【実施例】
【0054】
本願発明に係わる射出成形品は、
図1に示すように図示せぬ金型のキャビティ内にコールドチャンバー方式による射出部6から溶湯を供給し、キャビティ内でマグネシウム合金の溶湯を冷却固化させることにより射出成形することができる。
図1では、キャビティ内で成形されたステアリングホイール20を図示しているが、ステアリングホイール20を成形した金型についての図示は省略している。
【0055】
図1に示した図示例が、ステアリングホイール20を成形するときの金型の配置位置を示すとすれば、固定金型10(
図4参照)側が紙面の裏面側に配され、可動金型11(
図4参照)が紙面の上方側に配される配置構成になる。
【0056】
尚、本願実施例の説明では、符号10で示した金型を固定金型として構成し、符号11で示した金型を可動金型として構成した場合について説明を行うが、符号10で示した金型を可動金型として構成し、符号11で示した金型を固定金型として構成しておくこともできる。
【0057】
図1に示すように、ホイール芯金1を成形するキャビティの配置構成としては、オバーフロー部7が上方に配された構成になっている。そして、後述する固定金型と可動金型との合わせ面であるパーティングラインが鉛直方向に配された構成になっている。また、
図1では、オバーフロー部7が、射出成形品であるステアリングホイール20のホイール芯金1から切断された状態を示している。
【0058】
ステアリングホイール20は、
環状に成形されたホイール芯金1 と、ホイール芯金1 に一端部が接続したスポーク部芯金2a〜2fと、各スポーク部芯金2a〜2fの他端部を接続するボスプレート芯金3 と、を備えた構成に成形されている。ボスプレート芯金3 には、図示せぬステアリングシャフトに嵌着される円筒状のボス4 が配設されている。ボスプレート芯金3 を成形するキャビティ内にボス4 を配設し、ボスプレート芯金3 を成形するキャビティ内に溶湯を流入させることで、ボス4 をボスプレート芯金3 に鋳ぐむことができる。
【0059】
図1では、射出部6からゲート部5を介して金型のキャビティ内に供給された溶湯が、射出成形品であるステアリングホイール20を成形するときに流れる溶湯の方向を、細線の矢印で仮想的に示している。また、左右から合流した溶湯の先端部同士が最終的に互いに突き合うキャビティの領域Wにおいて、左右から合流した溶湯の一部が、ゲート部8を介してオバーフロー部7に排出されるときに流れ出る溶湯の方向を白抜きの矢印で仮想的に示している。キャビティの内周縁側と外周縁側との略全周に沿ってベントスリットが形成されているが、ベントスリットの図示は省略している。
【0060】
尚、領域Wは、左右から合流した溶湯の先端部同士が最終的に互いに突き合うキャビティの領域Wであるが、金型に対する射出部6の配設位置によっては、射出部6から最遠部の領域が領域Wとして構成されることもある。
【0061】
射出部6からゲート部5を介して金型内に供給された溶湯は、最初にボスプレート芯金3を成形するキャビティ内に流入し、次にボスプレート芯金3を成形するキャビティに連通したスポーク部芯金2a〜2fを成形するキャビティ内へと流入する。スポーク部芯金2a〜2fを成形するキャビティ内に流入した溶湯は、スポーク部芯金2a〜2fを成形するキャビティからホイール芯金1を成形するキャビティに沿ってそれぞれ左右に分流し、領域Wにおいて左右からの溶湯が最終的に合流することになる。
【0062】
溶湯の流れを
図1のIV−IV断面図である
図4を用いて説明すると、射出部6には、溶湯が供給されるプランジャ(不図示)が設けられており、プランジャ内に供給された溶湯を押圧することで、金型のキャビティ内に溶湯を導入することができる。即ち、溶湯は、射出部6からゲート部5を介してボスプレート芯金3を成形するキャビティ内に導入される。そして、溶湯は、ボスプレート芯金3を成形するキャビティからスポーク部芯金2cを成形するキャビティ内へと流入する。
【0063】
尚、
図4では、スポーク部芯金2cだけを示しているが、実際に、
図1に示すようにスポーク部芯金2a〜2fを成形するキャビティ内全てに溶湯は流入する。そして、溶湯は、スポーク部芯金2a〜2fを成形するキャビティから環状に形成されたホイール芯金1を成形するキャビティ内を流れることになる。
【0064】
図2には、
図1のオバーフロー部7側からステアリングホイール20を見たときの側面図
を示している。
図2では、キャビティ内で成形されたステアリングホイール20を図示しているが、ステアリングホイール20を成形した金型についての図示は省略している。
図2に示したステアリングホイール20を成形するときの金型の配置位置を示すとすれば、固定金型10(
図4参照)側が上方に配されていて、可動金型11(
図4参照)が下方側に配されている配置構成になる。
【0065】
図4に示すように、固定金型10と可動金型11との合わせ面であるパーティングラインは、キャビティの外周壁面側に沿って形成される外周パーティングラインPLA(
図2参照)の第1外周パーティングラインPLAa及び第2外周パーティングラインPLAbとキャビティの内周壁面側に沿って形成される内周パーティングラインPLBとから構成されている。
図2、
図3では、外周パーティングラインPLAを図示している。
本願発明の実施例として2本一組のスポーク部芯金2a〜2fを供えた構成を示しているが、スポーク部芯金の本数は例示であって、他の本数や配置構成によって構成しておくこともできる。
【0066】
本願発明では、射出部6からゲート部5を介してキャビティ内に供給された溶湯が、キャビティ内で分岐した後に、分岐した溶湯の先端部同士が最終的に互いに突き合うキャビティの領域Wにおいて外周パーティングラインPLAの軌道を変更していることを特徴としている。即ち、
図2及び
図2において丸で囲んだ部位を拡大した
図3で示すように、領域Wにおける第1外周パーティングラインPLAaが、領域Wに到るまでの第2外周パーティングラインPLAbに対して可動金型11(
図4参照)側にずれた配置構成になっている。
【0067】
言い換えると、
図2、
図3で示した構成では、領域Wにおいて
図2、
図3の上方側に配される固定金型10(
図4参照)が、下方側に配される可動金型11(
図4参照)側に突出した延設部15を備え、可動金型11が固定金型10の延設部15を受け入れるように引っ込んだ形状に構成されている。このように金型が構成されているので、第2外周パーティングラインPLAbの仮想延長線に対して、第1外周パーティングラインPLAaが偏位した状態に配設されている。
【0068】
尚、
図2、
図3における図示例を射出成形品として考えた場合には、外周パーティングラインPLAは外周パーティングラインの痕跡として捉えることができる。実際の痕跡としては、外周パーティングラインPLAに沿って形成したベントスリット9a(
図4、
図5参照)によって、多少の幅を有したパーティングラインとして形成されているが、ベントスリット9a分の幅の図示は省略している。ベントスリットは、空気やガスを排出することができる幅寸法に形成されているが、ベントスリットからは溶湯は排出されない幅寸法に形成されている。
【0069】
図2、
図3における図示例では、領域Wにおいて固定金型10が可動金型11側に突出し、可動金型11が固定金型10の延設部15を受け入れるように引っ込んだ形状に構成されている構成例を示しているが、領域Wにおいて可動金型11が固定金型10側に突出し、固定金型10が可動金型11の延設部15を受け入れるように引っ込んだ形状に構成しておくこともできる。
【0070】
即ち、第2外周パーティングラインPLAbの仮想延長線に対して、第1外周パーティングラインPLAaの位置を可動金型11が固定金型10に対して接離させる方向に偏位させて配設しておくことができる。そして、領域Wにおける第1外周パーティングラインPLAaには、
図4、
図5、
図7に示すようにゲート部8を介してオバーフロー部7を連通させておくことができる。
【0071】
射出部6から供給された溶湯が、環状に形成されたホイール芯金1を成形するキャビティ
内を流れるとき、キャビティ内のガスや空気は外周パーティングラインPLAに沿って形成されたベントスリット9a及び内周パーティングラインPLBに沿って形成されたベントスリット9bから外部に排出される。即ち、このとき、ベントスリット9a、9bからは、溶湯が外部に排出されることはない。そして、溶湯が、環状に形成されたホイール芯金1を成形するキャビティ内を流れて、領域Wにおいて、左右から来た溶湯の先端部同士が最終的に互いに突き合わされる。
【0072】
このとき、
図2、
図3、
図5に示すように領域Wにおける第1外周パーティングラインPLAaの位置が、第2外周パーティングラインPLAbの仮想延長線に対して可動金型11が固定金型10に対して接離させる方向に偏位しているので、溶湯の液面によって押されたガスや空気は、第2外周パーティングラインPLAb位置からの排出状態から、第1外周パーティングラインPLAa位置からの排出に変化する。
【0073】
これによって、溶湯の液面よりも上部に存在していたガスや空気の排出流れに変化を生じさせることができる。同時に、
図4、
図5、
図7に示すように、溶湯がゲート部8を通ってオバーフロー部7に排出される状況においても、オバーフロー部7に排出されるときに溶湯内において生じている流れの方向も、溶湯の液面が上昇するときに溶湯内で生じていた流れの方向に対して変化することになる。
【0074】
そして、
図7に矢印で示すように領域Wにおいて先端同士が突き当たったところの溶湯を、第1外周パーティングラインPLAaからホイール芯金1を形成するキャビティからオバーフロー部7内に逃がしてやることができる。同時に、オバーフロー部7内に流れ込む溶湯の先端部によって巻き込みやすいガスや空気を、ホイール芯金1を形成するキャビティから取り除くことができる。
【0075】
このように、領域Wにおいて外周パーティングラインPLAの軌跡を第2外周パーティングラインPLAbから第1外周パーティングラインPLAaに変化させることで、ガスや空気の流れを変化させることができ、しかも、溶湯内で生じている溶湯の流れも変化することになる。そして、このように流れに対して変化を生じさせることで、成型品であるステアリングホイール20に巣が発生するのを大幅に減少させることができる。また、オバーフロー部7から外部に排出する溶湯の排出量を減少させてもウェルドラインの発生も最小限に抑えておくことができる。
【0076】
図5では、固定金型10から可動金型11側に延設部15のキャビティの周面側の形状として、直線状の平面に形成した構成例を示しているが、キャビティの延設部15側の形状としては、固定金型10から可動金型11側に向かってラッパ状に広がった形状に構成しておくこともできる。即ち、可動金型11を固定金型10から離間させた後に射出成形品であるステアリングホイール20のホイール芯金1を固定金型10からスムーズに分離させることのできる周面形状に構成しておくことができる。
【0077】
同様に、領域Wにおいて可動金型11を固定金型10側に延設した構成にした場合には、ホイール芯金1を可動金型11から分離させる際に、ホイール芯金1が可動金型11からスムーズに分離できる周面形状に延設部を構成しておくことができる。
実施例では、ホイール芯金1の断面形状として逆U字状の形状を示した構成を例示しているが、ホイール芯金1の断面形状としては、円形状や楕円形状等に構成しておくこともできる。