoO、約1.4mol%のNiO、及び約0.1mol%のCr
2O
3を用いて、MnO
2、CoO、NiO、及びCr
2O
3として表されるMn、Co、Ni、及びCrを含むスピネル形成成分の混合物をさらに含む。また、各バリスタ材料について、それぞれのスイッチング電界強度(Es)、非線形性係数α(アルファ)、及び115℃における電力損失(P
L)を、表1及び2に示す。
【0046】
材料の内部の相を測定する方法は、当業者に周知であり、中性子回折またはX線回折などの回折方法が含まれる。特に、本例においては、CuKα(アルファ)線を使用したXRDによって相を測定した。定量分析については、[6 2 2]パイロクロアピーク及び[4 0 0]スピネルピークを使用した。というのは、(i)両方のピークが独立しているので、他の相のピークとの重なりがないこと、及び(ii)両方のピークがそれらの相の主要ピークであり、相が存在する場合に容易に検出し得るためである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1にみられるように、パイロクロア相の量が、スピネル相に対するパイロクロア相の比が0.15未満の量である本発明によって、比較的高い非線形性係数α並びに低い電力損失が得られた。表1に示したバリスタ材料のスピネル相に対するパイロクロア相の比のグラフ表示を、以下に説明する
図4に示す。
【0050】
上述のように、バリスタ材料の粒径を小さくするため及びそのスイッチング電界強度を増加するための最新技術における1つの技術的手段は、Bi
2O
3の量を減らし、それによって焼成時の液相の存在量を減らすことである。しかしながら、最低限のBi
2O
3は、ビスマスを用いて全ての粒界を覆うため、及び高品質のポテンシャル障壁を形成するために必要である。
【0051】
表2から明らかなように、第1の種類の組成物における少なすぎる量のBi
2O
3は、スピネル相に対するパイロクロア相の比が比較的低いにもかかわらず、比較的低い非線形性係数及び比較的大きい電力損失を有するバリスタ材料をもたらし得る。
【0052】
得られた結果を、添付の図を参照してさらに説明する。
【0053】
図1のb)による高電界強度バリスタの、より小さい粒径について、界面面積が増加するため、全ての粒界を覆うための最小限のBi
2O
3量が多くなることが、
図1から明らかである。概算では、最小限のBi
2O
3濃度は、
Bi
2=(d
1/d
2)
3×Bi
1
(式中、d
1及びd
2はそれぞれのバリスタ材料の粒子の直径であり、Bi
1及びBi
2は、安定なポテンシャル障壁を得るための対応する最小限のBi
2O
3濃度である)
による粒径の逆数の3乗のスケールを必要とする。
【0054】
非線形性係数及びスイッチング電界強度への低ビスマス濃度の影響を、
図2に示す。小さい粒子(及びそれによる高スイッチング電界強度)を得るための最適なBi
2O
3含有量、並びに高い非線形性係数のための最適なBi
2O
3含有量が、それぞれ反対方向に向いている。このことは、本発明の第1の種類のバリスタ材料によって反映され、Bi
2O
3として表されるBiの量が、少なくとも0.3mol%、最も好ましくは0.6mol%〜0.9mol%に設定されている。したがって、液相の量をできるだけ少なく保ちながら、全ての粒界を利用可能とするための十分なビスマスがある。
【0055】
バリスタ材料のスイッチング電界強度を向上するための最新技術におけるさらなる技術的手段は、Sb
2O
3の添加である。しかしながら、
図3に示すように、Sb
2O
3の添加は制限を受ける。
図3によれば、スイッチング電界強度は、Sb
2O
3の量の増加に伴って向上するが、Sb
2O
3が約2.5mol%の制限濃度を超えると、非線形性係数の大幅な減少及び電力損失の大きな増加をもたらす。このことは、Sb
2O
3として表されるSbの量が1.8mol%未満である本発明の第1の種類のバリスタ材料によって反映される。
【0056】
アンチモンの濃度が高い場合は、亜鉛アンチモンスピネルが存在するだけでなく、さらなるパイロクロア相も存在する。
【0057】
図4に示すように、異なるSb
2O
3含有量を伴う組成物を、X線回折を用いて分析した。アンチモンの濃度が高い場合は、ZnO及び酸化ビスマス相以外に、亜鉛アンチモンスピネルが存在するだけでなく、パイロクロア相も形成され始めることが分かった。
図4に示すグラフ表示では、スピネルの[4 0 0]ピーク(CuKα線について2θ=42.07°)の強度及びパイロクロアの[6 2 2]ピーク(CuKα線について2θ=58.43°)の強度を、ZnOの[1 0 0]ピーク(CuKα線について2θ=31.77°)の強度に規格化した。
図4から分かるように、スピネル相の量が、Sb
2O
3含有量の増加にともなって、徐々に増加しているが、Sb
2O
3が2〜2.5mol%の範囲の濃度で、さらなるパイロクロア相が形成し始め、Sb
2O
3含有量が多いほど連続的に増加している。
【0058】
パイロクロアの形成と電気特性の低下との間には強い相関関係があり、Sb
2O
3が2〜2.5mol%の同じ濃度にて両方が始まることが分かった。理論に束縛されるいかなる意図もないが、Bi
2O
3の一部が、焼成バリスタ内で、パイロクロア相に結合することによって粒界に無くなり、不安定なポテンシャル障壁をもたらす。そのような挙動は、特に、Bi
2O
3含有量が低く保たれ液相の量が最小化される、高電界材料の場合にみられる。さらに、パイロクロア形成の出発点にわたってのSb
2O
3の添加は、2つの面で大きな悪影響を有する。第1に、より大きな割合のパイロクロア相が形成され、より大きな量のビスマスが結合される。第2に、粒径が減少するので、全ての粒界を十分に覆って電気特性の低下を抑制するために、より多い含有量のBi
2O
3を必要とするだろう。
【0059】
本発明の第1の種類のバリスタ材料によれば、アンチモン含有量は、検出可能なパイロクロアが形成されない水準に保たれる。本発明によれば、スイッチング電界強度Esの残りの増加は、CoO、MnO
2、Cr
2O
3、及びNiOの4つの金属酸化物を含むスピネル形成成分の高い合計濃度を用いることによって、達成され得る。この混合物を、所望の電気特性を得るために必要な濃度よりも高い濃度で使用すると、好ましくは過剰のCo、Mn、Cr、及びNi原子をスピネル相中に(Sb及びZnの一部とともに)見ることができ、バリスタ材料内の異なる添加剤の濃度に依存して変化し得るスピネル中のZn、Sb、Co、Mn、Cr、及びNi原子の正確な比で、その組成(Zn、Sb、Co、Mn、Cr、Ni)
3O
4(すなわち、x1+x2+x3+x4+x5+x6=3である(Zn
x1Sb
x2Co
x3Mn
x4Cr
x5Ni
x6)O
4)が変更され得ることが見られた。さらに、バリスタ材料中でより高い割合のスピネル相が生成され、粒径が減少し、スイッチング電界強度の所望の向上をもたらした。
【0060】
上述したように、本発明は、250〜400V/mmの範囲のスイッチング電界強度Esを有する高電界バリスタ材料を提供することができる。パイロクロアが形成されるSb
2O
3臨界含有量を超えないので、ビスマスは結合されず、バリスタ材料の全てのBi
2O
3は安定なポテンシャル障壁を形成するために利用可能である。その結果として、優れた非線形性係数及び高温でも非常に低い電力損失を有する高電界バリスタ材料が得られる。
【0061】
3つの異なる温度にて、本発明による高電界バリスタ材料及び最新技術による中電界バリスタ材料のAC電圧(50Hz)にて測定した電力損失を、
図5にグラフを使って示す。これについて、電力損失は、印加された電界強度及びブロックの体積に規格化されており、電界強度はAC負荷におけるスイッチング電界強度で規格化されている。本発明による材料の低電力損失特性は、より高い温度及び電界強度においても、より明確であることが分かる。高温における非常に低い電力損失は、過電圧パルスの後に特に重要である。より小さい体積のために、高電界材料がより高い温度に加熱される。通常の動作モードのときに、バリスタは、最初の数時間に増加した温度にて動作する。高温における低電力損失を鑑みると、熱暴走の危険性は、本発明のバリスタ材料において大いに減少する。これは、高電界バリスタを有する用途に不可欠な条件である。