特許第5774932号(P5774932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5774932
(24)【登録日】2015年7月10日
(45)【発行日】2015年9月9日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20150820BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20150820BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20150820BHJP
【FI】
   H02G3/30
   F16B19/00 Q
   B60R16/02 623A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-162858(P2011-162858)
(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公開番号】特開2013-27268(P2013-27268A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山本 聖享
(72)【発明者】
【氏名】上原 建彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 好弘
(72)【発明者】
【氏名】空 正浩
(72)【発明者】
【氏名】林 秀治
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇司
【審査官】 青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−205961(JP,A)
【文献】 特開2012−217295(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128216(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/176872(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/108826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスにおいて、
前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の上面に設けられると共に前記電線の外表面を覆って当該電線を固定する固定部と、前記本体部の下面に設けられ前記パネルの前記取付孔と係止する係止部と、を備え、
前記固定部には、前記固定部に固定された前記電線を収容したチューブの内周面に係合する係合突起が設けられ、
前記係合突起が、前記固定部の外周面から互いに逆向きに突出して設けられた一対の係合突起とされ、
前記一対の係合突起が、前記固定部の外周面上に複数設けられ、
前記複数の一対の係合突起は、当該複数の一対の係合突起の突出方向が、互いに交差する方向に設けられ、かつ、
前記複数の一対の係合突起は、当該複数の一対の係合突起の突出位置が、前記電線の軸方向に変位して設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記固定部が、前記本体部の上面の中央部に突設された連結部に連結され、
前記本体部の上面には、前記チューブの外周面に係合する第2係合突起が設けられ、かつ、
前記固定部の下面には、前記チューブの内周面に係合する第3係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネルに配索されている。前記パネルの取付孔に係止される配線用クリップが設けられたワイヤハーネスが種々提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照。)。また、ワイヤハーネスに設けられるチューブの端部にスリットを設け、前記チューブの端部を突き当てて係止するものが提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0004】
チューブが設けられたワイヤハーネスは、前記チューブの両端と前記ワイヤハーネスとがお互いに、ワイヤハーネス用テープ等の粘着テープで捲回されてテープ留めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315164号公報
【特許文献2】特開2005−26178号公報
【特許文献3】特開2006−14569号公報
【特許文献4】特開平11−205943号公報
【特許文献5】特開2002−93518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したワイヤハーネスは、前記チューブの両端のそれぞれを作業員が固定しながらテープ留めされているため、ワイヤハーネスの製造コストがかかる。また、単独の作業員がチューブの両端をテープ留めする場合には、そのテープ留めにかかる作業時間が長時間化する。
【0007】
また、突き当てて係止されるチューブは、該チューブの端部にスリットを設けているため、チューブにスリットを形成する工程が必要となる。また、チューブの端部にスリットを設けているため、スリットの一端側と他端側とでチューブの弾性が異なり、チューブの挿入性が低下する。
【0008】
本発明は、パネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に一体成形されたワイヤハーネスにおいて、前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の上面に設けられると共に前記電線の外表面を覆って当該電線を固定する固定部と、前記本体部の下面に設けられ前記パネルの前記取付孔と係止する係止部と、を備え、前記固定部には、前記固定部に固定された前記電線を収容したチューブの内周面に係合する係合突起が設けられ、前記係合突起が、前記固定部の外周面から互いに逆向きに突出して設けられた一対の係合突起とされ、前記一対の係合突起が、前記固定部の外周面上に複数設けられ、前記複数の一対の係合突起は、当該複数の一対の係合突起の突出方向が、互いに交差する方向に設けられ、かつ、前記複数の一対の係合突起は、当該複数の一対の係合突起の突出位置が、前記電線の軸方向に変位して設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【0010】
請求項2に記載された発明は、前記固定部が、前記本体部の上面の中央部に突設された連結部に連結され、前記本体部の上面には、前記チューブの外周面に係合する第2係合突起が設けられ、かつ、前記固定部の下面には、前記チューブの内周面に係合する第3係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、電線を収容したチューブの一端が固定部に係合されるため、前記チューブの一端のテープ留めのための仮留作業が省略される。このため、単独の作業員によって前記チューブの取付作業が迅速且つ容易に行われるようになる。
【0012】
また、ワイヤハーネスは、チューブの一端のテープ留めのための仮留作業が省略されるため、テープ留めにかかるコストが削減され、ワイヤハーネスのコストが抑えられる。
【0013】
また、ワイヤハーネスは、複数の一対の係合突起がチューブの内周面に順次係合するため、前記チューブの取付時には比較的小さい力で取付作業が行われる。また、前記チューブの取付後には、複数の一対の係合突起が前記チューブに係合しているため、前記チューブが不用意に取り外されることが防止される。
【0014】
また、ワイヤハーネスは、複数の一対の係合突起がチューブの内周面に順次係合するため、前記複数の一対の係合突起に対する前記チューブの弾性が一定となり、チューブの挿入性が向上する。
【0015】
また、ワイヤハーネスは、複数の一対の係合突起のそれぞれによって、順次、前記チューブを拡径する方向が交差されるため、当該チューブの取付時には比較的小さい力で取り付けが行われる。一方、チューブを取り外すには大きな力が必要となる。このため、前記チューブの取付作業が容易に行えると共に、前記チューブの不用意な取り外しが十分に防止される。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、本体部と固定部との間に形成された間隙内にチューブの一端側が侵入するため、前記固定部に係合された前記チューブの安定性が向上する。
【0017】
また、ワイヤハーネスは、本体部によってチューブが係合されるため、前記チューブの不用意な取り外しが確実になされなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
図2図1に示すワイヤハーネスの側面図である。
図3】ワイヤハーネスを成形する金型の要部断面図である。
図4図3に示す金型の下型の斜視図である。
図5図1に示すワイヤハーネスにチューブが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの側面図である。
図7】出願人が検討した第1の参考技術を説明するための説明図である。
図8】出願人が検討した第2の参考技術を説明するための説明図である。
図9】出願人が件とした第3の参考技術を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1図9を参照して説明する。
【0020】
本発明の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、図1および図2に示すように、パネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップ3と、電線4とを備えている。ワイヤハーネス1は、前記配線用クリップ3が前記電線4に一体成形されて形成されている。
【0021】
電線4は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、導電性の金属で形成されている。被覆部は、前記芯線を被覆しており、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる。このため、電線4の外表面は、前記被覆部の外表面となっている。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。
【0022】
配線用クリップ3は、薄板状に形成された本体部10と、前記本体部10の上面に設けられ前記電線4を固定する固定部11と、前記本体部10の下面に設けられ前記パネルの取付孔に係止する係止部12と、を備えている。配線用クリップ3は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂からなる。
【0023】
本体部10は、板状に形成されており、前記固定部11と前記係止部12とを支持している。本体部10の下面には、係止部12が前記取付孔に係止された際に当該パネルを押圧する当接部28,29が設けられている。当接部28,29は、前記本体部10の長手方向の両端側かつ前記係止部12の係止片31,32に干渉しない位置に設けられている。
【0024】
固定部11は、電線4に一体成形され当該電線4を固定している。固定部11は、前記電線4の外形に沿って円筒形状に形成された筒状部21と、前記筒状部21の一端側かつ当該筒状部21の外周面に設けられた複数の係合突起42,42,43,43と、を備えている。
【0025】
係合突起42,42は、前記筒状部21の外周面上に設けられ、互いに反対方向に突出する一対の係合突起とされている。係合突起42,42は、本実施形態においては、水平方向に突出して設けられている。
【0026】
係合突起43,43は、前記筒状部21の外周面上に設けられ、互いに反対方向に突出する一対の係合突起とされている係合突起43,43は、本実施形態においては、垂直方向に突出して設けられている。
【0027】
係合突起42,42と係合突起43,43とは、互いに前記固定部11の長手方向に偏倚して設けられている。係合突起42,42と係合突起43,43とは、互いに略直交する方向に突出して設けられている。係合突起42,42は、係合突起43,43よりも前記固定部11の先端側に設けられている。
【0028】
なお、係合突起42,42と係合突起43,43とは、互いに略直交する方向に突出して設けられていれば良いので、前述の水平方向と垂直方向とに限定されない。
【0029】
係合突起42,42は、それぞれ、前記筒状部21の先端側に向かって徐々に突出量が減少する先細部42a,42aと、前記チューブ5の内周面に係合する係合部42b,42bと、を備えている。
【0030】
係合突起43,43は、それぞれ、前記筒状部21の先端側に向かって徐々に突出量が減少する先細部43a,43aと、前記チューブ5の内周面に係合する係合部43b,43bと、を備えている。
【0031】
係合突起42の先細部42aは、前記固定部11に圧入された前記チューブ5の内周面に摺接し、前記係合部42bにまで前記チューブ5を楕円形状に水平方向に弾性変形させて拡径する。係合部42bは、前記先細部42aによって楕円形状に拡径された前記チューブ5の内周面に係合する。そして、前記係合部42bを通過した前記チューブ5の一端部が弾性回復力で縮径し、前記係合部42bと前記チューブ5とが係合される。
【0032】
係合突起43の先細部43aは、前記固定部11に圧入された前記チューブ5の内周面に摺接し、前記係合部43bにまで前記チューブ5を楕円形状に垂直方向に弾性変形させて拡径する。係合部43bは、前記先細部43aによって楕円形状に拡径された前記チューブ5の内周面に係合する。そして、前記係合部43b通過した前記チューブ5の一端部が弾性回復力で縮径し、前記係合部43bと前記チューブ5とが係合される。
【0033】
このため、チューブ5の一端側が、係合突起42,42と係合突起43,43とによって水平方向と垂直方向とに順次拡径されるため、前記チューブ5と係合突起42,42,43,43との摩擦力が軽減され、前記チューブ5を前記固定部11に圧入する時の圧入荷重が小さくなって、前記チューブ5の挿入性が向上する。また、チューブ5の一端側が、係合突起42,42と係合突起43,43とによって係合されているため、前記チューブ5を前記固定部11から引き抜く時の抜脱荷重が大きくなる。
【0034】
係止部12は、前記本体部10の下面に立設された柱状部33,34と、前記パネルの前記取付孔と係止する係止片31,32と、を備えている。係止片31,32は、前記柱状部33,34の先端に設けられるとともに、前記柱状部33,34の基端側に向かって延長されて形成されている。係止片31,32は、前記本体部10に向かうにしたがって徐々に互いに離間するように傾斜して形成されている。係止片31,32は、揺動可能に形成され、前記係止片31,32の揺動方向が、前記電線4の長手方向に平行する方向とされている。係止片31,32の先端には、前記パネルの取付孔の内周面に係止する係止突起35,36と、前記取付孔の周縁部に係止する係止面37,38が設けられている。
【0035】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1は、図3に示すように、金型60内で、射出成形によって、前記電線4に配線用クリップ3が一体成形されて形成されている。
【0036】
金型60は、水平割金型であり、上型61と下型62とから構成されている。上型61と下型62とには、それぞれ、前記電線4の外形に沿って形成された線条キャビティ64と、配線用クリップ3の外形に沿って形成された配線用クリップキャビティ63と、が設けられている。
【0037】
下型62には、図4に示すように、線条キャビティ64と配線用クリップキャビティ63とがそれぞれ上向きに形成されている。線条キャビティ64は、金型60の両端から前記電線4を外部に導出させる導出口65,66が、上型61と下型62とにそれぞれ設けられている。配線用クリップキャビティ63は、図示しない射出装置から射出された溶融樹脂を案内するランナが連通している。溶融樹脂は、前記電線4の被覆部が塑性変形しない温度とされる。なお、金型60は、垂直割金型であっても良い。
【0038】
なお、金型60は、線条キャビティ64上に複数の配線用クリップキャビティ63を設けても良い。この場合の金型60は、複数個の配線用クリップキャビティ63が、ワイヤハーネス1が前記パネルに取り付けられる時に、複数個の配線用クリップ3が前記パネルの取付孔に係止可能となる位置に配置される。即ち、複数個の配線用クリップ3は、電線4に対する相対的な位置が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に設けられる。
【0039】
本発明でいう、複数個の配線用クリップ3が、電線4に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能となる位置に設けられているとは、線条キャビティ64に対してワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれた配線用クリップキャビティ63内に溶融樹脂を射出成形して得られたワイヤハーネス1において、複数個の配線用クリップ3の電線4に対する相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0040】
前述の金型60によって成形されたワイヤハーネス1は、図5に示すように、チューブ5に電線4が挿通され、次いで、固定部11にチューブ5の一端が圧入され、前記チューブ5の一端が一対の係合突起42と一対の係合突起43とに順に係合される。次いで、前記チューブ5の一端が前記本体部10の連結部27に突き当たり、前記チューブ5が固定部11に固定されて取付作業が完了する。
【0041】
次いで、前記チューブ5の他端には、コネクタ等が設けられたり、市販品のクランプにテープ留めされたりする。なお、チューブ5に電線4を挿通させた状態で、前記金型60によって前記電線4に配線用クリップ3を一体成形しても良い。
【0042】
次いで、チューブ5が固定されたワイヤハーネス1は、前記パネルの取付孔内に前記配線用クリップ3の係止部12が侵入すると、係止片31,32のそれぞれの自由端が互いに近接する方向に弾性変形される。次いで、前記係止片31,32が前記取付孔を挿通すると、前記係止片31,32のそれぞれの自由端が弾性回復力によって、互いに離間する方向に変位する。
【0043】
そして、係止片31,32のそれぞれの先端に設けられた係止突起35,36が前記取付孔の内周面に当接するとともに、前記係止片31,32のそれぞれの先端に設けられた係止面37,38が前記取付孔の周縁部に当接し、さらに、前記本体部10の下面に設けられた当接部28,29が前記パネルを押圧する。このため、ワイヤハーネス1の配線用クリップ3が、前記パネルの前記取付孔に確実に係合されて固定される。
【0044】
上述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ3が電線4に一体成形されている。前記配線用クリップ3は、板状に形成された本体部10と、前記本体部10の上面に設けられると共に前記電線4の外表面を覆って当該電線4を固定する固定部11と、前記本体部10の下面に設けられ前記パネルの前記取付孔と係止する係止部12と、を備え、前記固定部11には、前記固定部11に固定された前記電線4を収容したチューブ5の内周面に係合する係合突起42,43が設けられ、前記係合突起42,43が、前記固定部11の外周面から互いに逆向きに突出して設けられた一対の係合突起42,43とされ、前記一対の係合突起42,43が、前記固定部11の外周面上に複数設けられ、前記複数の一対の係合突起42,43は、当該複数の一対の係合突起42,43の突出方向が、互いに交差する方向に設けられ、かつ、前記複数の一対の係合突起42,43は、当該複数の一対の係合突起42,43の突出位置が、前記電線4の軸方向に変位して設けられている。
【0045】
このため、ワイヤハーネス1は、電線4を収容したチューブ5の一端が固定部11に係合される。このため、前記チューブ5の一端のテープ留めのための仮留作業が省略され、単独の作業員によって前記チューブ5の取付作業が迅速且つ容易に行われるようになる。
【0046】
また、ワイヤハーネス1は、チューブ5の一端をテープ留めして仮留めする仮留作業が省略されるため、テープ留めにかかるコストが削減され、ワイヤハーネス1のコストが抑えられる。
【0047】
また、ワイヤハーネス1は、複数の一対の係合突起42,43がチューブ5の内周面に順次係合するため、前記チューブ5の取付時には比較的小さい力で取付作業が行われる。また、前記チューブ5の取付後には、複数の一対の係合突起42,43が前記チューブ5に係合しているため、前記チューブ5が不用意に取り外されることが防止される。
【0048】
また、ワイヤハーネス1は、複数の一対の係合突起42,43がチューブ5の内周面に順次係合するため、前記複数の一対の係合突起42,43に対する前記チューブの弾性が一定となり、チューブ5の挿入性が向上する。
【0049】
また、ワイヤハーネス1は、複数の一対の係合突起42,43のそれぞれによって、順次、前記チューブ5を拡径する方向が交差するため、当該チューブ5の取付時には比較的小さい力で取り付けが行われる。一方、チューブ5を取り外すには大きな力が必要となる。このため、前記チューブ5の取付作業が容易に行えると共に、前記チューブ5の不用意な取り外しが十分に防止される。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス1の第2の実施形態について、図6を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
ワイヤハーネス1Aは、電線4と、前記電線4に一体成形された配線用クリップ3と、を備えている。配線用クリップ3Aは、本体部10と、前記本体部10の上面に設けられた固定部11Aと、前記本体部10の下面に設けられた係止部12と、を備えている。
【0052】
固定部11Aは、前記電線4の外形に沿って円筒形状に形成された筒状部21と、前記筒状部21の外周面に設けられた一対の係合突起43および一対の係合突起42と、を備えている。筒状部21は、前記本体部10の上面に立設された連結部27と、前記電線4の外表面に連通する開口部23と、を備えている。連結部27は、前記本体部10の上面の中央部に設けられている。
【0053】
本体部10と固定部11Aとの間に形成された間隙45には、前記チューブ5が前記固定部11Aに圧入された際に、前記チューブ5に係合する第2係合突起48と、第3係合突起47とが設けられている。第2係合突起48と、第3係合突起47とは、三角形状に形成されている。第2係合突起48は、前記本体部10の上面に設けられ、前記チューブ5の外周面に係合する。第3係合突起47は、前記筒状部21の下面に設けられ、前記チューブ5の内周面に係合する。
【0054】
このため、固定部11Aに圧入されたチューブ5が、前記固定部11Aの係合突起42,43と、間隙45の第2係合突起48および第3係合突起47とに係合される。このため、前記チューブ5を前記固定部11Aから引き抜く時の抜脱荷重が十分に大きくなる。
【0055】
上述の第2の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、前記固定部が、前記本体部の上面の中央部に突設された連結部に連結され、前記本体部の上面には、前記チューブの外周面に係合する第2係合突起が設けられ、かつ、前記固定部の下面には、前記チューブの内周面に係合する第3係合突起が設けられている。
【0056】
このため、ワイヤハーネス1は、本体部10と固定部11Aとの間に形成された間隙45内にチューブ5の一端側が侵入するとともに、固定部11Aの係合突起42,43と、間隙45の第2係合突起48および第3係合突起47とに係合される。このため、前記固定部11Aに係合された前記チューブ5の安定性が向上する。
【0057】
また、ワイヤハーネス1は、固定部11Aの係合突起42,43と、間隙45の第2係合突起48および第3係合突起47とにチューブ5が係合されるため、前記チューブ5の不用意な取り外しが確実に防止される。
【0058】
(第1の参考技術)
次に、上述した本発明に係るワイヤハーネス1,1Aを発明するのに至った研究において、出願人が検討した技術を参考技術として説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
ワイヤハーネス1Bは、図7に示すように、電線4と、前記電線4に一体成形された配線用クリップ3と、を備えている。配線用クリップ3Bは、本体部10と、前記本体部10の上面に設けられた固定部11Bと、前記本体部10の下面に設けられた係止部12と、を備えている。
【0060】
固定部11Bは、前記電線4が固定され円筒形状に形成された筒状部21と、前記筒状部21の一端側かつ当該筒状部21の外周面に設けられ前記チューブ5と係合する係合突起41,41と、を備えている。筒状部21は、前記本体部10の上面の長手方向の一端に立設された連結部27と、前記電線4の外表面に連通する開口部23と、を備えている。
【0061】
係合突起41,41は、前記筒状体21の外周面から互いに反対方向に突出して設けられ、一対の係合突起とされている。係合突起41,41は、それぞれ、前記筒状体21の先端に向かって徐々に突出量が減少する先細部41a,41aと、前記チューブ5の内周面に係合する係合部41b,41bと、を備えている。なお、係合突起41,41は、互いに反対方向に突出していれば良いので、垂直方向、水平方向、または、その他の方向に突出されていても良い。
【0062】
先細部41aは、前記固定部11Bに圧入された前記チューブ5の一端の内周面に摺接し、前記係合部41bにまで楕円形状に変形して拡径する。このため、前記チューブ5を前記固定部11Bに圧入する時の圧入荷重が小さくなり、前記チューブ5の取付作業が迅速かつ容易になされる。
【0063】
係合部41bは、前記先細部41aによって前記係合部41bにまで楕円形状に拡径された前記チューブ5の内周面に係合する。そして、前記係合部41bを通過した前記チューブ5の一端部が弾性回復力で縮径し、前記係合部41bと前記チューブ5との係合が確実になされる。このため、前記チューブ5を前記固定部11Bから引き抜く時の抜脱荷重が大きくなり、前記チューブ5が前記固定部11Bから容易に引き抜けなくなる。
【0064】
上述の第1の参考技術のワイヤハーネス1Bは、係合突起41,41が、前記固定部11Bの外周面上に設けられるととともに互いに反対方向に突出した一対の係合突起とされている。
【0065】
このため、ワイヤハーネス1Bは、チューブ5を固定部11Bに圧入する時の圧入荷重が小さくなるとともに、前記チューブ5を前記固定部11Bから引き抜く時の抜脱荷重が大きくなる。したがって、配線用クリップ3Bに前記チューブ5が容易に取り付けられるようになる。一方、配線用クリップ3Bから前記チューブ5が容易に引き抜けなくなる。
【0066】
(第2の参考技術)
次に、出願人が検討した第2の参考技術について、図8を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
ワイヤハーネス1Cは、電線4と、前記電線4に一体成形された配線用クリップ3Cと、を備えている。配線用クリップ3Cは、本体部10と、前記本体部10の上面に設けられた固定部11Cと、前記本体部10の下面に設けられた係止部12と、を備えている。
【0068】
固定部11Cは、前記電線4の外形に沿って円筒形状に形成された筒状部21と、前記筒状部21の外周面に設けられた一対の係合突起41,41と、を備えている。固定部11Cは、前記本体部10の上面に立設された連結部27と、前記電線4の外表面に連通する開口部23と、を備えている。連結部27は、前記本体部10の上面の中央部に設けられている。
【0069】
本体部10の上面と前記固定部11Cとの間には、間隙45が形成されている。このため、固定部11Cの係合突起41が外部に接触することが防止され、前記係合突起41が破損したり傷付いたりすることが軽減される。また、固定部11Cに圧入されたチューブ5の一端部が前記間隙45内に配されるため、前記チューブ5と前記固定部11Cとの係合の安定性が向上する。また、固定部11Cが本体部10の中央部に設けられるため、配線用クリップ3Cが小型化される。
【0070】
上述の第2の参考技術のワイヤハーネス1Cは、固定部11Cが前記本体部10の上面の中央部に突設された連結部27に連結されている。
【0071】
このため、ワイヤハーネス1Cは、固定部11が外部に向かって突出している従来のクリップよりも、前記係合突起41が破損したり傷付いたりすることが防止される。
【0072】
(第3の参考技術)
次に、出願人が検討した第3の参考技術について、図9を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
ワイヤハーネス1Dは、電線4と、前記電線4に一体成形された配線用クリップ3Dと、を備えている。配線用クリップ3Dは、本体部10と、前記本体部10の上面に設けられた固定部11Dと、前記本体部10の下面に設けられた係止部12と、を備えている。
【0074】
固定部11Dは、前記本体部10の上面に形成された連結部25,26を介して当該本体部10に支持されている。固定部11Dは、前記電線4に一体成形された筒状部21と、前記筒状部21の一端部に設けられ且つチューブ5と係合する係合突起22と、を備えている。
【0075】
係合突起22は、先細りの円錐形状に形成されている。係合突起22は、先端部に向かって徐々に先細りする先細部22aと、前記チューブ5の内周面に係合する係合部22bと、を備えている。
【0076】
先細部22aは、前記係合部22に圧入された前記チューブ5の内周面に摺接し、前記先細部22aのテーパに沿って前記チューブ5の一端部を徐々に前記係合部22bの直径にまで拡径する。このため、前記チューブ5を固定部11Cに圧入する時の圧入荷重が小さくなり、前記チューブ5の取付作業が迅速且つ容易になされる。
【0077】
係合部22bは、前記先細部22aによって前記係合部22bの直径にまで拡径された前記チューブ5の内周面に係合する。そして、前記係合部22bを通過した前記チューブ5の一端部が弾性回復力で縮径し、前記係合部22bと前記チューブ5との係合が確実になされる。このため、前記チューブ5を前記固定部11Cから引き抜く時の抜脱荷重が大きくなり、前記チューブ5が前記固定部11Cから容易に引き抜けなくなる。
【0078】
上述の第3の参考技術のワイヤハーネス1Dは、チューブ5の内周面に係合する係合突起22が設けられているため、チューブ5を配線用クリップ3Dの固定部11Dに圧入するだけで、前記配線用クリップ3Dに前記チューブ5が取り付けられる。このため、前記チューブ5を前記配線用クリップ3Dにテープやバンド等によって仮留めする仮留作業が不要となる。
【0079】
上述の如く、本発明にかかるワイヤハーネス1,1Aは、出願人が検討した第1の参考技術ないし第3の参考技術から顕著な作用効果を発揮する構成を抽出するとともに、実施可能な形態としたものである。
【0080】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ワイヤハーネス
3 配線用クリップ
4 電線
5 チューブ
10 本体部
11 固定部
42,43 係合突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9