(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る電子機器1の構成を示す回路図である。
電子機器1は、たとえばテレビや冷蔵庫、エアコンなどの家電製品やコンピュータである。電子機器1は、マイコン2、信号処理回路4、DC/DCコンバータ100、整流回路102、PFC(力率改善回路)200を備える。電子機器1は、DC/DCコンバータ100の絶縁トランス(不図示)を境界として、互いに絶縁される1次側と2次側に分けられている。
【0025】
整流回路102は、たとえばダイオード整流回路であり、商用交流電圧などの交流電圧を受け、それを全波整流して交流電圧V
ACを生成する。
【0026】
PFC回路200は、整流回路102からの交流電圧V
ACを受け、出力電圧V
DCを生成する昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)である。PFC回路200は、交流電圧V
ACと入力電流I
ACの位相を一致させることにより力率を改善する。
【0027】
DC/DCコンバータ100は、PFC回路200の出力電圧V
DCを受け、これを降圧して負荷であるマイコン2や信号処理回路4へと供給する。
【0028】
マイコン2は、電子機器1全体を統合的に制御する。信号処理回路4は、特定の信号処理を行うブロックであり、たとえば外部機器との通信を行うインタフェース回路や、画像処理回路、音声処理回路などが例示される。現実の電子機器1においては、その機能に応じて複数の信号処理回路4が設けられることはいうまでもない。
【0029】
以上が電子機器1の全体構成である。続いて、このような電子機器1に好適に利用可能なPFC回路200について説明する。
【0030】
図2は、第1の実施の形態に係るPFC回路200の構成を示す回路図である。
PFC回路200は、昇圧型DC/DCコンバータを含み、主として、制御回路210、出力回路212を備える。出力回路212は、インダクタL1、ダイオードD1、キャパシタC1およびスイッチングトランジスタM1を含む一般的なトポロジーであるため、詳細な説明は省略する。スイッチングトランジスタM1のスイッチングにより、入力電圧V
ACが降圧され、出力電圧V
DCが生成される。なおPFC回路200は、構成はDC/DCコンバータと言えるが、その入力電圧V
ACは全波整流された交流電圧であり、出力電圧V
DCは直流電圧であることから、動作はAC/DCコンバータと言える。
【0031】
抵抗R11、R12は、PFC回路200の出力電圧V
DCを分圧し、出力電圧V
DCに応じた第1検出電圧V
Sを生成する。第1検出電圧V
Sは制御回路210の出力電圧検出端子(P_VS端子)に入力される。
【0032】
検出電流Rsは、スイッチングトランジスタM1の経路上に設けられ、その両端間には、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1に比例した第2検出電圧V
Iが生ずる。第2検出電圧V
Iは、制御回路210の電流検出端子(CS端子)にフィードバック入力される。第2検出電圧V
Iは、スイッチングトランジスタM1のスイッチングに応じた間欠的な波形を有するが、その包絡線は、PFC回路200の入力電流I
ACと一致すると考えてよい。
【0033】
また、全波整流された交流電圧V
ACは、抵抗R21、R22により分圧される。分圧された交流電圧V
BOは、制御回路210の入力電圧検出端子(P_BO端子)に入力される。
【0034】
以下、制御回路210の具体的な構成を説明する。制御回路210は、第1V/I変換回路10、第2V/I変換回路12、第3V/I変換回路14、オフセット回路16、第1誤差増幅回路18、乗算器20、第2誤差増幅回路30、駆動回路40を備える。
【0035】
第1V/I変換回路10は第1抵抗R1を含み、DC/DCコンバータ(PFC回路200)に入力される全波整流された交流電圧V
ACに応じた第1電圧V1を第1抵抗R1に印加することにより第1電流I1を生成する。第1電圧V1は、全波整流波形を有する。
I1=K1×V1/R1 …(1)
K1は比例定数である。
【0036】
第1V/I変換回路10の前段には、全波整流して分圧された交流電圧V
ACを高電位側にオフセットするオフセット回路16が設けられる。オフセット回路16の出力が、第1電圧V1として第1V/I変換回路10に入力される。
【0037】
第1誤差増幅回路18は、DC/DCコンバータの出力電圧V
DCに応じた第1検出電圧V
Sと所定の基準電圧V
REFとの誤差を増幅し、第2電圧V2を生成する。
第2V/I変換回路12は、第2抵抗R2を含み、第2電圧V2を第2抵抗R2に印加することにより第2電流I2に変換する。
I2=K2×V2/R2 …(2)
K2は比例定数である。
【0038】
第3V/I変換回路14は、第3抵抗R3を含み、所定の電圧V
BGR(=V3)を第3抵抗R3に印加することにより第3電流I3を生成する。所定の電圧V
BGRは温度に依存せずに一定の電圧であることが好ましく、図示しないバンドギャップリファレンス回路により生成することが好ましい。
I3=K3×V
BGR/R3 …(3)
K3は比例定数である。
【0039】
乗算器20は、第1電流I1と第2電流I2を乗算し、第3電流I3により除算した第4電流I4を生成する。乗算器20は第4抵抗R4を含み、第4電流I4を第4抵抗R4に流すことにより第4電圧V4を生成する。
V4=I4×R4 …(4)
【0040】
第2誤差増幅回路30は、出力回路212のスイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1に応じた第2検出電圧V
Iと、乗算器20からの第4電圧V4との誤差を増幅し、誤差電圧V
ERRを生成する。
【0041】
駆動回路40は、誤差電圧V
ERRにもとづき、スイッチングトランジスタM1を駆動する。駆動回路40は、たとえばパルス幅変調(PWM)、パルス周波数変調(PFM)などのパルス変調方式により、誤差電圧V
ERRに応じたデューティ比を有する駆動信号S
DRVを生成し、出力端子SWOUTからスイッチングトランジスタM1のゲートへと出力する。駆動回路40の構成は特に限定されず、公知の技術を用いればよい。
【0042】
図2には、PWM方式の駆動回路40の一例が示される。駆動回路40は、ランプ波形生成部42、コンパレータ44、オシレータ46、RSフリップフロップ48、ドライバ50を含む。
ランプ波形生成部42は、所定の周波数(たとえば65kHz)を有するのこぎり波、あるいは三角波の周期電圧V
RAMPを生成する。コンパレータ44は、誤差電圧V
ERRと周期電圧V
RAMPを比較し、交点ごとにレベルが遷移するリセット信号S
RSTを生成する。リセット信号S
RSTは、V
ERRがV
RAMPを下から横切るごとに、ポジティブエッジを有する。
【0043】
オシレータ46は、所定の周波数のセット信号S
SETを生成する。RSフリップフロップ48は、そのセット端子(S)にセット信号S
SETを受け、そのリセット端子(R)にリセット信号S
RSTを受ける。RSフリップフロップ48の出力(Q)は、セット信号S
SETのポジティブエッジごとにハイレベルに遷移し、リセット信号S
RSTのポジティブエッジごとにローレベルに遷移する。
【0044】
セット信号S
SETの生成は、オシレータ46によるものには限定されない。たとえばオシレータ46に代えて、インダクタL1の電流が実質的にゼロまで低下すると、レベルが遷移(ポジティブエッジ)するセット信号S
SETを生成するゼロクロスコンパレータを設けてもよい。たとえばインダクタL1の電流は、インダクタL1に補助巻き線を設けることにより好適に検出できる。この場合、オシレータ46を用いる場合に比べて、インダクタL1に蓄えられたエネルギーを、より効率を利用できる。セット信号S
SETは、さらに別の方法によって生成されてもよい。後述する
図5の変形例においても同様である。
【0045】
RSフリップフロップ48の出力は、パルス幅変調された信号S
PWMとなる。ドライバ50は、PWM信号S
PWMにもとづきスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
このPWM信号S
PWMのデューティ比は、第1誤差増幅回路18を含むフィードバックループと、第2誤差増幅回路30を含むフィードバックループによって、第1検出電圧V
Sが基準電圧V
REFと一致し、かつスイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1の包絡線波形が、全波整流された入力電圧V
ACの波形と一致するように調節される。
【0046】
以上がPFC回路200の全体構成である。続いて、制御回路210の具体的な構成例を説明する。
【0047】
図3は、制御回路210の一部の構成を示す回路図である。
オフセット回路16は、抵抗R1を介して、全波整流された交流電圧V
ACが分圧された入力電圧V
BOを受け、それをオフセットして第1電圧V1を生成する。
【0048】
第1V/I変換回路10は、第1抵抗R1に加えて、トランジスタM11、演算増幅器OA1、カレントミラー回路CM1を含む。第1抵抗R1の一端は接地される。トランジスタM11の一端(ソース)は第1抵抗R1および演算増幅器OA1の反転入力端子と接続される。演算増幅器OA1の非反転入力端子には第1電圧V1が入力される。トランジスタM11および抵抗R1には、電流I
M11が流れる。
I
M11=V1/R1
【0049】
カレントミラー回路CM1は、トランジスタM12〜M15および抵抗R2を含むカスコート型であり、電流I
M11を折り返して第1電流I1を出力する。カレントミラー回路CM1のミラー比が1のときK1=1となり、式(1a)が成り立つ。
I1=V1/R1 …(1a)
【0050】
第2V/I変換回路12、第3V/I変換回路14は、第1V/I変換回路10と同様に構成される。なお、第2V/I変換回路12(第3V/I変換回路14)では、カレントミラー回路CM2(CM3)はそれぞれ、トランジスタM22、M23(M32、M33)を含んで構成される。もちろんカレントミラー回路CM2、CM3をカスコード型で構成してもよい。反対に第1V/I変換回路10のカレントミラー回路CM1を、カレントミラー回路CM2、CM3と同様に構成してもよい。カレントミラー回路CM2、CM3のミラー比が1であるとき、式(2a)、(3a)が成り立つ。
I2=V2/R2 …(2a)
I3=V
BGR/R3 …(3a)
【0051】
第1誤差増幅回路18は、誤差増幅器EA1、出力バッファ19、第1電流源CS1、第2電流源CS2を含む。
誤差増幅器EA1は、基準電圧V
REFと第1検出電圧V
Sの誤差を増幅する。出力バッファ19は、プッシュプル形式を有しており、誤差増幅器EA1の出力に応じた第2電圧V2を生成する。
【0052】
第1電流源CS1は、第1検出電圧V
Sが所定の第1しきい値電圧V
TH1より低いときオン状態となる。第1しきい値電圧V
TH1は、基準電圧V
REFよりも低い値、たとえば基準電圧V
REFより15%程度低い値とすることが望ましい。第1電流源CS1はオン状態において、第1誤差増幅回路18の出力端子に電流を供給することにより、第2電圧V2を上昇させる。第2電圧V2が上昇するとPFC回路200の出力電圧V
DCが上昇する。
【0053】
第2電流源CS2は、第1検出電圧V
Sが所定の第2しきい値電圧V
TH2より高いときオン状態となり、第1誤差増幅回路18の出力端子から電流を引き抜くことにより、第2電圧V2を低下させる。第2電圧V2が低下するとPFC回路200の出力電圧V
DCは低下する。
【0054】
コンパレータCMP1は、第1検出電圧V
Sをしきい値電圧V
TH1と比較し、V
S>V
TH1のときにハイレベルとなる低電圧ロックアウト信号(VSUVLO信号)を生成する。第1電流源CS1は、VSUVLO信号がローレベルのときオン状態となる。またコンパレータCMP2は、第1検出電圧V
Sをしきい値電圧V
TH2と比較し、V
S>V
TH2のときにハイレベルとなる過電圧保護信号(DOVP信号)を生成する。第2電流源CS2は、DOVP信号がハイレベルのときにオン状態となる。
【0055】
図4は、制御回路210の一部の構成を示す回路図である。乗算器20は、第4抵抗R4に加えて、バイポーラトランジスタQ1〜Q9、電流源22、抵抗R5、カレントミラー回路CM41〜CM43を備える。
【0056】
カレントミラー回路CM41〜CM43はそれぞれ、第1電流I1〜第3電流I3を折り返す。トランジスタQ1、Q2、Q4、Q5および電流源22は、差動増幅器を形成する。第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2は、差動対を構成する。第4トランジスタQ4、第5トランジスタQ5は、それぞれ第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2の負荷であり、トランジスタQ4、Q5のエミッタは、トランジスタQ1、Q2それぞれのコレクタと接続されている。電流源22は、差動対(Q1、Q2)にテイル電流を供給する。
【0057】
第3トランジスタQ3は、第3電流I3に応じた電流I3’の経路上に設けられ、そのエミッタが第1トランジスタQ1のベースと接続され、そのベースが第2トランジスタQ2のコレクタに接続される。第6トランジスタQ6は、第2電流I2に応じた電流I2’の経路上に設けられ、そのエミッタが第2トランジスタQ2のベースと接続される。第7トランジスタQ7は、第1電流I1に応じた電流I1’の経路上に設けられ、そのエミッタが第6トランジスタQ6のベースと接続され、そのベースが、第4トランジスタQ4および第5トランジスタQ5のベースと共通にバイアスされる。
【0058】
第8トランジスタQ8および第9トランジスタQ9はカレントミラー回路CM44を形成し、第1トランジスタQ1および第4トランジスタQ4がなす経路に流れる電流I4’(=I
C1)を折り返し、第4電流I4を生成する。第4抵抗R4は、第4電流I4の経路上に設けられる。第4抵抗R4の電圧降下V
R4が、第4電圧V4として出力される。
【0059】
第1トランジスタQ1〜第7トランジスタQ7それぞれのベースエミッタ間電圧をVF1〜VF7とし、各トランジスタに流れるコレクタ電流を、I
C1〜I
C7とする。
VF1+VF3+VF5=VF2+VF8+VF7 …(5)
が成り立つ。バイポーラトランジスタに流れるコレクタ電流は、
I
C∝Is×exp(V
F/V
T) …(6)
V
T=kT
Is:飽和電流
q:電子の電荷(1.602×10
−19[C])
k:ボルツマン定数(1.38×10
−23[J/K]
T:絶対温度([K])
【0060】
式(5)および(6)から、式(7)が得られる。
I
C1×I
C3×I
C5=I
C2×I
C6×I
C7 …(7)
ここで、トランジスタQ2とQ5は同じ電流経路上に設けられるため、I
C2=I
C5が成り立ち、式(8)、(9)を得る。
I
C1×I
C3=I
C6×I
C7 …(8)
I
C1=I
C6×I
C7/I
C3 …(9)
【0061】
簡単のため、カレントミラー回路CM41〜CM43それぞれのミラー比をすべて1とする。そうすると、
I
C7=I1’=I1
I
C6=I2’=I2
I
C3=I3’=I3
が成り立つから、式(10)が得られる。
I
C1=I2×I1/I3 …(10)
この第1トランジスタQ1に流れる電流I
C1が、トランジスタQ8、Q9を含むカレントミラー回路CM44のミラー比が1であるとき、式(11)を得る。
I4=I
C1=I2×I1/I3 …(11)
【0062】
式(11)に式(1a)〜(3a)を代入すると、式(12)を得る。
I4=(V1×V2)/V3×R3/(R1×R2) …(12)
【0063】
式(4)および式(12)から、式(13)が得られる。
V4=(V1×V2)/V3×(R3×R4)/(R1×R2) …(13)
【0064】
第2誤差増幅回路30は、誤差増幅器EA2および出力バッファ32を含み、
図3の第1誤差増幅回路18と同様に構成される。
【0065】
以上が実施の形態に係るPFC回路200の構成である。続いてPFC回路200の動作を説明する。
【0066】
第1電圧V1は交流電圧V
ACと同じ全波整流波形を有し、第2電圧V2、第3電圧V3はいずれも直流電圧である。したがって第4電圧V4は、交流電圧V
ACと同じ位相を有する全波整流波形となる。
【0067】
そして上述のように、第2誤差増幅回路30を含む系により、PWM信号S
PWMのデューティ比は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1の包絡線が、第4電圧V4と一致するようにフィードバック制御される。したがって、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1、ひいてはPFC回路200の入力電流I
ACの波形および位相が、交流電圧V
ACと一致し、力率が改善される。
【0068】
ここで式(13)に着目する。抵抗R1〜R4がペアリングして形成される。したがって温度変動やプロセスばらつき(温度変動等という)が生じても、それぞれの抵抗値は、それらの比を保ちながら変動する。すなわち、式(13)における(R3×R4)/(R1×R2)の項において、分母と分子で温度変動等の影響がキャンセルしあうため、その値は実質的に一定に保たれる。つまり、第4電圧V4に対する温度変動等の影響を低減でき、ひいては入力電流I
ACの波形に対する温度変動等の影響を低減することができる。
【0069】
PFC回路200はさらに以下の利点を有する。
分圧された交流電圧V
BOは、全波整流波形を有するため、実質的にゼロボルトまで低下する。仮に交流電圧V
BOを直接第1V/I変換回路10に入力すると、演算増幅器OA1の入力電圧範囲から外れ、不感帯で動作することになるため、第1電流I1が、きれいな全波整流波形とはならずに歪んでしまう。この歪みは、全高調波歪み(THD)を悪化させる。これに対して実施の形態に係る制御回路210では、オフセット回路16を設けたことにより第1V/I変換回路10が不感帯で動作するのを防止することができ、全高調波歪みを改善できる。
【0070】
また、PFC回路200は50Hz〜60Hz程度の包絡線に対する応答が要求されるため、フィードバックループの応答速度が非常に低い。したがって、誤差増幅器EA1、EA2のみによるフィードバック制御では、急峻な負荷変動に起因する出力電圧V
DCの低下や、出力電圧V
DCの上昇を抑えることができない。これに対して実施の形態に係る制御回路210では、低電圧状態(V
S<V
TH1)において第1電流源CS1をオンし、誤差増幅器EA1による応答よりも速く第2電圧V2を上昇させることにより、速やかに出力電圧V
DCを上昇させることができる。また過電圧状態(V
S>V
TH2)において第2電流源CS2をオンし、誤差増幅器EA1による応答よりも速く第2電圧V2を低下させることにより、速やかに出力電圧V
DCを低下させることができる。
【0071】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0072】
図2では、いわゆる平均電流モード制御を行う制御回路210について説明したが、本発明はそれに限定されず、ピーク電流モードにも適用可能である。
図5は、第1の変形例に係る制御回路210aを備えるPFC回路を示す回路図である。ピーク電流モードの制御回路210aは、
図2の第2誤差増幅回路30に代えて、コンパレータ45を備える。コンパレータ45は、第4電圧V4と第2検出電圧V
Iを比較し、V
I>V4のときハイレベルとなるリセット信号S
RSTを生成する。このリセット信号S
RSTは、駆動回路40aのRSフリップフロップ48のリセット端子に入力される。つまり駆動回路40aは、オシレータ46からのセット信号S
SETに応じて所定の周期ごとにスイッチングトランジスタM1をオンし、リセット信号S
RSTに応じて、第2検出電圧V
Iが第4電圧V4より高くなるごとにスイッチングトランジスタM1をオフする。
【0073】
図5の制御回路210aでは、第2検出電圧V
Iのピーク値、言い換えればスイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1のピーク値が、第4電圧V4と一致するようにフィードバックがかかり、出力電圧V
DCが安定化される。ピーク電流モードの制御回路210aは、平均電流モードに比べて効率を高めることができる。
【0074】
図6は、第2の変形例に係るPFC回路200bの構成を示す回路図である。PFC200bの前段には、整流回路102およびフィルタ101が設けられる。
図1で既に説明したPFC回路200の前段に、フィルタ101を設けてもよいことは言うまでもない。
【0075】
フィルタ101によってノイズが除去された交流電圧V
ACは、整流回路102によって全波整流され、平滑用キャパシタC30によって平滑化される。平滑化された電圧(入力電圧V
INという)が、PFC回路200bに入力される。この変形例においてPFC回路200bは、直流電圧を直流電圧に変換するDC/DCコンバータとして動作する。
【0076】
PFC回路200bは、主として制御回路210b、出力回路212を備える。制御回路210bは、
図2の平均電流モード型の制御回路210もしくは
図5のピーク電流モード型の制御回路210aが利用できる。
【0077】
キャパシタC30と並列に、抵抗R31およびキャパシタC31が直列に設けられる。抵抗R31とキャパシタC31の接続点の電位Vccは、制御回路210の電源端子VCCに供給される。
【0078】
検出抵抗Rsは、スイッチングトランジスタM1のソースと、整流回路102の出力端子P32の間に設けられる。検出抵抗Rsには、スイッチングトランジスタM1に流れる電流、言い換えればPFC回路200bの入力電流に応じた電流I
M1が流れ、検出抵抗Rsの両端間には、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1に応じた第2検出電圧(電圧降下)V
Iが発生する。第2検出電圧V
Iは、制御回路210の電流検出端子(CS端子)にフィードバック入力される。なお検出抵抗Rsは、上述した実施の形態と同様に、スイッチングトランジスタM1のソースと接地端子間に設けられてもよい。反対に、上述した実施の形態において、検出抵抗Rsを、
図6の位置に配置してもよい。
【0079】
ダイオードD21、D22は、整流回路102に入力される商用交流電圧V
ACを全波整流する。全波整流された交流電圧V
BOは、抵抗R21、R22により分圧されて、制御回路210の入力電圧検出端子(P_BO端子)に入力される。
【0080】
以上が第2の変形例に係るPFC回路200bの構成である。この変形例によっても、実施の形態のPFC回路200と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、温度特性の改善技術について説明した。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と組み合わせて、あるいは単独で用いることにより、PFC回路の入力電力の増大にともなう最大電力の増大を抑制する技術を説明する。
【0082】
図7は、第2の実施の形態に係る制御回路210cを有するPFC回路200cの構成を示す回路図である。制御回路210cの周辺回路の構成は、
図6と同様であるため説明を省略する。なお制御回路210cの周辺回路を、
図5と同様に構成してもよい。
【0083】
以下、制御回路210cの具体的な構成を説明する。ピーク電流モードの制御回路210cは、電圧レベル判定回路15、第1誤差増幅回路18、乗除算回路17、コンパレータ45、駆動回路40aを備える。
【0084】
第1誤差増幅回路18は、DC/DCコンバータの出力電圧V
DCに応じた第1検出電圧V
Sと所定の基準電圧V
REFとの誤差を増幅し、第2電圧V2を生成する。第1誤差増幅回路18の出力端子は、P_EO端子と接続される。P_EO端子には、キャパシタおよび抵抗を含む位相補償回路18aが接続される。
【0085】
電圧レベル判定回路15は、P_BO端子に入力された電圧V
BOに応じた第1電圧V1を受け、第1電圧V1の振幅Vampのレベルを判定し、判定されたレベルに応じた離散的なレベルをとる第3電圧V3を生成する。たとえば第3電圧V3は、
Vamp<Vth1のとき、第1レベルVa、
Vth1<Vamp<Vth2のとき、第2レベルVb
Vth2<Vamp<Vth3のとき、第3レベルVc
Vth3<Vampのとき、第4レベルVd
をとる。Va<Vb<Vc<Vdである。
【0086】
乗除算回路17は、第1電圧V1と第2電圧V2を乗算し、第3電圧V3で除算することにより、第4電圧V4を生成する。つまり、
V4=K4×V1・V2/V3 …(14)
が成り立つ。K4は定数である。乗除算回路17は、第1の実施の形態で説明したように、第1V/I変換回路10、第2V/I変換回路12、第3V/I変換回路14、乗算器20の組み合わせで構成してもよい。この場合、第1の実施の形態と同様に、温度特性の改善の効果が得られる。なお、乗除算回路17の構成はそれには限定されず、別の構成を用いてもよい。
【0087】
制御回路210cのその他の構成は、
図5のピーク電流モードの制御回路210aと同様である。
図7の制御回路210cに、オフセット回路16を設けてもよい。
【0088】
図8は、
図7の電圧レベル判定回路15の構成例を示す回路図である。
電圧レベル判定回路15は、複数のコンパレータCMP1〜CMP3と、複数のラッチ回路LA1〜LA3と、電圧生成部52を備える。
i番目のコンパレータCMPiは、第1電圧V1が、対応するしきい値電圧Vthiより高いときにアサート(ハイレベル)される比較信号S1_iを生成する。
【0089】
i番目のラッチ回路LAiは、対応する比較信号S1_iがアサートされるとその状態をラッチする。複数のラッチ回路LA1〜LA3の状態は、タイマー回路54により規定される所定の周期ごとにリセットされる。所定の周期τ1は、交流電圧V
ACの半周期より長いことが好ましい。たとえば交流電圧V
ACが50Hzの場合、その周期は20msであるから、所定の周期τ1は、10msより長く設定される。
【0090】
電圧生成部52は、複数のラッチ回路LA1〜LA3の状態に応じたレベルの第3電圧V3を生成する。たとえば電圧生成部52は、直列に接続された複数の抵抗R40〜R44を含む抵抗ストリング56と、抵抗R41〜R43それぞれと並列に設けられたスイッチSW41〜43を含んでもよい。i番目のスイッチSW4iは、対応するラッチ回路LAiの出力信号S2_iがハイレベルのときオン、ローレベルのときオフする。電圧生成部52が生成する第3電圧V3の電圧レベルは、第1電圧V1の振幅が大きくなるに従い、大きくなる。当業者であれば、コンパレータ、ラッチ回路、抵抗の個数は、第3電圧V3の階調数に応じて決めればよいことが理解される。
【0091】
なお電圧生成部52は、複数のラッチ回路の状態に応じたレベルの第3電圧を生成可能であれば、特にその構成は限定されない。
【0092】
図9は、
図8の電圧レベル判定回路15の動作を示す図である。
図9の例では、第1電圧V1の振幅レベルが、Vth2<Vamp<Vth3であるため、第3電圧V3のレベルは、第3レベルVcとなる。
【0093】
なお、電圧レベル判定回路15は、PFC回路200cの起動開始からある期間、第3電圧V3を最も高いレベルVdに設定することが好ましい。これにより、起動直後のある期間、第1電圧V1(交流電圧V
AC)の振幅レベルにかかわらず、最大電力を抑制することができる。これは、スイッチングトランジスタM1に流れる電流が制限されることを意味するため、PFC回路200cの出力電圧V
DCの上昇速度を緩やかにするいわゆるソフトスタートを実現できる。
【0094】
以上が制御回路210cの構成である。続いて、
図7のPFC回路200cの動作を説明する。
【0095】
図7のPFC回路200cの最大電力P
MAXは、式(15)で与えられる。Lは、インダクタL1のインダクタンス、I
Lは、インダクタL1に流れる電流、f
SWはスイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数である。
P
MAX=1/2×L×I
L2×f
SW …(15)
インダクタL1に流れる電流I
Lは、係数K5を用いて式(16)で与えられる。
I
L=(V4/Rs)×K5 …(16)
式(16)に式(14)を代入すると、
I
L=(K4×V1・V2/V3)/Rs×K5=α・V1・V2/V3 …(16)
ただし、α=K4/Rs×K5である。
【0096】
式(16)を、式(15)に代入すると、式(17)を得る。
P
MAX=1/2×L×(α・V1・V2/V3)
2×f
SW …(17)
【0097】
図10は、
図7のPFC回路200cにおける第1電圧V1の振幅Vampと最大電力P
MAXの関係を示す図である。
実線(II)で示すように、第3電圧V3を固定した場合、第1電圧V1の振幅Vamp、すなわち交流電圧V
ACの増大にともない、最大電力P
MAXはV
ACの2乗に比例して増大する。これに対して、
図7のPFC回路200cによれば、実線(I)で示すように、振幅Vampに応じて第3電圧V3を増大させることにより、最大電力P
MAXが無制限に増大するのを抑制できる。
【0098】
さらに、しきい値電圧Vth1〜Vth3および第3電圧V3の電圧レベルVa〜Vdはそれぞれ、PFC回路200の設計者が決めることができる。したがって、実線(I)の横軸方向については、しきい値電圧Vth1〜Vth3によって調節でき、縦軸方向については、電圧レベルVa〜Vdによって調節できる。
【0099】
以上が第2の実施の形態に係るPFC回路200cに関する説明である。
図7のPFC回路200cは、ピーク電流モードであったが、平均電流モードにも適用可能である。
図11は、
図7のPFC回路の変形例を示す回路図である。
図11のPFC回路200dは、平均電流モードの制御回路210dを備える。制御回路210dの周辺回路の構成は、
図6と同様であるため説明を省略する。なお制御回路210dの周辺回路を、
図2と同様に構成してもよい。制御回路210dは、
図2の制御回路210の第3V/I変換回路14に代えて、電圧レベル判定回路15を備える。
【0100】
平均電流モードの制御回路210dによっても、
図10に示すように、最大電力P
MAXが無制限に増大するのを抑制できる。
【0101】
実施の形態では、DC/DCコンバータ100が電子機器1に搭載される場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、さまざまな電源装置に適用することができる。たとえばDC/DCコンバータ100は、電子機器に電力を供給するACアダプタにも適用可能である。この場合の電子機器としては、ラップトップ型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、携帯電話端末、CDプレイヤなどが例示されるが、特に限定されない。
【0102】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。