(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774871
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】棒状ワークの焼入装置
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20150820BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
C21D9/00 H
C21D9/00 A
C21D1/10 A
C21D1/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-39345(P2011-39345)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-177144(P2012-177144A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】595013955
【氏名又は名称】株式会社ネツレン・ヒートトリート
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】大内 広美
(72)【発明者】
【氏名】山本 正
(72)【発明者】
【氏名】岸 秋男
【審査官】
静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−060833(JP,A)
【文献】
実開昭60−156170(JP,U)
【文献】
特開2001−227690(JP,A)
【文献】
実公昭46−29535(JP,Y1)
【文献】
特開2004−292921(JP,A)
【文献】
特開平04−289123(JP,A)
【文献】
実開平05−022545(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00−9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って同一の外形形状を有する棒状ワークを焼入れする焼入装置において、
前記棒状ワークを軸方向に移動させるワーク駆動部と、前記棒状ワークを誘導加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された棒状ワークを冷却する冷却部とを有し、
前記加熱部と前記冷却部とが前記棒状ワークの移動方向に沿って配置されているとともに、前記加熱部と前記冷却部との間に前記加熱部および前記冷却部を隔てる仕切板が配置されており、
前記仕切板は、前記冷却部で使用される冷却剤が前記加熱部側へ侵入するのを小さくするべく、前記棒状ワークの外形形状より大きくて、軸方向に移動する前記棒状ワークが間隙を有しつつ、移動抵抗が生じることなく通過する仕切通過孔が形成され、
前記仕切板の前記加熱部側の板面に遮蔽板が設けられ、該遮蔽板は、軸方向に移動する前記棒状ワークが外周を密接させつつ通過する遮蔽通過孔が形成されており、前記仕切板と前記遮蔽板とは、共同して、前記冷却部で使用された冷却剤が前記加熱部側に浸入するのを防止するものであることを特徴とする棒状ワークの焼入装置。
【請求項2】
前記加熱部には、前記軸方向に移動する前記棒状ワークが内部を通過する保護筒体を有し、
該保護筒体は、前記棒状ワークの導入側端部に該棒状ワークの外周形状に合わせた通過孔を有する保護キャップが設けられ、前記棒状ワークの移動先側端部に前記遮蔽板が隙間なく配置されていることを特徴とする請求項1記載の棒状ワークの焼入装置。
【請求項3】
前記遮蔽板は、可撓性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の棒状ワークの焼入装置。
【請求項4】
前記遮蔽板が耐熱性材料を積層したゴム引きの複層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の棒状ワークの焼入装置。
【請求項5】
前記冷却部が、冷却液を用いるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の棒状ワークの焼入装置。
【請求項6】
前記棒状ワークがボールネジであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の棒状ワーク焼入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒状ワークを軸方向に移動させつつ焼入れを行う棒状ワークの焼入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールネジなどの長尺の棒状ワークを焼入れする際に、棒状ワークを軸方向に移動させるとともに、前記移動の方向に沿って配置された誘導加熱を行う加熱部と焼入用の冷却液を用いる冷却部とで加熱と冷却を行って、棒状ワークの長手方向に沿って順次焼入処理を行う装置が知られている(例えば特許文献1〜4)。
これら装置では、加熱部と冷却部とをユニット化して、両者間にユニット壁を配置したり、遮蔽板を配置して、それぞれの処理の独立性を持たせている。ユニット壁や遮蔽板は、棒状ワークの外形に合う大きさで通過孔が形成されており、該通過孔を通して棒状ワークの移動が可能になっている。通過孔は棒状ワークの外形に略沿う大きさで形成することで、棒状ワークとの間の隙間を小さくして抵抗なく棒状ワークを通過させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58−28335号公報
【特許文献2】実開平5−22545号公報
【特許文献3】特開平4−289123号公報
【特許文献4】特開2002−60833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した熱処理では、加熱処理と冷却処理とが近接して行われており、上記したユニット壁や遮蔽板では冷却液を十分に遮断することができない。このため、冷却部側で使用された冷却液が加熱部側に侵入して加熱状態の棒状ワークの表面に接触し、該表面に肌荒れを生じさせて棒状ワークの外観品質を低下させるという問題がある。
これに対し、ユニット壁や遮蔽板に設けた通過孔を小さくして棒状ワークとの隙間を極力小さくすることで冷却液の加熱部側への侵入を小さくすることができる。しかし、ユニット壁や遮蔽板は剛性を有するもので構成されており、棒状ワークと接触すると移動抵抗が大幅に増加するので、通過孔と棒状ワークとの隙間を小さくするのには限度があり、冷却液の侵入を効果的に防止するには至っていない。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、加熱部側と冷却部側の遮断を確実にして焼入用の冷却液による棒状ワークの表面品質の低下を回避することができる棒状ワークの焼入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の棒状ワークの焼入装置のうち第1の本発明は、軸方向に沿って同一の外形形状を有する棒状ワークを焼入れする焼入装置において、
前記棒状ワークを軸方向に移動させるワーク駆動部と、前記棒状ワークを誘導加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された棒状ワークを冷却する冷却部とを有し、
前記加熱部と前記冷却部とが前記棒状ワークの移動方向に沿って配置されているとともに、前記加熱部と前記冷却部との間に前記加熱部および前記冷却部を隔てる仕切板が配置されており、
前記仕切板は、
前記冷却部で使用される冷却剤が前記加熱部側へ侵入するのを小さくするべく、前記棒状ワークの外形形状より大きくて、軸方向に移動する前記棒状ワークが間隙を有しつつ、
移動抵抗が生じることなく通過する仕切通過孔が形成され、
前記仕切板の前記加熱部側の板面に遮蔽板が設けられ、該遮蔽板は、軸方向に移動する前記棒状ワークが外周を密接させつつ通過する遮蔽通過孔が形成されており、
前記仕切板と前記遮蔽板とは、共同して、前記冷却部で使用された冷却剤が前記加熱部側に浸入するのを防止するものであることを特徴とする。
第2の本発明の棒状ワークの焼入装置は、前記第1の本発明において、前記加熱部には、前記軸方向に移動する前記棒状ワークが内部を通過する保護筒体を有し、
該保護筒体は、前記棒状ワークの導入側端部に該棒状ワークの外周形状に合わせた通過孔を有する保護キャップが設けられ、前記棒状ワークの移動先側端部に前記遮蔽板が隙間なく配置されていることを特徴とする。
第3の本発明の棒状ワークの焼入装置は、前記第1または第2の本発明において、前記遮蔽板は、可撓性を有することを特徴とする。
第4の本発明の棒状ワークの焼入装置は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記遮蔽板が耐熱性材料を積層したゴム引きの複層からなることを特徴とする。
第5の本発明の棒状ワークの焼入装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記冷却部が、冷却液を用いるものであることを特徴とする。
第6の本発明の棒状ワークの焼入装置は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記棒状ワークがボールネジであることを特徴とする。
【0007】
すなわち、本発明によれば、仕切板と遮蔽板とが共同して加熱部と冷却部とを確実に遮断し、冷却部で使用される冷却剤(特に冷却液)が加熱部側に侵入するのを効果的に防止する。
本発明では、仕切板に形成された仕切通過孔は、棒状ワークの外形形状よりも大きく形成されており、棒状ワークは、仕切通過孔と間隙を有して通過するため、仕切板によって移動抵抗が生じることはない。したがって、仕切板には剛性を与えて安定した遮蔽を可能にする。仕切板が剛性を有さずに、仕切位置が不安定になると、冷却剤が加熱部側に侵入しやすくなる。
【0008】
また、遮蔽板に形成された遮蔽通過孔を棒状ワークの外周が密接しつつ通過するので、冷却剤が加熱部側に侵入するのを確実に防止する。遮蔽板は仕切板に設けられており、棒状ワークが通過する際に密接部分が撓んで密接性を高く維持できる。したがって、遮蔽板には可撓性を有する材質が望ましい。また、遮蔽板は、加熱部側のエリアに露出するので、耐熱性を有することが必要である。例えば、400℃でも軟化したり、熱割れが生じない材料が好適には選択される。遮蔽板には、例えば耐熱性材料を積層したゴム引きの複層材料を使用することができる。該材料としてはゴム引ガラスクロスが例示される。
【0009】
また、加熱部を棒状ワークが通過する際には、棒状ワークの外周側を覆う保護筒体内を該棒状ワークが移動するようにして、加熱雰囲気を安定した状態に維持するのが望ましい。保護筒体は石英などの耐熱性を有する材料で構成する。また、保護筒体の棒状ワーク導入側の端部には、保護キャップを設け、該保護キャップに棒状ワークの外形形状に合わせた通過孔を形成しておく。該通過孔は、棒状ワークができるだけ小さい隙間で通過するか、隙間なく通過するように形成されているのが望ましい。又、隙間をなくすように通過孔内面にシール部材を配することも可能である。保護筒体の棒状ワーク導入側の端部を加熱部の端部または加熱部よりも後方側に配することで、加熱部による熱影響は小さく、したがって、シール部材にも格別な耐熱性が要求されることはなく、シール性を重視した材質選択を行うことができる。
【0010】
また、保護筒体の棒状ワーク移動先側の端部では、前記遮蔽板が保護筒体に隙間なく当接しているのが望ましい。これにより保護筒体内を前記保護キャップと遮蔽板とで略閉空間にして、内部空間を無酸化状態に近づける。これにより保護筒体内を移動する棒状ワークが加熱される際に、棒状ワーク表面の酸化を抑制して良好な表面状態を維持したままで冷却部に移動させることができる。
【0011】
上記棒状ワークは、軸方向に沿って同一の外形形状を有するものであり、外形形状が同一である限りは、適宜の凹部形状を表面に有するものであってもよい。棒状ワークとしては、棒そのものであってもよく、また、ボールネジのように螺旋状の外形形状を有するものであってもよい。
上記棒状ワークを移動させるワーク駆動部は、棒状ワークを軸方向に移動できるものであればよく、移動自体は連続的でも間欠的でも良く、また、後進を含むものであってもよい。また、ボールネジなどを処理する際には、棒状ワークを回転させつつ前進させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の棒状ワークの焼入装置によれば、冷却部で使用される冷却剤が加熱部側に侵入するのを効果的に防止し、棒状ワークの表面品質を良好に維持することができる。層状の遮蔽板を取り付けることにより格段の品質アップかつ安定した品質で生産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の焼入装置を示す一部を断面した正面図である。
【
図3】同じく、ボールネジを移動する状態を示す一部を断面した正面図である。
【
図4】同じく、加熱部を示す一部を断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の棒状ワークの焼入装置1の一実施形態を示す正面図である。
焼入装置1は、棒状ワークであるボールネジ100を軸方向に移動させるワーク駆動部2と、前記ボールネジ100を誘導加熱する加熱部3と、冷却液を用いて加熱された前記ボールネジ100を冷却する冷却部4とを備えており、加熱部3と冷却部4とは前記ボールネジ100の移動方向に沿って配置されている。
【0015】
前記ワーク駆動部2は、前記ボールネジ100を回転させつつ軸方向に移動させるものであり、その移動機構は本発明としては特に限定されるものではない。
加熱部3は、移動する前記ボールネジ100の外周側から誘導加熱する鞍型の加熱コイル30を有し、加熱コイル30の内周側に、ボールネジ100が内部を通過する保護筒体31が配置されている。保護筒体31は、加熱コイル30よりも両側に多少長い軸長を有しており、ボールネジ100が導入される側の端部側は、保持板33の取り付け穴34に内挿され、その端部開口に保護キャップ32が取り付けられている。保護筒体31及び保護キャップ32は耐熱性が良好な石英で構成されている。保護キャップ32は、ボールネジ100が通過可能な通過孔32aを有しており、通過孔32aは、ボールネジ100の外形と略同じ孔径を有している。
【0016】
冷却部4は、軸方向に移動するボールネジ100の外周側に位置する冷却ジャケット40を有しており、該冷却ジャケット40の内周側に、内周側に向けて焼入液として冷却液を噴出する冷却液噴出部41を有している。
【0017】
加熱部3と冷却部4との間には、両者を隔てる仕切板5が配設されており、装置フレーム10にスペーサ11を介して取り付けられている。仕切板5は、シリコンガラス積層板で構成されている。
スペーサ11は、前記保護筒体31の端部から仕切板5をスペーサ11の厚み分離隔させるものである。装置フレーム10には、コイル取り付けフレーム12が取り付けられており、該コイル取り付けフレーム12に前記加熱コイル30が取り付けられている。
仕切板5は、ボールネジ100の外形形状よりも大径の仕切通過孔50を有しており、仕切板5は、仕切通過孔50が移動するボールネジ100と同軸上に位置するように配置されている。
【0018】
また、仕切板5の加熱部3側の面に遮蔽板6が取り付けられている。遮蔽板6は、耐熱材料であるガラスクロスとゴムとを積層したゴム引きガラスクロスからなり、耐熱性は400℃においても軟化や割れを生じることがない。
遮蔽板6は、加熱部3側の面に、前記保護筒体31の外周側に位置するように取付板61(
図2では4つ)が配置されており、遮蔽板6は該取付板61を介してボルト62により仕切板5に固定されている。これにより保護筒体31の外周側では、遮蔽板6は仕切板5に押さえ付けられた状態で確実な取り付けがなされている。遮蔽板6は、前記仕切通過孔50と同軸に遮蔽通過孔60が形成されている。遮蔽通過孔60は、ボールネジ100の外形形状と略同じ孔径を有しており、該孔径はボールネジ100の最大外径よりも僅かに小さくなっている。
遮蔽板6の加熱部3側の面には、前記保護筒体31のボールネジ100の進行方向側端部が隙間なく当接している。
【0019】
前記保持板33の上部側および前記遮蔽板6の上部側と、保持板33の下部側および仕切板5の下部側とには、ボルト35、35が架け渡されて保持板33と仕切板5および遮蔽板6が固定されている。
【0020】
次に、上記棒状ワークの焼入装置1の動作について説明する。
ボールネジ100が棒状ワークの焼入装置1の長手方向に沿って配置され、ワーク駆動部2によってボールネジ100のネジ方向に沿ってボールネジ100を回転させながらボールネジ100の軸方向に移動させる。
加熱部3では、加熱コイル30に通電されており、加熱部3に至ったボールネジ100の部位は、保護キャップ32の通過孔32aを通って保護筒体31内を移動し加熱コイル30によって発生する電磁波によって誘導加熱され、所定の温度に至る。この際に、ボールネジ100は前進によって、通過孔32aから保護筒体31の他端部側で遮蔽板6の遮蔽通過孔60にまで至り、保護筒体31内を無酸化に近い状態にする。
【0021】
保護筒体31内を通過したボールネジ100の部位は、加熱された状態で遮蔽通過孔60、仕切通過孔50を通って冷却部4へと至る。このときボールネジ100の外周面と遮蔽通過孔60とは、全周に亘って密接した状態にあり、遮蔽通過孔60周辺の遮蔽板6が撓みながらボールネジ100の外周が遮蔽通過孔60の内面を摺りながら移動する。遮蔽通過孔60とボールネジ100の外周とが密接状態を維持しながらボールネジ100が移動することで、冷却部4と加熱部3との遮断が確実になされている。
冷却部4では、加熱された状態のボールネジ100の部位が冷却ジャケット40内周側に至り、冷却液噴出部41から噴出される冷却液によってボールネジ100が表面側から急冷されて焼入れがなされる。この際に、ボールネジ100と遮蔽通過孔60との密接状態は終始維持されているため、冷却液が加熱部3側に侵入することはなく、ボールネジ100の表面品質を良好に保ったままで焼入処理を行うことができる。
上記処理を継続することで、ボールネジ100を軸方向に沿って熱処理することができる。
【0022】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 棒状ワークの焼入装置
2 ワーク駆動部
3 加熱部
30 加熱コイル
31 保護筒体
32 保護キャップ
4 冷却部
40 冷却ジャケット
41 冷却液噴出部
5 仕切板
50 仕切通過孔
6 遮蔽板
60 遮蔽通過孔
100 ボールネジ