特許第5774868号(P5774868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774868
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/08 20060101AFI20150820BHJP
【FI】
   F25D21/08 A
   F25D21/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-34229(P2011-34229)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172881(P2012-172881A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(73)【特許権者】
【識別番号】507408947
【氏名又は名称】株式会社マキシス工業
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】薄 達也
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−063777(JP,A)
【文献】 特開平01−131876(JP,A)
【文献】 実開昭60−194272(JP,U)
【文献】 特開平10−274455(JP,A)
【文献】 特開2003−148857(JP,A)
【文献】 特開2012−021740(JP,A)
【文献】 実開昭57−064574(JP,U)
【文献】 米国特許第03103796(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却貯蔵庫内に設置され、吸込口から吸入した庫内空気を少なくとも1つの冷却コイルで冷却し、生成された冷気を吹出口から庫内に吹き出させる冷却装置において、
1つの冷却コイルの内部を複数の分割領域に区画するとともに、熱輻射性を有する仕切部材と、
前記複数の分割領域の各々に配置されて前記冷却コイルをデフロストするヒータと、
前記複数の分割領域の各々に配置されるサーミスタと、
前記複数の分割領域の各々において前記サーミスタの検出値に基づいて前記ヒータを制御し前記各分割領域毎にデフロストを実行し、デフロストを終了する温度の設定を前記分割領域毎に変更可能である制御装置とを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ヒータによる加熱時間を、前記分割領域毎に設定可能であること
を特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記仕切部材は、表面を鏡面仕上げされたステンレス鋼板であることを特徴とする請求
1又に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚、肉等を貯蔵する大型の冷却貯蔵庫に用いられる冷却装置に関し、より詳しくは、デフロスト効率の改善を図った冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の冷却装置の一例を示す断面図である。この冷却装置は、貯蔵庫本体101に設けられた冷却室102内に冷却コイル(蒸発器)103とファン104が収容され、ファン104を駆動することにより、吸込口105から吸入された庫内空気が冷却コイル103を通過して冷気が生成され、これが吹出口106から庫内に吹き出されるとともに、図示しないサーモスタットによって検知された庫内温度に基づいてファン104の駆動・停止が交互に繰り返されることで、庫内がほぼ設定された温度に冷却される。
【0003】
一方、冷却コイル103の冷却能力を維持するために適宜冷却コイル103のデフロストが行われる。具体的には冷却コイル103内に上下方向に間隔をおいて配設された複数のヒータ107に通電して発熱させてデフロストし、これによって生じたデフロスト水は、ドレンパン108に滴下して排水口109から外部に排出される。
【0004】
上記デフロストでは、サーモスタットが予め設定されたデフロスト終了温度になるまで、例えば、図4に示すように、25分間程度すべてのヒータ107に通電し、ヒータ107の停止後、冷却コイル103に付着した水滴が庫内に飛ばないように、ファン104を3分程度遅らせて停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の冷却装置においては、冷却コイル103の内部に配設されたヒータ107により冷却コイル103全体のデフロストを行うとともに、比較的温度誤差が大きく、設定温度の変更を行うことができないバイメタル式のサーモスタットを用い、予め設定されたデフロスト終了温度になるまですべてのヒータ107に通電する。そのため、冷却コイル103に氷が残っている状態でデフロスト運転が終了したり、冷却コイル103内の氷が溶けてしまっているのにデフロスト運転が終了せず、すべてのヒータ107に通電されたままの状態となる場合があり、デフロスト効率の面で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記従来の冷却装置における問題点に鑑みてなされたものであって、冷却装置のデフロスト効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、冷却貯蔵庫内に設置され、吸込口から吸入した庫内空気を少なくとも1つの冷却コイルで冷却し、生成された冷気を吹出口から庫内に吹き出させる冷却装置において、1つの冷却コイルの内部を複数の分割領域に区画するとともに、熱輻射性を有する仕切部材と、前記複数の分割領域の各々に配置されて前記冷却コイルをデフロストするヒータと、前記複数の分割領域の各々に配置されるサーミスタと、前記複数の分割領域の各々において前記サーミスタの検出値に基づいて前記ヒータを制御し前記各分割領域毎にデフロストを実行し、デフロストを終了する温度の設定を前記分割領域毎に変更可能である制御装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、1つの冷却コイルの内部を仕切部材により複数の分割領域に区画し、サーミスタにより各分割領域の温度を検出した上で、ヒータを制御してデフロストを実行することができるため、1つの冷却コイル内の温度にばらつきが生じても、そのばらつきに容易に対応することができ、従来と比較してデフロスト効率を向上させることができる。
また、制御装置によってデフロストを終了する温度の設定を前記分割領域毎に変更可能であるため、分割領域毎の着霜量等を考慮してデフロストを行うことができ、局所的な庫内温度の上昇を防止することができるとともに、ヒータの運転時間を最小限に抑えることができるため、冷却装置全体の運転コストの低減に繋がる。さらに、このデフロスト終了温度の設定をユーザ側で変更することができるため、冷却装置の運転状況に合わせて最適な設定値を選択することができる。
【0010】
また、熱輻射性を有する仕切部材の存在により、ヒータで発する熱が仕切部材の外側へ逃げなくなるため、デフロスト効率が向上し、従来よりも低温のヒータを採用することができるので、消費電力が低減するとともに、デフロスト水がヒータに接しても蒸気が発生しにくくなる。よって、庫内への着霜量を低減することができる。
【0011】
さらに、温度制御に際し、従来のようなバイメタル式のサーモスタットではなく、サーミスタを利用することで、デフロスト終了温度の設定値等を変更したり、温度誤差の小さいきめ細かな温度制御を行うことができる。
【0013】
また、前記制御装置によって、前記ヒータによる加熱時間も、前記分割領域毎に設定することができ、各分割領域の状況に応じて最適なデフロスト制御を行うことができる。また、各ヒータによる加熱時間をユーザ側で変更することで、冷却装置の運転状況に合わせた制御を行うことができる。
【0014】
前記仕切部材を、表面を鏡面仕上げされたステンレス鋼板で構成することができ、ヒータから発せられる熱を各分割領域でさらに有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、デフロスト効率の良好な冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である冷却装置を示し、(a)は、正面断面図、(b)は、側面断面図である。
図2図1の冷却装置のデフロスト時のヒータ通電時間を示すチャート図である。
図3】従来の冷却装置の断面図である。
図4図3の冷却装置のデフロスト時のヒータ通電時間を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態である冷却装置を示している。当該冷却装置は、肉、魚等を冷蔵するプレハブ貯蔵庫等に設置される。
【0018】
この冷却装置1は、図1(b)に示すように、前面側(矢印X方向)に吹出口2aを有する横長の筐体2を備える。同図には、吹出口2aが1つ描かれているが、筐体2は、同図が描かれた紙面に対して垂直な方向に一対の吹出口2aを備える。筐体2の内部背面側には、横長の冷却コイル(蒸発器)3が配設され、この冷却コイル3は、図示しないが、配管を介して圧縮機、凝縮器及び膨張弁等と環状に接続されて冷凍サイクルを構成している。
【0019】
冷却コイル3は、上下方向に間隔をおいて千鳥足状に配設された複数の冷媒管4(白い円で示す)と、これら冷媒管4の間において上下方向に間隔をおいて配設された複数のコード状のヒータ5(黒い円で示す)と、横方向に間隔をおいて配設されるとともに冷媒管4に接続された複数の放熱フィン(不図示)と、複数の仕切部材7とを備えている。
【0020】
仕切部材7は、例えば、表面に鏡面加工が施されたステンレス鋼板で構成される。これは、熱輻射性を利用してヒータ5の熱を有効利用するためである。また、図1(a)に示すように、仕切部材7によって、冷却コイル3の内部は、複数の分割領域R〜Rに区画されている。
【0021】
サーミスタ12(ハッチ付き円で示す)は、複数の分割領域R〜Rに各々配置される。これらのサーミスタ12としては、例えば、温度の上昇で抵抗が減少するNTC(Negative Temperature Coefficient thermistor)を使用することができるが、これに限られるものではい。
【0022】
冷却コイル3の下方にはドレンパン8が設置され、デフロスト運転時に生じた水は、ドレンパン8に滴下して排水口8aから外部に排出される。このドレンパン8内にも、サーミスタ12及びヒータ5を配置する。
【0023】
筐体2の内部前面側には、図1(b)に示すように、各吹出口2aに対向するようにファン9が配設されている。また、筐体2の外部前面側には各吹出口2aに対して格子状のカバー10が取り付けられている。
【0024】
制御装置(不図示)は、複数のサーミスタ12及びヒータ5と電気的に接続され、サーミスタ12によって測定された温度に基づいてヒータ5への通電を制御するとともに、ヒータ5への通電時間を制御するためのタイマを備える。
【0025】
ファン9を駆動すると、吸込口(不図示)から筐体2内に吸い込まれる外気が冷却コイル3内を通過し、筐体2の吹出口2aから外部に排気される。外気は冷却コイル3内を通過する際に冷媒管4及びフィン(不図示)と熱交換して冷気となる。
【0026】
冷却コイル3への着霜量が多くなると冷却効率が落ちるため、適宜ヒータ5に通電してデフロストを行う。この際、分割領域R〜Rの各々に配置されるサーミスタ12の検出値に基づいて、制御装置はヒータ5のON/OFFを切り替える。これにより、各分割領域R〜Rの着霜量に応じたデフロストを行うことができる。
【0027】
制御装置は、分割領域R〜R毎に上限温度を設定し、この設定温度に達した際、デフロストが完了したとして分割領域R〜R毎にヒータ5をOFFとすることができる。なお、ドレンパン8内のヒータ5は、他のヒータ5への通電が停止した後、タイマー運転が開始され、設定した時間又はサーミスタ12で設定した温度になったことを検知して通電が切れる。
【0028】
上記運転により、図2に示すように、分割領域(図示例ではR1、〜R)毎にヒータ5の通電時間が変化し、効率よくデフロストを行うことができるとともに、破線で示すヒータ5に通電しない時間帯が生じ、運転コストを低減することができる。また、効率よくデフロストを行うことで庫内温度の上昇を防止することができるため、冷却装置全体の運転コストの低減に繋がる。
【0029】
また、各ヒータ5で生じる熱は、その上方に位置する仕切部材7よりも上方へ逃げないため、従来よりもデフロスト効率が向上し、ヒータ5の表面温度を低くすることができる。従来はワット密度1.0W/cmでヒータを選定し、ヒータ表面温度が300℃以上に達していたが、本発明ではワット密度を0.1〜0.2W/cm程度にすることができ、ヒータ表面温度は60〜100℃程度となる。
【0030】
従来はヒータの表面温度が高かったため、デフロストに不要な熱が大量に庫内に放出されていたが、本発明ではヒータ5の表面温度をデフロストに必要な最低温度に設定することができるので、消費電力が低減するとともにヒータ5が長寿命化する。
【0031】
また、ワット密度を落とすことで、ヒータ5の本数を増やして冷却コイル3全体に万遍なく熱を行き渡らせることができるので、効率のよいデフロストが可能となる。なお、ヒータ5の本数が増えても各ヒータ5の消費電力は小さいので、ランニングコストも考慮すると、従来に比べてコストを低減することができる。
【0032】
なお、ヒータ5は、複数本のヒータを直列に繋いで形成する(例えば200Vのヒータの場合、3本の67Vのヒータを直列に繋ぐ)ことにより、リード線のシンプル化が図られ、端子台への結線作業に要する時間を短縮することができる。
【0033】
また、上記の実施形態においては、分割領域を6つとしているが、この分割領域は適宜変更することができる。
【0034】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 冷却装置
2 筐体
3 冷却コイル
4 冷媒管
5 ヒータ
7 仕切部材
8 ドレンパン
9 ファン
10 カバー
12 サーミスタ
〜R分割領域
図1
図2
図3
図4