【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、
耐震建物として構成してある建物であって、建物外周部に沿い、且つ、上下階にわたって周回する周回路が前記建物外周部
の外側に一体に設けられ、前記周回路の少なくとも一部は、耐震設計において地震力の一部を負担させる
耐震ブレースとして形成されたスロープ部
を前記建物外周部に剛連結して構成されているところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、耐震構造要素のすべてを、建物内の耐震壁に頼ることなく、スロープ部においても耐震性能の向上を図ることができるようになる。
また、室内からの視線は水平方向に沿っているのに対して、スロープ部そのものは、表裏面は視線に沿って位置するから、殆ど視線を遮ることはなく、厚み部分の端面においてのみ視線を遮るだけにすぎず、実質上、スロープ部によって視線が遮られることは少ない。よって、耐震構造要素の全てを鉛直姿勢の耐震壁によって構成する建物に比べて、外周部の開口率を向上させることができる。
その結果、耐震構造要素による耐震性能は、建物全体として充分に確保しながらも、視線を遮る耐震壁の占める割合を少なくできるから、室内からの見通しが良くなり、外部の景観を楽しんだり自然光を室内に取り込みやすくなり、建物としての居住性を向上させることができる。
また、周回路そのものは、庇としての機能をも果たすことが可能となり、太陽の直射光が室内に到達するのを緩和でき、例えば、ペリメータ部での空調効果の向上を図ることが可能となる。
即ち、耐震性能と居住性との両立を叶えることができる。
更には、周回路は、建物外周部に沿って形成されているから、建物周長を最大限に生かした周回経路を確保でき、緩やかな勾配の周回路を構成することができる。従って、この周回路を、遊歩道やジョギング道路として利用したり、自転車や車椅子によって通行できる道として使用することが可能となり、建物としての付加価値の向上を図ることができる。
比較例として、所定の落差を昇降するにあたり、直線状の勾配路を考えた場合、勾配を緩やかにすればするほど、その延長は長くなり、その勾配路を建物敷地に組み込むには、敷地面積の増大につながるから実質上困難となる場合が多い。それに比べて、建物外周部を利用して周回路を形成してあるから、例えば、螺旋状に周回路を幾重にも重ねて設置することができ、敷地面積の増大をひかえながら緩やかな勾配の周回路を構成することができる効果がある。
また、当該建物は、新築にも改築にも適用できるものであるが、特に、改築の場合には、ほとんどの工事を、建物外周部において実施できるから、建物内部は通常のように使用しながら工事を進めることができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記スロープ部は、長手方向の両端部を前記建物外周部に剛連結してあるところにある。
本発明の第3の特徴構成は、前記スロープ部は、前記建物外周部に剛連結した水平部を介して前記建物外周部に剛連結してあるところにある。
本発明の第
4の特徴構成は、前記周回路は、複数の階にわたって連続して設けてあり、前記スロープ部は、前記建物外周部の各構面のうち、二つ以上の構面に設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第
4の特徴構成によれば、周回路を複数の階にわたって連続して設けてあるから、上下の複数階どうしを、緩やかな勾配の周回路によって行き来することが可能となり、例えば、遊歩道やジョギング道路として利用したり、自転車や車椅子によって通行できる道として利用することが可能となる。
また、スロープ部を、建物外周部の各構面のうち、二つ以上の構面に設けてあることで、地震の横揺れに対して、各スロープ部による異なる構面でのベクトルで耐震効果を発揮することが可能となり、建物全体として耐震性能の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第
5の特徴構成は、前記周回路は、その上端が屋上階に達しているところにある。
【0011】
本発明の第
5の特徴構成によれば、下階側から周回路を通じて屋上階に行き来することが可能となる。
従って、周回路を、遊歩道やジョギング道路や自転車や車椅子によって通行できる道として使用できることに加えて、その拡がりに屋上階も含めることができる。
例えば、屋上階に庭園等の施設を設ければ、連続した周回路を通じてそのスペースへの出入りを簡単に行え、有効に利用することができるようになる。
その結果、周回路や屋上階を、連続した拡がりの中で一つの施設として有効に利用することができ、建物全体とした付加価値をより高めることができる。
但し、屋上階の用途は、上述の庭園に限るものではない。
また、例えば、昆虫や小動物が、周回路を経由して屋上階に出入りすることも可能となるから、人と動物との共生できる環境を作ることができる。
【0012】
本発明の第
6の特徴構成は、前記周回路は、複数条設けられているところにある。
【0013】
本発明の第
6の特徴構成によれば、周回路の延長を増やすことができる。また、建物から周回路への出入口の数を条数の分だけ確保できるから、単条のものに比べて周回路へのアクセスが向上し、より使い易くなる。
また、耐震構造要素としてのスロープ部の個所数を増加できるから、建物全体としての耐震構造要素の配置計画の自由性が向上する。
【0014】
本発明の第
7の特徴構成は、前記周回路は、緑化を施してあるところにある。
【0015】
本発明の第
7の特徴構成によれば、周回路を、上述のように、遊歩道やジョギング道路や自転車や車椅子によって通行できる道として使用するにあたり、緑化によって、より自然に近い環境を作ることができると共に、意匠性の向上も図ることができる。
更には、緑化植物による蒸散作用を期待でき、より快適性が向上する。
その結果、建物全体とした付加価値を更に向上させることができる。