(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774894
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】可溶体及び可溶体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 85/055 20060101AFI20150820BHJP
H01H 69/02 20060101ALI20150820BHJP
H01H 85/044 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
H01H85/055
H01H69/02
H01H85/044
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-84189(P2011-84189)
(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公開番号】特開2012-221639(P2012-221639A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205373
【氏名又は名称】ダイヘンヒューズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(72)【発明者】
【氏名】高桑 義則
(72)【発明者】
【氏名】松村 悟史
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−001466(JP,U)
【文献】
実開昭51−042451(JP,U)
【文献】
特開平05−205607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00−87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低融点金属の可溶部と、この可溶部の両端に接続された抵抗線とからなる可溶体において、中央のブリッジ部を介して両端に筒状部を有する補助部材の該筒状部に抵抗線の一端部が挿通保持され、ブリッジ部から筒状部に掛けて低融点金属を鋳造成型することによって前記可溶部を鋳造してなる可溶体。
【請求項2】
補助部材が中央のブリッジ部を介して両端に平板部を有し、当該平板部を筒状に曲げ加工したものである請求項1記載の可溶体。
【請求項3】
抵抗線の一端部に形成した拡径部を抜け止めとして筒状部に抵抗線を挿通するとともに、筒状部において半田付けしてなる請求項1又は2記載の可溶体。
【請求項4】
低融点金属の可溶部と、この可溶部の両端に接続された抵抗線とからなる可溶体の製造方法において、中央のブリッジ部を介して両端に平板部を有する補助部材の該平板部を筒状に折り曲げ加工し、この筒状部に抵抗線の一端部を挿通して保持するとともに、ブリッジ部から筒状部に掛けて低融点金属を鋳造成型することによって前記可溶部を鋳造することを特徴とする可溶体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低融点金属の可溶部と、この可溶部の両端に接続された抵抗線とからなる可溶体及び当該可溶体の製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電力配電線路における過負荷や短絡による事故を防止するため低圧密閉型ヒューズが用いられているが、可溶体は低融点の可溶部と、この可溶部の両端に接続された抵抗線で構成されている。
特許文献1はこのような低圧密閉型ヒューズの一例を示すものである。
すなわち、
図5の概略図に示すように、低融点金属の可溶部5とこの可溶部5の両端に接続された抵抗線6からなる可溶体7が絶縁内筒8によって外周を囲繞され、抵抗線6の両端部に接続した接続端子9を外部に導出して固定部材10によって絶縁外筒内11に収納密封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-24109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗線6は一般的に銅合金系の線材が用いられ、短時間の過電流通電時に溶融して電流を遮断する。また、可溶部5は錫などの低融点金属で、長時間の過電流通電時に抵抗線の発熱により溶融し、電流を遮断する。
抵抗線6と可溶部5を接続する際、抵抗線6の熱量を可溶部5に伝達しやすくするため、また、集中抵抗を削減し、電路の断面積を大きくとるため、抵抗線6の端部に補管を設け、この補管を対向状態に配して補管ごと低融点金属の可溶部5を鋳造成型していた。
【0005】
図6はこのような従来例の製造工程を示している。
図において、5は低融点金属の可溶部、6は可溶部の両端に接続される抵抗線、12は抵抗線6の端部に取り付けた補管であり、抵抗線端部にヘッダ加工によって形成した拡径部6aを抜け止めとして、抵抗線6を補管12に挿入保持する。しかる後、補管12同士を定まった配置間隔を開けて対向状態で鋳造型に組み込み低融点金属の可溶部5を鋳造成型していたのである。9は抵抗線6の両端部に圧縮接続した後半田付けで固着した接続端子である。
補管12は、材料となる銅素管13を3〜5mm径の適用サイズまで伸管し、全長4〜5mmに切断加工して用いていた。
【0006】
上記のように補管12を用いて可溶部5と抵抗線6を接続する場合、素管13を伸管した上で4〜5mmに切断加工しなければならず、また、仕上げ加工としてバリ取り加工を必要としていた。補管12を製造するための一回のパイプ加工で、10万〜100万個程度の補管発注単位となり、少量では割高となっていた。切断後のバリ取り加工は、半田付けに悪影響を及ぼす研磨剤などの不純物の付着がないバリ取り方法が必要なため、作業期間が掛かりコスト高となっていた。
また、抵抗線6と補管12の組み込み品を補管12同士対向状態で鋳造型にセットする際、定まった配置間隔を開けてセットする必要があり、作業時間を要し、配置間隔の誤差による品質のばらつきが発生していた。
【0007】
そこでこの発明の目的とするところは、少量生産にも大量生産にも適し、組立作業の簡易化を図り得るとともに製造時のばらつきが少なく、品質の向上を図り得る可溶体及び可溶体の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、この発明においては、低融点金属の可溶部と、この可溶部の両端に接続された抵抗線とからなる可溶体において、中央のブリッジ部を介して両端に筒状部を有する補助部材の該筒状部に抵抗線の一端部が挿通保持され、ブリッジ部から筒状部に掛けて低融点金属を鋳造成型
することによって可溶部を鋳造して可溶体を構成したことを特徴としている。
低融点金属を鋳造成型する場合、ブリッジ部と筒状部の全体に鋳造成型するほか、筒状部を僅かに突出させた状態で鋳造成型してもよい。
上記補助部材は、中央部のブリッジ部を介して両端に平板部を有し、当該平板部を筒状に曲げ加工するのが好ましい。
また、抵抗線の一端部に拡径部を形成し、この拡径部を抜け止めとして筒状部に抵抗線を挿通するとともに、筒状部において半田付けしておくと鋳造作業が容易となる。
【0009】
上記のような可溶体は次の方法によって容易に製造可能である。すなわち、中央のブリッジ部を介して両端に平板部を有する補助部材の該平板部を筒状に折り曲げ加工し、この筒状部に抵抗線の一端部を挿通して保持するとともに、ブリッジ部から筒状部に掛けて低融点金属を鋳造成型
することによって可溶部を鋳造する製造方法である。
ブリッジ部と筒状部の全体に鋳造成型するほか、筒状部を僅かに突出させた状態で鋳造成型してもよい。
【0010】
可溶部は、錫単体若しくは錫を主体とする合金、例えば錫・ニッケル合金、錫・銀合金、錫・銅合金、錫・銀・銅合金などが採用できるが、これに限定されるものではない。
抵抗線は、銅、銀を主体とした単体もしくは銅・ニッケル合金、銅・ニッケル・クロム合金などの合金線が採用できるが、これに限定されるものではない。
補助部材の材料としては銅、銀を主体とした単体もしくは銅・ニッケル合金、銅・ニッケル・クロム合金などが用いることができる。補助部材は少量生産においては、板材からレーザー加工により裁断加工したブランク品のバリ取り後、簡易な曲げ治具にて曲げ加工を行えばよい。また、大量生産の場合、プレス加工によって連続的に抜き加工を施したブランク品を連続的に曲げプレスによって曲げ加工を施すことによって大量生産できる。この場合、送り付き機械プレスに順送金型を取り付け、抜き加工を施せば、最高レベルの生産効率をあげることができ、また、バリの出にくい順送金型を使用することもできる。抜き加工したブランク品はパーツフィーダと曲げ金型付のプレスを用いることにより連続的に曲げ加工ができる。
【0011】
抵抗線の一端部に形成した拡径部を抜け止めとして筒状部に抵抗線を挿通する場合、拡径部は抵抗線の末端部に形成しても、また、末端部からやや内方寄りの端部に形成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の可溶体は、上述のように、中央のブリッジ部を介して両端に筒状部を有する補助部材の該筒状部に抵抗線の一端部を挿通保持して、ブリッジ部から筒状部に掛けて低融点金属を鋳造成型する構成としたので、鋳造に際し、抵抗線を保持した筒状部間の配置間隔を高精度に管理することができ、鋳造型にセットする際にも容易に短時間でセットすることができる。従って、製造作業時間の短縮、品質の向上に寄与するものである。
また、補助部材は少量生産でも大量生産でも対応することできる利点も有している。
【0013】
さらにまた、可溶部内部にブリッジ部が存在するため、このブリッジ部によって次の効果が得られる。すなわち、長時間溶断領域における溶断時間を遅らせることができる。また、熱容量の増加、電気抵抗の低下によって通電容量を増加できる。さらにまた、補助部材の材質、ブリッジ部の断面積、長さを変化させることによって通電点を大きくも小さくも調製できるため、通電容量の自由度を向上させることができる。
【0014】
ヒューズは、夏冬や朝晩に寒暖の差により膨張収縮を繰返している。密閉型ヒューズでは、樹脂ハウジングの膨張収縮によって、可溶体に圧縮・引張力が繰返し加わっている。
しかるに、本発明の可溶体では、低融点金属の可溶部にブリッジ部が存するため、可溶体に加わる機械力をブリッジ部が一部負担して可溶部に加わる機械力を緩和させることによって、クラック・亀裂等を防止している。さらに、使用時の通電状態では、可溶体は加熱された状態にあり、高温状態で機械力が加わる。高温雰囲気では、低融点金属の機械力が著しく低下するが、補助部材に高融点金属を用いれば、ブリッジ部の機械力は 低下せず、可溶部の破損を防がれ、冷熱サイクルに強く、高温においても機械的強度が向上する。
【0015】
ヒューズが使用される電流負荷状態は一定ではなく、常に電流変動を起こしている。繰返し電流の電流エネルギーが熱に変換されて、可溶体は熱変動を起こしている。可溶体は加熱された状態で、さらに膨張収縮による高温での圧縮・引張応力が繰返し加わる。これらが機械力に弱い可溶部に応力集中するが、内部にブリッジ部があれば可溶部の破損を防ぐことができ繰返し電流特性に強い可溶体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】同可溶体に使用する補助部材の加工状態を示す概略図
【
図4】同可溶体を用いたヒューズの溶断時間―電流特性図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る可溶体の一例をその製造工程とともに示したもので、低融点金属の可溶部1と、この可溶部1の両端に接続された抵抗線2とからなる。抵抗線2の両端部には接続端子3が圧縮接続後に半田付けで固着される。
【0018】
4は従来の補管12に代る補助部材で、中央のブリッジ部4aを介して両端に筒状部4bを有している。抵抗線2には、末端部からやや内方寄りの端部に拡径部2aが形成されている。この拡径部2aは抵抗線2の末端部に形成する場合はヘッダ加工によって形成すればよく、やや内方寄りに形成する際にはヘッダ加工の他、スェージング、クロスロール鍛造を用いることができる。
【0019】
抵抗線2は拡径部2aを抜け止めとして補助部材4の筒状部4bに挿通した上、筒状部4bにおいて圧縮接続して仮止めした後、下地はんだを施して固着される。しかる後筒状部4bとブリッジ部4a全体に低融点金属を鋳造成型することによって可溶部1を鋳造するものである。
【0020】
補助部材4は少量生産においては、板材からレーザー加工により裁断加工したブランク品4cのバリ取り後、簡易な曲げ治具にて曲げ加工を行って筒状部4bを形成すればよく、また、大量生産の場合、プレス加工によって連続的に抜き加工を施したブランク品4cを連続的に曲げプレスによって曲げ加工を施して筒状部4bを形成すればよい。
【0021】
直径1.2mmの銅合金線を素材とする抵抗線2を銅合金製補助部材4の筒状部4bに挿通保持し、Sn−3.5Ag-0.75Cuの錫を主体とする低融点合金を鋳造型においてブリッジ部4aと筒状部4bの全体に鋳造して可溶体1を構成し、抵抗線2の両端部に直径3.2mmの銅合金製接続端子3を圧縮接続して半田付けした後、
図5に示す50A用の低圧密閉型ヒューズ用のヒューズ部材を構成した。
図4はこのヒューズ部材の溶断時間―電流特性を示すもので、従来のヒューズ部材に比し、長時間溶断領域において溶断時間を遅らせることができることが分る。
【0022】
上記においては抵抗線2に抜け止めとなる拡径部2aを設ける例を示しているが、拡径部2aを設けずに、抵抗線2を筒状部4bに圧縮接続して仮止めした後、下地はんだを施して固着することもできる。
【0023】
また、上記においては、補助部材4のブリッジ部4aと筒状部4bの全体に低融点合金を鋳造した例を示しているが、
図3のように、筒状部4bを若干突出させた状態で低融点合金を鋳造することも可能である。
この場合、抵抗線2における大電流遮断時に熱伝導が緩和され、低融点合金のガス化を抑制して遮断性能を向上させる利点も有している。
【0024】
以上の通り、本発明の可溶体及び可溶体の製造方法は、次のような利点を有するものである。少量生産にも大量生産にも適している。連続通電容量を大きくできる。可溶体の製造時に作業時間を短縮でき、製造のばらつきが少なく品質が向上する。冷熱サイクルに強く、高温時においても機械的強度が強い。繰返し電流特性が優れている。
【符号の説明】
【0025】
1 可溶部
2 抵抗線
2a 拡径部
3 接続端子
4 補助部材
4a ブリッジ部
4b 筒状部