【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明の第一の態様は、法面の傾斜方向に延びる縦排水溝における流路上に、法面の小段に沿って延びる小段排水溝を接続させる合流部が設けられた法面排水溝であって、
前記法面の傾斜に沿った傾斜角度が底面勾配に設定された前記縦排水溝にお
いて、前記合流部への流入部
分にお
ける該縦排水溝の底面勾配
が該法面の傾斜に沿った底面勾配とは異なら
されており、該縦排水溝から該合流部への流入部分
の先端側において
該縦排水溝における該法面の傾斜に沿った底面勾配に比して小さい下向きの底面勾配又は上向きの底面勾配が付されることによって
該縦排水溝から該合流部への流下水にジャンプ作用を及ぼすジャンプ部を設けた法面排水溝を特徴とする。
【0010】
本態様の法面排水溝においては、ゲリラ豪雨等で法面の表流量が著しく増大した場合でも、縦排水路による流下を阻害することなく、小段排水溝から合流部への流入量を増大させて、小段排水溝から合流部を経ての縦排水路による流下を促進することができる。その結果、小段排水溝の越流を低減し、縦排水溝以外の法面を流下することに起因する法面崩落を防止することが出来、法面の補修等に必要とされる維持管理労力も軽減することが可能となる。
【0011】
なお、このようなジャンプ部による効果が発揮されることは本発明者による実験結果からも明らかなところであるが、その技術的理由については未だ完全に解明されていないし、かかる技術的理由を解明することが本発明の目的ではない。尤も、本発明者の検討したところでは、以下一)〜六)の何れかの理由または幾つかの複合的な理由によるものと推定される。
一) 縦排水溝を通じて合流部へ流入する流水の速度エネルギーがジャンプ部によって低下させられる。
二) 縦排水溝を通じて合流部へ流入する流水の方向がジャンプ部によって、合流部の底方に向けられていたものがより上方の向きに変化させられる。
三) 上記一)及び/又は二)により、縦排水溝を通じて合流部に流入する流水に起因する合流部における著しい乱流の発生が抑えられる。
四) 縦排水溝を通じて合流部へ流入する流水の水面位置がジャンプ部によって高く上げられて合流部における実質的な通水断面積が鉛直上方に大きくなることで流速が抑えられる。
五) 縦排水溝を通じて大きな流速で合流部へ流入する流水の流動領域が、ジャンプ部によって合流部の水面領域とされることで、合流部の底部の流速や乱流が抑えられ、かかる合流部の底部において小段排水溝から流水を導き入れる作用が発揮される。
六) 縦排水路を通じて直線的に流下する流水には、ジャンプ部によって合流部を超えるような水面領域での流動が生ぜしめられる一方、合流部の底部領域では小段排水溝からの流水を導き入れるような流動が生ぜしめられることで、全体として、合流部分において上方の縦排水溝および小段排水溝からの流入と下方の縦排水路への流出との間でスムーズな合流と流下流動が実現され、合流部における滝壺のような著しい乱流やそれに伴う局部的な水面上昇が回避されることにより、排水路における越流が防止される。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る法面排水溝であって、前記ジャンプ部が、前記縦排水溝の底部において流下方向で滑らかに変化する底面勾配をもって形成されているものである。
【0013】
本態様の法面排水溝では、縦排水溝の底面に段差が形成されないことから縦排水路溝を通じて雨水等を一層スムーズに流下させることができる。なお、ジャンプ部の底面勾配は、縦排水溝の底面に対して滑らかに、即ち段差を介さないで繋がっていれば良く、ジャンプ部の底面勾配自体はスロープのように一定であっても良いし、スキージャンプ台のように次第に変化していても良い。また、本態様とは異なり、本発明の第一の態様では、縦排水溝の底面やジャンプ部の底面に段差や凹凸を形成して、流下水流の速度の低下等を図ることも可能である。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る法面排水溝において、前記ジャンプ部が、前記合流部側の先端部分において水平以上の飛び出し角度を有する底面勾配をもって形成されているものである。
【0015】
本態様の法面排水溝では、ジャンプ部の先端部分の傾斜が、水平面に対して0度以上の仰角をもって設定されていることにより、本発明の目的である法面の表流水を縦排水溝及び小段排水溝で効率的に排水し、排水溝以外の法面を流下する表流水に起因する法面崩落等を防止することが、一層効果的に実現可能となる。その理由は、前記一)〜六)に記載の技術的作用が一層効果的に発揮され得ることによるものとあろうと推定される。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れかの態様に係る法面排水溝において、前記ジャンプ部が、前記縦排水溝の底面の延長面よりも突出する凸状部によって形成されているものである。
【0017】
本態様の法面排水溝では、例えば既存の縦排水溝の底面に対して凸状のジャンプ部を付設することによって容易に本発明を実施することも可能である。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一〜三の何れかの態様に係る法面排水溝において、前記ジャンプ部が、前記縦排水溝の底面の延長面よりも凹んだ凹状部によって形成されているものである。
【0019】
本態様の法面排水溝では、縦排水溝の底面から深さ方向に一端下がってから再び所定の傾斜角度で立ち上がるような形態のジャンプ部が形成されることから、縦排水溝の溝深さを維持しつつジャンプ部を形成することも可能となる。
【0020】
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れかの態様に係る法面排水溝において、前記合流部の底面が、前記小段排水溝の底面に対して段差のない滑らかな連続面をもって接続されているものである。
【0021】
本態様の法面排水溝では、合流部の底部において、従来の集水桝のように一段下がった深底の滞留部が形成されずに、合流部の底面も排水溝の底面を全体として滑らかな連続面をもって形成することとなる。それ故、枯草や枯葉、土砂等の異物が合流部に滞留することなく速やかに流下され得る。これにより、かかる異物の詰まりに起因する排水溝の有効流路断面積の減少や通水阻害が回避されて、排水溝からの越流とそれに起因する法面崩壊の防止が一層効果的に達成され得る。また、小段に設置されていた集水桝の定期的な清掃や異物滞留の確認等の労力削減も図られ得る。
【0022】
本発明の第七の態様は、前記第一〜六の何れかの態様に係る法面排水溝であって、前記縦排水溝の前記合流部への流入部分と、該縦排水溝の該合流部からの流出部分とが、前記合流部に対して前記法面の傾斜方向の上下両側から接続されていると共に、該合流部における該法面の水平方向となる左右両側の少なくとも一方の側から前記小段排水溝が接続されており、該合流部の底面が、該左右両側の少なくとも一方の側から接続された各該小段排水溝の底面から該合流部の中央に向かって且つ該縦排水溝の該合流部からの該流出部分に向かって次第に下方に向かって傾斜する傾斜案内面とされているものである。
【0023】
本態様の法面排水溝では、合流部に対して四方または三方から排水溝が接続されることとなり、このような構造体を法面に設置された各複数条の縦排水溝および小段排水溝の各交点に設置することにより、法面全体として略格子状形態をもって法面排水溝網が実現可能となる。特に、合流部の底面において、小段排水溝から中央(即ち、縦排水溝のセンター)にまで導く勾配が付されていることで、小段排水溝から合流部を経て下方の縦排水溝に流出させるように、小段排水溝の排水が一層効果的に導かれることとなる。
【0024】
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れかの態様に係る法面排水溝であって、前記縦排水溝の前記合流部への流入部分と、該縦排水溝の該合流部からの流出部分とが、前記合流部に対して前記法面の傾斜方向の上下両側から接続されていると共に、該合流部における該法面の水平方向となる左右両側の少なくとも一方の側から前記小段排水溝が接続されており、該合流部における該小段排水溝から、該縦排水溝の該合流部からの該流出部分に向かう角部側壁面が、該合流部内に向かって凸となる湾曲形状に面取りされた流出案内面とされているものである。
【0025】
本態様の法面排水溝では、前記第七の態様と同様に、法面全体に略格子状形態の法面排水溝網を設けることが可能となる。また、両側または一方の側の小段排水溝から合流部を経て下方の縦排水溝に至る流路上では、側壁が特定形状の流出案内面とされることにより、実質的な流路の拡幅効果と共に、小段排水溝の流路方向を次第に縦排水溝方向に変化させる案内効果とが発揮されることとなる。これにより、小段排水溝から合流部を経て下方の縦排水溝に流出させる、小段排水溝からの排水が一層効果的に達成され得る。
【0026】
本発明の第九の態様は、前記第一〜八の何れかの態様に係る法面排水溝において、前記法面の法尻部分に集水桝が設けられており、前記縦排水溝の最下流端が該集水桝に接続されているものである。
【0027】
本態様の法面排水溝では、法尻部分に設置された集水桝において、その底部に設置された深底の滞留部の捕捉作用により、縦排水溝を通じて法尻まで流下された枯葉や土砂等の異物をまとめて取り扱うことができる。特に、本態様では、前記第六の態様と組み合わせて採用することが好適であり、縦排水溝上に設置される小段排水溝との合流部には集水桝を設置せずに、該合流部の底面を小段排水溝の底面に対して段差のない滑らかな連続面とすることで、縦排水溝および小段排水溝に入り込んだ異物を法面排水を利用して法尻の集水桝に集めることが出来る。これにより、小段に設置された各集水桝の清掃等に要する多大な労力を軽減することが可能となる。