(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載され、走行中の車両の速度を検出する速度センサと、走行中の車両の位置を検出するGPS受信機と、走行中の車両の加速度を検出する加速度センサと、検出された各種データを記録するデータ記録手段と、タイマーとを有し、走行中の車両の各種データを時系列に測定し記録する測定・記録手段と、
前記測定・記録手段からのデータを格納する記憶手段と、記憶手段からデータを読み出すデータ読出手段と、読み出されたデータを再生する再生手段と、読み出されたデータを解析する解析手段と、前記再生または解析されたデータを表示する表示手段とを有し、前記測定・記録手段からのデータを基に車両の走行状況を再現表示し運転を評価する再現・評価手段とを備えた車両走行再現評価装置であって、
前記再現・評価手段の解析手段は、前記GPSのマップ上における車両走行経路を基に車両走行の旋回半径を演算により求め、車両の加減速に伴う加速度と、旋回加速度と、前記旋回半径とを、前記表示手段の1つのグラフ画像の中に時系列で表示することを特徴とする車両走行再現評価装置。
前記再生手段は複数周回分のデータを同時に再生して、当該複数周回分の車両走行状況を、それぞれ独立して表示手段に時系列で表示することを特徴とする請求項1記載の車両走行再現評価装置。
前記解析手段は複数周回分のデータを同時解析して、当該複数周回分の、加減速加速度と旋回加速度と旋回半径とを、前記表示手段の上の1つのグラフ画像にそれぞれ独立して時系列で表示することを特徴とする請求項1記載の車両走行再現評価装置。
前記再現・評価手段はさらに運転評価手段を有し、前記解析手段による複数周回分のデータ解析に基づく、加減速加速度と旋回加速度と旋回半径とについての、基準値からの偏差を求め、運転評価を行うことを特徴とする請求項1記載の車両走行再現評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)サーキットでの実際の試験走行
以下に、本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る車両走行再現評価装置を構成する測定・記録部を示すブロック図である。
図1において、符号1は測定・記録部を示すもので、車両に搭載されてその走行中における各種データを収集、記録する。この測定・記録部1は、当該測定・記録部1全体の動作制御を行う制御手段としてのCPU2と、CPU2の動作タイミングをとるタイマー装置3と、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)衛星からの信号を受信して現在位置を求めるGPS受信機4と、車両の加速度を検出する加速度センサ5と、車両の速度を検出する速度センサ6と、サーキット内のコース上に決められた基準地点を検出する基準地点検出センサ7と収集したデータを格納するメモリ8と、ネットワーク9に接続されメモリ8に格納されたデータをネットワーク9に接続された他の機器やサーバなどへ送信したり、ネットワークを通してデータを取り込んだりする通信部10とを備えている。加速度センサ5には、例えばジャイロスコープを組み込んだセンサ装置が用いられ、加減速加速度及び角加速度を測定可能である。また、加速度センサ5は用いないで速度センサ6で求めた速度データを時間微分する演算により加速度を求めることもできる。さらに、加速度センサ5も速度センサ6も用いないでGPS受信機4において得られた位置情報と時間情報から、位置データを時間微分演算して速度を求め、さらにその速度データを時間微分する演算により加速度を求める方法を採ることもできる。タイマー装置3については、CPU2に内蔵させてもよい。GPS受信機4はサーキット内における車両の刻々の位置を検出するから、位置情報を時系列で取得することにより、車両の走行軌跡を時系列で得ることができる。速度センサ6は、例えば単位時間当たりの車輪の回転数から求める。メモリ8には書き換え自在のRAM(ランダム・アクセス・メモリ)が用いられる。なおメモリ8には測定・記録部1が測定処理をし記録動作を行うためのプログラムも格納される。
【0015】
図2は、本発明の上記第1の実施の形態に係る車両走行再現評価装置を構成する再現・評価部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2において、符号11は再現・評価部を示すもので、上記測定・記録部1からの記録データを取り込んで車両の走行状態を再現、評価する。この再現・評価部11は、当該再現・評価部11全体の動作制御及び測定データを演算処理して解析、再生等を行う制御演算部12と、ネットワーク9に接続され当該ネットワークを通して他の機器やサーバなどの間でデータを送信したり、データを取り込んだりする通信部13と、ネットワーク9を通して取り込んだデータを格納する記憶手段としてのHDD(ハードディスク)14と、制御演算部12において処理された結果を表示する手段であるディスプレイ15とを備えている。制御演算部12は各種演算を行うためのCPU16と、CPU16の演算処理に必要なプログラム、データが展開されるRAM17、およびその他の動作部(タイマーなど)を有している。
【0016】
図3は本発明上記第1の実施の形態に対応して構成された再現・評価部11の機能ブロック図である。再現・評価部11は、本発明を実施するために、制御演算部12にデータ取得部18と、データ再生部19と、データ解析部20と、運転評価部21とを備えている。
図2に示された通信部13は通信インタフェースを構成し、HDD14は記憶部を構成する。また、ディスプレイ15は表示部を構成する。データ取得部18は、制御演算部12で実行される演算の種類に応じて必要なデータを記憶部14から読み出す。データ再生部19は、制御演算部12が車両走行を再現するために、記憶部14から読み出された再生用データを再生処理して表示部15へ送付する。再生処理には、単一車両の走行軌跡を複数周回分GPSマップ上に展開し、それを時系列で表示する処理、或いは複数の車両データ(測定データを解析処理して得たデータ)に基づく走行軌跡を複数周回分GPSマップ上に同時に展開し、それを時系列で表示する処理などがある。ここで、「複数の車両データに基づく走行軌跡を展開する」とは、例えば車両又は運転者のうち少なくとも一方が異なる2種類の車両データを展開することのみならず、同一車両、同一運転者であっても、測定データの取得時間(日、時、分)が異なる車両データを展開する場合も含まれる。この実施の形態では車両2台分として考える。この場合は、2台の車両間で、測定・記録部1の基準点検知センサ7が検出した基準点を一致させることにより、別々に走行した2台の車両を表示部15の画面上では競争しているように表示させ、互いの運転技量の比較評価が行える。データ解析部20は、制御演算部12が測定データから、加減速加速度と旋回加速度(G加速度)を求めて車両走行を再現するに当り、記憶部14から読み出された解析用データを同一の加速度表示用のグラフ図上に表示するため、解析処理して表示部15へ送付する。解析処理にはGPSマップ上に展開された車両の走行軌跡から、旋回半径を求め、この旋回半径を上記加速度表示用のグラフ図上に表示する処理もある。また、運転評価部21は解析部20において演算により得られた結果を比較対照し、運転者の運転技量についての評価を出す。
【0017】
以上のような構成を有する車両走行再現評価装置について、以下動作を説明する。測定・記録部1における車両走行に関する各種データの測定、記録については従来の車両走行データ収集装置(データロガー)における各種データの測定、記録と同様にして実行される。すなわち、GPS受信機においては、GPS衛星からの信号を受信して走行中の車両の現在位置(サーキットを走行している刻々の位置)を演算により割り出し、時刻情報とともにメモリ8に記録する。時刻情報としては測定開始によりスタートされたタイマー装置3が刻む情報が使用される。また、そのサーキットの周回ごとのデータを区分けし明確にするため、サーキット内の所定の位置を測定のための基準点(PP)と定め、その基準点PPを車両が通過した時点を基準地点検出センサ7によりカウントしてメモリに記録する。加速度センサ5はジャイロスコープなどの動作により車両の加速度を検出しメモリ8に記録する。速度センサ6は車輪の回転数をエンコーダー操作により読み取るなどの方法で車両の速度を検出しメモリ8に記録する。これらの各検出動作により収集された各種データがメモリ8に記録される。上記各種データはタイマー動作にしたがって時系列に測定され、時系列データとしてメモリ8に記録される。メモリ8に格納されたデータは通信部10からネットワーク9を介して再現・評価部11へ送信され、再現・評価部11の通信部13において受信される。再現・評価部11へ送られたデータは記憶部14に格納される。なお、測定・記録部1は車両ごとに取り付けられているから、再現・評価部11へは複数の測定・記録部1から測定データが送信されることもあるし、同じ測定・記録部1からでも異なった時間(日、時、分)に取得された測定データが送信されることもあり得る。これらの測定データはすべて記憶部14に格納される。
測定・記録部1から再現・評価部11へ測定データを送る方法としては、上述のような通信部10,13間における直接のデータ通信方式でもよいし、或いは測定・記録部1からインターネットなどのウェブ上の格納サイトへアップロードしておき、再現・評価部11側からは随意に測定データをダウンロードする方式を採ることもできる。また、車両走行再現評価装置の内部に測定・記録部1と再現・評価部11とを組み込んでおき、装置内における転送処理によりデータの測定、及び測定データの送受信と再生表示をほぼ同時に行うようにしてもよい。
さらに、測定・記録部1から再現・評価部11へ測定データを送る別の方法としては、例えば読出・書込手段であるリーダライターと外部記憶媒体による方法も考えられる。すなわち、測定・記録部1と再現・評価部11のそれぞれにリーダライターを備えておき、測定・記録部1側のリーダライターを使って外部記憶媒体に測定データを記録し、次に再現・評価部11側のリーダライターを使って上記外部記憶媒体から測定データを読み出してもよい。外部記憶媒体としては、CD、DVD、その他のデータ記録が可能な媒体が用いられる。
【0018】
再現・評価部11においては各種の処理動作が実行される。一例としては、本発明の車両走行再現評価装置の動作において必要なデータを準備するための処理として、データ解析部20により、コーナー部における旋回半径の算出処理が行われる。この旋回半径の算出は、
図4に示す方法で行われる。
図4において、曲線L1はGPSデータの再生により得られるコーナー部における走行軌跡とする。この走行軌跡L1上に3つの点A,B,C(Bを真ん中とする)を取り、
直線ABの二等分線(直線)をL2とする。また、
直線BCの二等分線(直線)をL3とする。そして、
直線L2と直線L3の交点をQとして、QBを走行地点Bにおける旋回半径とする、というものである。
【0019】
データ解析部20ではその他にも各種演算により必要なデータの算出が行われる。例えば、測定・記録部1に加速度センサ5が取り付けられていないときは、速度データの時系列変化を微分演算することにより加減速加速度を求め、また、上記旋回半径データと速度データから角速度、及び角加速度を求めることもできる。さらに時系列データとして取り込まれたデータを距離系列データにデータ変換する演算も行う。この距離系列データの作成には、時系列データとして表された速度データを積分演算し、上記基準点PPをゼロ位置(原点)として、そこからの距離(道のり)を座標の軸に表す。これらの演算を実行することにより、直接には測定されなかった各種データを求めることができる。
【0020】
図5は測定・記録部1での測定により得られ、或いは再現・評価部11での演算により得られた車両データの一例を表にして示した図である。この表図では時間データと、距離データと、旋回加速度データと加減速加速度データと旋回半径データが時系列で表示されている。例えば、時刻01:15.5(1分15.5秒の時点)では、
基準点PPからの距離:2.304(Km)
旋回加速度:−0.7623(G)
加減速加速度:−0.509(G)
旋回半径:94.44(m)
であることを表している。
【0021】
走行軌跡の再生処理は、データ取得部18により記憶部14からGPSデータが読み出されデータ再生部19へ送られて処理することにより実行される。このGPSデータはデータ再生部19で処理された後、表示部15へ送られることにより再生表示される。
図6は再生処理中における走行軌跡その他の再生データの、表示部15における表示の一例を示す図である。この図では、表示部15の1つの画面に、走行軌跡を表示する走行軌跡表示画面15aと、この走行軌跡に対応する速度表示画面15bと、同じくこの走行軌跡に対応する加速度及び旋回半径表示画面15cの3つのセクタ画面が表示されている。走行軌跡表示画面15aにおいて、符号25はサーキットのコースを表し、26a、26bは走行軌跡を表す。27aはサーキットのコース25を走行して走行軌跡26aを記録した車両及び再生処理中における当該車両の現在位置を表し、27bは同じサーキットのコース25を走行して走行軌跡26bを記録した車両及び再生処理中における当該車両の現在位置を表す。したがって、車両27a及び車両27bの表示マーク(△マーク)は時間の経過とともにマーク先方(走行軌跡表示画面15aの上方)へ移動する)。すなわち、この走行軌跡表示画面15aでは、現在、2台の車両についての再生処理がタイミングを同期させた状態で実行されていることを示している。
【0022】
速度表示画面15bにおいて、符号28は速度グラフを表す。このグラフ図において縦軸は速度(Km/h)を表し、横軸は距離(Km)を表す。すなわち、このグラフ図は車両の速度を距離系列により表したものである。グラフ28のうち28aは車両27aの速度変化を表し、28bは車両27bの速度変化を表す。グラフの途中(中間部分)に表されている縦軸29は、グラフ図の再生処理中における現在位置を表し、走行軌跡表示画面15aの現在位置に対応する。
【0023】
加速度及び旋回半径表示画面15cは加減速加速度、旋回加速度及び旋回半径、を1つの画面に表示する。この加速度及び旋回半径表示画面15cにおいても上述の表示画面15a、15bと同様に、再生処理中における現在位置での加減速加速度、旋回加速度及び旋回半径を表している。この加速度及び旋回半径表示画面15cへの表示内容についてはさらに詳細に説明する。
【0024】
図7は加速度及び旋回半径表示画面15cの表示の仕方を説明する図である。
図7において、加速度は円グラフ上に点(ドット点)として表される。円グラフの横軸31は旋回加速度を表し、縦軸32は加減速加速度を表す。横軸31についてみると、左側は車両が右旋回(ターン)したときの旋回加速度、右側は車両が左旋回したときの旋回加速度の値(大きさ)を示し、円の中心、すなわち縦軸31、横軸32の交点は加速度がゼロ(原点)であり円の中心から遠去かるにしたがって加速度は大きくなる(
図7中の1.0Gとか1.5Gの表示)。縦軸32についてみると、上側は車両が減速したときの加速度、下側は車両が加速したときの加速度の値(大きさ)を示し、円の中心は加速度がゼロ(原点)であり円の中心から遠去かるにしたがって加速度は大きくなる。そして、加速度は
図7の矩形領域33の内部にドット点として散布表示される。なお上記右、左、或いは上、下の設定はそれぞれ逆であってもよい。
【0025】
さらに縦軸32の下半分は旋回半径の表示用座標軸(これを「旋回半径座標軸32a」とする)としても用いられ、縦軸31、横軸32の交点を旋回半径ゼロ(原点)として下方へ向けて旋回半径が増加することを示すゲージ(
図7中の100mとか150mの表示)が表されている。そして、旋回半径は
図7の矩形領域34の内部の旋回半径座標軸に隣接して指示マークとして表示される。
【0026】
図8は、上述のような設定、或いは規約の下における加速度及び旋回半径表示画面15cの表示例を示す図である。
図8(a)では、車両の走行にしたがって、時々刻々変化する加減速加速度及び旋回加速度を表すドット点35(同図中小さな丸点で示される)が複数個、測定時刻毎に円グラフ上にプロットされ、且つ消去されずに継続的に表示されることにより散布図が形成されている。
図9はこれら加減速加速度及び旋回加速度を表す複数のドット点を生成させる車両データを時系列で示した図である。
図9では、加速度及び旋回半径表示画面15cの表示例を示すのに必要なデータのみを抽出して示したため、
図5の車両データに比べて省略形式で示してある。
図9の車両データにおいて、時系列をたどると、測定時刻は、先ず、時刻01:14.5、次に、時刻01:14.7、その次に時刻01:14.9、・・・というように刻まれている。したがって、加減速加速度及び旋回加速度を表すドット点はこの時刻順に、円グラフ上の各時刻に対応する値のポイントにプロットされる。そして、
図8(a)中のマーカー表示されたドット点(マーカードット点)36は、
図9において枠37で囲まれた時刻(時刻01:15.7である)における加減速加速度(−0.515G)及び旋回加速度(−0.8621G)に対応するドット点であり、現在位置(或いは現在時点)での各値を表す。また、既に述べた通り、
図8のグラフ図には旋回半径も表示されるようになっており、図(a)の旋回半径座標軸32aにはマーカー表示された三角点37が表示されている。このマーカー表示された三角点37は、
図9において枠39で囲まれた時刻(同じく、時刻01:15.7である)における旋回半径(77.45m)に対応する三角点である。
【0027】
図8(b)は、
図9の車両データの時系列をたどって再生処理をしたときの、加減速加速度及び旋回加速度を表すドット点がプロットされる遷移(履歴)状態を表す図である。この図では時系列でプロットされたドット点35(マーカードット点36も含む)をつなぐことにより曲線で表された遷移線38が表示されている。なお
図8(b)において、旋回半径座標軸32aに沿って描かれた両矢印直線は旋回半径を表す三角点37の表示範囲を示す。
【0028】
図10は、
図8(b)とは異なり、車両データの時系列をたどって再生処理をしたときの、加減速加速度及び旋回加速度を表すドット点がプロットされる遷移状態及び旋回加速度の変化を、個々の時間毎の円グラフを表示して示す図である。この図では時間データは連続的に抽出されるのではなく、時系列的に間欠的(飛び飛び)に抽出され
図10(a)〜
図10(i)までのグラフ図として示されている。それぞれのグラフ図について検討すると、
図10(a)のグラフ図においては、マーカードット点40は横軸31より少し下側で縦軸32とほぼ重なる位置にプロットされているから、車両は加減速加速度が加速側すなわち加速状態にあり、旋回加速度はゼロすなわち、旋回半径は無限大(グラフに表れない)に近いということがわかる。次に
図10(b)のグラフ図においては、マーカードット点41は横軸31より上側で、縦軸32の左側の位置にプロットされているから、車両は加減速加速度が減速側すなわちブレーキング状態にあり、旋回加速度は右ターンの加速度が生じていることが分かる。しかしながら、この状態では右ターンをしていても旋回半径はグラフの中に表れていないから、かなり大きな旋回半径であるということがわかる。また、
図10(a)のグラフ図から
図10(b)のグラフ図までの変化が加減速加速度及び旋回加速度がマーカードット点40からマーカードット点41まで遷移したことを表す。次に
図10(c)のグラフ図においては、
図10(b)のグラフ図に比べて、マーカードット点42は横軸31よりさらに上側で、縦軸32のさらに左側の位置にプロットされているから、車両は加減速加速度が減速側すなわちより激しくブレーキングされた状態にあり、旋回加速度は右ターンの加速度がより強く生じていることが分かる。しかし、この状態では右ターンがより急激になっているが、旋回半径はグラフの中に表れていないから、グラフ中に表れる程度には旋回半径は小さくないということがわかる。以上、
図10(a)のグラフ図から
図10(c)のグラフ図までの変化を総括すると、車両は、加速状態にあったものが、サーキットコースのコーナーへ進入する場面で、コーナリングのために減速していることが分かる。
【0029】
図10(d)のグラフ図においては、
図10(c)のグラフ図に比べて、マーカードット点43は横軸31より上側の領域で当該横軸31に近づき、縦軸32の左側において当該縦軸32から大きく遠去かる位置にプロットされているから、車両は加減速加速度が減速側ではあるが減速動作は緩められてブレーキングされた状態にあるのに対し、旋回加速度は右ターンの加速度がかなり強く生じていることが分かる。そして、この状態では右ターンが
図10(c)よりさらに急激になっており、旋回半径が100mを超える程度であることを旋回半径座標軸32a上の三角点44が示している。次に
図10(e)のグラフ図においては、
図10(d)のグラフ図に比べて、マーカードット点45は横軸31より上側の領域で当該横軸31にさらに近づき、縦軸32の左側において当該縦軸32からさらに遠去かる位置にプロットされているから、車両は加減速加速度の減速側において減速動作がさらに緩められてブレーキングされた状態にあるのに対し、旋回加速度は右ターンの加速度がさらに強く生じていることが分かる。そして、この状態では右ターンが
図10(d)よりさらに急激になっており、旋回半径が100mよりも小さくなっていることを旋回半径座標軸32a上の三角点46が示している。次に
図10(f)のグラフ図においては、
図10(e)のグラフ図に比べて、マーカードット点47は横軸31より上側の領域で当該横軸31にさらに近づき、縦軸32の左側において当該縦軸32から少し遠去かる位置にプロットされているから、車両は加減速加速度の減速側において減速動作がほとんど終局段階まで緩められてブレーキングされた状態にあるのに対し、旋回加速度は右ターンの加速度が最大程度になるまでに強く生じていることが分かる。そして、この状態では右ターンが最大近くまで急激になっており、旋回半径が50mよりも小さくなっていることを旋回半径座標軸32a上の三角点48が示している。以上、
図10(d)のグラフ図から
図10(f)のグラフ図までの変化を総括すると、車両は、コーナーに進入したために、減速が緩やかになりながら旋回が始まり、それにしたがって旋回加速度は徐々に大きくなり、旋回半径は徐々に小さくなりながらコーナリング操作が行われていることが分かる。
【0030】
図10(g)のグラフ図においては、
図10(f)のグラフ図に比べて、マーカードット点49は横軸31に一致し、縦軸32の左側において当該縦軸32からの距離が同じ位置にプロットされているから、車両は、ブレーキング動作が終わって加速も減速も行われていない状態にあるのに対し、旋回加速度は相変わらず右ターンの旋回加速度が最大程度に止まって強く生じていることが分かる。そして、この状態では右ターンが最大程度に止まって急激な状態を維持し、コーナリングの最高潮段階であり、旋回半径もまた50mよりも小さい、ほぼ最小値に止まっていることを旋回半径座標軸32a上の三角点50が示している。次に
図10(h)のグラフ図においては、
図10(g)のグラフ図に比べて、マーカードット点51は横軸31の下側に移動し、縦軸32の左側において当該縦軸32に近づいた位置にプロットされているから、車両は、加速動作が開始された状態にあり、且つ旋回加速度は最大程度から幾分弱まっていることが分かる。そして、この状態では右ターンが最大程度よりは緩やかになっているがまだコーナーの中にあり、コーナリングの終局段階にあることを表す。旋回半径についてみると、
図10(h)のグラフ図においては三角点表示が消滅しているが、これは、コーナリングの終局段階でカウンターステアリング操作が行われて車両が旋回動作態勢から直進動作態勢側へ一時的に立て直された(旋回半径は大きくなる)ことを示している。次に
図10(i)のグラフ図においては、
図10(h)のグラフ図に比べて、マーカードット点53は横軸31の下側において散布図中のほぼ最下点に相当し、縦軸32の左側において当該縦軸32にさらに近づいた位置にプロットされているから、車両は、加速動作が最大にまで引き上げられた状態にあり、且つ旋回加速度はさらに弱まっていることが分かる。そして、この状態では右ターンをするコーナーの最終位置(コーナー出口)の近くにあり、コーナリングの最終段階にあることを表す。旋回半径についてみると、
図10(i)のグラフ図においては三角点54が再び出現しており、旋回半径は100−150mの間であることを旋回半径座標軸32a上の三角点54が示している。以上、
図10(g)のグラフ図から
図10(i)のグラフ図までの変化を総括すると、車両は、コーナリング操作における旋回の途中に減速から加速に動作が切り替わり、直線コースに向かって旋回半径が大きくなりながら加速が続いていくことが分かる。このように、加減速加速度及び旋回加速度と旋回半径を同一グラフ図に表示することにより、車両データを再生することによる運転技量の検討が容易に且つ客観的に行える。
【0031】
図11は、
図8と同様な表示例図において複数(この実施の形態では2台)の車両データを再生し、その加速度及び旋回半径を表示部15の同一グラフ図上に同時に表示した例を示す図である。なお、
図6の加速度及び旋回半径表示画面15cにも同様の表示例が示されている。2台分の車両データは、2台の車両間で、測定・記録部1の基準点検知センサ7が検出した基準点PPを一致させることにより同期が取られ、時系列で同時再生、同時表示が行われる。
図12は2台分の車両データの例を表にして示した図である。ここでは、2台の車両の一方を車両Aとし、他方の車両を車両Bとするとともに、
図12において基準データ(過去のベストタイムラップであってもよい)は車両Aの車両データ、比較データは車両Bの車両データとする。なお基準データは
図5に示された車両データと同じである。時間、加速度、旋回半径などの各要素の表示方法については、
図5、
図9を参照して説明したものと同じである。車両Aと車両Bの車両データの間で、マップ上の同一地点での比較を行いたいときは、一方の車両データを基準とし、他方の車両データについては距離が基準側と同一となる記録値或いは線分補完した値を表示する。
図12において基準データの枠55で囲まれた時刻01:15.5のデータと、比較データの枠56で囲まれた時刻01:20.3及び時刻01:20.5のデータとは、マップ上の同一地点を求めるために線分補完される関係にある。
【0032】
図11において、マーカードット点57、及び三角点59は
図12において枠55で囲まれた時刻(時刻01:15.5である)における加減速加速度(−0.509G)及び旋回加速度(−0.7623G)に対応するドット点、及び旋回半径(94.44m)に対応する三角点であり、その時点での各値を表す。他方、 マーカードット点58、及び三角点60は
図12において枠56で囲まれた時刻(時刻01:20.3)近辺における加減速加速度(−0.474G)及び旋回加速度(−0.5158G)に対応するドット点、及び旋回半径(124.61m)に対応する三角点であり、その時点での各値を表す。
【0033】
図13は、2台分の車両データについて、各車両データの時系列をたどって同時再生処理をしたときの、加減速加速度及び旋回加速度を表すドット点がプロットされる遷移状態及び旋回加速度の変化を、個々の時間毎の円グラフを表示して示す図である。この図においても、時間データは連続的に抽出されるのではなく、時系列的に間欠的(飛び飛び)に抽出されたものであることは
図10の事例と同じであり、その抽出結果は
図13(a)〜
図13(i)までのグラフ図として示されている。それぞれのグラフ
図13(a)〜13(i)についての検討結果は
図10(a)〜
図10(i)までのグラフ図における検討結果と同様にして得られる。
図13(a)〜
図13(i)の場合は2台の車両について加速度及び旋回半径が同時に表示されるから、各時点における旋回半径の取り方、減速及び加速のタイミングと量(ペダルの踏み込み量)についての比較が2台の車両の間で行える。そして、データ解析部20で求められた加速度及び旋回半径の各データを運転評価部21へ送付し、ここで各データを比較対照し、運転者の運転技量についての評価を出す。例えばコーナリング操作に当ってのデータの比較対照については、
図11においてドット点57とドット点58との偏差D1を取るとともに、三角点59と三角点60との偏差D2を取り、上記偏差D1,D2の大きさ及び時間経過に伴う偏差の拡大、縮小をチェックすることにより2者間の運転技量の評価を行う。コーナリング操作では旋回半径をなるべく大きく採り、より小さい旋回加速度で高速を保ちながらコーナーを走行し、なるべく早いタイミングで加速に移ることが良いとされる場合は、
図11において、車両Aと車両Bの間では減速加速度はほぼ同じであるのに、車両Bの方が旋回半径が大きく、旋回加速度が小さいため、高速での走行が実現できるから、車両Bの方の評価が高くなる。この評価結果は例えば5段階の評価点方式などの方法で表示部15に表示される。
【0034】
(実施の形態2)シミュレーション装置への応用
上述の第1の実施の形態においては、サーキットにおける実際の試験走行の場合について説明した。同様の車両走行再現評価装置はコンピュータ制御によるシミュレーション装置においても採用することができる。
図14はシミュレーション装置用に改変された本発明の第2の実施の形態に係る車両走行再現評価装置の構成を示すブロック図である。
図14において符号51は第2の実施の形態に係る車両走行再現評価装置を表す。この車両走行再現評価装置51はディスプレイ上に運転状況画像(サーキットのコース、車両もしくはそのマークなどを含む動画)を表示し、その画像に対して被運転試験者(以下、単に被試験者という)に運転操作を行わせ、そのときの車両の状況(位置、速度、加速度等)を測定、記録する測定・記録機能と、測定データを基に車両走行状態を再現する再現・評価機能とを併せもつ。
【0035】
この車両走行再現評価装置51は、車両走行再現評価装置51全体の動作制御及び測定データを演算処理して解析、再生等を行う制御演算部52と、ネットワーク9に接続され当該ネットワークを通して他の機器やサーバなどの間でデータを送信したり、データを取り込んだりする通信部53と、ネットワーク9を通して取り込んだデータを格納する記憶手段としてのHDD(ハードディスク)54と、制御演算部52において処理された結果を表示する手段であるディスプレイ55とを備えている。制御演算部52は各種演算を行うためのCPU56と、CPU56の演算処理に必要なプログラム、データが展開されるRAM57、およびその他の動作部(タイマーなど)を有している。車両走行再現評価装置51はさらに、運転状況を画像表示するために必要な各種データが格納されるデータベース58と、被試験者の運転操作を入力する操作・入力部としてのハンドル・ペダル装置59とを備えている。
図15はハンドル・ペダル装置の一例を示す斜視図である。このハンドル・ペダル装置59は、被試験者が着座するシート60と、シート60の前方に配置された支柱(コラム)61の上部に取り付けられたハンドル62と、シート60の前方下部に配置されたペダル63と、支柱61のハンドル62取り付け部分に設けられたコントローラ64とを備えている。ペダル63はアクセルペダル63aとブレーキペダル63bとから成る。被試験者によるハンドル操作、アクセル及びブレーキペダル操作はコントローラ64に取り込まれ、制御信号として制御演算部52へ送付される。したがって、ハンドル・ペダル装置59は制御演算側から見ると、操作入力部としての機能を持つ。
【0036】
図16は本発明の上記第2の実施の形態に係る車両走行再現評価装置51の機能ブロック図である。車両走行再現評価装置51は、制御演算部52として、測定処理の制御、演算を行う測定用制御演算ユニット52aと、再現、評価処理の制御、演算を行う再現・評価用制御演算ユニット52bとを備えている。ここで、再現・評価用制御演算ユニット52bについてみると、この第2の実施の形態における再現・評価用制御演算ユニット52bは、上述した第1の実施の形態における再現・評価部11と同じ構成及び機能を有し、データ取得部68と、データ再生部69と、データ解析部70と、運転評価部71とを備えている。
図14に示された通信部53が通信インタフェースを構成し、HDD54は記憶部を構成する。また、ディスプレイ55は表示部を構成する点も、
図3に示されたものと同じである。
【0037】
次に、測定用制御演算ユニット52aについてみると、この第2の実施の形態における測定用制御演算ユニット52aは、データベース58からデータを読み出すデータ取得部72と、操作入力部(すなわち、ハンドル・ペダル装置)からの制御信号を入力して表示部55への車両走行画像の表示をコントロールする表示制御演算部73と、表示制御演算部73における演算結果から車両の走行状態を演算により求める測定制御演算部74とを有する。表示制御演算部73は、例えばサーキットの画像とそのサーキットにおける車両の走行状況をデータベース58から出力されたデータをもとに表示部55に表示する。測定用制御演算ユニット52aは、表示部55に表示された車両の速度、加速度、旋回半径等の各種情報を演算により求める。測定された各種データは記憶部54に格納される。また、データベース58から予め格納された車両走行表示用データを読み出す代わりに、インターネットなどのネットワーク9から車両走行表示用データを取り込んで、その画像表示に対してハンドル、ペダル操作を行うようにすることもできる。
【0038】
以上のような構成を有する車両走行再現評価装置51について、以下動作を説明する。
図14及び
図16に示された車両走行再現評価装置51において、データベース58又はネットワーク9から、車両走行表示用データが、データ取得部72を介して取り込まれる。この車両走行表示用データは表示制御演算部73において演算処理され、表示部55に表示される。
図17は表示部55における車両走行状況の画像の一例を示す図である。この表示に対して操作入力部59であるハンドル・ペダル装置から被試験者による操作データ(制御信号)が表示制御演算部73に入力され、表示部55では、操作入力部59からの制御信号を基に車両の加速、減速、旋回運動をデータに忠実に画像表示する。測定用制御演算ユニット52aは、表示部55に表示された車両(例えば
図17中の符号75で示す車両)車両の速度、加速度、旋回半径等の各種情報を演算により求め、測定データは記憶部54に送付されて格納される。以下、車両走行の再現、或いは複数の車両データを同時(並行)再生動作等については、第1の実施の形態で述べたのと同じである。
【0039】
記憶部54には、第1の実施の形態におけるように、実際にサーキットを走行する車両から取得した車両データも格納されるし、第2の実施の形態におけるようなデータベース58又はネットワーク9からの車両走行表示用データに対する運転操作による車両データも格納され得る。そして、第1の実施の形態と第2の実施の形態を融合させ、表示部55ではデータベース58又はネットワーク9からの車両走行表示用データに対する運転操作を行いつつ、記憶部54から実際のレーシングドライバーによる運転記録(車両データ)を読み出して再生し、複数(例えば2台)の車両による競走シミュレーションを行うこともできる。
【0040】
なお、この第2の実施の形態に関するシミュレーション装置における車両走行再現評価動作は車両走行ゲームにおいてもそのまま適用することができる。このゲームに適用する場合は操作入力部59としてのハンドル・ペダル装置の代わりに手指で操作するキーボードを用いることもできる。