(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774919
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】機械設備を駆動する電動装置、及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20150820BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20150820BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
H02M7/48 K
B60L9/18 J
B60L11/18 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-140204(P2011-140204)
(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公開番号】特開2012-70612(P2012-70612A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】1055095
(32)【優先日】2010年6月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508021716
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100086726
【弁理士】
【氏名又は名称】森 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ブーシェ
(72)【発明者】
【氏名】リュイ ドゥ スーザ
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−333870(JP,A)
【文献】
特開2004−336836(JP,A)
【文献】
特開2009−303298(JP,A)
【文献】
米国特許第05561595(US,A)
【文献】
欧州特許第01241041(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 9/18
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械設備を駆動し、かつ電動モータ(5)及びインバータ(3)を備える電動装置であって、前記インバータ(3)は、前記電動モータ(5)の各相に対応するHブリッジ構造を有し、このHブリッジ構造は、Hブリッジ構造の2つの端子(21)を接続する2つの分岐(15)に配置され、かつ前記モータの少なくとも1つの相の巻線(23)に給電するように構成されている4つのスイッチング素子(13)を有し、前記巻線(23)は中点付き巻線であり、
前記電動装置は更に、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニット、すなわち、一方において前記電動モータ(5)の少なくとも1つの相に、前記相の巻線(23)の中点(25)を介して接続され、かつ他方において、前記巻線(23)に給電する前記Hブリッジ構造の1つの端子(21)に接続されているスーパーコンデンサ(7)を備える電動装置。
【請求項2】
前記エネルギー貯蔵ユニットであるスーパーコンデンサ(7)の接続先の前記Hブリッジ構造の端子(21)は、接地電位(27)に接続されている端子に対応している、請求項1に記載の電動装置。
【請求項3】
前記装置は、一方において、前記電動モータ(5)の各相の巻線(23)の中点(25)に接続され、かつ他方において、前記巻線(23)に給電する前記Hブリッジ構造の端子(21)に接続されている単一のエネルギー貯蔵ユニットであるスーパーコンデンサ(7)を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、各相に対応するエネルギー貯蔵ユニットであるスーパーコンデンサ(7)を備え、このエネルギー貯蔵ユニットは、一方において、電動モータ(5)の巻線(23)の中点(25)に接続され、かつ他方において、前記巻線(23)に給電する前記Hブリッジ構造の端子(21)に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵ユニットは、電気化学二重層スーパーコンデンサ(7)である、請求項1に記載の電動装置。
【請求項6】
前記モータは、燃料電池によって給電されるようになっている、請求項1に記載の電動装置。
【請求項7】
前記モータの電源の遮断に対応する過渡状態になっている間に、前記燃料電池から供給されるエネルギーは、前記エネルギー貯蔵ユニットに貯蔵されるようになっている、請求項6に記載の電動装置。
【請求項8】
前記モータへの給電を可能にする蓄電手段と、前記インバータ(3)の制御手段とを備え、前記制御手段は、一方において、前記車両の制動フェーズ中の前記エネルギー貯蔵ユニットの充電を可能にし、かつ他方において、加速フェーズ中の前記エネルギー貯蔵ユニットから、前記モータへの放電、または前記蓄電手段への放電を可能にして前記蓄電手段を充電するように構成されている、請求項1に記載の電動装置。
【請求項9】
前記蓄電手段は、バッテリ(1)を含む、請求項8に記載の電動装置。
【請求項10】
前記スイッチング素子(13)は、並列接続されているトランジスタ及びダイオードを含む、請求項1に記載の電動装置。
【請求項11】
前記トランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、請求項10に記載の電動装置。
【請求項12】
前記電動モータ(5)は、三相モータである、請求項1に記載の電動装置。
【請求項13】
原動機付き車両の電動モータ(5)により生成される電気エネルギーを取り出す方法であって、前記電動モータ(5)の各相は、中点付き巻線(23)を含み、かつHブリッジ構造により給電され、前記車両の制動フェーズ中に、前記Hブリッジ構造のスイッチング素子(13)を制御して、生成される電気エネルギーを取り出すことにより、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニットに貯蔵するようになっている、具体的には、前記モータの少なくとも1つの相と前記Hブリッジ構造の接地電位に対応する前記Hブリッジ構造の1つの端子(21)との間に、前記相の巻線の中点(25)を介して接続されているスーパーコンデンサ(7)に貯蔵するようになっている方法。
【請求項14】
前記エネルギー貯蔵ユニットを充電するときに、前記Hブリッジ構造の前記素子群を制御して、前記エネルギー貯蔵ユニットまたはユニット群のエネルギーの一部を、バッテリ(1)に向けて放電させるようになっている、請求項13に記載の取り出す方法。
【請求項15】
少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニット、具体的には、スーパーコンデンサ(7)に貯蔵される電気エネルギーを取り出して、原動機付き車両の電動モータ(5)に供給する方法であって、前記電動モータ(5)の各相は、中点付き巻線(23)を含み、かつHブリッジ構造により給電され、
前記車両の加速フェーズ中は、前記Hブリッジ構造のスイッチング素子群(13)を制御して、前記モータの少なくとも1つの相と、前記Hブリッジ構造の接地電位に対応する前記Hブリッジ構造の1つの端子との間に、前記相の巻線(23)の中点(25)を介して接続されている前記エネルギー貯蔵ユニットに貯蔵されているエネルギーを優先的に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械設備、例えば原動機付き車両を、電動モータを使用して駆動するように構成され、かつ特定の環境下において、例えば原動機付き車両の場合には、回生制動とも呼ばれる制動中に、当該機械設備から供給されるエネルギーの一部を取り出しうるようにする電動装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、電動モータは、直流をインバータ3に供給する再充電可能な高電圧バッテリ1から電力が供給され、このインバータ3が、この直流を交流に変換することにより、電動モータ5に電源供給することができ、この電動モータによって、機械設備を
図1に示すように動かすことができるようになっている。
【0003】
更に、電動モータ5、通常は
図1に示すような非同期三相モータを作動させることにより、機械設備によって使用されない機械エネルギーを発電に使用して、バッテリ1を再充電することもできる。しかしながら、都会を走行しているときに、車両は、短時間の急激な制動を行なって、大量のエネルギーを、短時間に、かつ時間の経過とともに繰り返し発生させる。生成される大電流は、バッテリ1には吸収されず、過剰状態が発生することにより、バッテリ1が早期に劣化してしまう。
【0004】
この問題を解決するために、先行技術による解決策では、特許文献1に記載されているように、スーパーコンデンサを使用して、制動中に取り出されるエネルギーを貯蔵するようになっている。
図2〜
図5は、スーパーコンデンサを電動モータ5の電源供給回路に使用する先行技術による構成例を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1 241 041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2では、スーパーコンデンサ7であるエネルギー貯蔵ユニットは、バッテリ1に並列接続されている。このような構成における問題は、バッテリとスーパーコンデンサとの間のエネルギーの管理を制御することができないことである。従って、スーパーコンデンサを放電させて、ゼロボルトにすることができないか、または充電して、バッテリの電圧よりも高い電圧にすることができないので、スーパーコンデンサの容量の使用が制限され、スーパーコンデンサの利点が制約される。
【0007】
この問題を解決するための、1つの可能な解決策として、直流−直流(DC−DC)コンバータ9を導入して、
図3に示すようなスーパーコンデンサに対する個別管理を可能にすることがある。しかし、このような構成は、直流−直流コンバータ9のコストが高く付くので費用が嵩む。
【0008】
幾つかの電源回路は、電圧昇圧コンバータ11をインバータ3の上流に有している。この構成によると、インバータ3への電源供給が制御されるので、電源回路を最適化することができる。従って、1つの考えとして、
図4に示すように、スーパーコンデンサ7を電圧昇圧コンバータ11の出力に配置することがある。しかし、これにより、依存性が、インバータ3への電源電圧とスーパーコンデンサの充電状態との間に生じる。従って、インバータ3への電源電圧が、例えば低速の場合と同じように低い場合には、スーパーコンデンサ7は、それに応じて、放電せざるを得なくなる。更には、スーパーコンデンサ7を完全に放電させることはできない。これらの不具合は、直流−直流(DC−DC)コンバータ9を、
図5に示すように付加することにより、解決することができるが、この場合、
図3に示す構成と同じように、DC−DCコンバータ9のコストが非常に高くなる。
【0009】
従って、先行技術における前述の不具合を解決することができ、そして具体的には、スーパーコンデンサ7の容量の使用の最適化を可能にして、エネルギーを電動モータ5から取り出すことができる簡単かつ安価な実施形態を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例示的な実施形態は、機械設備を駆動し、かつ交流モータ及びインバータを備える電動装置を提供するものであり、前記インバータは、前記モータの各相に対応して、Hブリッジ構造を有し、このHブリッジ構造は、Hブリッジ構造の2つの端子を接続する2つの分岐に配置され、かつ前記モータの少なくとも1つの相の巻線に給電するように構成されている4つのスイッチング素子を有し、前記巻線は、中点付き巻線であり、前記電動装置は、前記モータの各相に対応して、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニットを備え、一方においては、前記モータの着目相の巻線の中点に接続され、かつ他方においては、前記巻線に給電するHブリッジ構造の1つの端子に接続されているスーパーコンデンサを備えている。
【0011】
本発明の他の例示的な実施形態は、機械設備を駆動し、かつ電動モータ及びインバータを備える電動装置を提供するものであり、前記インバータは、電動モータの各相に対応して、Hブリッジ構造を有し、このHブリッジ構造は、前記Hブリッジ構造の2つの端子を接続する2つの分岐に配置され、かつ前記モータの少なくとも1つの相の巻線に給電するように構成されている4つのスイッチング素子を有し、前記巻線は、中点付き巻線であり、
前記電動装置は更に、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニットを備え、具体的には、一方において、前記モータの少なくとも1つの相に、前記相の前記巻線の中点を介して接続され、かつ他方において、前記巻線に給電する前記Hブリッジ構造の1つの端子に接続されているスーパーコンデンサを備えている。
【0012】
前記装置は、単一のエネルギー貯蔵ユニットを備え、一方において、前記モータの各相の巻線の中点に、直接接続され、かつ他方において、前記巻線に給電するHブリッジ構造の端子に接続されている単一のスーパーコンデンサを備えることができる。
【0013】
1つの変形例として、前記装置は、各相に対応するエネルギー貯蔵ユニットを備え、具体的には、一方において、前記モータの相の巻線の中点に接続され、かつ他方において、前記巻線に給電するHブリッジ構造の端子に接続されているスーパーコンデンサを備えることができる。
【0014】
場合によって、スーパーコンデンサとすることができる前記エネルギー貯蔵ユニットの接続先の前記Hブリッジ構造の端子は、接地電位に接続されている端子と対応させることができる。
【0015】
スーパーコンデンサは、例えば1000〜5000W/kgの電力密度、及び/又は4〜6Wh/kgのエネルギー密度を有するコンデンサである。
【0016】
前記スーパーコンデンサは、電気化学二重層スーパーコンデンサとすることができる。
【0017】
本発明の第1の例示的な実施形態によれば、前記電動モータは、燃料電池によって給電されるもので、この燃料電池を、電動装置の一部とすることができる。
【0018】
本発明のこの第1の例示的な実施形態によれば、前記電動モータの電源の遮断に対応する過渡状態になっている間に、燃料電池から供給されるエネルギーは、前記貯蔵ユニットに、具体的には、前記スーパーコンデンサに貯蔵することができる。
【0019】
本発明の第2の例示的な実施形態によれば、前記電動装置は更に、モータへの給電を可能にする蓄電手段と、前記インバータの制御手段とを備え、前記制御手段は、一方において、車両の制動フェーズ中のエネルギー貯蔵ユニット、具体的には、前記スーパーコンデンサの充電を可能にし、かつ他方において、加速フェーズ中のエネルギー貯蔵ユニット、具体的には、前記スーパーコンデンサからモータへの放電、及び/又は前記蓄電手段への放電を可能にして、この蓄電手段を充電するように構成されている。
【0020】
本発明のこの第2の実施形態によれば、蓄電手段は、バッテリを含むことができる。
【0021】
1つのスイッチング素子、具体的には、各スイッチング素子は、並列接続されているトランジスタ及びダイオードを含むことができる。
【0022】
前記トランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタとすることができる。
【0023】
前記交流モータは、三相モータとすることができる。
【0024】
モータの各相の各端子は、Hブリッジ構造のスイッチング素子群に接続することができ、モータの各相は、Hブリッジの負荷に対応している。
【0025】
この装置のHブリッジ群の全てを、同じとすることができる。この装置のHブリッジ群の全てを、同じとする必要はない。
【0026】
本発明の他の例示的な実施形態は、原動機付き車両の電動モータにより生成される電気エネルギーを取り出す方法を提供するものであり、前記電動モータの各相は、中点付き巻線を含み、かつHブリッジ構造により給電され、前記車両の制動フェーズ中に、前記Hブリッジ構造のスイッチング素子群を制御して、生成されるエネルギーを取り出して、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニットに貯蔵するようになっている。具体的には、前記モータの少なくとも1つの相と、具体的には1つの相、または3つの相と、前記Hブリッジ構造の分岐群の下流部に対応する前記Hブリッジ構造の1つの端子との間に、前記相の巻線の中点を介して接続されているスーパーコンデンサに貯蔵する。
【0027】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、前記エネルギー貯蔵ユニット、具体的には、前記スーパーコンデンサを充電するときに、前記Hブリッジ構造の素子群を制御して、エネルギー貯蔵ユニット、具体的には、スーパーコンデンサのエネルギーの一部を、バッテリに向けて放電させるようになっている。
【0028】
他の例示的な実施形態は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵ユニット、具体的には、スーパーコンデンサに貯蔵される電気エネルギーを取り出して、原動機付き車両の電動モータに供給する方法を提供するものであり、前記電動モータの各相は、中点付き巻線を有し、かつHブリッジ構造により給電される。前記方法では、前記車両の加速フェーズ中に、前記Hブリッジ構造のスイッチング素子群を制御して、前記モータの少なくとも1つの相、具体的には、1つの相、または3つの相と前記Hブリッジ構造の分岐群の下流部に対応する前記Hブリッジ構造の1つの端子との間に、前記相の巻線の中点を介して接続されている前記エネルギー貯蔵ユニット、具体的には、スーパーコンデンサに貯蔵されているエネルギーを、優先的に使用する。
【0029】
前記エネルギー貯蔵ユニットまたはユニット群は、スーパーコンデンサ以外の貯蔵ユニット、例えばリチウムイオンバッテリとすることができる。
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の可能な実施形態を、例示的に、かつ非限定的に示す添付の図面を参照して行う以下に述べる本発明に関する説明を読むことにより明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来技術による電源回路図の1つの例示的な実施形態を示す。
【
図2】従来技術によるスーパーコンデンサを使用する電源回路図の第1の例示的な実施形態を示す。
【
図3】従来技術によるスーパーコンデンサを使用する電源回路図の第2の例示的な実施形態を示す。
【
図4】従来技術によるスーパーコンデンサを使用する電源回路図の第3の例示的な実施形態を示す。
【
図5】従来技術によるスーパーコンデンサを使用する電源回路図の第4の例示的な実施形態を示す。
【
図7】本発明の1つの実施形態によるHブリッジ構造を示す。
【
図10】本発明の1つの実施形態によるHブリッジの作動回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明において、次の一般的な表記を使用する。
「Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)」という用語は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)入力及びバイポーラトランジスタ出力を有するハイブリッドトランジスタに対応する。
「H bridge structure(Hブリッジ構造)」または「H bridge(Hブリッジ)」という用語は、
図6に示すように、H形に略対称に配置される4個のスイッチング素子13を含む電気回路または電子回路に対応し、Hの2つの垂直分岐15は、それぞれ、Hの水平分岐17の各側に配置されている2つのスイッチング素子13を含み、この水平分岐17は、ブリッジの負荷19に対応している。本発明の場合、この負荷19は、モータ5の1つの相の巻線に対応している。更に、2つの垂直分岐15は、これらの分岐の両端で、ブリッジの2つの端子21に接続されている。これらのスイッチング素子は、通常、1つのトランジスタを
図8及び9に示すように、1つのダイオードに並列接続することにより具体化される。トランジスタは通常、絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。
「supercindenser」という用語は、通常、電気化学二重層形成方法を使用して形成されている高容量コンデンサに対応し、この電気化学二重層形成方法では、活性炭により形成され、かつ電解液を含浸させた2つの多孔質電極を、絶縁多孔質膜で分離する(イオン伝導度を確保する)。これにより、中程度の電力密度を、バッテリ群と従来のコンデンサ群との間で実現することができ、バッテリよりもエネルギーを高速で取り出すことが可能になる。
【0033】
本発明の種々の実施形態では、少なくとも1つの相の巻線23が中点付き巻線である構成の電動モータ5と、電動モータの電源回路とを使用し、この電源回路のインバータには、少なくとも1つのHブリッジ構造を使用して少なくとも1つの相に給電し、エネルギー貯蔵ユニットであるスーパーコンデンサ7が、巻線の中点25と、Hブリッジのうち、
図7に示すような接地27に対応する端子21との間に接続されている。この場合、電動モータ5の巻線23は、Hブリッジの負荷19になる。
【0034】
記載した例では、エネルギー貯蔵ユニットまたはユニット群7は、スーパーコンデンサ7であるが、本発明はこのような例に限定されない。
【0035】
本発明は、どのような相数の電動モータ5にも適用することができるが、ここでは、本発明を例示する三相モータについて説明することとする。このようなモータは、電動機付き車両の分野において広く使用されている。
【0036】
図8は、三相電動モータの電源回路の第1の実施形態を示し、この電源回路では、燃料電池であるバッテリ1は、インバータ3にステップアップ回路11を介して接続され、インバータ3は、これらの相の巻線23により表わされる電動モータの3つの相に給電するように構成されている3つのHブリッジ構造を備えている。これらの3つの相の各相に関して、スーパーコンデンサ7が、巻線23の中点と電源回路の接地電位27との間に接続されている。更に、スイッチ群29を、これらの巻線の中点25と、スーパーコンデンサ7との間に配置することにより、スーパーコンデンサ7の接続に対する制御を可能にしている。
【0037】
第2の実施形態によれば、3つの相の巻線23の中点は、
図9に示すように、単一のスーパーコンデンサ7に接続されている。
【0038】
従って、
図8及び
図9に示す実施形態の場合、スーパーコンデンサ7の充電電流または放電電流は、電動モータ5のこれらの相を流れるが、充電電流または放電電流によって、電動モータ5の作動が妨害されることはない。実際、これらの相の1/2巻線を流れる電流が等しい場合、この電流は起磁力を発生し、この起磁力は互いに打ち消し合うので、トルクは発生しない。
【0039】
従って、インバータ3の電流の制御手段は、スーパーコンデンサ7の充電電流及び放電電流が均等に割り当てられるように管理する必要がある。
【0040】
従って、これらの構成では、スーパーコンデンサ7に専用のコンバータ9を追加する必要がなく、そのため、設備のコストを低減することができ、かつスーパーコンデンサ7を放電させてゼロ電圧にすることができ、好適な使用が可能になる。
【0041】
次に、本発明のこれらの実施形態を一層深く理解しうるように、電源回路の作動について、電動モータにより駆動される原動機付き車両の場合に関して、詳細に説明する。なお、例えば風力駆動式または油圧式の他の機械設備も、本発明に包含される。
【0042】
作動においては、インバータ3の制御手段を介して、Hブリッジのスイッチング手段13の開閉、及びスイッチ群29の開閉を制御して、スーパーコンデンサ7を好適に使用する。
【0043】
本発明の1つの態様によれば、静止状態(加速または制動を行なわない)では、スーパーコンデンサ7の両端に現われる電圧は、ゼロボルトと、バッテリ1から供給される電源電圧の値Eとの中間値、例えばE/2に調整される。
【0044】
この中間値により、車両の加速を行なう場合には、インバータ3の制御手段でスーパーコンデンサ7の放電を制御して(場合によっては、ゼロボルトの電圧に下がるように)、電動モータ5に給電することができ、これにより、バッテリ1に対する要求電力量を小さく抑えることができる。そして制動を行なう場合には、電動モータ5(このモータは、発電機として機能する)から供給されるエネルギーを、スーパーコンデンサ7を再充電する(場合によっては、電圧Eにまで)することにより取り出すことができる。スーパーコンデンサ7の充電量が、中間値(本例ではE/2)よりも大きい値と対応している場合、制御手段は、スーパーコンデンサ7の両端に現われる電圧を、スーパーコンデンサをバッテリ1に向けて放電させることにより、E/2に戻す。この操作は、燃料電池の場合には、電気化学反応が不可逆であるので可能ではない。この場合、制動時に取り込んだエネルギーによってのみ、スーパーコンデンサの再充電が可能になる。
【0045】
更に、燃料電池の場合、電源供給の停止は直ぐには行なわれないので、電動モータへの電源供給を停止する指令が出されると(原動機付き車両の場合、この指令は、アクセルの踏み込み解除に対応する)、燃料電池は、エネルギーを供給し続ける(過渡状態)。従って、スーパーコンデンサによって、このエネルギーを熱の形で放散するのではなく、取り出すことができる。そのため、この過渡状態になっている間に貯蔵されるエネルギーは、次の加速時に使用することができる。
【0046】
例えば、加速及び制動を交互に行なう都会の走行時には、電動モータ5への電源供給は、基本的に、かつ優先的にスーパーコンデンサ7によって行なわれる。従って、バッテリ1に対する放電要求は、過渡状態になっている間のごくわずかな時間に亘ってしかなされないので、全体電力消費量は低減し、かつ、バッテリ1の経年劣化を小さくすることができる。
【0047】
更に、スーパーコンデンサ7の電流、及びモータ5に有効に作用する電流の両方を制御することができる。「有効に作用する」とは、起磁力を発生する電流を意味している。実際、
図7に示すように、モータ5の1つの相の1/2巻線の電流I1及びI2を制御することにより、有効電流Iu、及びスーパーコンデンサ7を流れる電流Icも制御される。これらの電流の間の関係は、次の方程式のようになる。
【数1】
【0048】
図7の電気回路は、高周波数で遮断されるブリッジの分岐群が、電源電圧E、及びデューティサイクルα1及びα2の平均値によって変わる電圧源と等価である平均モデルによりモデル化することができる。上記デューティサイクルは、0〜1の間である。次に、
図10の状態となり、電圧源31及び33は、それぞれ電圧α1.E及びα2.Eを供給する。
【0049】
従って、電流I1及びI2は、次式のようになる。
【数2】
上式において、Vcは、スーパーコンデンサ7の両端に現われる電圧であり、Zは、1/2巻線のインピーダンスである。
【0050】
従って、電流Iu及びIcの値は、次式のようになる。
【数3】
【0051】
従って、電動モータ5に流れる有効電流は、デューティサイクルの差(α1−α2)によって制御されるのに対し、スーパーコンデンサ7を流れる電流は、デューティサイクルの和(α1+α2)によって制御される。従って、2つの値(Iu及びIc)は、個別に制御することができ、これらの2つの値に関連性はない。
【0052】
従って、本発明の1つの実施形態によれば、ブリッジのスイッチング素子群13は、パルス幅変調指令(PWM)により制御され、このパルス幅変調指令のデューティサイクルが計算されて、電動モータ5及びスーパーコンデンサ7を流れる所望電流が得られる。
【0053】
従って、巻線23に給電するHブリッジの中点付き巻線23である相巻線群を有するモータ5を使用し、スーパーコンデンサ7を、巻線23の中点25と、電源回路の接地27との間に設けることにより、ブリッジのスイッチング素子13に対する制御を利用して、スーパーコンデンサ7または他のエネルギー貯蔵ユニット群を、これらの部品の動作範囲全体に亘って使用することができる。具体的には、これらの部品を、各スーパーコンデンサ7に専用の電圧コンバータを使用することなく、完全に放電させることができる。従って、これにより、電源回路におけるスーパーコンデンサ7の適用形態を最適化することができ、一方において、コンバータ11を追加する必要が全くないので、製造コストを低減することができ、他方において、バッテリ1の電力消費量が小さくなり、かつバッテリの稼働時間が、特に都会で運転しているときの充放電サイクルの回数が減ることにより延びるので、運転の作動コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 バッテリ
3 インバータ
5 電動モータ
7 スーパーコンデンサ
9 DC−DCコンバータ
11 コンバータ
13 スイッチング素子
15 垂直分岐
17 水平分岐
19 負荷
21 端子
23 巻線
25 中点
27 接地電位
29 スイッチ
31,33 電圧源
E 電源電圧
I1,I2 1/2巻線の電流
Ic スーパーコンデンサを流れる電流
Iu 有効電流
Vc スーパーコンデンサの両端に現われる電圧
Z 1/2巻線のインピーダンス
α1,α2 デューティサイクル
α1.E,α2.E電圧