【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1〜13,比較例1〜3)
培土基材としての粒状培土とピートモスの混合物(かさ比重:0.50〜0.65kg/L)と、アクリルアミド系重合体と、スメクタイト(モンモリロナイト)を主成分とする鉱物粉体と、界面活性剤とを、表1に示す重量割合となるように秤量した後、ミキサーに投入して混合し、実施例1〜13及び比較例1,2の培土を作製した。また、比較例3として、市販されている培土「オニオンエース」(片倉チッカリン社製)を用いた。そして、作製した培土の物性を以下の方法により測定した。測定結果を表1に合わせて示す。
【0027】
(かさ比重)
容積1L(直径約10cm、深さ約13cm)のプラスチック製カップに、作製した培土を上から振り落として充填し、カップのふちをすりきって正確に1Lを量りとり、内容物重量を電子天秤で秤量し、かさ比重を算出した。
【0028】
(含水率)
(1)任意容量の耐熱容器を準備し、その重量を測定する(重量aとする)。
(2)本発明の培土を所定量(例えば、5〜10g程度)を前記の耐熱容器内に入れて、その重量を測定する(重量bとする)。
(3)耐熱容器ごとオーブンに入れて、105℃で16〜24時間程度、加熱乾燥する。
(4)乾燥後の耐熱容器ごと、シリカゲルの入ったデシケーター内に入れて、常温になるまで放置した後、その重量を測定する(重量cとする)。
(5)下記式から含水率を求める。
含水率(fw%)=(b−c)/(b−a)×100
【0029】
【表1】
【0030】
(育苗)
作製後数日経過後の培土を用いて、下記の手順でたまねぎの育苗を行った。ただし、実施例12のみ、製造から6ヶ月経過後の培土を用いた。
(1)直径16mm、深さ25mmのポット448個からなる育苗トレイに、培土を床土として充填した。その際、充填量を測定した。そして、播種するスペースを確保するため、ポット中の床土を上から鎮圧した後、たまねぎのコーティング種子(品種:北もみじ2000)を播種し、同一の培土で覆土した。
(2)播種し終わった育苗トレイの重量を測定した後、ハウス内に運び、育苗床に育苗トレイの底面が充分に密着するように圧着設置した。トレイ1枚当り1Lの灌水を行なった。10日間シルバーポリトウで覆って発芽させ、シルバーポリトウを取り去った。
(3)その後、適時に灌水を行って育苗した。その間、発芽が出揃って、数値が安定した時点で、正常発芽率を計測した。
(4)播種後45日目から灌水を10日間止め、その後、トレイ1枚当たり1Lの灌水を行なった。
(5)灌水24時間後に育苗床から育苗トレイをはがし、移植機(みのる産業社製「OPR4」)を用いて以下の要領で移植を行い、移植適性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0031】
(苗の移植適性評価)
移植機の植え付け部を地面から浮いた状態にし、植え付け部の下に苗受け容器を設置した。そして、育苗トレイを移植機に仕掛け、移植機を最大速度で稼動させた。苗受け容器に落下してきた苗を回収し、無作為に50〜100本程度をサンプリングし、根鉢部の固化状態を下記基準で評価しその個数比率(%)を算出した。
「形状維持」:培土がポットの形状を保っている。
「半壊」 :半分以上の培土が失われている。
「全壊」 :培土が完全に失われている。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、実施例1〜13の培土では、正常発芽率が97.5%以上と良好で、移植適性評価において、大半の根鉢部がポットの形状を保っており、根鉢部の全壊となったものはなかった。これに対し、鉱物粉体を添加しなかった比較例1の培土では、移植適性評価において、培土の半分以上が半壊又は全壊となった。また、アクリルアミド系重合体を添加しなかった比較例2の培土では、移植適性評価においてすべての培土が全壊となった。一方、比較例3の市販培土「オニオンエース」では、正常発芽率及び移植適性評価も良好であったが、かさ比重が0.85kg/Lと実施例1〜13の各培土よりも大きいため、播種後の育苗トレイ重量が2160gにもなり、播種機への培土投入や運搬、播種後の育苗トレイの運搬などの作業負担が大きくなると共に、輸送コストも大きくなると推測される。また、次に説明する、培土をポットに充填する段階において不具合の発生するおそれがある。
【0034】
(培土の充填性)
実施例1と比較例3の培土について、ポットへの充填性を下記方法によってさらに測定した。結果を表3に示す。
図1に示すような底部が1/3欠損したポットを200個用意し、みのる産業社製のタマネギ自動播種機「OSE-100」を用いてこれらのポットに培土を充填した。そして、ポット欠損部からの培土の流亡の有無を目視により観察し、培土が流亡したポット数を数えた。
【0035】
【表3】
【0036】
表3から明らかなように、実施例1の培土ではポット底部からの流亡はゼロであったのに対し、かさ比重の大きい比較例3の培土では106個ものポットにおいて流亡が発生した。
【0037】
(実施例14〜
19,比較例4〜
12)
表4に示す鉱物を主成分とする粉体6.54重量%と、培土基材としての粒状培土83.71重量%と、ピートモス8.49重量%と、アクリルアミド系重合体1.12重量%と、界面活性剤0.09重量%とをミキサーに投入して混合し、実施例14〜
19及び比較例4〜
12の培土を作製した。なお、培土のpHを6〜7に調整するため、pH調整剤としての消石灰を必要によりさらに添加した。そして、作製直後の培土及び温度20℃のインキュベータ器内に密閉状態で1ヶ月保存した培土の圧縮強度を測定した。測定結果を表4に合わせて示す。
【0038】
(培土の圧縮強度の測定方法)
直径16mm、深さ25mmのポット14個に、作製した培土30gを充填した。そして、ポット中の培土を専用鎮圧機によって鎮圧した後、鎮圧によって生じた空間部に覆土を充填しポットのふちをすり切った。次に、ポット底面から吸水させた後、ポットをラップで包み温度20℃で72時間養生させ培土を固化させた。次いで、ラップを取り除いた後、乾燥機を用いて50℃で40時間乾燥させた。
乾燥させた培土をポットから取り出し、純水に15分間浸漬させた後、ウエス上に5分間載置して脱水した。そして、イマダ社製のデジタルフォースゲージを用いて圧縮強度を測定した。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例14〜
19の本発明に係る培土は、圧縮強度が
5.6N〜7.8Nと高く、また1ヶ月保存後も圧縮強度は高い値を保っていた。これに対し、鉱物粉体を配合しなかった比較例4の培土は圧縮強度が3.6Nと低かった。また、比較例5の培土は、作製直後の圧縮強度は5.5Nと高かったものの、1ヶ月保存後は3.3Nにまで低下し保存安定性に欠けるものであった。さらに、比較例6〜
12の培土はいずれも作製直後の圧縮強度が
4.7N以下と低いものであった。
【0041】
(実施例
20,比較例
13)
スメクタイト(Ca型モンモリロナイト)を主成分とする粉体4.33重量%と、粒状培土26.66重量%と、ピートモス21.33重量%と、火山レキ29.49重量%と、アクリルアミド系重合体0.58重量%とをミキサーに投入して混合して、実施例
20の培土を作製した。一方、比較例
13として、市販されている培土「全農 与作N150」(チッソ旭肥料社製)を用いた。そして、それぞれの培土を用いて下記要領でたまねぎの育苗を行いその発芽率を測定すると共に、根鉢強度を測定した。測定結果を表5に合わせて示す。
【0042】
(育苗)
(1)直径16mm、深さ25mmのポット448個からなる育苗トレイに、培土を床土として充填した。そして、播種するスペースを確保するため、ポット中の床土を上から鎮圧した後、たまねぎのコーティング種子(品種:ターザン)を播種し、同一の培土で覆土した。
(2)コンクリート床上に吸水マットを敷き、その上に防草シートを被せ、その上に播種し終わった育苗トレイを置いた。育苗トレイ1枚当り1Lの灌水を行なった。10日間シルバーポリトウで覆って発芽させ、シルバーポリトウを取り去った。
(3)その後、適時に灌水を行って育苗した。その間、発芽が出揃って、数値が安定した時点で、正常発芽率を計測した。結果を表5に示す。
【0043】
(根鉢強度の測定)
播種後45日目及び60日目に、育苗トレイのポットから100個の根鉢を抜き出し、高さ50cmの所から2回落下させ、根鉢の形状が半分以上残っているものを「移植可能」とし、移植可能な根鉢の数を数えた。結果を表5に合わせて示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5から明らかなように、実施例
20の培土では、正常発芽率が98%と高く、しかも播種後45日目ですでに移植可能な強度に達していた。これに対し、比較例
13の培土では、正常発芽率は実施例
20の培土と同じであったが、播種後45日目では未だ移植可能な強度には達せず、苗の根が充分に成長した播種後60日目になってようやく移植可能な強度に達した。